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【発明の名称】 セファゾリンの製造法
【発明者】 【氏名】河原 一郎
【氏名】朝井 洋明
【氏名】谷口 重俊
【課題】高純度のセファゾリンを簡便に製造する製造法を提供する。

【解決手段】7−フェニル酢酸アミド−3−ハロゲノメチル−3−セフェム−4−カルボン酸エステルと2−メチル−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾールとを反応させ、フェノール化合物の存在下で脱エステル化反応し、得られる7−フェニル酢酸アミド−3−(2−メチル−1,3,4−チアジアゾール−5−イル)チオメチル−3−セフェム−4−カルボン酸をペニシリンGアシラーゼで脱フェニル酢酸反応させ、次いで、1H−テトラゾール−1−酢酸と酸ハロゲン化物又はハロゲノ炭酸アルキルとから調製された混合酸無水物と反応させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】(i)水及び有機溶媒から選ばれる少なくとも1種の溶媒中、一般式 (I)
【化1】

(式中、Xは、ハロゲン原子を、R1は、カルボン酸保護基を示す。)で表される化合物と式(VIII)
【化2】

で表される2−メチル−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾールとを塩基の存在下で反応させるか、又は、一般式(I)の化合物と式(VIII)の化合物のアルカリ塩とを反応させて、一般式 (II)
【化3】

(式中、R1は、カルボン酸保護基を示す。)で表される化合物を得、(ii)上記一般式(II)で表される化合物を、フェノール化合物の存在下で脱エステル化して、式(III)
【化4】

で示される7−フェニル酢酸アミド−3−(2−メチル−1,3,4−チアジアゾール−5−イル)チオメチル−3−セフェム−4−カルボン酸を得、(iii)式(III)で表される化合物を固定化ペニシリンGアシラーゼを用いて脱フェニル酢酸反応を行い、式(IV)
【化5】

で表される7−アミノ−3−(2−メチル−1,3,4−チアジアゾール−5−イル)チオメチル−3−セフェム−4−カルボン酸を得、(iv)次いで、一般式(VI)
【化6】

で表される1H−テトラゾール−1−酢酸と一般式(VII)
【化7】

(式中、Yは、ハロゲン原子を示し、R2は、ハロゲン原子で置換されていても良い炭素数1〜7の低級アルキル基又はハロゲン原子で置換されていても良い炭素数1〜7の低級アルコキシ基を示す。)で表される酸ハロゲン化物又はハロゲノ炭酸アルキルを、有機溶媒中、塩基の存在下で反応させて得られる混合酸無水物と、上記式(IV)で表される化合物とを、有機溶媒中、塩基の存在下で反応させることを特徴とする式 (V)
【化8】

で示される7−(1H−テトラゾール−1−イル)アセトアミド−3−(2−メチル−1,3,4−チアジアゾール−5−イル)チオメチル−3−セフェム−4−カルボン酸の製造方法。
【請求項2】一般式(I)中のXが、塩素原子、臭素原子又は沃素原子であり、一般式(I)及び一般式(II)中のR1が、p−メトキシベンジル基、ジフェニルメチル基又はt−ブチル基である請求項1記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、抗生物質として広く使用されているセファゾリン(Cefazolin)、即ち、7−(1H−テトラゾール−1−イル)アセトアミド−3−(2−メチル−1,3,4−チアジアゾール−5−イル)チオメチル−3−セフェム−4−カルボン酸の新規な製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】セファゾリンは、下記式 (V)
【0003】
【化9】

【0004】で表される化合物であるが、従来、このセファゾリンの製造法としては、7−アミノ−3−アセトキシメチル−3−セフェム−4−カルボン酸(7−ACA)を出発原料とするものが一般的であった。
【0005】しかし、この従来の製造方法では、3位のアセトキシメチル基のアセトキシ基を置換して、(2−メチル−1,3,4−チアジアゾール−5−イル)チオ基を導入する反応が低収率であり、しかも、選択率も低く、この反応で生成する大量の副生物は、目的物の精製にも困難をきたしている。
【0006】また、従来の方法では、セファゾリンを合成するための中間体である7−アミノ−3−(2−メチル−1,3,4−チアジアゾール−5−イル)チオメチル−3−セフェム−4−カルボン酸の収率及び/又は純度が低く、そのため、目的のセファゾリンを高純度、高収率で得るためには、該中間体を精製しなければならないという問題もあった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来の製造法の反応の低選択性及び低収率という問題点を解決し、高純度のセファゾリンを簡便に製造する新規製造法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、(i)有機溶媒及び水から選ばれる少なくとも1種の溶媒中、一般式(I)
【0009】
【化10】

【0010】(式中、Xは、ハロゲン原子を、R1は、カルボン酸保護基を示す。)で表される化合物と式(VIII)
【0011】
【化11】

【0012】で表される2−メチル−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾールとを塩基の存在下で反応させるか、又は、一般式(I)の化合物と一般式(VIII)の化合物のアルカリ塩とを反応させて、一般式 (II)
【0013】
【化12】

