トップ :: D 繊維 紙 :: D02 糸;糸またはロ−プの機械的な仕上げ;整経またはビ−ム巻き取り

【発明の名称】 構造加工糸
【発明者】 【氏名】高橋 一之
【氏名】手島 宏一
【氏名】四衢 晋
【氏名】久永 秀夫
【課題】繊度、色相、捲縮状態、絡合状態、光沢等の点で変化に富んでいる構造加工糸であって、外観、風合、色相、艶、触感等の点で従来に新しい感覚を有し意匠性に優れ且つ高級感のある織編物等を得ることのできる構造加工糸の提供、並びに前記した構造加工糸を簡単な工程及び装置を用いて円滑に製造する方法の提供。

【解決手段】切断された糸と切断されていない糸とが絡んでいる部分と切断されていない糸のみが絡んでいる部分を糸の長さ方向に不規則なピッチで有する本発明の構造加工糸、並びに2以上の糸を絡み合わせて形成した絡合糸に対して張力を付加して絡合糸を構成する糸の一部を切断させることによって前記の構造加工糸を製造する本発明の方法によって上記の課題が解決される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 切断された糸と切断されていない糸とが絡んでいる部分と、切断されていない糸のみが絡んでいる部分を、糸の長さ方向に不規則なピッチで有することを特徴とする構造加工糸。
【請求項2】 糸の長さ方向に沿って、繊度、色相、捲縮状態、絡合状態および光沢のうちのいずれか1つまたは2つ以上が少なくとも不規則になっている請求項1の構造加工糸。
【請求項3】 2以上の糸を絡み合わせて形成した絡合糸に対して張力を付加して、絡合糸を構成する糸の一部を切断させることによって、切断された糸と切断されていない糸とが絡んでいる部分と、切断されていない糸のみが絡んでいる部分を糸の長さ方向に不規則なピッチで有する構造加工糸を製造する方法。
【請求項4】 糸の長さ方向に沿って、繊度、色相、捲縮状態、絡合状態および光沢のうちのいずれか1つまたは2つ以上が少なくとも不規則になっている構造加工糸を製造するものである請求項3の方法。
【請求項5】 2以上の糸を絡み合わせて形成した絡合糸として、1種または2種以上の芯糸と1種または2種以上の鞘糸とが絡み合っている芯鞘型絡合糸を用いる請求項3または4の方法。
【請求項6】 張力を付加して芯鞘型絡合糸における芯糸の少なくとも一部を切断させる請求項5の方法。
【請求項7】 絡合糸として、2以上の糸を流体によって絡らみ合わせて製造した絡合糸を用いる請求項3〜6のいずれか1項の方法。
【請求項8】 請求項1または2の構造加工糸を用いて形成した布帛
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、糸の長さ方向に沿って繊度(太さ)、色相、捲縮状態、絡合状態および光沢のうちのいずれか1つまたは2つ以上が少なくとも不規則に変化している構造加工糸、その製造方法、並びにその構造加工糸を用いて形成した布帛に関する。
【0002】
【従来の技術】長さ方向に沿って繊度、色相、捲縮状態、絡合状態、光沢などが変化している構造加工糸を用いて織編物などを製造すると、独特な意匠効果、風合、外観、触感、色相などを有する織編物が得られるため、そのような構造加工糸に関する研究および開発が従来から色々行われている。従来から知られているそのような変化を有する糸としては、例えば、(1)紡績スラブ糸や巻き付きスラブ糸のような長さ方向に繊度が変化する糸;(2)1本の糸に2色〜数色の色を先染めによって染めた“かすり”といわれる糸;(3)斑延伸によってフィラメントに太細斑を生じさせてその太い部分と細い部分とで濃淡染色を発現させたフィラメント糸などのような長さ方向に色相や濃度が変化する糸などを挙げることができる。
【0003】そして、上記した(1)〜(3)の糸を用いて製造された織編物は、通常の糸から形成された織編物には見られないような、独特の意匠効果や風合などを有していることから、衣料用やインテリア用に広く用いられている。しかしながら、上記した(1)〜(3)の従来の糸は、その形態、色相、外観、物性などの点においてその変化の程度が未だ充分であるとは言えず、そのためそれらの糸を用いて得られる織編物は、色相、外観、風合、触感、意匠効果などの点で単調さから脱し得ておらず、従来にないような変化に富んだ、意匠効果の高い新しい織編物や繊維製品を求める消費者の要望を充分に満足させることができないのが現状である。
【0004】そこで、上記した(1)〜(3)のような従来の糸を一層変化に富む糸にするために、それらの糸に対して更に別の処理工程を追加して糸の形態、色相、物性などを変化させることが試みられているが、その場合には更に別の処理工程や処理装置を付加する必要があるために、製造工程や製造装置が複雑なものとなったり、製造に時間がかかったり、コストが高くなるという問題がある。しかも、新たに追加する処理工程の内容によっては糸の物性の低下を招くことがあり、用途によっては実用価値のない糸となってしまう。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、色相、形態、構造、光沢、物性などの点で変化に富む構造加工糸、特に繊度、色相、捲縮状態、絡合状態、光沢などの点において変化に富む構造加工糸であって、織編物などの布帛を製造したときに、外観、風合、色相、艶、触感などの点で従来に新しい感覚を有していて意匠性に優れ、しかも高級感のある布帛を得ることのできる構造加工糸およびその製造方法を提供することである。そして、本発明の目的は、強度などの力学的特性においても優れていて、製糸工程や製編織工程を断糸などを生ずることなく円滑に行うことができ、しかも耐久性のある織編物を製造することのできる、上記した変化に富む構造加工糸およびその製造方法を提供することである。