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【発明の名称】 ポリエステル繊維糸条の熱処理装置およびポリエステル繊維糸条の熱処理方法
【発明者】 【氏名】種植 史夫
【氏名】内藤 俊三
【課題】断糸発生時に長時間糸掛けができないという問題を解消し、断糸時にも人手による清掃を要することなく、短時間でセルフクリーニングされ、再糸掛ができる設備であり、しかも、広範囲の加工条件を得られる熱処理装置を提供する。

【解決手段】仮撚または延伸仮撚中の合成繊維糸条の全部または一部を非接触状態で囲周するヒータ本体11、21、ヒータ本体に設けられヒータ本体の加熱壁面を高温に加熱する加熱体12、22、およびヒータ本体の加熱壁面によって囲まれた糸条通路内に設けられた糸ガイド14、24からなる合成繊維糸条の熱処理装置において、ヒータ本体11、21および加熱体12、22が加熱装置の長さ方向に少なくとも2分割されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 A)同時延伸仮撚機における撚掛装置の上流にて合成繊維糸条のセットを行う熱処理装置であって、ヒータ本体が長手方向に延在する糸条走行溝を有し、該糸条走行溝の溝底と反対側からヒータへの糸掛けを行い得るようにした合成繊維糸条の熱処理装置において、B)前記ヒータ本体が糸条の走行方向に少なくとも2分割されており、C)分割されたヒータ本体間には間隙があり、D)分割された各ヒータ本体には糸条走行溝の壁面を高温に加熱するシーズヒータがそれぞれ埋設されており、E)各糸条走行溝には糸条走行溝の溝底と反対側からヒータへの糸掛けを行い得る形態の複数の糸ガイドが連続して設けられており、F)一連の前記糸ガイドは糸条が強制的に押し付けられるように配置されており、G)分割された前記ヒータ本体の外側には単一の保温カバーが設けられており、H)前記各シーズヒータが各ヒータ本体の加熱を独立に制御する制御器に接続されている、ことを特徴とする合成繊維糸条の熱処理装置。
【請求項2】 前記各シーズヒータが、I)分割された前記各ヒータ本体に糸条走行溝に沿って設けられた直線部と、J)少なくとも前記ヒータ本体間の間隙の近傍において、糸条走行溝の溝底を基準に見て、糸掛けを行う側と反対方向に、折れ曲がった折れ曲がり部と、を有することを特徴とする請求項1記載の合成繊維糸条の熱処理装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリエステル、ポリアミドのような合成繊維糸条を延伸仮撚加工する装置に用いられる熱処理装置に関する。より詳しくは、本発明は、第1および第2送りローラ間にて所定の倍率で延伸されると同時に仮撚手段によって合成繊維糸条に付与され、合成繊維糸条に沿って遡及する撚を熱固定するための、所謂第1ヒータに好適な熱処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】仮撚加工機、延伸仮撚加工機の生産性を高めるため、合成繊維糸条に付与された仮撚を熱固定する熱処理装置の温度を300℃以上に高めることが行われている(特開昭55−16936号公報、特開昭57−66145号公報)。
【0003】従来、合成繊維の仮撚または延伸仮撚時の熱処理(仮撚の熱固定)には、仮撚に対する抵抗が少ないこと等の理由から、糸条が加熱体に直接接触することなく加熱壁面によって囲まれた糸条通路を走行する非接触式加熱装置が多く用いられている。
【0004】しかし、非接触式加熱装置では、加熱装置内で糸条が振動(バルーニング)を起して充分な撚遡及が行われなかったり、また、振動に伴う風損等のため糸条が不安定状態になって良好な熱伝達が行われず糸品質に悪影響を与えるという問題があった。
【0005】この問題は糸条の加工速度が高速になるに従って一層顕著になり、高速加工が行い難い原因の一つになっていた。
【0006】非接触式加熱装置における上述の問題を解消するために、糸条が振動して加熱壁面に接触することなく、風損等による熱効率の低下も少ない非接触式加熱装置であって高温(300℃以上)で熱処理するものにあっては、従来、糸道規制用ガイドが取付けられている(実公昭61−42937号公報)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところが、一例として、ポリエステル糸条を加工する場合に、ヒータ設定温度を400℃未満として使用すると、断糸発生時に、糸条がこの糸道規制用ガイド部に融解付着する。