【0014】(式中、R1は、カルボン酸保護基を示す。)で表される化合物を得、(ii)一般式(II)で表される化合物を、フェノール化合物の存在下で脱エステル化して、式(III)
【0015】
【化13】

【0016】で示される7−フェニル酢酸アミド−3−(2−メチル−1,3,4−チアジアゾール−5−イル)チオメチル−3−セフェム−4−カルボン酸を得、(iii)式(III)の化合物を、固定化ペニシリンGアシラーゼを用いて脱フェニル酢酸反応を行い、式(IV)
【0017】
【化14】

【0018】で表される7−アミノ−3−(2−メチル−1,3,4−チアジアゾール−5−イル)チオメチル−3−セフェム−4−カルボン酸を得、(iv)次いで、式(VI)
【0019】
【化15】

【0020】で表される1H−テトラゾール−1−酢酸と一般式(VII)
【0021】
【化16】

【0022】(式中、Yは、ハロゲン原子を示し、R2は、ハロゲン原子で置換されていても良い炭素数1〜7の低級アルキル基又はハロゲン原子で置換されていても良い炭素数1〜7の低級アルコキシ基を示す。)で表される酸ハロゲン化物又はハロゲノ炭酸アルキルを、有機溶媒中、塩基の存在下で反応させて得られる混合酸無水物と、上記式(IV)で表される化合物とを、有機溶媒中、塩基の存在下で反応させることを特徴とする式 (V)
【0023】
【化17】

【0024】で示される7−(1H−テトラゾール−1−イル)アセトアミド−3−(2−メチル−1,3,4−チアジアゾール−5−イル)チオメチル−3−セフェム−4−カルボン酸の製造方法を提供するものである。
【0025】上記本発明の方法において、上記一般式(I)中のXは、塩素原子、臭素原子又は沃素原子であるのが好ましく、一般式(I)及び一般式(II)中のR1は、p−メトキシベンジル基、ジフェニルメチル基又はt−ブチル基であるのが好ましい。
【0026】
【発明の実施の形態】本発明の製造方法は、一般式(I)で表される7−フェニル酢酸アミド−3−ハロゲノメチル−3−セフェム−4−カルボン酸エステル誘導体(以下「化合物(I)」という)を出発原料として、高収率、高選択率でセファゾリンを製造する方法に関するものである。
【0027】本発明の製造法を、下記反応式1に示す。
【0028】
【化18】

