トップ :: A 生活必需品 :: A61 医学または獣医学;衛生学

【発明の名称】 医薬組成物
【発明者】 【氏名】赤池 孝章
【氏名】近藤 智紀
【課題】PTIO類に生体内での反応特異性が付与され、さらに製剤内でのPTIO類の保存安定性のよいPTIO類の製剤及び医薬組成物を提供する。

【解決手段】一般式(1)で表される化合物及び/又はその生理的に許容される塩を、コレステロール及びその類縁体から選ばれる1種又は2種以上と、リン脂質として飽和のリン脂質のみを含有する球状膜に内包して、小球体とする。また、前記小球体を医薬組成物に配合する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 リン脂質を含有する球状膜と、これに内包された一般式(1)で表される化合物及び/又はその生理的に許容される塩と、を含む小球体であって、前記リン脂質が飽和のリン脂質であり、且つ、前記球状膜がコレステロール及びその類縁体から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする小球体。
【化1】

(但し、式中R1、R2、R3、R4はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R5はアミノ基、炭素数1〜4のアルキル基を有する2級又は3級のアミノ基、もしくは炭素数1〜4のアルキル基を有する4級アンモニウム基を表す。)
【請求項2】 一般式(1)に表される化合物が、下記式(2)で表される2−(4−(トリメチルアミノ)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−イミダゾロ−1−イロキシ−3−オキサイドである請求項1記載の小球体。
【化2】

【請求項3】 前記リン脂質が、水素添加レシチン、フォスファチジルコリン、フォスファチジルイノシトール、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルグリセロール及びフォスファチジン酸から選ばれることを特徴とする請求項1又は2記載の小球体。
【請求項4】 リポソームである請求項1〜3の何れか一項に記載の小球体。
【請求項5】 請求項1〜4の何れか一項に記載の小球体を含有する医薬組成物。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、2−フェニル−イミダゾロ−1−イロキシ−3−オキサイド誘導体を有効成分とする製剤及びこれを含有する医薬組成物に関し、詳しくは、前記化合物に製剤内での保存安定性と生体内での反応特異性を付与することを可能とした小球体状の製剤及びこれを含有する医薬組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】2−フェニル−4,4,5,5−テトラメチル−イミダゾロ−1−イロキシ−3−オキサイド(PTIO)や2−(4−カルボキシフェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−イミダゾロ−1−イロキシ−3−オキサイド(カルボキシPTIO)などのPTIO及びその誘導体(以下、この様な2−フェニル−イミダゾロ−1−イロキシ−3−オキサイド骨格を有する化合物を総称して「PTIO類」という)は、一酸化窒素の消去能力に優れており、それが関与するといわれている循環器疾患や炎症に対して有効に作用するであろうと推測されている。しかしながら、これらPTIO類はその反応性のよさのために血中に入るとすぐに血中成分と反応して一酸化窒素消去力を失い失活してしまうことから、その医薬としての有用性が十分に実証されていないのが実状であった。そこで、これらPTIO類を医薬として用いるために、PTIO類に生体内での反応特異性を付与した製剤の開発が望まれていた。
【0003】この様な状況のなか、上記PTIO類をリポソームに内包して生体内での反応性を調整しようとする試みが為され、これによりPTIO類が生体内で有効に作用するような製剤が得られるようになった。しかし、これら従来のリポソーム内包型のPTIO類製剤では、リポソームの構成成分であるリン脂質がリポソームの膜弾性を維持するために不飽和化合物のリン脂質を含んでいることにより、PTIOが経時的に失活してしまうため、製剤的な保存安定性は得られなかった。つまり従来のリポソーム内包型のPTIO類製剤は、用時調製での使用に限られていた。
