トップ :: D 繊維 紙 :: D02 糸;糸またはロ−プの機械的な仕上げ;整経またはビ−ム巻き取り

【発明の名称】 開繊繊維束の製造方法および製造装置
【発明者】 【氏名】吉村 康輔
【氏名】関戸 俊英
【氏名】田中 清次
【課題】低張力で毛羽の発生がない状態で繊維束を薄く均一に開繊できる開繊繊維束の製造方法および装置並びにこれらの方法、装置を用いたプリプレグシートの製造方法、装置を提供すること。

【解決手段】連続的に供給される複数本の繊維束15を、この繊維束と交差する方向に配置された複数本の突起Aの間に割り込ませ、この突起を繊維束15とともにその搬送方向に搬送しつつ隣接する突起間の間隔を広げることにより開繊する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】連続的に供給される複数本の繊維束を、該繊維束と交差する方向に配置された複数本の突起の間に割り込ませ、前記突起を前記繊維束とともにその搬送方向に搬送しつつ隣接する突起間の間隔を広げることにより、前記繊維束を開繊することを特徴とする開繊繊維束の製造方法。
【請求項2】前記繊維束を前記突起に供給する前に予備的に開繊するか若しくは加熱することを特徴とする請求項1の開繊繊維束の製造方法。
【請求項3】請求項1または2の製造方法により繊維束を開繊した後、該開繊繊維束を構成する複数本の単繊維を一方向に並べてシート状にし、次いで合成樹脂を含浸してプリレグを製造することを特徴とする繊維強化樹脂プリプレグの製造方法。
【請求項4】(A)繊維束の搬送方向と交差する方向に伸縮自在であって、かつその表面に複数個の突起が所定間隔で並べられた突起付き弾性体と、(B)該弾性体を前記搬送方向に走行させる駆動手段とを備え、(C)前記弾性体は、搬送前は前記搬送方向と交差する方向の長さが弾性体の自然長またはそれに近い長さであり、搬送方向に移動する従って前記突起の隣接間隔が広がることを特徴とする開繊繊維束の製造装置。
【請求項5】前記突起付き弾性体は、コイルバネ、ジグザグ状に屈曲したバネ、表面に多数の突起を有するゴムベルト、突起物を編み込んだ伸縮性を有する編織物のうちのいずれかであることを特徴とする請求項4の開繊繊維束の製造装置。
【請求項6】請求項4または5の製造装置の入口側に、さらに繊維束の予備開繊部または繊維束の加熱部を有することを特徴とする開繊繊維束の製造装置。
【請求項7】請求項4ないし6のいずれかの開繊繊維束の製造装置の出口側に、樹脂含浸部を有することを特徴とする繊維強化樹脂プリプレグの製造装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、連続した開繊繊維束の製造方法および製造装置の改良、ならびにこれらの製造方法、装置を用いたプリプレグシートの製造方法、装置に関するものであり、例えば不織布やプリプレグシートの製造分野に適用することができる。
【0002】
【従来の技術】周知の通り、現在多くの分野でガラス繊維,炭素繊維等の強化繊維を引き揃えたプリプレグシートが利用されている。このプリプレグシートは、繊維束を開繊して薄く広がった状態のシート状に引き揃え、これに合成樹脂を繊維間に充分含浸させて製造される。合成樹脂には熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂が使用されるが、繊維束への樹脂の含浸には樹脂の粘度が大きく影響し、束ねられた繊維の間に樹脂を含浸させるのは困難である。特に熱可塑性樹脂は粘度が非常に高いため、熱可塑性樹脂を溶融させた状態で繊維束をその中に通しても繊維束の外周に被膜ができる程度で繊維間には殆ど含浸しない。そこで粉末状にした熱可塑性樹脂を入れた流動床の中に繊維束を通して、樹脂の粉末を繊維束間に含浸させる方法もあるが繊維束が束になった状態では内部まで確実に含浸させることはできない。そのため、樹脂の含浸を促進させるために、繊維束を薄く均一に開繊させることが必要である。また、プリプレグシートは、繊維束の引き揃えが均一でなく単繊維間に隙間があったり、毛羽の発生が多いと成形品の強度が低下し、表面品位も悪くなる。それに加え、最近ではゴルフシャフトや釣竿等の強度向上のため極薄の一方向引き揃えプリプレグが必要とされている。そのため、毛羽を発生させることなく繊維束を薄く均一に開繊する必要がある。