【0008】しかし、400℃未満のヒータ設定温度では、この付着物がベーパーライズ(気化)し液体状でなくなるまでに長時間を必要とする。しかも、仮に付着物がベーパーライズする前に、再糸掛けをしたときには、熱容量の大きい高温液状体が走行糸に付着することとなり、糸を融解、断糸させることとなる。従って、液体状の付着物が糸道規制用ガイドに付着している間は、再糸掛が行なえない。
【0009】なお、清掃具を使って付着物を除去すれば、再糸掛ができるが、高温に加熱されたヒータから人手で付着物を除去する作業は危険である。
【0010】更に、仮撚糸条を高温で熱処理する場合に、通常、ヒータ出口の糸温度が、その糸条の必要とする温度となるようヒータの温度設定を行なう。そして、ヒータ設定温度は、糸速、糸条太さ(デニール)、ヒータ長等の条件を考慮して決定される。この場合に、加工条件によっては、ヒータ設定温度を400℃未満とする必要が生じる。このため、前述のように断糸発生時に長時間糸掛けができないという問題が発生する。
【0011】なお、例えば、ポリエステルの場合、高温処理時間が0.035秒以下になると得られた糸条の糸質が低下する(捲縮特性が悪くなる)という現象が観測されており、熱処理に際しては、単にヒータ長を短くして、要求するヒータ出口糸温度になるよう、より高温で処理してよいというものでない。
【0012】更に、通常の仮撚機または延伸仮撚機においては、その機械仕様に合せ、従来一定の長さのヒータ長を決めている。このように従来装置では、ヒータ長が一定であり加工条件として変化させられる範囲が狭くなるので、上述したような問題点が発生しない加工条件は、非常に狭い範囲となってしまう。
【0013】一方、本発明者が鋭意検討したところ、一例として、ポリエステル繊維糸条を処理する際に融着物がなくなるまでの時間は、ヒータ温度が370℃で60分程度450℃で2分程度500℃で10秒程度であった。従って、ヒータの設定温度を400℃以上とすることにより、糸道ガイドに付着した糸条が短時間でベーパーライズしセルフクリーニング(自己清浄性)機能を有するヒータとすることができることが判明した。
【0014】
【発明の目的】本発明は、上述の種々の問題に鑑み、断糸発生時に長時間糸掛けができないという問題を解消し、断糸時にも人手による清掃を要することなく、短時間でセルフクリーニングされ、容易かつ迅速に再糸掛ができる設備であり、しかも、広範囲の加工条件を得られ糸条のバルーニングを効果的に防止することができるヒータ長の短い熱処理装置を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明においては、上述の目的を、A)同時延伸仮撚機における撚掛装置の上流にて合成繊維糸条のセットを行う熱処理装置であって、ヒータ本体が長手方向に延在する糸条走行溝を有し、該糸条走行溝の溝底と反対側からヒータへの糸掛けを行い得るようにした合成繊維糸条の熱処理装置において、B)前記ヒータ本体が糸条の走行方向に少なくとも2分割されており、C)分割されたヒータ本体間には間隙があり、D)分割された各ヒータ本体には糸条走行溝の壁面を高温に加熱するシーズヒータがそれぞれ埋設されており、E)各糸条走行溝には糸条走行溝の溝底と反対側からヒータへの糸掛けを行い得る形態の複数の糸ガイドが連続して設けられており、F)一連の前記糸ガイドは糸条が強制的に押し付けられるように配置されており、G)分割された前記ヒータ本体の外側には単一の保温カバーが設けられており、H)前記各シーズヒータが各ヒータ本体の加熱を独立に制御する制御器に接続されている、ことを特徴とする合成繊維糸条の熱処理装置により達成する。
【0016】本発明においては、各シーズヒータを独立に加熱し、または同時に加熱するよう制御器に接続されている。
【0017】本発明においては、ヒータ本体およびシーズヒータが単一の保温カバー内において2つ以上に分割されており、太デニールの糸条を高速加工するときは、分割した両加熱体を同時に加熱し、両ヒータ本体内にあるガイドが400℃以上となるようにすることが好ましい。
【0018】細デニール、低速加工になるにつれて、両加熱体の一方のみを400℃以上に加熱するよう制御を切替えることができる。
【0019】両シーズヒータを別々に加熱するよう構成することにより、糸の走行方向に多段階の温度設定を行う熱処理装置とすることができる。この場合に適応範囲を広くするために、両ヒータ本体の長さを異ならせて、全ヒータ長に対する加熱部のヒータ長の割合を変えられるようにすることが好ましい。
【0020】
【実施例】以下、添付図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。図4は本発明に係る合成繊維糸条の熱処理装置を組込んだ延伸仮撚装置の概略正面図である。