【0029】第一工程上記反応式1に示すように、本発明ではまず、第一工程として、有機溶媒及び水から選ばれる少なくとも1種の溶媒中で、化合物(I)と式(VIII)の2−メチル−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾールとを塩基の存在下で反応させるか、又は、化合物(I)と式(VIII)の化合物のアルカリ塩とを反応させて、一般式 (II)で表される化合物を得る。
【0030】本発明で出発物質として使用される化合物(I)は、公知の入手容易な化合物である。
【0031】一般式(I)中のXは、ハロゲン原子を示し、ハロゲン原子の具体例としては、塩素、臭素、ヨウ素等を挙げることができる。
【0032】また、一般式(I)中のR1は、カルボン酸保護基を示す。R1で表されるカルボン酸保護基としては、セオドラ ダブリュー グリーンによる「プロテクティブ グループス イン オーガニック シンセシス」(”Protective Groups inOrganic Synthesis ”by Theodora W. Greene、1981年、ジョン ウィリー アンド サンズ社(John Wiley & Sons, Inc.)発行)の第5章に記載されている保護基を広く使用できる。
【0033】その具体例としては、この第一工程の反応において脱保護されず、後述する第二工程の反応において除去できる保護基であればどのようなものでも良く、例えば、ベンジル、p−メトキシベンジル、p−ニトロベンジル、ジフェニルメチル、トリメトキシベンジル、t−ブチル、メトキシエトキシメチル、ピペロニル、ジトリルメチル、トリメトキシジクロロベンジル、トリクロロメチル、ビス(p−メトキシフェニル)メチル基等を例示できる。
【0034】化合物(I)から一般式(II)で示される7−フェニル酢酸アミド−3−(2−メチル−1,3,4−チアジアゾール−5−イル)チオメチル−3−セフェム−4−カルボン酸エステル誘導体(以下「化合物(II)」という)への誘導方法は、化合物(I)と式(VIII)で示される2−メチル−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール(以下「化合物(VIII)」という)とを、塩基の存在下で混合するか、或いは、化合物(VIII)を予めアルカリ塩に調製したものを化合物(I)と混合するものである。
【0035】化合物(VIII)も公知の入手容易な化合物である。また、化合物(VIII)のアルカリ塩の製造も、常法に従って、例えば、必要量の水酸化ナトリウム等の塩基で中和反応させることにより、容易に行うことができる。
【0036】化合物(VIII)又はそのアルカリ塩の使用量としては、広い範囲から選択できるが、一般には、化合物(I)1モルに対して、1〜100モル程度、好ましくは1〜10モル程度である。
【0037】この第一工程の反応で使用される塩基としては、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の重炭酸塩、炭酸塩及び水酸化物、アンモニア又は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、t−ブチル基等の低級アルキル基で置換された2級もしくは3級アミン、特に、ジ−又はトリ(C1−C4アルキル)アミン及びそれらの4級アンモニウム塩などが挙げられる。また、化合物(VIII)のアルカリ塩の形成に使用される塩基も上記の塩基を使用することが出来る。
【0038】塩基の使用量は、化合物(I)1モルに対して、通常1〜100モル程度、好ましくは1〜10モル程度である。また、これらの塩基を任意に混合してもかまわない。
【0039】また、本第一工程においては、塩基として、塩基性のイオン交換樹脂を使用することもできる。かかる塩基性イオン交換樹脂としては、従来から、この種の反応に使用されている塩基性のイオン交換樹脂が広い範囲から適宜選択でき、化合物(I)と化合物(VIII)との反応を進行させる塩基性のイオン交換樹脂であれば、どのようなものであっても良い。強塩基性のものも弱塩基性のものもいずれも使用できるが、一般には、弱塩基性イオン交換樹脂を使用するのが好ましい。
【0040】これら塩基性イオン交換樹脂としては、代表的には、三次元網目状の高分子母体をクロロメチル化した後アミノ化してなるものが例示でき、該三次元網目状の高分子母体としては、主モノマーとして例えばスチレンと架橋性モノマーとして例えばジビニルベンゼンを共重合させてなるものやアクリル系ポリマーが例示できる。
【0041】かかる塩基性のイオン交換樹脂は、公知であり、例えば、「最新高分子材料・技術総覧」、1988年12月9日、テック出版株式会社発行の第301〜304頁に記載されている。
【0042】また、これら塩基性イオン交換樹脂は、多くのメーカーから市販されており、本発明で使用できる市販の塩基性イオン交換樹脂の代表例としては、例えば、商標名ダイヤイオンWA−10、WA−11、WA−20、WA−21、WA−30(以上、三菱化学社製)、アンバーライトIRA−35、IRA−93ZU、IRA−94S(以上、オルガノ社製)、レバチットMP−62、MP−64、AP−49、CA−9222(以上、三井東圧化学社製)等で市販されているものが挙げられる。その他のものでも塩基性のイオン交換樹脂であれば、広い範囲のものが使用できる。
【0043】塩基性イオン交換樹脂の使用量は、特に限定されないが、一般には化合物(I)1モルに対して、1〜100モル程度、好ましくは1〜10モル程度の交換容量相当の樹脂量である。
【0044】この第一工程の反応で使用される反応溶媒としては、化合物(I)と化合物(VIII)と塩基性物質をある程度溶解させるもので、かつ反応を阻害しないものであればいかなる溶媒でも、単独でまたは混合物として使用できる。ただし、イオン交換樹脂は、溶解する必要はない。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等のエステル類、メタノール、エタノール、プロパノール等の脂肪族アルコール類、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジクロロメタン、ジブロモメタン、クロロホルム、ブロモホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素溶媒、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロプロパン等のニトロアルカン類、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル等のニトリル類、その他の有機溶媒および水があげられる。特に、水や、上記溶媒のうちの水溶性溶媒が望ましい。溶媒の使用量は、通常、化合物(I)に対して1〜100重量倍、好ましくは5〜20重量倍である。