【0004】そこで、PTIO類に生体内での反応特異性が付与され、かつPTIO類が製剤内で失活せずに安定して保存されるような、PTIO類の製剤の開発が望まれていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記観点からなされたものであり、PTIO類に生体内での反応特異性が付与され、さらに製剤内でのPTIO類の保存安定性のよいPTIO類の製剤及び医薬組成物を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、従来のリポソーム製剤では生体内でのPTIO類の反応性を調整するために膜弾性を保持することが要求され、そのために不飽和化合物のリン脂質が用いられており、これがPTIO類により酸化されるために製剤の保存安定性が得られなかったが、PTIO類への生体内での反応特異性付与のためにはリポソームの膜弾性は重要な要素ではないことを解明した。
【0007】この様な状況から本発明者らは、上記不飽和化合物のリン脂質の替わりにリン脂質として飽和化合物のリン脂質のみを含有させた球状膜に、特定のPTIO類を内包させて小球体としてPTIO類を製剤化すれば、PTIO類に生体内での反応特異性が付与されて投与時には有効に作用し、且つ、製剤保存時には小球体内部のPTIO類は安定に保存されることを見出し、さらに上記飽和化合物のリン脂質を含有させた球状膜にコレステロール及びその類縁体を含有させて同様にPTIO類を製剤化すれば、前記製剤の保存安定性がより優れたものとなることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】すなわち本発明は、リン脂質を含有する球状膜と、これに内包された一般式(1)で表される化合物及び/又はその生理的に許容される塩と、を含む小球体であって、前記リン脂質が飽和のリン脂質であり、且つ、前記球状膜がコレステロール及びその類縁体から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする小球体である。
【0009】
【化3】

【0010】(但し、式中R1、R2、R3、R4はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、R5はアミノ基、炭素数1〜4のアルキル基を有する2級又は3級のアミノ基、もしくは炭素数1〜4のアルキル基を有する4級アンモニウム基を表す。)
本発明の小球体に用いられる上記一般式(1)に表される化合物として、具体的には、下記式(2)で表される2−(4−(トリメチルアミノ)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−イミダゾロ−1−イロキシ−3−オキサイドが挙げられる。
【0011】
【化4】

【0012】また、本発明の小球体に用いられる上記飽和のリン脂質として、具体的には、水素添加レシチン、フォスファチジルコリン、フォスファチジルイノシトール、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルグリセロール、フォスファチジン酸等を挙げることができる。
【0013】この様な本発明の小球体として具体的には、上記本発明の特徴を持たせたリポソーム等が挙げられる。さらに、本発明は上記本発明の小球体を有効成分として含有する医薬組成物を提供する。
【0014】
【発明の実施の形態】以下に本発明を説明する。まず、本発明の小球体の球状膜により内包されるPTIO類について説明する。
【0015】(1)本発明に用いるPTIO類本発明の小球体には、上記一般式(1)で表される化合物及び/又はその生理的に許容される塩の1種または2種以上がPTIO類として用いられる。これは、PTIO類の内でも上記一般式(1)で表される化合物及び/又はその生理的に許容される塩以外のPTIO類では、本発明の小球体のリン脂質を含有する球状膜中に取り込まれることが困難であるためである。
【0016】本発明に用いられる上記一般式(1)で表される化合物として、具体的には、下記式(2)で表される2−(4−(トリメチルアミノ)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−イミダゾロ−1−イロキシ−3−オキサイド(以下、「トリメチルアミノPTIO」と省略する)、下記式(3)で表される2−(4−(ジメチルアミノ)フェニル)−4,4,5,5−テトラメチル−イミダゾロ−1−イロキシ−3−オキサイド(以下、「ジメチルアミノPTIO」と省略する)等が挙げられるが、本発明において好ましくはトリメチルアミノPTIOが用いられる。
【0017】
【化5】

【0018】
【化6】

