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【発明の名称】 薄膜形成装置の表面清浄に三フッ化塩素を用いる方法
【発明者】 【氏名】荒牧 稔
【氏名】中野 久治
【氏名】末永 隆
【氏名】楊井 清志
【氏名】新井 博通
【課題】薄膜形成装置内の表面に堆積した種々の堆積物を高速で除去し、清浄な表面を露出させる。

【解決手段】薄膜形成装置内の表面に堆積した金属またはその化合物と反応させて除去し、かつ装置の表面をガスの侵食により傷つけることなく、清浄な表面を露出させるために三フッ化塩素を50〜100容量%の高濃度で使用する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 薄膜形成装置内の表面に堆積した金属またはその化合物とガス化反応させて除去し、かつ装置の表面をガスの侵食により傷つけることなく、清浄な表面を露出させるために三フッ化塩素ガスを50〜100容量%の高濃度で使用する方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、三フッ化塩素の新規な用途に関し、CVD・真空蒸着、スパッタリング、溶射などの薄膜形成プロセスにおいて薄膜形成装置内に堆積した金属およびその化合物を反応除去し、装置の素材を傷つけることなく清浄な表面を露出させるために三フッ化塩素ガスを使用する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】半導体工業を中心に薄膜形成プロセスが普及し、CVDや真空蒸着、スパッタリングなどの装置が多数稼働している。しかし、このような薄膜形成装置においては薄膜を形成すべき目的物以外に装置の内壁、目的物を担持するための治具などに多量の堆積物が生成し、この堆積物を除去するために長時間装置の運転を停止するなどの問題を起こしている。また、現状では強酸・強アルカリなどの水溶液を用いる化学研磨や電解研磨や、機械的研磨などの方法で堆積物の除去を行うために装置や治具の傷みが大きく、数回の使用で交換しなければならない場合も多く、また、操作も煩雑である。
【0003】特公昭46−19008号公報(英国特許第1180187号)は、フッ化塩素、フッ化臭素、フッ化ヨウ素によるSi、Geからなる半導体材料表面の艶出しに関する技術が開示されており、同時にこの技術を用いることで、薄膜形成装置の部材や壁に付着する膜や粉の成長を艶出し処理中に抑制できることが述べられているが、この公報に記載された発明は、Si、Geの艶出しを目的にしている。すなわち、使用するフッ化塩素、フッ化臭素、フッ化ヨウ素の濃度は0.01〜2重量%と低い上、フッ化塩素、フッ化臭素、フッ化ヨウ素と容易に反応する水素を混合ガスとして用いることを特徴としており、フッ化塩素、フッ化臭素、フッ化ヨウ素本来の反応性を弱めている。従って、この方法によると、薄膜形成装置の部材や壁に付着する膜や粉が艶出し処理中に成長を抑制するのが限界であり、材料に対する反応速度を考えると、薄膜形成装置の内壁や装置部材に堆積した多量の堆積物を除去することを教示するものではない。
【0004】特開昭52−131470号公報には、BrF3、IF5、NF3等をプラズマエッチングやスパッタエッチングに用いることにより、フッ素と分離した物質が半導体基板上や反応室側壁に付着することが無く、反応系全体が清浄となることが示されている。しかし、これらのガスを薄膜形成後の装置内に導入して付着固化した薄膜を除去することは示されていない。
【0005】従来これらの問題点に対し、特開昭60−67673号公報に開示されているような反応室内に付着した珪素や炭化珪素の非単結晶被膜をHFガスを用いプラズマ気相エッチング反応で除去する方法、特開昭60−59739号公報に開示されているようなCF4、SF6を用いて皮膜形成装置内部に付着した珪素を含む皮膜をプラズマ気相エッチング反応で除去する方法、特開昭61−143585号公報に開示されているような反応室内壁に付着した珪素膜をNF3ガスを用いプラズマ気相エッチング反応で除去する方法等があるが、CF4、SF6は極めて安定なガスで使用条件としていずれもプラズマ雰囲気とすることが不可欠であり、HF、NF3も反応性が十分でなく、ノンプラズマで用いる場合にはHFでは酸化珪素系の化合物に限られ、NF3では400℃以上の高温を必要とする等使用にあたり制約の多いものであった。
【0006】英国特許第1268377号には、金属その他の表面に付着した有機物を三フッ化塩素ガスにより洗浄除去する方法が開示されているが、洗浄の対象となる物質はグリースや動植物の油等の有機物の汚染物に限定されており、基体に熱化学反応などにより強固に付着した無機物質についての使用可能性は触れられていない。また、J.Elecrochem.Soc.,129,2755(1982)には、ClF3によるシリコンウェハのプラズマエッチングが記載されており、J.Appl.Phys.,56,2839(1984)、Appl.Phys.Lett.,46,794(1985)にはClF3によるプラズマレスによる種々の物質のエッチングに関する記載があるが、これらは全て半導体製造工程における製品となるウェハのパターン形成に関するものであり、本発明のように薄膜形成装置の壁等へ付着した薄膜の除去については触れられていない。
