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【発明の名称】 排ガス浄化材及び排ガス浄化方法
【発明者】 【氏名】吉田 清英
【氏名】角屋 聡
【氏名】古山 雅孝
【氏名】西屋 憲
【課題】窒素酸化物や、一酸化炭素、水素、炭化水素等の未燃焼分に対する理論反応量以上の酸素を含有し、水分を含有する燃焼排ガスから、効率良く窒素酸化物を還元除去することができる排ガス浄化材及び排ガス浄化方法を提供する。

【解決手段】(a) 多孔質の無機酸化物に銀及び銀化合物からなる群より選ばれる一種以上の元素及び/又は化合物0.2〜15重量%(金属元素換算値)を担持してなる第一の触媒と、(b) 多孔質の無機酸化物にMo、Mn、V 、W 、Cr、Fe、Co、Ni、Cu及びSnからなる群より選ばれた少なくとも一種の卑金属元素0.1〜20重量%(金属元素換算値)とを担持してなる第二の触媒とからなり、前記第一の触媒層が前記第二の触媒の上面を覆うように形成されている排ガス浄化材である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 窒素酸化物と、共存する未燃焼成分に対する理論反応量より多い酸素とを含む燃焼排ガスから窒素酸化物を還元除去する排ガス浄化材において、(a) 多孔質の無機酸化物に銀及び銀化合物からなる群より選ばれる一種以上の元素及び/又は化合物0.2〜15重量%(金属元素換算値)を担持してなる第一の触媒と、(b) 多孔質の無機酸化物にMo、Mn、V 、W 、Cr、Fe、Co、Ni、Cu及びSnからなる群より選ばれた少なくとも一種の卑金属元素0.1〜20重量%(金属元素換算値)とを担持してなる第二の触媒とからなり、前記第一の触媒層が前記第二の触媒の上面を覆うように形成されていることを特徴とする排ガス浄化材。
【請求項2】 請求項1に記載の排ガス浄化材において、前記第一の触媒と前記第二の触媒との重量比が2:1〜100:1であることを特徴とする排ガス浄化材。
【請求項3】 請求項1又は2に記載の排ガス浄化材において、前記第一の触媒の多孔質無機酸化物は、アルミナ単独、又はチタニア、シリカ、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化錫、酸化マグネシウム、ゼオライトのいずれかとアルミナとの複合又は混合酸化物であり、前記第二の触媒の多孔質無機酸化物は、アルミナ、チタニア、シリカ、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化錫、酸化マグネシウム、ゼオライトからなる群より選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする排ガス浄化材。
【請求項4】 請求項1〜3のいずれかに記載の排ガス浄化材において、前記第二の触媒がハニカム型、フォーム型、板状、ペレット状、顆粒状のいずれかの形状のセラミックス製又は金属製の基体表面にコートされていることを特徴とする排ガス浄化材。
【請求項5】 請求項1〜3のいずれかに記載の排ガス浄化材において、前記第二の触媒がハニカム型、フォーム型、板状、ペレット状、顆粒状のいずれかに成形されていることを特徴とする排ガス浄化材。
【請求項6】 請求項1〜5のいずれかに記載の排ガス浄化材を用い、窒素酸化物と、共存する未燃焼成分に対する理論反応量より多い酸素とを含む燃焼排ガスから窒素酸化物を還元除去する排ガス浄化方法において、前記排ガス浄化材を排ガス導管の途中に設置し、前記浄化材の上流側で炭化水素と含酸素有機化合物とからなる群より選ばれた一種以上を還元剤として添加した排ガスを、150〜600℃において前記浄化材に接触させ、もって前記還元剤との反応により前記窒素酸化物を除去することを特徴とする排ガス浄化方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は窒素酸化物と過剰の酸素を含む燃焼排ガスから、窒素酸化物を効果的に還元除去することのできる排ガス浄化材及びそれを用いた浄化方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】自動車用エンジン等の内燃機関や、工場等に設置された燃焼機器、家庭用ファンヒーター等から排出される各種の燃焼排ガス中には、過剰の酸素とともに一酸化窒素、二酸化窒素等の窒素酸化物が含まれている。