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【発明の名称】 麦茶飲料の製造方法
【発明者】 【氏名】谷口 正重
【氏名】笹目 正巳
【氏名】山本 隆士
【氏名】西海 弘二
【氏名】社 三雄
【課題】好適な透明容器詰麦茶飲料を製造すべく、懸濁乃至沈殿を生ぜず、しかも麦茶特有の香味を十分に高められる麦茶飲料の製造方法を提供する。

【解決手段】焙煎大麦を乳化剤を添加した温水に浸漬した後、温水で抽出し、その後ろ過する工程により、過工程の前に意図的に濁り原因物質を沈殿乃至懸濁させてこれを除去することにより麦茶飲料の懸濁乃至沈殿の原因を除いてしまうと共に、麦茶特有の香気成分を乳化させて麦茶特有の香味を一層高めるようにした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 焙煎大麦を、乳化剤を添加した温水に浸漬した後、温水で抽出し、得られた浸漬液及び抽出液をろ過する工程を有する麦茶飲料の製造方法。
【請求項2】 焙煎大麦を、乳化剤を添加した温水に浸漬した後、温水で抽出し、得られた浸漬液及び抽出液を急冷した後ろ過することを特徴とする麦茶飲料の製造方法。
【請求項3】 焙煎大麦の浸漬は、乳化剤を約500〜1250ppm濃度に添加してなる温水にて行う請求項1又は2に記載の麦茶飲料の製造方法。
【請求項4】 浸漬時間は、約20分〜35分である請求項1乃至3のいずれかに記載の麦茶飲料の製造方法。
【請求項5】 抽出する際の温水の温度は、約80〜95℃である請求項1乃至4のいずれかに記載の麦茶飲料の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、特に透明容器詰めに適した麦茶飲料の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】健康志向の高まりとともに無糖飲料の必要性が高まり、特に麦茶は昔ながらの嗜好性飲料或いは止渇性飲料の位置付けから、より高水準・高品質のものが求められるようになってきた。また、麦茶は、従来一般家庭において煮だす等の工程を経て飲用されてきたが、近年アウトドアでの飲用機会の増加や簡便性などの点から麦茶飲料が市販され、最近では透明ボトル容器詰めの麦茶飲料の需要が高まり、これに伴って麦茶飲料の製造分野では、濁りを生じさせない麦茶飲料の製法が着目されている。
【0003】一方、麦茶飲料の製造に関しては、香味を高めるために溶出率を増やすと焙煎麦茶中の澱粉などの濁り原因物質も多く溶出するようになり、懸濁乃至沈殿を生じさせないように溶出率を抑えると香味が淡白になってしまうなどの課題があった。そこで従来は、濁り原因物質の溶出のみを抑えるために、濁り原因成分の少ない焙煎麦を用いる方法や、抽出の段階で溶出量を調整する方法などが開示されてきた。例えば、膨化した焙煎大麦を一定の割合で含む大麦を用いる方法(特開平1−196283号)、焙煎大麦を2種以上の異なる抽出方法にて抽出した後、それらの抽出液を混合する方法(特開平1−296962号)、水に炭酸塩類或いはリン酸塩類とアスコルビン酸とを添加溶解し、その溶液のpHを6〜7に調整した後、これに麦茶原料を加えて原料中のエキス分を抽出し、再度炭酸塩類等を添加溶解してpHを6〜7に調整する方法(特開平1−291774号)などである。
【0004】
【本発明が解決すべき課題】しかしながら、従来の麦茶飲料の製法はいずれも、大麦の種類、焙煎方法、焙煎度合、粉砕法等を限定せざるを得ないため一般的な焙煎大麦を使用することができないうらみがあったほか、麦茶特有の香味を高めるために飲料濃度を一定以上にすると懸濁・沈殿を生じるようになり、結局のところ麦茶特有の香味を高めて深味のある麦茶飲料を製造することは困難であった。
【0005】そこで本発明は、かかる課題に鑑み、懸濁乃至沈殿を生ぜず、しかも一般的な焙煎大麦を用いることができ、それでいて麦茶特有の香味を十分に高めることができる麦茶飲料の製造方法を提供せんとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、かかる課題解決のため、焙煎大麦の濁り原因物質と乳化剤の関係に着目し、焙煎大麦乳化剤を添加した温水にて浸漬することにより、ろ過工程の前に意図的に濁り原因物質を沈殿乃至懸濁させ、この沈殿乃至懸濁をろ過によって除去することにより麦茶飲料の懸濁乃至沈殿を防止すると共に、麦茶特有の香気成分を乳化させて麦茶特有の香味を一層高めるようにしたものである。
【0007】すなわち、本発明の麦茶飲料の製造方法では、焙煎大麦を、乳化剤を添加した温水に浸漬し(第1工程)、その後、温水で抽出し(第2工程)、第1及び第2工程より得られた浸漬液及び抽出液をろ過するようにしたことを特徴とする。乳化剤を添加した温水に焙煎大麦を浸漬することにより、焙煎大麦に含まれる澱粉などの濁り原因物質を吸着させて溶出させ、これらの沈殿乃至懸濁を促進させることができるから、後工程でのろ過により麦茶飲料から濁りの原因を除去することができる。従って、長期保存においても懸濁及び沈殿が生じることがなく、しかも成分濃度を高めても懸濁及び沈殿が生じることがないから香味豊かな麦茶飲料を得ることができる。また同時に、溶出された麦茶特有の油溶性香気成分を乳化させて麦茶特有の香味を一層高めることができる。さらには、乳化剤を添加した温水に浸漬することにより、麦茶飲料の色調に好影響を与えることができるばかりか、静菌効果をも得ることができる。
【0008】ここで、本発明の乳化剤としては、ショ糖脂肪酸エステルを特に好適に使用することができる。乳化剤は、約500〜1250ppm濃度となるように添加するのが濁り防止に効果的であり、特に750〜1000ppm濃度とするのがが好ましい。500ppmより少ないと飲料の濁り防止を効果的に図ることができず、1250ppm濃度より多いと乳化剤の苦みが感じられるようになるばかりか、最終製品とした場合に沈殿乃至懸濁を生じるおそれがでてくる。また、浸漬時間は、約20分〜35分とするのが好ましい。20分より短いと飲料の濁り防止を効果的に図ることができず、35分より長いと雑味が感じられるようになる。
【0009】更に、第2工程での温水抽出により、第1工程で得た油溶性香気成分を安定的に回収することができ、それと同時に甘味、うま味等の麦茶飲料の味の基本となる成分を溶出させることができる。ここで、かかる温水抽出は、シャワーリングにより行うのが好ましい。例えば、第1工程後に浸漬液を回収し、その後シャワーリングによる温水抽出を行うようにすることができる。シャワーリングにより温水抽出すれば、焙煎大麦を破砕することなくうま味等の成分を溶出させることができる。また、抽出する際の温水の温度は、約80〜95℃であるのが好ましい。80℃より低い水温では、うま味がなく淡白となるから香味のバランスが悪くなるようになり、95℃より高い水温では、苦みが感じられるようになるばかりか、最終製品とした場合に沈殿を生じるおそれがでてくる。
【0010】上記第1及び第2工程で得られた浸漬液及び抽出液は、ただちに急冷し、その後ろ過するのが好ましい。急冷することにより、濁り原因物質の沈殿乃至懸濁を一層促進させることができ、最終製品としての麦茶飲料の懸濁及び沈殿の発生をより一層確実に防止できるばかりか、製造時間の短縮を図ることもできる。 ここで、急冷法は、例えばプレート式熱交換機などを用いて約10〜30℃程度に急冷するのがよい。
【0011】また、ろ過の方法としては、遠心分離ろ過と形状選別ろ過とを組合せて行うのが好ましく、特に形状選別ろ過を行うことは効果的である。例えば98℃の温水で第2工程の抽出をする場合、形状選別ろ過を行わなければ沈殿が発生する場合があるが、形状選別ろ過を行えば沈殿の発生を防止することができるなど、形状選別ろ過により麦茶飲料の懸濁及び沈殿の発生を更に一層確実に防止できる。なお、かかる形状選別ろ過では、より微細な成分をも除去できるように、メッシュサイズ50μ以下の多層構造のストレーナーを用いるのが好ましい。
【0012】上記工程により得られた麦茶液は、そのまま或いは必要に応じて希釈し、pHを調整し、常法によって殺菌乃至容器詰めすることができる。例えば、缶詰飲料であれば容器充填後に加熱殺菌を行えばよいし、PETボトル詰飲料であれば殺菌後に容器充填を行うようにすればよい。
【0013】
【発明の実施の形態】
(実施例1)焙煎大麦20gを先ず、所定のショ糖脂肪酸エステル濃度(0ppm、250ppm、500ppm、1000ppm、1500ppm、3000ppm)に調整した90℃、10倍容量の温水に25分間浸漬した。この浸漬液を回収し、続いて当該焙煎大麦をシャワーリングにより90℃の温水で抽出し、原料焙煎大麦を分離して抽出液を回収した。この時、焙煎大麦由来の抽出効率が20%になるように調整した。上記抽出効率は、以下の数式により算出した。
抽出効率(%)=抽出液量×抽出成分濃度×比重÷大麦重量×100(抽出成分濃度は、抽出成分の浸漬液及び抽出液量に対する濃度)
【0014】次に、上記回収した浸漬液及び抽出液を、プレート式熱交換機を用いて約20℃に急冷し、遠心分離ろ過を行った後、メッシュサイズ50μ以下の多層構造ストレーナーを用いて形状選別を行った。その後L−アスコルビン酸及び炭酸水素ナトリウムを添加してpH約6.0に調整し、1000mlにメスアップして調合液を得た。そして、この調合液を密閉容器に充填し殺菌を行い、得られた液の明度(L値)を機械分析(日本電色工業株式会社製色差計(Σ80))により測定すると共に、官能評価及び沈殿評価を行い、その結果を図1及び表1に示した。
【0015】
【表1】

