| 【発明の名称】 |
鋳鉄製歯車及びその製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】山川 修司
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| 【目的】 |
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| 【構成】 |
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【特許請求の範囲】
【請求項1】 球状黒鉛鋳鉄を含む鋳鉄材からなり、歯の表面に、歯形に沿った高周波焼入れ層が形成され、該焼入れ層の基地組織は実質的にフェライトを含まない組織であることを特徴とする鋳鉄製歯車。 【請求項2】 前記基地組織が球状黒鉛鋳鉄のソルバイト組織である請求項1記載の鋳鉄製歯車。 【請求項3】 前記高周波焼入れ層の厚みが0.3mmないし0.6mmである請求項1及び2記載の鋳鉄製歯車。 【請求項4】 球状黒鉛鋳鉄を含む鋳鉄材からなる歯車を製造するに際し、歯車素材に焼入れ、焼戻し処理を施した後、歯切り加工を行い、次いで歯面に高周波焼入れ処理を施すことを特徴とする鋳鉄製歯車の製造方法。 【請求項5】 エンジンのタイミングギヤに適用される鋳鉄製歯車において、前記歯車が球状黒鉛鋳鉄を含む鋳鉄材からなり、歯の表面に、歯形に沿った高周波焼入れ層が形成され、該焼入れ層の基地組織は実質的にフェライトを含まない組織であることを特徴とする鋳鉄製歯車。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、エンジンのタイミングギヤ等に適用される鋳鉄製歯車、特に球状黒鉛鋳鉄製歯車及びその製造方法に関する。 【0002】 【発明が解決しようとする課題】自動車用エンジン等の高速エンジンのタイミングギヤは、高負荷、高回転で使用され、また歯車の噛み合い時の片当りが生じ易い等、厳しい条件下で使用されるため、通常、炭素鋼及び合金鋼の表面に窒化、軟窒化あるいは、浸炭焼入等の表面硬化処理を施した歯車が使用されている。 【0003】しかしながら、近年エンジンの低騒音化がとみに要求されるようになり、これに対応するタイミングギヤとして、振動、騒音の減衰特性の大きい、つまりヤング率Eの小さい鋳鉄製歯車(鋼材のヤング率E=21000kgf/mm2 程度に対し鋳鉄はE=17000kgf/mm2 程度)が提案されてきている。 【0004】かかる鋳鉄製歯車としては、その強度面や硬さから、球状黒鉛鋳鉄(いわゆるダクタイル鋳鉄、以下このように呼称する)が好適である。然るに、このダクタイル鋳鉄材で以て表面硬化を施した鋼製歯車に匹敵する強度を得るための手段の1つとして、ダクタイル鋳鉄素材からその歯切り成形した歯車の歯形に高周波焼入れを施す手段が提供されている。 【0005】この高周波焼入れについては、通常の焼入れ手法による場合は歯形全体が硬化してしまい靱性が著しく低下するため、鋼材における高周波焼入れ技術をダクタイル鋳鉄材に適用し、歯形の表面に沿った焼入れを施す手法が提案されつつある。 【0006】この技術においてはダクタイル鋳鉄(例えばJIS.FCD700)素材から歯切加工した歯車に歯形の表面に沿った高周波焼入れを施しているが、歯面に沿った焼入れであることから高周波加熱の時間が1秒以下と非常に短いため、黒鉛周りの、フェライトが高周波焼入れ後にも残存し、所望の硬さが得られないという問題点があった。 【0007】本発明の目的は、ダクタイル鋳鉄製歯車において、歯形の歯面に沿った高周波焼入れを施すにあたり、焼入れ後におけるフェライトの残存を阻止し、振動、騒音の減衰機能が大きく、かつ充分な硬さを有してタイミングギヤ等の高負荷、高回転歯車として好適な歯車を提供することにある。 【0008】 【課題を解決するための手段】本発明は上記問題点を解決するもので、その要旨とする第1の手段は、球状黒鉛鋳鉄を含む鋳鉄材からなる歯車であって、歯の表面に、歯形に沿った高周波焼入れ層が形成され、該焼入れ層の基地組織は実質的にフェライトを含まない組織であることを特徴とする。 