ここで、「過剰の酸素を含む」とは、その排ガス中に含まれる一酸化炭素、水素、炭化水素等の未燃焼成分を燃焼するのに必要な理論酸素量より多い酸素を含むことを意味する。また、以下における窒素酸化物とは一酸化窒素及び/又は二酸化窒素を指す。
【0003】この窒素酸化物は酸性雨の原因の一つとされ、環境上の大きな問題となっている。そのため、各種燃焼機器が排出する排ガス中の窒素酸化物を除去するさまざまな方法が検討されている。
【0004】過剰の酸素を含む燃焼排ガスから窒素酸化物を除去する方法として、特に大規模な固定燃焼装置(工場等の大型燃焼機等)に対しては、アンモニアを用いる選択的接触還元法が実用化されている。
【0005】しかしながら、この方法においては、窒素酸化物の還元剤として用いるアンモニアが高価であること、またアンモニアは毒性を有すること、そのために未反応のアンモニアが排出しないように排ガス中の窒素酸化物濃度を計測しながらアンモニア注入量を制御しなければならないこと、一般に装置が大型となること等の問題点がある。
【0006】また、別な方法として、水素、一酸化炭素、炭化水素等のガスを還元剤として用い、窒素酸化物を還元する非選択的接触還元法があるが、この方法では、効果的な窒素酸化物の低減除去を実行するためには排ガス中の酸素との理論反応量以上の還元剤を添加しなければならず、還元剤を多量に消費する欠点がある。このため非選択的接触還元法は、実際上は、理論空燃比付近で燃焼した残存酸素濃度の低い排ガスに対してのみ有効となり、汎用性に乏しく実際的でない。
【0007】そこで、アルミナなどの無機酸化物に銀を担持してなる排ガス浄化材を用い、排ガス中にアルコールを還元剤として添加し、窒素酸化物を除去する方法が提案された(特開平6-327974号)。また、排ガス流入側に銀触媒層、流出側に銅系触媒層をそれぞれ設けた排ガス浄化材が開示され(特開平6-190280号) 、排ガス400 ℃前後において高い窒素酸化物除去性能を示している。しかしながら、広い排ガス温度範囲、特に低温領域における窒素酸化物除去率がまだ十分ではない。
【0008】また、アルミナ等に銀とモリブデン等を担持してなる窒素酸化物除去触媒を用い、排ガス中にアルコール等の還元剤を添加し、窒素酸化物を除去する方法が提案され(特開平6-238164号)、低温領域でもある程度の窒素酸化物除去性能を示した。しかし、水分を10%程度含み、窒素酸化物の濃度が400ppm 以下である比較的低濃度の実排ガスでは、十分な窒素酸化物の除去性能が得られなかった。
【0009】したがって、本発明の目的は、固定燃焼装置及び酸素過剰条件で燃焼するガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等からの燃焼排ガスのように、窒素酸化物や、一酸化炭素、水素、炭化水素等の未燃焼分に対する理論反応量以上の酸素を含有し、水分を含有する燃焼排ガスから、効率良く窒素酸化物を還元除去することができる排ガス浄化材及び排ガス浄化方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記課題に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、低温領域で排ガスが銀触媒より先にモリブデン等の卑金属触媒に接触すると、排ガス中に添加した還元剤が酸化されてしまうことを突き止め、モリブデン等の卑金属系触媒上に特定の割合の銀触媒層を設けることにより、還元剤の酸化を最小限に押さえ、広い温度領域、特に400 ℃未満の低温領域での窒素酸化物を効果的に除去することができることを発見し、本発明を完成した。
