トップ :: D 繊維 紙 :: D02 糸;糸またはロ−プの機械的な仕上げ;整経またはビ−ム巻き取り

【発明の名称】 ポリエステル末延伸糸から製造されたギヤ−賦型偏平加工糸及びその製造方法
【発明者】 【氏名】土岐 昌久
【課題】繊維構造の記憶性が良好で、割繊しにくく、偏平性の維持に優れ、且つ、品質変動が小さく、光沢、風合い、軽量感に優れたギヤー賦型加工糸を提供する。

【解決手段】複数本のポリエステルフィラメントaから成る特定物性のポリエステル未延伸糸特にPOYより製造された偏平な糸断面形状を有する加工糸で、繊維長方向に一定ピッチで熱融着部bと非熱融着部cが交互に形成され、熱融着部bにおいては加工糸を構成するフィラメントが互いに融着しているが、非熱融着部cにおいては各フィラメントは互いに融着していない状態で配列しており、しかも、非熱融着部cには、加工糸の繊維長方向を横切る方向に、ギヤー賦型によって形成された折目dが設けられ、折目dによって加工糸全体が蛇腹状になっている特定物性を有するギヤー賦型偏平加工糸及びその製法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数本のポリエステルフィラメントから成るポリエステル未延伸糸より製造された、偏平な糸断面形状を有する加工糸であって、前記加工糸には、繊維長方向に一定ピッチで熱融着部と非熱融着部が交互に形成されており、前記熱融着部においては、当該加工糸を構成するフィラメントが互いに融着しているが、非熱融着部においては、各フィラメントは互いに融着していない状態で配列しており、しかも、前記非熱融着部には、該加工糸の繊維長方向を横切る方向に、ギヤー賦型によって形成された折目が設けられており、前記折目によって加工糸全体が蛇腹状になっていることを特徴とするギヤー賦型偏平加工糸。
【請求項2】 前記加工糸が、複屈折率△n=85〜130X10-3、密度ρ=1.36〜1.38g/cm3、破断伸度35〜60%で且つ残留沸水収縮率8.0〜15.5%の物性をもつものであることを特徹とする、請求項1記載のギヤー賦型偏平加工糸。
【請求項3】 複数本のポリエステルフィラメントから成るとともにポリエステル未延伸糸よりなる加工原糸を、当該ポリエステル未延伸糸の融点以下の温度に加熱した後、加熱していない2つの賦型ギヤー間を通過させて、糸の偏平化及びギヤークリンプ性状の形態付与を行うと同時に、前記ポリエステル未延伸糸を構成する各フィラメントを部分的に熱融着させ、繊維長方向に、前記賦型ギヤーのギヤーピッチに対応するピッチで熱融着部を形成することを特徴とする、ギヤー賦型偏平加工糸の製造方法。
【請求項4】 加熱を行う前に、前記ポリエステル未延伸糸を予め加撚することを特徴とする、請求項3記載のギヤー賦型偏平加工糸の製造方法。
【請求項5】 前記加工原糸として、前記ポリエステル未延伸糸が混合比率60%以上を占め、かつ、該ポリエステル未延伸糸の融点以上の熱特性を有する天然繊維又は化学繊維が混合比率40%未満となるように予め交撚処理されたものを使用し、ギヤー賦型偏平加工後のポリエステル未延伸糸の物性が、複屈折率△n=85〜130X10-3、密度ρ=1.36〜1.38g/cm3、破断伸度35〜60%で且つ残留沸水収縮率8.0〜15.5%となるようにすることを特徹とする、請求項3又は4記載のギヤー賦型偏平加工糸の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリエステル未延伸糸を基材とする賦型偏平加工糸、及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】これまでに、フィラメントを加圧ギヤー間を通過させて集束させると同時にクリンプ偏平性状を付与して加工糸を製造するギヤー賦型加工が知られている。