トップ :: D 繊維 紙 :: D02 糸;糸またはロ−プの機械的な仕上げ;整経またはビ−ム巻き取り

【発明の名称】 ポリエステル系異収縮混繊糸
【発明者】 【氏名】海野 光宏
【氏名】徳永 敏幸
【課題】嵩高性ばかりでなく、ソフト感、反発性、ハリ、腰等に優れ、しかも異収縮混繊糸を構成する各糸条間の染着性差によるイラツキのない織編物を得ることができるポリエステル系異収縮混繊糸を提供する。

【解決手段】熱収縮性の潜在捲縮性マルチフィラメント延伸糸条と自発伸長性マルチフィラメント糸条が交絡した異収縮混繊糸である。前記潜在捲縮性マルチフィラメント延伸糸条は極限粘度が下記式(1) 及び(2) を同時に満足する2種のポリエチレンテレフタレートがサイドバイサイド型に接合されたフィラメント群からなり、かつ単糸繊度は2〜10dである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 熱収縮性の潜在捲縮性マルチフィラメント延伸糸条と自発伸長性マルチフィラメント糸条が交絡した異収縮混繊糸であって、前記潜在捲縮性マルチフィラメント延伸糸条は極限粘度が下記式(1) 及び(2) を同時に満足する2種のポリエチレンテレフタレートがサイドバイサイド型に接合されたフィラメント群からなり、かつ単糸繊度が2〜10dであることを特徴とするポリエステル系異収縮混繊糸。
0.35≦η1 ≦0.55<η2 (1)0.08≦η2 −η1 ≦ 0.50 (2)ここで、η1 及びη2 は、前記サイドバイサイド型に接合されたフィラメントを構成するポリエチレンテレフタレートの極限粘度(dl/g) である。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、潜在捲縮性糸条と自発伸長性糸条が交絡したポリエステル系異収縮混繊糸に係わり、さらに詳しくは、製編織して染色加工すれば、嵩高性ばかりでなく、ソフト感、反発性、ハリ、腰等に優れ、しかも混繊糸を構成する各糸条間の染着差による色斑、いわゆるイラツキのない布帛を得ることができるポリエステル系異収縮混繊糸に関するものである。
【0002】
【従来の技術】織編物にふくらみ感と嵩高性を付与する手法の1つとして異収縮混繊糸が広く用いられている。しかし、一般的な異収縮混繊糸は、織編物の組織拘束下においては収縮差を発現し難く、嵩高性の点では未だ不十分である。
【0003】このため、最近では、低収縮成分に自発伸長性糸条を用いた異収縮混繊糸が種々提案されている。この混繊糸を使用すれば、組織拘束下においても自発伸長性糸条が染色加工工程での熱処理により伸長するので、織編物に十分な嵩高性を付与することが可能となった。しかしながら、自発伸長性糸条は、織編物の表面にループ状に突出し、ソフト感等の風合表現には大きく寄与するものの、ハリ、腰や反発性等の風合には殆ど寄与しないため、これらの風合を表現するには高収縮成分の特性に頼らざるを得ず、高収縮性糸条の選択が重要である。
【0004】このため、例えば、特開平4-24234号公報には、高収縮成分に潜在捲縮性糸条を用いた混繊糸が開示されており、これによりソフトで柔軟、かつドレープ性に優れた織編物を得ることが可能となった。しかしながら、この潜在捲縮性糸条については、通常のポリエステルとイソフタル酸を共重合したポリエステルとをサイドバイサイド型に接合された複合繊維の例が示されているのみであり、このような潜在捲縮性糸条を使用すればドレープ性を向上させることはできるが、反発性やハリ、腰は十分に満足できるものではなかった。
【0005】また、自発伸長性糸条と混繊して異収縮混繊糸とする高収縮性糸条としては、織編物の形態安定性をよくするために延伸糸並みの強伸度特性を有する糸条を使用する必要がある。