【0007】三フッ化塩素は、上記のようにウエハのプラズマエッチングに用いられる他は、従来、ロケット燃料の酸化剤、六フッ化ウランの精製、フッ素化反応の試薬、化学レーザー等に用いられている。
【0008】例えば、米国特許第3527168号には、三フッ化塩素をロケット燃料の酸化剤として利用することが開示されており、特開昭47−25091号公報には、三フッ化塩素を用いてウランをフッ素化する事により六フッ化ウランとし、不純物として含まれるプルトニウム等と分離する方法が開示されている。
【0009】
【課題を解決するための具体的手段】本発明者らは、鋭意検討の結果、三フッ化塩素ガスを用いれば薄膜形成装置の堆積物を効率的に除去し、清浄な表面を露出できることを見いだし本発明に至ったものである。
【0010】すなわち本発明は、フッ化ハロゲンの中で反応性が強い三フッ化塩素を50〜100容量%という高濃度で、薄膜形成装置内の表面に堆積した金属またはその化合物と反応させて除去し、かつ装置の表面をガスの侵食により傷つけることなくクリーニング、すなわち、清浄な表面を露出させる方法を提供するものである。
【0011】三フッ化塩素は、化学的に最も活性なフッ素と同等の強い酸化力を有しており、工業的には塩素ガスとフッ素ガスを反応させることにより得られる室温で無色の気体である。フッ素が圧縮ガスであるのに対し、三フッ化塩素は沸点が12℃であり、液体として比較的容易に金属容器に貯蔵し、移送することができる。三フッ化塩素と同様の反応性を示すフッ化ハロゲンとして、一フッ化塩素、五フッ化塩素があるが、一フッ化塩素は三フッ化塩素より反応性が低い上、沸点−100.8℃の圧縮ガスであり、フッ素と同様貯蔵、移送が困難である。また、五フッ化塩素は衝撃を加えると三フッ化塩素とフッ素に解離する大変危険なガスである。この点で三フッ化塩素は、安全で貯蔵可能なフッ素として注目されていた。しかしながら、前述したように三フッ化塩素は、常温でフッ素と同等の反応性を有しているため、取り扱いが非常に危険であると考えられていた。また、三フッ化塩素に対する耐食部材の知見も少なく、取り扱う場合の装置部材に制限があり、装置材料の選定から行う必要があった。これに対して従来からクリーニングに用いられている三フッ化窒素、六フッ化硫黄、四フッ化炭素等は、室温ではほとんど不活性なガスであり、毒性も低い。このような観点から三フッ化塩素は、実験室的な試みはなされていたが、工業的な面での使用はなされておらず、これをクリーニング分野へ利用しようという試みは全く考えられていなかった。しかしながら、本発明者らは三フッ化塩素の取り扱い技術の蓄積を行い、工業的に使用できる可能性について鋭意実験を重ねて本発明に至った。すなわち、三フッ化塩素の安全性、装置材料、クリーニング条件を鋭意検討し、三フッ化塩素が本用途に使用可能であり、本ガスをクリーニングへ利用した場合、低温でクリーニングが可能なこと、クリーニングにプラズマ発生装置が不要なため低コストであること、基材に対するプラズマダメージがないこと、プラズマが届かない装置内の隅々や配管部分に対してもクリーニングが可能なこと、除害が簡単なこと、装置の基材の種類や付着した金属およびその化合物の種類の多くに適用できる汎用性があること等の従来のクリーニングガスが備えていない顕著な効果があることを見いだした。反応生成物は、ガスとして装置外へ容易に排出され、装置の内表面に反応生成物が形成されることもない。また、本発明によれば、従来のクリーニングガスに比べて高速にクリーニングでき、条件を適当に選定することにより、多種多様な薄膜を低温、短時間でクリーニングすることができることも判った。例えば、50%三フッ化塩素(ヘリウム希釈)によれば、多結晶シリコン膜は室温で、タングステンカーバイドは約50℃以上で、窒化珪素は150℃以上、炭化チタン、窒化チタンでは250℃以上でクリーニングが可能となる。薄膜形成装置内の堆積被膜のクリーニングが必要となる膜厚は、形成する薄膜の種類、装置の仕様等によって異なるが、例えば窒化ケイ素の場合、2000〜3000Aであり、本方法によれば、わずか数十秒程度でクリーニングが行える。
