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【発明の名称】 紡績糸様の仮撚加工糸及びその製造方法
【発明者】 【氏名】武田 重一
【氏名】安田 多美子
【課題】ポリエステルマルチフィラントの仮撚加工糸からなり、紡績糸様の嵩高性を有し、かつ紡績糸様の丸みのある糸断面形状を有する仮撚加工糸、及びその製造方法を提供すること。

【解決手段】ポリエステルシック&シンマルチフィラメントの仮撚加工糸であって、該仮撚加工糸を形成しているモノフィラメントのシック部が不規則に捲縮しており、又シン部が規則的に捲縮している仮撚加工糸。及びポリエステル配向多繊未延伸糸を延伸することによって得られたシック&シンマルチフィラメントを、20×103 /√D≦Tw≦30×103 /√D、延伸倍率1.00以下、Tm=k・Δn1/6 (但し269≦k≦326)[式中、Dは仮撚加工時のマルチフィラメントのデニールを表わし、Twは仮撚数を表わし、Tmは仮撚温度を表わす]の条件によって、仮撚加工する紡績糸様の仮撚加工糸の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 フィラメント数が72本以上のポリエステルシック&シンマルチフィラメントの仮撚加工糸であって、該仮撚加工糸を形成している各モノフィラメントのシック部が不規則に捲縮しており、又該モノフィラメントのシン部が規則的に捲縮していることを特徴とする紡績糸様の仮撚加工糸。
【請求項2】 仮撚加工糸を形成している各モノフィラメント同士の間に実質的な融着が存在していないことを特徴とする請求項1に記載の紡績糸様の仮撚加工糸。
【請求項3】 19×10-3〜80×10-3の複屈折率(Δn)を有するポリエステル配向多繊未延伸糸を延伸することによって、斑測定のスペクトログラムにおいて、2cm以上の波長成分に対する2〜10cmの波長成分の割合が32%以上であり、ウスターU%値が0.52〜1.02の範囲内であり、かつフィラメント数が72本以上のシック&シンマルチフィラメントを得た後、該シック&シンマルチフィラメントを下記の(1) 〜(3) の条件を満足するようにして仮撚加工することを特徴とする紡績糸様の仮撚加工糸の製造方法。
20×103 /√D≦Tw≦30×103 /√D・・・・(1) 延伸倍率1.00以下・・・・・・・・(2) Tm=k・Δn1/6 、(但し269≦k≦326)・・・・(3) [式中、Dは仮撚加工時のシック&シンマルチフィラメントの繊度(デニール)を表わし、Twは該マルチフィラメントの1m当たりの仮撚数を表わし、Tmは該マルチフィラメントの仮撚温度(℃)を表わす。]
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、紡績糸の風合いを有するポリエステル仮撚加工糸及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】紡績糸の風合いを有するポリエステル仮撚加工糸として、ポリエステルシック&シンマルチフィラメントを仮撚加工してなるものが提案されている(特開平8−92835号公報)。ここに記載されている仮撚加工糸は、シック&シンマルチフィラメントに対する仮撚加工を、少ない仮撚数でもって、かつ高温加熱の下で行なうことにより、シック&シンマルチフィラメントのシック部同士を熱融着させるものであり、これによってシルキーな風合いを具備する仮撚加工糸を得るものである。
【0003】このため、上記のポリエステル仮撚加工糸においては、紡績糸に特有の適度な嵩高性、つまり紡績糸様の嵩高性を備えたものが得られなく、又同じく紡績糸に特有の丸みのある糸断面形状を有するものが得られない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】したがって本発明の目的は、紡績糸に特有の適度な嵩高性に近似する嵩高性を有し、かつ紡績糸に特有の丸みのある糸断面形状に近似する糸断面形状を有するポリエステル仮撚加工糸、及びその製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の目的は、以下に記載する本発明の紡績糸様の仮撚加工糸及びその製造方法によって達成することができる。すなわち本発明の紡績糸様の仮撚加工糸は、フィラメント数が72本以上のポリエステルシック&シンマルチフィラメントの仮撚加工糸であって、該仮撚加工糸を形成している各々のモノフィラメントのシック部が不規則に捲縮しており、又該モノフィラメントのシン部が規則的に捲縮してなるものである。