【0045】この第一工程の反応は、通常常圧で行うが、必要に応じて加圧してもよい。また、反応の温度は、通常−20〜110℃、好ましくは0〜80℃である。本反応における反応時間は、反応温度や基質濃度や化合物(VIII)のモル数などに依存し一概に言えないが、通常0.1〜24時間、好ましくは0.5〜8時間である。
【0046】また、本反応において、化合物(I)と化合物(VIII)と塩基の混合方法については特に制限はない。例えば、化合物(I)を不均一に上記反応溶媒中に分散させ、そこに化合物(VIII)と塩基を溶解させた溶液を加える。ただし、化合物(I)や化合物(VIII)や塩基は、完全に溶解させる必要はない。反応系は、均一系でも、不均一系でも構わない。本反応は、密閉容器あるいは非密閉容器で行い、反応終了後、必要に応じて例えば、0〜10℃程度に冷却し、析出した結晶を濾過することにより、目的とする化合物(II)を定量的に得ることが出来る。
【0047】第二工程化合物(II)から式(III)で示される7−フェニル酢酸アミド−3−(2−メチル−1,3,4−チアジアゾール−5−イル)チオメチル−3−セフェム−4−カルボン酸(以下「化合物(III)」という)への誘導方法は、特公平6−4638号に報告されている方法を使用することができる。
【0048】即ち、フェノール化合物中で、必要に応じて酸の存在下で、脱エステル化反応を行う。
【0049】本反応で使用されるフェノール化合物としては、フェノール、m−クレゾール、o−クレゾール、p−クレゾール等が挙げられる。その他のものでもフェノール性水酸基を有する化合物であれば使用できる。
【0050】本反応におけるフェノール化合物の使用量は、化合物(II)1モルに対して1〜1000モル程度であるが、好ましくは、5〜100モル程度である。
【0051】本反応では、必要に応じて、反応を促進するために酸を使用できる。該酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸類、あるいは、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸類があげられる。その他のものでも酸性物質であれば使用出来る。酸は、反応促進用の触媒なので任意に添加できる。また、酸を使用しなくてもよい。酸を使用する場合、酸の使用量は、化合物(II)1重量部に対して、10重量部程度まで、好ましくは0.01〜1重量部程度とすればよい。
【0052】本反応においては、上記フェノール化合物が溶媒としても機能するので、溶剤は使用しなくても十分に反応は行えるが、必要に応じて溶媒を使用しても良い。かかる溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等のエステル類、メタノール、エタノール、プロパノール等の脂肪族アルコール類、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジクロロメタン、ジブロモメタン、クロロホルム、ブロモホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素溶媒、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロプロパン等のニトロアルカン類、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル等のニトリル類、その他の有機溶媒および水が、単独で又は任意に混合して使用できる。
【0053】本反応は、通常常圧で行うが、必要に応じて加圧してもよい。また、反応の温度は、通常−20〜110℃、好ましくは0〜80℃である。本反応における反応時間は、反応温度や基質濃度やフェノール化合物の使用量や酸触媒量などに依存し一概に言えないが、通常0.1〜24時間、好ましくは0.5〜8時間である。
【0054】本反応において、化合物(II)、フェノール化合物及び必要に応じて使用される酸触媒の混合方法については特に制限はない。例えば、化合物(II)を、必要に応じて酸触媒を含む、フェノール化合物そのもの又はフェノール化合物を前記溶媒に溶解させてなる溶液に加える。ただし、化合物(II)や酸は、完全に溶解させる必要はない。反応系は、均一系でも、不均一系でも構わない。本反応は、密閉容器あるいは非密閉容器で行う。
【0055】反応終了後、アルカリ水溶液で化合物(III)を抽出する。該アルカリ水溶液としては、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の重炭酸塩、炭酸塩及び水酸化物、アンモニア又は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、t−ブチル基等の低級アルキル基で置換された2級もしくは3級アミン、特にジ−又はトリ(C1−C4アルキル)アミン及びそれらの4級アンモニウム塩等の水溶液を例示でき、その濃度は1〜10重量%程度が好ましいが、これに限定されない。
【0056】次いで、得られた抽出水溶液に、結晶析出が生じるpHとなるまで酸を加える。該酸としては、特に限定されることなく広い範囲のものが使用できるが、例えば、塩酸、硫酸、硝酸等の鉱酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸が例示でき、溶液を酸性にできるものであればどのようなものでも使用できる。こうして析出した結晶を濾過することにより、目的とする化合物(III)を効率良く、且つ、高純度で得ることが出来る。
【0057】ただし、本反応混合物より得られた化合物(III)の抽出水溶液(抽出直後のもの)を、合成吸着剤やイオン交換樹脂等で精製することにより、化合物(III)の抽出水溶液をそのまま次工程に使用することも出来る。
【0058】この精製処理に使用される合成吸着剤やイオン交換樹脂としては、この第二工程で使用され、上記化合物(III)の抽出水溶液中に痕跡量含まれているフェノール化合物や溶媒を除去できる限り、各種の合成吸着剤やイオン交換樹脂が使用できる。
【0059】代表的な合成吸着剤としては、スチレン、メタクリル酸エステル又はビニルピリジン等を、ジビニルベンゼンのような架橋性モノマーと共に溶液重合させて得られる多孔質架橋重合体が例示できる。
【0060】また、イオン交換樹脂としては、第一工程において説明した塩基性イオン交換樹脂の他、酸性イオン交換樹脂が使用できる。酸性イオン交換樹脂の代表例としては、三次元網目状の高分子母体にスルホン酸基、カルボキシル基又はリン酸基等を導入してなるものであり、該三次元網目状の高分子母体としては、主モノマーとして例えばスチレンと架橋性モノマーとして例えばジビニルベンゼンを共重合体させてなるものやアクリル酸系ポリマーやメタクリル酸系ポリマーが例示できる。
