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【発明の名称】 分割型中子
【発明者】 【氏名】伊藤 寛
【氏名】角谷 知泰
【課題】抜熱能の低下ひいては生産能率の低下を招くことなしに、接触部におけるへたり等の発生を効果的に防止して優れた成形品質の樹脂継手を得る。

【解決手段】分割中子の相互接触面にそれぞれ高硬度材のクラッド層を形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 銅合金製の分割型中子であって、各分割中子の相互接触面にそれぞれ高硬度材のクラッド層を有することを特徴とする分割型中子。
【請求項2】 請求項1において、高硬度材が HRC:35以上のものである分割型中子。
【請求項3】 請求項1または2において、銅合金が、Be−Cu系合金、Cu−Ni−Si系合金およびCu−Al−Mn系合金のうちから選んだいずれかである分割型中子。
【請求項4】 請求項1,2または3において、銅合金と高硬度材とを鋳ぐるみ法により接合したことを特徴とする分割型中子。
【請求項5】 請求項1,2,3または4において、銅合金と高硬度材クラッド層との接合外周部に、鳩尾嵌合部を設けたことを特徴とする分割型中子。
【請求項6】 請求項5において、鳩尾嵌合部のアンダーカット角αが次式0°<α≦60°の範囲を満足するものである分割型中子。
【請求項7】 請求項5または6において、鳩尾嵌合部の投影面積がクラッド面積の10〜50%である分割型中子。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、エルボーやソケット等の樹脂継手を製造する場合に、該継手の中空部成形用として好適な分割型中子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、一般家庭にガスを供給する末端の低圧ガス管としては、鋼管や鋳鉄管が使用されてきたが、最近では、曲げ・伸び等の外圧に強く、耐震性に優れることから、ポリエチレン製の管材が使用され始めている。この他にも、種々の用途でポリエチレンや塩化ビニル等の合成樹脂製の管材が利用されている。
【0003】このような合成樹脂製の管材、特にエルボーやソケット等の継手部の製造において注意すべきことは、全体をできるだけ均一に、しかも迅速に冷却することである。というのは、冷却時に温度差があると、反りや歪みさらにはひけ(凹み)等を生じて寸法精度が低下するおそれが大きく、また冷却に時間がかかり過ぎると生産性の低下を招くからである。そこで、エルボーやソケット等の継手を製造する際の中子としては、比較的抜熱能に優れる鉄製のものが用いられている。
【0004】ところで、エルボーやソケットを製造する場合、中空部を成形するために用いる中子は、一体物では成形後の除去が不可能なので、2分割あるいは3分割の分割型として引き抜き除去を容易にしている。実際、エルボーの製造には2分割型の中子が、またソケットの製造には3分割型の中子がそれぞれ用いられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】例えば、エルボーを製造する場合、中子としては、図1に示すように、エルボーの曲がり部で2分割した左右対象の分割中子1a,1bが一般的に使用される。ここに、分割中子1a,1bはそれぞれ、図2(a) に示すように、所定角度θにて押圧力Pにより作動するが、この時摺動部の加工精度の僅かな狂いで先端部が点接触となる場合があり、このような場合には押圧力が先端部に集中して「へたり」が発生する。また、図2(b) に示すように、成形時、射出圧力によって先端部を支点とするモーメントが発生するため、同様に先端部に該圧力が集中して「へたり」が発生する場合がある。かような「へたり」が発生すると、それに起因して成形品の寸法精度が低下するだけでなく、「バリ」の発生も懸念される。
【0006】この問題の対策としては、中子の素材を、より強度(硬度)の高いものに変えることが考えられるけれども、この場合には、抜熱能の面で問題が生じる。すなわち、上述したとおり、寸法精度および生産能率の面から、成形後は極力均一かつ迅速に抜熱する必要があるけれども、強度的に優れている材料はいずれも、熱電導率が低く、従って高抜熱能という中子に要求される基本特性の面で適合しない。また、従来の鉄製の中子では、抜熱能を向上させるために内部に冷却流路を設けているが、かような処置を施してもなお、最近のハイサイクル化には十分対応できていないのが現状である。
【0007】この発明は、上記の問題を有利に解決するもので、抜熱能の低下ひいては生産性の低下を招くことなしに、中子接触部のエッジ部におけるへたり等の発生を効果的に防止して優れた成形品質の継手を得ることができる、分割型の鋳型中子を提案することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】さて、発明者らは、上記の目的を達成すべく、分割中子の相互接触面に高硬度材のクラッドを試みたところ、所期した目的の達成に関し、望外の成果が得られたのである。この発明は、上記の知見に立脚するものである。
【0009】すなわち、この発明は、銅合金製の分割型中子であって、各分割中子の相互接触面にそれぞれ高硬度材のクラッド層を有することを特徴とする分割型中子である。
【0010】この発明において、高硬度材としては HRCが35以上(好ましくは40以上)のものが望ましく、かような材料としては、SCM系,SKD系, 析出硬化型ステンレス(PSL:日立金属(株)のステンレスの商品名)およびNAK(大同特殊鋼(株)のプラスチック金型用鋼の商品名)等が有利に適合する。また、銅合金としては、Be−Cu系合金、Cu−Ni−Si系合金およびCu−Al−Mn系合金等が適しており、特に好適なものは BeA-275C (Be:2.5 〜2.75wt%、Co:0.6 〜0.95wt%)である。
