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【発明の名称】 鉄−コバルト系合金材料の接合方法
【発明者】 【氏名】黒木 博憲

【氏名】柳田 裕二

【要約】 【課題】鉄−コバルト系合金材料の接合部を冷間加工可能とするための接合方法の提供。

【解決手段】接合部をレーザ溶接、電子ビーム溶接のような高エネルギービーム溶接法などを適用して、CsCl型規則相α’相のないαBCC不規則相によって形成することによって、接合した鉄−コバルト系合金材料の連続した加工を可能にした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 接合部にα’CsCl型規則相のないαBCC不規則相を形成することを特徴とする鉄−コバルト系合金材料の接合方法。
【請求項2】 接合部を高エネルギービーム溶接によって形成する請求項1に記載の鉄−コバルト系合金材料の接合方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鉄−コバルト系合金材料を、例えば、圧延のために連続化するための溶接方法に関する【0002】
【従来の技術】鉄−コバルト系合金は、コバルトが25〜60%の領域で飽和磁束密度Bsが約2.3T以上の大きな値を示し、とくに、約50%コバルトの組成で比較的大きな初透磁率を示す優れた軟磁性材料である。この合金が有する磁気特性、とくに、高飽和磁束密度は、小型の高性能モーター、高磁力を要する電磁弁、アクチュエーターに適したものである。
【0003】ところが、この合金は、鉄−コバルト規則格子が生成する50%コバルト付近で硬くて脆いため加工性が悪く、通常の冷間圧延のような加工に供することができない。そこで塑性加工性を改善するためにVを2%配合した50%Co−Fe合金が用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このVを配合した合金でも、圧延可能な接合部を形成することはできず、この合金の接合については特開平7−166239号公報に示されるように、細線の連続化のために、不活性ガス雰囲気中で750〜850°Cで圧着溶接することが開示されているにすぎない。
【0005】板材については、真空鋳造した小容量の圧延用ビレット単味毎の圧延しか行なうことができないために長尺の薄板は得られていない。そのために最終製品は高価なものとなり、実際には、その用途は受話器の振動板等限られた範囲に留まっているのが現状である。
【0006】従来から、この軟磁性材料の冷間圧延を連続して行なうために、通常の鋼板のような溶接法が種々試みられたが、溶融金属が多く存在することになり、r相域から徐冷が進行し、その組織はr→α→α’(規則化したα相)のように変態し、溶接部及び熱影響部では脆弱な規則相がかなりの範囲にわたって出現してしまい、以降の冷間圧延ができなくなる。
【0007】本発明の課題は、鉄−コバルト系合金材料の接合部を、例えば、冷間加工可能とするための接合方法を得ることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、鉄−コバルト系合金材料の接合に際して、接合部をCsCl型規則相α’相のないαBCC不規則相によって形成することによって、接合した鉄−コバルト系合金材料の連続した加工を可能にした。
【0009】この飽和磁束密度の大きい50%Co−Fe合金の凝固、相変態とその相変態温度は、 液相→r 1480°C r:FCC非磁性相 r→α 980°C α:BCC不規則相 α→α’ 730°C α’:CsCl型規則相に変化する。
【0010】このCo−Fe系軟磁性材料がCo50%付近で良好な軟磁気特性を有するのは、730°C以下で存在するα’規則相によるものと考えられ、不規則相では透磁率は劣化する。ところが、このα’規則相における機械特性は、一般の規則合金と同様、冷間圧延、打ち抜きなどの加工性はきわめて劣るものである。したがって、このCo−Fe系合金は、接合部にこのα’規則化相を存在せしめないようにし、その接合部を冷間加工が可能な靭性を得るようにして、接合部を含む合金材料を冷間加工に供することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】接合部をCsCl型規則相α’相のないαBCC不規則相によって形成するためには、従来、鋼板の高速接合にも使用されているレーザ溶接、電子ビーム溶接のような高エネルギービーム溶接法を適用することができる。
【0012】その適用条件としては低入熱、急熱急冷可能な高エネルギービーム溶接法の特徴を生かし、溶接部及び熱影響部において溶接後の冷却過程にα’規則相が出現しないような冷却速度となるような溶接条件であることが望ましい。
【0013】また、この条件を満たせば、通常の鋼板のように、Co−Fe系合金の圧延の場合でも、途中段階での溶接による継足しが可能となる。
【0014】
【実施例】コバルト48.93重量パーセント、バナジウム1.76重量パーセント、残鉄及び不可避不純物からなるFe−Co系軟磁性材料を、730°C以上の温度で熱間圧延し、その加工終了後加工歪が開放されない時間内に、730°C以上の温度域から100°C/s以上の冷却速度で300°C以下まで冷却することでα’規則相の出現を抑止した材料を冷間圧延して幅85mm、板厚1.15mmのコイル材を得た。これを長さ52mmに切断して溶接用の試片とした。
【0015】この冷間圧延板を2枚突き合わせてI開先完全突き合わせを形成した。この部分を加速電圧70kV、ビーム電流10mA、溶接速度500mm/min、加工距離:300mm、ビーム収束距離:260mmの条件で電子ビーム溶接したところ、接合部には規則組織は存在していなかった。この接合板を、引続き常温でロール外径200mmφの2段ロール式圧延機に複数回繰り返しかけて冷間圧延したところ、継手部分を含めて問題なく圧延することができ、厚さ0.45mmまで圧延することができ、これを、その後、850°Cで2〜4時間の水素中もしくは真空中焼鈍によりα’相とし、磁性化のためにα相域での冷却速度2〜3°C/secにより規則相を得て、0.45mm厚さで、50mm幅、240mm長さの軟磁性材を得ることができた。
【0016】この軟磁性材料の磁気特性を表1に示す。
【0017】
【表1】

これに対して、同じ冷間圧延板を用いて、加速電圧70kV、ビーム電流20mA、溶接速度500mm/min、加工距離:300mm、ビーム収束距離:260mm、AC偏向:1.0mmφ、500Hzの条件下で電子ビーム溶接したところ、接合部には基材をふくめてα’相のCsC1型規則相を形成しており、以降の冷間圧延は不可能であった。
【0018】さらに、同じ冷間圧延板について、1.6mmφタングステン電極を用い、アーク電流:40A、溶接速度:60mm/min、アルゴンガス流量:8リットル/minの条件下でTIG溶接したところ、溶接部から母材にかけて割れが発生し、健全な継手を得ることは不可能であった。
【0019】
【発明の効果】
(1) 接合部に、脆弱な規則相が存在しないので、鉄−コバルト系軟磁性材料の連続冷間圧延が可能となる。
【0020】(2) 接合手段として、高エネルギービーム溶接法を適用することによって、溶融域は極めて少なく急冷されるので、脆弱な規則相のない接合部を得ることができる。
【0021】(3) 薄板の冷間圧延材の長尺での製造が可能となり、打ち抜き等の後工程への波及効果が大きく、最終製品の低コスト化、量産化が可能となる。
【出願人】 【識別番号】000143628
【氏名又は名称】株式会社黒木工業所
【出願日】 平成9年(1997)3月21日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】小堀 益 (外1名)
【公開番号】 特開平10−263861
【公開日】 平成10年(1998)10月6日
【出願番号】 特願平9−68729