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【発明の名称】 空気軸受式セパレートローラ
【発明者】 【氏名】久保 勝紀
【課題】空気軸受を有するセパレートローラにおいて、圧縮空気の圧力が一定限度以下に低下若しくは供給停止しても、空気軸受を形成する負荷部の損傷を防ぎ、セパレートローラ交換周期を大幅に延長することを目的とする。

【解決手段】少なくとも自由回転可能な中空円筒部材2と、該中空円筒部材2を圧縮空気の介在によって支承する支承部材1とからなり、該中空円筒部材2と該支承部材1とは更に該中空円筒部材2に懸かる負荷を実質的に受け止める負荷部11と、該負荷を実質的に受け止めない非負荷部10とから形成されている空気軸受式セパレートローラにおいて、前記の非負荷部10に設けられ、かつ空気軸受に供給される圧縮空気圧力の低下時もしくは供給停止時に中空円筒部材2と接触して前記の負荷部11を常に非接触状態に維持する間隙形成部材3とを含む空気軸受式セパレートローラである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 自由回転可能な中空円筒部材と、該中空円筒部材を圧縮空気の介在によって支承する支承部材とからなり、かつ該支承部材は更に該中空円筒部材に懸かる負荷を実質的に受け止める負荷部と、該負荷を実質的に受け止めない非負荷部を有する空気軸受式セパレートローラにおいて、前記の非負荷部に、空気軸受に供給される圧縮空気圧力の低下時もしくは圧縮空気の供給停止時に中空円筒部材と接触して前記の負荷部を常に非接触状態に維持する、セパレートローラの半径方向に移動自在の間隙形成部材を設けたことを特徴とする空気軸受式セパレートローラ。
【請求項2】 圧縮空気圧力の低下時もしくは圧縮空気の供給停止時にセパレートローラの軸方向に移動自在の、外周面が楔状形状を有する間隙形成補助部材と、該外周面と接触摺動する底面を有し、かつ間隙形成補助部材との接触摺動に連動してセパレートローラの半径方向へ移動自在の間隙形成部材とからなる請求項1記載の空気軸受式セパレートローラ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、合成繊維の延伸処理などの製造工程で使用する空気軸受を有するセパレートローラに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、合成繊維の紡糸延伸工程においては益々高速化が進んでおり、これに対応して高速回転するローラに複数回糸条を巻き付ける際に、巻き付ける糸条に重なりが生じることなく、ある一定の間隔を形成させるためのセパレートローラも高速化が要求されている。
【0003】一般に繊維の製造工程で使用する高速回転するセパレートローラには、空気軸受が使用されている。ここで該空気軸受を簡単に説明すると、その軸芯廻りに回転自在の、20〜70mmの外径を有する中空円筒部材と、該中空円筒部材を支承する支承部材との間に僅かな間隙を形成させ、該間隙に導入された圧縮空気の静圧を利用しつつ、該中空円筒部材を回転自在に支承するものである。このとき、中空円筒部材と支承部材との間隙に導入される圧縮空気は、軸受けに作用する負荷を受け止めると共に、潤滑油の役割をも演じている。
【0004】また、空気軸受の中においても、静圧型の空気軸受は、タービン翼等を有する圧縮空気の動圧で作動する動圧型の空気軸受と異なり、高い回転追随性を有することから、近年、セパレートローラに採用されることが多くなっている。
【0005】このような静圧型の空気軸受としては、例えば特開昭48−18532号公報、実開昭54−48116号に開示されているように、回転する中空円筒部材を圧縮空気の静圧によって支承することが要求される。このために、円周方向に沿って多数の空気噴射孔がほぼ均等に穿設された支承部を有している。そして、該空気噴射孔から圧縮空気が供給され、該空気噴射孔より圧縮空気を噴出させて中空円筒部材に懸かる荷重を支える構造となっている。つまり、中空円筒部材の内面と支承部の外面とよりなる非常に小さい隙間に圧縮空気が導入されて、該圧縮空気の圧力によって、中空円筒部材のラジアル方向に懸かる負荷を受け止めているのである。したがって、この種の空気軸受では、前記の小さな隙間に空気のみが介在し、中空円筒部材と中空軸の支承部との剛体接触が回避され、空中に浮かんだ状態となるため、摩擦の発生が極めて小さくなる。このような理由から、空気軸受を有するセパレートローラでは、低トルクでかつ高速に回転可能という大きな利点を持っている。