【0011】すなわち、窒素酸化物と、共存する未燃焼成分に対する理論反応量より多い酸素とを含む燃焼排ガスから窒素酸化物を還元除去する本発明の第一の排ガス浄化材は、(a) 多孔質の無機酸化物に銀及び銀化合物からなる群より選ばれる一種以上の元素及び/又は化合物0.2〜15重量%(金属元素換算値)を担持してなる第一の触媒と、(b) 多孔質の無機酸化物にMo、Mn、V 、W 、Cr、Fe、Co、Ni、Cu及びSnからなる群より選ばれた少なくとも一種の卑金属元素0.1〜20重量%(金属元素換算値)とを担持してなる第二の触媒とからなり、前記第一の触媒層が前記第二の触媒の上面を覆うように形成されていることを特徴とする。
【0012】また、窒素酸化物と、共存する未燃焼成分に対する理論反応量より多い酸素とを含む燃焼排ガスから窒素酸化物を還元除去する本発明の排ガス浄化方法は、前記排ガス浄化材を排ガス導管の途中に設置し、前記浄化材の上流側で炭化水素と含酸素有機化合物とからなる群より選ばれた一種以上を還元剤として添加した排ガスを、150〜600℃において前記浄化材に接触させ、もって前記還元剤との反応により前記窒素酸化物を除去することを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
[1]排ガス浄化材(1)排ガス浄化材の構成本発明の排ガス浄化材は、後述の第一の触媒と第二の触媒とからなる。第一の触媒である銀系触媒が第二の触媒である卑金属系触媒の上面を覆うように層状に形成されている。卑金属系触媒を銀触媒で覆うことにより、排ガス中に添加した還元剤がまず銀触媒に接触して還元剤として作用するので、酸素過剰な燃焼排ガスでも効果的な窒素酸化物除去を行うことができる。
【0014】(a) 本発明の排ガス浄化材の第一の好ましい形態は、第一の触媒である銀系触媒が第二の触媒である卑金属系触媒を覆うように形成し、かつ上記第一及び第二の触媒を浄化材基体にコートしてなる浄化材である。具体的には、まず第二の触媒を浄化材の基体に公知の方法でコートした後、前記第二の触媒を覆うように第一の触媒を公知の方法でコートする。
【0015】浄化材の基体を形成するセラミックス材料としては、アルミナ、ジルコニア、チタニア−ジルコニア等の多孔質で表面積の大きい耐熱性のものが挙げられる。高耐熱性が要求される場合、コージェライト、ムライト、アルミナ及びその複合物等を用いるのが好ましい。また、排ガス浄化材の基体に公知の金属材料を用いることもできる。
【0016】排ガス浄化材の基体の形状及び大きさは、目的に応じて種々変更できる。またその構造としては、ハニカム構造型、フォーム型、繊維状耐火物からなる三次元網目構造型、あるいは顆粒状、ペレット状等が挙げられる。ウォッシュコート法、ゾル−ゲル法、粉末法等を用いて上記基体に第二の触媒、第一の触媒の順でコートし、焼結することにより排ガス浄化材を製造することができる。
【0017】(b) 本発明の排ガス浄化材の第二の好ましい形態は、上記第二の触媒をハニカム構造型、フォーム型、板状、ペレット状又は顆粒状に成形したあと、第一の触媒を第二の触媒の上面にコートしてなる浄化材である。
【0018】上記浄化材を排ガス導管中に設置し、浄化材の設置位置より上流側で還元剤を添加した排ガスをこの浄化材に接触させて、排ガス中の窒素酸化物を還元除去する。
