トップ :: C 化学 冶金 :: C08 有機高分子化合物;その製造または化学的加工;それに基づく組成物




【発明の名称】 AS樹脂系二軸延伸シートと熱成形品
【発明者】 【氏名】加藤 万濫

【氏名】井口 武彦

【要約】 【課題】スチレン・アクリロニトリル共重合樹脂を主材とし、ポリカプロラクトンとのポリマーブレンドより成形されたAS樹脂系二軸延伸シートおよび、その熱成形品を提供する。

【解決手段】アクリロニトリル成分を5重量%以上含有し、JISK7210に準拠するメルトフローレート(試験温度230℃、試験荷重3.80kgf)が0.5〜30g/10分であるスチレン・アクリロニトリル共重合樹脂とポリカプロラクトンとよりなり、重量組成(百分率表示)が前者95〜60%に対し、後者5〜40%である樹脂組成物を押出し、二軸延伸成形してなる透明性、耐油性および熱成形性に富むAS樹脂系二軸延伸シート。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 アクリロニトリル成分を5重量%以上含有し、JISK7210に準拠するメルトフローレート(試験温度230℃、試験荷重3.80kgf)が0.5〜30g/10分であるスチレン・アクリロニトリル共重合樹脂とポリカプロラクトンとよりなり、重量組成(百分率表示)が前者95〜60%に対し、後者5〜40%である樹脂組成物を押出し、二軸延伸成形してなる透明性、耐油性および熱成形性に富むAS樹脂系二軸延伸シート。
【請求項2】 アクリロニトリル成分を5〜40重量%含有し、JISK7210に準拠するメルトフローレート(試験温度230℃、試験荷重3.80kgf)が0.5〜30g/10分であるスチレン・アクリロニトリル共重合樹脂とポリカプロラクトンとよりなり、重量組成(百分率表示)が前者95〜60%に対し、後者5〜40%である樹脂組成物を押出し、二軸延伸成形してなる透明性、耐油性および熱成形性に富むAS樹脂系二軸延伸シート。
【請求項3】 アクリロニトリル成分を5〜40重量%含有し、JISK7210に準拠するメルトフローレート(試験温度230℃、試験荷重3.80kgf)が0.5〜30g/10分であるスチレン・アクリロニトリル共重合樹脂とポリカプロラクトンとよりなり、重量組成(百分率表示)が前者95〜80%に対し、重量平均分子量3〜15万の後者5〜20%である樹脂組成物を押出し、二軸延伸成形してなる透明性、耐油性および熱成形性に富むAS樹脂系二軸延伸シート。
【請求項4】 シリコンオイルを、延伸成形直後のシートの片面または両面に、一平方メートルあたり10〜100mg塗布したことを特徴とするブロッキングを防止した請求項1または2に記載のAS樹脂系二軸延伸シート。
【請求項5】 請求項1、2または3のAS樹脂系二軸延伸シートより熱成形されてなる食品包装用容器。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、透明性、耐油性、熱成形性に優れ、各種容器類とりわけ、食品包装用容器の熱成形に好適なシート材に係り、詳しくは、スチレン・アクリロニトリル共重合樹脂を主材とし、ポリカプロラクトンとのポリマーブレンドより成形されたAS樹脂系二軸延伸シートおよび、その熱成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】一般用ポリスチレン(GPPS)やハイインパクトポリスチレン(HIPS)等のポリスチレン系樹脂よりの二軸延伸シートが、透明性や腰の強さの特性から、真空成形や圧空成形等いわゆる熱成形に供せられ、食品包装用容器として多用されてきた。
【0003】しかしながらGPPS製シートやその熱成形品は、透明性に優れるが、耐油性が十分ではなく、HIPS製のものは、耐油性が若干改良されるものの、透明性は満足とは云えない。しかも、これらのポリスチレン系樹脂は、シート成形や熱成形における成形温度は、120℃以上を必要とし、成形温度を下げて、成形サイクルを短縮することは、殆ど不可能に近かった。