しかしながら、これまでに知られているギヤー賦型加工法は、溶剤付与された集団給糸方式による給糸繊維(適用繊維は主として、アクリル長繊維)を、加熱、加圧ギヤー間に瞬時に通過させてクリンプ偏平性状を付与する物理化学溶着賦型一体方式であるので、繊維構造とギヤークリンプの規定が同時に行われ、このために、溶剤付着斑、ギヤーロール幅方向温度斑、圧力変動の影響から品質変動(特に染色性、接着斑による風合変動)が大きく、又、糸切れ時の復旧が困難である等問題が多かった。更に、従来の加工方法の場合には、給糸性状が、下撚20T/m程度の原糸パーンに限定されることで、隣糸交絡の為、毛羽、ループ、トルク糸の加工ができず、細繊度糸の加工も品質、価格、操業上の問題から困難であり、ファインな製品化が非常に困難であるという問題点もあった。
【0003】又、このような従来のギヤー賦型加工法によって製造される加工糸の場合、ギヤークリンプ堅牢性の点で、アクリル基質面より熱セット性不良で本質的な記憶性が乏しく、偏平性の維持の点では、溶剤、膨潤剤を介しての物理的接着の為、外力で割繊し易く、染色性、糸風合の均一性の点では、集団加工方式であるために、熱圧ギヤー幅方向で温度、圧力変動が大きく、個別調整が不能であり、アクリル基質面からも製品の品質変動が大きいという欠点があった。更に、製品化上の特徴として、上述の均斉性不良の面から少給糸横編分野及びプリント下地としての丸編展開例があるのみで適応用途が狭く、加工糸の残留伸度が低く、概して、製品風合は擬麻的粗硬な風合のものしか得られない。その上、適用繊維自体が高価格であり、加工歩留りの面から、加工糸価格を安く設定できない等の問題点もあった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述の従来のギヤー賦型加工糸における問題点を解決し、繊維構造の記憶性が良好で、割繊しにくく、偏平性の維持に優れ、しかも、品質変動が小さく、光沢、風合い、軽量感に優れたギヤー賦型加工糸を提供することを課題とする。又、このような優れた特性を有するギヤー賦型加工糸を製造することが可能な製造方法を提供することも、本発明の課題である。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者は、従来法による集団給糸方式によって得られるギヤー賦型偏平加工糸の不安定品質の改善を図ると共に、給糸繊維の種類の拡大化を図ることによって用途分野の拡張を志向し、安価で上市可能な手法として汎用性の高いポリエステル未延伸糸の適用に着目し、これを原材料とする個別給糸方式によるギヤー賦型偏平加工糸の製造技術を確立した。又、本発明においては、加工原糸として、複数本のポリエステルフィラメントから成るポリエステル未延伸糸で、複屈折率△n=5〜135X10-3、密度ρ=1.34〜1.37g/cm3、破断伸度10〜180%、沸水収縮率40〜60%のものを採択するとよい。更に、本発明においては、ポリエステル未延伸糸の中でも高配向未延伸糸(POY)を用いることが好ましい。そして、当該POYの複屈折率△nは30〜80X10-3好ましくは40〜60X10-3である。
【0006】本加工法の根幹をなす製造理念は、POYの比較的結晶化度配向姓の低い繊維構造を維持しつつ、熱融着による偏平形状の形成とギヤ−クリンプ付与を安定的且つ確実に行うことにより、繊維構造並びに繊維間の熱融着を規定し、しかも、低オーバーフイード給糸で且つ実効温度が給糸されるPOYの熱融点温度より低く設定された加熱領域と、非加熱圧着ギヤ−間を表面熱融着したPOYを通過させて、偏平化と同時にギヤ−クリンプ性状の形態付与を行う領域とを分離することによって、繊維構造の再配向並びに品質及び加工の安定化を達成した。
