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【発明の名称】 新規な精留方法とそれを応用した焼酎蒸留排液の処理装置
【発明者】 【氏名】幡手 泰雄

【氏名】下田 雅彦

【要約】 【課題】焼酎の蒸留排液の処理に適用できるような低コストで、操作も簡単な新しい技術を確立する。

【解決手段】低沸点成分とそれより高沸点の成分とを含有する溶液から低沸点成分を精留により濃縮するに際して、濃縮しようとする該低沸点成分を含有する蒸気を外部から導入して精留の熱源として利用する精留方法。この方法を実施することにより、エタノールを含有する焼酎蒸留排液を蒸発、濃縮してエタノール含有ドレンおよびエタノール含有水蒸気を発生させる蒸発器と、前記エタノール含有ドレンを精留して高濃度エタノール含有留出液および低濃度エタノール含有缶出液を得る精留塔とを有し、蒸発器から発生するエタノール含有ドレンが精留塔の底部に導かれるようになっている焼酎蒸留排液の処理装置が得られる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 低沸点成分とそれより高沸点の成分とを含有する溶液から低沸点成分を精留により濃縮するに際して、濃縮しようとする該低沸点成分を含有する蒸気を外部から導入して精留の熱源として利用することを特徴とする精留方法。
【請求項2】 低沸点成分がエタノールであり、高沸点成分が水であることを特徴とする請求項1に記載の精留方法。
【請求項3】 エタノールを含有する焼酎蒸留排液を蒸発、濃縮してエタノール含有ドレンおよびエタノール含有水蒸気を発生させる蒸発器と、前記エタノール含有ドレンを精留して高濃度エタノール含有留出液および低濃度エタノール含有缶出液を得る精留塔とを有し、蒸発器から発生するエタノール含有ドレンが精留塔の原料送入口に導かれ、且つ、蒸発器から発生するエタノール含有水蒸気が精留塔の底部に導かれるようになっていることを特徴とする焼酎蒸留排液の処理装置。
【請求項4】 蒸発器が多重効用蒸発缶であることを特徴とする請求項3に記載の焼酎蒸留排液の処理装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、従来の方式に見られない新しいタイプの精留方法と、この精留方法を応用した焼酎蒸留排液の処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】焼酎の製造工程で生成される焼酎蒸留粕(焼酎蒸留排液)には、一般に 0.5%程度のエタノールの他、微量のn−プロパノールなどが含まれている。この焼酎蒸留粕の多くは、これまで、海洋投棄されている。我が国では、地球環境保全の立場からロンドン条約(廃棄物その他の物の海洋汚染の防止に関する条約)に基づいて法改正が行われ、1996年より産業廃棄物の海洋投棄処分が、原則禁止された。焼酎蒸留粕は除外項目とはされているが、海洋投棄そのものが次第に国際的に許容されない状況にあり焼酎業界では2001年までに禁止することを約している。このため、焼酎蒸留粕の有効利用を考慮した新しい処理技術の開発が急がれている。
【0003】現在、焼酎蒸留粕の処理に最も多用されているのは、多重効用蒸発缶に代表される蒸発濃縮装置であり、これによって得られた濃縮物を家畜の飼料等に供するとともに、蒸発した水分を凝縮させた凝縮水(ドレン)を活性汚泥法などによって処理する方法が採られている。しかしながら、このような方法によって発生するドレンは、BOD(生物学的酸素要求量)やCOD(化学的酸素要求量)の値が高く、汚染汚泥槽の微生物への負担が大きいことが難点である。例えば、三重効用缶濃縮装置により焼酎蒸留粕を濃縮した場合の1例では、ドレンのCOD値は 4,000〜5,000 mg/lと高く、しかも焼酎粕1トンにつき、約500 リットル(2倍濃縮)ほども発生するため、活性汚泥処理装置に多大の負荷がかかり、充分な処理効果を上げるためには活性汚泥の保守や取り換えなどに費用を要しコスト高になってしまう。
