トップ :: D 繊維 紙 :: D02 糸;糸またはロ−プの機械的な仕上げ;整経またはビ−ム巻き取り

【発明の名称】 複合仮撚加工糸及びその製造方法
【発明者】 【氏名】川崎 章
【課題】仕上げセット効果に優れて、かつ、シャリ感の強い、擬麻調の風合いを持った従来には無かった新しい感覚の製品編地が得られる横編ニット用糸およびその製造方法を提供する。

【解決手段】50重量%以上のアクリルフィラメント糸と、50重量%以下のポリエステルフィラメント糸とを複合糸とした後、該ポリエステルフィラメント糸の溶融点温度より0〜40℃低いヒーター温度で仮撚加工を施すことを特徴とする複合仮撚加工糸の製造方法と、その方法の実施により得られる複合仮撚加工糸。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 50重量%以上のアクリルフィラメント糸と50重量%以下のポリエステルフィラメント糸との複合糸であって、該ポリエステルフィラメント糸の一部のフィラメントが溶融しており、糸の長手方向に断続的に他のフィラメントと溶着していることを特徴とする複合仮撚加工糸。
【請求項2】 50重量%以上のアクリルフィラメント糸と50重量%以下のポリエステルフィラメント糸とを複合糸とした後、該ポリエステルフィラメント糸の溶融点温度より0〜40℃低いヒーター温度で仮撚加工することを特徴とする複合仮撚加工糸の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は複合仮撚加工糸及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に衣料に使用される糸は、種々の繊維糸を撚糸、糸加工、織編組物等の各工程を経て、風合い、外観などが個性的なものに形作られているが、中でも横編ニット用に使用される糸は糸染されて染糸で提供されている。そして一般に、横編ニット製品は、染糸が編立てられ編地とされた後、この編地がそのまま成形仕上セットされることが多い。
【0003】アクリル繊維は、その最大の特徴が比較的低温で熱可塑性に優れることにあり、編立てられた編地にスチームアイロンからのスチームを浮かし掛けするだけで容易に成形仕上セットができることから、横編ニット製品に好んで使用される。なかでもアクリル繊維のフィラメント糸は、独特の光沢、シャリ感などの特徴から、春夏用ニット製品として好まれ、婦人用セーターなどに使用されることが多い。
【0004】また、アクリルフィラメント糸は、多くは、仮撚加工が施された後に糸染されて横編ニット用に供給されているが、通常、アクリル繊維は溶融温度が明確ではなく、高温で仮撚加工を施しても明確には融着はしないばかりか、加工時の温度のわずかな変動によって加工糸の形態や風合いにバラツキが発生するという問題があった。また、わずかにクビレ状の未解撚部分ができても、その後のわずかな張力によって未解撚部分が解消してしまい、特徴が無くなってしまうという問題があった。
【0005】一方、ポリエステル繊維は、熱可塑性ではあるが、アクリル繊維の様にスチームアイロンでの仕上セットではセット効果がなく、編組織を安定させるためには高い温度で仕上げセットを必要とするために、特別なセット用機械装置を必要とするが、現状ではまだ性能的に十分なものが開発されていないため、高価になり横編ニット製品にはほとんど使用されていない。
【0006】また、ポリエステルフィラメント糸は、フィラメント糸の溶融点近辺の温度で仮撚加工を施すことにより、フィラメントの一部が融着し、擬麻ライクな加工糸が得られることは周知の技術となっているが、溶融点が通常255〜260℃近辺の温度とされていて、この溶融点近辺の高温で仮撚加工するため、糸掛作業などが困難であるなど加工管理上の問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、アクリル繊維とポリエステル繊維のもつ特徴を併せもつ、従来なかった新しい風合いとシャリ感をもつ、横編ニット用素材としての複合仮撚加工糸及びその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者は、上記課題を達成するため、前記のアクリル繊維とポリエステル繊維の仮撚加工についての問題点に着目し、これらの問題点を解決し、かつ、編上がりの編地にスチームアイロンからのスチームを浮かし掛けするだけで容易に成形仕上セットができる、新しい加工糸を得るために、種々の試作検討を繰り返した結果、本発明を完成させるに至った。