【0007】このような本発明の製造方法により得られる比較的低配向型繊維構造の加工糸は、一般的に最終二次製品の蒸熱仕上セットでの良好な型付けセットが困難とされてきたポリエステル繊維の横編分野においても充分適用可能であり、既存の布帛分野への適用はもちろん新たな進出分野を拓く差別化素材が完成した。本発明者による、種々上市されているポリエステル繊維未延伸糸を評価検討の結果、易セット性低配向型繊維構造物性としては、概ね、複屈折率△n=85〜130X10-3、密度ρ=1.36〜1.38g/cm3、残留沸水収縮率8.0〜15.5%、破断伸度35〜60%程度のものが好適であることが判明した。また、そのような加工糸を製造するのに適した原糸としては、複数本のポリエステルフィラメントから成るポリエステル未延伸糸で、複屈折率△n=5〜135X10-3、密度ρ=1.34〜1.37g/cm3、破断伸度10〜180%、沸水収縮率40〜60%であるものが好適であることも判明した。その上、かかる繊維構造を再構築する為のギヤー賦型偏平加工上の条件としては、後で述べるような適切な加工領域を選択し、加熱領域における実効温度及びオーバーフイード率(0.F.)等を適宜選択するとよいこともわかった。
【0008】
【発明の実施の形態】まず、本発明のギヤー賦型偏平加工糸について説明する。本発明のギヤー賦型偏平加工糸は、複数本のポリエステルフィラメントから成るポリエステル未延伸糸より製造された、偏平な糸断面形状を有する加工糸であつて、前記加工糸には、繊維長方向に一定ピッチで熱融着部と非熱融着部が交互に形成されており、前記熱融着部においては、該加工糸を構成するフィラメントが互いに融着しているが、非熱融着部においては、各フィラメントは互いに融着していない状態で配列しており、しかも、前記非熱融着部には、該加工糸の繊維長方向を横切る方向に、ギヤー賦型によって形成された折目が設けられており、前記折目によって加工糸全体が蛇腹状になっていることを特激とする。
【0009】又、本発明は、好ましい実施態様として、上記の特徴を有するギヤー賦型偏平加工糸にあっては、複屈折率△n=85〜130X10-3、密度ρ=1.36〜1.38g/cm3、破断伸度35〜60%で且つ残留沸水収縮率8.0〜15.5%の繊維物性を有するものであることを特徴とする。
【0010】図1は、本発明のギヤー賦型偏平加工糸の一例における外観及び横造を示す図であり、この加工糸は、複数本のポリエステルフィラメントaが横一線に並んだ偏平な糸断面形状を有しており、図1に示されるように、繊維長方向に一定ピッチで熱融着部bと非熱融着部cが交互に形成されている。この熱融着部bにおいては、各ポリエステルフィラメントは互いに熱融着しており、一方、非熱融着部cにおいては、各フィラメントは互いに融着していない状態で配列した状態となつている。本発明の加工糸における熱融着部bは、加熱された加工原糸が2つのギヤー間を通過することによるギヤー圧着により形成されたフイルム状となった部分である。更に、本発明の加工糸では、非熱融着部cに、繊維長方向を横切る方向にギヤー賦型によって形成された折目dが設けられており、非熱融着部cごとに山折りと谷折りが交互に繰り返された構造であることによって加工糸全体が蛇腹状になっている(図1参照)。
【0011】本発明では、最終的に得られる加工糸の物性として、上記のように、複屈折率△n=85〜130X10-3、密度ρ=1.36〜1.38g/cm3、破断伸度35〜60%で且つ残留沸水収縮率8.0〜15.5%であるものが好ましい。本発明によって得られる加工糸物性の適正領域の限定は特にポリエステル繊維の横編分野への適正賦与即ち先染加工糸を使用して作られる横編セ−タ−の最終型付の為のホフマンセット(常圧蒸熱処理)において良好な型付け効果を得ることにより当該加工糸の適正用途を効果的に拡大することが可能となる為、一般的なギヤ−加工性、加工糸性状、製品性に加えホフマンセット性の良否を加味し種々の加工条件の変更における加工糸物性を測定し設定したものである。 