【0004】この他に、ドレンを蒸留してBODやCODを低下させることも提示されている(特開平1−189384)が、蒸留装置の運転に別個のエネルギー源を必要とする点において経済的ではない。また、遠心分離機や薄膜装置を用いて焼酎蒸留排液を処理することも検討されているが、いずれも高価な装置を用いる上に操作が煩雑であり、未だ実用の域には達していない。そこで、本発明の主目的は、焼酎の蒸留排液の処理に適用できるような低コストで、操作も簡単な新しい技術を確立することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者は、このたび、従来の精留操作では採られていなかった新しい方式の精留方法を想到し、この方式を応用することによって上述の目的を達成することができた。
【0006】すなわち、本発明は、その基本となる技術思想として、低沸点成分とそれより高沸点の成分とを含有する溶液から低沸点成分を精留により濃縮するに際して、濃縮しようとする該低沸点成分を含有する蒸気を外部から導入して精留の熱源として利用することを特徴とする精留方法を提供するものである。
【0007】さらに、本発明に従えば、このような精留方法を応用する好ましい技術として、エタノールを含有する焼酎蒸留排液を蒸発、濃縮してエタノール含有ドレンおよびエタノール含有水蒸気を発生させる蒸発器と、前記エタノール含有ドレンを精留して高濃度エタノール含有留出液および低濃度エタノール含有缶出液を得る精留塔とを有し、蒸発器から発生するエタノール含有ドレンが精留塔の原料送入口に導かれ、且つ、蒸発器から発生するエタノール含有水蒸気が精留塔の底部に導かれるようになっていることを特徴とする焼酎蒸留排液の処理装置が提供される。
【0008】
【発明の実施の形態と発明の効果】従来からの精留操作においては、精留塔のスチルにある液を加熱するための熱源が必要であり、スチルの外部または内部に適当な加熱手段を設けている。これに対して、本発明の精留方法の特徴は、濃縮しようとする低沸点成分を含有する蒸気を外部から導入して熱源として利用することにある。すなわち、本発明の精留方法においては、濃縮(分離)しようとする低沸点成分を含有する蒸気そのものを精留塔の外部で生成させて精留塔の底部に導入し、その蒸発潜熱を熱源として利用する。かくして、精留塔内で該蒸気と液が接触することにより、それらの間に熱交換が行われて、所望の低沸点成分の濃縮が行われ、この際、精留塔の保温を充分にしておけば精留塔自体に特別の加熱手段を設ける必要はなくなる。
【0009】本発明の精留方法は、原理的には、低沸点成分と高沸点成分とを含有する任意の系に適用することができ、また、二成分系に限らず多成分系にも適用できるが、好ましい例は、低沸点成分としてエタノール(エチルアルコール)、高沸点成分として水を含有する系である。
【0010】したがって、以下には、主として焼酎の蒸留排液の処理に本発明を適用した場合について説明しているが、本発明はエタノールを含有する他の水溶液、例えば、焼酎に限らず、ウイスキー、ブランデーなどの他の蒸留酒の製造過程で生成される蒸留排液の処理に適用することができ、さらに、燃料の製造などにも適用することができる。
【0011】本発明の精留方法は、回分蒸留にも適用されるが、一般的には連続蒸留方式で実施される。また、本発明は、従来より知られた各種の蒸留装置、例えば、泡鐘塔や多孔板塔(目皿板塔)などの棚段塔式蒸留装置、ラシヒリングやサドルなどを充填した充填塔式蒸留装置を用いる精留操作に適用することができる。
【0012】本発明の精留方法を実施するに当たって、精留塔に導入する原料/蒸気の比、還流比、精留塔の段数(高さ)などは、所望する濃縮度とそのための費用(装置費、操業費)を考慮して定められる。一般的には、還流比を一定とした場合、原料液:蒸気(低沸点成分含有蒸気)の比が大きくなるほど、段数を多くすることが必要である。下記に例示するような焼酎蒸留排液の処理に本発明の精留方法を適用する場合、精留塔に導入する原料液:蒸気の比は、一般に1:2〜5:1の範囲とする。これらを決定するに当たっては、蒸留塔の設計において確立されている各種のシュミレーション手法を採用することができる。