【0012】本発明が対象とする薄膜形成装置の堆積物とは、W、Si、Ti、V、Nb、Ta、Se、Te、Mo、Re、Os、Ir、Sb、Ge等の金属およびその化合物、具体的にはこれらの窒化物、炭化物およびこれらの合金が挙げられる。また薄膜形成装置の基板材料としては種々のものがあり、SiO2、SiC、SUS、スチール、しんちゅう、Al、Al23、黒鉛、Ni、Ni合金、ガラス、その他酸化物系セラミックス等が挙げられる。本発明の表面を露出させる方法は除去すべき金属またはその化合物の種類、厚みおよび薄膜形成装置の基板材料の種類等を考慮して、三フッ化塩素そのものを用いるか、あるいは窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスで希釈して用いるかを選択すればよい。また、反応条件についても特に制限されることなく、前記のとおり対象材料を考慮して適宜選択される。また露出させるためのガスの流通方法は、静置式、流通式のいずれで行ってもよい。
【0013】
【実施例】以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
実施例1〜3、比較例1、2アルミニウム基板上(1cm×5cm)にプラズマCVDにより約4μmの厚さのアモルファスシリコンを堆積させた(堆積重量0.01206g)テストピースをプラズマCVD装置の下部電極上に静置し、三フッ化塩素(実施例1〜3)、酸素75%・アルゴン25%混合ガス(比較例1)、四フッ化炭素95%・酸素5%の混合ガス(比較例2)の三種類のガスを用いて、高周波電源周波数13.56MHz、電極間距離50mm、ガス圧力50Torr、ガス流量10SCCM、印加電力0.315W/cm2、室温、プラズマ雰囲気下で反応を行った。反応時間およびその結果を表1に示した。
【0014】
【表1】

【0015】実施例4〜7、比較例3ステンレス鋼(SUS316)上にプラズマCVDにより約10μmの厚さのタングステンカーバイトを堆積させた(堆積重量0.0043g)テストピースを外熱式横型反応炉中で各種ガスと反応させた。この結果を表2に示した。
【0016】
【表2】

【0017】表2からも明らかなとおりNF3(比較例3)に比較して、実施例4〜7は、低温でも数倍ないし数十倍のクリーニング速度となり、十分な効果が認められる。なお、実施例4のテストピースの表面をX線マイクロアナライザーにより分析の結果、タングステンのピークが全く認められず、完全にクリーニングされていることを確認した。
【0018】実施例8〜11三フッ化塩素50%、ヘリウム50%混合ガスを用いて外熱式横型反応炉中でステンレス鋼(SUS316)上に炭化チタン(実施例8)、窒化チタン(実施例9)、窒化ケイ素(実施例10)の被膜を各々5μmの厚さで形成したものと、炭化ケイ素焼結体表面に多結晶金属シリコン(実施例11)を20μmの厚みで堆積させたテストピースのクリーニング試験を実施した。テストピースのクリーニングの確認はX線マイクロアナライザーによって、チタン、ケイ素のピークの存在の有無で確認した。
【0019】結果:実施例8の炭化チタン膜のクリーニング200℃以下ではほとんど反応が進行せず、X線マイクロアナライザーによる分析でもチタンのピークが減少していなかった。250℃以上に加熱することによってチタンのピークが減少し始め、10分間でほぼ完全にチタンのピークが消滅した。
実施例9の窒化チタン膜のクリーニング150℃以下ではほとんど変化が認められなかったが、250℃、10分のクリーニング条件において、窒化チタンの反応が進み、試験後のテストピース表面のX線マイクロアナライザーによる分析でもチタンのピークが認められなかった。
実施例10の窒化ケイ素膜のクリーニング室温から反応が進行し、5μmの被膜が5分間でほぼ完全にクリーニングできた。ただし、100℃以下では反応中間体と推定される剥離した白色粉体が認められるが、150℃以上ではこの粉体も完全に消滅した。
実施例11の多結晶シリコン膜のクリーニング室温から反応が進行し、5μmの被膜が5分間でほぼ完全にクリーニングできた。これらの結果をまとめて表3に示した。
【0020】
【表3】

【0021】
【発明の効果】本発明は、極めて反応性に優れ取扱い上慎重さを要する三フッ化塩素ガスを高濃度で使用するという技術常識を逸脱する方法を採用したところ、NF3ガスに比較して、プラズマレスでも低温において優れた金属膜等の反応除去性能を示し、各種薄膜形成装置等の表面をガスの侵食により傷つけることなく、装置内表面に反応生成物を形成することもなく清浄に露出させることができるという知見を実験により見いだしたものであり、従来その実用的利用について着目されていなかった三フッ化塩素ガスの新たな用途を確立し、このガスの利用により薄膜形成装置のクリーニングに要する時間が大幅に短縮され、特に半導体工業の発展に寄与するところ大である。
【出願人】 【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
【出願日】 昭和62年(1987)7月13日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】西 義之
【公開番号】 特開平10−212582
【公開日】 平成10年(1998)8月11日
【出願番号】 特願平9−217316