かかる観点より 加工糸における複屈折率△nが85X10-3未満では、得られた製品のホフマンセット性は良好なるも、粗硬の風合いのものとなり、ソフトドレ−プ性に難を生じ、衣料用途への適合性が不足し、また、糸加工時の加熱ヒ−タ−面への瞬間溶融糸切れや加熱ヒ−タ−面への溶融汚れが大となり、熱融着性大により偏平性状も大となるが、概して、破断伸度が低く、弱糸化傾向大につき後工程通過性に問題を生じ易い。一方、130X10-3を超えると、糸加工性は向上するものの、熱融着性が低く、後工程において割繊し易くなり、偏平性も少なく、嵩高性不足によるホフマンセット性不良で、意図した差別化効果が得難い。密度ρは上述の複屈折率と相関性大と考えられるが、密度ρが1.36g/cm3未満では、上述の複屈折率△nが85X10-3未満の場合と同様の現象を呈し、衣料用途への適合性のみならず、糸加工性、製品化上への障害が多く、採用し難い。一方、1.38g/cm3を超えると、一般的なポリエステル延伸糸と同様の繊維構造に近似してくる為か、複屈折率△nが130X10-3を超える場合と同様に、熱融着性が低く、後工程において割繊し易くなり、偏平性に欠け、嵩高性不足によるホフマンセット性不良で、意図した差別化効果が得難い。繊維構造と破断伸度や残留沸水収縮率等の糸物性との逆相関関係も顕著な傾向が認められる。破断伸度が35%未満では、熱融着性が低く、割繊し易くなり、偏平性欠如による嵩高性不良で、差別化効果が得難い。一方、60%を超えると、複屈折率△nが85X10-3未満の場合と同様、加工も難しく、衣料用途への適合性を欠如する。残留沸水収縮率については特に横編分野への先染加工工程(特に、チ−フ染色)を通過させる場合に重要な項目となる。即ち、残留沸水収縮率が高い加工糸を染色用の穴開きチュ−ブにてチーズ染色する場合最内層の糸層は収縮するスペ−スが限定される為、結果的にギヤ−クランプが伸ばされ収縮余力の高い最外層の糸に比べ著しくクリンプ性状を異とする為、光沢性、嵩高性、光沢異方性の変動を来し相当量の内層糸をカットロスとして除去しなければ均一性状の染糸が得られず、コスト的な影響が甚大となる。従って、残留沸水収縮率の設定は上述の物性項目とは異なった観点から設定した。残留沸水収縮率が8.0%未満では、繊維構造的に緻密な状態となり、ホフマンセット性を低下させることとなる。一方、15.5%を超えるときには、加工糸をチ−ズ染色する差異に、プレセットによる残留収縮の軽減化又は内層染め糸のカット除去ロスを招き、経済性を欠く。
【0012】本発明では、熱融着部bと非熱融着部cの面積比率は、加工原糸の加熱温度やギヤ−賦型の際に使用するギヤ−の種類によって適宜選択することができるが、一般的には1:2.0〜4.0程度が好ましい。又、繊維長方向における熱融着部bのピッチも加工糸の幅及び太さに応じて適宜選択されるが、1.0〜3.0mm程度が好ましい。1:2.0未満では、熱有着度が高く偏平性の維持は堅牢になるものの粗硬風合い、ドレ−プ性欠如等により衣料用途適合性に乏しくなる。一方、1:4.0を超えると、後工程通過性や製品着用時の割繊による風合い、外観、色相等の変動が大となる。当該容積比率の選択は、加熱温度、オ−バフィ−ド率、ギヤ−接圧並びにモジュ−ルピッチの異なるギヤ〜を選ぶことによっても容易に選択できる。
【0013】本発明の加工糸にあっては、ギヤークリンプ堅牢性の点で、ポリエステル基質面より再配向繊維構造の記憶性が良好であり、しかも、同質繊維同志がギヤー圧着によって熱融着した熱融着部が形成されているために堅牢で、偏平性の維持が良好である。しかも、染色性、糸風合の均一性の点においても、個別法の為、鍾間調整が容易で、ポリエステル基質、構造上からも均斉性が良好である。又、非熱融着部においては各フイラメント間が融着されていないので、加工糸の風合いが非常に良く、加工糸全体が非常に軽量感の有るものとなっている。更に、本発明の加工糸は、製品化上の特徴として、上述の特性に加え、残留沸水収縮率を適宜選択することにより、後染加工に適応可能なものとし、横編セーター等の布帛製品に広く利用できる。