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【発明の名称】 遊星歯車減速機構付スタータ
【発明者】 【氏名】松島 圭一

【氏名】細矢 章文

【氏名】大見 正昇

【目的】
【構成】
【特許請求の範囲】
【請求項1】回転力を発生するモータと、スタータの機枠を構成するハウジングと、前記ハウジングに対し回動可能に保持されているインターナルギヤと、前記インターナルギヤと同軸に軸支され、前記モータに回転駆動されるサンギヤと、前記インターナルギヤ及び前記サンギヤと噛み合い、前記サンギヤに駆動される複数の遊星ギヤと、前記遊星ギヤを自転自在に軸支している遊星ギヤ保持部が一端に形成されており、前記保持部からトルク伝達される駆動軸と、からなる遊星歯車減速機構をもつスタータにおいて、前記インターナルギヤにかかるトルクによって、所定の初期トルク以下では前記ハウジングに対して前記インターナルギヤを固定する静止係合状態と、所定の制限トルク以上では前記ハウジングに対して前記インターナルギヤの回動を許容する乗り越し状態と、前記初期トルクより大きく前記制限トルクより小さいトルクが入力されたときには、その入力トルクに応じて前記ハウジングに対して前記インターナルギヤの回転角変位を許容する回転変位係合状態のうちいずれかの保持状態を有し、前記ハウジングに対する前記インターナルギヤの相対回転角位置により、静止係合状態、回転変位係合状態、乗り越し状態、回転変位係合状態の順で繰り返し連続する保持状態を有する遊星歯車減速機構付スタータ。
【請求項2】前記の静止係合状態、回転変位係合状態及び乗り越し状態は、前記ハウジング及び前記インターナルギヤのうち一方に、周方向に凹凸が形成されている凹凸面と、前記ハウジング及び前記インターナルギヤのうち他方に固定され、前記凹凸面に押圧力をもって当接している当接係止部材と、によってなされることを特徴とする請求項1記載の遊星歯車減速機構付スタータ。
【請求項3】前記凹凸面は、前記インターナルギヤの前記モータに背向する端面に形成されており、前記当接係止部材は、板バネからなるバネ弾性部材であることを特徴とする請求項2記載の遊星歯車減速機構付スタータ。
【請求項4】前記当接係止部材は、前記駆動軸まわりに配設されているリング状の板バネからなり、前記凹凸面に当接している複数の切り起こし部または凸設部を周上に等間隔で有する請求項2記載の遊星減速機構付スタータ。
【請求項5】前記当接係止部材を前記凹凸面に押圧付勢しているゴム弾性部材を有する請求項2記載の遊星歯車減速機構付スタータ。
【請求項6】回転動力を発生するモータと、スタータの機枠を形成するハウジングと、前記ハウジング内に回動可能に保持されているインターナルギヤと、前記ハウジング内に前記インターナルギヤと同軸的に軸支され、前記モータに回転駆動されるサンギヤと、前記インターナルギヤおよび前記サンギヤと噛み合い、前記サンギヤに駆動される複数の遊星ギヤと、前記遊星ギヤを自転自在に保持している遊星ギヤ保持部が一端に形成されており、前記ハウジングに回転自在に軸支されて前記保持部からトルクが伝達される駆動軸と、からなる遊星歯車減速機構をもつスタータにおいて、前記ハウジングおよび前記インターナルギヤの互いに対向する面に、周方向に凹凸が形成されている二つの凹凸面と、両前記凹凸面の間に挟持され、両前記凹凸面に押圧力をもって当接している当接係止部材と、を有することを特徴とする遊星歯車減速機構付スタータ。
【請求項7】前記当接係止部材は、板バネからなるリング状の波板である請求項6記載の遊星歯車減速機構付スタータ。
