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【発明の名称】 長繊維多繊糸の流体処理方法
【発明者】 【氏名】宇土 裕樹
【課題】紡績糸の繊維長オーダーの短周期の交絡から長周期の交絡まで、また短い交絡部から長い交絡部まで、それぞれの交絡が単独でまたは組み合わされて付与された交絡糸を生産性よく得る。

【解決手段】フィードローラ、流体交絡ノズル、糸ガイド、溝付きローラ、デリベリーローラの順に設置した装置にて、溝付きローラとしてローラ表面の同一の円周方向に溝部を部分的に有する溝付きローラを用い、糸ガイドをトラバースさせることなく、該溝付きローラにて長繊維多繊糸を間欠的に非把持状態とし、かつ溝付きローラの周速/フィードローラの周速(DR1)、デリベリーローラの周速/溝付きローラの周速(DR2)、DR1×DR2がそれぞれ特定の関係にある4条件のうちのいずれかの条件を満足させて流体交絡処理する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 フィードローラ、流体交絡ノズル、糸ガイド、溝付きローラ、デリベリーローラの順に設置した装置にて長繊維多繊糸を流体交絡処理する方法であって、溝付きローラとしてローラ表面の同一の円周方向に溝部を部分的に有する溝付きローラを用い、糸ガイドをトラバースさせることなく、該溝付きローラにて多繊糸を間欠的に非把持状態とし、かつ次のいずれかの条件を満足させて流体交絡処理することを特徴とする長繊維多繊糸の流体処理方法。
条件1:DR1<1.00、DR2>1.00、DR1×DR2<1.00条件2:DR1<1.00、DR2>1.00、DR1×DR2≧1.00条件3:DR1<1.00、DR2<1.00、DR1×DR2<1.00条件4:DR1≧1.00、DR2<1.00、DR1×DR2<1.00(但し、DR1は溝付きローラの周速/フィードローラの周速、DR2はデリベリーローラの周速/溝付きローラの周速を表す)
【請求項2】 溝付きローラとして、ローラ上での溝部を含む円周長が1〜50cmである溝付きローラを用いる請求項1記載の長繊維多繊糸の流体処理方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、長繊維多繊糸に交絡を付与するための長繊維多繊糸の流体処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、長繊維多繊糸(以下、多繊糸という)に交絡を付与するための流体交絡処理については、数多くの提案がなされ、また実用化もなされている。それらの提案のうち、交絡部の周期、長さを変えた交絡糸を得る生産技術の単純化された方法として、低張力化した多繊糸を糸ガイドのトラバースによってフィードローラに対し把持、非把持の状態とし、供給多繊糸長を変化させて交絡を付与し、交絡部の周期、長さを変化させた交絡糸を得る方法が特開昭58−163746号公報に開示されている。
【0003】しかしながら、この方法では、比較的短周期の交絡を糸に付与するためには糸ガイドのトラバースの頻度を大きくする必要があり、生産性を高めるため糸の走行速度を大きくしようとすれば、糸ガイドのトラバースの頻度をさらに大きくする必要があり、極めて高速の、かつ制御されたトラバース装置が必要となり、処理装置全体のコスト高となり生産のコスト高を招くという問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、紡績糸の繊維長オーダーの短周期の交絡から長周期の交絡まで、また短い交絡部から長い交絡部まで、それぞれの交絡が単独でまたは組み合わされて付与された交絡糸を生産性よく得ることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、フィードローラ、流体交絡ノズル、糸ガイド、溝付きローラ、デリベリーローラの順に設置した装置にて長繊維多繊糸を流体交絡処理する方法であって、溝付きローラとしてローラ表面の同一の円周方向に溝部を部分的に有する溝付きローラを用い、糸ガイドをトラバースさせることなく、該溝付きローラにて多繊糸を間欠的に非把持状態とし、かつ次のいずれかの条件を満足させて流体交絡処理することを特徴とする長繊維多繊糸の流体処理方法にある。