尚、本発明の加工糸は、偏平形状、クリンプ性状より外観光沢、軽量効果、ドライな清涼風合を生かしつつ、収縮効果による布帛の高密度化、しぼ効果等の応用が可能であり、医療用用途に特に適しているが、外衣衣料用途の他、インテリヤ、服飾用途にも展開可能である。又、本発明の加工糸の場合、残留伸度を適宜選択することによって低ヤング率でソフトドレープ性に優れた糸とすることも可能であり、加工糸の価格はポリエステル未延伸糸の適用により低価格化を達成することができるという利点もある。
【0014】次に、上述の繊維構造を有したギヤー賦型偏平加工糸を製造するための本発明の製造方法について説明する。本発明の製造方法は、加工原糸として、複数本のポリエステルフィラメントから成り、複屈折率△n=5〜135X10-3、密度ρ=1.34〜1.37g/cm3、破断伸度10〜180%、沸水収縮率40〜60%であるポリエステル未延伸糸好ましくはPOYを準備し、前記ポリエステル未延伸糸の融点以下の温度に加熱した後、加熱していない2つの賦型ギヤー間を通過させて、糸の偏平化及びギヤークリンプ性状の形態付与を行うと同時に、前記ポリエステル未延伸糸を構成する各フィラメントを部分的に熱融着させ、繊維長方向に、前記賦型ギヤーのギヤーピッチに対応するピッチで熱融着部を形成することを特徴とする。
【0015】図2には、本発明のギヤー賦型偏平加工糸の製造方法において使用される加工機の概略図が示されている。図2の符号1はポリエステル未延伸糸のチーズを示す。ところで、加熱処理を施す前のポリエステル未延伸糸の原糸状態での繊維構造では沸水収縮率が高く、染色堅牢度も低いために、このようなポリエステル未延伸糸は布帛を製造するのにはあまり適さない。個別クリールスタンド2から個別給糸された加工原糸は、ヤ−ンカッタ−3、フイ−ドロ−ラ−4を経て、加熱ヒ一ター5へ送られる。この加熱ヒ一ター5において、加工原糸を、該加工原糸を構成するポリエステルフィラメントの融点以下の温度に加熱し、加熱していない2つの賦型ギヤ−6間を通過させて、糸を偏平化させ、ギヤ−クリンプ性状の形態付与を行う。図2において、符号7はギヤ−接圧調整ウェイトであり、ギヤ−賦型偏平加工された加工糸は、その後、水冷式冷却装置8にて冷却され、繊維形態がセットされる。本発明の製法では2つの賦型ギヤ−6を加熱せずにギヤ−賦型偏平加工を行うことで、加熱を行う場合に比べて糸切れ率が改良される。
【0016】本発明の製法では、糸の偏平化及びギヤ−クリンプ性状の形態付与と同時に、賦型ギヤー6間を通過する際の接圧によって、加工原糸を構成する複数本のフィラメントが一定ピッチで部分的に熱融着し、繊維長方向に、賦型ギヤ−のギヤ−ピッチに対応する間隔で熱融着部が形成され、図1のように、熱融着部と非熱融着部が交互に形成され、しかも、非熱融着部に形成された折目によって加工糸全体が蛇腹状になったギヤ−賦型偏平加工糸が得られる。本発明では、このように、加熱処理による繊維構造再配列と非加熱ギヤ−によるギヤークリンプ賦型を分離して行っているために、ポリエステル未延伸糸を構成するフイラメント間が一定ピッチで部分的に熱融着した糸は、偏平形状とギヤー捲縮形状を兼備している。そして、冷却後の加工糸は、糸切れセンサー9、送出しローラー10を経て加工糸チ−ズ12に成形される。図2の符号11は捲取用ドラムである。
【0017】このように、本発明のギヤ−賦型偏平加工糸の製造方法は、加工給糸方式が個別給糸単体加工であり、偏平化クリンプ付与方式としては、加熱領域で繊維構造を規定し、非加熱ギヤ−圧着通過による熱融着及びクリンプ偏平性状の付与を行なう熱融着賦型分離方式を採用している。又、本発明の製法における給糸の性状としては、無撚糸、エアー交絡糸、追撚糸等が広範囲に適用でき、本発明の製法は、熱融着性を有する合成繊維全般に適用することができるものである。