【0006】上記の構成による本発明の紡績糸様の仮撚加工糸においては、該仮撚加工糸を形成している各々のモノフィラメント同士の間に実質的な融着が存在していないことが好ましい。
【0007】又本発明の紡績糸様の仮撚加工糸の製造方法は、19×10-3〜80×10-3の複屈折率(Δn)を有するポリエステル配向多繊未延伸糸を延伸することによって、斑測定のスペクトログラムにおいて、2cm以上の波長成分に対する2〜10cmの波長成分の割合が32%以上であり、ウスターU%値が0.52〜1.02の範囲内であり、かつフィラメント数が72本以上のシック&シンマルチフィラメントを得る工程と、前記工程によって得られたシック&シンマルチフィラメントを下記の(1) 〜(3) の条件を満足するようにして仮撚加工する工程とからなる。
【0008】
20×103 /√D≦Tw≦30×103 /√D・・・・(1) 延伸倍率1.00以下・・・・・・・・(2) Tm=k・Δn1/6 、(但し269≦k≦326)・・・・(3) [式中、Dは仮撚加工時のシック&シンマルチフィラメントの繊度(デニール)を表わし、Twは該マルチフィラメントの1m当たりの仮撚数を表わし、Tmは該マルチフィラメントの仮撚温度(℃)を表わす。]
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の紡績糸様の仮撚加工糸の形態のモデルを、図1によって説明する。すなわち図1の太線は本発明の紡績糸様の仮撚加工糸を形成しているポリエステルシック&シンマルチフィラメントのうちの3本のモノフィラメントの捲縮状態を示すものであり、図2は図1に示される3本のモノフィラメントの仮撚加工前のモノフィラメントを示すものであり、シック部の位置とシン部の位置とを明示している。
【0010】図2においてA1、A2、A3、及びA4で表示する部分が各モノフィラメントにおけるシック部であり、このシック部によって形成された捲縮は、図1にて細線で示されるサインカーブのような規則的な形状から外れており、荒い波形を形成している。つまり、シック部は不規則に捲縮している。これに対して、図2において直線B1、B2、及びB3で示される部分が各モノフィラメントにおけるシン部であり、このシン部によって形成された捲縮は、図1にて細線で示されるサインカーブのような規則的な仮想曲線形状と一致しており、仮撚数に従った均一な波形を形成している。つまりシン部は規則的に捲縮している。
【0011】この結果、本発明の紡績糸様の仮撚加工糸においては、該仮撚加工糸の長さ方向の単位長さ当たりに存在するモノフィラメントの長さが不均一になっており、つまり仮撚加工糸を形成している各モノフィラメントのマイグレーションが強調されており、これによって紡績糸に特有の嵩高性に近似する嵩高性を具備するものになっている。しかもこのマイグレーションが強調されたモノフィラメントの72本以上の集合体にしてあることにより、モノフィラメント同士の間の摩擦の増大によって所謂フィラメント割れがなくなっており、紡績糸に特有の丸みのある糸断面形状に近似する丸みのある糸断面形状を有するものになっている。
【0012】次ぎに本発明の紡績糸様の仮撚加工糸の製造方法においては、■仮撚加工に供するためのポリエステルシック&シンマルチフィラメントとして特定のものを使用すること、■このポリエステルシック&シンマルチフィラメントの仮撚加工を特定の条件の下で行なうことの2点が必要である。
【0013】仮撚加工を行なうための仮撚加工装置の概略を図3に示す。この図3において、仮撚加工に供するためのポリエステルシック&シンマルチフィラメント1を巻き取りローラ8から巻き戻した後、フィードローラ2から供給し、熱板3、加撚具4、及びデリベリローラ5を順次通過させ、チーズ6によって目的の仮撚加工糸7を巻き取る。なお、加撚具4の後に第2の加熱具を設置して、仮撚捲縮を熱セットするようにしてもよい。