さらに、本発明の目的は、複雑な製造工程や処理工程、余分な製造設備などを要することなく、簡単な工程や設備で、工程性良く製造することのできる、上記した変化に富み且つ力学的特性に優れる構造加工糸およびその製造方法を提供することである。そして、本発明の目的は、上記した特性を有する構造加工糸を用いて形成した、外観、風合、色相、艶、触感などの点で従来に新しい感覚を有していて意匠性に優れ、しかも高級感のある織編物などの布帛を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成すべく本発明者らは色々検討を重ねてきた。その結果、所定の張力を付加したときに切断される糸と切断されない糸とが生ずるようにして2以上の糸を絡み合わせて絡合糸を形成し、その絡合糸に対して張力を付加して、絡合糸を構成する糸の一部を切断させると、切断された糸と切断されていない糸とが絡んでいる部分と切断されていない糸のみが絡んでいる部分が糸の長さ方向に不規則なピッチでランダムに形成され、その結果変化に富む形態、構造、物性などを有する構造加工糸が極めて簡単な工程で円滑に得られること、そしてそれにより得られる構造加工糸は強度などの力学的特性においても優れていて、良好な工程性で製編織でき耐久性のある織編物を形成し得ることを見出した。さらに、本発明者らは、その際に、絡合糸を構成する2以上の糸の色相、物性、形態、絡合状態、捲縮状態、光沢などを予め異なったものにしたり調節しておくと、糸の長さ方向に沿って繊度、色相、捲縮状態、絡合状態および光沢のうちのいずれか1つまたは2つ以上が少なくとも不規則になった極めて変化に富む、意匠性の高い構造加工糸が得られること、そしてその構造加工糸を用いて織編物などを製造すると、外観、風合、色相、光沢、触感などの点で従来に新しい感覚を有していて意匠性に優れ且つ高級感のある織編物などが得られることを見出し、それらの知見に基づいて本発明を完成した。
【0007】すなわち、本発明は、切断された糸と切断されていない糸とが絡んでいる部分と、切断されていない糸のみが絡んでいる部分を、糸の長さ方向に不規則なピッチで有することを特徴とする構造加工糸である。そして、本発明の構造加工糸においては、糸の長さ方向に沿って、繊度、色相、捲縮状態、絡合状態および光沢のうちのいずれか1つまたは2つ以上が少なくとも不規則なピッチで変化している。また、本発明は、上記の構造加工糸を用いて形成した織編物などの布帛を包含する【0008】そして、本発明は、2以上の糸を絡み合わせて形成した絡合糸に対して張力を付加して、絡合糸を構成する糸の一部を切断させることによって、切断された糸と切断されていない糸とが絡んでいる部分と、切断されていない糸のみが絡んでいる部分を糸の長さ方向に不規則なピッチで有する構造加工糸を製造する方法である【0009】
【発明の実施の形態】以下に本発明について詳細に説明する。本発明の構造加工糸は、切断された糸と切断されていない糸とが絡んでいる部分(以下これを「絡合部A」ということがある)と、切断されていない糸のみが絡んでいる部分(以下これを「絡合部B」ということがある)とを、糸の長さ方向に不規則なピッチでランダムに有する構造加工糸である。何ら限定されるものではないが、模式図(概略的)によって示すと、本発明の構造加工糸は、図1で例示するように、切断された糸と切断されていない糸とが絡んでいる絡合部Aと、切断されていない糸のみが絡んでいる絡合部Bとが、糸の長さ方向にランダムに存在している。ここで、本発明の構造加工糸における絡合部Aおよび絡合部Bで言う「切断された糸」および「切断されていない糸」における“糸”とは、フィラメントの一本一本を意味する。
【0010】本発明の構造加工糸は、上記した絡合部Aと絡合部Bが糸の長さ方向に不規則なピッチで存在する構造加工糸であればいずれでもよく、それ以外の点は特に制限されないが、かかる本発明の構造加工糸においては、糸の長さ方向に沿って、繊度、色相、捲縮状態、絡合状態および光沢のうちのいずれか1つまたは2つ以上が少なくとも不規則なピッチで変化している。何ら限定されるものではないが、本発明の構造加工糸には、糸の長さ方向に沿って絡合部Aと絡合部Bを不規則なピッチで有すると共に、例えば、(1)糸の繊度(太さ)がその長さ方向に沿って不規則なピッチで変化している構造加工糸;(2)糸の繊度(太さ)および色相がその長さ方向に沿って不規則なピッチで変化している構造加工糸;(3)糸の繊度(太さ)および捲縮状態がその長さ方向に沿って不規則なピッチで変化している構造加工糸;(4)糸の繊度(太さ)および光沢がその長さ方向に沿って不規則なピッチで変化している構造加工糸;(5)糸の繊度(太さ)、色相および捲縮状態がその長さ方向に沿って不規則なピッチで変化している構造加工糸;(6)糸の繊度(太さ)、色相および捲縮状態がその長さ方向に沿って不規則なピッチで変化している構造加工糸;(7)糸の繊度(太さ)、色相、捲縮状態および絡合状態がその長さ方向に沿って不規則なピッチで変化している構造加工糸;(8)糸の繊度(太さ)、色相、捲縮状態、絡合状態および光沢がその長さ方向に沿って不規則なピッチで変化している構造加工糸等々の種々の構造加工糸が包含される。
【0011】構造加工糸を構成する糸の種類、糸の数、構造加工糸全体の太さ、絡合部Aおよび絡合部Bのそれぞれの太さ、構造加工糸を構成する繊維の単繊維繊度、絡合部Aと絡合部Bの間隔やランダム形態、絡合部Aおよび絡合部Bのそれぞれにおける糸の絡合形態や絡合の強弱、捲縮の有無、捲縮形態や捲縮の強弱、光沢の有無や強弱などはいずれでもよく、特に制限されない。