【0019】(2)第一の触媒第一の触媒は、多孔質無機酸化物に銀及び銀化合物からなる群より選ばれる一種以上の元素及び/又は化合物を担持してなり、広い温度領域での窒素酸化物除去に作用する。多孔質の無機酸化物としては、アルミナ単独、又はチタニア、シリカ、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化錫、酸化マグネシウム、ゼオライトのいずれかとアルミナとの複合又は混合酸化物を用いることができる。アルミナ含有複合又は混合酸化物を用いる場合、アルミナの含有率を50重量%以上とするのが好ましい。アルミナ又はアルミナの複合又は混合酸化物を用いることにより、触媒の耐熱性及び耐久性が向上する。なお、本発明でいう酸化錫は各種酸化状態の錫の酸化物を含み、例えば酸化第一錫、酸化第二錫等が挙げられる。
【0020】第一の触媒で用いるアルミナ等の多孔質無機酸化物の粒径が0.1mm以下であるのが好ましい。粒径が0.1mmを越えると、触媒と排ガスの接触面積が低くなり、触媒活性種の効果が十分に発揮できない。第一の触媒で用いるアルミナ等の多孔質の無機酸化物の比表面積は10m2 /g以上であるのが好ましい。比表面積が10m2 /g未満であると、銀成分の分散が低下し、良好な窒素酸化物の除去が行えない。より好ましい多孔質無機酸化物の比表面積は30m2 /g以上である。
【0021】銀化合物は銀の酸化物、ハロゲン化銀、硫酸銀、炭酸銀及び燐酸銀等からなる群より選ばれた少なくとも一種であり、好ましくは銀の酸化物、塩化銀及び硫酸銀のいずれか一種以上であり、更に好ましくは銀の酸化物及び/又は塩化銀である。銀成分の担持量は、多孔質無機酸化物100重量%に対して0.2〜15重量%(銀元素換算値)とする。0.2重量%未満では窒素酸化物の除去率が低下する。また、15重量%を超す量の銀成分を担持すると還元剤の酸化が起きやすく、窒素酸化物の除去率はかえって低下する。好ましい銀成分の担持量は0.5〜12重量%である。
【0022】アルミナ等の無機酸化物に銀を担持する方法としては、公知の含浸法、沈澱法等を用いることができる。含浸法を用いる際、銀の硝酸塩、塩化物、硫酸塩、炭酸塩等の水溶液又はアンモニア性水溶液に多孔質無機酸化物を浸漬する。又は硝酸銀水溶液に多孔質無機酸化物を浸漬し、乾燥後、塩化アンモニウム又は硫酸アンモニウムの水溶液に再び浸漬する。沈澱法でハロゲン化銀を調製するには硝酸銀とハロゲン化アンモニウムとを反応させて、ハロゲン化銀として多孔質無機酸化物上に沈澱させる。これを50〜150℃、特に70℃程度で乾燥後、100〜600℃で段階的に昇温して焼成するのが好ましい。焼成は、空気中、酸素を含む窒素気流下や水素ガス気流下で行うのが好ましい。窒素ガス雰囲気下又は水素ガス気流下で行う場合には、最後に300〜600℃で酸化処理するのが好ましい。アルミナ、アルミナ系混合又は複合酸化物への銀の担持では、ベーマイト等のアルミナ水和物を出発物質として利用すると効果的である。
【0023】(3) 第二の触媒第二の触媒は、多孔質無機酸化物に触媒活性種としてMo、Mn、V 、W 、Cr、Fe、Co、Ni、Cu及びSnからなる群より選ばれた少なくとも一種の卑金属元素を担持してなる。好ましい触媒活性種はMo、Mn、V 、W 、Co、Ni及びCuからなる群より選ばれた少なくとも一種の卑金属元素である。低い排ガス温度では、卑金属元素系触媒が存在すると、排ガス中の窒素酸化物が二酸化窒素に変換され、銀系触媒によって窒素ガスに還元できるので、低温領域での窒素酸化物除去率が向上する。多孔質無機酸化物としては、アルミナ、チタニア、ゼオライト、シリカ、ジルコニア、亜鉛酸化物、錫酸化物、マグネシウム酸化物からなる群より選ばれた一種又は二種以上の複合又は混合酸化物を用いる。第一の触媒と同様に、多孔質の無機酸化物の比表面積は10m2 /g以上であることが好ましい。
【0024】多孔質無機酸化物を100重量%として、モリブデンなどの卑金属系成分の担持量は0.1〜20重量%(金属元素換算値)であり、好ましい担持量は1〜15重量%(金属元素換算値)であり、より好ましい担持量は3.1〜12重量%(金属元素換算値)である。触媒活性種の量が前記無機酸化物に対して0.1重量%未満では触媒を担持した効果が顕著ではなく、NOx 低減特性は低下する。一方、20重量%を超す触媒担持量とすると炭化水素等の還元剤の酸化燃焼のみが進み、窒素酸化物の低減特性は低下することになる。
