トップ :: D 繊維 紙 :: D02 糸;糸またはロ−プの機械的な仕上げ;整経またはビ−ム巻き取り

【発明の名称】 糸条流体加工装置
【発明者】 【氏名】藤原 正幸
【氏名】治田 勝
【課題】短繊維を含む糸条の流体加工装置を用いた糸加工において,発生する短繊維屑で作業環境が悪化したり,加工操業性が低下することがなく,さらに,得られる加工糸の品質を向上させることができる糸条流体加工装置を提供する。

【解決手段】流体加工装置4と,糸条が出入りする導糸孔11を有し,流体加工装置4を取り囲んだ遮蔽箱14と,遮蔽箱14内で発生する短繊維屑を箱外に吸引,除去する繊維屑吸引管10とからなる糸条流体加工装置である。また,遮蔽箱14には,繊維屑吸引管10に通じる吸引孔12と流体加工装置4の空気噴出領域とを結ぶ延長線上に外気導入孔13が穿設してある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 流体加工装置と,糸条が出入りする導糸孔を有し,流体加工装置を取り囲んだ遮蔽箱と,遮蔽箱内で発生する短繊維屑を箱外に吸引,除去する繊維屑吸引管とからなる糸条流体加工装置であって,前記遮蔽箱には,繊維屑吸引管に通じる吸引孔と流体加工装置の空気噴出領域とを結ぶ延長線上に外気導入孔が穿設されていることを特徴とする糸条流体加工装置。
【請求項2】 糸条入り側の導糸孔から遮蔽箱の外方向に給糸パイプを配設してなる請求項1記載の糸条流体加工装置。
【発明の詳細な説明】【発明の属する技術分野】本発明は,短繊維糸条と長繊維糸条とを引き揃えた,短繊維を含む糸条(以下,短繊維を含む糸条という。)に旋回又は攪乱等の流体加工を施すに際し,糸条から脱落する短繊維屑を容易に捕捉,除去することができる糸条流体加工装置に関するものである。
【従来の技術】短繊維を含む糸条に空気等の加圧流体を噴射させることにより糸条を旋回又は攪乱させ,捲縮,交絡又はループを形成させる等して,短繊維糸条と長繊維糸条とを複合した特異な複合スパン糸とする加工法が数多く試みられており,これらの方法で得られる複合スパン糸の外観と風合が最近の衣料消費者の嗜好によく合致して重用されている。しかしながら,上記のように,短繊維を含む糸条に加圧流体を噴射させて捲縮,交絡又はループを形成させる等の加工を施す際,糸条は加工装置内で旋回や攪乱作用を受けるため,糸条内の把持の弱い短繊維が脱落し,短繊維屑が発生する。この短繊維屑は,加工装置の周辺に飛散し,時間の経過とともにガイドローラやシャフトの各部に付着堆積して,ガイドローラやシャフトの回転不良あるいは糸切れ等の発生原因となって操業性を著しく低下させる。また,短繊維屑は,空気中へ飛散して作業環境を悪化させ,さらに,加工糸に付着してその品位を低下させるとともに,巻返し,撚掛け,製織等の後加工での加工性に悪影響を及ぼす等の数多くの問題を生じる。これらの問題を解決するために,流体加工装置を遮蔽箱内に装着した糸条流体加工装置が提案されている。この装置で使用されている遮蔽箱は,短繊維屑を遮蔽箱外に飛散させないため,導糸孔を除いて密閉したものである。しかしながら,密閉状態にある遮蔽箱内を繊維屑吸引管で吸引するには,負圧静圧の高い吸引ブロアーが必要となる。また,密閉状態では,吸引作用に伴う風量不足で吸引ブロアーに負荷がかかりやすく,モーターの加熱,損傷の原因となりやすい。そして,密閉状態に近い遮蔽箱内を吸引管で吸引しても,吸引孔近辺の短繊維屑は吸引されるが,空気の流れが弱く,しかも風量が不足するので,遮蔽箱の全域の飛散短繊維屑を吸引するのは難しい。このため,加工時間の経過とともに遮蔽箱内に多量の短繊維屑が残存し,流体加工装置に堆積したり,加工糸に付着してその品位を低下させるという欠点は解消されない。