【0012】本発明の構造加工糸は、単一糸から形成してあっても、或いは2または3以上の同種または異種の糸から形成してあってもよい。より具体的には、本発明の構造加工糸は、例えば1種類のフィラメント糸を用いて形成されていても、2種以上のフィラメント糸を用いて形成されていてもよい。そのうちでも、絡合部Aと絡合部Bを糸の長さ方向にランダムに有し且つ繊度、色相、捲縮状態、絡合状態および光沢のうちのいずれか1つまたは2つ以上が少なくとも糸の長さ方向に沿って不規則に変化している極めて変化に富む構造加工糸をより円滑に得るためには、フィラメント糸のみからなる絡合糸を出発原糸として用いて形成されていることがより好ましい。
【0013】また、本発明の構造加工糸を構成する繊維の種類としては、例えば、合成繊維、半合成繊維、再生繊維、またはそれらの2種以上のいずれかを使用することができる。合成繊維としては、例えば、ポリエステル系繊維;ポリアミド系繊維;ポリプロピレンなどのポリオレフィン系繊維;塩化ビニル重合体、塩化ビニリデン重合体などのハロゲン化ビニル重合体系繊維;アクリル繊維;ポリビニルアルコール系繊維;ポリウレタン系繊維などを挙げることができ、本発明の構造加工糸はこれらの合成繊維の1種または2種以上から形成されていることができる。そのうちでも、本発明の構造加工糸はポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維などの合成繊維やレーヨンなどの再生繊維の1種または2種以上から形成されているのが、構造加工糸の製造の容易性、得られる構造加工糸またはそれを利用した生地の物性、用途の多様性、コストなどの点から好ましい。
【0014】また、本発明の構造加工糸が合成繊維から形成されている場合は、2種以上の重合体を用いて形成した複合繊維であっても、混合繊維などであってもよい。さらに、合成繊維は、丸形断面繊維であっても、異形断面繊維であっても、またはそれらの混用繊維であってもよい。
【0015】また、上記したように、本発明の構造加工糸を構成する糸の数、絡合部Aおよび絡合部Bのそれぞれの太さ、構造加工糸を構成する繊維の太さなども特に制限されないが、本発明の構造加工糸は2〜5本の糸を用いて形成されているのが構造加工糸に絡合部Aと絡合部Bを出現させ易い点や構造加工糸の製造の容易性、変化の種類の多様性(意匠性)などの点から好ましい。また、本発明の構造加工糸では、絡合部Aと絡合部Bのデニールの差が30〜200デニールであることが、構造加工糸をより変化に富んだ構造および/または形態にすることができる点から好ましい。さらに、絡合部Aおよび絡合部Bを構成する糸における繊維の単繊維繊度は0.5〜10デニールであることが、本発明の構造加工糸、ひいてはそれから得られる織編物などの布帛の特性(例えば、柔軟性、ドレープ性、張り、腰など)をより良好なものにする点から好ましい。
【0016】そして、本発明の構造加工糸では、糸の長さ方向に沿って間隔をおいて存在する絡合部A同士の太さがほぼ同じであってもまたは互いに異なっていてもよく、そして糸の長さ方向に沿って間隔をおいて存在する絡合部B同士の太さがほぼ同じであってもまたは互いに異なっていてもよく、絡合部A同士の太さが互いに異なっていると、および/または絡合部B同士の太さが互いに異なっている場合には、構造加工糸が一層変化に富むものとなる。また、本発明の構造加工糸では、絡合部Aと絡合部Bの間隔やランダム状態なども上記したように特に制限されず、絡合部Aと絡合部Bが構造加工糸の長さ方向に沿ってその長さ(ピッチ)を色々変えてランダムに存在していればいずれでもよいが、一般に、長さが10〜300mm程度の絡合部Aと、長さが5〜100mm程度の絡合部Bとが、構造加工糸の長さ方向に沿って交互に且つランダムに存在していることが、構造加工糸の形態、色相、物性などを一層変化に富むものにすることができる点から好ましい。
【0017】さらに、本発明の構造加工糸では、絡合部Aおよび絡合部Bのそれぞれにおける糸の絡合形態や絡合の強弱、捲縮の有無、捲縮形態や形態の強弱なども上記したように特に制限されず、例えば、空気などの流体によって交絡された絡合状態、捲縮と交絡が組合わさった状態、タスラン加工による絡合状態、交絡、捲縮が組合わさった状態などのいずれであってもよい。また、絡合部Aでは、切断されていない糸(以下「非切断糸」ということがある)に絡んでいる切断された糸(以下「切断糸」ということある)は、例えば、絡合部Aの両端部分でのみ切断された状態で非切断糸に絡まっていても、絡合部Aの両端部分だけではなく該両端部分の間の1カ所または2カ所以上で切断された状態で非切断糸に絡まっていても、或いはそれ以外の状態で非切断糸に絡んでいてもよい。また、場合によっては、絡合部Aの一方の端部または両端部において絡合部Aの中央部よりも太くなった状態で切断糸が非切断糸に絡まっていてもよいさらに、本発明の構造加工糸では、糸の長さ方向に沿って不規則なピッチで間隔をおいて存在する絡合部Aの絡合形態や絡合の強弱が互いにほぼ同じであってもまたは互いに異なっていてもよく、および/または糸の長さ方向に沿って間隔をおいて存在する絡合部Bの絡合形態や絡合の強弱が互いにほぼ同じであってもまたは互いに異なっていてもよい。そして、絡合部Aおよび絡合部Bの各々における絡合形態や絡合の強弱に違いがあると、一層変化に富む構造加工糸を得ることができる。