【0006】条件1:DR1<1.00、DR2>1.00、DR1×DR2<1.00条件2:DR1<1.00、DR2>1.00、DR1×DR2≧1.00条件3:DR1<1.00、DR2<1.00、DR1×DR2<1.00条件4:DR1≧1.00、DR2<1.00、DR1×DR2<1.00(但し、DR1は溝付きローラの周速/フィードローラの周速、DR2はデリベリーローラの周速/溝付きローラの周速を表す)
【0007】
【発明の実施の形態】本発明を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施に用いる装置の一例の概略配置図である。図1中、1は多繊糸、2はフィードローラ、3は流体交絡ノズル、4は糸ガイド、5は溝付きローラ、6はデリベリーローラ、7は交絡糸を示す。図2は、本発明で用いる装置における溝付きローラの一例の斜視図である。図2中、8は溝部、9は非溝部を示す。
【0008】図1に示す装置により本発明を実施するにあたっては、多繊糸1は、フィードローラ2から供給され、流体交絡ノズル3にて交絡が付与されるが、図2に示すような溝付きローラ5が設置された装置においては、多繊糸1は、流体交絡されつつ、糸の走行線上に固定された糸ガイド4によって溝付きローラ5へ案内され、溝付きローラ5が回転する間に、溝部8では糸が非把持状態となって走行し、非溝部9では走行する糸が把持状態となって送られ、デリベリーローラ6により引き出されて交絡糸7が得られる。
【0009】さらに詳しくは、多繊糸1に流体交絡ノズル3にて交絡が付与される際、溝付きローラ5の溝部8では、多繊糸1は非把持状態となり、フィードローラ2、デリベリーローラ6の各周速で交絡付与時の多繊糸1の張力が支配され、溝付きローラ5の非溝部9では、多繊糸1は把持状態となり、フィードローラ2、溝付きローラ5、デリベリーローラ6の各周速で交絡付与時の多繊糸1の張力及び交絡の保持状態が支配される。
【0010】本発明において用いられるローラ表面の同一の円周方向に溝部を部分的に有する溝付きローラは、ローラ対をなす少なくとも一方のローラであって、そのローラ表面の同一の円周方向線上に非溝部があるように溝部が部分的に形成されており、図2に示すように、円周方向に溝部8を部分的に形成して溝部8と溝部8間に非溝部9を設けたローラであってもよいし、図3に示すように、連続する溝部10を部分的にその円周方向からずれるように屈曲させて形成し溝部10と同一の円周方向に非溝部11の方を部分的に設けたローラであってもよいし、また、円周方向に形成した連続する溝部に部分的に詰め物を充填して非溝部とし溝部を部分的に形成したローラであってもよい。
【0011】溝付きローラにおける円周上の溝部の長さは、ローラ径、フィードローラ、溝付きローラ、デリベリーローラの設置間距離等にもよるが、ローラの全周長未満でかつ糸の非把持状態を形成し得る長さ以上であればよく、また、溝部の深さは、糸の非把持状態を形成し得る深さがあればよく、溝部の幅も糸の走行し得る幅であれば特に制限はなく、ローラ幅に近似の幅であってもよい。溝付きローラには、ローラ径を大とし複数の溝部が形成されていてもよいが、短周期の交絡を付与するうえからは、ローラ上での溝部を含む円周長が1〜50cmである溝付きローラを用いることが好ましい。
【0012】本発明においては、ローラ表面の円周方向に溝部を部分的に有する溝付きローラを用い、かつフィードローラ、溝付きローラ、デリベリーローラを特定の関係に周速比を変化させることにより、それぞれ異なる交絡状態の交絡糸を得るものである。
【0013】かかる多様の交絡状態の交絡糸を得るためには、溝付きローラの周速/フィードローラの周速をDR1、デリベリーローラの周速/溝付きローラの周速をDR2とするとき、次のいずれかの条件を満足させて流体交絡処理することが必要である。