【請求項8】両前記凹凸面のうち、一方は前記インターナルギヤの外周面に、他方は前記外周面に対向する前記ハウジングの内壁面に形成されており、前記当接係止部材は、丸棒状のゴム弾性体およびパイプ状のバネ弾性体のうちいずれかである請求項6記載の遊星歯車減速機構付スタータ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エンジンを始動するスタータの技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】近年の自動車等の車両に搭載されるスタータには、エンジンルーム内が高密度化していることから小型化が求められており、同時に、燃費改善等を目的として軽量化も要求されている。そこで、小型軽量な内部減速型スタータが現在では主流となっており、将来もこの傾向は強まるものと見られている。
【0003】内部減速型スタータは、小型軽量の高速回転モータと、同モータの回転を減速してトルクを高める減速機構とをスタータ内部に装備することにより、始動時の軸出力を落とすことなくスタータを小型軽量化したものである。上記減速機構にはいくつか種類があるが、そのうち遊星歯車減速機構は、比較的高い減速比が得られるので小型軽量化に好適である。この遊星歯車減速機構を内蔵しているスタータを、遊星歯車減速機構付スタータと呼んでいる。
【0004】小型軽量化には、低トルクでも高速回転のスタータモータにより、高い減速比の減速機構でトルクを高めてピニオンを駆動することが有効であるが、その一方で減速機構の減速比を高めることにはペナルティも伴う。すなわち、減速比が高いと、スタータモータを小型化することができ、アーマチュアの慣性モーメントも小さくなる。しかし、ピニオンを駆動する駆動軸側から観測すると、アーマチュアの等価慣性モーメントは減速比の二乗に比例して増大するので、減速比が高いほど駆動軸まわりの慣性モーメントは大きくなる傾向にある。駆動軸まわりの慣性モーメントが増大した結果、回転しているスタータのピニオンギヤがエンジン側のリングギヤと噛み合った瞬間に生じる衝撃(噛み合い衝撃)はより激しいものとなり、減速機構などに加わる衝撃荷重が増している。その結果、減速機構やハウジング、ならびにスタータの取り付け部などに対する強度上の要求が厳しくなり、せっかくの高い減速比による軽量化効果が減殺されることになりかねないという問題を生じていた。また、噛み合い衝撃に伴って発生する騒音の増大もあり、防音上の問題も生じていた。
【0005】本願出願者は、これらの問題を解決する目的で特開昭63−277859号公報に開示されている技術を開発し、同技術を遊星歯車減速機構付スタータに応用した製品をすでに市場に送りだしている。この遊星歯車減速機構付スタータ(従来技術)は、遊星歯車減速機構のインターナルギヤとともに回転する摩擦円盤と、同円盤を所定の押圧力で挟持する部材とを備えている。同部材は、ハウジングに対して固定されているので、インターナルギヤにトルクがかかると摩擦円盤との間に反力として摩擦トルクを生じ、インターナルギヤにかかるトルクが所定値を越えるまでは、インターナルギヤの回転を許さない。インターナルギヤに噛み合い衝撃などで過大なトルクがかかると、上記部材と摩擦円盤との間に滑りが生じてインターナルギヤが回転し、過大なトルクの衝撃を緩和する。こうして噛み合い衝撃が緩和されるので、上記遊星歯車減速機構付スタータでは、衝撃荷重の緩和による強度部材の軽量化と衝撃騒音の緩和による低騒音化とが実現されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記遊星歯車減速機構付スタータによれば、噛み合い衝撃は緩和されているが、バックラッシに起因してエンジン始動時の騒音が生じ、その騒音が無視できないという問題をなお残している。すなわち、遊星歯車減速機構付スタータにおいては、減速機構のないスタータに比べて、遊星歯車減速機構を構成しているサンギヤ、遊星ギヤおよびインターナルギヤと歯車が多く、それらの噛み合いも多い。それゆえ、歯車の噛み合い部分で生じるバックラッシが重なるので、全体のバックラッシは減速機構のないスタータよりもかなり大きくなる。
【0007】一方、通常のピストンエンジンでは、クランク軸が回転するのに伴い、負荷トルクが変動する。この負荷トルク変動は、クランク軸の角度位置によっては、負荷トルクの符号が正負反転することもある。この負荷トルク変動に伴うクランク軸の角速度の脈動を抑制する目的でフライホイールが設けられているが、角速度の脈動(すなわち正負に周期変化する角加速度)をゼロにすることはできない。