【0018】また、本発明の構造加工糸では、上記したように、その色の種類、色の深浅などの色相や光沢の有無や強弱なども特に制限されない。本発明の構造加工糸では、例えば、絡合部Aと絡合部Bとが同じ色であってもまたは異なった色であっても、絡合部Aと絡合部Bとで色の深浅の程度が同じであってもまたは異なっていても、絡合部Aと絡合部Bとで光沢が同じであってもまたは異なっていてもよく、絡合部Aおよび絡合部Bの色相や光沢などを調節したり、変えたりすることによって、構造加工糸およびそれから得られる布帛に色相、光沢、外観、風合などの点で、意匠効果に富む種々の変化を発現させることができる。
【0019】本発明では、切断された糸と切断されていない糸とが絡んでいる絡合部Aと切断されていない糸のみが絡んでいる絡合部Bが糸の長さ方向に不規則なピッチで存在する本発明の構造加工糸を製造し得る方法であれば、いずれの方法を採用して製造してもよい。そのうちでも、本発明の構造加工糸は、代表的には下記の(i)または(ii)の方法により円滑に製造することができる。
【0020】[本発明の構造加工糸の製造方法の代表例]
(i) 2以上の糸を異なった供給速度(オーバーフィード率)でエアノズルなどの流体絡合装置に供給して、主として内側にある芯糸と主として外側にある鞘糸(側糸)とから構成される芯鞘型絡合糸を製造し、その芯鞘型絡合糸に張力を付加して、芯糸または鞘糸に切断を生じさせて、絡合部Aと絡合部Bが糸の長さ方向に沿って不規則なピッチで存在する構造加工糸を製造する方法。
(ii) 破断伸度および/または破断強度の互いに異なる2種以上の糸をエア式交絡ノズルなどの流体交絡処理装置に供給して、該2種以上の糸が糸全体に交じり合って混繊絡合している混繊絡合糸を製造し、その混繊絡合糸に張力を付加して、破断され易い糸の方を切断させて、絡合部Aと絡合部Bが糸の長さ方向に沿って不規則なピッチで存在する構造加工糸を製造する方法。
【0021】そして、上記の(i)および(ii)の方法を行うに当たっては、(イ) 芯鞘型絡合糸または混繊絡合糸を製造するための工程を行ってそれによって得られた芯鞘型絡合糸または混繊絡合糸を一旦巻き取った後、別の工程でその芯鞘型絡合糸または混繊絡合糸を巻き戻しながら張力を付加して芯鞘型絡合糸または混繊絡合糸を構成する糸の一部に切断を生じさせて絡合部Aおよび絡合部Bを糸の長さ方向に不規則なピッチで有する構造加工糸を製造する方法;または、(ロ) 芯鞘型絡合糸または混繊絡合糸を製造するための工程を行ってそれによって得られた芯鞘型絡合糸または混繊絡合糸を巻き取らずに、そのまま張力付加工程に直接送って、芯鞘型絡合糸または混繊絡合糸を構成する糸の一部に切断を生じさせて絡合部Aおよび絡合部Bを糸の長さ方向に不規則なピッチで有する構造加工糸を製造する方法;のいずれの方法で行ってもよい。
【0022】何ら限定されるものではないが、上記(イ)の方法は、例えば、図2の(a)および(b)に示すような方法によって行うことができ、また上記(ロ)の方法は、例えば、図3に示すような方法によって行うことができる。図2および図3において、1および2は流体絡合処理に供給される原糸、3はフィードローラー、4はエアノズルなどの流体絡合装置、5は芯鞘型絡合糸または混繊絡合糸、6は張力付加装置、7は絡合部Aおよび絡合部Bを糸の長さ方向に不規則なピッチで有する構造加工糸を示す。
【0023】また、芯鞘型絡合糸または混繊交絡糸に張力を付加して糸の一部に切断を生じさせるに当たっては、絡合部Aと絡合部Bとが糸の長さ方向に不規則なピッチで存在する構造加工糸を製造し得る張力の付加方法であればいずれも採用でき特に制限されないが、例えば図2および図3に示すように、芯鞘型絡合糸または混繊交絡糸を供給ローラー6aとそれより高速で回転する取り出しローラー6bからなるローラー延伸装置に供給して、芯鞘型絡合糸または混繊交絡糸における糸の一部に切断を生じさせるようにして伸長処理を行う方法などが好ましく採用される。その際に、糸の一部の切断が円滑に行われるように、糸道の途中(供給ローラー6aと取り出しローラー6bとの間)に、ガイド、板、サンドペーパー、その他の擦過装置を配置しておいて、芯鞘型絡合糸または混繊交絡糸の擦過させながら伸長処理を行ってもよい。
【0024】そこで、まず上記した(i)の方法について更に詳細に説明する。この(i)の方法で用いる芯鞘型絡合糸を構成する芯糸および鞘糸は、その両方がフィラメント糸であることが望ましい。また、その芯鞘型絡合糸における芯糸および鞘糸の単繊維繊度、破断強度、破断伸度、ヤング率、色調、光沢の有無や程度なども特に制限されず、さらに芯糸および/または鞘糸は捲縮糸であってもまたは非捲縮糸であってもよい。芯鞘型絡合糸における芯糸および鞘糸を構成する繊維の種類や単繊維繊度などについては、本発明の構造加工糸について上記で説明したとおりである。
【0025】また、(i)の方法を行うに当たっては、芯鞘型絡合糸における芯糸を構成する糸と鞘糸を構成する糸とは、互いに同じであってもまたは異なっていてもよく、芯鞘型絡合糸に所定の張力を付加したときに、芯糸と鞘糸の両方が切断してしまわずに、いずれか一方のみが切断されるようになっていればよい。すなわち、(i)の方法による場合は、芯糸用の糸および鞘糸用の糸として、同じ糸を用いて得られた芯鞘型絡合糸を使用しても、または異なった糸を用いて得られた芯鞘型絡合糸を使用しても、本発明の構造加工糸を得ることができ、芯鞘型絡合糸の内容に応じて、例えば、芯鞘型絡合糸を製造する際の流体絡合装置への芯糸用の糸および鞘糸用の糸のオーバーフィード率、芯糸用の糸と鞘糸用の糸の破断強度や破断伸度、芯鞘型絡合糸に対して付加する張力の程度(芯鞘型絡合糸の切断処理を行う際の伸長の程度)などを互いに調節することによって、芯糸または鞘糸の一方のみが切断されていて、絡合部Aと絡合部Bとが糸の長さ方向に沿って不規則なピッチで存在する本発明の構造加工糸を得ることができる。