【0014】本発明の紡績糸様の仮撚加工糸の製造方法においては、その第1工程として19×10-3〜80×10-3の複屈折率(Δn)を有するポリエステル配向多繊未延伸糸を延伸することにより、斑測定のスペクトログラムにおいて、2cm以上の波長成分に対する2〜10cmの波長成分の割合が32%以上であり、ウスターU%値が0.52〜1.02の範囲内であり、かつフィラメント数が72本以上のシック&シンマルチフィラメントを得る。かかる特性を有するポリエステルシック&シンマルチフィラメントは、マルチフィラメントを形成している各モノフィラメントが、その長さ方向に数cm以下のシック部を多く具備しているものであることを意味している。
【0015】上記のような糸斑を有するポリエステルシック&シンマルチフィラメントからなる仮撚加工用の供給糸は、該供給糸であるポリエステルシック&シンマルチフィラメントを形成している各モノフィラメントのシック部がシン部よりも高い伸度を有している。これによって上記の糸斑を有するポリエステルシック&シンマルチフィラメントからなる供給糸1を加撚具4によって加撚したときには、加撚応力によってシック部が引き伸ばされ、これが加撚状態のモノフィラメントの外周に位置するようになる。これに対してシン部はシック部に比較してその伸度が低いために、加撚状態のモノフィラメントの中心部に位置するようになる。
【0016】かかる加撚状態にあるままで、加撚具4の上方に位置しているポリエステルシック&シンマルチフィラメントが、熱板3によって熱処理を受け、その形状が固定される。これによって仮撚加工糸7を形成している各モノフィラメントの捲縮状態は、先の図1に示す通りのものになる。
【0017】本発明の紡績糸様の仮撚加工糸の製造方法においては、上記の通り、仮撚加工に供するポリエステルシック&シンマルチフィラメント1として、19×10-3〜80×10-3の複屈折率(Δn)を有するポリエステル配向多繊未延伸糸を延伸することによって得られたフィラメント数72本以上のシック&シンマルチフィラメントを使用する。このときに、上記のポリエステルシック&シンマルチフィラメント1は、斑測定のスペクトログラムにおいて、2cm以上の波長成分に対する2〜10cmの波長成分の割合が32%以上であり、ウスターU%値が0.52〜1.02の範囲内であることが必要である。
【0018】ポリエステルシック&シンマルチフィラメント1にするためのポリエステル配向多繊未延伸糸として、その複屈折率(Δn)が19×10-3未満のものを使用すると、本発明方法で規定する仮撚数Tw及び仮撚温度Tmの条件の下での仮撚工程中、熱板での加熱によってシック部が融着してしまい、紡績糸様の嵩高性を有する仮撚加工糸が得られなくなる。又、ポリエステルシック&シンマルチフィラメント1にするためのポリエステル配向多繊未延伸糸として、その複屈折率(Δn)が80×10-3未満のものを使用すると、加撚具4によって加撚したときの加撚応力によるシック部の引き伸ばし効果が低くなり、紡績糸様の嵩高性を有する仮撚加工糸が得られなくなる。
【0019】従って、ポリエステルシック&シンマルチフィラメント1にするためのポリエステル配向多繊未延伸糸として、その複屈折率(Δn)が19×10-3〜80×10-3のものを使用することが必要であり、なかでも30×10-3〜50×10-3の複屈折率(Δn)を有するポリエステル高配向多繊未延伸糸を使用することが好ましい。なお、上記のポリエステル配向多繊未延伸糸の複屈折率(Δn)は、アッベ型偏光顕微鏡による測定値であり、同種のポリエステル配向多繊未延伸糸を10個取り出し、各1回測定したときの平均値である。
【0020】更に、ポリエステルシック&シンマルチフィラメント1が、斑測定のスペクトログラムにおいて、2cm以上の波長成分に対する2〜10cmの波長成分の割合が32%未満のものであると、フィラメントにおけるシック部の存在割合が低過ぎるために、仮撚加工によってシック部に生成するマイグレーションの度合いが不足し、紡績糸様の特有な適度な嵩高性を備えさせることができなくなる。従って、ポリエステルシック&シンマルチフィラメント1は、10cm以下の波長成分が多ければ多いほど好ましい。