【0019】また、本発明の小球体に用いられる上記一般式(1)で表される化合物の生理的に許容される塩として、具体的には、上記一般式(1)で表される化合物の塩酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の鉱酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩等の有機酸塩等が挙げられる。これらの塩のうちでも、本発明において好ましくは塩酸塩が用いられる。さらに塩酸塩のうちでも上記一般式(1)のR5が4級アンモニウムクロライドであるものがより好ましく用いられる。
【0020】この様な本発明に用いるPTIO類、すなわち上記一般式(1)で表される化合物及び/又はその生理的に許容される塩は、いずれも既知の化合物であり、その製造方法も公知である。
【0021】例えば、上記一般式(1)で表される化合物を製造するには、以下の反応式に示すように、ジヒドロキシルアミン誘導体にパラ置換ベンズアルデヒドを反応させ、得られた化合物を二酸化鉛などの金属酸化物を触媒として酸化すればよい。
【0022】
【化7】

【0023】(但し、R1、R2、R3、R4、R5はそれぞれ一般式(1)と同じものを意味する。)
また、上記一般式(1)で表される化合物の生理的に許容される塩は、例えば、一般式(1)に表される化合物と、塩酸、硝酸、リン酸等の鉱酸やクエン酸、シュウ酸、酒石酸等の有機酸などの酸と、を極性又は非極性溶媒中で混合することで容易に得られる。
【0024】この様にして得られる一般式(1)で表される化合物やその生理的に許容される塩は、さらに、再結晶やカラムクロマトグラフィー等の通常の方法により容易に精製できる。
【0025】次に、本発明の小球体において上記PTIO類を内包する球状膜について説明する。
【0026】(2)本発明の小球体の球状膜本発明の小球体の球状膜は、リン脂質と、コレステロール及びその類縁体から選ばれる1種又は2種以上とを含有し、前記リン脂質が飽和化合物のリン脂質のみで構成されることを特徴とする。
【0027】本発明の小球体の球状膜に用いるリン脂質は、上記の様に飽和化合物である。ここで、飽和化合物とは化合物中に不飽和性の炭素原子間多重結合を含まない化合物を、不飽和化合物とは化合物中に不飽和性の炭素原子間多重結合を有する化合物をそれぞれいうが、以下本明細書においては、飽和化合物に分類されるリン脂質を「飽和リン脂質」、不飽和化合物に分類されるリン脂質を「不飽和リン脂質」とそれぞれ記載することとする。
【0028】本発明の小球体を構成する球状膜が含有する飽和リン脂質としては、飽和化合物に分類されるリン脂質であれば特に制限されないが、具体的には、水素添加レシチン、ジミリストイルフォスファチジルコリン、ジステアロイルフォスファチジルコリン、ジパルミトイルフォスファチジルコリン等のフォスファチジルコリン、これと同様なジミリストイル、ジステアロイル、ジパルミトイル等のそれぞれフォスファチジルイノシトール、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルグリセロール、フォスファチジン酸、さらにはこれらのリゾ体等を挙げることができる。これら飽和リン脂質は、通常の方法で製造することができる他、市販品もあるのでこれらの市販品を本発明に用いることも可能である。
【0029】本発明においては、これらの飽和リン脂質のうちでも、安価で入手しやすい水素添加レシチン、ジステアロイルフォスファチジルコリン、ジステアロイルフォスファチジルグリセロール等が、好ましく用いられる。本発明の小球体を構成する球状膜には、これらの飽和リン脂質の1種が単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、本発明の小球体を構成する球状膜における飽和リン脂質の好ましい含有量は1〜90重量%であり、10〜70重量%がより好ましく、20〜60重量%が更に好ましい。
【0030】本発明の小球体を構成する球状膜は上記飽和リン脂質以外にコレステロール及びコレステロール類縁体から選ばれる1種又は2種以上を含有する。前記本発明に用いられるコレステロール類縁体として、具体的には、ヒドロキシコレステロール等が好ましく挙げられる。これら、コレステロール及びその類縁体は、通常の方法により各種基源生物から得られるが、本発明に用いるコレステロールやその類縁体がその基源を問われないことはいうまでもない。また、これら化合物には市販品があるので、これを本発明に用いることも可能である。
【0031】ここで、コレステロールやその類縁体の様な不飽和化合物は、本来、PTIO類によって酸化されやすく、従ってこれら不飽和化合物とPTIO類とを共存させればPTIO類の安定性を損なうものと推定されていたが、コレステロール及びその類縁体は不飽和化合物であってもPTIO類の安定性を損なわず、却って安定性を向上させることが後記実施例に示す通り、本発明者等によって明らかにされている。
