トップ :: D 繊維 紙 :: D02 糸;糸またはロ−プの機械的な仕上げ;整経またはビ−ム巻き取り

【発明の名称】 ガラスクロス
【発明者】 【氏名】木村 康之
【氏名】筒井 慎一
【課題】

【解決手段】複数のノズルより連続して噴射される水流を用いて開繊加工されたガラスクロスであって、水流の軌跡が網目状に互いに交差し、実質的に水流の軌跡の痕が見えないガラスクロスである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数のノズル群の小孔より連続して噴射される水流を用いて開繊加工されたガラスクロスにおいて、該水流の軌跡が網目状に互いに交差していることを特徴とするガラスクロス。
【請求項2】 請求項1記載のガラスクロスにおいて、各ノズル群の小孔の間隔(ここで間隔Aとする)が等しく、それぞれのノズル群間の小孔の位置関係が幅方向の座標軸系で間隔Aをノズル群の段数で割った間隔(ここで間隔Bとする)に等分に配置され、かつ間隔Bが該ガラスクロスを構成するガラス糸の断面糸幅に該小孔の直径を加えた値よりも小さく配置されたノズル群の小孔より連続して噴射される水流を用いて開繊加工されたことを特徴とするガラスクロス。
【請求項3】 請求項1又は2記載のガラスクロスにおいて、該ノズル群の隣り合う小孔の間隔(間隔A)の1.5倍から10倍の振幅で揺動させたノズル群の小孔より連続して噴射される水流を用いて開繊加工されたことを特徴とするガラスクロス。
【請求項4】 請求項1〜3のいずれかに記載のガラスクロスにおいて、ノズルより噴射される水流の圧力が5Kg/cm2 以上、30Kg/cm2 未満である水流により開繊加工されたことを特徴とするガラスクロス。
【請求項5】 請求項1〜4のいずれかに記載のガラスクロスにおいて、該ガラスクロス上に該水流の軌跡痕が実質的に見えないことを特徴とするガラスクロス。
【請求項6】 熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂とし、請求項1〜5のいずれかに記載のガラスクロスを補強材とし積層成形して得られたことを特徴とする、ガラスクロス補強樹脂積層板。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プリント配線基板の基材として用いられるガラスクロスの改良に関するものである。詳細には、本発明は、プリント配線基板もしくは樹脂積層板を得るのに好適なガラスクロスの改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】プリント配線基板は、高密度実装化、高多層化、薄板化の傾向が強まり、それに伴い、材料としての積層板、またその基材として用いられるガラスクロスに対する特性要求も高まっている。特に、ガラスクロスへの樹脂含浸性は最も重要なものであり、積層板の様々な特性、例えば、耐熱性、寸法安定性、穴開け加工性等に影響を与える。つまり、ガラスクロスへの樹脂含浸性が不十分な場合、ガラスクロスにマトリックス樹脂を含浸させたプリプレグ中にボイドが多数残留し、それらを除くためにプレス成型時に高圧が必要となり、その結果作成された積層板には応力歪みが蓄積し、プリント配線板の寸法安定性を損なう。
【0003】これを防ぐために、減圧下でプリプレグを作成、またプレス成形をすることがなされているが、十分ではなく、もともと樹脂が十分に含浸し、ボイドの少ないプリプレグとなるガラスクロスが求められている。さらに、ガラスクロス中のボイドがそのまま、積層板中に残留した場合、ガラスと樹脂間の密着性が悪く、吸湿し易く、耐熱性の低下を引き起こす。また、穴開け加工時に、例えばドリル加工時に加工応力によりボイドを通してクラックが生じやすくなり、穴壁面の割れ、欠け、さらには次工程でメッキ液の染み込み等の問題を発生させる。
【0004】ガラスクロスの樹脂含浸性は構成するガラス糸の収束性、織物構造、表面処理により影響を受けることが一般に知られている。ガラスクロスを構成するガラス糸は、通常、フィラメント径が5〜10μmのモノフィラメントを数100本束ね、25mm当たり0.3〜1回の軽い撚りを加えられたものである。さらに、ガラス糸は、一般に製織時の機械的衝撃からガラス糸を保護する目的で付与される澱粉や油剤を主成分とするバインダーを、さらにはPVAを主成分とするサイジング剤を有している場合もある。従って、実際にガラスクロスをプリント配線板用途に供するためには、このようなバインダー、サイジング剤を除去する必要があり、通常、約400℃の温度で数10時間加熱し、脱糊処理を行う。