【0061】上記のような合成吸着剤及びイオン交換樹脂は、公知であり、例えば、「最新高分子材料・技術総覧」、1988年12月9日、テック出版株式会社発行の第301〜306頁に記載されている。
【0062】また、これら合成吸着剤及びイオン交換樹脂は、各種のものが複数のメーカーから市販されている。特に、本発明で好ましく使用できる市販品としては、ダイヤイオンHPシリーズ、SPシリーズ、WKシリーズ(WK−10、WK−11、WK−20)、WAシリーズ(WA−10、WA−11、WA−20、WA−21、WA−30)(以上、三菱化学社製)、アンバーライトAXTシリーズ(例えば、AXT−33、オルガノ社製)、IRAシリーズ(IRA−35、IRA−93ZU、IRA−94S)(オルガノ社製)、レバチットMP−62、MP−64、AP−49、CA−9222(三井東圧化学社製)等などの合成吸着剤やイオン交換樹脂を挙げることができる。これら以外のものでも、一般的な合成吸着剤やイオン交換樹脂であれば使用できる。
【0063】第三工程次に、化合物(III)から式(IV)で示される7−アミノ−3−(2−メチル−1,3,4−チアジアゾール−5−イル)チオメチル−3−セフェム−4−カルボン酸(以下「化合物(IV)」という)への誘導は、固定化ペニシリンGアシラーゼによる脱フェニル酢酸反応により行なう。
【0064】本酵素反応で使用される固定化ペニシリンGアシラーゼは、どのような菌種により産生されるものであってもよいが、例としては、Escherichia coli (ATCC-9367、ATCC-11105、NCIB-6743)等のEscherichia属、Bacillus gaterium (ATCC-14945)等のBacillus属、Alcaligemes faecalis (MB-10)等のAlcaligemes属、Arthrobactor viscosus (ATCC-15294)等のArthrobactor属、Nocardia sp. (ATCC-13655)等のNocardia属、Streptomyces ambofaclens (SPSL-15)等のStreptomyces属、Kluyvera citrophila (KY-7844)等のKluyvera属に属するものを挙げることができる。また、これら以外でも、ペニシリンGの脱アシル活性を持つものであれば、どのような酵素であっても使用できる。これら酵素は、公知のものであり、例えば、特開平2−138188号に記載されている。
【0065】本発明で使用する固定化ペニシリンGアシラーゼは、上記のようなペニシリンGアシラーゼを、通常公知の方法に従って、この分野で慣用されている各種の不溶性担体、例えば樹脂等に固定化したものである。
【0066】また、本発明で使用する固定化ペニシリンGアシラーゼは、市販品であってもよい。このような市販品としては、一般には、ベーリンガーマンハイム社製、PGA−450、PGA−150等の固定化ペニシリンGアシラーゼが容易に入手できる。
【0067】上記固定化ペニシリンGアシラーゼの使用量は、広い範囲から適宜選択することができ、特に限定されないが、一般には、化合物(III)1gに対して、1U〜100kU程度、好ましくは10U〜 1kU程度である。
【0068】本反応のpH範囲は、6〜10であるが、好ましくは7〜8である。本反応のpHコントロールに使用される塩基としては、塩基性のイオン交換樹脂、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の重炭酸塩、炭酸塩及び水酸化物、アンモニア又は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、t−ブチル基等の低級アルキル基で置換された2級もしくは3級アミン、特にジ−又はトリ(C1−C4アルキル)アミン及びそれらの4級アンモニウム塩などが挙げられる。
【0069】pHコントロールに使用される塩基の濃度は、反応に悪影響を与えない限り、特に制限はない。
【0070】反応温度は、酵素が失活しない温度であれば良いが、一般には、10〜40℃程度、好ましくは20〜35℃程度である。
【0071】反応溶媒は、通常、水であるのが好ましいが、酵素及び化合物(III)及び生成する化合物(IV)に悪影響を与えない限り、必要に応じて、有機溶媒、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等の低級脂肪酸エステル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級脂肪族アルコールを加えても良い。かかる水又は水と有機溶媒の混合溶媒の使用量も特に限定されることなく広い範囲から適宜選択できるが、通常、化合物(III)1重量部に対して、1 〜10000重量部程度、好ましくは10〜100重量部程度である。
【0072】本反応の原料である化合物(III)、酵素、溶媒の混合方法は、反応に悪影響を与えない限り、特に制限はなく、一般には水などの溶媒中に化合物(III)と酵素とを加え、温度とpHを上記範囲に保持しつつ、攪拌すればよい。反応は、通常、常圧で行うが、必要に応じて加圧しても良い。また、反応容器は、密閉系でも開放系でもよい。
【0073】反応時間は、反応温度、基質濃度、化合物(III)に対する酵素使用量などに依存し、一概に言えないが、通常0.1〜24時間程度、好ましくは0.1〜8時間程度である。
【0074】反応終了後、濾過により酵素を濾別し、得られた濾液を酸でpHを等電点(pH3.8)に調整し、化合物(IV)を析出させる。この結晶を濾過すると高純度の化合物(IV)が定量的に得られる。
【0075】先に述べたように、従来技術においては化合物(IV)の調製方法は、7−アミノ−セファロスポラン酸誘導体の3位のメチル基に2−メチル−1,3,4−チアジアゾール−5−メルカプト基を導入するものであり、反応効率が悪く化合物(IV)の純度や経済性が満足しうるものではなかった。
【0076】これに対して、上記第一工程、第二工程及び第三工程を行なう本発明方法によれば、反応効率が高く、中間体としての化合物(IV)が高収率、高純度で得られる。
【0077】第四工程化合物(IV)から目的とする式(V)の化合物を得るには、混合酸無水物法を用いて、化合物(IV)と混合酸無水物とを反応させる。
【0078】(a)混合酸無水物の調製本発明で使用する混合酸無水物は、例えば、次のようにして調製できる。即ち、式(VI)
【0079】
【化19】