【0026】何ら限定されるものではないが、より具体的に説明すると、所定の張力を付加したときに芯鞘型絡合糸における芯糸または鞘糸の一方のみが切断されていて、絡合部Aと絡合部Bが糸の長さ方向に不規則なピッチで存在する本発明の構造加工糸を得るに当たっては、例えば、下記の■の方法または■の方法を採用することができる。
【0027】■ 芯糸用の糸および鞘糸用の糸として同じ糸または異なる糸(例えば破断強度および/または破断伸度が同じである糸または異なる糸)を使用し、芯糸用糸をゼロまたは低いオーバーフィード率で且つ鞘糸用糸をそれよりも高いオーバーフィード率で流体絡合装置に供給して芯鞘型絡合糸を製造し、その芯鞘型絡合糸に対して、オーバーフィード率がゼロか又は低くてほぼ緊張状態にある芯糸は伸長によって切断されるが、オーバーフィード率が高くて緩んだ状態で芯糸に絡んでいる鞘糸は伸長しても切断されないような伸長率で張力を付加して、芯糸のみを少なくとも一部切断させて、芯鞘型絡合糸において芯糸を構成していた糸(切断糸)と芯鞘型絡合糸において鞘糸を構成していた糸(非切断糸)とが絡んでいる絡合部Aと、芯鞘型絡合糸において鞘糸を構成していた糸同士が絡んでいる絡合部Bが、糸の長さ方向に不規則なピッチで存在する構造加工糸を製造する方法【0028】■ 芯糸用の糸として破断伸度の高い糸を使用し、一方鞘糸用の糸として芯糸用の糸よりも破断伸度が低い糸を使用して、芯糸用糸をゼロまたは低いオーバーフィード率で且つ鞘糸用糸をそれよりも高いオーバーフィード率で流体絡合装置に供給して芯鞘型絡合糸を製造し、その芯鞘型絡合糸に対して、オーバーフィード率がゼロか又は低くてほぼ緊張状態にあるものの糸自体の破断伸度が高いために芯糸の破断は生じない伸長率であって且つオーバーフィード率が芯糸用の糸よりは高いことにより芯糸の周囲に鞘状で絡んではいるものの糸自体の破断伸度が小さいために破断が生じ易い鞘糸の破断が生ずるような伸長率で芯鞘型絡合糸に張力を付加して、鞘糸のみを少なくとも一部切断させて、芯鞘型絡合糸において鞘糸を構成していた糸(切断糸)と芯鞘型絡合糸において芯糸を構成していた糸(非切断糸)とが絡んでいる絡合部Aと、芯鞘型絡合糸において芯糸を構成していた糸同士が絡んでいる絡合部Bが、糸の長さ方向に不規則なピッチで存在する構造加工糸を製造する方法。
【0029】そして、上記した■および■の方法のうちでは、■の方法が、芯鞘型絡合糸における芯糸および鞘糸の破断強度や破断伸度が同じであってもまたは異なっていても、流体絡合装置への芯糸用の糸および鞘糸用の糸のオーバーフィード率を調節し、それにより得られる芯鞘型絡合糸における各糸のオーバーフィード率に応じて、芯鞘型絡合糸に付加する張力(芯鞘型絡合糸を伸長・破断させる際の伸長率)を適当に選ぶことによって、芯糸のみを選択的に切断させて、絡合部Aと絡合部Bとが糸の長さ方向に不規則なピッチで存在する本発明の構造加工糸を比較的に簡単に且つ円滑に得ることができるので好ましく採用される。
【0030】上記した■の方法を採用するに当たっては、エアノズル(流体絡合装置)への芯糸用の糸のオーバーフィード率(OFa)(%)、鞘糸用の糸のオーバーフィード率(OFb)(%)、エアノズルに供給する空気圧(AP)(kg/cm2)が下記の数式(1)〜(4)を満足するようにして芯鞘型絡合糸を製造し;且つ上記により得られる芯鞘型絡合糸に対して、下記の数式(6)で表される引き取り率(DS)(%)[張力付加装置(伸長装置)からの糸の引き取り率]が、下記の数式(7)を満足するようにして張力の付加を行うと、絡合部Aと絡合部Bが糸の長さ方向に不規則なピッチで存在する目的とする構造加工糸を円滑に得ることができるので好ましい。
【0031】
【数1】
OFa≧0% (1)
OFb≧1% (2)
OFb−OFa≧0% (3)
AP≧1.0kg/cm2 (4)
但し、エアノズルへの芯糸のオーバーフィード率(OFa)(%)または鞘糸のオーバーフィード率(OFb)(%)は、下記の数式(5)により求められる【0032】
【数2】
オーバーフィード率OFa又はOFb(%)={(V0−V1)/V1}×100 (5)式中、V0=エアノズルへの芯糸又は鞘糸の供給速度V1=エアノズルからの芯鞘型絡合糸の取り出し速度【0033】
【数3】
DS(%)={(V3−V2)/V2}×100 (6)
A(%)<DS<(B+OFb)(%) (7)
式中、DS=張力付加装置からの糸(構造加工糸)の引き取り率V3=張力付加装置からの糸(構造加工糸)の取り出し速度V2=張力付加装置への芯鞘型絡合糸の供給速度A =芯糸の破断伸度(%)
B =鞘糸の破断伸度(%)
OFb=エアノズルへの鞘糸のオーバーフィード率(%)
【0034】上記において、芯鞘型絡合糸を製造する際のエアノズルへの芯糸のオーバーフィード率が0%未満、鞘糸のオーバーフィード率が1%未満、および/またはエアノズルに供給する空気圧が1.0kg/m2未満であると、芯糸と鞘糸と充分に絡合した芯鞘型絡合糸が得られにくくなり、そのような芯鞘型絡合糸に張力を付加しても、切断された糸と切断されていない糸とが絡んでいる絡合部Aと、切断されていない糸のみが絡んでいる絡合部Bとが糸の長さ方向に不規則なピッチで存在する目的とする構造加工糸が得られにくくなる。上記(i)の方法によって、本発明の構造加工糸を得るに当たっては、エアノズルへの芯糸のオーバーフィード率を0〜3%、鞘糸のオーバーフィード率を10%以上、そしてエアノズルに供給する空気圧を3.0kg/m2以上とするのがより好ましい。