【0008】それゆえ、角速度が脈動するフライホイールは、その外周に形成されているリングギヤを介して逆に上記スタータのピニオンギヤを加速することもあり、その場合にはバックラッシによる騒音が生じる。前述のように、遊星歯車減速機構付スタータではバックラッシが大きく、かつ、高い減速比により等価慣性モーメントも大きくなっているので、発生する騒音は無視できないほど大きくなることもある。
【0009】つまり、従来技術の遊星歯車減速機構付スタータにおいては、エンジン始動時にバックラッシに起因する騒音が生じ、その騒音はバックラッシが大きい分だけ減速機構のないスタータよりも大きいという不都合がある。そこで、本願発明は、エンジン始動時にスタータ内のバックラッシに起因して発生する騒音(以下、バックラッシ騒音と呼ぶ)が、軽減されている遊星歯車減速機構付スタータを提供することを解決すべき課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】上記課題を解決するために、発明者らは以下の手段を発明した。
(第1手段:一方に凹凸面)本発明の第1手段は、請求項1ないし2に記載の遊星歯車減速機構付スタータである。
【0011】本手段では、ハウジングに対するインターナルギヤの保持状態を、静止係合状態、回転変位係合状態及び乗り越し状態の3種類のうちいずれかの状態にあるように、インターナルギヤが保持されている。本手段の遊星歯車減速機構付スタータは、遊星歯車減速機構がこのように構成されているので、ハウジングとインターナルギヤとの関係には、遊星ギヤからインターナルギヤにかかるトルク次第で次の四通りの状態が起こる。
【0012】第1の状態は無負荷状態で、この状態ではインターナルギヤにトルクがかかっておらず、インターナルギヤは静止係合状態でハウジングに対して固定されている。第2の状態は通常負荷状態で、この状態ではインターナルギヤにトルクはかかるものの、噛み合い衝撃トルクほどの大きなトルクはかからない。それゆえ、インターナルギヤは所定の初期トルクより大きなトルクがかかるとわずかに回動するものの、ハウジングに対して回転変位した分だけ回転規制トルクが上がり、インターナルギヤの回動は止まる。すなわち、インターナルギヤにかかるトルクが初期トルクより大きく制限トルクより小さい場合には、インターナルギヤはそのトルクに見合った変位分しか回動しない。
【0013】その結果、この通常負荷状態では本手段のインターナルギヤは、回動(滑り)を続けることがなくハウジングに対して停止する。したがって、上記通常負荷状態においては、本手段でもインターナルギヤがハウジングに固定されている遊星歯車減速機構付スタータと同様に、モータ軸出力は少ない損失で遊星歯車減速機構を介して駆動軸に伝達される。
【0014】第3の状態は過大負荷状態で、この状態では噛み合い衝撃トルクのように、制限トルク以上の過大なトルクがインターナルギヤにかかり、インターナルギヤはハウジングに対して回動する。それゆえ、インターナルギヤにかかった過大な負荷は、インターナルギヤの回転によって過大な部分が吸収され、直接ハウジングに伝達されることがないので、スタータにかかる衝撃荷重は緩和される。また、モータのアーマチュア軸につながっているサンギヤに伝達される衝撃トルクも、インターナルギヤが回転することにより減殺される。
【0015】したがって、本手段によれば、噛み合い衝撃などの衝撃荷重を吸収することができ、各構成部材の強度に対する要求を厳しくする必要がなくなるので、軽量小型な遊星歯車減速機構付スタータを安価に提供することができる。なお、過大負荷状態が終わると、インターナルギヤが回転しない前述の通常負荷状態または無負荷状態に、速やかに復帰する。