【0080】で示される1H−テトラゾール−1−酢酸と一般式 (VII)
【0081】
【化20】
【0082】(式中、Yは、ハロゲン原子、例えば、塩素原子、臭素原子、沃素原子等を示す。Rは、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜7、好ましくは2〜5の低級アルキル基またはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜7、好ましくは1〜4の低級アルコキシ基を示す。)で示される酸ハロゲン化物又はハロゲノ炭酸アルキルを、有機溶剤中、塩基の存在下で反応させればよい。
【0083】上記一般式(VII)において、R2で示される基としては、炭素数1〜7、好ましくは1〜5のアルキル基又はアルコキシ基であり、更に、これらが1〜14個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜2個のハロゲン原子で置換されているハロ置換アルキル基又はハロ置換アルコキシ基をも包含する。該ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、沃素原子等を例示できる。
【0084】式(VI)で示される1H−テトラゾール−1−酢酸との混合酸無水物調製用の一般式(VII)で示される化合物(以下「化合物(VII)」という)のうちの酸ハロゲン化物としては、炭素数2〜8、好ましくは炭素数3〜6の低級脂肪酸の酸ハロゲン化物がある。具体的には、酢酸、プロピオン酸、ピバリン酸、吉草酸、イソ吉草酸等の酸ハロゲン化物(塩化物、臭化物、ヨウ化物等)、ブロモアセチルクロライド、2−クロロプロピオニルクロライド、3−クロロプロピオニルクロライド、4−クロロブチリルクロライド等が挙げられる。
【0085】また、一般式(VII)で表される化合物のうちのハロゲノ炭酸アルキルとしては、R2で表されるアルコキシ基が、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、t−ブチルオキシ等の炭素数1〜7、好ましくは炭素数1〜4のものであり、Yで表されるハロゲン原子が塩素、臭素又は沃素原子であるハロゲノ炭酸アルキルを挙げることができる。
【0086】本発明の混合酸無水物を調製するに当たり、化合物(VII)は、式(VI)の1H−テトラゾール−1−酢酸1モルに対して、通常1〜50モル程度、好ましくは1〜10モル程度使用する。
【0087】本反応に使用される塩基としては、塩基性のイオン交換樹脂、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、重炭酸塩又は炭酸塩、又は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、t−ブチル基等の低級アルキル基で置換された2級、3級アミン、特にジ−又はトリ(C1−C4アルキル)アミン及びそれらの4級アンモニウム塩などが挙げられる。
【0088】上記塩基性のイオン交換樹脂としては、第一工程において説明したものが使用できる。
【0089】これら塩基の使用量は、化合物(VI)1モルに対して、通常は、0.1〜50モル程度、好ましくは0.5〜10モル程度である(塩基性イオン交換樹脂の場合は、化合物(VI)1モルに対して、0.1〜50モル程度、好ましくは0.5〜10モル程度の交換容量相当の樹脂量である)。
【0090】本反応において混合酸無水物を製造する際には、化合物(VI)、化合物(VII)及び塩基の三者を、等モル比又はその近傍の比で使用するのが、最も好ましい。
【0091】混合酸無水物の調製の際に使用される有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等のエステル類、メタノール、エタノール、プロパノール等の脂肪族アルコール類、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジクロロメタン、ジブロモメタン、クロロホルム、ブロモホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素溶媒、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロプロパン等のニトロアルカン類、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル等のニトリル類、その他の有機溶媒があげられる。特に、ハロゲン化炭化水素溶媒とエーテル系溶媒が望ましい。
【0092】該有機溶媒の使用量は、化合物(VI)1重量部に対して、1〜1000重量部程度、好ましくは5〜100重量部程度である。
【0093】反応条件としては、常法に従って適宜決定すればよいが、一般には、反応温度は、−50〜50℃程度、好ましくは−30〜10℃程度であり、反応時間は、0.1〜24時間程度、好ましくは0.1〜8時間程度である。
【0094】反応終了後、反応混合物の温度を0℃程度に0〜8時間程度保持して、混合酸無水物を熟成するのが好ましい。
【0095】(b)混合酸無水物と化合物(IV)との反応こうして、相当する混合酸無水物を調製し、これに、式(IV)で表される7−アミノ−3−(2−メチル−1,3,4−チアジアゾール−5−イル)チオメチル−3−セフェム−4−カルボン酸を、有機溶剤中で、塩基の存在下で反応させることにより、目的とする式(V)で表される7−(1H−テトラゾール−1−イル)アセトアミド−3−(2−メチル−1,3,4−チアジアゾール−5−イル)チオメチル−3−セフェム−4−カルボン酸を得る。