【0025】活性種の担持は、公知の含浸法、沈殿法等を用いることができる。まず、触媒活性種を担持し、そして50〜150℃、特に70℃で乾燥後、100〜600℃で段階的に昇温して焼成することによって行われる。焼成は、空気中、酸素を含む窒素気流下や水素ガス気流下で行うのが好ましい。水素ガス気流下で行う場合には、最後に300〜650℃で酸化処理するのが好ましい。含浸法を用いる際、触媒活性種元素の炭酸塩、硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩等の水溶液に多孔質無機酸化物を浸漬する。このように調製した第二の触媒上では、触媒活性種はそれぞれ元素又はそれらの酸化物、ハロゲン化物、硫酸塩のいずれか一種以上の形で存在する。
【0026】(4)排ガス浄化材の製造方法浄化材の形態を上述した第一の好ましい形態とする場合、まず基体へ第二の触媒をウォッシュコート法、ゾル−ゲル法、粉末法等の公知の方法でコートし、そして50〜150℃、特に70℃で乾燥後、100〜600℃で段階的に昇温して焼成する。次に、この第二の触媒をコートした基体に第一の触媒を公知の方法でコートし、50〜150℃、特に70℃で乾燥後、100〜600℃で段階的に昇温して焼成し、排ガス浄化材を得る。
【0027】浄化材の形態を上述した第二の好ましい形態とする場合、上記第二の触媒を公知の方法でハニカム構造型、フォーム型、板状、ペレット状又は顆粒状に成形し、50〜150℃、特に70℃で乾燥後、100〜600℃で段階的に昇温して焼成する。次に、第二の触媒を包むように第一の触媒を公知の方法でコートし、50〜150℃、特に70℃で乾燥後、100〜600℃で段階的に昇温して焼成し、排ガス浄化材を得る。
【0028】第一の触媒と第二の触媒との重量比(多孔質無機酸化物と触媒活性種との合計重量の比)は、2:1〜100:1とするのが好ましい。より好ましい第一触媒と第二の触媒との重量比は5:1〜80:1であり、特に好ましい重量比は5:1〜50:1である。第一の触媒と第二の触媒との重量比が2:1未満であると、第一の触媒層の量が十分ではないため、還元剤が第二の触媒層に直接接触する可能性が大きくなり、窒素酸化物の除去率の低下につながる。一方、第一の触媒と第二の触媒との重量比が100:1を超えると、排ガスが第二の触媒に届きにくくなり、第二の触媒の効果が得られない。なお、第一の触媒と第二の触媒との触媒活性種の重量比(触媒活性種の合計重量の比)は2:1〜500:1とするのが好ましく、3:1〜200:1であるのがより好ましく、3:1〜100:1であるのが特に好ましい。第一の触媒と第二の触媒との触媒活性種の重量比が2:1未満であると、卑金属元素が過剰となり、排ガス中に添加した還元剤が酸化されやすくなる。一方、触媒活性種の重量比が500:1を超えると、卑金属元素が不足になり、卑金属元素の触媒効果が得られない。
【0029】なお、浄化材基体上に設ける触媒の厚さは、一般に、基体材と、触媒との熱膨張特性の違いから制限される場合が多い。浄化材基体上に設ける第一の触媒、第二の触媒の厚さをそれぞれ300μm以下とするのがよい。このような厚さとすれば、使用中に熱衝撃等で浄化材が破損することを防ぐことができる。
【0030】また、浄化材基体の表面上に設ける第一の触媒と第二の触媒との合計量は、浄化材基体の20〜300g/リットルとするのが好ましい。触媒の量が20g/リットル未満では良好なNOx の除去が行えない。一方、触媒の量が300g/リットルを超えると除去特性はそれほど上がらず、圧力損失が大きくなる。より好ましくは、浄化材基体の表面上に設ける触媒の合計重量を浄化材基体の50〜250g/リットルとする。
【0031】上述した構成の浄化材を用いれば、150〜600℃の広い温度領域において、水分10%程度を含む排ガスでも、良好な窒素酸化物の除去を行うことができる。