【0009】また前記第1の手段において、前記基地組織が球状黒鉛鋳鉄のソルバイト組織であること、及び前記高周波焼入れ層の厚みを0.3mmないし0.6mmに構成することも本発明の2つの形態である。 【0010】さらに、本発明方法は、上記構成を備えた鋳鉄製歯車を製造するに際し、歯車素材に焼入れ、焼戻し処理を施した後、歯切り加工を行い、次いで歯面に高周波焼入れ処理を施すことにある。 【0011】本発明に係る鋳鉄製歯車及びその製造方法は上記のように構成されているので、高周波焼入れの前の歯車素材に通常の焼入れを施し、フェライトを消失させ、次いで、焼戻し処理により靱性を回復させた後に高周波焼入れを施すため、焼入れ層の基地組織はフェライトを含まず、歯形には表面に沿った充分な硬さを有する高周波焼入層が形成される。 【0012】これにより、高負荷、高回転歯車として充分な振動、騒音の減衰機能と強度とを備えた歯車が得られる。 【0013】また、上記本発明方法によれば、歯車素材に通常の焼入れ焼戻し処理を施す工程を高周波焼入れの前に加えるという、極めて簡単な作業工程を附加するのみであるので、実質的な製造工程のコストアップを最小限に抑制して、上記のような、振動、騒音の減衰効果が大きくかつ高強度の鋳鉄性歯車を得ることが可能となる。 【0014】 【発明の実施の形態】以下図1〜図5を参照して本発明の実施形態につき詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がないかぎりは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。 【0015】図5には本発明の実施形態に係る球状黒鉛鋳鉄(以下ダクタイル鋳鉄という)製歯車が適用されるエンジンのタイミングギヤ装置の1例が示されており、図において10はクランクケース、11はクランク軸に固定されたクランクギヤ、12はカムギヤ、13はオイルポンプ駆動用のオイルポンプギヤ、14はアイドラギヤ、15は燃料噴射ポンプ駆動用の噴射ポンプギヤ、16はパワステポンプギヤである。 【0016】上記タイミングギヤに使用されるダクタイル鋳鉄製歯車は、その金属組成はJIS.FCD700材相当であり、特記すべき附加成分は無いが、従来のこの種歯車に対して熱処理及び表面硬化処理の内容及び過程が異なる。 【0017】図1には、かかるダクタイル鋳鉄製歯車の製造プロセスが示されている。図1において、ベース素材1には上記のようにJIS.FCD700に相当するダクタイル鋳鉄からなる鋳造素材が用いられる。 【0018】上記FCD700材の基地組織はパーライト+若干のフェライト組織であって、変態温度域以上の温度に加熱されると変態を起こす。この変態による基地組織の改良については、加熱温度や冷却方法によって生成される組織が異なる。 【0019】次に焼入れ(Q)、焼戻し(T)工程2においては、上記ダクタイル鋳鉄素材をA1 変態点以上の800〜900℃程度に加熱後急冷する焼入れ処理を施し、続いてA1 変態点未満の温度に加熱後徐冷する焼戻し処理を施す。 【0020】上記焼入れ、焼戻し処理は、通常なされている手法による。この焼入れ、焼戻し処理により基地組織がソルバイト組織となる。 【0021】次に、機械仕上げ工程3においては、上記焼入れ、焼戻しの調質処理を施された素材に施削及び歯切り加工を施し、歯形を形成する。さらに歯形表面のシェービング仕上げを行い、歯形を高精度に仕上げる。 【0022】次いで、高周波焼入れ工程4においては、規定寸法に仕上げられた歯車の歯形に通常の手法により高周波焼入れを施す。 【0023】前記のように高周波焼入時の加熱時間は非常に短く、このため従来の手法による場合は高周波焼入れ後にもフェライトが残存していたが、この実施形態のものにあっては、前記のように素材に焼入れ、焼戻し処理を施して基地をソルバイト組織としたので、高周波焼入れ後にフェライトが残存することは皆無となる。 【0024】前記高周波焼入れの焼入れ条件は次のように設定する。