【0009】すなわち、本発明は、50重量%以上のアクリルフィラメント糸と50重量%以下のポリエステルフィラメント糸との複合糸であって、該ポリエステルフィラメント糸の一部のフィラメントが溶融しており、糸の長手方向に断続的に他のフィラメントと溶着していることを特徴とする複合仮撚加工糸、であり、50重量%以上のアクリルフィラメント糸と50重量%以下のポリエステルフィラメント糸とを複合糸とした後、該ポリエステルフィラメント糸の溶融点温度より0〜40℃低いヒーター温度で仮撚加工することを特徴とする複合仮撚加工糸の製造方法、である。
【0010】以下に本発明を詳細に説明する。本発明の複合仮撚加工糸の製造方法は、まず、アクリルフィラメント糸とポリエステルフィラメント糸とを複合糸としてから仮撚加工する点に第1の特徴がある。アクリルフィラメント糸とポリエステルフィラメント糸とを複合糸とする方法は、合糸または合撚糸とするか、インターレースやタスランタイプといわれる方法でエアー交絡させるかのいずれの方法でもよい。
【0011】本発明で用いる複合糸は、アクリルフィラメント糸が50重量%以上で、ポリエステルフィラメント糸が50重量%以下となるようなデニールの糸を使用する。さらに好ましくは、アクリルフィラメント糸が65重量%以上で、ポリエステルフィラメント糸が35重量%以下となるようなデニールの糸の組み合わせであり、風合いとシャリ感の効果が顕著に表現できる。
【0012】次に、ポリエステルフィラメント糸の溶融点温度より0〜40℃低いヒーター温度で仮撚加工することにより、ポリエステルフィラメントの糸の長手方向のフィラメントの一部を断続的に溶融、接着させる点に第2の特徴がある。まず、第1の特徴を詳しく説明する。本発明で使用するアクリルフィラメント糸は、ポリアクリロニトリルを80重量%以上含むアクリロニトリル系共重合体から形成されるものである。これを少なくとも50重量%以上使用し、ポリエステルフィラメント糸が50重量%以下となるような混用割合とすることにより、横編ニットに使用するとき、編上がりの編地にスチームアイロンからのスチームを浮かし掛けするだけで容易に成形仕上セットができ、編組織の安定した優れた製品編地が得られる。アクリルフィラメント糸の混用率を50重量%以下とした場合は、横編ニットに使用するとき、編上がりの編地にスチームアイロンからのスチームを浮かし掛けするだけでは成形仕上セットが不十分で、カーリングが解消しなっかたり編みぐせが残ったりして、安定な性状を有する横編ニット製品とすることが困難となる。
【0013】また、一方、ポリエステルフィラメント糸としては、通常のポリエステル繊維、常圧分散可染タイプ、常圧カチオン可染タイプなどの原糸が挙げられ、好ましく用いられるのは、常圧分散可染タイプ、常圧カチオン可染タイプであり、ポリエステルフィラメントの糸の長手方向の一部を断続的に溶融、接着させることがより多くでき、よりシャリ感の強い擬麻調の風合いを持った、従来には無かった、本発明の特徴である、新しい感覚の製品編地が得られる加工糸を得ることができる。
【0014】つぎに、第2の特徴を詳しく説明する。本発明の複合仮撚加工糸の製造方法は、アクリルフィラメント糸とポリエステルフィラメント糸とを複合糸とした後、該ポリエステルフィラメント糸の溶融点温度より0〜40℃低いヒーター温度で仮撚加工を施して、ポリエステルフィラメントの一部を断続的に溶融、接着させることに特徴がある。さらに好ましくは、ポリエステルフィラメント糸の溶融点温度より5〜30℃低いヒーター温度で仮撚加工することが、加工時の糸掛作業性と加工糸の強度保持の点から、好ましい。
