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【発明の名称】 高強度・高靱性熱間圧延鋼帯の製造方法
【発明者】 【氏名】佐藤 馨
【氏名】小林 聡雄
【氏名】三辻 晴夫
【氏名】大村 雅紀
【氏名】大和田 浩
【課題】ラインパイプ用鋼管製造用の高強度・高靱性の熱間圧延鋼帯を得る。

【解決手段】重量%で C:0.05〜0.11%、Si:0.35%以下、Mn:1.40〜1.80%、Ti:0.015〜0.070%、Nb:0.030〜0.060%、V:0.050〜0.090%、Al:0.0005〜0.10%、N:0.0050%以下を含有し、さらに、Ti* (%)〔=Ti(%)−N(%)×48/14〕≧0.015%を満足する鋼を、1150〜1250℃の温度域で圧延を開始し、730〜860℃の温度域で圧延を終了し、5℃/sec以上の平均冷却速度で冷却し、550〜650℃で巻き取る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 重量%で C:0.05〜0.11%、Si:0.35%以下、Mn:1.40〜1.80%、Ti:0.015〜0.070%、Nb:0.030〜0.060%、V:0.050〜0.090%、Al:0.0005〜0.10%、N:0.0050%以下を含有し、さらに、(1)式で表される、Ti* が、0.015%以上である組成の鋼を、1150〜1250℃の温度域で圧延を開始し、730〜860℃の温度域で圧延を終了し、5℃/sec以上の平均冷却速度で冷却し、550〜650℃で巻取ることを特徴とする高強度・高靱性熱間圧延鋼帯の製造方法。
Ti* (%)=Ti(%)−N(%)×48/14・・・・・・(1)
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ラインパイプ用鋼管の製造に用いる高強度・高靱性の熱間圧延鋼帯の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ラインパイプ用鋼管に要求される特性は、強度、靱性、溶接性、耐食性と多岐にわたる。電縫溶接法により製造するラインパイプ用鋼管においても同様である。そのためには、鋼管を製造するための熱間圧延鋼帯において、特性の確保が必要である。
【0003】上記の要求特性の内、強度と靱性は、従来からの多くの例にも見られる様に、しばしば、両立が困難である。たとえば、強化元素を含有させると靱性は劣化することが多い。
【0004】合金元素で強化して高強度・高靱性の熱間圧延鋼帯を得る方法には、たとえば、Ti、Nb、V等の析出強化型元素を合金化し、それらの微細な析出物により強化する方法や、Cr、Ni、Mo等の、主としてマトリックスを固溶強化する元素を含有させる方法等がある。
【0005】前者の析出物の強化作用を利用する方法では、これらの元素を比較的少量、含有させることにより、大きな降伏強度の増加が得られる。しかしながら、強力な炭化物あるいは、窒化物形成元素である、これらの元素を含有させると、僅かの製造条件の差により、その特性が大きく変化する。
【0006】たとえば、Tiを含有する溶鋼では、大気中より侵入したNがTiNを形成する。この場合のTiNは比較的大きな析出物となるため、鋼を強化する作用はほとんどない。したがって、鋼中に進入するN量が多い場合は、TiN以外の析出物を形成して鋼の強化に働くTi量が減少し、十分な降伏強度が得られない。
【0007】一方、固溶しているTi、V、Nb等の炭化物や窒化物が析出する場合には、その条件が僅かに変化するだけで、析出物の大きさや、密度が大きく変化し、その結果、降伏強度等の機械的性質が異なることも多い。
【0008】また、これらの元素の炭化物や窒化物は、鋼の靱性を劣化させる。上記したような溶解時に鋼中に生成した比較的大きいTiNも、靱性を劣化させるが、鋼に固溶した炭化物や窒化物が、微細な析出物となって析出した場合の靱性への悪影響はさらに大きい。しかもこの悪影響も場合によりその程度が異なる。
【0009】この様に、析出物のよる強化作用を利用する場合は、僅かな製造条件の差が大きな特性の差になって現れやすく、ほぼ同一の組成の鋼の間の比較や、1つの鋼材の中の異なった位置における比較においても、特性が大きく異なることがしばしば起こる。