【0014】条件1:DR1<1.00、DR2>1.00、DR1×DR2<1.00条件2:DR1<1.00、DR2>1.00、DR1×DR2≧1.00条件3:DR1<1.00、DR2<1.00、DR1×DR2<1.00条件4:DR1≧1.00、DR2<1.00、DR1×DR2<1.00【0015】条件1では、非交絡部がなく、溝付きローラの円周上の溝部の長さに対応した長さのやや交絡度の低い交絡部と円周上の非溝部の長さに対応した長さの交絡部とが形成され、条件2では、非交絡部と、溝付きローラの円周上の非溝部の長さに対応した長さの交絡部が形成され、条件3では、非交絡部がなく、溝付きローラの円周上の溝部の長さに対応した長さのやや交絡度の高い交絡部と円周上の非溝部の長さに対応した長さの交絡部が形成され、また、条件4では、非交絡部と、溝付きローラの円周上の溝部の長さに対応した長さの交絡部とが形成される。
【0016】そして、本発明においては、溝付きローラの径、ローラ表面上の溝部の数、溝部の長さ等を任意に選択することにより、条件1〜4と組み合わせてさらに多様の交絡部を形成させることもできる。
【0017】本発明において用いられる流体交絡ノズルは、多繊糸に流体により交絡を付与し得るものであればよく、例えばタスランノズルやインターレースノズルが用いられ、タスランノズルを用いるときは、多繊糸に交絡付与と同時にループを形成させ、図4に示すように、嵩高な交絡部12と非交絡部13を有し、交絡糸に明瞭なスラブ糸状形態の斑糸様の外観を与えることができる。
【0018】本発明において適用される多繊糸としては、多数本の長繊維から構成される糸条であれば特に素材に限定はなく、例えばポリエステル長繊維糸、ポリアミド長繊維糸、アクリル長繊維糸、アセテート長繊維糸等が挙げられ、これらは延伸糸、半延伸糸、未延伸糸であってもよいが、構成繊維の繊度が小さく、構成本数が多い程交絡の付与が容易である。
【0019】また、多繊糸は、異繊度、異染色性、異収縮性繊維を含む多繊糸或いはこれらの長繊維糸と引き揃えられたものであってもよいし、図5に示すように、図1に示す装置にフィードローラ15を付設した装置を用い、強力向上の目的で高強力糸や高嵩高性付与の目的で熱収縮性糸等を添え糸14として流体交絡ノズル3に供給することもできる。さらにまた、溝付きローラとデリベリローラの間に熱板を付設し、ローラ間での糸の過度の弛みや緊張を緩和させることもできる。
【0020】
【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0021】(実施例1)図1に示す装置を使用し、溝付きローラ5として直径10cm(円周長31.4cm)のローラ表面に円周上での長さが5cmの深さ0.2cm、幅0.5cmの溝部を1個形成したローラを用い、流体交絡ノズル3としてヘバライン社製T311型タスランノズルを用い、空気圧力3.0kg/cm2fで、フィードローラ2の周速を100m/分、溝付きローラ5の周速を71m/分、デリベリローラ6の周速を75m/分とした条件(条件1)下で、糸ガイド4をトラバースさせることなく糸が溝付きローラ5に向かうように固定し、多繊糸としてポリエステル延伸糸SD100d/48f(強度4.6g/d、伸度30%)を用い流体交絡処理した。
【0022】得られた処理糸は、長さが約27cmの長い交絡部と長さが約4cmの短い交絡部とが交互に形成された、短い交絡部が長い交絡部に比較しやや嵩高性の低いスラブ糸状形態を示す交絡糸であった。
【0023】(実施例2)実施例1において、フィードローラ2の周速を100m/分、溝付きローラ5の周速を70m/分、デリベリローラ6の周速を100m/分とした条件(条件2)に代え、多繊糸としてポリエステル半延伸糸SD135d/48f(強度3.3g/d、伸度65%)を用い流体交絡処理した。得られた処理糸は、長さが約27cmの長い交絡部と長さが約4cmの非交絡部とが交互に形成されたスラブ糸状形態を示す交絡糸であった。