【0021】しかしながら、ポリエステルシック&シンマルチフィラメント1が、斑測定のスペクトログラムにおいて、そのウスターU%値が1.02を超えると、得られる仮撚加工糸が長さ方向に濃淡のあるスラブ状になり、淡色部にはシック部が僅かに散在するものになってしまい、マイグレーション効果の極めて弱い部分が多く存在する仮撚加工糸になってしまう。又、ポリエステルシック&シンマルチフィラメント1のウスターU%値が0.52未満になると、ポリエステルシック&シンマルチフィラメントにおける斑が不足するようになるために、紡績糸様の嵩高性を備えさせることができなくなる。
【0022】なお、上記の斑測定のスペクトログラムは、ツェルベガー製ウスター斑試験器、タイプKET80Cでの測定値に基づくものである。Mat.Speed:200m/分、Eval.Time:1’00”、Mode:Normalで測定した結果を、横軸に斑波長、縦軸に各波長の斑の発生頻度を示した分布図において、2cm以上の波長成分の面積に対する2〜10cmの範囲内の波長成分の面積の比率でもって、2cm以上の波長成分に対する2〜10cmの波長成分の割合を算出する。つまり図4において、2cm以上の波長成分の全体の面積Sに対する2〜10cmの波長成分の面積ΔSの比率により、2cm以上の波長成分に対する2〜10cmの波長成分の割合を算出する。
【0023】又、ウスターU%値は、Normalで測定した値である。そしてこれらの各測定値は、上記のポリエステル配向多繊未延伸糸の複屈折率(Δn)のときと同様に、同種のポリエステルシック&シンマルチフィラメント1を10個取り出し、各1回測定したときの平均値である。
【0024】更に、ポリエステルシック&シンマルチフィラメント1は72本以上のモノフィラメントの集合体であることが必要であり、これによって紡績糸に特有の丸みのある糸断面形状に近似する糸断面形状の仮撚加工糸にすることができる。
【0025】本発明の仮撚加工糸の製造方法は、以上の構成によるシック&シンマルチフィラメント1を、下記の(1) 〜(3) の条件を満足するようにして仮撚加工することからなる。
【0026】
20×103 /√D≦Tw≦30×103 /√D・・・・(1) 延伸倍率1.00以下・・・・・・・・(2) Tm=k・Δn1/6 、(但し269≦k≦326)・・・・(3) [式中、Dは仮撚加工時のシック&シンマルチフィラメントの繊度(デニール)を表わし、Twは該マルチフィラメントの1m当たりの仮撚数を表わし、Tmは該マルチフィラメントの仮撚温度(℃)を表わす。]
【0027】つまり、仮撚加工工程における第1の条件は、ポリエステルシック&シンマルチフィラメントに対する加撚具4による仮撚数Twと、仮撚加工時のシック&シンマルチフィラメントの繊度(デニール)D、すなわち(供給糸1の繊度d(デニール)/フィードローラ2とデリベリローラ5との間の延伸倍率)で表示される仮撚加工時のシック&シンマルチフィラメントの繊度(デニール)Dとの間に、20×103 /√D≦Tw≦30×103 /√Dの関係が成立するようにして仮撚することである。
【0028】このときに、仮撚数Twが20×103 /√Dよりも低くなると、得られる仮撚加工糸の捲縮度が低くなりすぎるために、紡績糸様の適度な嵩高性を備えさせることができなくなると共に、巻き取り性も悪くなる。又仮撚数Twが30×103 /√Dよりも多くなると、マイグレーションを補正するようになってしまうため、従来の仮撚加工糸程度の嵩高性しか得られなくなる。
【0029】仮撚加工工程における第2の条件は、仮撚時の延伸倍率を1.00以下にすることである。これによって、供給糸であるポリエステルシック&シンマルチフィラメント1に存在しているシック部をできるだけ延伸させないで仮撚加工することができ、この結果マイグレーションをより向上させることができる。この仮撚時の延伸倍率は、図3における「デリベリローラ5の周速/フィードローラ2の周速」によって表示される。