【0003】そこで、このような繊維束を均一に開繊させる技術として、特公平4−24209号公報のように曲面基材上を張力化で通過させる方法や、しごきバーでしごく方法、特開昭56−43435号公報のように繊維束に沿わせた円柱体を幅方向に振動させる方法等があるが、繊維に加わる張力が大きく、また繊維を擦るため、繊維の毛羽立ちが多く糸切れしやすいという欠点がある。そのため、糸の送り速度を速くできない。
【0004】また、特開平2−145830号公報には、円柱体上に弾性体を備えたエキスパンダーロールに繊維束を張力をかけて接触させ、ロール走行によるロール表面の弾性体の軸方向の拡幅に合わせて繊維束を開繊させる装置が記載されているが、繊維束の弾性体に対する接圧を高くして摩擦力により繊維束を弾性体と一緒に拡げているので張力をかなり高くする必要がある。また、円柱体を曲げて回転させるので、拡幅量はそれほど多くなく設備が複雑な割には効果が小さい。また、拡幅力が直接作用するのは繊維束の中でも弾性体と接する部分の繊維のみであるため、繊維束の拡幅は均一ではなく、中央部が盛り上がった状態となる欠点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたもので、低張力で、しかも毛羽の発生がない状態で繊維束を薄く均一に開繊できる開繊繊維束の製造方法および装置並びにこれらの方法、装置を用いたプリプレグシートの製造方法、装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の製造方法は、上記課題を解決するために、連続的に供給される複数本の繊維束を、該繊維束と交差する方向に配置された複数本の突起の間に割り込ませ、前記突起を前記繊維束とともにその搬送方向に搬送しつつ隣接する突起間の間隔を広げることにより、前記開繊繊維束を開繊することを特徴とする。この場合、前記繊維束を前記突起に供給する前に予備的に開繊するか若しくは加熱するのが好ましい。
【0007】繊維強化樹脂プリプレグは、上記製造方法により繊維束を開繊した後、開繊繊維束を構成する複数本の単繊維を一方向に並べてシート状にし、次いで合成樹脂を含浸してプリレグを製造する。
【0008】本発明の製造装置は、上記課題を解決するために、(A)繊維束の搬送方向と交差する方向に伸縮自在であって、かつその表面に複数個の突起が所定間隔で並べられた突起付き弾性体と、(B)該弾性体を前記搬送方向に走行させる駆動手段とを備え、(C)前記弾性体は、搬送前は前記搬送方向と交差する方向の長さが弾性体の自然長またはそれに近い長さであり、搬送方向に移動する従って前記突起の隣接間隔が広がることを特徴とする。この場合、前記突起付き弾性体は、コイルバネ、ジグザグ状に屈曲したバネ、表面に多数の突起を有するゴムベルト、突起物を編み込んだ伸縮性を有する編織物のうちのいずれかを用いるのが好ましい。また、製造装置の入口側に、さらに繊維束の予備開繊部または繊維束の加熱部を設けるのが好ましい。
【0009】繊維強化樹脂プリプレグの製造装置は、上記いずれかの開繊繊維束の製造装置の出口側に、樹脂含浸部を有することを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好ましい実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0011】図1は、本発明の開繊繊維束の製造装置の概略平面図、図2は図1の装置の側面図である。
【0012】まず、本発明の製造装置の構成要素を説明する。15は、本発明の製造装置により開繊される繊維束で複数本の単繊維からなる。3と4は、エンドレスチェーン1,2を回転させる駆動スプロケットであり、図示しない軸受に支持されている。スプロケットは、出口部が間隔Lで向き合い、その回転軸は角度θで交差している。6は、駆動スプロケット3を回転させるための回転数が調整可能なモーターである。5は、駆動スプロケット3、4を接続するユニバーサルジョイントである。7と8は、エンドレスチェーン1,2を案内支持するフリースプロケットであり、図示しない軸受に支持されている。前記7,8のスプロケットは、入口部で間隔lで向き合い、その回転軸は、前記3,4の駆動スプロケットと同様に角度θで交差している。そのため、3と4の駆動スプロケットの間隔Lは、7と8のフリースプロケットの間隔lよりも長くなっている。エンドレスチェーンは、前記3,4,7,8のスプロケットにより繊維束と同じ速度で循環する。9は多数の突起Aを有する弾性体であり、その両端はそれぞれチェーン1と2に固定され、チェーン全周にわたって等間隔で複数本が取付けられている。