【0018】尚、本発明では、上記の製法において、加熱を行う前に、前記ポリエステル未延伸糸を予め加撚することが好ましく、このような加撚を行った場合には、熱融着型偏平ギヤー賦型を施した後の編織工程における工程通過性が改善され、しかも、割繊による風合の変動を抑制することができる。又、本発明の製法により得られた加工糸を編繊工程に適したものとし、偏平性ギヤークリンプ性状の維持保全を確実にし集束性を向上せしめ、割織による風合変動を極少にする為に、水冷方式による強制クーリング給糸されるポリエステル未延伸糸の追撚を行うことも有効である。
【0019】更に本発明では、加工原糸として、前記ポリエステル未延伸糸が混合比率60%以上を占め、かつ、該ポリエステル未延伸糸の融点以上の熱特性(融点)を有する天然繊維又は化学繊維が混合比率40%未満となるように予め交撚処理されたものを使用しても良く、このような混合比率の加工原糸となるように、交撚又はエアー交絡等の手法を用いて給糸を行い、上述の熱融着によって相互に分離現象の少ないギヤー賦型偏平復合化加工糸を得ることができる。本発明では、このギヤー賦型偏平復合化加工糸の繊維構造を、前記のように、複屈折率△n=85〜130X10-3、密度ρ=1.36〜1.38g/cm3、破断伸度35〜60%で且つ残留沸水収縮率8.0〜15.5%とすることが好ましく、このようにして製造される上記繊維構造の複合化加工糸は、加工されたポリエステル未延伸糸と混合繊維との分離現象が極めて少なく、複合機能性の保持が図られ、付加価値の高い製品となる。
【0020】以下、本発明の製造方法における加工適正領域とこの領域外における異常現象について説明する。尚、以下の適正領域は、いずれも適用繊維として、POY(複屈折率△n=51.6X10-3、密度ρ=1.3405g/cm3、破断伸度150%、沸水収縮率60.3%)235D/36Fを使用し、他の条件は適正領域を採択した時のものであり、本発明の製法における各加工条件の適正範囲はこれに限定されるものではなく、適用する繊維に応じて最適条件が適宜決定される。
1.追撚数(T/m)
追撚数の適正領域は50〜150T/mであり、50T/m未満では、偏平性は良好であるが割繊性不良となる傾向があり、逆に、150T/mを越えると、コストが高くなり、トルクにより糸掛性、偏平性が不良となり、風合が硬化する傾向となる。
2.オーバーフイード率(%)
オーバーフイード率(O.F)の適正領域は+10〜−20%であり、+10%未満では、ヒータ面での糸の踊りが発生し、染色性融着が変動し、糸切れが起こり易くなる傾向があり、逆に、−20%を越えると、熱融着性、偏平性が不良となり、二次製品の易セット性が不良となり、毛羽、糸切れが多発する傾向となる。
3.ヒータ温度(℃)
適正領域は210〜240℃であり、210℃未満では、熱融着性、ソフト風合、偏平性が不良となる傾向があり、逆に、240℃を越えると、糸掛けが困難となり、風合が粗硬なものとなり、ヒータ、ギヤーの汚れが大きく、二次製品の易セット性が不良となる傾向がある。
4.ギヤー接圧(g/cm2d)
適正領域は2.0〜3.5g/cm2dであり、2.0g/cm2d未満では、偏平性、融着性、クリンプ堅牢性が不良となる傾向があり、逆に、3.5g/cm2dを越えると、糸掛けが困難となり、結び目が通過できなくなる。
5.糸速(m/min)
適正領域は40〜75m/minであり、40m/min未満では、生産性が低下し、風合が粗硬なものとなる傾向かあり、逆に、75m/minを越えると、加工性が悪くなり、糸切れや捲付きが発生し易く、偏平性、融着性が不良となる傾向となる。
【0021】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいて更に説明する。尚、以下の例における測定方法は次の通りである。