【0030】より詳細に説明すると、ポリエステルシック&シンマルチフィラメントのシック部の見掛けの軟化温度は、このシック&シンマルチフィラメント1を得る際に利用したポリエステル配向多繊未延伸糸の複屈折率(Δn)に依存する。このために、複屈折率(Δn)の低いポリエステル配向多繊未延伸糸から得られたポリエステルシック&シンマルチフィラメントを仮撚加工するときには、仮撚加工時の加撚張力が低くなるので、比較的高い延伸倍率を採用せざるを得なくなる。
【0031】しかしながら、複屈折率(Δn)の高いポリエステル配向多繊未延伸糸から得られたポリエステルシック&シンマルチフィラメント1を仮撚加工するときには、仮撚加工時の加撚張力が高くなるので、比較的低い延伸倍率を採用することができる。従って、糸切れの発生しない範囲で、できるだけ低い延伸倍率による仮撚加工を行なうようにして、マイグレーションをより向上させることが好ましい。
【0032】仮撚加工工程における第3の条件は、ポリエステルシック&シンマルチフィラメントの仮撚温度Tmとポリエステルシック&シンマルチフィラメント1を得るときに使用したポリエステル配向多繊未延伸糸の複屈折率(Δn)との間に、Tm=k・Δn1/6 (但し269≦k≦326)の関係が成立するようにして仮撚することである。
【0033】ポリエステルシック&シンマルチフィラメントの仮撚温度(℃)Tmが269・Δn1/6 よりも低くなると、ポリエステルフィラメントに対しての堅牢性のある捲縮の付与が不十分になり、又仮撚温度Tm(℃)が326・Δn1/6 を超えると、仮撚時の加撚張力が過度に低下してしまい、糸切れの頻発に繋るだけでなく、シック部に融着が発生し易くなり、紡績糸様の仮撚加工糸が得られなくなる。
【0034】
【実施例】以下、本発明の紡績糸様の仮撚加工糸及びその製造方法の具体的な構成を、製造実施例を以って説明する。
【0035】実施例1〜3、比較例1〜4紡糸速度1.5km/分のポリエチレンテレフタレートの紡糸を行なうことにより、フィラメント数72本、繊度195デニール、複屈折率(Δn)19×10-3のポリエステル配向多繊未延伸糸を得た。
【0036】次いで、上記のポリエステル配向多繊未延伸糸を、図5に示す延伸装置によって延伸し、スペクトログラムの10cm以下の波長成分が36%、ウスターU%値が0.52、繊度が101デニールのポリエステルシック&シンマルチフィラメントを得た。なお、上記のポリエステル配向多繊未延伸糸の延伸は、図5において、フィードローラ10から供給したポリエステル配向多繊未延伸糸11を、ピンチローラ12、熱ローラ13、熱板14、ドローローラ15、及びワインダ−16からなる延撚機によって、延伸倍率1.94、熱ローラ13の温度95℃、熱板14の温度120℃、ワインダ−16の巻き取り速度600m/分により、行なった。
【0037】続いて、このポリエステルシック&シンマルチフィラメントを、仮撚機「三菱重工 (株) :LS6型」を使用して、Tw=2985、及び1990、延伸倍率1.00、巻き取り速度=110m/分、及び下記の表1に示す熱板の温度での仮撚加工に付し、仮撚加工糸を得た。
【0038】なお、本例においては、20×103 /√D=1990であり、30×103/√D=2985である。又、269×Δn1/6 =139であり、329×Δn1/6 =170である。
【0039】得られた仮撚加工糸による天竺編み地を、分散染料「DIANIX−ACE」により130℃で染色し、染色後の編み地を官能テストすることによって仮撚加工糸の紡績糸様の風合いを判定した。結果を表1に併記する。なお表1において、○・・・・紡績糸様の風合いがある、△・・・・紡績糸様の風合いが多少はあるが、十分ではない、×・・・・紡績糸様の風合いが無いを示す。又、仮撚数Twが2985であっても、1990であっても、仮撚加工糸の紡績糸様の風合いの判定結果は同じであった。
【0040】
【表1】

【0041】実施例4〜6、比較例5〜8紡糸速度2.0km/分のポリエチレンテレフタレートの紡糸を行なうことにより、フィラメント数72本、繊度195デニール、複屈折率(Δn)31×10-3のポリエステル配向多繊未延伸糸を得た。