【0021】供給糸1から、一対のローラ2a、2bからなる第1送りローラ2により糸条Yが引き出され、第2送りローラ6との間で所定の倍率に延伸されると同時に、摩擦ベルト、摩擦円板、仮撚スピンドル等の公知の撚掛装置5により糸条Yに撚が付与される。
【0022】撚掛装置5により糸条Yに付与された撚は、第1送りローラ2の方向に向って、糸条Yに沿って遡及する。糸条Yに沿って遡及した撚は、熱処理装置3により熱固定され、更に、熱処理装置3の下流に設けられたスタビライジングトラック4において冷却される。
【0023】このようにして、第1送りローラ2および第2送りローラ6の間において撚掛装置5の上流の糸条Yに仮撚が付与され、撚掛装置5を出た後、糸条Yは解撚され、糸条Yは第2送りローラ6から巻取装置7に送給される。
【0024】巻取装置7は、糸条を左右に綾振るトラバース装置8、糸条Yを巻取るボビンを装着するボビンホルダ10およびボビンまたはボビンに巻取られた糸条に圧接されるフリクションローラ9からなっている。
【0025】本発明に係る熱処理装置の詳細を図1から図3を参照して詳細に説明する。
【0026】図1に示すように、本発明の熱処理装置3は、ヒータ本体が長さ方向に2分割されており、シーズヒータもまた2分割されている。
【0027】すなわち、ヒータ本体は長さ方向に2分割されたヒータ本体11および21からなり、図1、図2に示すようにヒータ本体11、21の間に小間隙Gが設けられており、これらヒータ本体11、21を加熱するシーズヒータ12、22がヒータ本体11、21内に設けられている。また、両シーズヒータ12、22は、接続プレート33により接続されている。13、23は温度センサーである。
【0028】そして、シーズヒータ12、22は、図1においてAで示すように、両方とも同時に400℃以上に加熱してもよく、またシーズヒータ12のみ、すなわち、(図1のB)のみを主に加熱し、またはシーズヒータ22(図1のC)のみを主に加熱してもよい。またシーズヒータ12、22の加熱条件を変えるようにしてもよい。これらの条件設定は図示していない制御器によって行うようになっている。
【0029】なお、ヒータ本体11、21の外側は、保温材31により保温されており、更に、その外側に図1に示すように単一の保温カバー32が設けられている。また、図1に示すようにヒータ本体11、21間の小間隙Gにも保温材31が設けられていることが好ましい。
【0030】ヒータ本体11、21には、図3に示すようにコの字状断面形状をした糸条走行溝Sが形成され、糸条走行溝Sは図2に示すようにヒータ本体11、21の長手方向に延在しており、図1および図2に示すように糸条走行溝Sの開口側(溝底と反対側)から糸掛けができる。
【0031】図2に示すように、糸ガイド14、24が糸条走行溝Sの糸条Yの走行方向に間隔を開けて突設されている。
【0032】糸ガイド14、24には、図3に示すように、糸条走行溝Sの溝底と反対側(開口側)に開いた凹部14a、24aが糸走行路として形成されており、糸条走行溝Sの溝底と反対側から糸ガイド14、24の凹部14a、24aに糸掛けができるようになっている。凹部14a、24aの頂点を長さ方向に結ぶ線は、図2に示すように、全体として軽い弓形をなすようにしており、一連の糸ガイド14、24を通過する糸条Yが糸張力によって糸ガイド14、24に強制的に押し付けられるよう糸ガイド14、24を配置することが、糸条の振動(バルーニング)なくすために好ましい。
【0033】なお、ヒータ本体11、21およびガイド14、24の材質はセラミックを用いることが好ましい。上述したように、また、図1および図2に示すように、ヒータ本体11、21は小間隙Gを開けて完全に切り離されており、好ましくはこれらヒータ本体11、12の間の小間隙に保温材31を設けている。このように構成することにより、両ヒータ本体11、21間の熱の影響を少なくすることができる。これにより、隣接する2つのヒータ本体11、21における糸ガイド14、24のうち、間隙G部近傍に設けられた糸ガイドが他方のヒータ本体11または21からの熱の影響を受けることを少なくすることができる。また、図2に示すように、両ヒータ本体11、21の隣接する端部の近傍に設けられた糸ガイド14と24との間の間隔を各ヒータ本体11、21における糸ガイド14と14、または24と24の間隔と同程度またはそれよりも小さくすることが好ましい。これにより、ヒータ本体11、21の分割部分においても強力なバルーニングの抑制力ができる。前述のように、ヒータ本体は単一の保温カバー32の内部で分割されており、保温カバー32は分割されておらず、加熱装置の全長さを短くできる。シーズヒータ12、22は図1に示すように、分割された各ヒータ本体11、21において糸条走行溝に沿って設けられた直線部12L、22Lを有している。シーズヒータ12、22の端部を図1に示すように、糸条走行溝Sの溝底を基準に見て、糸掛けを行う側と反対方向に、折れ曲がった折れ曲がり部12B、22Bとすることが好ましい。これにより、加熱装置の長さを短く抑えることができる。特にヒータ本体11、21間の間隙側の端部を曲げることにより、間隙を小さくでき、結果的に間隙を挟む2個の糸ガイドの間隔が広くならず、この部分での強力なバルーニング抑制力を確保するために有効である。