【0015】仮撚加工のヒーター温度を、ポリエステルフィラメント糸の溶融点温度以上の高い温度に設定した場合は、ポリエステルフィラメント100%糸の場合と同様にアクリルフィラメント糸とポリエステルフィラメント糸との複合糸であっても、加工時の糸掛けが困難になるし、糸掛けができても、融着も大きすぎて加工糸の強度が低下する。
【0016】また、仮撚加工のヒーター温度をポリエステルフィラメント糸の溶融点温度より40℃以上低い低温に設定した場合は、ポリエステルフィラメントの一部を融着させることはできないため、クビレのないシャリ感の少ない製品しか得られない。本発明の製造方法では、アクリルフィラメント糸とポリエステルフィラメント糸との複合糸を、該ポリエステルフィラメント糸の溶融点温度より0〜40℃低いヒーター温度で仮撚加工を施すことによって、ポリエステルフィラメント糸のフィラメントの一部分が溶融して接着剤的な役割をして、ポリエステルのフィラメント同士およびポリエステルとアクリルのフィラメントとを、糸の長手方向において断続的に融着させることができる。得られる複合仮撚加工糸の長手方向における断続的な融着の状態は、複合糸の長さ方向に断続的に現れるクビレとして計数できる。
【0017】通常、一般に行われている、融着させることのないヒーター温度設定で得られる仮撚加工糸では、クビレは発生しないか、わずかの数での発生が欠点となるためクビレが発生しないように加工条件を設定する。また、強い撚のある糸を使用してその撚方向と同方向の加撚方向での仮撚加工を施して得られる、いわゆる未解撚仮撚加工糸といわれるものの場合は、クビレはフィラメントが融着したものではなく、実撚が解撚せずに未解撚状態で部分的に残ったものである点で本発明の融着によるクビレとは異なる。
【0018】本発明の製造方法で得られた複合仮撚加工糸は、前記のごとく、糸の長さ方向に断続的に現れる、計数できるクビレが生ずる。そのクビレの1ヶ1ヶはミクロ的に見ると一様ではないが、大きくマクロ的に糸として編地として見ると均一なものとして見ることができる。本発明の複合仮撚加工糸は、ミクロ的に見ると、複合糸の構造およびヒーターとの関係、張力などの加工条件により、ポリエステルフィラメント糸の一部分が、点状で溶融したり、少し長さをもった線状で溶融したり、また、ポリエステルのフィラメント全部が溶融したり、ポリエステルのフィラメントの一部が溶融したりしている。また、複合仮撚加工糸の一部分で、糸を構成するポリエステルとアクリルのフィラメントの全部、両方の一部、片方の全部、片方の一部が融着するなどあらゆる接着の形態をもっている。
【0019】なお、本発明の複合仮撚加工糸は、クビレの1ヶ1ヶをミクロ的に見ると、アクリルフィラメント糸の中の一部の数本のフィラメントに、ポリエステルフィラメント糸の中の一部のフィラメントが極く短い長さで部分的に融着されているところが、糸の長手方向に断続して発生しているものが多い。また、中には、アクリルフィラメント糸を芯状にしてポリエステルフィラメント糸が巻き付いた状態で極く短い長さだけ部分的に融着されて、未解撚状に断続して発生しているところもある。
【0020】これらの現象が、クビレ部分として認識され、その長さ、間隔、とも糸の長手方向に、無作為的に断続して発生しているため、糸全体としては均一に見える。これによって、ポリエステルフィラメントの一部がアクリルフィラメント糸の中で、糸の長手方向に断続的に接着剤的に融着し、この加工糸を使用した横編ニット製品にシャリ感の強い擬麻調の風合いをもたらし、従来には無かった新しい感覚の製品編地が得られる。
【0021】またアクリルフィラメント糸とポリエステルフィラメント糸との複合糸であるため、ポリエステルフィラメント糸の溶融点近辺の温度であっても糸全体が溶融することが無く、仮撚加工時の糸掛け作業が容易にできるメリットもある。