【0016】第4の状態は変動負荷状態で、エンジンのクランク軸の回転に伴って駆動軸にかかる負荷トルクが変動し、その負荷の値が正値ばかりではなく、ゼロまたは負値をとる状態である。この状態では、脈動する上記負荷に起因してインターナルギヤにかかるトルクの向きがかわり、同トルクは上記負荷と同じく変動して、間欠的にゼロまたは負値をとる。
【0017】すると、インターナルギヤは静止係合状態を挟んだ前後の回転変位係合状態間を行き来して微小な回動をする。すなわち、インターナルギヤは、トルク変動に対応して比較的小さな回転角度だけ回動して往復し、変動トルクを吸収する。インターナルギヤは、その微少な往復運動につれてハウジングに対して所定の回転規制トルクが与えられる。それゆえ、駆動軸にかかる負荷が間欠的に負値をとることがあっても、遊星歯車減速機構内の歯車の噛み合いが緩んでバックラッシによるガタ付きを起こすことがない。その結果、本手段の遊星歯車減速機構付スタータでは、高い減速比により大きな等価慣性モーメントを有するも、バックラッシに起因する始動時の騒音(バックラッシ騒音)がほとんど起こらず、大きく低減されている。
【0018】したがって、本手段によれば、従来技術と同様に小型軽量な遊星歯車減速機構付スタータでありながら、従来技術と比較してバックラッシ騒音を軽減することができる。その結果、乗員や周囲の人に聞こえるエンジン始動時の騒音は、全体として低減されるという効果がある。
(第2手段)本発明の第2手段は、請求項3記載の遊星歯車減速機構付スタータである。
【0019】本手段では、インターナルギヤのモータと背向する面(以下、背向面と呼ぶ)に形成されている凹凸面に、板バネからなるバネ弾性部材(以下、スプリングと呼ぶ)が当接して、前述の第1手段と同様の作用効果を生じる。ここで、製造時にインターナルギヤの背向面に凹凸面を形成するのは比較的容易であり、スプリングは打ち出し加工やプレス加工で製造容易である上、ハウジングへの固定も容易である。また、スタータ組み立ての過程で、スプリングが固定されている同ハウジングにインターナルギヤを挿入する際に、スプリングがインターナルギヤの挿入を妨げることがないので、組み立ても容易である。
【0020】したがって本手段によれば、前述の第1手段の効果に加えて、製造が容易で安価に生産することができるという効果がある。さらに本手段では、凹凸面とスプリングとは、インターナルギヤの背向面に接する狭い中空円筒状の空間に収まっており、ハウジングのインターナルギヤを格納している部分の直径を拡大させることがない。それゆえ本手段によれば、凹凸面およびスプリングの装備による遊星歯車減速機構付スタータの容積増大は、最小限に押さえることができるという効果もある。
【0021】(第3手段)本発明の第3手段は、請求項4記載の遊星歯車減速機構付スタータである。本手段では、バネ弾性部材は、複数の切り起こし部を有するリング状の板バネ部材であるから、バネ合金の板材から打ち抜き・打ち出し・曲げなどのよく普及した加工方法で容易に製造することができる。また、形状がリング状であるから、ハウジングに固定する際に、少なくとも一か所が固定されていれば駆動軸まわりに回動することがないので、バネ弾性部材の固定に要する工数を節減することが可能である。したがって本手段によれば、前述の第1手段の効果に加えて、本発明の遊星歯車減速機構付スタータの製造が、安価かつ容易になるという効果がある。
【0022】また、本手段では、複数の切り起こし部が周上に等間隔で配設されているので、インターナルギヤにかかる押圧力が軸まわりでほぼ均等になる。したがって本手段によれば、前述の第1手段の効果に加えて、アンバランスな押圧力がインターナルギヤにかからないので、インターナルギヤや遊星ギヤ等に偏った摩滅が生じることがないという効果もある。