【0035】また、上記した(ii)の方法による場合は、破断伸度および/または破断強度の互いに異なる2種以上の糸を、同程度の供給速度でエア式交絡ノズルなどの流体交絡処理装置に供給して該2種以上の糸が全体に交じり合って混繊絡合した絡合糸を製造した後、その絡合糸に張力を付加して、切断され易い糸の方を切断させることによって、絡合部Aと絡合部Bが糸の長さ方向に沿って不規則なピッチで存在する本発明の構造加工糸を製造することができる。
【0036】この(ii)の方法による場合に、例えば、破断伸度にかなりの差のある2種以上の糸を用いて混繊絡合糸を製造するか、または破断強度にかなりの差のある2種以上の糸を用いて混繊絡合糸を製造し、その混繊絡合糸に対して、一部の糸(一方の糸)のみが切断され得る張力を付加することによって、目的とする絡合部Aと絡合部Bが糸の長さ方向に沿って不規則なピッチで存在する本発明の構造加工糸を製造することができる。その場合に、混繊絡合糸を構成する一部の糸に切断を生じさせるために付加する張力条件などは、混繊絡合糸を構成している糸の破断強度および/または破断伸度などに応じて選ぶことができる。何ら限定されるものではないが、例えば該混繊絡合糸が、破断伸度が20%の糸(a)と破断伸度が40%の糸(b)との混繊絡合糸である場合は、混繊絡合糸を例えば30%程度に伸長させることによって、糸(a)のみが切断されて、切断された糸(a)と切断されていない糸(b)が絡み合った絡合部Aと、切断されていない糸(b)同士が絡み合った絡合部Bが糸の長さ方向に不規則なピッチで存在する本発明の構造加工糸を得ることができる。
【0037】そして、この(ii)の方法による場合は、該混繊絡合糸を構成する2種類以上の糸は、そのすべてがフィラメント糸であることが望ましい。また、該混繊絡合糸を構成する2種類以上の糸は、繊度が同じであってもまたは異なっていてもよい。さらに、混繊絡合糸を構成する2種類以上の糸は、その色の種類、色の深浅度、艶や光沢などの色相が同じであってもまたは異なっていてもよい。また、混繊絡合糸を構成する2種類以上の糸は、同じ種類の繊維から形成されていても、または異なる繊維から形成されていてもよい。また、該混繊絡合糸はその一部または全部が捲縮糸であってもまたは非捲縮糸であってもよい。該混繊絡合糸を構成する2種類以上の糸における繊維の種類や単繊維繊度などの具体的な内容については、本発明の構造加工糸について上記で説明したとおりである。
【0038】そして、本発明の構造加工糸は、織編物や不織布などの布帛、特に織編物の製造に有効に用いられる。本発明の構造加工糸を用いて織編物などの布帛を製造するに当たっては、そのまま使用して布帛を製造しても、または本発明の構造加工糸を撚糸したり、他の糸と交撚したりして布帛を製造してもよい。また、布帛の製造に当たっては、本発明の構造加工糸を単独で用いても、或いは本発明の構造加工糸と他の糸(例えばフィラメント糸、紡績糸、他の構造加工糸など)の1種または2種以上を用いてもよい【0039】本発明の構造加工糸では、切断された糸と切断されていない糸とが絡んでいる絡合部Aと切断されていない糸のみが絡んでいる絡合部Bを糸の長さ方向に不規則なピッチで有していて、繊度、色相、捲縮状態、絡合状態および光沢のうちのいずれか1つまたは2つ以上が少なくとも糸の長さ方向に不規則になっているために、かかる構造加工糸を用いて得られる布帛は外観、風合、色相、触感、光沢などの点で従来にない新しい感覚を有し、意匠性に優れしかも高級感を有している。そのため、本発明の構造加工糸を用いて得られる織編物などの布帛は、上記した特性を活かして、外衣、内衣、その他の各種の衣料;カーテン、椅子張り、家具や車両用クッションのカバー材、パーティションなどのような各種内装材;ベッドカバー、枕カバー、パジャマなどの寝具類;バッグ類、袋物、スカーフ、マフラー、ネクタイ、手袋などの小物類などに有効に用いられる。
【0040】
【実施例】以下に本発明を実施例などにより具体的に説明するが、本発明はそれにより何ら限定されない。以下の例において、エアノズルへの芯糸および鞘糸のオーバーフィード率は上記の数式(5)により求め、また芯鞘型絡合糸における一部の糸を切断処理する際の引き取り率は、上記の数式(6)により求めた。また、芯糸、鞘糸、芯鞘型絡合糸および構造加工糸の破断強度および破断伸度は、JIS L 1017に準拠して測定した【0041】《実施例1》
(1) 破断強度4.8g/dおよび破断伸度29%のポリエチレンテレフタレート製マルチフィラメント糸(以下「ポリエステルマルチフィラメント糸」という)(50デニール/24フィラメント)を芯糸用の糸として用いて、この芯糸用の糸をオーバーフィード率1.8%で図4に示す断面構造を有するエアノズルに送る共に、破断強度4.5g/dおよび破断伸度30%のポリエステルマルチフィラメント糸(225デニール/228フィラメント)を鞘糸用の糸として用いて、この鞘糸用の糸をオーバーフィード率36%で同じエアノズルに送り、エアノズルの空気圧5.8kg/cm2、エアノズルから取り出された芯鞘型絡合糸の巻き取り速度200m/分の条件下に芯糸用の糸と鞘糸用の糸を空気絡合させて、芯鞘型絡合糸を製造して巻き取った。
(2) 上記の(1)で得られた芯鞘型絡合糸を、巻き戻しながら、低速で回転する1対のニップローラーと高速で回転する1対のニップローラーからなる張力付加装置に供給して36%の引き取り率で伸長して、芯鞘型絡合糸における芯糸を切断して、切断された糸と切断されていない糸とが絡んでいる絡合部Aと切断されていない糸のみが絡んでいる絡合部Bを糸の長さ方向に不規則なピッチで有する、図1の模式図に示すような、繊度(太さ)が糸の長さ方向に沿って不規則に変化する構造加工糸を製造した。