【0004】また、やはり、ポリスチレン系樹脂の一種とされるスチレン・アクリロニトリル共重合樹脂(一般名;AS樹脂)は、アクリロニトリル成分の増大とともに、機械的強度、耐油性は向上していくが、成形温度も高くなり、樹脂の熱分解温度に接近するため、開放状態下で成形するシートや熱成形品の成形には、従来、適応が困難なものとされてきた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記したごとく、従来知られてきたポリスチレン系樹脂よりの二軸延伸シートおよび、その熱成形品では、成形性、透明性、耐油性、機械的強度等に対する望ましいニーズをすべて満足させることが困難であった。
【0006】本発明の目的は、ポリスチレン系樹脂を主材とし、透明性に優れ、しかも、従来品では得られなかった格段の低温成形性と、耐油性ならびに機械的強度(特に耐衝撃性)を有する二軸延伸シートおよび、熱成形品を提示することにある。
【0007】本発明者らは、かかる困難な課題を克服すべく、鋭意研究を重ねた結果、AS樹脂を主材とする、ポリカプロラクトンとの特定の樹脂組成物が、二軸延伸性に優れ、さらに、その二軸延伸シートが、熱成形性、透明性、耐油性、耐衝撃性等において、上記目的に合致する優れた性能を有することを見出すに至り、本発明を完成した。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、アクリロニトリル成分を5重量%以上含有し、JISK7210に準拠するメルトフローレート(試験温度230℃、試験荷重3.80kgf)が0.5〜30g/10分であるスチレン・アクリロニトリル共重合樹脂とポリカプロラクトンとよりなり、重量組成(百分率表示)が前者95〜60%に対し、後者5〜40%である樹脂組成物を押出し、二軸延伸成形してなる透明性、耐油性および熱成形性に富むAS樹脂系二軸延伸シートおよび、それよりの熱成形容器を提示する。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明において使用するスチレン・アクリロニトリル共重合樹脂は、アクリロニトリルとスチレンのラジカル共重合により得られる樹脂またはアクリロニトリルとスチレンとラジカル共重合しうるその他の単量体との共重合により得られる。ここでスチレンとしてはスチレン、α−メチルスチレン、0−メチルスチレン、m−メチルスチレン、P−メチルスチレンなどであり、0−クロルスチレン、P−ブロモ−α−メチルスチレン等のハロゲン化スチレンでもよい。またアクリロニトリルとスチレンと共重合しうるその他の単量体としては、アクリル酸メチル、メタアクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、メタクリロニトリル等が例示される。
【0010】本発明に用いるスチレン・アクリロニトリル共重合樹脂は、共重合成分として少なくとも5重量%のアクリロニトリルを含むことが必要である。5重量%より少ない場合は耐油性の改良効果が少ない。また共重合成分としてアクリロニトリルが多くなると、スチレン・アクリロニトリル共重合樹脂が熱変色を受け易くなるため、40重量%以下であることが好ましい。
【0011】本発明に用いるスチレン・アクリロニトリル共重合樹脂は、JIS K7210に準じて試験温度230℃、試験荷重3.80kgで測定したメルトフローレート(以下MFRと表示する)が0.5〜30g/10分であることが好ましい。MFRが0.5g/10分未満では成形加工性が低下して好ましくなく、また30g/10分を超えると成形品の機械的強度の低下が著しく好ましくない。
【0012】本発明に用いるスチレン・アクリロニトリル共重合樹脂の重合方法には特に制限はなく、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合等の各種の方法を用いることができる。本発明のポリカプロラクトンは、ε−カプロラクトンと開始剤と称する活性水素含有化合物と、開環重合触媒の存在下で開環重合して得られる重合体である。