高周波焼入れを施された歯車の歯形1の焼入れパターンを図2に示す。図2から明らかなように、高周波焼入れ後の硬化層2は歯先部4が深く、歯元部5が浅くなる。 【0025】然るに歯形1の曲げ疲労は歯先部4で最大となるので、該部の曲げ疲労強度を上げるため、Hv≧500を有する有効硬化層深さHを大きくすることが要求される。 【0026】しかしながら、高周波焼入れの加熱時間を長く採って歯元部5の硬化層深さ、Hを大きくし、これを0.7mm以上に採ると上記のように歯元部5よりも硬化深さが大きくなる歯先部4においては、ピッチ円部よりも歯先側が全て硬化層となり、所要の靱性が保持できなくなる。 【0027】一方、上記硬化層深さHが0.2mm以下であると、硬化層が薄く所要の疲労強度が得られない。従って高周波焼入れ後の硬化層深さH=0.3mm〜0.6mmが、歯形1における曲げ疲労強度及び上記のような硬度分布特性を勘案して最も適切な値であり、高周波焼入れ条件、特に加熱時間は焼入れ硬化層の深さがこの範囲になるように設定する。 【0028】以上の工程を経たダクタイル鋳鉄製高周波焼入れ歯車は、歯形1の表面に沿った硬化層の硬さHv500〜700、深さ0.3mm〜0.6mmを得ることができる。尚、以上の説明はモジュール3以下の歯車を例にとって説明したものである。 【0029】尚、以上の手順を経た高周波焼入れ歯車を、必要に応じ研削、ショットピーニング等の最終仕上工程5を経て成品とする。 【0030】 【実施例】次の要目を有する、JIS.FCD700ダクタイル鋳鉄製歯車に、前記の過程で、焼入れ、焼戻し→機械加工(施削、歯切り、シェービング)→高周波焼入れの処理を行い、エンジンのタイミングギヤに適用して、次の(1)、(2)に示すような実験を行った。 【0031】(1)実験用ダクタイル鋳鉄製はすば歯車の要目歯形:並歯モジュール:2.0歯数 :63圧力角 :20°ねじれ角 :19.5°【0032】(2)騒音計測試験エンジン台上で、アイドル回転数における騒音を計測した結果を図3に示す。図3に明らかなように、本発明の実施製品であるFCD700材高周波焼入れ歯車は、従来のS58C材軟窒化歯車に比べ、1.1dBの騒音低減効果が得られた。これは、前記のように鋳鉄材は鋼材に較べてヤング率Eが小さいことから、噛み合い衝撃力が小さく、減衰特性が優れることによる。 【0033】(3)曲げ疲労試験歯形1に正弦波の片振り繰り返し曲げ荷重を与え、歯元部5の曲げ疲労限度を測定して得た疲労限度線図を図4に示す。図4より供試ダクタイル鋳鉄製歯車の曲げ疲労限度は10KN程度で、実用上充分な値である。 【0034】 【発明の効果】以上のように本発明によれば、歯車素材に通常の焼入れ、焼戻しを施す工程を高周波焼入れの前に加えるという、きわめて簡単な作業工程を附加するのみであるので、実質的な製造工程のコストアップを最小限に抑制して、振動、騒音の減衰効果が大きく、かつ充分な曲げ疲労強度を有する鋳鉄製歯車を得ることができる。 【0035】また、請求項3の発明のように高周波焼入れ層の深さを設定すれば、歯先から歯元の歯形全体に亘ってむらなく表面効果がなされ、安定した品質の歯車が得られる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000006286 【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
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| 【出願日】 |
平成7年(1995)8月30日 |
| 【代理人】 |
【弁理士】 【氏名又は名称】高橋 昌久 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開平9−68261 |
| 【公開日】 |
平成9年(1997)3月11日 |
| 【出願番号】 |
特願平7−245410 |
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