【0013】図2の10と11は、糸道を規制するフリーローラーであり、図示しない軸受に支持されている。12は、前工程から搬送される繊維束15に対して後述する前処理を施す前処理部であり、開繊される繊維束の状態に応じて、予備開繊やサイジング剤の軟化,除去を行うものである。13は、開繊された開繊繊維束にたとえばエポキシ系熱硬化性樹脂、ポリアミド、PPS繊維などの熱可塑性樹脂などの合成樹脂を含浸する樹脂含浸部である。
【0014】図3〜6は、図1で示した多数の突起Aを有する弾性体9の斜視図であり、それぞれ引張コイルバネ、ジグザグに屈曲したバネ、突起を有する帯ゴム、突起物を編み込んだ伸縮性のある編み物である。
【0015】次に、上記図面を用いて本発明の製造方法について説明する。
【0016】繊維束15は、先ず10のフリーローラーで糸道を規制される。次に前処理部12において、繊維束の状態により前処理が必要な場合には、適当な前処理を施される。特にサイジング剤で繊維束に柔軟性がない場合や繊維束が丸く束ねられている場合には、繊維束を熱風ノズルやヒーターで加熱してサイジング剤を軟化或いは除去したり、しごきバー等の簡単な開繊手段で予備開繊しておくことが有効である。次に繊維束15は、繊維束の移動速度と同じ速度で循環している突起を有する弾性体9の、長さがもっとも短くなる場所である入口側(フリースプロケット7,8)付近で上記弾性体9に接触する。ここで、弾性体上の多数の突起は、繊維束に割り込む。その後、上記弾性体9は、繊維束15と同じ速度で移動しながら幅方向に伸びるので、繊維束間に割り込んだ突起が繊維束を構成する単繊維間を開繊させる。そして、繊維束は、上記弾性体9が最も長くなる出口側(駆動スプロケット3,4)付近でもっとも開繊された後、上記弾性体9から離れてフリーローラー11で糸道を規制され、次の工程に進む。プリプレグを製造する場合は、樹脂含浸部13において開繊繊維束間に樹脂を含浸した後、シート化する。
【0017】多数の突起を有する弾性体9は、上記の機能を果たすものであれば図3〜6に示したもの以外にどのような態様のものを用いてもかまわない。また、繊維束を均一に開繊するためには、突起が等間隔に並んでいることが望ましいが、場合によっては等間隔である必要はなく、ランダムに配置されていてもかまわない。突起を有する弾性体9は繊維束と同じ速度で移動するので、繊維束から毛羽が発生する可能性があるが、これは繊維束に弾性体上の突起が割り込む時だけであり、突起の形状や表面粗さを最適化すれば毛羽は殆ど発生しない。
【0018】突起を有する弾性体9と繊維束の移動速度が多少違っている場合でも多少毛羽が発生しやすくなるが開繊には支障ない。本装置構成以外でも、突起を有する弾性体に上記の動作をさせることが可能であれば、どのような装置構成でも構わない。例えば、回転する円柱体の表面に多数の突起を有する弾性体を配置した構造でもよい。上記の製造装置を複数台直列に並べて使用すればさらに開繊幅を広くできる。また、この製造装置の後に設置される樹脂含浸部は、薄く均一に開繊した開繊繊維束が通過することができる構造であれば、どのようなものでも構わない。また、含浸させる樹脂も、熱硬化性樹脂だけでなく溶融した熱可塑性樹脂,粉末化した熱可塑性樹脂,あるいは樹脂のかわりにバインダーを用いても構わない。
【0019】なお、本発明が適用できる繊維束としては、炭素繊維、ガラス繊維、ケブラー繊維などが挙げられる。
【0020】以上に述べた本発明の開繊技術は、衣料用繊維の高次加工など、あらゆる分野での開繊繊維束の製造技術に適用できる。
【0021】
【実施例】
実施例1図7は、本実施例で使用した装置の概略構成図であり、突起を有する弾性体として、図3の金属製の引張コイルバネ9を使用した。