【0005】このように、ガラス糸はそれ自体の撚り及び高温、長時間にわたる加熱処理によるセット効果で収束した状態になっている。そのため、樹脂の含浸性が低下する。また、プリント配線板用途のガラスクロスの織物構造は一般に平織りと言われる経糸と緯糸が1本づつ浮沈、交差する構造になっており、経糸と緯糸が交差する部分は糸の重なりのために、樹脂の含浸がし難い構造となっている。
【0006】さらに、ガラスクロスは使用されるマトリックス樹脂との接着性等を考慮し、各種シランカップリング剤等により表面処理される。その結果、極少量ではあるが表面に付着するシランカップリング剤の被膜により、ガラス糸束への樹脂の含浸が損なわれるようになる。そのため、従来よりガラスクロスへのマトリックス樹脂含浸性を改善するために、高圧ウォータージェットを無機繊維織物に噴射し開繊する方法、超音波振動子を無機繊維織物に接触させて開繊させる方法などが検討されてきた。しかしながら、こうした方法ではガラスクロスの樹脂含浸性を均一に改善することは困難である。
【0007】高圧ウォータージェットを無機繊維織物に噴射し開繊する方法では、直径0.1〜0.2mm程度の小口径から柱状水流が噴出されるが、ガラスクロス全体均一に水流を当てることは難しく、柱状流噴出のノズルを回転、揺動させる試みはしているものの、特開平8−127959号公報には、高圧ウォータージェットの噴射に起因する開繊加工の痕が形成されると記載されているように、開繊加工された部分と開繊加工されていない部分が存在し、開繊加工の不均一さの痕としてガラスクロス上に残る。また、超音波振動子を無機繊維織物に接触させて開繊させる方法の場合、無機繊維糸を構成するフィラメントの収束性を和らげる効果と一方では、振動によりフィラメントが細密充填する場合があり、開繊加工が不均一であり、安定した樹脂含浸性の改善をはかることが難しい。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、プリント配線基板の高密度実装化、高多層化、薄板化の傾向に対応できるマトリックス樹脂の含浸性を改善した、特に含浸性の均一性を改善したガラスクロスを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者は鋭意検討した結果、ノズル群の小孔より噴射される水流で開繊するシステムの改良により、実質的に均一に開繊され、マトリックス樹脂の含浸性を大幅に改良、均一化したガラスクロスを得られることが可能となり、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は;
■ 複数のノズルより連続して噴射される水流を用いて開繊加工されたガラスクロスにおいて、該水流の軌跡が網目状に互いに交差していることを特徴とするガラスクロスを提供する。また、【0010】■ 各ノズル群の小孔の間隔(ここで間隔Aとする)が等しく、それぞれのノズル群間の小孔の位置関係が幅方向の座標軸系で間隔Aをノズル群の段数で割った間隔(ここで間隔Bとする)に等分に配置され、かつ間隔Bが該ガラスクロスを構成するガラス糸の断面糸幅に該小孔の直径を加えた値よりも小さく配置されたノズル群の小孔より連続して噴射される水流を用いて開繊加工された点にも特徴を有する。また、■ 該ノズル群の隣り合う小孔の間隔の1.5倍から10倍の振幅で揺動させたノズル群の小孔より連続して噴射される水流を用いて開繊加工された点にも特徴を有する。また、■ ノズルより噴射される水流の圧力が5Kg/cm2 以上、30Kg/cm2 未満である水流により開繊加工された点にも特徴を有する。また、■ 該ガラスクロス上に該水流の軌跡痕が実質的に見えない点にも特徴を有する。ここで、該水流の軌跡痕が実質的に見えないこととは、隣り合う該水流の軌跡痕の区別ができない状態を示している。
■ 熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂とし、請求項1〜5のいずれかに記載のガラスクロスを補強材とし積層成形して得られた、ガラスクロス補強樹脂積層板を提供する。
【0011】以下、本発明を図面に基いて詳細に説明する。