【0011】さらに、この発明において、良熱伝導体である銅合金と高硬度材とを接合する方法としては、鋳ぐるみ法が有利に適合する。というのは、鋳ぐるみ法であれば、銅合金と高硬度材とを密接に一体化できるので、境界面における熱伝達の低下がなく、また金属間腐食等も生じないからである。
【0012】またさらに、かような鋳ぐるみ法によって銅合金と高硬度材とを接合する場合、両者の接合をより緊密なものにするためには、接合部の外周部に鳩尾嵌合部を設けることが好ましい。ここに、鳩尾嵌合部のアンダーカット角αは0°<α≦60°の範囲とすることが好ましく、また鳩尾嵌合部のクラッド面積に対する投影面積は10〜50%程度とすることが望ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、この発明を具体的に説明する。図3および図4にそれぞれ、この発明に従うエルボー用およびソケット用の分割型中子を模式(断面)で示す。エルボー用中子は2分割、またソケット用中子は3分割したものである。以下、図3に示す、エルボー用中子を例にとって説明する。
【0014】さて、図3において、2分割中子1a,1bは内部冷却(図示省略)により、所定の温度(通常10〜40℃)に設定されている。中子温度を、所定の範囲に設定している理由は、中子温度があまりに高すぎると取り出し後に変形するおそれが大きく、また低すぎると生産性の低下を招くだけでなく、注湯の再接合部にウェルドと呼ばれる成形欠陥が生じるからである。
【0015】上記の状態で、ポリエチレンや塩化ビニル等の合成樹脂溶湯を、 160〜230 ℃の温度で供給すると、従来は、前掲図2に示したように、加工精度不良や射出圧力の起因して中子先端部に「へたり」が生じるおそれが大きかったのであるが、この発明では接触部が高硬度材3a,3bでクラッドされているので、かようなおそれはほとんどない。ここに、高硬度材のクラッド層厚みが、あまりに薄いと上記の効果に乏しく、一方厚すぎると抜熱能が低下して冷却の不均一が生じるので、クラッド層厚みは0.5 〜10mm程度好ましくは1〜8mm程度とするのが望ましい。より望ましい厚みは3〜5mmである。
【0016】なお、表1に、良熱伝導材として高ベリリウム銅および低ベリリウム銅、また高硬化材として析出硬化型ステンレス鋼の熱伝導率、熱膨張係数および硬度を示したが、良熱伝導材と高硬度材との熱伝導率および熱膨張係数の差が表1程度であれば、成形時における両者の接合性の面でも抜熱能の面でも特に問題はない。
【0017】
【表1】

【0018】ところで、図3および図4には、接合部の中央部にのみ鳩尾嵌合部4を設けた場合について示したが、接合部の固着強度を一層高めるためには、図5(a) に示すように、接合部の外周に沿って複数個の鳩尾嵌合部4を設けることが好ましい。より好ましくは、図5(b), (c)に示すように、接合部の中央部と外周部の双方に鳩尾嵌合部4を設けることである。ここに、鳩尾嵌合とは、図6(a), (b)および(c) に示すように、接合する材料のいずれか(この例では高硬度材側)に、外拡がり状の孔、凹みまたは突起を設けて両者を接合するもので、かような鳩尾嵌合部4を設けることにより、密着度を格段に高めることができる。さらに、図7には、鳩尾嵌合部4の変形例をまとめて示す。
【0019】なお、鳩尾嵌合部4の平面形状は、例えば図6(a) に示した孔の場合を例にして説明すると、図8(a) に示すような円形とするのが最適であるが、同図(b) および(c) に示すような三角形および四角形、さらには五角形以上の多角形としても何ら差し支えない。
【0020】さらに、図6に示したように、鳩尾嵌合部のアンダーカット角αは0°<α≦60°の範囲とすることが好ましい。というのは、アンダーカット角αが0°またはマイナスでは、鳩尾嵌合部を設けたことによる密着度の向上効果が得られず、一方60°を超えると湯回りが悪くなって、強度低下や熱伝導不良を招くからである。より好適なアンダーカット角αは10°<α≦25°である。また、鳩尾嵌合部のクラッド面積に対する投影面積比率は10〜50%(好ましくは20〜30%)程度とすることが望ましい。というのは、投影面積比率があまりに大きいと熱伝導率の低下を来し、一方投影面積比率があまりに小さいと鳩尾嵌合部が熱収縮によって破壊する危険性が生じるからである。
【0021】
【実施例】図3に示したような2分割中子を用いて、下記に示す条件でエルボー樹脂継手を製造した。
(1) 中子・本体素材--- Be−Cu合金(Be:2.6 wt%, Co:0.8 wt%)
・高硬度材--- SCM調質材(HRC:45)
(2) エルボー成形体・寸法--- 内径:100 mm, 外径:106 mm・樹脂素材--- 硬質塩化ビニル(3) 成形条件・射出温度:170 ℃・中子設定温度:30℃その結果、湯差し等の欠陥発生のない成形品質の優れたエルボーを、1個当たり、30秒の生産サイクルで製造することができる。これに対し、従来のような内部冷却型の鉄製中子を用いて、この発明と同じ30秒の生産サイクルでエルボーを製造した場合には、溶融樹脂の固化が不十分で離型後の変形が大きく、5個当たり1個の割合で不良品の発生が見られた。
【0022】以上、主に、エルボー樹脂継手を2分割中子を用いて製造する場合について説明したが、ソケットを3分割中子を用いて製造する場合にも同等の効果が得られることはいうまでもない。
【0023】
【発明の効果】かくして、この発明に従い、分割型中子の相互接触面に高硬度材のクラッド層を設けることにより、抜熱能の低下を招くことなしに、接触部におけるへたりの発生を効果的に防止することができ、従って生産サイクルのアップと同時に成形品質の向上を図ることができる。
【出願人】 【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
【出願日】 平成9年(1997)12月12日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 暁秀 (外8名)
【公開番号】 特開平10−230344
【公開日】 平成10年(1998)9月2日
【出願番号】 特願平9−342915