ところが、自発伸長性糸条はその内部構造に起因して濃染性を示すが、延伸糸条は一般に濃染性を示さないので、これらを混繊して異収縮混繊糸とすれば、構成成分の染着性差(発色性差)により織編物にイラツキが発生し、商品価値が著しく低下するという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の問題を解決し、嵩高性ばかりでなく、ソフト感、反発性、ハリ、腰等に優れ、しかも異収縮混繊糸を構成する各糸条間の染着性差によるイラツキのない織編物を得ることができるポリエステル系異収縮混繊糸を提供することを技術的な課題とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、熱収縮性の潜在捲縮性マルチフィラメント延伸糸条と自発伸長性マルチフィラメント糸条が交絡した異収縮混繊糸であって、前記潜在捲縮性マルチフィラメント延伸糸条は極限粘度が下記式(1) 及び(2) を同時に満足する2種のポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する。)がサイドバイサイド型に接合されたフィラメント群からなり、かつ単糸繊度が2〜10dであることを特徴とするポリエステル系異収縮混繊糸を要旨とするものである。
0.35≦η1 ≦0.55<η2 (1)0.08≦η2 −η1 ≦ 0.50 (2)ここで、η1 及びη2 は、前記サイドバイサイド型に接合されたフィラメントを構成するPETの極限粘度(dl/g) である。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明する。
【0009】本発明のポリエステル系異収縮混繊糸は、潜在捲縮性マルチフィラメント延伸糸条と自発伸長性マルチフィラメント糸条とが交絡したものであるが、まず、潜在捲縮性マルチフィラメント延伸糸条(以下、潜在捲縮糸と略記する。)について説明する。
【0010】この潜在捲縮糸は、極限粘度が前記式(1) 及び(2) を同時に満足する2種のPETがサイドバイサイド型に接合されたフィラメント群からなるマルチフィラメント延伸糸条である必要がある。潜在捲縮糸を構成する各フィラメントが、前記範囲にある2種類のPETがサイドバイサイド型に接合されて形成されていることにより、製編織して得られる布帛の反発性、ハリ、腰を格段に向上させることができるばかりでなく、通常の延伸糸条に比べて染色性が向上し、濃染化が可能となるので、濃染性を有する自発伸長性糸条と複合化してもイラツキの問題が発生することはない。
【0011】これらの特性が向上する理由は明確ではないが、本発明の目的を達成するためには、低粘度側のPETの極限粘度η1 は0.35〜0.55dl/g、高粘度側のPETの極限粘度η2 は0.55dl/gより高く かつ、η2 とη1 との差は0.08〜0.50dl/gであることが必要である。
【0012】η1 が0.35dl/gより小さいと粘度が低すぎて紡糸安定性が不良となり、0.55dl/gより高いと濃染性化が困難となり、自発伸長性糸条と複合化した場合、イラツキ現象が発生しやすくなる。また、高粘度側PETのη2 が0.55dl/g以下になると、潜在捲縮糸の強度が低下して糸切れや毛羽が発生しやすくなるか、又は紡糸が困難となる。さらに、η2 とη1 との差が0.08dl/g未満になると、2種のPETの特性差が小さくなり、織編物の反発性やハリ, 腰を向上させることができないか、又はイラツキが発生する。また、η2 とη1 との差が0.50dl/gより大きいと、粘度差が大きすぎて安定した紡糸が困難となる。
【0013】したがって、潜在捲縮糸を構成する2種のPETの極限粘度は前記範囲内にあることが必要であり、風合特性、イラツキや紡糸安定性等を総合的に考慮すると、η1 は 0.4〜0.52dl/g、η2 は 0.6〜0.8dl/g 、η2 とη1 との差は 0.1〜0.35dl/gが好ましい。
【0014】また、本発明でいうPETとは常法により製造されたものであり、重縮合反応時に副反応により生成するジエチレングリコール等がPET主鎖中に共重合されたものでもよく、触媒、艶消剤、酸化防止剤等の各種添加剤を含んだものでもよい。
【0015】さらに、潜在捲縮糸は、上述のような2種類のPETがサイドバイサイド型に接合されたフィラメント群からなることが必要である。潜在捲縮糸としては、2種類のPETを偏心芯鞘型に複合紡糸して得られる糸条もあるが、この潜在捲縮糸はサイドバイサイド型に比べて織編物の反発性やハリ、腰の向上効果が小さいので、サイドバイサイド型フィラメントを用いる必要がある。この場合、低粘度側のPETと高粘度側のPETの重量比率としては、30:70〜70:30の範囲が織編物の風合面から好ましい。