【0010】特開昭63−145745号公報には、Ti、V、Nbを添加した熱延高張力鋼帯と、その製造方法が開示されている。しかし、示されている降伏強度は、25〜48kgf/mm2 の広い範囲にばらついており、なおかつ、そのばらつきの発生する理由が明確でない。
【0011】上記のような欠点を持ってはいるが、Ti、V、Nb等の強化方法によると、比較的安価に高強度の鋼を得ることが可能なため、たとえば、川崎製鉄技報誌、第13巻、第1号、第53頁〜第62頁、(1981年発行)に例を見るように、ラインパイプ用電縫溶接鋼管としても、広く実用化している。
【0012】なお、Ti、Nb、Vの炭化物および窒化物の鋼中における挙動は、似ている点も多い。そのため、個々の元素を区別せず、Ti、Nb、Vの1種、または2種以上含有すると記述されている例も多い。たとえば、特開昭63−227715号公報にもその例が見られるが、ここでは個々の元素の作用については、注目をしておらず、どれかが含有されていれば良いとの考え方である。
【0013】なお、上記した、特開昭63−145745号公報に開示されている発明では、Nb、Ti、Vを添加しているにもかかわらず、それらの析出物を強化に積極的に利用する材質設計はとっていない。すなわち、冷却途中の析出を抑えることに重点を置いた材料設計である、急冷、低温巻取りを行っており、その結果、得られている降伏強度は低い。特開昭63−227715号公報に開示されている発明においても同様であり、靱性は十分であるが、降伏強度は低い。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】鋼を強化する元素としての、Ti、V、Nbは、少量含有させることで、大きな効果が得られる。一方、それらを添加した鋼は、特性がばらつきやすい欠点がある。また、強度と靱性が両立しにくい。
【0015】電縫溶接鋼管の製造には通常、熱間圧延鋼帯を用いるが、熱間圧延鋼帯は巻取り、コイル冷却の工程を経て製造される。巻取りはある程度の高温で行なう必要があり、巻取られた後のコイルは、相当に遅い冷却速度で冷やされる。従来のTi、V、Nb含有鋼は、巻取り温度を低くし、コイルになった後には、炭化物の析出が起こらない製造方法を採用しているものが多いが、この方法ではばらつきはある程度は小さくできるが、降伏強度は低くなる。
【0016】上記の様な事情にあるため、比較的安価な、高強度・高靱性のラインパイプ用電縫溶接鋼管の製造に用いる鋼帯が求められており、特に、降伏強度が550MPa以上の鋼材への要望が大きい。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明者らは 常温の降伏強度が550MPa以上、0℃のシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーが、200J以上の高強度・高靱性の熱間圧延鋼帯を得るために、検討を重ねて本発明を完成させた。
【0018】本発明者らは まず、Ti、V、Nb等の炭化物の析出状態と、降伏強度およびと靱性との関係について検討した。そして、平均粒径が10nm以下の微細な(Ti、V、Nb)Cの析出物が鋼中に存在する場合に、高い降伏強度と靱性が得られるとの知見を得た。〔以後、この平均粒径が10nm以下の微細な(Ti、V、Nb)Cの析出物を、(Ti、V、Nb)Cと記す。〕
【0019】この(Ti、V、Nb)Cを鋼中に形成させるためには、鋼にTi、Nb、Vの3種の元素を最適な量含有させる必要があり、さらに、適切な加工・熱履歴を与える必要がある。
【0020】本発明は、重量%で C:0.05〜0.11%、Si:0.35%以下、Mn:1.40〜1.80%、Ti:0.015〜0.070%、Nb:0.030〜0.060%、V:0.050〜0.090%、Al:0.0005〜0.10%、N:0.0050%以下を含有し、さらに、(1)式で表される、Ti* が、0.015%以上である組成の鋼を、1150〜1250℃の温度域で圧延を開始し、730〜860℃の温度域で圧延を終了し、5℃/sec以上の平均冷却速度で冷却し、550〜650℃で巻取る高強度・高靱性熱間圧延鋼帯の製造方法である。
