トップ :: C 化学 冶金 :: C22 冶金;鉄または非鉄合金;合金の処理または非鉄金属の処理

【発明の名称】 磁気スケール用Cu−Ni−Fe合金薄板材の製造方法
【発明者】 【氏名】柳谷 彰彦
【氏名】高田 揚大
【氏名】黒田 直人
【氏名】久須美 雅昭
【氏名】佐藤 謙一
【課題】従来の鋳造法あるいは粉末法で作製することができなかった厚さ200μmのCu−Ni−Fe合金薄板について、圧延により割れを発生させることなく、健全な形状および良好な磁気特性を有する磁気スケール用薄板材の製造方法を提供すること。

【解決手段】ガスアトマイズ法によりNi:5〜25重量%、Fe:5〜25重量%残部Cuおよび不可避的不純物よりなるCu−Ni−Fe合金粉末を作製し、該Cu−Ni−Fe合金粉末を金属製の容器に充填・封入し、これを熱間押出し装置にて900℃以上、歪み速度10s-1以上の大きな歪み速度で押出し、充填密度が実質98%以上の高密度、かつ粉末平均粒径がt/2mm以下(t:冷間加工後の板厚でかつ1mm以下)の微細な結晶粒組織を有する押出し棒材あついは角材を得、これを冷間加工して厚さ1mm以下の薄板を製造することを特徴とする磁気スケール用Cu−Ni−Fe合金薄板材の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ガスアトマイズ法によりNi:5〜25重量%、Fe:5〜25重量%、残部Cuおよび不可避的不純物よりなるCu−Ni−Fe合金粉末を作製し、該Cu−Ni−Fe合金粉末を金属製の容器に充填・封入し、これを熱間押出し装置にて900℃以上、歪み速度10s-1以上の大きな歪み速度で押出し、充填密度が実質98%以上の高密度、かつ粉末平均粒径がt/2mm以下(t:冷間加工後の板厚でかつ1mm以下)の微細な結晶粒組織を有する押出し棒材を得、これを冷間加工して厚さ1mm以下の薄板を製造することを特徴とする磁気スケール用Cu−Ni−Fe合金薄板材の製造方法。
【請求項2】 ガスアトマイズ法によりNi:5〜25重量%、Fe:5〜25重量%、残部Cuおよび不可避的不純物よりなるCu−Ni−Fe合金粉末を作製し、該Cu−Ni−Fe合金粉末を金属製の容器に充填・封入し、これを熱間押出し装置にて900℃以上、歪み速度10s-1以上の大きな歪み速度で押出し、充填密度が実質98%以上の高密度、かつ粉末平均粒径がt/2mm以下(t:冷間加工後の板厚でかつ1mm以下)の微細な結晶粒組織を有する押出し角材を得、これを冷間加工して厚さ1mm以下の薄板を製造することを特徴とする磁気スケール用Cu−Ni−Fe合金薄板材の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主として磁気スケールなどの棒材として使用されているCu−Ni−Fe(クニフェ)磁石合金の製造方法に関し、特に1mm以下の薄板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、Cu−Ni−Fe合金はCu:60%、Ni:20%、Fe:20%の組成で代表される実用の磁石合金(例えば特公昭55−9814号公報、特公昭55−4248号公報)で、高温でfcc単相(γ)領域があり、600℃近傍で時効するとγ相はNi−Fe−richの強磁性γ1 相とCu−richの非磁性γ2 相の2相に分離する。その際にスピノーダル分解によって反応が進行する。そして冷間加工によりγ1 相を細長く延ばし、保磁力および角形性を向上させるものである。このCu−Ni−Fe磁石合金の実用材料としての用途は磁気スケール用線材である。