【0013】開始剤としては、水、モノアルコール類、多価アルコール類、カルボン酸類、多価カルボン酸類、アミン類、ポリアミン類等がある。
【0014】開環重合触媒としては有機チタン系化合物やスズ系化合物、アセチルアセトンの金属塩等が用いられる。有機チタン系化合物としては、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラエチルチタネート等、有機スズ化合物としては、オクチル酸スズ、ジブチルチンオキシド、ジブチルチンラウレート、塩化第一スズ、臭化第一スズ、ヨウ化第一スズ等を用いることが好ましい。
【0015】ε−カプロラクトンの重合温度は100〜250℃、好ましくは130〜230℃である。反応温度が低すぎると重合速度が著しく低下し、一方、反応温度が高すぎるとカプロラクトンが蒸発したり、解重合反応が進行するので好ましくない。
【0016】本発明のポリカプロラクトンは、開始剤の種類により、直鎖状や分枝状の重合体が得られる。また、分子量の小さい液状のものから分子量の大きい固体状のものまでありこれらはいずれも使用可能であるが、重量平均分子量が3万〜15万の固体状のポリカプロラクトンが使用するときの取り扱いが容易であるので好ましい。
【0017】本発明の二軸延伸シートに用いる樹脂組成物における、ポリカプロラクトンの配合量は、重量百分率で表示した場合スチレン・アクリロニトリル共重合樹脂95〜60%に対してポリカプロラクトン5〜40%であり、より好ましくは前者樹脂95〜80%に対してポリカプロラクトン5〜20%である。ポリカプロラクトンの配合量が5%未満であると、二軸延伸の際シート破断を生じ易く、また熱成形時にコーナー部が破れるなどのトラブルが発生することがある。また40%を超えるとシートの透明性及び剛性が十分でなく、耐油性の改良効果も低下する。
【0018】本発明の二軸延伸シートに用いる樹脂組成物には適宜、各種の安定剤、顔料、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、滑剤などを添加することが出来る。なお、ブロッキング防止剤としては、平均粒子径1〜10μmのスチレングラフトジェンゴム粒子をゴム濃度で60〜1500ppmおよび/または平均粒子径0.1〜10μmの多種有機系架橋微粒子を添加量100〜1000ppm添加が好適である。
【0019】また、本発明の二軸延伸シートには、表面改質剤、防曇材、帯電防止剤などを単独又は混合物として塗布することも出来る。なお、表面改質剤としては、20℃に於ける粘度が100〜200,000センチストークスのジメチルシリコーンオイル単独および乳化剤を含有したジメチルシリコーンエマルジョンを単独または防曇剤、帯電防止剤と併用して各種ロールコーターやスピンコーター等の塗布装置を用いて均一に塗布することが好ましい。シリコーンオイルの塗布量としては10〜100mg/m2の範囲が好ましい。10mg/m2未満では表面改質効果が表われない。又100mg/m2を超えると手にベタつきが感じられて好ましくない。
【0020】本発明の二軸延伸シートの形成は、スチレン・アクリロニトリル共重合樹脂とポリカプロラクトンの樹脂組成物を押出し機にかけ、慣用のTダイまたは環状ダイを用い、フラット状またはチューブ状に160〜250℃好ましくは180〜220℃で押出成形し、得られた未延伸物を二軸延伸することにより行うことができる。
【0021】二軸延伸の方法としては、フィルム、シートの場合には、例えば押出フィルムまたはシートを金属ロール等で従方向に延伸した後、テンター等で横方向に延伸し、チューブの場合には、チューブの押出方向及びチューブの円周方向、即ちチューブ軸と直角をなす方向にそれぞれ同時に、あるいは別々に延伸する。本発明においては、延伸温度80〜120℃好ましくは90〜110℃で、従方向および横方向に延伸倍率2〜5倍好ましくは2.5倍に延伸し、ASTMD−1504に準拠して測定した延伸シートの配向緩和応力が3〜15kg/cm2好ましくは5〜10kg/cm2である。