【0096】この反応において、混合酸無水物の使用量は、式(IV)の化合物1モルに対して、1〜50モル程度、好ましくは1〜10モル程度とすればよい。なお、混合酸無水物は、前記(a)の工程で得られた反応混合物をそのまま使用するが、該反応混合物中には、一般に収率約60〜80%で混合酸無水物が得られているので、このことを考慮して、混合酸無水物と式(IV)の化合物の使用量を上記範囲から適宜選択すれば良い。
【0097】また、本反応に使用する塩基としては、上記「(a)混合酸無水物の調製」の項において例示したものが使用できる。塩基の使用量は、化合物(IV)1モルに対して、通常1〜100モル程度、好ましくは1〜30モル程度である。(塩基性イオン交換樹脂を使用する場合は、化合物(IV)1モルに対して、1〜100モル程度、好ましくは1〜30モル程度の交換容量相当の樹脂量である。)また、これらの塩基を任意に混合してもかまわない。
【0098】使用する有機溶媒は、反応させる化合物(IV)及び混合酸無水物を少なくともある程度溶解させるもので、かつ反応を阻害しないものであればいかなる溶媒でも単独または混合して使用できる。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等のエステル類、メタノール、エタノール、プロパノール等の脂肪族アルコール類、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジクロロメタン、ジブロモメタン、クロロホルム、ブロモホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素溶媒、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロプロパン等のニトロアルカン類、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル等のニトリル類、その他の有機溶媒があげられる。特に、ハロゲン化炭化水素溶媒とエーテル系溶媒が望ましい。
【0099】該溶媒の使用量は、通常、化合物(IV)1重量部に対して、1〜100重量部、好ましくは5〜20重量部である。
【0100】本発明の反応は、通常常圧で行うが、必要に応じて加圧してもよい。また、反応の温度は、通常−50〜110℃、好ましくは−30〜10℃である。本発明における反応時間は、反応温度や基質濃度や混合酸無水物の使用量などに依存し一概に言えないが、通常0.1〜24時間、好ましくは1〜8時間である。
【0101】本第四工程において、化合物 (IV)と混合酸無水物と塩基の混合方法については特に制限はない。例えば、化合物(IV)を前記有機溶媒に均一に溶解させた溶液を、予め調製した混合酸無水物溶液中にゆっくりと加える方法を例示できる。塩基の添加時期は、化合物(IV)溶液と混合酸無水物を混合する前であれば、特に制限はない。
【0102】こうして得られる目的化合物(V)、即ちセファゾリンは、常法に従い、単離、精製される。好ましくは、得られる反応混合物中に、水を加えて、セファゾリンを水層に抽出し、pHを酸性側に調整し、再結晶化することにより、単離精製する。必要に応じて、抽出操作で得られた水層を、常法に従い、活性炭処理する、前記第三工程に関して例示した合成吸着剤又はイオン交換樹脂で処理する等の操作を加えても良い。
【0103】
【発明の効果】本発明によれば、前記一般式(I)の化合物を出発物質として使用し、前記した第一工程、第二工程、第三工程及び第四工程を行うことにより、高純度のセファゾリンを高収率で得ることができる。
【0104】また、第一工程、第二工程及び第三工程を行うことにより、セファゾリンの中間体として有用な式(IV)の7−アミノ−3−(2−メチル−1,3,4−チアジアゾール−5−イル)チオメチル−3−セフェム−4−カルボン酸をも、特別な精製操作なしに、高収率且つ高純度で得ることができ、この結果、最終生成物であるセファゾリンも高収率且つ高純度で得ることができる。
【0105】
【実施例】次に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、その趣旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0106】なお、実施例において、第一工程、第二工程及び第三工程で得られた各中間体及び第四工程で得られたセファゾリンは、いずれも公知の化合物である。これら各工程で得られた中間体及びセファゾリンは、IR、NMR及びマススペクトルの各スペクトル分析並びに高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析に供し、これらの分析データが、別途合成したそれぞれの標品と一致したことから、上記各中間体及びセファゾリンの生成を確認した。
【0107】実施例1(1)第一工程7−フェニル酢酸アミド−3−(2−メチル−1,3,4−チアジアゾール−5−イル)チオメチル−3−セフェム−4−カルボン酸p−メトキシベンジルエステルの調製200mlの4つ口フラスコに7−フェニル酢酸アミド−3−クロロメチル−3−セフェム−4−カルボン酸p−メトキシベンジルエステル(以下「GCLE」と略する。)10gとアセトン100mlを入れ、撹拌しながら35℃まで加温する。この時、GCLEの多くは溶解せずにスラリー状になる。