【0023】(第4手段)本発明の第4手段は、請求項5記載の遊星歯車減速機構付スタータである。本手段では、ゴム弾性部材に押圧付勢されてバネ弾性部材が凹凸面に当接している。それゆえ、バネ弾性部材のみが発揮する押圧力よりも大きな力でバネ弾性部材は凹凸面に当接し、凹凸面が形成されているインターナルギヤの直径が小さくても、インターナルギヤの回動を押し止めるのに十分な摩擦力または当接力を生じる。したがって本手段によれば、前述の第1手段の効果に加えて、小型の遊星歯車減速機構であっても、十分に強力な衝撃緩和作用およびバックラッシ騒音の低減効果が得られる。
【0024】また、ゴム弾性部材には、バネ弾性部材よりも強力な衝撃吸収作用やダンピング作用がある。本手段では、ゴム弾性部材がバネ弾性部材に押圧接触しているので、ゴム弾性部材は、バネ弾性部材に生じた振動やハウジング内の騒音などを吸収して速やかに減衰させる。したがって本手段によれば、前述の第1手段の効果に加えて、よりいっそう始動時の騒音が低減されるという効果がある。
【0025】(第5手段:両方に凹凸面)本発明の第5手段は、請求項6記載の遊星歯車減速機構付スタータである。本手段では、ハウジングおよびインターナルギヤの双方の互いに対向する面に、周方向に凹凸が形成されている凹凸面がそれぞれ設けられていて、この両凹凸面の間に弾性部材が挟持されている。それゆえ、ピニオンギヤの噛み合い衝撃時のように、インターナルギヤにかかる回転トルクが極めて大きい場合には、弾性部材と少なくとも一方の凹凸面との間に滑りもしくは転がりが生じて、衝撃荷重は緩和される。また、インターナルギヤにかかるトルクが所定の範囲で変動する場合には、弾性部材は凹凸面の凸部を乗り越えて移動することがなく、変動するトルクに応じ凹凸面の斜面を昇り降りしてトルク変動を吸収する。その結果、正常時のトルク方向と逆方向にインターナルギヤが僅かに回動して歯面の間を詰め、隙間が空くことを防ぐので、バックラッシ騒音の発生が防止される。インターナルギヤにかかるトルクが大きく弾性部材が凹凸面の凸部を越えて移動する場合を除き、遊星歯車減速機構はモータの動力を低損失で駆動軸に伝達する。
【0026】したがって本手段によれば、噛み合い衝撃を緩和しながら、バックラッシ騒音の発生も防止することができ、前述の第1手段の効果と同様の効果を異なる構成で挙げることができる。また、弾性部材は両凹凸面の間に挟持されているだけであるから、弾性部材の固定作業が必要なく、組み立て工数の節減になるという効果がある。さらに、固定手段の不具合による故障の可能性がないので、信頼性も向上するという効果がある。
【0027】(第6手段)本発明の第6手段は、請求項7記載の遊星歯車減速機構付スタータである。本手段では、弾性部材は板バネからなるリング状の波板であるから、製造が容易であるばかりではなく、板バネのバネ弾性力により凹凸面との間に適正な押圧力が生じ、凹凸面との摩擦によるダンピングが得られる。
【0028】したがって本手段によれば、前述の第5手段の効果に加えて、弾性部材の製造が安価であり、また、十分なダンピングが得られるという効果がある。
(第7手段)本発明の第7手段は、請求項8記載の遊星歯車減速機構付スタータである。本手段では、両凹凸面は同軸の円筒面状に形成されており、その間に挟持される弾性部材は、丸棒状のゴム弾性体(前者)またはパイプ状のバネ弾性体(後者)である。
【0029】弾性部材が前者の場合には、インターナルギヤの回動に伴い、ゴム丸棒が両凹凸面の間を転がって凹凸面の斜面にかかり、同斜面への押圧力の分力をもってハウジングにトルクを伝達する。噛み合い衝撃などにより極めて大きいトルクがインターナルギヤにかかった場合には、ゴム丸棒は凹凸面の凸部を越えて転がり、インターナルギヤが回動するので、衝撃荷重は緩和される。インターナルギヤにかかるトルクが所定の範囲で変動する場合には、ゴム丸棒は変動するトルクに応じて凹凸面の斜面を昇り降りし、インターナルギヤは微小に往復回動してトルク変動を吸収する。その結果、正常時のトルク方向と逆方向にインターナルギヤが僅かに回動して歯面の間を詰め、隙間が空くことを防ぐので、バックラッシ騒音の発生が防止される。噛み合い衝撃時のようにインターナルギヤにかかるトルクが大きく、ゴム丸棒が凹凸面の凸部を越えて転がる場合を除き、遊星歯車減速機構はモータの動力を低損失で駆動軸に伝達する。