【0006】しかしながら、前述の中空円筒部材の内面と支承部外面とは、圧縮空気が流入している間は非接触状態を維持しているが、定期点検による運転停止時やローラ交換時に圧縮空気の流入が停止したり、圧力が低下する事態となると、中空円筒部材の内面と支承部の外面とを非接触状態に保持する空気の静圧が作用しなくなるため、両者が直接接触する事態となる。もしも、このような中空円筒部材の内面と支承部の外面とが直接に接触するような事態となると、軸受部が擦過損傷を受ることになり、微妙な間隙調整が要求される中空円筒部材の内面と支承部の外面との間の間隙が磨耗によって変化して、軸受の負荷能力の低下を惹起する。更に、最悪の場合には、焼付きを引き起こし、セパレートローラの使用が不能となる事態も発生する。
【0007】したがって、圧縮空気の流入が停止されているか、或いは圧縮空気圧力の大幅な低下が起こっている間は、何らかの方法で中空円筒部材の内面が支承部の外面と直接接触しないような手段が当業界において切望されているのである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、以上述べたような問題に鑑み、軸受部への圧縮空気の流入が停止するか或いは圧縮空気の圧力が低下するといった状態が生じても、中空円筒部材の内面と支承部の外面とを常に非接触状態に維持できる空気軸受式セパレートローラを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】以上のような目的を達成するために、本発明によれば、下記の手段が提供される。
【0010】すなわち、自由回転可能な中空円筒部材と、該中空円筒部材を圧縮空気の介在によって支承する支承部材とからなり、かつ該支承部材は更に該中空円筒部材に懸かる負荷を実質的に受け止める負荷部と、該負荷を実質的に受け止めない非負荷部を有する空気軸受式セパレートローラにおいて、前記の非負荷部に、空気軸受に供給される圧縮空気圧力の低下時もしくは圧縮空気の供給停止時に中空円筒部材と接触して前記の負荷部を常に非接触状態に維持する、セパレートローラの半径方向に移動自在の間隙形成部材を設けたことを特徴とする空気軸受式セパレートローラが提供される。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の態様を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の一実施例を示す正面断面図、図2は図1のX−X矢視断面図をそれぞれ示す。また、図3は図1に示した実施例において、圧縮空気の圧力が低下するか、或いは供給停止した時の各部材の動作を説明するための正面断面図であって、(A)図は、正常な圧力の圧縮空気が供給されている状態、(B)図は圧縮空気の圧力低下或いは供給停止した状態をそれぞれ示している。
【0012】これらの図において、1は支承部材、2は自由回転自在の中空円筒部材、3は間隙形成部材、4は間隙形成補助部材、5はバネ材をそれぞれ示す。ここで、支承部材1は中空円筒部材2に懸かる負荷を実質的に受け止める負荷部11と、該負荷を実質的に受け止めない、凹状に形成された非負荷部10とからなる。また、該支承部材1は中空軸であって、圧縮空気が中空部7から多数の導入孔群6を通して円筒部材2と支承部材の負荷部11との間に形成された間隙8へ供給される。なお、導入孔群6は支承部材1の中空部7から間隙8に開口するようにセパレートローラの半径方向(以下、単に「ラジアル方向」と称することもある)へ穿孔されている。かくして、間隙8へと導入された圧縮空気の静圧によって、ラジアル方向に懸かる過重を受け止める空気軸受が形成される。そして、間隙8に供給された圧縮空気は、更に、支承部材1の負荷部11の両端と、中空円筒部材2の両端との間に形成された間隙9を通過し、セパレートローラの軸方向、すなわちスラスト方向に懸かる荷重を受け止めるスラスト軸受9を形成する。