【0042】(3) 上記(2)で得られた構造加工糸では、糸の最も細い部分の径は約0.4mm、最も太い部分の径は約2mmであり、細い部分と太い部分とで繊度の差が大きく且つそれが不規則に糸の長さ方向に沿って存在しているために、変化に富んでいて意匠性に優れる糸であったまた、上記(2)で得られた構造加工糸の破断強度は2.28g/dおよび破断伸度は14.0%であり、織編物などの製造に必要とされる充分な糸性能を有していた。
(4) 上記(2)で得られた構造加工糸を単独で用いて、口径3.5インチ、針数320本の筒編機で編地を製造したところ、生地表面に起伏感があり、意匠性の高い生地となっており、生地の表現力に優れていた。
【0043】《比較例1》
(1) 実施例1の(1)と同様にして、破断強度4.8g/dおよび破断伸度29%のポリエステルマルチフィラメント糸(50デニール/24フィラメント)を芯糸用の糸として用いて、この芯糸用の糸をオーバーフィード率1.8%で図2に示す断面構造を有するエアノズルに送る共に、破断強度4.5g/dおよび破断伸度30%のポリエステルマルチフィラメント糸(225デニール/228フィラメント)を鞘糸用の糸として用いて、この鞘糸用の糸をオーバーフィード率36%で同じエアノズルに送り、エアノズルの空気圧5.8kg/cm2、エアノズルから取り出された芯鞘型絡合糸の巻き取り速度200m/分の条件下に芯糸用の糸と鞘糸用の糸を空気絡合させて、芯鞘型絡合糸を製造した。
(2) 上記(1)で得られた芯鞘型絡合糸では、糸の最も細い部分の径は約1.5mm、最も太い部分の径は約2mmであり、細い部分と太い部分とで繊度の差が小さくて交絡の斑による繊度の変化しか生じておらず、変化が小さく、意匠性の乏しいものであった。また、上記(1)で得られた芯鞘型絡合糸を単独で用いて、口径3.5インチ、針数320本の筒編機で編地を製造したところ、変化が少なく、平坦な感じであり意匠性に乏しいものであった。
【0044】《実施例2》
(1) 破断強度4.2g/dおよび破断伸度30%の黒色ポリエステルマルチフィラメント糸(75デニール/36フィラメント)を芯糸用の糸として用いて、この芯糸用の糸をオーバーフィード率1.7%で図4に示す断面構造を有するエアノズルに送る共に、破断強度4.5g/dおよび破断伸度30%の白色ポリエステルマルチフィラメント糸(225デニール/228フィラメント)を鞘糸用の糸として用いて、この鞘糸用の糸をオーバーフィード率36%で同じエアノズルに送り、エアノズルの空気圧5.8kg/cm2、エアノズルから取り出された芯鞘型絡合糸の巻き取り速度200m/分の条件下に芯糸用の糸と鞘糸用の糸を空気絡合させて、芯鞘型絡合糸を製造して巻き取った。
(2) 上記の(1)で得られた芯鞘型絡合糸を、巻き戻しながら、低速で回転する1対のニップローラーと高速で回転する1対のニップローラーからなる張力付加装置に供給して36%の引き取り率で伸長して、芯鞘型絡合糸における芯糸を切断して、切断された糸と切断されていない糸とが絡んでいる絡合部Aと切断されていない糸のみが絡んでいる絡合部Bを糸の長さ方向に不規則なピッチで有する、図1の模式図に示されるような構造加工糸を得た。
【0045】(3) 上記(2)で得られた構造加工糸では、糸の最も細い部分の径は約0.4mm、最も太い部分の径は約2.0mmであって細い部分と太い部分とで繊度の差が大きく且つそれが不規則に存在しており、しかも絡合部Aでは上記(2)の張力付加によって切断された黒色の芯糸が構造加工糸の表面に出てきて薄灰色〜黒色を呈し、また絡合部Bは主として白色を呈し、そのため糸の色調もその長さ方向に沿って不規則なピッチで変化しており、変化に極めて富んだ意匠性の極めて高い糸であったまた、上記(2)で得られた構造加工糸の破断強度は2.35g/dおよび破断伸度は14.3%であり、織編物などの製造に必要とされる充分な糸性能を有していた。
(4) 上記(2)で得られた構造加工糸を単独で用いて、口径3.5インチ、針数320本の筒編機で編地を製造したところ、構造加工糸におけるランダムで且つ大きな太細斑とランダムな色斑に基づいて、色相、風合、触感などの点で変化に富む、極めて意匠性の高い編地が得られた。
【0046】《比較例2》
(1) 実施例2の(1)と同様にして、破断強度4.2g/dおよび破断伸度30%の黒色ポリエステルマルチフィラメント糸(75デニール/36フィラメント)を芯糸用の糸として用いて、この芯糸用の糸をオーバーフィード率1.7%で図4に示す断面構造を有するエアノズルに送る共に、破断強度4.5g/dおよび破断伸度30%の白色ポリエステルマルチフィラメント糸(225デニール/228フィラメント)を鞘糸用の糸として用いて、この鞘糸用の糸をオーバーフィード率36%で同じエアノズルに送り、エアノズルの空気圧5.8kg/cm2、エアノズルから取り出された芯鞘型絡合糸の巻き取り速度200m/分の条件下に芯糸用の糸と鞘糸用の糸を空気絡合させて、芯鞘型絡合糸を製造した。
(2) 上記(1)で得られた芯鞘型絡合糸では、糸の最も細い部分の径は約1.5mm、最も太い部分の径は約2.0mmであり、細い部分と太い部分とで繊度の差が小さくて交絡の斑による繊度の変化しか生じておらず、しかも黒色の芯糸は芯鞘型絡合糸の主として内側に存在し、白色の鞘糸は芯鞘型絡合糸の主として外側に存在するために、外部から見た場合には全体にほぼ白色を呈していて糸の長さ方向に沿って色相の変化が生じておらず、意匠性に乏しいものであった。そして、この芯鞘型絡合糸を単独で用いて、口径3.5インチ、針数320本の筒編機にて編地を製造したところ、外観、色相、風合などの点で変化が極めて少なく、意匠性に乏しいものであった。
【0047】《実施例3》