【0021】
Ti* (%)=Ti(%)−N(%)×48/14・・・・・・(1)
まず、成分範囲の限定理由について述べる。
【0022】Cは、Ti、Nb、Vと(Ti、V、Nb)Cを形成して、鋼を強化する元素である。十分な降伏強度を確保するためには0.05%以上含有させる必要が有る。一方、Cは溶接性に有害な元素であり、その悪影響は、0.11%越えると顕著になる。したがって C量は0.05〜0.11%の範囲とする。
【0023】Siは、溶鋼の脱酸に必要な元素であり、0.01%以上含有させることが望ましいが、Al等の他の元素によっても代替可能である。一方、0.35%を超えて含有させると、鋼の靭性、特に、溶接HAZ部の靭性を劣化させる。したがって Si量は0.35%以下とする。
【0024】Mnは、鋼の強度を確保するために必要な元素である 含有量が1.40%未満の場合は降伏強度が不足する。一方、Mnは溶接性に有害な元素であり、特に、含有量が1.80%を越えると悪影響が顕著になる。したがって Mn量は1.40〜1.80%の範囲とする。
【0025】Alは脱酸に必要な元素である その量が0.0005%未満の場合には、十分な脱酸効果が期待できない。一方、0.10%を超えて過剰に含有させると靱性が劣化し、また、連続鋳造時のスラブの表面にキズが発生しやすい。したがって、Al量は0.0005〜0.10%とする。
【0026】Tiは、Nb、Vと共に、(Ti、V、Nb)Cを形成して鋼を強化する。十分な降伏強度を確保するためには、0.015%以上のTiを含有させる必要がある。一方、Ti量が多くなると、複合炭化物の析出状態が変化して強度が低下し、また、靱性も劣化する。これらのTiの悪影響は、0.070%を越えると顕著になる。したがって、Ti量の範囲は、0.015〜0.070%とする。
【0027】NbもTi、Vと共に、(Ti、V、Nb)Cを形成すが、そのためには0.030%以上含有させる必要がある。一方、Nb量が多くなると、複合炭化物の析出状態が変化して強度が低し、また、靱性も劣化する。これらのNbの悪影響は、0.060%を越えると顕著になる。したがって、Nb量の範囲は、0.030〜0.060%とする。
【0028】Vも、Nb、Tiと共に、(Ti、V、Nb)Cを形成するが、そのためには0.050%以上含有させる必要がある。一方、V量が多くなると複合炭化物の析出状態が変化して強度が低下し、また、靱性も劣化する。これらのVの悪影響は、0.090%を越えると顕著になる。したがって、V量の範囲は、0.050〜0.090%とする。
【0029】先に述べたようにTiは鋼中では、まずNとTiNを形成する。したがって、(Ti、V、Nb)Cを形成するTiは、含有させたTiの内のTiNを形成していないTiになる。
【0030】Ti* はそのTi量であり、Ti* (%)=Tiの含有量−TiNを形成していないTi量であるが、具体的には、すべてのNがTiとTiNを形成すると仮定して、 Ti* (%)=Tiの含有量−N含有量×(48/14)・・・・・(1)
より求める。このTi* が、0.015%以上の場合に上記の(Ti、V、Nb)Cが形成される。すなわち、Ti量が、先に示した0.015〜0.070%の範囲にある場合も、N量が多く、Ti* が、0.015未満の場合は、(Ti、V、Nb)Cが形成されず、十分に高い降伏強度が得られない。
【0031】(Ti、V、Nb)C中のTi:V:Nbの割合は、重量比で、5:4:1程度である。また、十分な降伏強度を得るためには、(Ti、V、Nb)Cとして存在するV量は0.010%以上でなければならない。従って、Tiは、0.008%以上、Nbは、0.002%以上必要である。このTi、V、Nb量は、(Ti、V、Nb)C中のこれらの量(重量)の(Ti、V、Nb)Cを含む鋼の重量に対する値である。すなわち、鋼に対する(Ti、V、Nb)Cの重量%(たとえば、抽出して)が0.030%で、その析出物中のV量が、0.010%であれば、(Ti、V、Nb)C中のVの量は、33%である。