【0032】本発明においては、コレステロール及びコレステロール類縁体(以下、「コレステロール類」ということもある)の唯一種を用いることもできるし、これらの2種以上を組み合わせて用いることも可能である。本発明の小球体を構成する球状膜におけるコレステロール及びその類縁体から選ばれる1種又は2種以上の好ましい含有量は、1〜50重量%であり、より好ましくは5〜40重量%であり、更に好ましくは10〜20重量%である。
【0033】本発明の小球体を構成する球状膜は、上記飽和リン脂質およびコレステロール類以外に、本発明の効果を損なわない範囲において、膜特性の改善等を目的として、各種任意成分を含有することが可能である。この様な任意成分としては、1,3−ブタンジオールやプロピレングリコールの様な多価アルコール、POE硬化ひまし油やPOEステアリン酸エステルの様な界面活性剤等を例示することができる。これら多価アルコールや界面活性剤などの成分は、球状膜に柔軟性を付与することができるという長所がある反面、含有量によっては内包するPTIO類が流出し易くなるという短所があるため、含有量はこれらの長所を生かし、本発明の効果を損なわないように設定することが必要である。この様な含有量として、多価アルコールにおいては、1〜20重量%が好ましく、3〜15重量%がより好ましく、5〜10重量%が更に好ましく例示できる。また、界面活性剤においては、0.1〜10重量%が好ましく、0.5〜7重量%がより好ましく、1〜5重量%が更に好ましい。
【0034】(3)本発明の小球体及び医薬組成物本発明の小球体は、リン脂質を含有する球状膜と、これに内包された一般式(1)で表される化合物及び/又はその生理的に許容される塩と、を含む小球体であって、前記リン脂質が飽和のリン脂質であり、且つ、前記球状膜がコレステロール及びその類縁体から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする。
【0035】本発明の小球体における一般式(1)に表される化合物及び/又はその生理的に許容される塩は上記球状膜内に内包される際、こられのPTIO類単独で内包されてもよいし、適当な溶液として内包されてもよい。また、その他任意成分と共に内包されてもよい。PTIO類を溶液として球状膜に内包させる際には、溶媒として水が好ましく用いられ、さらに好ましくは水に各種成分を添加して調製された生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等が用いられる。
【0036】本発明の小球体における上記PTIO類の好ましい含有量は、1〜30重量%であり、5〜20重量%がより好ましく、7〜17重量%が更に好ましい。本発明の小球体は、コレステロール類と、リン脂質として飽和リン脂質とを含有する球状膜の原料成分、PTIO類及びその他任意成分を、通常の薄膜分散法や逆転蒸発法等の方法で処理することにより製造することが可能である。しかし、本発明に用いるリン脂質が全て飽和リン脂質であって不飽和リン脂質を含まないため、これらの方法に用いられる溶媒への溶解性が低いことから、上記処理の前に強度の超音波等による分散処理を行うことが好ましい。また、溶液法、溶液−エクストリュージョン法、薄膜分散−凍結解凍−エクストリュージョン法等で本発明の小球体を製造することも可能であり、これらの方法が本発明においては好ましい製造方法である。また、これらの製造方法のなかでも、薄膜分散−凍結解凍−エクストリュージョン法で本発明の小球体を作製することが特に好ましい。製造方法のより具体的な例を以下に示す。
【0037】飽和リン脂質とコレステロール類およびその他膜形成のための任意成分や有機溶媒をソニケーターでソニケーションし、これに、PTIO類及びその他内包される任意成分をリン酸緩衝生理食塩水等の溶媒に溶解した溶液を加え、更にソニケーションをかける。得られた分散液をエバポレーターにかけて有機溶媒を緩やかに減圧溜去して小球体を得る。これにリン酸緩衝生理食塩水等を加えてよく振盪した後、遠心分離を行い小球体をペレット化する。上清を捨ててペレット化された小球体をよく洗浄する。この振盪−遠心分離−洗浄の作業を、上清にPTIO誘導体の青紫色が消えるまで約4〜5回繰り返し行うことでペレット化された小球体が得られる。
【0038】あるいは、飽和リン脂質とコレステロール類およびその他膜形成のための任意成分を有機溶媒に溶解した後乾固させて薄膜を作製し、これに、PTIO類及びその他内包される任意成分をリン酸緩衝生理食塩水等の溶媒に溶解した溶液を加え、ソニケートし凍結融解させる。これをエクストルーダーにかけて粒径をそろえた後、遠心分離を行い得られた遠沈物(小球体)を取り出すことで、小球体が得られる。