【0016】本発明における潜在捲縮糸は、上記のようなフィラメント群で構成されているが、各フィラメントの繊度(単糸繊度)は2〜10d、好ましくは 2.5〜6dであり、かつ延伸されたものである。単糸繊度が2d未満になると、織編物の反発性やハリ, 腰が不十分となり、10dを超えると織編物が硬くなる。また、潜在捲縮糸が延伸糸条でない場合は、織編物の形態が外力によって変形しやすくなるので好ましくない。延伸糸条とは、一般には常法で紡糸、延伸された糸条をいうが、本発明ではこのような糸条ばかりでなく、延伸糸条並みの強伸度特性を有する糸条も含まれる。すなわち、本発明における延伸糸条とは熱収縮性を有し、強度1.5g/d以上、伸度50%以下で、かつ、本発明の要件を満足するものであれば、どのような製法で得られたものでもよい。
【0017】なお、潜在捲縮糸は、例えば、極限粘度が前記式(1),(2) を満足するように調整した2種類のPETをそれぞれ計量しながらサイドバイサイド型複合紡糸装置に供給し、常法にしたがって紡糸、延伸することにより製造することができる。
【0018】次に、潜在捲縮糸とともに本発明の異収縮混繊糸を構成する自発伸長性マルチフィラメント糸条(以下、自発伸長糸と略記する。)について説明する。自発伸長糸とは、沸騰水中での熱水収縮率、又は 100〜 180℃の乾熱中での乾熱収縮率が0%以下であるポリエステルマルチフィラメント糸条をいう。したがって、このような自発伸長性を有するポリエステルマルチフィラメント糸条であれば特に制限されることなく本発明に適用することができる。
【0019】従来の自発伸長糸には、熱水収縮率、乾熱収縮率共に0%以下のものや、熱水収縮率は0%より高く、 100℃よりも高い温度での乾熱収縮率は0%以下といったもの等、種々の自発伸長糸があり、本発明ではいずれも採用できるが、織編物に嵩高性やソフト感を十分に発現させるためには、次のような自発伸長糸がより好ましい。すなわち、まず、熱水処理により自発伸長し、次にこの熱水処理糸を140〜 180℃の温度で乾熱処理したときにさらに自発伸長する自発伸長糸が好ましい。これにより、本発明の異収縮混繊糸を用いた織編物を熱処理すれば、潜在捲縮糸と自発伸長糸との糸長差が大きくなり、嵩高性やソフト感に優れたものとなる。自発伸長糸の熱水収縮率や乾熱収縮率は特に限定されるものではないが、自発伸長性が高すぎると織編物にふかつき感が生じるので、通常は熱水収縮率は0%〜−5%、乾熱収縮率は−2%〜−10%の範囲が好ましい。
【0020】また、自発伸長糸は、異形断面や中空断面、あるいは長さ方向に太細斑を有するフィラメント群からなるものであってもよく、構成ポリマーとしては、PET及びPETを主体とする共重合ポリエステルが好ましい。なお、自発伸長糸は最終的には織編物の表面にループ状に突出するので、その単糸繊度は好ましくは5d以下、さらには3d以下、特に 1.5d以下が好ましい。
【0021】自発伸長糸の製法は特に限定されるものではなく、例えば、高速紡糸によって得られるポリエステル高配向未延伸糸を延伸するか又は延伸することなく高オーバーフィード率で弛緩熱処理することにより製造することができる。
【0022】本発明の異収縮混繊糸は、前記した潜在捲縮糸と自発伸長糸が交絡したものであるが、交絡数としては工程通過性や織編物の品位の面から20〜 100個/mが好ましい。また、交絡させる方法としては、潜在捲縮糸と自発伸長糸を引き揃えた状態で市販のインターレースノズルに供給し、高圧流体の作用により交絡させる一般的方法を採用することができる。交絡処理時のオーバーフィード率は−1%〜5%、流体の供給圧力は 0.5〜8kg/cm2の範囲で適宜調整すればよい。
【0023】
【実施例】次に、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、極限粘度、熱水収縮率及び乾熱収縮率は次のようにして測定した。
1.極限粘度フェノールとテトラクロロエタンの等重量混合溶媒を用い、温度30℃で測定した。
2.熱水収縮率JIS−L−1090B法に準拠して測定した。
3.乾熱収縮率熱水収縮率の測定方法において、沸騰水を用いる代わりに乾熱オーブンを用い、温度 180℃で測定した。