【0016】(実施例2)焙煎大麦20gを、ショ糖脂肪酸エステル濃度1000ppmに調整した90℃、10倍容量の温水に所定時間(10分、20分、30分、40分)浸漬し、その後は実施例1と同様に処理した。そして、得られた液の明度測定(L値)及び官能評価を行い、その結果を図2及び表2に示した。
【0017】
【表2】

【0018】(実施例3)焙煎大麦20gを、ショ糖脂肪酸エステル濃度1000ppmに調整した90℃、10倍容量の温水に25分間浸漬した後、シャワーリングにより所定温度(60℃、70℃、80℃、90℃、98℃)の温水で抽出し、その後は実施例1と同様に処理した。そして、得られた液の官能評価及び沈殿評価を行い、その結果を下記表3に示した。
【0019】(比較例1)また、上記実施例3における形状選別ろ過を行わず、その他の点は実施例3と同様に処理して得られた液の官能評価及び沈殿評価を行い、その結果を上記実施例3の結果と共に表3に示した。
【0020】
【表3】

【出願人】 【識別番号】591014972
【氏名又は名称】株式会社 伊藤園
【出願日】 平成9年(1997)3月14日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 三郎 (外1名)
【公開番号】 特開平10−248539
【公開日】 平成10年(1998)9月22日
【出願番号】 特願平9−61155