【0108】5−メチル−2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール3.3gを1N水酸化ナトリウム水溶液22.6mlに溶解させた溶液を予め調製しておき、20〜30分かけて滴下する。滴下終了時に反応液は、均一溶液になるが、数分後にまた結晶が析出する。
【0109】滴下終了10分後に0.5N塩酸4.2mlを反応液に加え、10分間撹拌する。この反応混合液に水89mlを滴下しながら、5℃以下に冷却し、結晶を析出させつつ、1時間撹拌熟成する。
【0110】熟成後、7−フェニル酢酸アミド−3−(2−メチル−1,3,4−チアジアゾール−5−イル)チオメチル−3−セフェム−4−カルボン酸p−メトキシベンジルエステル(以下「GTDE」と略する。)結晶を吸引濾過し、得られた結晶を冷アセトン10mlで洗浄する。GTDE結晶を減圧下40℃以下で乾燥すると、乾燥GTDE 11.64g(収率97%)が得られる。
【0111】(2)第二工程7−フェニル酢酸アミド−3−(2−メチル−1,3,4−チアジアゾール−5−イル)チオメチル−3−セフェム−4−カルボン酸の調製200mlの4つ口フラスコにm−クレゾール60mlと濃硫酸0.24mlを入れ、35℃に加温後に、乾燥GTDE10gを入れて反応させる。反応温度を30〜40℃に保ち、反応をモニターしながら、約2〜3時間反応する。
【0112】反応終了後、酢酸ブチル200mlを反応液に加え、5℃以下に冷却する。冷却後の反応混合液に4%重曹水65mlを加え、7−フェニル酢酸アミド−3−(2−メチル−1,3,4−チアジアゾール−5−イル)チオメチル−3−セフェム−4−カルボン酸(以下「GTDA」と略する。)を水層へ抽出し、水層を分離する。同様に水10mlを、酢酸ブチル/m−クレゾール層に加えて、再度GTDAを水層へ抽出する。2つのGTDA抽出水溶液を併せて、その混合液に酢酸ブチル30mlを加え、GTDA抽出水溶液を洗浄分液する。
【0113】GTDA抽出混合液を、吸着樹脂カラム(オルガノ社製の商品名「AXT−33樹脂」25ml充填)で通液処理する。通液後、吸着樹脂カラムを水75mlで洗浄する。
【0114】(3)第三工程7−アミノ−3−(2−メチル−1,3,4−チアジアゾール−5−イル)チオメチル−3−セフェム−4−カルボン酸の調製第二工程で得られたGTDAの抽出液(重曹水)とカラム洗浄水液を併せた溶液を、固定化ペニシリンGアシラーゼ酵素(ベーリンガーマンハイム社製PGA−450)4gの入っている酵素反応器に入れ、反応温度を28℃、pHを7.7〜8.1に保持しつつ、攪拌して反応を行う。
【0115】pHコントロールは、1Nアンモニア水で行う。アンモニアの消費が無くなったところで反応終点を確認し、酵素を濾別し、蒸留水で洗浄する。
【0116】こうしてほぼ定量的に得られた7−アミノ−3−(2−メチル−1,3,4−チアジアゾール−5−イル)チオメチル−3−セフェム−4−カルボン酸(以下「ATDA」と略する。)の溶液を、5℃以下に冷却し、3N塩酸でpHを3.8に調整する。pH調整後、5℃以下で1時間熟成し、ATDA結晶を濾過する。ATDA結晶を20mlの冷水で洗浄し、続いてアセトン20mlで洗浄する。ATDA結晶を減圧下40℃以下で乾燥すると乾燥ATDA5.55gが得られる。(収率94%;第二工程及び第三工程の総合収率、GTDE基準)
(4)第四工程セファゾリンの合成(i)混合酸無水物の調製100mlの4つ口フラスコに、1H−テトラゾール−1−酢酸3.72gと塩化メチレン40mlを入れる。この塩化メチレン溶液にトリエチルアミン2.94gを入れ、−10℃に冷却する。−10℃以下でピバリン酸クロライド3.32gを加える。反応液の温度を0℃に調整し、その温度で1時間熟成する。
【0117】(ii)ATDA塩化メチレン溶液の調製100ml4つ口フラスコに、ジイソプロピルアミン4.3gと塩化メチレン30mlを入れる。この塩化メチレン溶液にATDA2.94gを入れ、溶解後−20℃以下に冷却する。
【0118】(iii)セファゾリンの合成反応上記(i)で予め調製した混合酸無水物調製溶液に、上記(ii)で調製したATDAの塩化メチレン溶液を20〜30分を要して、−20℃以下の温度で滴下する。
【0119】滴下後は、冷却を止めて室温で30分撹拌する。反応終点確認後に水60mlを加え、セファゾリンを水で抽出し、水層を分離する。更に、塩化メチレン層に水40mlを加え、再度セファゾリンを水で抽出する。2つのセファゾリン抽出液を併せ、得られた水溶液のpHを4.5に調整する。
【0120】その溶液に塩化メチレン30mlを加え、セファゾリン抽出水溶液を洗浄分液する。このセファゾリン水溶液に活性炭1.5gを入れ、15分間撹拌し、活性炭を濾別する。濾液に3N塩酸溶液を加え、pH2に調整して結晶を析出させ、5℃以下で1時間熟成する。熟成後セファゾリン結晶を濾過し、結晶を20mlの冷水で洗浄する。セファゾリン結晶を減圧下40℃以下で乾燥するとセファゾリン結晶が6.07g(収率92%)得られる。
【出願人】 【識別番号】000206901
【氏名又は名称】大塚化学株式会社
【出願日】 平成8年(1996)10月2日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】三枝 英二 (外4名)
【公開番号】 特開平10−101679
【公開日】 平成10年(1998)4月21日
【出願番号】 特願平8−261976