【0022】
【発明の実施の形態】実施例により、本発明を詳細に説明する。なお、評価法は以下の通り。
(1)クビレの数糸の長手方向1メートルあたりの数を目視で計数し、次の基準で評価した。
◎:クビレの数が、糸の長手方向1メートルあたり100以上。
【0023】○:クビレの数が、糸の長手方向1メートルあたり50〜100。
×:クビレの数が、糸の長手方向1メートルあたり50以下。
(2)横編ニット用としての編立て性14ゲージの横編機を使用し、容易に編地ができることと編地中のキズの箇所を計数し次の基準で評価した。
【0024】○:14ゲージの横編機で容易に編立てでき、35cm×1mの天竺組織の編地にキズが1カ所以下。
×:14ゲージの横編機での編立てでき、35cm×1mの天竺組織の編地にキズが2カ所以上発生。
(3)編地の仕上げセット性上記(2)で編立てた天竺組織の編地に、スチームアイロンでのスチームの浮かし掛けでの組織のカーリングを計測し、セット効果が十分あり、安定した編地製品を得られることを次の基準で評価した。
【0025】○:仕上げセット後の天竺組織の編地のカーリングが1cm以下。
△:仕上げセット後の天竺組織の編地のカーリングが1〜2cm。
×:仕上げセット後の天竺組織の編地のカーリングが2cm以上。
(4)製品風合従来のアクリルフィラメント糸の仮撚加工糸の編地製品と比較により、5名のパネラーで触感判定し、シャリ感が強く、セーター製品として好まれるものであることを次の基準で評価した。
【0026】○:従来のアクリルフィラメント糸の仮撚加工糸の編地製品と比較して、2名以上のパネラーが触感判定で、シャリ感が強く、セーター製品として好まれるものであると判断した。
×:従来のアクリルフィラメント糸の仮撚加工糸の編地製品と比較して、1名以下のパネラーが触感判定で、シャリ感が強く、セーター製品として好まれるものであると判断した。
【0027】
【実施例1】150デニールで60フィラメントのアクリルフィラメント糸(旭化成工業(株)製、商標ピューロン)と30デニールで12フィラメントの高速紡糸のポリエステルフィラメント糸(旭化成工業(株)製、商標テック)とをZ方向に撚数1メートルあたり70回で合撚して複合糸とした後、この複合糸を仮撚加工ヒーター温度230℃の条件で仮撚加工を施して仮撚加工糸を得た。
【0028】得られた加工糸は、糸の長手方向に断続的にポリエステルフィラメントの一部が融着したクビレを糸長さ1メートルあたり85乃至110有する加工糸となった。得られた加工糸を糸染した後、横編ニット用として供給し製品を作成したところ、編立てが容易にでき、かつ編地の仕上セットがスチームアイロンからのスチームの浮かし掛けで容易にでき、安定した編地製品を得た。また製品はシャリ感の強い風合いで梨地調の表面を持った従来無かった感覚の製品となり、婦人用春夏向きのリネン調の風合いをもつセーターとして使用して好評であった。
【0029】
【実施例2】実施例1と同様の組み合わせのアクリルフィラメント糸とポリエステルフィラメント糸とを引き揃え巻きして複合糸とした後、この複合糸を仮撚加工ヒーター温度設定230℃の条件で実施例1と同様に仮撚加工を施して加工糸を得た。得られた加工糸は同様に、糸の長手方向に断続的にポリエステルフィラメントの一部が融着したクビレを糸長さ1メートルあたり80乃至110ケ有する加工糸となった。
【0030】得られた加工糸を同様に糸染した後、横編ニット用として供給し、製品を作成したところ編立てが容易にでき、かつ編地の仕上げセットがスチームアイロンからのスチームの浮かし掛けで容易にでき、安定した編地製品を得た。また製品はシャリ感の強い風合いで梨地調の表面を持った従来無かった感覚の製品となり、婦人用春夏向きのリネン調の風合いをもつセーターとして使用して好評であった。
【0031】