【発明が解決しようとする課題】本発明は,上記の問題を解決し,短繊維を含む糸条の流体加工装置を用いた糸加工において,発生する短繊維屑で作業環境が悪化したり,加工操業性が低下することがなく,さらに,得られる加工糸の品質を向上させることができる糸条流体加工装置を提供することを技術的な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】本発明者らは,上記の課題を解決するために鋭意検討した結果,流体加工装置を収容する遮蔽箱の特定の位置に外気導入孔を設けて積極的に空気の流路を作り,飛散する短繊維屑をその流れに導いて吸引,除去することで短繊維屑の飛散防止が図られ,遮蔽箱内に堆積する短繊維屑が著しく減少することを知見して本発明に到達した。すなわち本発明は,流体加工装置と,糸条が出入りする導糸孔を有し,流体加工装置を取り囲んだ遮蔽箱と,遮蔽箱内で発生する短繊維屑を箱外に吸引,除去する繊維屑吸引管とからなる糸条流体加工装置であって,前記遮蔽箱には,繊維屑吸引管に通じる吸引孔と流体加工装置の空気噴出領域とを結ぶ延長線上に外気導入孔が穿設されていることを特徴とする糸条流体加工装置を要旨とするものである。
【発明の実施の形態】以下,本発明について詳細に説明する。短繊維を含む糸条に捲縮,交絡,ループ等の流体加工を施すには,一般に図1に示すような工程で行われる。すなわち,短繊維糸条Ya と長繊維糸条Yb はガイド1により引揃えられて引揃え糸条Yabとなり,フィードローラ2を経てガイド3により流体加工装置4内に導入され,捲縮,交絡,ループ等の所要の加工が施されて加工糸Y' abとなり,ガイド5を経てデリベリローラ6により引き出され,ガイドローラ7を経て巻取りドラム8によりパッケージ9に巻き取られる。上記の流体加工において,引揃え糸条Yabが流体加工装置4内へ入る直前に流体加工装置4から噴出する攪乱用流体の作用を受けたり,流体加工装置4内で旋回や攪乱作用を受けたり, あるいは加工糸Y' abが流体加工装置4から出た直後に流体加工装置4から噴出する攪乱用流体の作用を受けると,長繊維糸条Yb と引揃えられている短繊維糸条Ya 中の把持の弱い一部の短繊維が脱落し,短繊維屑となって流体加工装置4の周辺に飛散し,時間の経過とともに付着堆積し,それらが走行する引揃え糸条Yabに飛び込み,糸切れ等の原因となって加工操業性を著しく低下させたり,得られる加工糸Y' abの品質にも悪影響を及ぼすことになる。そこで,流体加工装置として本発明の糸条流体加工装置を使用して流体加工を施せば, 上記の問題を解決できるものである。図2は,本発明の糸条流体加工装置の一実施態様を示す縦断面図であり,本発明の糸条流体加工装置は, 流体加工装置4と,流体加工装置4を取り囲んだ遮蔽箱14及び繊維屑吸引管10で構成されている。本発明において,流体加工装置4としては,旋回気流により糸条に仮撚を与えて捲縮を付与する仮撚加工装置や, 流体により糸条を攪乱して交絡を付与したり,ループやたるみを起生させる攪乱加工装置等を使用することができる。流体加工装置4を取り囲んだ遮蔽箱14の上板と底板には,流体加工装置4の糸条入口と糸条出口と対向する位置に導糸孔11a, 11bがそれぞれ設けてあり, 導糸孔11a, 11bの後方には, 吸引ブロアー (図示せず) を有する繊維屑吸引管10に通じる吸引孔12がそれぞれ設けられている。さらに,遮蔽箱14には,吸引孔12と,流体加工装置4の糸条入口及び糸条出口の空気噴出領域とを結ぶ延長線上に,それぞれ外気導入孔13a, 13bが設けられている。本発明でいう流体加工装置4の空気噴出領域とは,図2の斜線部分をいうものであり, したがって,吸引孔12と流体加工装置4の空気噴出領域とを結ぶ延長線とは,空気噴出領域(斜線部分)内のいかなる部分を通るものであってもよく,特に限定されるものではないが,流体加工装置4の糸条入口及び糸条出口に近い空気噴出領域との延長線上に外気導入孔13を設けることが好ましい。その理由は,流体加工装置4から遠ざかれば,それだけ噴出空気が拡散され,噴出空気に含まれる短繊維屑も拡散遊離しやすくなるため,捕捉除去の効率をよくするには,外気導入孔13を,できるだけ噴出領域の狭い部分,すなわち流体加工装置4に近い部分を通る延長線上に設けるのが好ましいのである。上記のように,吸引孔12と流体加工装置4の糸条入口及び糸条出口の空気噴出領域とを結ぶ延長上の遮蔽箱14壁面に外気導入孔13a, 13bを設けることで,外気導入孔13と吸引孔12との間に空気の流路(点線矢印)が形成される。しかも,外気導入孔13と吸引孔12との中間は,流体加工装置4の糸条入口と糸条出口の空気噴出領域であるため,この噴出空気も流路に沿って吸引孔12から繊維屑吸引管10に吸引される。流体加工装置4の攪乱作用で発生する短繊維屑(風綿)は,糸条入口と糸条出口の噴出空気に混じって噴出するため,吸引孔12と外気導入孔13間の流路(点線矢印)にスムーズに入り込み,繊維屑吸引管10から遮蔽箱14外に排出されることになる。