【0032】[2]排ガス浄化方法次に、本発明の方法について説明する。まず、上記排ガス浄化材を排ガス導管の途中に設置する。
【0033】排ガス中には、残留炭化水素としてエチレン、プロピレン等及び含酸素有機化合物がある程度は含まれるが、一般に排ガス中のNOx を還元するのに十分な量ではないので、外部から炭化水素と含酸素有機化合物とからなる群より選ばれた一種以上を還元剤として排ガス中に導入する。実用では、還元剤を水、又は軽油、灯油、ガソリン等の燃料に分散して、排ガスに添加するのが好ましい。還元剤の導入位置は、浄化材を設置した位置より上流側である。
【0034】外部から導入する炭化水素としては、標準状態でガス状又は液体状のアルカン、アルケン及び/又はアルキンを用いることができる。特にアルカン又はアルケンの場合では炭素数2以上が好ましい。標準状態で液体状の炭化水素としては、具体的に、軽油、セタン、ヘプタン、灯油、ガソリン等の炭化水素が挙げられる。その中でも、沸点50〜350℃の炭化水素が特に好ましい。
【0035】含酸素有機化合物としては、エタノール、プロパノール等のアルコール類、ケトン類、アルデヒド類を用いるのが好ましい。
【0036】外部から導入する還元剤の量は、重量比(添加する還元剤の重量/排ガス中の窒素酸化物の重量)が0.1〜5となるようにするのが好ましい。この重量比が0.1未満であると、窒素酸化物の除去率が大きくならない。一方、5を超えると、燃費悪化につながる。
【0037】本発明では、還元剤による窒素酸化物の還元除去を効率的に進行させるために、排ガス浄化材に対する排ガスの空間速度は 150,000h-1以下、好ましくは 100,000h-1以下とする。
【0038】また、本発明では、還元剤と窒素酸化物とが反応する部位である浄化材設置部位における排ガスの温度を150〜600℃に保つ。排ガスの温度が150℃未満であると還元剤と窒素酸化物との反応が進行せず、良好な窒素酸化物の除去を行うことができない。一方、600℃を超す温度とすると還元剤自身の燃焼が始まり、窒素酸化物の還元除去が行えない。好ましい排ガス温度は200〜550℃であり、より好ましくは300〜500℃である。
【0039】
【実施例】本発明を以下の具体的実施例によりさらに詳細に説明する。
実施例1市販のγ−アルミナ粉末(比表面積200m2 /g)に硝酸銀水溶液を用いて4重量%(金属元素換算値)の銀を担持し、80℃で3時間乾燥後、空気中で段階的に600℃まで焼成して、第一の触媒を調製した。
【0040】同様なγ−アルミナ粉末に硝酸マンガン水溶液を用いて5重量%(Mn元素換算値)を担持し、乾燥後、空気中で段階的に600℃まで焼成して、第二の触媒を調製した。
【0041】第二の触媒0.1gをスラリー化した後、市販のコージェライト製ハニカム状成形体(直径20mm、長さ16.6mm、200セル/インチ2 )にコートし、乾燥後600℃まで段階的に焼成した後、スラリー化した第一の触媒1.0gをコートし、乾燥後600℃まで段階的に焼成した後、排ガス浄化材(第一の触媒層および第二の触媒層の二層をコートした浄化材)を調製した。なお、第一の触媒と第二の触媒との重量比は10:1であり、銀元素とマンガン元素との重量比は8:1である。
【0042】反応管内に上記排ガス浄化材をセットし、表1に示す組成のガス(一酸化窒素、酸素、エタノール、窒素及び水分)を毎分1.74リットル(標準状態)の流量で流して(浄化材の見かけ空間速度は約20,000h-1である。)、反応管内の排ガス温度を300〜500℃の範囲に保ち、エタノールと窒素酸化物とを反応させた。
【0043】反応管通過後のガスの窒素酸化物の濃度を化学発光式窒素酸化物分析計により測定し、窒素酸化物除去率を求めた。結果を図1に示す。
【0044】
表1 成分 濃度 一酸化窒素 300 ppm 酸素 10 容量% エタノール 643 ppm (窒素酸化物の質量の3倍)