【0042】次いで、上記のポリエステル配向多繊未延伸糸を、実施例1に使用したものとと同じ延撚機により、延伸倍率1.35、熱ローラ13の温度95℃、熱板14の温度120℃、ワインダ−16の巻き取り速度600m/分の延伸に付し、スペクトログラムの10cm以下の波長成分が36%、ウスターU%値が0.86、繊度が101デニールのポリエステルシック&シンマルチフィラメントを得た。
【0043】続いて、このポリエステルシック&シンマルチフィラメントを、仮撚機「三菱重工 (株) :LS6型」を使用して、Tw=2985、及び1990、延伸倍率1.00、巻き取り速度=110m/分、及び下記の表2に示す熱板の温度での仮撚加工に付し、仮撚加工糸を得た。
【0044】なお、本例においては、20×103 /√D=1990であり、30×103/√D=2985である。又、269×Δn1/6 =150であり、329×Δn1/6 =184である。
【0045】得られた仮撚加工糸による天竺編み地を、実施例1と同様にして染色し、染色後の編み地を官能テストすることによって仮撚加工糸の紡績糸様の風合いを判定した。結果を表2に併記する。なお、仮撚数Twが2985であっても、1990であっても、仮撚加工糸の紡績糸様の風合いの判定結果は同じであった。
【0046】
【表2】

【0047】実施例7〜9、比較例9〜13紡糸速度2.5km/分のポリエチレンテレフタレートの紡糸を行なうことにより、フィラメント数72本、繊度150デニール、複屈折率(Δn)46×10-3のポリエステル配向多繊未延伸糸を得た。
【0048】次いで、上記のポリエステル配向多繊未延伸糸を、実施例1に使用したものとと同じ延撚機により、延伸倍率1.45、熱ローラ13の温度95℃、熱板14の温度120℃、ワインダ−16の巻き取り速度600m/分の延伸に付し、スペクトログラムの10cm以下の波長成分が32%、ウスターU%値が1.02、繊度101デニールのポリエステルシック&シンマルチフィラメントを得た。
【0049】続いて、このポリエステルシック&シンマルチフィラメントを、仮撚機「三菱重工 (株) :LS6型」を使用して、Tw=2985、及び1990、延伸倍率0.97、巻き取り速度=100m/分、及び下記の表3に示す熱板の温度での仮撚加工に付し、仮撚加工糸を得た。
【0050】なお、本例においては、20×103 /√D=1960であり、30×103/√D=2934である。又、269×Δn1/6 =161であり、329×Δn1/6 =197である。
【0051】得られた仮撚加工糸による天竺編み地を、実施例1と同様にして染色し、染色後の編み地を官能テストすることによって仮撚加工糸の紡績糸様の風合いを判定した。結果を表3に併記する。なお、仮撚数Twが2985であっても、1990であっても、仮撚加工糸の紡績糸様の風合いの判定結果は同じであった。
【0052】
【表3】

【0053】比較例14紡糸速度1.6km/分のポリエチレンテレフタレートの紡糸を行なうことにより、フィラメント数36本、繊度193デニール、複屈折率(Δn)19×10-3のポリエステル配向多繊未延伸糸を得た。
【0054】次いで、上記のポリエステル配向多繊未延伸糸を、実施例1に使用したものとと同じ延撚機により、延伸倍率1.95、熱ローラ13の温度85℃、熱板14の温度120℃、ワインダ−16の巻き取り速度600m/分の延伸に付し、スペクトログラムの10cm以下の波長成分が37%、ウスターU%値が0.83、繊度が99デニールのポリエステルシック&シンマルチフィラメントを得た。
【0055】続いて、このポリエステルシック&シンマルチフィラメントを、仮撚機「三菱重工 (株) :LS6型」を使用して、Tw=2500、延伸倍率1.00、巻き取り速度=110m/分、及び130℃、140℃、150℃、160℃、170℃、180℃、190℃の熱板の温度での仮撚加工に付し、仮撚加工糸を得た。得られた仮撚加工糸の風合いは粗硬であり、糸断面は丸みに欠けるものであった。
【0056】なお、本例においては、20×103 /√D=2010であり、30×103/√D=3015である。又、269×Δn1/6 =139であり、329×Δn1/6 =170である。