【実施例3】100デニールで50フィラメントのアクリルフィラメント糸(旭化成工業(株)製、商標ピューロン)と50デニールで36フィラメントの常圧分散可染タイプのポリエステルフィラメント糸(旭化成工業(株)製、商標BVJ)とを、引揃状態でインターレースタイプのエアー加工ノズルを通過させる時、エアー圧1平方センチメートルあたり1.5kgのエアーを噴射して交絡(糸長さ1メートルあたり交絡数20ケ)させて複合しとした後、得られた複合糸を仮撚加工機に供給し、仮撚加工のヒーター温度225℃の条件で仮撚加工を施して加工糸を得た。
【0032】得られた加工糸は、糸の長手方向に断続的にポリエステルフィラメントの一部が融着したクビレを糸長さ1メートルあたり120乃至150ケ有する加工糸となった。得られた加工糸を糸染した後、横編ニット用として供給し、製品を作成したところ編立てが容易にでき、かつ編地の仕上げセットがスチームアイロンからのスチームの浮かし掛けで容易にでき、安定した編地製品を得た。また製品はシャリ感の強い風合いで梨地調の表面を持った従来無かった感覚の製品となり、ラミー調の風合いをもつ婦人用春夏向きのセーターとして使用して好評であった。
【0033】
【実施例4】100デニールで50フィラメントのアクリルフィラメント糸(旭化成工業(株)製、商標ピューロン)と50デニールで36フィラメントの常圧カチオン可染タイプのポリエステルフィラメント糸(旭化成工業(株)製、商標CVT)とを、引き揃え巻して複合糸とした後、得られた複合糸を仮撚加工機に供給し、加工ヒーター温度220℃の条件で仮撚加工を施して加工糸を得た。得られた加工糸は糸の長手方向に断続的にポリエステルフィラメントの一部が融着したクビレを糸長さ1メートルあたり130乃至150ケ有する加工糸となった。得られた加工糸を糸染した後、横編ニット用として供給し製品を作成したところ、編み立てが容易にできかつ編地の仕上げセットがスチームアイロンからのスチームの浮かし掛けで容易にでき、安定した編地製品を得た。また製品はシャリ感の強い風合いで梨地調の表面を持った従来無かった感覚の製品となり、ラミー調の風合いをもつ婦人用春夏向きのセーターとして使用して好評であった。
【0034】
【実施例5】150デニールで60フィラメントのアクリルフィラメント糸(旭化成工業(株)製、ピューロン)と20デニールで6フィラメントの高速紡糸のポリエステルフィラメント糸(旭化成工業(株)製、テック)とをZ方向に撚数1メートルあたり70回で合撚して複合糸とし、得られた複合糸を仮撚加工ヒーター温度230℃の条件で仮撚加工を施して加工糸を得た。
【0035】得られた加工糸は、糸の長手方向に断続的にポリエステルフィラメントの一部が融着したクビレを糸長さ1メートルあたり70乃至90ケ有する加工糸となった。得られた加工糸を糸染した後、横編ニット用として供給し、製品を作成したところ両加工糸とも編み立てが容易にでき、かつ編地の仕上げセットがスチームアイロンからのスチームの浮かし掛けで容易にでき、安定した編地製品を得た。また製品はシャリ感の強い風合いで梨地調の表面を持った従来無かった感覚の製品となり、リネン調の風合いで婦人用春夏向きのセーターとして使用して好評であった。
【0036】
【実施例6】75デニールで38フィラメントのアクリルフィラメント糸(旭化成工業(株)製、ピューロン)と75デニールで36フィラメントの高速紡糸のポリエステルフィラメント糸(旭化成工業(株)製、テック)とをZ方向に撚数1メートルあたり70回で合撚して複合糸とし、得られた複合糸を仮撚加工ヒーター温度230℃の条件で仮撚加工を施して加工糸を得た。
【0037】得られた加工糸は、糸の長手方向に断続的にポリエステルフィラメントの一部が融着したクビレを糸長さ1メートルあたり100乃至120ケ有する加工糸となった。得られた加工糸を糸染して横編ニット用として供給し製品を作成したところ、編立ては容易にできたが、編地の仕上セットにおいて、天竺組織を主とした製品ではスチームアイロンからのスチームの浮かし掛けでは完全なセット効果が得られなかったが、製品の一部分に天竺組織を入れた製品の場合には、安定した編地製品となり、セーター製品として使用された。なお編地としては、シャリ感の強い風合いで、梨地調の表面を持ったものとなった。