【0003】この材料は古くは鋳造法によりインゴットを作製し、溶体化処理した後、熱間押出しにより棒状材料を作製し、その後冷間引抜きあるいはスウェージングにより直径数mmの線材に加工することにより形状異方性化し、その後時効処理し、所望の磁気特性を発現させている。また、鋳造法によるインゴットを作製する方法をとらずに粉末工法による製造方法もある。これは水アトマイズ法にて目的組成の合金粉末を作製し、還元処理を行った後金属製容器に充填した後所定の温度に加熱し、熱間押出しにより棒状材料を作製し、同様に冷間引抜きあるいはスウェージングにより直径数mmの線材に加工することにより形状異方性化し、その後時効処理し、所望の磁気特性を発現させているのが実状である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記のCu−Ni−Fe合金については線材としての用途が主であるが、厚さ1mm以下の薄板としての用途もあり、板状磁気スケール材として製造されてきた。溶解凝固プロセスにより作製したこの合金では、凝固時に初晶および残液凝固部の2つの領域が生じ、これに起因して成分偏析を避けることが出来ない。さらにスピノーダル分解を伴うCu−Ni−Fe系合金の作製においては、凝固後の冷却過程でスピノーダル分解が起こり、これを避けることはできない。Cu−Ni−Fe合金の製造方法においては、鋳造法においては鋳造したインゴットは凝固後の冷却時にいわゆるスピノーダル分解を生じ、Cu−richの領域とNi−Fe−rich領域の2つの領域から構成されるため、成分偏析を生じ易い。これを均一化するために1000℃以上の高温で溶体化する必要がある。
【0005】特に鋳造法で作製されたインゴットの結晶粒の大きさは、鋳造時の凝固速度の大きさに逆比例して大きくなる。また、凝固の際の鋳造欠陥の発生を避けることはできない。このような粗大化した結晶粒および鋳造欠陥は、後工程の冷間加工時に粒界割れおよび磁気性能不良などの問題を生じさせる。従って、直径が数mmの細線あるいは厚さ1mm以下の薄板の製造の際には、この欠陥に起因する貫通割れおよび磁気性能不良が起こり易い。
【0006】このような問題点を解決するために、鋳造法よりも微細な組織が得られる粉末冶金法による製造も行われている。その粉末冶金法とは鋳造法によりインゴットを作製する方法をとらずに水アトマイズ法にて目的組成の合金粉末を作製し、金属製容器に充填した後所定の温度に加熱し、熱間押出しにより棒状材料を作製するという方法である。しかしながら粉末冶金法においては、粉末間境界が固化成形後の粒界となって残存することが多い。この粒界は鋳造材の場合と同様に貫通割れを引き起こすという問題がある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、このような状況の下でなされたものであって、その目的とするところは、従来技術に見られる種々の問題点を発生させることなく、割れがなく、磁気特性に優れた健全な磁気スケール用薄板材の作製の実現を提供することにある。すなわち、その発明の要旨とするところは、ガスアトマイズ法により粒径1mm以下の合金粉末を作製し、この合金粉末を金属製の容器に充填・封入し、これを熱間押出し装置にて歪み速度10s-1以上の大きな歪み速度で押出し、充填密度が実質98%以上の高密度、かつ粉末平均粒径がt/2mm以下(t:冷間加工後の板厚でかつ1mm以下)の微細な結晶粒組織を有する押出し棒材あるいは角材を得、これを冷間加工して厚さ1mm以下の薄板を製造することを特徴とするものである。また、冷間加工の途中必要に応じて焼き鈍し処理を行うものである。
【0008】つまり、ガスアトマイズ法によりNi:5〜25重量%、Fe:5〜25重量%、残部Cuおよび不可避的不純物よりなるCu−Ni−Fe合金粉末を作製し、該Cu−Ni−Fe合金粉末を金属製の容器に充填・封入し、これを熱間押出し装置にて900℃以上、歪み速度10s-1以上の大きな歪み速度で押出し、充填密度が実質98%以上の高密度、かつ粉末平均粒径がt/2mm以下(t:冷間加工後の板厚でかつ1mm以下)の微細な結晶粒組織を有する押出し棒材あるいは角材を得、これを冷間加工して厚さ1mm以下の薄板を製造することを特徴とする磁気スケール用Cu−Ni−Fe合金薄板材の製造方法にある。
【0009】