【0057】比較例15〜20紡糸速度1.4km/分のポリエチレンテレフタレートの紡糸を行なうことにより、フィラメント数72本、繊度210デニール、複屈折率(Δn)15×10-3のポリエステル配向多繊未延伸糸を得た。
【0058】次いで、上記のポリエステル配向多繊未延伸糸を、実施例1に使用したものとと同じ延撚機により、延伸倍率2.08、熱ローラ13の温度85℃、熱板14の温度120℃、ワインダ−16の巻き取り速度600m/分の延伸に付し、スペクトログラムの10cm以下の波長成分が38%、ウスターU%値が0.94、繊度が102デニールのポリエステルシック&シンマルチフィラメントを得た。
【0059】続いて、このポリエステルシック&シンマルチフィラメントを、仮撚機「三菱重工 (株) :LS6型」を使用して、Tw=2500、延伸倍率1.00、巻き取り速度=110m/分、及び下記の表5に示す熱板の温度での仮撚加工に付し、仮撚加工糸を得た。
【0060】なお、本例においては、20×103 /√D=1980であり、30×103/√D=2970である。又、269×Δn1/6 =134であり、329×Δn1/6 =163である。
【0061】得られた仮撚加工糸による天竺編み地を、実施例1と同様にして染色し、染色後の編み地を官能テストすることにより仮撚加工糸の紡績糸様の風合いを判定した。結果を表4に併記する。
【0062】
【表4】

【0063】比較例21〜26紡糸速度2.5km/分のポリエチレンテレフタレートの紡糸を行なうことにより、フィラメント数72本、繊度150デニール、複屈折率(Δn)46×10-3のポリエステル配向多繊未延伸糸を得た。
【0064】次いで、上記のポリエステル配向多繊未延伸糸を、実施例1に使用したものとと同じ延撚機により、延伸倍率1.45、熱ローラ13の温度75℃、熱板14の温度120℃、ワインダ−16の巻き取り速度600m/分の延伸に付し、スペクトログラムの10cm以下の波長成分が34%、ウスターU%値が1.12、繊度が103デニールのポリエステルシック&シンマルチフィラメントを得た。
【0065】続いて、このポリエステルシック&シンマルチフィラメントを、仮撚機「三菱重工 (株) :LS6型」を使用して、Tw=2500、延伸倍率0.75、巻き取り速度=110m/分、及び下記の表6に示す熱板の温度での仮撚加工に付し、仮撚加工糸を得た。
【0066】なお、本例においては、20×103 /√D=1707であり、30×103/√D=2560である。又、269×Δn1/6 =161であり、329×Δn1/6 =197である。
【0067】得られた仮撚加工糸は、シック&シンマルチフィラメント糸の典型である糸の長さ方向に強い濃淡のあるスラブ状をなすものであり、淡色部はシック部が散在したものになっており、マイグレーションが極めて弱い部分が多く存在したものになった。
【0068】又、得られた仮撚加工糸による天竺編み地を、実施例1と同様にして染色し、染色後の編み地を官能テストすることにより仮撚加工糸の紡績糸様の風合いを判定した。結果を表5に併記する。
【0069】
【表5】

【0070】比較例27〜32紡糸速度2.5km/分のポリエチレンテレフタレートの紡糸を行なうことにより、フィラメント数72本、繊度113デニール、複屈折率(Δn)52×10-3のポリエステル配向多繊未延伸糸を得た。
【0071】次いで、上記のポリエステル配向多繊未延伸糸を、実施例1に使用したものとと同じ延撚機により、延伸倍率1.13、熱ローラ13の温度95℃、熱板14の温度120℃、ワインダ−16の巻き取り速度600m/分の延伸に付し、スペクトログラムの10cm以下の波長成分が34%、ウスターU%値が1.02、繊度が98デニールのポリエステルシック&シンマルチフィラメントを得た。
【0072】続いて、このポリエステルシック&シンマルチフィラメントを、仮撚機「三菱重工 (株) :LS6型」を使用して、Tw=2500、延伸倍率0.75、巻き取り速度=110m/分、及び下記の表7に示す熱板の温度での仮撚加工に付し、仮撚加工糸を得た。