窒素 残部 水分 10 容量%(上記成分の総体積に対して)
【0045】実施例2実施例1と同じ方法で、硝酸銀水溶液と塩化アンモニウム水溶液を用いて粉末状γ−アルミナ(比表面積200m2 /g)に3重量%(銀元素換算値)の塩化銀を担持し、80℃で3時間乾燥後、空気中で100〜600℃まで段階的に昇温し、最後に600℃で3時間焼成して、、第一の触媒を作製した。
【0046】実施例1の第二の触媒0.05gをスラリー化した後、市販のコージェライト製ハニカム状成形体(直径20mm、長さ16.6mm、200セル/インチ2)にコートし、乾燥後600℃まで段階的に焼成した後、スラリー化した第一の触媒1gをコートし、乾燥後600℃まで段階的に焼成した後、排ガス浄化材(第一の触媒層および第二の触媒層の二層をコートした浄化材)を調製した。なお、第一の触媒と第二の触媒との重量比は20:1であり、銀元素とマンガン元素との重量比は約12:1である。
【0047】反応管内に上記排ガス浄化材をセットし、表2に示す組成のガス(一酸化窒素、酸素、プロピレン、窒素及び水分)を毎分1.74リットル(標準状態)の流量で流して(浄化材の見かけ空間速度は約20,000h-1である。)、反応管内の排ガス温度を350〜600℃の範囲に保ち、プロピレンと窒素酸化物とを反応させた。
【0048】反応管通過後のガスの窒素酸化物の濃度を化学発光式窒素酸化物分析計により測定し、窒素酸化物除去率を求めた。結果を図2に示す。
【0049】
表2 成分 濃度 一酸化窒素 300 ppm 酸素 10 容量% プロピレン 600 ppm 窒素 残部 水分 10 容量%(上記成分の総体積に対して)
【0050】実施例3同様なγ−アルミナ粉末に硝酸モリブデン水溶液を用いて5重量%(Mo元素換算値)を担持し、乾燥後、空気中で段階的に600℃まで焼成して、第二の触媒を調製した。
【0051】第二の触媒0.1gをスラリー化した後、市販のコージェライト製ハニカム状成形体(直径20mm、長さ16.6mm、200セル/インチ2 )にコートし、乾燥後600℃まで段階的に焼成した後、スラリー化した実施例2の第一の触媒1.0gをコートし、乾燥後600℃まで段階的に焼成した後、排ガス浄化材(第一の触媒層および第二の触媒層の二層をコートした浄化材)を調製した。なお、第一の触媒と第二の触媒との重量比は10:1であり、銀元素とモリブデン元素との重量比は6:1である。
【0052】反応管内に上記排ガス浄化材をセットし、表1に示す組成のガス(一酸化窒素、酸素、エタノール、窒素及び水分)を毎分1.74リットル(標準状態)の流量で流して(浄化材の見かけ空間速度は約20,000h-1である。)、反応管内の排ガス温度を300〜500℃の範囲に保ち、エタノールと窒素酸化物とを反応させた。
【0053】反応管通過後のガスの窒素酸化物の濃度を化学発光式窒素酸化物分析計により測定し、窒素酸化物除去率を求めた。結果を図1に示す。
【0054】実施例4同様なγ−アルミナ粉末に硝酸銅水溶液を用いて10重量%(Cu元素換算値)を担持し、乾燥後、空気中で段階的に600℃まで焼成して、第二の触媒を調製した。
【0055】第二の触媒0.1gをスラリー化した後、市販のコージェライト製ハニカム状成形体(直径20mm、長さ16.6mm、200セル/インチ2 )にコートし、乾燥後600℃まで段階的に焼成した後、スラリー化した実施例2の第一の触媒1.0gをコートし、乾燥後600℃まで段階的に焼成した後、排ガス浄化材(第一の触媒層および第二の触媒層の二層をコートした浄化材)を調製した。なお、第一の触媒と第二の触媒との重量比は10:1であり、銀元素と銅元素との重量比は3:1である。
【0056】反応管内に上記排ガス浄化材をセットし、表2に示す組成のガス(一酸化窒素、酸素、プロピレン、窒素及び水分)を毎分1.74リットル(標準状態)の流量で流して(浄化材の見かけ空間速度は約20,000h-1である。)、反応管内の排ガス温度を350〜600℃の範囲に保ち、プロピレンと窒素酸化物とを反応させた。