【0038】
【比較例1】実施例1と同様の原糸使用条件と複合条件での複合糸を使用して、仮撚加工時のヒーター温度を260℃に設定して仮撚加工を実施したところ、糸がヒーターの中での停止時にポリエステルフィラメントが溶融して仮撚への糸掛け作業が非常に困難で、加工が進行できなかった。
【0039】
【比較例2】なおまた、実施例1と同様の原糸使用条件と複合条件での複合糸を使用して、仮撚加工時のヒーター温度を210℃に設定して実施したところ、糸は容易に通過したがポリエステルフィラメントが溶融したものとはならずに一般のストレートな仮撚加工糸となり、通常のアクリルフィラメント糸の加工糸と変わらない風合いと表面をもつ編地しか得られなかった。
【0040】
【比較例3】75デニールで38フィラメントのアクリルフィラメント糸(旭化成工業(株)製、ピューロン)と100デニールで50フィラメントの高速紡糸のポリエステルフィラメント糸(旭化成工業(株)製、テック)とをZ方向に撚数1メートルあたり70回で合撚して複合糸とし、得られた複合糸を仮撚加工温度230℃の条件で仮撚加工を施して加工糸を得た。
【0041】得られた加工糸は、糸の長手方向に断続的にポリエステルフィラメントの一部が融着したクビレを糸長さ1メートルあたり70乃至80有する加工糸となった。得られた加工糸を糸染して横編ニット用として供給し、製品を作成したところ編み立ては容易にできたが、編地の仕上げセットはスチームアイロンからのスチームの浮かし掛けでは不完全で編地にカーリングが残り、安定した編地製品とはならなかったため横編用として採用できなかった。
【0042】
【比較例4】150デニールで60フィラメントのアクリルニトリルフィラメント糸(旭化成工業(株)製、ピューロン)をZ方向に撚数1メートルあたり70回で撚糸し、この撚糸を仮撚加工温度230℃の条件で仮撚加工を施したが、得た加工糸には融着による糸の長手方向の断続的なクビレは得られなかった。また同様に加工温度245℃の条件で仮撚加工を施して得た加工糸は、糸の長手方向に若干の断続的に未解撚によるクビレを持った加工糸となったが、加工温度のわずかな上下変動によってクビレの発生程度に大きな差ができ安定した加工糸とならなかった。その上得られた若干の未解撚によるクビレもその後の取り扱い時のわずかな張力によって簡単に解消し、編立てに耐えられるものではなかった。
【0043】以上説明したことをまとめて表1にした。
【0044】
【表1】

【0045】
【発明の効果】本発明の複合仮撚加工糸の製造方法は、アクリルフィラメント糸とポリエステルフィラメント糸との双方の特徴を相乗的に生かした複合仮撚加工糸を得ることができる。すなわち、本発明の製造方法は、ポリエステルフィラメントとアクリルフィラメント糸の一部が溶融接着することにより、糸の長手方向に断続的にクビレが発生し、横編ニット製品に容易に使用でき、かつ編地の仕上セットがスチームアイロンからのスチームの浮かし掛けで容易にできるという、仕上げセット効果に優れ、シャリ感の強い、リネン調、またはラミー調といわれる擬麻調の風合いを持った、従来には無かった新しい感覚の製品編地が得られる横編ニット用の複合仮撚加工糸を得ることができる。
【0046】また、本発明の製造方法は、アクリルフィラメント糸との複合糸であるため、ポリエステルフィラメント糸の溶融点近辺の温度であっても糸全体が溶融することが無く、仮撚加工時の糸掛け作業が容易にできるメリットがある。
【出願人】 【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成工業株式会社
【出願日】 平成9年(1997)1月23日
【代理人】
【公開番号】 特開平10−212634
【公開日】 平成10年(1998)8月11日
【出願番号】 特願平9−10442