【0073】なお、本例においては、20×103 /√D=1750であり、30×103/√D=2624である。又、269×Δn1/6 =164であり、329×Δn1/6 =201である。得られた仮撚加工糸は嵩高性はあるものの、仮撚加工に付したポリエステルシック&シンマルチフィラメントのシック部の配向が高く、仮撚加工時の加撚応力による延伸がマイグレーションを生じさせる水準まで達しなかったため、紡績糸様の風合いの嵩高性のものにはならなかった。
【0074】又、得られた仮撚加工糸による天竺編み地を、実施例1と同様にして染色し、染色後の編み地を官能テストすることにより仮撚加工糸の紡績糸様の風合いを判定した。結果を表6に併記する。
【0075】
【表6】

【0076】比較例33実施例1で使用したものと同じポリエステルシック&シンマルチフィラメントを、仮撚機「三菱重工 (株) :LS6型」を使用して、Tw=1880、延伸倍率1.00、巻き取り速度=110m/分、及び140℃、150℃、160℃、170℃の熱板の温度での仮撚加工に付し、仮撚加工糸を得た。得られた仮撚加工糸はいずれも捲縮度が低く、嵩高性のあるものにはならなかった。
【0077】比較例34実施例1で使用したものと同じポリエステルシック&シンマルチフィラメントを、仮撚機「三菱重工 (株) :LS6型」を使用して、Tw=3200、延伸倍率1.00、巻き取り速度=110m/分、及び140℃、150℃、160℃、170℃の熱板の温度での仮撚加工に付し、仮撚加工糸を得た。得られた仮撚加工糸にはいずれも均一な捲縮が付与されているだけであり、従来の仮撚加工糸程度の嵩高性のものであった。
【0078】
【発明の効果】本発明の紡績糸様の仮撚加工糸は、フィラメント数が72本以上のポリエステルシック&シンマルチフィラメントの仮撚加工糸であって、該仮撚加工糸を形成している各々のモノフィラメントのシック部が不規則に捲縮しており、又該モノフィラメントのシン部が規則的に捲縮しているものであり、その好適なものは仮撚加工糸を形成する各々のモノフィラメント同士の間に実質的な融着が存在していないものである。
【0079】上記の構成による本発明の仮撚加工糸は、紡績糸に特有の適度な嵩高性と同様な嵩高性を備えており、又同じく紡績糸に特有の丸みのある糸断面形状を有するものであり、これを使用した各種の布帛には紡績糸による布帛と同様の風合いが具備されることから、実用性の面での利用価値の高いものである。
【0080】又、本発明の紡績糸様の仮撚加工糸の製造方法は、19×10-3〜80×10-3の複屈折率(Δn)を有するポリエステル配向多繊未延伸糸を延伸することによって、斑測定のスペクトログラムにおいて、2cm以上の波長成分に対する2〜10cmの波長成分の割合が32%以上であり、ウスターU%値が0.52〜1.02の範囲内であり、かつフィラメント数が72本以上のシック&シンマルチフィラメントを得た後、該シック&シンマルチフィラメントを下記の(1) 〜(3) の条件を満足するようにして仮撚加工するものである。
【0081】
20×103 /√D≦Tw≦30×103 /√D・・・・(1) 延伸倍率1.00以下・・・・・・・・(2) Tm=k・Δn1/6 、(但し269≦k≦326)・・・・(3) [式中、Dは仮撚加工時のシック&シンマルチフィラメントの繊度(デニール)を表わし、Twは該マルチフィラメントの1m当たりの仮撚数を表わし、Tmは該マルチフィラメントの仮撚温度(℃)を表わす。]
【0082】しかして、上記の構成による本発明の仮撚加工糸の製造方法によれば、紡績糸に特有の適度な嵩高性と同様な嵩高性を備えており、又同じく紡績糸に特有の丸みのある糸断面形状を有する仮撚加工糸を、従来の仮撚加工糸の製造に使用していた仮撚機と同一に仮撚機を使用して製造することができ、しかも容易かつ確実に得ることができる。
【0083】
【出願人】 【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱レイヨン株式会社
【出願日】 平成9年(1997)2月28日
【代理人】
【公開番号】 特開平10−245736
【公開日】 平成10年(1998)9月14日
【出願番号】 特願平9−45548