【0057】反応管通過後のガスの窒素酸化物の濃度を化学発光式窒素酸化物分析計により測定し、窒素酸化物除去率を求めた。結果を図2に示す。
【0058】比較例1実施例1の第一の触媒(銀系触媒)1.0gをスラリー化し、実施例1と同様のコージェライト製ハニカム状成形体にコートして、乾燥後600℃まで段階的に焼成した後、排ガス浄化材を調製した。
【0059】銀系排ガス浄化材を排ガスの導管にセットし、実施例1と同様の反応条件(見かけ空間速度は約20,000h-1である)で、表1に示す組成のガスを用いて評価を行った。結果を図1に示す。
【0060】比較例2反応管内に比較例1の排ガス浄化材をセットし、実施例2と同様の反応条件(見かけ空間速度は約20,000h-1である)で、表2に示す組成のガスを用いて評価を行った。結果を図2に示す。
【0061】比較例3実施例3の第二の触媒0.4gをスラリー化した後、市販のコージェライト製ハニカム状成形体(直径20mm、長さ16.6mm、200セル/インチ2 )にコートし、乾燥後600℃まで段階的に焼成した後、スラリー化した実施例1の第一の触媒0.6gをコートし、乾燥後600℃まで段階的に焼成した後、排ガス浄化材(第一の触媒層および第二の触媒層の二層をコートした浄化材)を調製した。なお、第一の触媒と第二の触媒との重量比は3:2であり、銀元素とモリブデン元素との重量比は6:5である。
【0062】反応管内に上記排ガス浄化材をセットし、実施例1と同様の反応条件(見かけ空間速度は約20,000h-1である)で、表1に示す組成のガスを用いて評価を行った。結果を図1に示す。
【0063】比較例4実施例1の第二の触媒0.6gをスラリー化した後、市販のコージェライト製ハニカム状成形体(直径20mm、長さ16.6mm、200セル/インチ2 )にコートし、乾燥後600℃まで段階的に焼成した後、スラリー化した実施例1の第一の触媒0.6gをコートし、乾燥後600℃まで段階的に焼成した後、排ガス浄化材(第一の触媒層および第二の触媒層の二層をコートした浄化材)を調製した。なお、第一の触媒と第二の触媒との重量比は1:1であり、銀元素とマンガン元素との重量比は4:5である。
【0064】反応管内に上記排ガス浄化材をセットし、実施例2と同様の反応条件(見かけ空間速度は約20,000h-1である)で、表2に示す組成のガスを用いて評価を行った。結果を図2に示す。
【0065】図1及び2からわかるように、第一の触媒である銀触媒のみを用いた比較例1及び比較例2に比べて、本発明による第一の触媒と第二の触媒とからなる二層排ガス浄化材を用いた実施例1〜4では広い排ガス温度領域で、特に400℃以下の低い排ガス温度領域で窒素酸化物の良好な除去がみられた。一方、銀触媒とほぼ同量の卑金属触媒を用いた比較例3及び4では、逆に窒素酸化物の除去率の低下が見られた。これは大量の卑金属触媒が存在することにより、添加した還元剤が酸化されてしまった結果である。
【0066】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明の排ガス浄化材を用いれば、広い温度領域において過剰の酸素を含む排ガス中の窒素酸化物を効率良く除去することができる。特に、10%程度の水分を含み、窒素酸化物濃度の低い排ガスに対して有効である。本発明の排ガス浄化材及び浄化方法は、各種燃焼機、自動車等の排ガス中の窒素酸化物除去に広く利用することができる。
【出願人】 【識別番号】000139023
【氏名又は名称】株式会社リケン
【出願日】 平成9年(1997)5月30日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】高石 橘馬
【公開番号】 特開平10−328567
【公開日】 平成10年(1998)12月15日
【出願番号】 特願平9−157865