【0039】この様にして得られる本発明の小球体の好ましい形態として、具体的には、リポソームやニオソーム等が例示できるが、本発明においては、リポソームがより好ましいといえる。また、本発明の小球体の好ましい平均粒径として、例えば、10〜500nm程度の平均粒径が挙げられる。さらに、前記平均粒径は、より好ましくは10〜300nm程度であり、更に好ましくは10〜200nm程度である。
【0040】本発明の小球体は、コレステロール類と、リン脂質として飽和リン脂質とを含有する球状膜が、上記PTIO類を内包する形態を有する。これにより、この小球体が製剤として保存される場合には、反応性の高いPTIO類は球状膜に保護されていることから様々な物質との反応による失活がなく、また球状膜成分と反応して失活することもなく、安定して保存される。
【0041】本発明の医薬組成物は、この様にして得られる上記本発明の小球体を含有する。本発明の医薬組成物の剤形は特に限定されず、例えば、注射剤、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液剤、外用剤等、通常用いられている剤形を本発明の医薬組成物の剤形として挙げることができる。また、製剤化に際しては、上記PTIO類内包の小球体以外に、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味矯臭剤、増量剤、被覆剤、糖衣剤、乳化・可溶化・分散剤、安定剤、pH調整剤、等張剤、外用剤基剤等の医薬品で通常用いられる任意成分を任意の量、用いることが可能であり、これら成分と上記PTIO類を通常の方法に従って製剤化することにより本発明の医薬組成物を得ることができる。
【0042】本発明の医薬組成物の投与量、投与方法などは、疾患の種類、症状、患者の年令、体重等を勘案して適宜選択される。注射剤の投与方法としては、静脈内投与、動脈内投与、門脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、皮下投与等が例示できる。
【0043】この様な、PTIO類を安定して含有し、有効に作用させることが可能な本発明の小球体を配合した上記本発明の医薬組成物は、保存時にはPTIO類が安定に保存され、また、投与時にはPTIO類は生体内で患部まで反応性を失うことなく移送され、これを必要とする患部において球状膜を介して特定物質、具体的には一酸化窒素を消去することにより、各種薬理作用を発揮することが可能となる。本発明の医薬組成物は、具体的には、血管保護剤として心筋梗塞などの循環器疾患用の医薬組成物に、呼吸器保護剤として肺炎などの呼吸器疾患用の医薬組成物に、あるいは抗炎症剤、アトピー性皮膚炎治療剤等に用いることが可能である。
【0044】
【実施例】以下に本発明の実施例を説明する。
【0045】
【実施例1】水素添加レシチン33mg、コレステロール11mgおよびエーテル3mlを試験管に秤込み、ソニケーターで5分間ソニケーションし、これに2mMの濃度でトリメチルアミノPTIOを含有する10mMリン酸緩衝生理食塩水溶液(pH7.4、以下「PBS」と省略)を1ml加え、更に15分間のソニケーションをかけた。これをエバポレーターにかけてエーテルを緩やかに減圧溜去して小球体を得た。
【0046】得られた小球体に0.6mlのPBSを加えてよく振盪した後、15000Gで10分間遠心分離を行い小球体をペレット化した。遠心分離の上清を捨ててペレット化した小球体をPBSで洗浄した。さらに、上記振盪−遠心分離−洗浄の作業を、遠心分離の上清にPTIO類の青紫色が消えるまで、4〜5回繰り返し行った。この様にして得られたペレット化した小球体の平均粒径は300nmであった。
【0047】また、上記の小球体の製造においてコレステロールの替わりに水素添加レシチンを用いた以外は、上記と全く同様の方法で比較例1の小球体を製造した。さらに上記の小球体の製造において水素添加レシチンの替わりにレシチンを用いた以外は、上記と全く同様の方法で比較例2の小球体を製造した。
【0048】上記実施例1および比較例1、2で得られた小球体について、電子スピン共鳴(ESR)の測定を行ったところ、どちらの小球体についてもPTIO類特有のニトロオキサイドラジカルの吸収スペクトルが検出された。これらのスペクトルは線幅が広がっており、実施例1及び比較例1、2で得られた小球体内には上記トリメチルアミノPTIOが内包されていることが確認された。
【0049】