【0024】実施例1極限粘度が0.48dl/gのPETと極限粘度が0.65dl/gのPETを重量比50:50として紡糸速度3200m/分でサイドバイサイド型に複合紡糸し、次いで延伸することにより50d/12fの潜在捲縮糸を得た。なお、得られた潜在捲縮糸の強度は3.2g/d、伸度は24%、熱水収縮率は 4.5%であった。
【0025】一方、極限粘度が0.65dl/gのPETを、紡糸速度3200m/分で高速紡糸して得られたPET高配向未延伸糸を、供給速度 800m/分、非接触ヒータ温度 500℃、オーバーフィード率20%で弛緩熱処理し、80d/96fの自発伸長糸を得た。得られた自発伸長糸の熱水収縮率は−1.8 %、また、熱水処理し、風乾した後の糸条の乾熱収縮率は−5.3 %であった。
【0026】次に、前記潜在捲縮糸と自発伸長糸とを引き揃えて 800m/分の速度で交絡処理を施し、 133d/108 fの異収縮混繊糸を得た。このときの交絡処理条件は、デュポン社製のインターレースノズル(タイプJD−1)を用い、空気圧力4kg/cm2、オーバーフィード率 0.5%とした。
【0027】得られた異収縮混繊糸に 350T/Mで追撚したものを経糸に、前記潜在捲縮糸2本を 800T/Mで合撚したものを緯糸に用いて、経糸密度 112本/2.54cm、緯糸密度85本/2.54cmの平織物を試作し、通常の染色仕上加工を行ったところ、嵩高性、ソフト感、反発性、ハリ、腰に優れ、かつ、イラツキのない優れた織物が得られた。
【0028】実施例2極限粘度が0.48dl/gのPETと極限粘度が0.65dl/gのPETを重量比50:50として紡糸速度3200m/分でサイドバイサイド型に複合紡糸し、80d/24fの高配向未延伸糸Aを得た。また、極限粘度が0.65dl/gのPETを、紡糸速度3200m/分で高速紡糸して 66d/72fの高配向未延伸糸Bを得た。
【0029】次いで、2フィードタイプの糸加工機を用い、高配向未延伸糸Aを延伸倍率1.5 倍、温度 180℃で延伸して潜在捲縮糸とし、一方、高配向未延伸糸Bを非接触ヒータ温度 450℃、オーバーフィード率25%で弛緩熱処理して自発伸長糸とし、連続して両糸条を引き揃え、実施例1と同様の条件で交絡処理を施して 135d/96fの異収縮混繊糸を得た。なお、上記糸加工において、交絡処理を施すことなく高配向未延伸糸AとBをそれぞれ上記と同様の条件で糸加工し、潜在捲縮糸と自発伸長糸を単独で採取したところ、潜在捲縮糸の強度は3.1g/d、伸度は28%、熱水収縮率は 4.7%であり、自発伸長糸の熱水収縮率は−1.6 %、また、熱水処理し、風乾した後の糸条の乾熱収縮率は−5.0 %であった。
【0030】得られた異収縮混繊糸を 400T/Mで追撚したものを経糸に、常法で得られた通常のPET延伸糸100d/36fを1200T/Mで追撚したものを緯糸に用いて、経糸密度 110本/2.54cm、緯糸密度83本/2.54cmの平織物を試作し、通常の染色仕上加工を行ったところ、嵩高性、ソフト感、反発性、ハリ、腰に優れ、かつ、イラツキのない織物が得られた。
【0031】比較例1、2低粘度側のPETを、極限粘度が0.30dl/gのPETに変更した以外は実施例2と同様にして複合紡糸を行った(比較例1)が、紡糸の調子が悪く、安定して糸条を得ることができなかった。また、極限粘度が0.38dl/gと0.90dl/gのPETを用いて複合紡糸を行った(比較例2)場合も紡糸の調子が悪く、糸条を得ることができなかった。
【0032】比較例3低粘度側のPETを、極限粘度が0.59dl/gのPETに変更した以外は実施例2と同様にして異収縮混繊糸を得た後、織物を試作した。得られた織物は、嵩高性やソフト感には優れていたが、反発性やハリ、腰が若干不足しており、イラツキ現象も見られた。
【0033】
【発明の効果】本発明のポリエステル系異収縮混繊糸を製編織すれば、嵩高性ばかりでなく、ソフト感、反発性、ハリ、腰等に優れ、しかも異収縮混繊糸を構成する各糸条間の染着性差によるイラツキのない布帛を得ることが可能となる。
【出願人】 【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
【出願日】 平成9年(1997)2月6日
【代理人】
【公開番号】 特開平10−219539
【公開日】 平成10年(1998)8月18日
【出願番号】 特願平9−23439