【0032】なお、平均粒径が10nmとは、例えば、10万倍の倍率で鋼を調査した場合に、粒径が測定可能な析出物の平均径であり、実際上は5〜30nm程度の析出物が対象となる。これらの析出物の10個以上の平均値である。凝固時に既に存在するTiNの巨大析出物は、この平均値には含まれない。
【0033】なお、本発明においては、たとえば耐食性を上げる作用を有する元素である、Cu、Ni、Cr、Mo、を1.0%以下の範囲で、また、Caを0.01%以下の範囲で含有させた場合も、上記の(Ti、V、Nb)Cの状態には大きな変化はなく、同様に優れた強度と靱性を持つ鋼帯が得られる。
【0034】鋼中の不可避的不純物のPおよびSは、その量が増加すると鋼の靭性や延性に悪影響を及ぼす。悪影響が現れない上限は、おのおの0.020%、0.010%であり、この値以下に制限する。
【0035】つぎに、加工・熱履歴について述べる。上記の(Ti、V、Nb)Cを鋼中に析出させるためには、1150〜1250℃の温度域で圧延を開始する。上限を1250℃とした理由は、この温度を越える温度で開始すると、高温域での圧下量が大きくなるため、圧延後の結晶粒径(フェライト−パーライト組織である。)が大きくなり、十分な靱性が得られない。
【0036】一方、1150℃より低い場合は圧延開始時に、または、転移密度が十分に高くなっていない状態で、かなりの量の複合炭化物が形成され、低温において、(Ti、V、Nb)Cとして析出する量が減少して十分な強度が得られなくなる。好ましい温度範囲は、1180〜1230℃である。
【0037】熱間圧延の終了温度は、730〜860℃とする。860℃を越えている場合は、組織が粗くなり、また、複合炭化物が粗大になり十分な強度が得られず、靱性も低下する。730℃より下がると靱性が低下する。最適温度範囲は、750〜780℃である。
【0038】730〜860℃の温度域で圧延を終了し、5℃/sec以上の平均冷却速度で冷却する。5℃/sec未満の場合は、冷却途中に結晶粒が粗大化し、また、複合炭化物が析出する。冷却速度の上限は特に定める必要はないが、50℃/sec程度である。
【0039】ついで、550〜650℃の温度範囲で巻取る。巻取り後の冷却速度は、30℃/h程度であり、400℃程度まで約10時間をかけて冷却される。その間に、上記した(Ti、V、Nb)Cが析出するが、熱間圧延時に鋼中に導入された転位が析出物の微細化に有効に働き、強度・靱性共に優れた、また、特性のばらつきの少ない鋼帯が得られる。
【0040】巻取り温度が650℃を越える場合は、析出する複合炭化物の粒径が大きくなる。また、550℃より下がると、析出量が不足する。好ましい範囲は570〜630℃である。
【0041】
【発明の実施の形態】本発明の実施においては、まず、上記した組成の鋼を溶製し、連続鋳造によりスラブとする。Nの含有量は可能な限り低くする。得られたスラブをそのまま、粗圧延、連続圧延を行なって鋼帯としても良く、1度、冷却したスラブとし、再加熱して上記の工程をとっても良い。薄鋳片をつくり高温のまま、連続圧延を行なって鋼帯としても良い。圧延開始温度は、強度・靱性を確保するために、1220℃近傍とする。
【0042】圧延終了温度は、760℃程度とやや低温である。低温仕上げにより、鋼中に積極的に転位を導入する。圧延機を出た鋼帯を冷却ゾーンで、空冷および水冷により、600℃程度に下げて巻取る。巻取り温度は、通常の熱延鋼帯の製造の場合に比較して、やや高温である。
【0043】その後、鋼帯を用いて電縫溶接鋼管を製造するが、この製管工程は、通常の方法でよい。
【0044】
【実施例】表1に本発明が規定する範囲内の成分を持つ鋼を示した。また、表2に何れかの成分が、本発明が規定する範囲を外れている鋼を示した。表1中の、No.1鋼は、Ti* が下限に近く、No.7鋼はVが低め、No.9鋼はNbが下限に近い。No.10鋼はNが上限に近い。
【0045】表2中のNo.21鋼はVが不足、No.22鋼はNbが不足、No.23鋼はTi* が不足、No.24鋼はTi* が不足し、Nが上限、No.25鋼はTiが過剰、No.26鋼はNbが過剰、No.27鋼はVが過剰、No.28鋼はNが過剰である。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】これらの表1および表2中に示した各鋼を実験室で真空溶解し、50kgインゴットとし、1200℃に加熱して板圧50mmまで圧延した後、空冷した。その鋼板から50×150×400mmの板を切り出し、圧延開始温度を1200〜1230℃、圧延終了温度を760〜780℃とし、12mmまで圧延した。