(1)複屈折率△n:JIS L1013、(2)密度ρ:JIS L1013、(3)破断伸度:JIS L1013 7.5、(4)沸水収縮率:JIS L1013 7.15熱水収縮率A法、【0022】実施例1図1に示される構造の装置を用いて、下記の加工条件にてギヤー賦形加工を行い、本発明の加工糸を得た。
適用繊維:ポリエステル未延伸糸 235D/36F Bri追撚なし
加工糸の性状:幅1.3m/m、厚さ0.1m/m複屈折率△n=95X10-3、密度ρ=1.3685g/cm3、破断伸度=46.8%、残留沸水収縮率=13.6%、偏平状熱融着部ピッチ=1.15mm、偏平状熱融着部容積:繊維状表面融着部容積(約)=30:70上記により、広幅で融着性の高いシャリ感のある軽量化に優れ、光沢、外観変化に富んだ本発明の加工糸が得られた。
【0023】実施例2下記の加工条件により、ギヤー賦形加工を行い、本発明の加工糸を得た。
適用繊維=ポリエステル未延伸糸 235D/48×2本合撚糸
加工糸の性状:幅1.8m/m、厚さ0.18m/m複屈折率△n=130X10-3、密度ρ=1.3775g/cm3、破断伸度=33.9%、残留沸水収縮率=9.1%、偏平状熱融着部ピッチ=1.3mm、偏平状熱融着部容積:繊維状表面融着部容積(約)=20:80上記の加工条件により、ソフトでドライな風合で広幅効果による嵩高な外観、光沢に優れた製品が得られた。
【0024】実施例3下記の加工条件により、ギヤー賦形加工を行い、本発明の加工糸を得た。
適用繊維:ポリエステル未延伸糸 235D/36FXトリアセテ−ト55D 交撚糸
加工糸の性状:幅1.6m/m、厚さ0.2m/m複屈折率△n=88X10-3、密度ρ=1.3628g/cm3、破断伸度=52.3%、残留沸水収縮率=14.8%、偏平状熱融着部ピッチ=1.12mm、偏平状熱融着部容積:繊維状表面融着部容積(約)=35:65上記の加工条件により、表面上トリアセテートが若干浮いた状態でポリエステルの融着糸中より突出するも、分離現象の少ないギヤー賦型の効果に加え、ループ性状を呈した外観、風合、光沢性に差別化効果が認められた。
【0025】比較例下記の加工条件により、ギヤー賦形加工を行い、加工糸を得た。
適用繊維:ポリエステル延伸糸(複屈折率△n=153.9X10-3、密度ρ=1.3694g/cm3、破断伸度28,4%、沸水収縮率9.3%)
110D/36FX3本合撚糸
加工糸の性状:幅1.7m/m、厚さ0.18m/m複屈折率△n=93X10-3、密度ρ=1.3652g/cm3、破断伸度=41.3%、残留沸水収縮率=12.3%、偏平状熱融着部ピッチ=1.1mm、偏平状熱融着部容積:繊維状表面融着部容積(約)=34:66ポリエステル延伸糸を使用することで、高熱処理化、構造緩和を図ったが、糸掛性が困難であり、ポリエステル未延伸糸のものとほぼ類似のものしか得られなかった。
【0026】
【発明の効果】本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、下記のとおりである。すなわち、本発明によれば、従来のギヤー賦型加工糸における問題点を解決し、繊維構造の記憶性が良好で、割繊しにくく、偏平性の維持に優れ、しかも、品質変動が小さく、光沢、風合い、軽量感に優れたギヤー賦型加工糸を提供することができ、又、このような優れた特性を有するギヤー賦型加工糸を製造する方法を確立することができた。
【出願人】 【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱レイヨン株式会社
【識別番号】597028209
【氏名又は名称】土岐 昌久
【出願日】 平成9年(1997)2月14日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 良博
【公開番号】 特開平10−226937
【公開日】 平成10年(1998)8月25日
【出願番号】 特願平9−44874