また,この流路に入り込まない短繊維屑があっても,遮蔽箱14内を飛散しながら最終的にはこの流路に吸い込まれ,遮蔽箱14内を短繊維屑堆積のない状態を維持することが可能である。本発明の効果を確認するために,吸引ブロアーを一定とし,吸引孔12と外気導入孔13の断面積を種々変更することで,流路の風速を変化させて短繊維屑の吸引テストを実施したところ,外気導入孔入口13における流路の風速が8m/sec 以上であれば,スムーズに短繊維屑の吸引が行われ,長時間経過しても遮蔽箱14内の短繊維屑堆積は認められない結果が得られた。したがって,使用する吸引ブロアーの風量性能に応じて,上記の風速が得られるように吸引孔12と外気導入孔13の孔径を適宜選定すれば,吸引作用の効果が大幅に向上した糸条処理装置を得ることができる。上記の実施態様は,流体加工装置4として,糸条入口と糸条出口の両側から空気が噴出するものを用いた例であり,遮蔽箱14には,吸引孔12と,流体加工装置4の糸条入口及び糸条出口の空気噴出領域とを結ぶ延長線上に,それぞれ外気導入孔13a, 13bを設けるとともに,糸条入口と糸条出口側に繊維屑吸引管10に通じる吸引孔12a, 12bを配設したが,糸条入口又は糸条出口のいずれか一方から空気が噴出する流体加工装置を用いる場合には,空気が噴出する一方側にだけ外気導入孔13と吸引孔12を設けてもよい。次に,図3は本発明の他の実施態様を示す縦断面図であり,図2の装置において,糸条入り側の導糸孔11aから遮蔽箱14の外方向に給糸パイプ15を配設したものである。通常, 流体加工装置4に給糸する際には,導糸孔11aに給糸ガイド(図示せず)を取り付けるが,走行する糸条がこの給糸ガイドに接触して生じる摩擦抵抗により短繊維屑の脱落が生じたり,遮蔽箱14内の流体加工装置4の旋回あるいは攪乱作用が遮蔽箱14外の走行糸条にも波及して短繊維屑の脱落や飛散が生じる場合がある。これらの影響で給糸ガイド周辺に短繊維屑が飛散し,時間の経過とともに,この短繊維屑が給糸ガイド周辺に堆積することになる。そして,短繊維屑の堆積物が走行糸条に絡みつき,糸切れを誘発したり,加工糸の品位を低下する原因となる。しかしながら,図3で示したように,糸条入り側の導糸孔11aから遮蔽箱14の外方向に給糸パイプ15を配設しておけば,遮蔽箱14内の吸引作用が給糸パイプ15内に遡及するので,上記のような現象が生じた場合でも,遮蔽箱14外で発生する短繊維屑を吸引,除去することが可能となる。上記で使用する給糸パイプ15は,糸条を挿入して走行させることができるものであればよく,例えば,市販のアルミニウム製パイプが好ましく用いられる。また,給糸パイプ15の長さは, 流体加工装置4の旋回あるいは攪乱作用が遡及する領域をカバーする長さにすることが好ましい。さらに,短繊維糸条Ya の供給方法が, フィードローラを介さないフリー供給で,しかも,遮蔽箱14内の流体加工装置4入口で長繊維糸条Yb と合糸, 混繊する場合,クリール上から遮蔽箱14に到る糸条経路を全て給糸パイプ15にして短繊維糸条Ya を給糸すれば,糸条経路で生じる短繊維屑は給糸パイプ15を介して全て遮蔽箱14内に吸引され,繊維屑吸引管10から排出,除去することが可能となり,作業環境の一層の改善と加工糸の品質安定化を図ることができるものである。
【発明の効果】本発明の糸条流体加工装置は,繊維屑吸引管に設ける吸引ブロアーの性能を最大限に活用し,風速と空気の流路を積極的に作り,遮蔽箱内に飛散する短繊維屑をこの流路に導いてスムーズに吸引除去することが可能となる。したがって,この装置を使用して短繊維を含む糸条の流体加工を施せば,糸加工工程で生じる短繊維屑のほとんどを効率よく吸引, 除去して,機台や加工中の糸条及び作業場内の壁,床等に付着,堆積するのを防ぐことができ,良好な加工操業性と作業環境を維持することが可能となり,さらに, 得られる加工糸の短繊維屑付着による品質低下を防止することができる。
【出願人】 【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
【出願日】 平成8年(1996)6月6日
【代理人】
【公開番号】 特開平10−25641
【公開日】 平成10年(1998)1月27日
【出願番号】 特願平8−143936