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【発明の名称】 双ドラム式薄板連続鋳造方法およびそれに用いる蝋材
【発明者】 【氏名】齋藤 達己

【氏名】竹内 友英

【要約】 【課題】一対の冷却ドラムとサイド堰を用いる双ドラム式薄板連続鋳造において、安定した長時間の鋳造を可能にする。

【解決手段】冷却ドラム1aのサイド堰との摺動面18に、潤滑剤を50〜95%含有した150℃以上の溶融状態で粘度5〜100poiseになる蝋材19を事前に50〜300μm塗布する。潤滑剤は、不可避的不純物を除き、BN、黒鉛、雲母、クロム酸バリウム、またはほう酸とすることが好ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 一対の冷却ドラムとサイド堰との間に形成した湯溜まり部に溶融金属を注入し、ついで該溶融金属を前記冷却ドラムの回転周面で冷却、凝固させながら薄板を連続鋳造する双ドラム式薄板連続鋳造方法において、前記冷却ドラムのサイド堰との摺動面に、潤滑剤を50〜95%含有した150℃以上の溶融状態で粘度5〜100poiseになる蝋材を、事前に50〜300μm塗布することを特徴とする双ドラム式薄板連続鋳造方法。
【請求項2】 前記潤滑剤が、不可避的不純物を除き、BN、黒鉛、雲母、クロム酸バリウム、またはほう酸であることを特徴とする請求項1に記載の双ドラム式薄板連続鋳造方法。
【請求項3】 不可避的不純物を除き、BN、黒鉛、雲母、クロム酸バリウム、またはほう酸である潤滑剤を50〜95%含有し、150℃以上の溶融状態で粘度5〜100poiseになることを特徴とする双ドラム式薄板連続鋳造用蝋材。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、双ドラム式薄板連続鋳造方法およびそれに用いる蝋材に関し、特に、連続鋳造時に冷却ドラムの端面とサイド堰との間を蝋材で潤滑する双ドラム式薄板連続鋳造方法およびそれに用いる蝋材に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、溶鋼等の溶融金属から最終形状に近い数mm程度の厚みを有する薄板を直接的に製造する連続鋳造方法が注目されている。この場合、従来のような多段階にわたる熱間圧延工程を必要とせず、また、最終形状にする圧延も軽度なもので良いため、工程および設備の簡略化が図られる。
【0003】このような連続鋳造方法の一つとして、例えば、特開昭60−137562号公報で開示された双ドラム式薄板連続鋳造方法がある。この方法においては、図2に示すように、互いに逆方向に回転する一対の冷却ドラム1a、1bおよびサイド堰2a、2bにより区画された凹部に湯溜まり部3を形成する。タンディシュ等の容器から注湯ノズルを介して、溶融金属がこの湯溜まり部3に注湯される。湯溜まり部3に収容された溶融金属4は、冷却ドラム1a、1bと接する部分が冷却・凝固して凝固シェルとなる。この凝固シェルは、冷却ドラム1a、1bの回転に随伴され、一対の冷却ドラム1a、1bが互いに最も接近した位置で向かい合う、いわゆるドラムギャップ部6に移動する。このドラムギャップ部6では、それぞれの冷却ドラム1a、1bの表面で形成された凝固シェルが互いに圧着され、目的とする金属薄帯(薄板)5となる。
【0004】かかる薄板連続鋳造において、サイド堰2a、2bは、一般に、実開昭63−90548号公報に見られるように、サイド堰ケースに収容された断熱材と該断熱材に植設されたベース部材と該ベース部材の冷却ドラムに対応する面に植設されたセラミックスより構成されている。そして、鋳造時は、サイド堰2a、2bを冷却ドラム端面17に押し付け、上記セラミックスを冷却ドラム端面17によって摩耗させることによって隙間をなくし、溶鋼洩れを防止している。
【0005】また、サイド堰2a、2bには、特開昭61−266160号公報に開示されているように、一般に、振動が与えられており、セラミックスの摩耗を助長している。
【0006】前記薄板連続鋳造における鋳造量は、冷却ドラム1a、1bの摺動によるサイド堰2a、2bのセラミックスの摩耗速度によって決まる。従って、セラミックスの摩耗を抑制することが、鋳造量の増大を図る上で極めて重要である。
【0007】このようなセラミックスの摩耗は、硬度、表面粗度、温度等の因子に影響されると考えられるので、セラミックスの摩耗を抑制するために、冷却ドラム摺動面18に接するセラミックスの摩耗面に中間層として潤滑剤を供給することが有効である。これにより前記摺動面および摩耗面の摩擦係数を低下させ、さらには、冷却ドラム端面の表面温度の低下、冷却ドラム端面の荒れの防止をもたらし、結果的にサイド堰の解放が抑制されて溶鋼シール性が向上する。前記摺動面は高温且つ狭隘部であり、通常の潤滑油供給では油の蒸発により潤滑層が維持できないため、使用可能温度域の高い固体潤滑剤の適用が不可欠である。このような摺動面に潤滑剤を供給する技術として、特開平4−81250号公報に固体潤滑剤を冷却ドラム端面に押し付ける方法および構造が開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開平4−81250号公報に開示されているような固体潤滑剤の供給手段は、鋳造が安定してからは有効であるが、鋳造初期には効果がないという問題がある。