【0013】更に、間隙形成部材3と間隙形成補助部材4について、その相互の関係を詳細に説明する。間隙形成部材3と間隙形成補助部材4とは、ラジアル方向の荷重を受け止める空気軸受としての機能を十分に発揮できるように、圧縮空気の静圧が低下したり、供給が停止されても、中空円筒部材2と支承部材1とが負荷部11で接触することがないようにする役割を演ずる。この役割に関しては、以下に詳細に説明する。
【0014】まず、図2に示すように、間隙形成部材3は、固定部材に12によって、セパレートローラの軸方向(以下、単に「スラスト方向」と称する)へは移動できないが、ラジアル方向へは移動自在に固定されている。また、該間隙形成部材3は図2に示すように、円周方向に等分に配設された4個の部材からなり、該4個の部材群の隣接する各部材は、それぞれ互いに張力部材13によって連結されている。ここで、隣接する間隙形成部材を互いに連結する張力部材13としては、張力が各間隙形成部材3の間に作用しない間はその形状を記憶しており、間隙形成部材3間に張力が作用すると引き伸ばされる性質を持つ。なお、このような張力部材13としては、公知の形状記憶合金やバネ板鋼等を用いることができ、その数は、特に4個に限定する必要もなく、3個、或いは5個以上設けても良い。このようにして、該間隙形成部材3は、それぞれ独立に同期して中空円筒部材2に接触するまでラジアル方向へと移動する。そして、これによって、中空円筒部材2と支承部材の負荷部11が接触しないよう一定の間隙8を形成させるのである。
【0015】次に、間隙形成補助部材4の動作について、図2及び図3を参照しながら詳細に説明する。先に述べたように中空部7へ供給される圧縮空気の圧力が低下したり、供給が停止されたりすると、スラスト方向へ移動する。そして、該間隙形成補助部材4は、この移動によって間隙形成部材3をラジアル方向へ移動させる役割を担っている。また、該間隙形成補助部材4は、図2に示すように支承部材中空部7の圧縮空気が通過する流路を殆ど塞ぐように設けられてあるから、圧縮空気が一定の圧力で供給されている間は、該圧縮空気に押されて図2(或いは、図3−(B)参照)に示す位置に移動している。
【0016】しかしながら、圧縮空気の圧力がある限度以下に低下したり、供給が停止されるような事態が生じると、圧縮空気によって押される力に対してバネ材による弾性回復力が優るようになって、間隙形成補助部材4を図3(A)に示す位置まで引き戻すようになる。なお、間隙形成補助部材4の外周面は楔状形状に形成されている(図1及び図3参照)。このため、間隙形成補助部材4のスラスト方向への接触移動によって、間隙形成部材3の底面と間隙形成補助部材4の外周面とが接触摺動し、該間隙形成部材3をラジアル方向に押し上げる役割を果たせるのである。
【0017】かくして、前記の間隙形成補助部材4のスラスト方向への移動によって、楔状に形成された間隙形成部材3はラジアル方向へと移動して、中空円筒部材2と接触し、これによって間隙8が常に維持され、中空円筒部材2と支承部材の負荷部11との接触が回避されることとなる。
【0018】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明の空気軸受式セパレートローラを使用することによって、圧縮空気の圧力が一定限度以下に低下若しくは供給停止しても、空気軸受を形成する負荷部の損傷を防ぎ、セパレートローラ交換周期を大幅に延長することができる、という極めて顕著な効果を奏する。
【出願人】 【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
【出願日】 平成8年(1996)11月27日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】前田 純博
【公開番号】 特開平10−158948
【公開日】 平成10年(1998)6月16日
【出願番号】 特願平8−316369