【0024】(実施例3)実施例1において、フィードローラ2の周速を100m/分、溝付きローラ5の周速を70m/分、デリベリローラ6の周速を65m/分とした条件(条件3)に代え、多繊糸としてポリエステル延伸糸SD100d/48f(強度4.6g/d、伸度30%)を用い流体交絡処理した。得られた処理糸は、長さが約27cmの長い交絡部と長さが約4cmの短い交絡部とが交互に形成された、長い交絡部が短い交絡部に比較しやや嵩高性の高いスラブ糸状形態を示す交絡糸であった。
【0025】(実施例4)実施例1において、フィードローラ2の周速を100m/分、溝付きローラ5の周速を70m/分、デリベリローラ6の周速を80m/分とした条件(条件4)に代え、多繊糸としてポリエステル延伸糸SD100d/48f(強度4.6g/d、伸度35%)を用い流体交絡処理した。得られた処理糸は、図4に示すように、長さが約4cmの短い交絡部と長さが約27cmの非交絡部とが交互に形成されたスラブ糸状形態を示す交絡糸であった。
【0026】(実施例5)実施例1において、フィードローラ2の周速を100m/分、溝付きローラ5の周速を100m/分、デリベリローラ6の周速を95m/分とした条件(条件4)に代え、多繊糸としてポリエステル延伸糸SD100d/48f(強度4.6g/d、伸度35%)を用い流体交絡処理した。得られた処理糸は、長さが約4cmの短い交絡部と長さが約27cmの非交絡部とが交互に形成されたスラブ状形態を示す交絡糸であった。
【0027】(比較例1)実施例1において、フィードローラ2の周速を90m/分、溝付きローラ5の周速を100m/分、デリベリローラ6の周速を110m/分とした条件に代え、多繊糸としてポリエステル延伸糸SD100d/48f(強度4.6g/d、伸度35%)を用い流体交絡処理したところ、処理時の糸の張力が高く、得られた処理糸には、交絡が付与されなかった。
【0028】(比較例2)実施例1において、フィードローラ2の周速を90m/分、溝付きローラ5の周速を100m/分、デリベリローラ6の周速を95m/分とした条件に代え、多繊糸としてポリエステル高配向未延伸糸SD135d/36f(強度2.3g/d、伸度155%)を用い流体交絡処理したところ、処理時の糸の張力が高く、得られた処理糸には、交絡が付与されなかった。
【0029】(比較例3)実施例1において、フィードローラ2の周速を100m/分、溝付きローラ5の周速を100m/分、デリベリローラ6の周速を105m/分とした条件に代え、多繊糸としてポリエステル高配向未延伸糸SD135d/36f(強度2.3g/d、伸度155%)を用い流体交絡処理したところ、処理時の糸の張力が高く、得られた処理糸には、交絡が付与されなかった。
【0030】(比較例4)実施例1において、フィードローラ2の周速を100m/分、溝付きローラ5の周速を100m/分、デリベリローラ6の周速を100m/分とした条件に代え、多繊糸としてポリエステル延伸糸SD135d/36f(強度4.6g/d、伸度35%)を用い流体交絡処理したところ、処理時の糸の張力が高く、得られた処理糸には、交絡が付与されなかった。
【0031】
【発明の効果】本発明によれば、糸ガイドのトラバースによってではなく溝付きローラによって、しかもフィードローラ、溝付きローラ、デリベリーローラを特定の関係の周速比とすることにより、紡績糸の繊維長オーダーの短周期の交絡から長周期の交絡まで、また短い交絡部から長い交絡部まで、それぞれの交絡が単独でまたは組み合わされて付与された交絡糸を、長繊維からなる多繊糸より、得ることができる。また、本発明によれば、本発明における周速比を維持するならば多繊糸を高速で走行させることができ、高度の制御装置を要することなく、生産性よく交絡糸を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱レイヨン株式会社
【出願日】 平成8年(1996)11月12日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】田村 武敏
【公開番号】 特開平10−140433
【公開日】 平成10年(1998)5月26日
【出願番号】 特願平8−314127