【0009】サイド堰の表面は予熱により熱変形するので、予熱後に平滑面が形成されるように常温での表面形状が決定されているが、冷却ドラム端面もある程度の凹凸を有しているため、サイド堰と冷却ドラム端面の接する面の溶鋼シールを満足させるための相対的な平滑度がない。鋳造初期には、強制的にサイド堰の摺動面を摩耗させることにより、サイド堰と冷却ドラム摺動面に馴染み面を形成させ、溶鋼シールを満足させている。その馴染み面を形成するため、サイド堰の初期摩耗量が大きくなり、このことがサイド堰の長期使用を阻む要因となっている。
【0010】そこで、本発明は、このような問題を有利に解決して、安定した長時間の鋳造を可能にする双ドラム式薄板連続鋳造方法およびそれに用いる蝋材を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、以下の(1)〜(3)の通りである。
【0012】(1) 一対の冷却ドラムとサイド堰との間に形成した湯溜まり部に溶融金属を注入し、ついで該溶融金属を前記冷却ドラムの回転周面で冷却、凝固させながら薄板を連続鋳造する双ドラム式薄板連続鋳造方法において、前記冷却ドラムのサイド堰との摺動面に、潤滑剤を50〜95%含有した150℃以上の溶融状態で粘度5〜100poiseになる蝋材を、事前に50〜300μm塗布することを特徴とする双ドラム式薄板連続鋳造方法。
【0013】(2) 前記潤滑剤が、不可避的不純物を除き、BN、黒鉛、雲母、クロム酸バリウム、またはほう酸であることを特徴とする前記(1)の双ドラム式薄板連続鋳造方法。
【0014】(3) 不可避的不純物を除き、BN、黒鉛、雲母、クロム酸バリウム、またはほう酸である潤滑剤を50〜95%含有し、150℃以上の溶融状態で粘度5〜100poiseになることを特徴とする双ドラム式薄板連続鋳造用蝋材。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】図1は、本発明に使用する冷却ドラム端面の拡大断面図である。冷却ドラム摺動面18に厚さ50〜300μmとなるように蝋材19を塗布後、予熱したサイド堰を冷却ドラム端面に押し当てて、サイド堰とドラム端面間の隙間を50μm以下に抑制する。それによって、溶鋼のシール性が確保され、かつ摺動面の潤滑効果により初期摩耗を抑制できる。
【0017】ここで、蝋材19の塗布厚さは、サイド堰およびドラム端部の形状から隙間がなくなるように50μm以上の厚さが必要である。一方、上限を300μmとするのは、300μmを越えて塗布すると潤滑剤がドラムの溶鋼と接する面に滲み出してその一部を覆い、鋳片の端部が凝固せずに溶鋼漏れを起こすようになるためである。
【0018】蝋材に含有させる潤滑剤は、50%未満では潤滑効果が発揮されず、95%を越えるとドラムの摺動部へ付着しなくなるため、50〜95%とする必要がある。
【0019】潤滑剤を含有した蝋材の150℃以上における粘度は、5poise未満では潤滑剤を含有した蝋材が流れてしまい、塗布厚みが確保できず、また、100poiseを越えると粘度が高すぎて、所定の厚み以下に塗布厚みを抑制することができないため、5〜100poiseにする必要がある。
【0020】潤滑剤としては、BN、黒鉛、雲母、クロム酸バリウムやほう酸が好ましい。これらの材料は、摺動面が高温の場合に、劈開破壊することによる潤滑効果や、ガラス転移することで疑似流体潤滑層を形成することによる潤滑効果を発揮できる材料である。
【0021】以上のように、本発明によれば初期摩耗が抑制され、長時間安定した溶鋼シールが確保できる。
【0022】なお、本発明は、ドラム式連続鋳造機でサイド堰をドラム端部に押し付ける構造のものならば、形式を問わず有効である。
【0023】
【実施例】本発明例と比較例の鋳造試験を実施した。試験条件および試験結果を表1と図3に示す。鋳造試験は、鋼種オーステナイト系ステンレス鋼(18%Cr−8%Ni系)、板厚4.0mm、鋳造速度35mpmで行った。サイド堰の摺動面にはBNを50%含有したセラミックスプレート(CP)を用いた。
【0024】
【表1】

【0025】No.1〜4の比較により、事前に塗布する蝋材の塗布厚さが所定の値であれば、潤滑効果が発揮されることが判る。
【0026】また、本発明例No.5〜8から、潤滑剤として黒鉛、雲母、クロム酸バリウムやほう酸と材質を変えた場合の本発明の有効性も併せて確認した。
【0027】以上のように、本発明により、サイド堰のセラミックスプレートの摩耗を抑制して長時間の安定した鋳造ができた。
【0028】
【発明の効果】本発明により、溶鋼シール安定化のためのサイド堰の初期押し込みに伴う冷却ドラム摺動面およびサイド堰の摩耗がなく、安定した長時間の鋳造を行うことができる。
【出願人】 【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社
【出願日】 平成9年(1997)4月14日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】秋沢 政光
【公開番号】 特開平10−286654
【公開日】 平成10年(1998)10月27日
【出願番号】 特願平9−110101