【実施例2】ジミリストイルフォスファチジルコリン24mgとコレステロール20mgをクロロホルム30mlで溶解し乾固させて薄膜を作製し、これに2mMの濃度でトリメチルアミノPTIOを含有する10mMPBS(pH7.4)を1ml加え、ソニケートし凍結融解させた。これをエクストルーダーにかけ(フィルターサイズ;200nm、5回)粒径をそろえた後、150000Gで30分間の遠心分離を3回行った。この遠心分離で得られた遠沈物(小球体)を取り出し、これを1mlのPBSで再分散させ小球体の分散液を得た。
【0050】また、上記の小球体の製造においてコレステロールの替わりにジミリストイルフォスファチジルコリンを用いた以外は、上記と全く同様の方法で比較例3の小球体の分散液を製造した。
【0051】実施例2および比較例3で得られた小球体について分散液の状態でESR測定を行ったところ、結果は上記実施例1と同様であり、これらの小球体内にトリメチルアミノPTIOが内包されていることが確認された。
【0052】
【実施例3】ジステアロイルフォスファチジルグリセロール20mg、ジステアロイルフォスファチジルコリン19mgおよびコレステロール5mgをクロロホルム30mlで溶解し乾固させて薄膜を作製し、これに2mMの濃度でトリメチルアミノPTIOを含有する10mMPBS(pH7.4)を1ml加え、ソニケートし凍結融解させた。これをエクストルーダーにかけ(フィルターサイズ;100nm、5回)粒径をそろえた後、150000Gで30分間の遠心分離を3回行った。この遠心分離で得られた遠沈物(小球体)を取り出し、これを1mlのPBSで再分散させ小球体の分散液を得た。
【0053】また、上記実施例3の小球体の製造においてコレステロールの替わりにジステアロイルフォスファチジルグリセロールを用いた以外は、上記と全く同様の方法で比較例4の小球体の分散液を製造した。
【0054】実施例3および比較例4で得られた小球体について分散液の状態でESR測定を行ったところ、結果は上記実施例1と同様であり、これらの小球体内にトリメチルアミノPTIOが内包されていることが確認された。
【0055】
【実施例4】ジパルミトイルトイルフォスファチジン酸18mg、ジステアロイルフォスファチジルエタノールアミン15mgおよびコレステロール11mgをクロロホルム30mlで溶解し乾固させて薄膜を作製し、これに2mMの濃度でトリメチルアミノPTIOを含有する10mMPBS(pH7.4)を1ml加え、ソニケートし凍結融解させた。これをエクストルーダーにかけ(フィルターサイズ;200nm、5回)粒径をそろえた後、150000Gで30分間の遠心分離を3回行った。この遠心分離で得られた遠沈物(小球体)を取り出し、これを1mlのPBSで再分散させ小球体の分散液を得た。
【0056】また、上記の小球体の製造においてコレステロールの替わりにジパルミトイルトイルフォスファチジン酸を用いた以外は、上記と全く同様の方法で比較例5の小球体の分散液を製造した。
【0057】実施例4および比較例5で得られた小球体について分散液の状態でESR測定を行ったところ、結果は上記実施例1と同様であり、これらの小球体内にトリメチルアミノPTIOが内包されていることが確認された。
【0058】
【実施例5】ジステアロイルフォスファチジン酸18mg、ジミリストイルフォスファチジルイノシトール15mg、コレステロール11mgおよびエーテル3mlを試験管に秤込み、ソニケーターで5分間ソニケーションし、これに2mMの濃度でトリメチルアミノPTIOを含有する10mMPBS(pH7.4)を1ml加え、更に15分間のソニケーションをかけた。これをエバポレーターにかけてエーテルを緩やかに減圧溜去して小球体を得た。
【0059】得られた小球体に0.6mlのPBSを加えてよく振盪した後、15000Gで10分間遠心分離を行い小球体をペレット化した。遠心分離の上清を捨ててペレット化した小球体をPBSで洗浄した。さらに、上記振盪−遠心分離−洗浄の作業を、遠心分離の上清にPTIO類の青紫色が消えるまで、4〜5回繰り返し行った。この様にして得られたペレット化した小球体の平均粒径は100nmであった。
【0060】また、上記の小球体の製造においてコレステロールの替わりにジステアロイルフォスファチジン酸を用いた以外は、上記と全く同様の方法で比較例6の小球体を製造した。
【0061】実施例5および比較例6で得られた小球体についてESR測定を行ったところ、結果は上記実施例1と同様であり、これらの小球体内にトリメチルアミノPTIOが内包されていることが確認された。
【0062】
【実施例6】水素添加レシチン33mg、ヒドロキシコレステロール11mgおよび1,3−ブタンジオール4mgを試験管に秤込み、80℃で加熱溶解したものに、これとは別に80℃に加熱した、2mMの濃度でトリメチルアミノPTIOを含有する10mMPBS(pH7.4)の1mlを徐々に加えた後、得られた溶液を100nmのフィルターを装着したエクストルーダーにかけてエクストリュージョン処理した。これを150000G、10分間の遠心分離にかけ、得られた遠沈物(小球体)を取り出した。