【0022】延伸温度が80℃未満では延伸時に破断を生じて所望の成形品が得にくく、120℃を超えると延伸時にシートがドローダウンをし破断の原因となり好ましくない。
【0023】延伸倍率は用途によって必要とする倍率を上記の範囲で設定することができる。
【0024】次に、本発明の特徴を実施例により具体的に説明するが、本発明の技術範囲は、これらに限定されない。
【0025】
【実施例】
(実施例1〜4)以下実施例により本発明を詳細に説明する。スチレン・アクリロニトリル共重合樹脂(ダイセル化学工業(株)製、商品名;セビアンN,050、スチレン76重量%、MFR16)、及びポリカプロ
を樹脂重量比で表1に示すごとく混合した各樹脂組成物を押出し機により、Tダイを用いてシート状に押出し、縦および横にそれぞれ2.5倍に延伸して、厚さ180μmの二軸延伸シートを得た。次に前記各シートの表面にシリコーンオイルを40mg/m2となるように塗布した。各延伸シートの特性および二軸延伸を下記方法により測定評価し、結果を表1に示した。
【0026】(比較例1〜6)表1に示した組成で、実施例と同様にして評価した。
【0027】(比較例7)樹脂にポリスチレン樹脂(住友化学工業(株)製、商品名;E183)を用い、その他の条件は実施例と同様に操作した。表1に示した評価結果より明らかなごとく、実施例は延伸成形性、シート特性のすべてにおいて、バランスが優れている。これに対して比較例においては、成形性および特性値のすべてを満足するものは得られていない。表1に示す特性値の評価方法は下記の通りである。
(1)耐油性:幅1.5cm×長さ12cmの短冊片の両端をチャックで掴み上下にし、その中央部にサラダ油を塗布し、下のチャックに5kg荷重をかけ、切れた時間を測定した。
◎:90分以上○:50分以上70分未満△:30分以上50分未満×:30分未満(2)透明性:ヘ−ズ測定機((株)スガ試験機製)を使用しシート厚180μmを基準としてヘーズを測定した。
◎(良好) :2%以下○(良) :2%超〜2.5%△(やや不良):2.5%超〜3%×(不良) :3%超(3)二軸延伸成形性:二軸延伸試験機((株)岩本製作所製)を用いて、厚み1.2mm、縦10cm、横10cmに裁断した押出しシートを、延伸倍率縦方向、横方向共に2.5倍、延伸速度、縦方向、横方向共に50%/secで二軸延伸を行い、各シートの延伸可能な最低延伸温度より二軸延伸成形性を評価した。
◎(良好) :延伸温度90℃超〜100℃○(良) :延伸温度100℃超〜110℃△(やや良) :延伸温度110℃超〜120℃×(不良) :延伸温度120℃以上(4)熱成形性:カットシートテスト成形機(熱板真空成形機)((株)浅野研究所製)で、成形時間2秒で容器(開口部50×底部30×深さ50mm)を成形した。各シートを容器成形した際、この容器のコーナー部側面の破れが生じない熱板の最低温度より容器成形性の評価を行った。
○(良) :成形温度80℃超〜100℃△(やや良) :成形温度100℃超〜120℃×(不良) :成形温度120℃以上(5)面衝撃性JIS K5400に準拠し、デュポン衝撃強度で評価した。
○:2kg・cm以上△:1kg・cm以上2kg・cm未満×:1kg・cm未満【0028】
【表1】

【0029】
【発明の効果】本発明になるAS樹脂系二軸延伸シートは、二軸延伸成形性、透明性、耐油性、面衝撃性、熱成形性において、従来のスチレン系樹脂延伸シートでは得られない優れたバランスを有しており、その熱成形品は、油脂含有食品、化粧品等の包装容器として、とりわけ有用である。
【出願人】 【識別番号】000002901
【氏名又は名称】ダイセル化学工業株式会社
【出願日】 平成8年(1996)6月21日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
【公開番号】 特開平10−7817
【公開日】 平成10年(1998)1月13日
【出願番号】 特願平8−181344