〔I〕ガラスクロス及びその予備処理:(i) ガラスクロス本発明のガラスクロスは単糸径が5から10μmのガラス繊維単糸数100本により構成された長繊維フィラメントガラス糸を構成糸として経糸、緯糸により織成されたものである。使用されるガラス糸は、プリント配線板用基材として使用されるEガラスだけでなく、D、T、C及びHガラス等の材質のガラスでも適用できる。また、ガラスクロスの織り組織に関しても、通常の平織りだけでなく、ななこ織り、綾織り、繻子織り等のガラスクロスにも適用できる。
(ii) 本発明による開繊加工は、本来の意味からは、シランカップリング剤等による表面処理を行った後に実施されることが好ましいが、織成された直後の、収束剤、糊剤等が付着したガラスクロスまたは収束剤、糊剤等をヒートクリーニングしたクロスに開繊加工を実施しても構わない。
【0012】〔II〕 開繊加工されたガラスクロスの製造法:本発明の開繊加工されたガラスクロスの製造法について以下に詳述する。・本発明は、開繊加工に使用される水流の軌跡痕の改良に最大の特徴を有する。 そして、該水流は、基本的に柱状流高圧水により発生される水流を対象としている。
1)均一な開繊加工により、実質的に、ガラスクロス上に水流の軌跡痕を見えなくするためには、軌跡痕が連続な線として観察されない網目状に交差していることが好ましく(クレーム1)、さらに軌跡痕がガラスクロス特有の織り組織の模様内に隠れることがより好ましい。
【0013】このためには、以下の仕様での開繊加工が必須となる。図1は、本発明による水流の軌跡を発生するために用いるノズル群の配列及び小孔の配置関係の例を示す模式図である。前記ガラスクロスを、図1に示されるような直径0.05mmから0.5mm、好ましくは0.1mmから0.3mmの複数の小孔がガラスクロスの幅方向に等間隔で配置されたノズル群を用い、さらに該ノズル群を長手方向に複数配列する(図1の場合、ノズル群を3列配列している)。
【0014】2)均一な網目模様の水流の軌跡を描くためにはノズル群の数が多い方が良いが、装置が大きくなる弊害も考え合わせると、2〜5段、好ましくは3〜4段のノズル群の配列が好ましい。各ノズル群の配列及び小孔の配置関係の例を図1に示す。また、複数のノズル群は一体化したもの、または同一プレートに配列させたものでも良い。各ノズル群の小孔の間隔(間隔A)(a−b)、(c−d)、(e−f)はそれぞれ等しく、また各ノズル群の小孔の位置関係は幅方向の間隔(間隔B)x、y、zがそれぞれ等しく、その間隔がガラスクロスを構成するガラス糸の断面の糸幅に小孔の直径を加えた値よりも小さくなるように配置することが好ましい(クレーム2)。ここで、x、y、zの間隔がガラスクロスを構成するガラス糸の断面の糸幅に小孔の直径を加えた値よりも大きいと、水流の軌跡痕がガラスクロスの織り組織の模様内に隠れず、軌跡痕が顕著となり、好ましくない。
【0015】3)さらに、複数の該ノズル群を幅方向に隣り合う小孔の間隔の1.5倍〜10倍、好ましくは2倍〜5倍の振幅で揺動させることが望ましい(クレーム3)。振幅が該小孔の間隔の1.5倍未満の場合、水流の軌跡の交差が不十分となり、また、10倍を越えると水流の軌跡を網目状態にするためには振動数を大きくとる必要があり、機械的に困難となる。
【0016】4)また、揺動条件は、ガラスクロスの加工速度、各ノズル群の長手方向の位置関係(図1のw、vに相当)にも依存し、水流の軌跡を網目状態にする振動数が選択されるが、1000〜5000回/分、好ましくは1500〜3500回/分の振動数で揺動させることが望ましい。しかしながら、振動数が1000回/分未満では、ガラスクロスの加工速度が上がらず実際的でない。また、5000回/分を越えると装置の構造上、機械的に連続した振動がとれなくなる。
【0017】5)さらに、各ノズル群の小孔のサインカーブの軌跡が長手方向で同じ位相差で、且つ位相が等分に、例えばノズル群が2段の場合には180度、3段の場合には120度、4段の場合には90度、それぞれずれるように条件を設定することが重要である。
6)また、各ノズル群の揺動は同一の駆動から振動することが好ましい。別1動系では、タイミングのずれが生じ、開繊加工の均一性を損なうことがある。