【0022】製造装置の前には、繊維束の糸道規制と繊維束の偏平化のため、フリーローラー10を設置した。製造装置に使用したバネ9は、線径0.32mm,巻き径5mmで、コイル部の自由長(線間の隙間が無い状態)が30mmのもので、装置のチェーンリングに40本を等間隔で並べた。そして、繊維束が最初にバネに当たる位置でのバネのコイル部の長さを40mmに設定し、予めバネの線と線の隙間が0.1mm空くようにした。これは、バネが繊維束に割り込み易くするためである。一方、繊維束が製造装置から離れる場所でのバネのコイル部の長さは80mm(限界は87.7mm)で、装置による開繊幅を2倍とした。また、コイルバネの最短部から最長部までの長さは、約150mmとした。製造装置の後ろにも繊維束の糸道規制、繊維束の開繊均一化のため、フリーローラー11を設置した。また、製造装置の入口より前方の前処理部12の位置に熱風ノズルを設けており、繊維束を70℃〜100℃くらいに加熱して、繊維束に付着したサイジング剤を軟化させ、コイルバネが繊維束に割り込み易くしている。
【0023】次に上記実施例装置の実施条件と効果を説明する。
【0024】使用した繊維束15は、炭素繊維(東レ株式会社製“トレカ”T700SC−12K−50C)で無撚糸である。繊維束はサイジング剤により偏平になっており、初期幅は6mmであった。この糸を送り速度9m/分で上記の製造装置に通したところ、製造装置の出口直後では、開繊幅が約13mmで、コイルバネが割り込んでいる箇所にわずかな隙間が生じているが、その後のフリーローラー11に接触した直後では、開繊幅が12mmで、隙間もなくなり繊維が薄く均一に開繊していた。また、毛羽の発生も殆ど無かった。
【0025】その際の糸張力は、製造装置の入口側のフリーローラー10の前で、約700g、製造装置の出口側のフリーローラー11の後でも、約900g程度であった。
【0026】この装置により開繊した繊維束を樹脂含浸部13において、エポキシ系熱硬化性樹脂を含浸したところ、樹脂が均一に含浸しており、且つ繊維が毛羽等の損傷なく均一に分散した高品位なプリプレグが得られた。
【0027】実施例2装置構成は、実施例1と同じで図7に示す通りであるが、前処理部12を実施例1の熱風ノズルに加えて、熱風のあたる場所にしごきバー3本による予備開繊部を設置した。実施条件は、実施例1と同じとした。
【0028】その結果、前処理部12で予備開繊した時の幅が約8mm、製造装置の出口直後では、開繊幅が約16mmで、その後、フリーローラー11に接触した直後では、開繊幅は、15mmで、隙間なく繊維が薄く均一に開繊していた。しごきバーによる予備開繊のため、張力は製造装置の出口側のフリーローラー11の後で約1200g程度と少し高くなったが、しごきバー付近でわずかに毛羽が発生する程度であった。
【0029】
【比較例】図8は比較例として使用した装置の概略構成図である。
【0030】この比較例は、開繊部に5本のシゴキバー15,16,17,18,19(表面クロムメッキ+梨地加工)のみを図のように配置したものであり、本発明の製造装置を用いない例である。繊維束15は上記の実施例1,2と同じ炭素繊維を使用し、繊維束の送り速度も実施例1,2と同じ9m/分とした。
【0031】この条件下では、ボビン13に抵抗を負荷し、糸張力を上げることで開繊幅を広くすることができるが、実施例1のように開繊幅が6mmから11mmまで開繊するように糸張力を調整したところ、開繊部の前では、糸張力が約700gであったが、開繊部の後では、シゴキバーによる摩擦抵抗が非常に大きく糸張力が5000g以上であった。また、たえず繊維とシゴキバーが擦れあっているので、毛羽の発生が非常に多く、繊維束とガイドバーの接触部付近に毛羽溜まりが発生した。さらに、この製造装置で開繊した繊維束を、樹脂含浸部13において樹脂含浸したところ、プリプレグ表面に毛羽溜まりや繊維束の割れ等の不均一領域が多く発生した。毛羽発生を防止するため、繊維束の送り速度を遅くしたところ、糸張力は減少したが実施例のように充分な開繊ができなかった。
【0032】
【発明の効果】請求項1および2の発明によれば、繊維が一方向に引きそろえられたシートであって、その厚さが十分薄いうえに繊維の開繊が十分に行われている高品位なシートを容易に製造できる。また、請求項3の発明によれば、繊維強化樹脂プリプレグの製造において、合成樹脂の含浸を均一、かつ確実に行うことができる。
【0033】請求項4〜8の発明によれば、繊維束を低張力で、かつ毛羽を発生させることなく充分に薄く均一に開繊できる装置が得られる。
【出願人】 【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
【出願日】 平成8年(1996)10月8日
【代理人】
【公開番号】 特開平10−121344
【公開日】 平成10年(1998)5月12日
【出願番号】 特願平8−267295