(1) 破断強度が4.9g/dおよび破断伸度が32%であり且つ酸化チタンを0.05重量%含有するポリエステルマルチフィラメント糸(ブライト糸)(75デニール/36フィラメント)を芯糸用の糸として用いて、この芯糸用の糸をオーバーフィード率1.7%で図4に示す断面構造を有するエアノズルに送る共に、破断強度が4.5g/dおよび破断伸度が30%であり且つ酸化チタンを0.45重量%含有するポリエステルマルチフィラメント糸(セミダル糸)(225デニール/228フィラメント)を鞘糸用の糸として用いて、この鞘糸用の糸をオーバーフィード率36%で同じエアノズルに送り、エアノズルの空気圧5.8kg/cm2、エアノズルから取り出された芯鞘型絡合糸の引き取り速度200m/分の条件下に芯糸用の糸と鞘糸用の糸を空気絡合させて、芯鞘型絡合糸を製造した後、巻き取らずに、低速で回転する1対のニップローラーと高速で回転する1対のニップローラーからなる張力付加装置に直接供給して40%の引き取り率で伸長して、芯鞘型絡合糸における芯糸を切断して、切断された糸と切断されていない糸とが絡んでいる絡合部Aと切断されていない糸のみが絡んでいる絡合部Bを糸の長さ方向に不規則なピッチで存在する構造加工糸を製造した。
【0048】(2) 上記(1)で得られた構造加工糸は、図1の模式図に示されるような構造および形態を有していて、糸の繊度(太さ)がその長さ方向に沿って不規則に変化していた。この構造加工糸では、糸の最も細い部分の径は約0.4mm、最も太い部分の径は約2.0mmであり、細い部分と太い部分とで繊度の差が大きく且つそれが不規則に存在しており、しかも絡合部Aでは上記(1)の張力付加によって切断された芯糸(ブライト糸)が構造加工糸の表面に出現していて、絡合部Aと絡合部Bとで光沢が異なったものとなっており、変化に極めて富む、意匠性の極めて高い糸であった。また、この構造加工糸の破断強度は2.55g/dおよび破断伸度は15.3%であり、織編物などの製造に必要とされる充分な糸性能を有していた。
(3) 上記(1)で得られた構造加工糸を単独で用いて、口径3.5インチ、針数320本の筒編機にて編地を製造したところ、構造加工糸におけるランダムで且つ大きな太細斑とランダムな光沢斑に基づいて、色相、光沢、風合、触感などの点で変化に富む、極めて意匠性の高い編地が得られた。
【0049】《比較例3》
(1) 破断強度が4.9g/dおよび破断伸度が32%であり且つ酸化チタンを0.05重量%含有するポリエステルマルチフィラメント糸(ブライト糸)(75デニール/36フィラメント)を芯糸用の糸として用いて、この芯糸用の糸をオーバーフィード率1.7%で図2に示す断面構造を有するエアノズルに送る共に、破断強度が4.5g/dおよび破断伸度が30%であり且つ酸化チタンを0.45重量%含有するポリエステルマルチフィラメント糸(セミダル糸)(225デニール/228フィラメント)を鞘糸用の糸として用いて、この鞘糸用の糸をオーバーフィード率36%で同じエアノズルに送り、エアノズルの空気圧5.8kg/cm2、エアノズルから取り出された芯鞘型絡合糸の引き取り速度200m/分の条件下に芯糸用の糸と鞘糸用の糸を空気絡合させて、芯鞘型絡合糸を製造した。
(2) 上記(1)で得られた芯鞘型絡合糸では、糸の最も細い部分の径は約1.5mm、最も太い部分の径は約2.0mmであり、細い部分と太い部分とで繊度の差が極めて小さくて、交絡の斑による繊度の変化しか生じておらず、しかもブライト糸である芯糸は芯鞘型絡合糸の主として内側に存在し、セミダル糸である鞘糸が芯鞘型絡合糸の主として外側に存在するために、糸のほぼ全表面がセミダル糸によって覆われていて糸の長さ方向に沿って光沢の変化が生じておらず、全体に単一の光沢状態であり、意匠性に乏しいものであった。そして、この芯鞘型絡合糸を単独で用いて、口径3.5インチ、針数320本の筒編機にて編地を製造したところ、外観、色相、風合などの点で変化が極めてすくなく、意匠性に乏しいものであった。
【0050】
【発明の効果】本発明の構造加工糸は、糸の長さ方向の沿って、切断された糸と切断されていない糸とが絡んでいる絡合部Aと、切断されていない糸のみが絡んでいる絡合部Bを、糸の長さ方向に不規則なピッチで有していて、繊度(太さ)、色相、捲縮状態、絡合状態、光沢のうちの1つまたは2つ以上が少なくとも糸の長さ方向に沿って不規則になっていて極めて変化に富んでいるので、本発明の構造加工糸を用いて織編物などの布帛を製造したときには、外観、風合、色相、艶、触感などの点で従来に新しい感覚を有していて、意匠性に優れ、しかも高級感のある布帛を得ることができるそして、本発明の構造加工糸は、強度などの力学的特性においても優れているので、製糸工程や製編織工程を断糸などを生ずることなく円滑に行うことができる。さらに、本発明の方法による場合は、上記した優れた特性を有する構造加工糸を、複雑な製造工程や処理工程、余分な製造設備などを要することなく、簡単な工程や設備で、簡単に且つ円滑に製造することができる。そして、本発明の構造加工糸を用いて得られる織編物などの布帛は、上記したように外観、風合、色相、艶、触感などの点で従来に新しい感覚を有していて意匠性に優れ、しかも高級感があるので、衣料用、内装用をはじめとして種々の用途に有効に使用することができる。
【出願人】 【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
【識別番号】597023156
【氏名又は名称】栗東合繊株式会社
【出願日】 平成9年(1997)2月3日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】辻 良子
【公開番号】 特開平10−219540
【公開日】 平成10年(1998)8月18日
【出願番号】 特願平9−34435