【0013】以上のような本発明の精留方法が応用される最も好適な例は、焼酎蒸留排液(焼酎蒸留粕)の処理装置である。図1は、本発明に従うそのような焼酎蒸留排液処理装置の典型例の構成を概示するものであり、各物質の流れを中心に説明するための図である。
【0014】図に示すように、この処理装置は、大略、蒸発器(1、2、3)と精留塔(4)とから構成される。蒸発器は、図示の例では、三重効用蒸発缶であるが、蒸発器の数は任意に増減可能であり、単一の蒸発器を用いることもできる。よく知られているように、蒸発器内の操作圧力は、真空装置(図示せず)により、1、2、3の順に降下しており、例えば、加圧(蒸発器1)、常圧(蒸発器2)、減圧(蒸発器3)のようになっている。
【0015】かくして、蒸発器(1)にはエタノールを含有する焼酎蒸留排液(焼酎蒸留粕)Wと、適当なボイラーにより発生させたスチーム(水蒸気)Sとが導入され、該スチームで加熱された焼酎蒸留排液はその一部を蒸発し、濃縮されて濃縮液C1 として排出されて次の蒸発器2に送られ、一方、スチームは凝縮されてドレンD1 として排出される。それとともに、蒸発器1において蒸発により発生した蒸気V1 が、操作圧力のより低い次の蒸発器2に送られる。
【0016】蒸発器2においては、濃縮液C1 が蒸気V1 により蒸発、濃縮されて濃縮液C2 として蒸発器3に送られ、蒸気V1 が凝縮されてドレンD2 として排出されるとともに、蒸発で発生した蒸気V2 が蒸発器3に導入される。以下、同様の作用により、蒸発器3においては、濃縮液C2 が蒸気V2 により蒸発、濃縮されて最終的な濃縮液C3 として排出され、蒸気V2 が凝縮されてドレンD3 として排出されるとともに、蒸発により蒸気V3が発生する。
【0017】これまでは、以上のような多重効用蒸発缶のみにより焼酎蒸留酒排液の処理を行っていた。すなわち、蒸発器から排出されCOD値やBOD値の高いエタノール含有(一般に約1重量%)ドレンをそのまま活性汚泥処理に供するとともに、蒸発器で発生するエタノール含有蒸気を冷却器(凝縮器)で単に凝縮させて排水処理を行い廃棄していた。
【0018】これに対して、本発明の焼酎蒸留排液処理装置においては、蒸発器で発生するエタノール含有ドレンおよびエタノール含有蒸気のいずれも精留塔に導かれるようになっている。すなわち、図に示すように、蒸発器で発生したドレンD1 ,D2 ,D3 (但し、ドレンD1 はエタノールを含有していない)が精留塔(4)のほぼ中央の原料送入口に導かれるとともに、エタノール含有蒸気V3 が精留塔(4)の底部に導かれるようになっている。(なお、ここで、精留塔の底部とは、スチルまたはその少し上方を意味するが、エタノール含有蒸気をスチルに直接導入すると該蒸気がショートパスしてそのまま缶出液中に抜けることがあるので、一般的にはエタノール含有蒸気はスチールの少し上方に導入するのが好ましい。)
【0019】精留塔(4)には、よく知られているように、凝縮器(5)が設けられ、塔頂からの蒸気V4 を凝縮させて凝縮液の一部を還流させるようになっている。かくして、精留塔(4)のおいては、底部から導入されたエタノール含有蒸気がドレンと接触し、熱交換および蒸発・凝縮が繰り返されて、塔頂から高エタノール濃度の留出液(A)が得られ、塔底からエタノール濃度のきわめて低い缶出液Bが得られる。
【0020】以上のような本発明の装置を用いれば、焼酎蒸留排液の処理に際して以下のような利点がある。
■ 既存の多重効用蒸発缶などの蒸発器に精留塔を付加するだけで、蒸発器から出るエタノール含有ドレンをエタノールの殆ど含有されない(1000ppm 以下)のドレン排水(缶出液)に処理できる。このドレン排水は、BODやCODが極めて低いので活性汚泥槽に通さなくてもよく、また、通す場合でも活性汚泥槽に与える負荷は非常に低い。