【0049】その後、平均冷却速度:10℃/secで冷却し、前もって、570〜610℃に加熱しておいた電気炉に挿入し、平均冷却速度:30℃/hで炉冷した。これらの工程は熱間圧延による鋼帯の製造条件をシミュレートしたものである。
【0050】表3に本発明の実施例を示す。実施例のNo.は、表1中の鋼のNo.と同一である。表中には製造条件も示したが、圧延開始温度、圧延終了温度、巻取り温度共に、先に述べた好ましい範囲内にある。いずれの鋼においても、550MPa以上の降伏強度、および200J以上の吸収エネルギーが得られた。
【0051】
【表3】

【0052】表4に本発明の比較例を示す。実施例のNo.は、表2中の鋼のNo.と同一である。製造条件は表1における場合と同様に、圧延開始温度、圧延終了温度、巻取り温度共に、先に述べた好ましい範囲内にある。
【0053】これらの鋼は、成分のいずれかが、本発明が規定する範囲を外れており、V、Nb、Ti* の何れかが少ない場合は、降伏強度が十分でない。Ti、V、Nb、の何れかが多い場合は、降伏強度も低く靱性も低い。
【0054】
【表4】

【0055】表5に、製造条件が本発明が規定する範囲の、上限または、下限に近い実施例を示した。表1中のNo.5鋼を用いて表中に示した種々の条件下で製造した。圧延開始温度がやや低い実施例A、圧延終了温度がやや高い実施例D,巻取り温度がやや低い実施例E、および、冷却速度がやや低い実施例Gは降伏強度が多少低い。
【0056】一方、圧延開始温度がやや高い実施例B、圧延終了温度がやや低い実施例C,巻取り温度がやや高い実施例Fは靱性が低い。しかし、製造条件をこのように広い範囲に変化させているにも係わらず、降伏強度の範囲は563〜601MPaと、極めて狭い範囲に分布している点は注目に値する。
【0057】
【表5】

【0058】表6に、製造条件が本発明が規定する範囲を外れる比較例を示した。表1中のNo.1、No.2、およびNo.5鋼を用いて、種々の条件下で製造したもので、圧延開始温度が下限より低い比較例K、圧延終了温度が上限を越えている比較例Iおよび比較例N,巻取り温度が下限より低い比較例H、比較例Jおよび比較例O、冷却速度が下限未満の比較例Qは降伏強度が低い。
【0059】一方、圧延開始温度が上限を越えている比較例L,圧延終了温度が上限より高い比較例I、比較例N、圧延終了温度が下限より低い比較例M、巻取り温度が上限を越えている比較例Pは靱性が200Jに満たない。
【0060】
【表6】

【0061】上記の結果をもとに、工場で熱間圧延鋼帯を製造し、さらに電縫溶接鋼管を製造した。転炉溶解・連続鋳造によりスラブとし、1220℃に加熱しホットストリップミルで、10.8mmtの鋼帯としている。成分を表7に、また、製造条件および諸特性を表8に示した。電縫溶接鋼管の寸法は、305φ×10.8mmtである。何れの鋼帯および電縫溶接鋼管とも、550MPa以上の降伏強度、200J以上の吸収エネルギーを示している。
【0062】
【表7】

【0063】
【表8】

【0064】
【発明の効果】本発明の完成により、強度、靱性ともに優れた、電縫溶接鋼管用の熱延鋼帯が得られた。特に、従来は不可能であった、安価な析出硬化型鋼により、高い降伏強度および靱性を有する鋼帯が得られたことの意義は大きい。また、本発明により得られた鋼帯は、従来の析出硬化型に比較して、その特性のばらつきが小さい特徴も有している。鋼帯より製造した電縫溶接鋼管も同様に優れた特性を示した。
【出願人】 【識別番号】000004123
【氏名又は名称】日本鋼管株式会社
【出願日】 平成8年(1996)7月15日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】細江 利昭
【公開番号】 特開平10−30122
【公開日】 平成10年(1998)2月3日
【出願番号】 特願平8−185050