【発明の実施の形態】粉末工法とはガスアトマイズ法により合金粉末を作製し、この合金粉末を金属製の容器に充填・封入し、これを熱間押出し装置にて押出すものである。この工法においては、押出し温度での変形抵抗値が小さい場合には、押出し時の歪み速度が小さいと押出しダイス内で十分に充填密度が上がる前に押出しが始まり、押出された材料の密度は低い状態となる。これに対して、歪み速度10s-1以上の大きな歪み速度で押出すことにより、押出しの際に、ダイス内で押出し材料は実質的に98%以上の高密度に充填される。
【0010】充填密度が実質98%以上の高密度、かつ粉末平均粒径がt/2mm以下(t:冷間加工後の板厚でかつ1mm以下)の微細な結晶粒組織を有する押出し棒材あるいは角材を得、これを厚さ1mm以下の薄板を作製するために冷間加工を行う。この時冷間加工前の結晶組織の大きさを図1に示すように、冷間加工後の板厚よりも小さくすることにより、結晶粒界に起因する薄板の厚さ方向の貫通割れを防止することができ、割れのない健全な薄板を作製することができる。すなわち、図1は本発明材(a)及び従来材(b)に係る圧延後の薄板の結晶組織を示す薄板断面組織図である。また、本発明により、本発明材(a)及び比較材(b)に係る磁気スケールの性能も向上した。図2は磁気スケールの性能を示したものである。
【0011】
【実施例】
実施例1Cu,Ni,Feをそれぞれ重量比で72%、20%および8%になるように秤量配合し、真空誘導溶解炉にて溶解後、ガスアトマイズを行い、平均粒径80μmの合金粉末を作製した。作製した合金粉末を金属製の容器に充填・脱気・封入後、温度980℃歪み速度50s-1で径160mmから20mm×20mmに押出し、角材を作製した。酸洗加工にて表面の容器金属材料を除去し、冷間圧延にて200μmの薄板を作製した。
【0012】実施例2Cu,Ni,Feをそれぞれ重量比で65%、20%および15%になるように秤量配合し、真空誘導溶解炉にて溶解後、ガスアトマイズを行い、平均粒径50μmの合金粉末を作製した。作製した合金粉末を金属製の容器に充填・脱気・封入後、温度1000℃歪み速度100s-1で径160mmから15mm×15mmに押出し、角材を作製した。酸洗加工にて表面の容器金属材料を除去し、冷間圧延にて150μmの薄板を作製した。
【0013】実施例3Cu,Ni,Feをそれぞれ重量比で72%、20%および8%になるように秤量配合し、真空誘導溶解炉にて溶解後、ガスアトマイズを行い、平均粒径50μmの合金粉末を作製した。作製した合金粉末を金属製の容器に充填・脱気・封入後、温度980℃歪み速度30s-1で径160mmから径20mmに押出し、棒材を作製した。表面の容器金属材料を除去し、冷間圧延にて150μmの薄板を作製した。
【0014】実施例4Cu,Ni,Feをそれぞれ重量比で60%、20%および20%になるように秤量配合し、真空誘導溶解炉にて溶解後、ガスアトマイズを行い、平均粒径50μmの合金粉末を作製した。作製した合金粉末を金属製の容器に充填・脱気・封入後、温度1030℃歪み速度50s-1で径180mmから径20mmに押出し、棒材を作製した。表面の容器金属材料を除去し、冷間圧延にて120μmの薄板を作製した。
【0015】
【発明の効果】以上述べたように、本発明により従来の鋳造法では貫通割れを起こしやすかった厚さ200μmのCu−Ni−Fe合金薄板について、圧延により割れなどの問題点を発生させることなく、健全な形状および良好な磁気特性を有する磁気スケール用薄板を作製できるようになったことは工業上極めて有利である。
【出願人】 【識別番号】000180070
【氏名又は名称】山陽特殊製鋼株式会社
【識別番号】000108421
【氏名又は名称】ソニー・プレシジョン・テクノロジー株式会社
【出願日】 平成8年(1996)8月8日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】椎名 彊
【公開番号】 特開平10−53822
【公開日】 平成10年(1998)2月24日
【出願番号】 特願平8−209624