【0030】したがって、この場合にも第5手段と同様の効果が得られるほか、弾性部材が丸棒状のゴム弾性体であり、両凹凸面の間を転がるだけであるから、よりいっそうエンジン始動時の騒音を静粛にすることができるという効果がある。一方、弾性部材が後者の場合にも、同様の衝撃荷重緩和作用とバックラッシ防止作用が発揮される。さらにこの場合には、弾性部材をパイプ材を切断するだけで製造することができるから、弾性部材が安価である。また、弾性部材を摩滅しにくい合金などの材料で形成することができるので、より寿命が長い遊星歯車減速機構付スタータを提供することができる。
【0031】
【発明の実施の形態】本発明の遊星歯車減速機構付スタータの実施の形態については、当業者に実施可能な理解が得られるよう、以下の実施例等で明確かつ充分に説明する。
〔実施例1〕
(実施例1の全体構成)本発明の実施例1としての遊星歯車減速機構付スタータは、図1に示すように、図中左方を前方とすると、前方から順に、ドライブハウジング1、ピニオン移動体53,54を駆動する駆動軸5、遊星歯車減速機構6およびモータ30を有する。モータ30は、ヨーク36の内周に固定されている界磁部32と、モータ軸33とともに回転する回転子31とからなる。遊星歯車減速機構6は、モータ30の軸出力の回転数を数分の一に減速して駆動軸5に伝達し、駆動軸5から一方向クラッチ53を介してピニオンギヤ54を駆動する。
【0032】本スタータはまた、ドライブハウジング1に保持されているマグネットスイッチ92とドライブレバー93とを備えている。スタータ作動時には、マグネットスイッチ92によりドライブレバー93を介して、一方向クラッチ53およびピニオンギヤ54が前方に押し出され、エンジン側のリングギヤFと噛み合う。前述のようにピニオンギヤ54は、モータ30および遊星歯車減速機構6により減速駆動されているので、リングギヤFを回転駆動してエンジン(図示せず)を始動する。
【0033】(実施例1のドライブハウジング1の構成)ドライブハウジング1には、センタケース12およびプレート13によって内包されている遊星歯車減速機構6を挟んで、モータ30が締結されている。なおここで、本発明におけるハウジングには、本実施例のドライブハウジング1およびセンタケース12が相当する。
【0034】ドライブハウジング1は、アルミ合金キャスティング部材であり、スタータの前端部の外形を形成するとともに、マグネットスイッチ92の前端部、ドライブレバー93、駆動軸5、クラッチ53およびピニオンギヤ54、ならびにセンタケース12を保持している。センタケース12は、同軸の外筒部および内筒部と両円筒部を連結している円盤状の平板からなる鋼板絞り部材であり、その内筒部で駆動軸5を軸支している。ここで、駆動軸5の後端部には軸孔が形成されており、モータ軸33の先端部が挿入されている。したがってセンタケース12は、駆動軸5の後端部とモータ軸33の先端部とを、直接間接に軸支してドライブハウジング1およびモータケース36に対し保持している。また、センタケース12は、その外筒の開口端(後端部)の内周に、プレート13を同心的に保持している。
【0035】プレート13は、縁が立っている円盤形状の鋼板プレス成形部材であって、遊星歯車減速機構6とモータ30とを隔てる隔壁であり、モータ30の前蓋をも兼ねている。
(実施例1の遊星歯車減速機構の構成)遊星歯車減速機構6は、図2に示すように、前述のセンタケース12およびプレート13によって形成される空間のなかに構成され、各部材が所定の動作をすることができるように保持されている。すなわち、遊星歯車減速機構6は、インターナルギヤ2、サンギヤ3、複数の遊星ギヤ4、遊星ギヤ保持部50が一端に形成されている駆動軸5、ならびにこれらを収容するセンタケース12およびプレート13から構成されている。