【0063】得られた小球体に0.6mlのPBSを加えてよく振盪した後、14000Gで10分間遠心分離を行い小球体をペレット化した。遠心分離の上清を捨ててペレット化した小球体をPBSで洗浄した。さらに、上記振盪−遠心分離−洗浄の作業を、遠心分離の上清にPTIO類の青紫色が消えるまで、4〜5回繰り返し行った。
【0064】また、上記の小球体の製造においてヒドロキシコレステロールの替わりに水素添加レシチンを用いた以外は、上記と全く同様の方法で比較例7の小球体を製造した。
【0065】実施例6および比較例7で得られた小球体についてESR測定を行ったところ、結果は上記実施例1と同様であり、これらの小球体内にトリメチルアミノPTIOが内包されていることが確認された。
【0066】<本発明の小球体の評価>上記各実施例で得られたトリメチルアミノPTIO内包の小球体あるいは小球体分散液について、製剤内でのPTIO類の保存安定性試験及び薬効試験(生体内でのPTIO類の反応特異性の評価)を行った。
【0067】(1)保存安定性試験上記実施例1〜6及び比較例1〜7で得られた小球体または小球体分散液を、室温で4ヶ月間放置した。これらの小球体または小球体分散液について試験開始から経時的に4ヶ月間、ESRの測定を行ったところ、実施例で得られた小球体、小球体分散液では何れも、4ヶ月後のESR測定結果においても、なお製造直後にESRを測定した時とほぼ同じピークが観察された。一方、比較例1及び比較例3〜7で得られた小球体、小球体分散液では何れも、4ヶ月後のESR測定結果において微弱なピークしか認められなかった。さらに、比較例2の小球体では、製造の7日後には、既にニトロオキサイドラジカルの吸収ピークが観察できなかった。
【0068】この結果より、本発明のPTIO類内包の小球体においては、PTIO類を長期的に安定して保存できることがわかった。
【0069】(2)薬効試験本発明のPTIO類内包の小球体について、上記実施例1で得られた小球体を用いて薬効試験を行い、試験管内および生体(組織)内で本発明の小球体のPTIO類が反応特異性を有するかどうかあるいは安定性を有するかどうかを評価した。
【0070】a)試験管内における一酸化窒素消去活性本発明のPTIO類内包小球体の一酸化窒素消去活性を、試験管内において上記実施例1で得られたトリメチルアミノPTIO内包小球体に一酸化窒素を直接反応させた際のESR測定結果を解析する方法によって評価した。これは、PTIO類が一酸化窒素とモル比1:1で反応すると、PTIO類に由来する反応産物、2−フェニル−4,4,5,5−テトラメチルイミダゾロ−1−オキシル(PTI)類が生成し、ESR測定により得られるPTIO類のシグナルとPTI類のシグナル、例えば、図1a)に示すカルボキシPTIOのナトリウム塩のシグナルと、図1b)に示すカルボキシPTIのナトリウム塩のシグナルが全く異なることを利用した評価方法である。
【0071】具体的には、実施例1で得られたトリメチルアミノPTIO内包小球体をPBSで希釈してトリメチルアミノPTIO濃度で100μMになるように各試験管に入れ、これら試験管のそれぞれに、一酸化窒素放出試薬プロピルアミンNONOエートを一酸化窒素添加量で0〜40μMとなるように種々の量添加した。反応を十分に行わせた後、試験管毎(添加量毎)にESR測定を行い、その結果を解析して各一酸化窒素添加量におけるトリメチルアミノPTI生成量を算定しその値から一酸化窒素消去量(μM)を求めた。
【0072】また、比較のために、上記試験において実施例1で得られたトリメチルアミノPTIO内包小球体をPTIOに替えた以外は全く同様の試験を行った。結果を図2に示す。
【0073】この結果より、何の保護もされていない従来のPTIOに比べて、実施例1で得られたトリメチルアミノPTIO内包小球体は、試験管内において、一酸化窒素放出試薬プロピルアミンNONOエートより生じる一酸化窒素を定量的に効率よく消去しており、有効に一酸化窒素と反応していることがわかる。
【0074】b)ウサギ大動脈内皮細胞より産生される一酸化窒素の消去活性一般に、血管内皮細胞から生成する一酸化窒素は、血管組織内の平滑筋を弛緩させる内因性の血管弛緩因子として機能している。そこで、ウサギ大動脈をアセチルコリンにより刺激し、内皮より放出される一酸化窒素による弛緩反応に対する阻害作用について、実施例1で得られたトリメチルアミノPTIO内包小球体、PTIO、および一酸化窒素合成阻害剤Nω−ニトロ−L−アルギニン(L−NNA)を用いて比較試験を行った。