【0021】■ 多重効用蒸発缶などの蒸発器で発生するエタノール含有蒸気をそのまま精留操作の熱源として利用しているので、スチルを加熱するために特に加熱手段を設ける必要はなくなる。スチームなどでスチルを補充的に加熱する場合においても、スチーム量を削減できる。
【0022】■ 精留塔の凝縮器として、既存の蒸発器の凝縮器をそのまま使用できる。したがって、精留塔には、新しい熱源も冷却系も不要とすることもできる。
【0023】■ 多重効用蒸発缶から発生する減圧蒸気を熱源として利用して減圧下に精留操作を行えば、精留塔から出る蒸気の沸点が低いため凝縮器内の冷却に際して大きな温度差がとれるので、熱交換が効率的となる。
【0024】■ 蒸発器からの蒸気およびドレンに含有されているエタノールはこれまでは結果的には廃棄されていたが、精留操作により高濃度に濃縮(15〜95重量%)された留出液として回収される。この留出液は各種の用途に有効利用を図ることができる。このように、本発明の装置は、経済性に優れ、且つ格別に複雑な手段も必要とせずに、焼酎蒸留排液の効果的な処理を可能にするものである。
【0025】以下に本発明の装置を実際に運転した場合の実施例を示すが、本発明はこの実施例や図に示す態様に限定されるものではない。例えば、図に示す例では、多重効用蒸発缶において処理すべき焼酎蒸留排液と加熱用蒸気の流れの方向が同じである順流方式を採っているが、逆流、並流、または錯流方式の場合においても本発明の装置を適用することができ、また、最終の蒸発器(蒸発器3)から出る蒸気のみを精留塔に利用するだけでなく、その前の蒸発器から発生する蒸気の一部を精留塔に導入することも可能である。さらに、精留塔は泡鐘塔に限られず、他の方式の蒸留塔にも本発明の装置は同様に適用できる。
【0026】
【実施例】図1に示す装置を用いて焼酎蒸留排出液の処理を行った。蒸発器(1)、(2)および(3)として、それぞれ、7m3 、4m3 、4m3 の容量のものを使用し、定常状態において 210 Torr の圧力で操作した。また、精留塔(4)としては、径 800 mm 、高さ 600 mm の6段の泡鐘式蒸留塔を採用し、各段に寸法 120mmの泡鐘(キャップ)を10個配置した。
【0027】エタノール濃度 1.0重量%の焼酎蒸留排液Wを4トン/時間の速度で蒸発器(1)に導入し、これを加熱するための温度 103℃、圧力 1.0kg/cm2のスチームSを 1.5トン/時間の速度で蒸発器(1)に導入した。定常状態に達するとD1 ,D2 およびD3 の合計で 3.0トン/時間の速度でドレンが排出された。このドレンをガスクロマトグラフィで分析したところエタノール濃度は 1.1重量%であった。一方、蒸発器(3)からは 1.0トン/時間の速度で、温度60℃、圧力 0.7kg/cm2の蒸気が発生した。この蒸気を分析したところ、エタノール含有量は 0.7重量%であった。また、蒸発器(3)から得られる濃縮液C3 の速度は 1.5トン/時間でありそのエタノール濃度は0重量%であった。
【0028】三重効用蒸発缶で発生するドレン(D1 ,D2 ,D3 ) 3.0トン/時間を精留塔(4)の第3段に導入するとともに、エタノール含有蒸気(V3) 1.0トン/時間を精留塔の底部に導入した。定常状態に達した後、還流比15で精留を行い、62kg/時間の速度で留出液Aを得た。この留出液のエタノール濃度を分析したところ60重量%であった。他方、塔底からは 3.9トン/時間の速度で缶出液が得られ、そのエタノール濃度は0.07重量%であった。
【出願人】 【識別番号】000177508
【氏名又は名称】三和酒類株式会社
【出願日】 平成9年(1997)5月29日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 知
【公開番号】 特開平10−327839
【公開日】 平成10年(1998)12月15日
【出願番号】 特願平9−157848