【0036】インターナルギヤ2は、内周面21の全周に内歯が形成されている略中空円筒状の歯車部材であり、センタケース12内に回動可能に保持されている。インターナルギヤ2は、後方(図中右方向)への変位をプレート13、前方(図中左方向)への変位を後述のスプリング8によって所定範囲に規制されている。サンギヤ3は、モータ軸33の前端部付近に形成されている外歯であり、駆動軸5の後端部の軸孔に嵌め込まれた軸受け34を介して、インターナルギヤ2と同軸に軸支されている。
【0037】遊星ギヤ4は、複数個が円周上に等間隔で配設されており、外側ではインターナルギヤ2の内歯21と噛み合い、内側ではサンギヤ3の外歯と噛み合ってサンギヤ3に駆動される。全ての遊星ギヤ4は、中空円筒状の軸受け40を介して、駆動軸5の後端部に形成されている遊星ギヤ保持部50に回転自在に軸支されている。遊星ギヤ保持部50は、駆動軸5の一部として形成されているフランジ部51と、駆動軸5の軸心と平行にフランジ部51に設けられている貫通孔に締まり嵌めで固定されている遊星ギヤ軸52とから、構成されている。遊星ギヤ4は、遊星ギヤ軸52まわりに自転可能であるとともに、遊星ギヤ軸52ごと駆動軸5の回転につれて公転移動することが可能である。
【0038】なお、駆動軸5とモータ軸33との嵌合い深さは、ワッシャ35により規制されており、駆動軸5の後方への変位は、サークリップ(抜け止め金具)55およびスラストワッシャ56で規制されている。また、プレート13には、遊星ギヤ4の抜け止めとしての作用もある。以上の構成の遊星歯車減速機構6では、モータ30に駆動されてモータ軸33の外周に形成されているサンギヤ3が回転しても、センタケース12に保持されているインターナルギヤ2は所定のトルクを越えるまでは回転しない。それゆえ、遊星ギヤ4は、回転するサンギヤ3と回転していないインターナルギヤ2との間に挟持され、両ギヤ2,3と噛み合っているので、自転しながらサンギヤ3の回転方向に公転し、遊星ギヤ保持部50を介して駆動軸5を回転駆動する。その際、インターナルギヤ2には、サンギヤ3および駆動軸5の回転方向と反対方向に回転しようとするトルクがかかり、このトルクはスプリング8を介してセンタケース12に伝達されている。
【0039】(実施例1の凹凸面およびスプリング)さて、前述の遊星歯車減速機構6の構成要素のうち、インターナルギヤ2の前端面24の外周部には、周方向に凹凸が配設されている凹凸面7が形成されている。一方、センタケース12には、バネ弾性部材としてのスプリング8が固定されており、スプリング8は凹凸面7に押圧力をもって当接している。
【0040】すなわち凹凸面7は、図3に示すように、交互に配列されている台形の凸部75および凹部76から形成されており、順に頂面71、下り斜面72、底部73、上り斜面74とから形成されている。スプリング8は、先端付近に平面状に形成されている平面部81と、平面部81を支持している腕部82と、平面部81から斜めに連なる斜面部84とを有する。斜面部84および腕部82は、インターナルギヤ2に加わるトルクによる通常の変位方向Rに逆らわない方向に設けられている。
【0041】スプリング8は、図4(a)に示すように、略リング状の板バネのプレス部材であり、中空円盤状のリング部83の外周から周方向等間隔(60°毎)に、六本の腕部82および当接部81(図4(b)参照)が切り起こされている。リング部83の内周には、中心方向に突出部が周方向等間隔に形成されており、同突出部にはビス孔80がそれぞれ一つ貫通している。スプリング8は、再び図2に示すように、ビス孔80を貫通してセンタケース12のネジ孔に締結されているビス87により、リング部83でセンタケース12に固定されている。三本のビス87には、それぞれ抜け止め処理が施されている。
【0042】なお、凹凸面7に形成されている凹凸の数は、スプリング8の腕部82の数(本実施例では六本)の整数倍であって周方向に等間隔で配設されている。したがって、スプリング8の六本の腕部82の斜面部84はいずれも、凹凸面7の同じ斜面または平面に当接しており、均等に押圧力や摩擦トルクを生じる。