【0075】3本ずつ9群のウサギ大動脈の全てをアセチルコリンにより刺激した。その後、各群のウサギ大動脈をそれぞれ、実施例1で得られたトリメチルアミノPTIO内包小球体、PTIO、L−NNAをそれぞれ30μM、100μM、300μMの各濃度で含有する9種類の検体で処理し、弛緩反応の程度を測定した。なお、実施例1で得られたトリメチルアミノPTIO内包小球体を含有する検体についての上記濃度は、トリメチルアミノPTIOとしての濃度である。コントロールとして上記と同様にアセチルコリンにより刺激しその後何も処理しなかったウサギ大動脈3本の弛緩反応の程度を測定した。コントロールのウサギ大動脈弛緩反応の平均を基に上記各ウサギ大動脈の弛緩反応抑制率を算出した。この弛緩反応抑制率について各試験群毎に平均と標準偏差を求めた。結果を図3に示す。
【0076】この結果から、一酸化窒素合成阻害剤のL−NNAや何の保護もされていない従来のPTIOに比べて、実施例1で得られたトリメチルアミノPTIO内包小球体は、ウサギ大動脈における血管弛緩反応を強く抑制していることがわかり、本発明の小球体の強い一酸化窒素消去活性が明らかとなった。
【0077】c)マクロファージから生成する一酸化窒素の消去反応マクロファージ細胞をインターフェロンγ(IFN−γ)や細菌の内毒素であるリポポリサッカライド(LPS)で刺激するすると、誘導型の一酸化窒素合成酵素が発現され、マクロファージから多量の一酸化窒素が産生される。そこで、IFN−γとLPSによって刺激され、一酸化窒素合成酵素を発現したマクロファージの誘導系に、上記実施例1で得られたトリメチルアミノPTIO内包小球体を添加した後、上記a)と同様のESR測定を行い、そのチャートを解析することで本発明の小球体の一酸化窒素消去作用を評価した。上記ESRの測定結果を図4に示す。
【0078】この結果から、実施例1で得られたトリメチルアミノPTIO内包小球体が、上記IFN−γとLPSによって刺激されたマクロファージ細胞内の一酸化窒素を捕捉することで、小球体内のトリメチルアミノPTIOがトリメチルアミノPTIに変換されることがわかった。従って、本発明のPTIO類内包の小球体は、細胞より放出される一酸化窒素を効率よく消去できるものと考えられる。
【0079】d)PTIO内包小球体の生体内安定性本発明の小球体の生体内での安定性を検討するため、ラットより採取した血液中に上記実施例1で得られたトリメチルアミノPTIO内包小球体とPTIOとをそれぞれ別々に添加して、各添加血液について添加PTIO類の残存量の変化をESRにより経時的に測定した。結果を図5に示す。なお、図5の縦軸は血液中のPTIO類の残存量を添加初濃度に対する百分率で表したものである。
【0080】この結果から、何の保護もされていない従来のPTIOを血液に添加した場合、前記PTIOは血液中の還元物質により速やかに消失していくが、実施例1で得られたトリメチルアミノPTIO内包小球体を添加した場合には、PTIO類を示すESRシグナルは非常に安定で24時間を越えてもほとんど変化しないことがわかった。
【0081】さらに、上記実施例1で得られたトリメチルアミノPTIO内包小球体とPTIOとを2匹のラットのそれぞれに静脈内投与し、その後の血中でのPTIO類の残存量の変化をESRにより経時的に測定して、生体内での安定性を評価した。結果を図6に示す。なお、図6の縦軸は血液中のPTIO類の残存量を添加初濃度に対する百分率で表したものである。
【0082】この結果から、上記試験管内に採取した血液中と同様に、ラットの生体内においても、何の保護もされていない従来のPTIOに比べて、実施例1で得られたトリメチルアミノPTIO内包小球体のトリメチルアミノPTIOは長時間保持されることがわかった。
【0083】以上の結果から、本発明のPTIO類内包の小球体においては、PTIO類が上記特定の球状膜に内包されることで生体内あるいは生体組織内で反応特異性と安定性を共に有し、そのために各種薬効を十分に発揮することが可能であることがわかった。
【0084】
【発明の効果】本発明の小球体は、内包するPTIO類に生体内での反応特異性が付与されており、さらに小球体内でのPTIO類の保存安定性がよいことから、PTIO類の製剤として有用である。また、本発明の医薬組成物は、PTIO類の有する薬効を十分に発揮できるものである。
【出願人】 【識別番号】396009540
【氏名又は名称】赤池 孝章
【出願日】 平成9年(1997)3月25日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】遠山 勉 (外2名)
【公開番号】 特開平10−265383
【公開日】 平成10年(1998)10月6日
【出願番号】 特願平9−71823