【0034】前述したように、ヒータ設定温度は、ポリエステルの場合には、基本的にヒータ出口部の糸温度が約220℃となるように設定する。この糸温度は、ヒータ長、糸速、糸のデニール、ヒータ設定温度により決定される。一例として、150デニール、75デニール(加工糸デニール)のポリエステルの場合について説明する。
【0035】実施例に示すヒータにおいては、上流のヒータ本体11が0.7m、下流のヒータ本体21が0.3mであり、計1mの長さを有している。
【0036】(1)150デニールの場合2分割したヒータ全体(ヒータ長は1.0m)を加熱する場合、図5から明らかなように、糸速が800m/分〜1500m/分の範囲において糸温度を220℃とするためのヒータ設定温度は456℃〜582℃となる。従って、断糸時に糸ガイドに糸条が融着したとしても、糸ガイド温度が高温(400℃以上)のため、短時間で融着物がなくなりセルフクリーニングとなり、短時間で再糸掛けが行える。
【0037】(2)75デニールの場合ヒータ長が1.0m(2分割した両方とも加熱)であれば、図5から明らかなように、糸速が800m/分〜1500m/分の範囲で糸温度を220℃とするためのヒータ設定温度は355℃〜455℃となる。概略1050m/分以下の糸速でガイド温度(=ヒータ設定温度)が400℃未満となり、融着した糸条は溶融状態で長時間に亘り糸ガイドに付着し続ける。このため、再度、糸掛けを実施しても、この融着物が原因で糸掛成功率が非常に低くなる(ほとんど成功しない)。
【0038】そこで、2段ヒータ(実施例の0.7m+0.3m)のうち、0.7mのみを昇温し、0.3m部を昇温しない状態とすれば、上記糸速範囲でのヒータ設定温度は410℃〜500℃となり、セルフクリーニングされることになる。
【0039】(3)更に細い糸を加工する場合、ヒータを分割していることから、次のような使い方も可能である。
【0040】0.7m側のヒータ温度を糸が融着しない温度としておき、0.3m側のヒータ温度を400℃以上とすることでヒータ出口糸温度を約220℃とすることもできる。
【0041】以上の条件で糸処理した結果を表1に示す。
【0042】
【表1】

以上をまとめると、分割ヒータの加熱は、例えば、次のようにする。
【0043】太デニールの糸条の熱処理に際しては、分割した各ヒータを同一の高温度に設定する。
【0044】一方、細デニールの糸条の熱処理に際しては、分割したヒータの一方を主に加熱し、ヒータ温度を上昇させる。
【0045】例えば、Bヒータの糸ガイド温度が400℃以上で糸条YのBヒータ通過時間が0.035秒以上の場合には、Aヒータは昇温しない。
【0046】一方、Bヒータの糸ガイド温度が400℃以上だが、糸条YのBヒータ通過時間が0.035秒以下の場合には、Aヒータは、糸が融着しないガイド温度(250℃以下)になるように、ヒータ温度を設定し、トータルのヒータ通過時間を増加させる。
【0047】
【発明の効果】同時延伸仮撚加工において、本発明によりヒータ本体全体の全長に亘って、糸条のバルーニングを効果的に抑制できる。更に断糸時に、糸ガイド部に糸条が融着したとしても、熱により短時間で付着物がベーパーライズし、糸ガイド表面がもとの状態となり容易にかつ迅速に再糸掛けが行える。
【0048】延伸仮撚機においては、加工する糸の種類が多く、要求される糸質によっては、その加工スピードも範囲が広い。このような状況下でも、本発明の熱処理装置によれば幅広い条件範囲内でセルフクリーニングヒータとすることができる。本発明によれば、ヒータ清掃が不要となり、延伸仮撚機におけるヒータ設置場所にヒータ清掃を考慮した設計をしなくてもよくなり、設備が簡単となり設備費が安くなる。
【出願人】 【識別番号】000215903
【氏名又は名称】帝人製機株式会社
【出願日】 平成2年(1990)2月10日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】三中 英治 (外1名)
【公開番号】 特開平10−195726
【公開日】 平成10年(1998)7月28日
【出願番号】 特願平10−52855