【0018】7)ノズルの小孔より噴射される水流の圧力は5Kg/cm2 以上、30Kg/cm2 未満、好ましくは10Kg/cm2 以上、25Kg/cm2 未満であることが望ましい(クレーム4)。これは、開繊加工するガラスクロスの仕様(ガラス糸種、織物構造等)により適宜選択される。この場合、5Kg/cm2 未満では開繊加工の水流の痕は残らないが、十分な開繊の効果が得られず、30Kg/cm2 を越えると水流の衝撃力が大きく、ガラスクロスが毛羽立つ等の問題点を生じる。
【0019】8)まとめ:これら1)〜6)は、均一な網目模様の水流の軌跡を描き、ガラスクロス上の任意の点から少なくとも該ガラスクロスを構成するガラス糸の糸幅の間隔以内に水流の軌跡があり、該ガラスクロス上に該水流の軌跡痕が実質的に見えないためには必要となる(クレーム5)。
【0020】〔III〕樹脂積層板本発明により開繊されたガラスクロスは、樹脂マトリックスを使用して該無機繊維織物を常法に従って積層成形して、プリン回路基板等に有用な樹脂積層板を製造する。特に、プリン回路基板の製造には、ガラスクロス補強材に樹脂マトリックスを含浸させて半硬化したプリプレグを用い、常法に従ってその複数枚を積層成形する。また、他の方法、例えば注型法や低圧加熱法等によっても良い。樹脂マトリックスとしては、通常熱硬化性樹脂が使用でき、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0021】
【実施例】以下実施例により本発明を具体的に詳述するが、これらは本発明の範囲を制限しない。また、本発明ガラスクロスの評価は以下の方法で行った。
(i) 〔ガラスクロスの評価〕
■ ガラスクロスを構成するガラス糸の糸幅の測定ガラスクロスを常温硬化のエポキシ樹脂等に包埋し、糸断面を削り出し、顕微鏡で観察し、その糸断面形状を測定した。経糸、緯糸のそれぞれを測定し、平均の長さを用いた。
■ ガラスクロス上の水流の軌跡の判定ガラスクロスを斜め方向から目視で外観を観察した。以下の樹脂組成からなるプリプレグを作成し、外観を観察した。
■ ガラスクロスの毛羽状態の評価以下の樹脂組成からなるプリプレグを作成し、外観(突起物の数、分布)を観察した。
評価レベル:○→突起物がほとんど見られない、△→突起物が見られる、×→突起物が多数見られる。
【0022】(ii)〔樹脂含浸性の評価〕
■ プリプレグの含浸性以下の樹脂組成からなるプリプレグを作成し、外観(ボイドの残り状態、透明性)を観察し、含浸状態を目視で判断した。
◎→○→△→×の順で含浸性は悪化していると判断結果を表す。また、長さ2mm以上のロングボイドの数を10cmの長さ当たりの平均個数として目視で数え、相対比較した。
■ ガラスクロスの含浸性(ウェットアウト性)
以下の樹脂組成をさらに溶剤で希釈し、粘度を50cpsに調整した後、平板上に一定量、滴下し、その上に評価ガラスクロスを置く。樹脂がガラスクロスに染み込む状態を観察し、気泡が目視で観察されなくなった状態を終点とし、それまでの時間を測定した。
【0023】
(iii) 〔樹脂組成〕
エピコート5046B80(油化シェルエポキシ(株)製) 69.8重量% エピコート180S75B70(油化シェルエポキシ(株)製) 14.1重量% ジシアンジアミド 1.6重量% 2E4MZ 0.1重量% メチルセロソルブ 7.2重量% ジメチルホルムアミド 7.2重量%──────────────────────────────────── 100 重量%以下に、(実施例)及び(比較例)を表1にまとめて示す。
【0024】
【表1】

【0025】図2及び図3は、実施例2と比較例4の開繊加工の水流の軌跡パターンを示す模式図である。また、実施例2と比較例4の開繊加工の水流の軌跡パターンを模式的に図2及び図3に示す。
【0026】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のガラスクロスは、樹脂の含浸性、特に均一性が大幅に改善され、ガラスクロスを構成するガラス糸中にボイドが少なくなっている。このために、本発明のガラスクロスを用いれば、積層板の耐熱性、寸法安定性、穴開け加工性等の改善効果が期待される。
【出願人】 【識別番号】000116770
【氏名又は名称】旭シュエーベル株式会社
【出願日】 平成9年(1997)3月19日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】清水 猛 (外3名)
【公開番号】 特開平10−259538
【公開日】 平成10年(1998)9月29日
【出願番号】 特願平9−84677