(実施例1の主な作用効果)本実施例の遊星歯車減速機構付スタータは以上述べたように構成されているので、次のように優れた作用効果を発揮する。
【0043】すなわち、インターナルギヤ2の凹凸面7とセンタケース12に固定されているスプリング8との当接部分では、遊星ギヤ4からインターナルギヤ2にかかるトルクの大小や変動幅により、次の四通りの状態のうちいずれかが起こる。なお、以下の説明では図2および図3を参照すると理解しやすい。第一の状態は無負荷状態で、この状態ではインターナルギヤ2にトルクがかかっていないので、スプリング8は、凹凸面7の斜面72,74に当接して安定している。
【0044】第二の状態は通常負荷状態で、この状態ではインターナルギヤ2にトルク(図3にRで外周部の回転方向を表示)はかかるものの、噛み合い衝撃トルクほどの大きなトルクはかからない。それゆえ、インターナルギヤ2はわずかに回動するものの、凹凸面7の凸部75を形成している上り斜面74がスプリング8の斜面部84に当接して、インターナルギヤ2のR方向への回動は止まる。つまり、この状態ではスプリング8が凹凸面7の上り斜面74を登って凸部75を越えるまでインターナルギヤ2が回動することはない。すなわち、スプリング8の斜面部84が凹凸面7の上り斜面74のどこかで止まるまでしか、インターナルギヤ2は回動しない。
【0045】その結果、この通常負荷状態では、インターナルギヤ2は、センタケース12に固定されているスプリング8に対して滑り(回動)を続けることがなく、インターナルギヤ2はドライブハウジング1に対して停止している。したがって、上記通常負荷状態においては、本実施例のスタータは、インターナルギヤがハウジングに固定されている通常の遊星歯車減速機構付スタータと同様に、モータ軸出力は少ない損失で遊星歯車減速機構6を介して駆動軸5に伝達される。
【0046】第三の状態は過大負荷状態で、この状態では噛み合い衝撃トルクのように過大なトルクがインターナルギヤ2にかかり、スプリング8の斜面部84は凹凸面7の上り斜面74を登って凸部75を越え、インターナルギヤ2はスプリング8の摩擦力と押圧力の分力とに打ち勝ってR方向へ回動する。それゆえ、インターナルギヤ2にかかった過大な負荷トルクは、インターナルギヤ2の回転によって過大な部分が吸収され、直接ドライブハウジング1に伝達されることがないので、遊星歯車減速機構6にかかる衝撃荷重は緩和される。また、モータ軸(アーマチュア軸)33に形成されているサンギヤ3に伝達される衝撃トルクも、インターナルギヤ2が回転することにより減殺される。
【0047】したがって、本実施例によれば、噛み合い衝撃などの衝撃荷重を吸収することができ、各構成部材の強度に対する要求を厳しくする必要がなくなるので、軽量小型な遊星歯車減速機構付スタータを安価に提供することができる。なお、過大負荷状態が終わると、インターナルギヤ2が回転しない前述の通常負荷状態または無負荷状態に、速やかに復帰する。
【0048】第四の状態は変動負荷状態で、エンジン(図略)のクランク軸(図略)の回転に伴って駆動軸5にかかるトルク負荷が変動し、その負荷の値が正値ばかりではなく、ゼロまたは負値をとる状態である。この状態では、脈動する上記負荷に起因してインターナルギヤ2にかかるトルクの向きがかわり、同トルクは上記負荷と同じく変動して、間欠的にゼロまたは負値をとる。
【0049】すると、スプリング8の斜面部84は、凹凸面7の上り斜面74を変動するトルクに応じて昇り降りして、インターナルギヤ2の微小な回動を許す。すなわち、インターナルギヤ2は、トルク変動に対応して比較的小さな回転角度だけ回動して往復し、スプリング8の弾性変形とスプリング8との摩擦とで、変動トルクを吸収する。凹凸面7の上り斜面74に当接しているスプリング8は、インターナルギヤ2の回動につれて上り斜面74を昇り降りしながら、インターナルギヤ2に所定のトルクを与えている。それゆえ、駆動軸5にかかる負荷が間欠的に負値をとることがあっても、遊星歯車減速機構6の各歯車2,3,4の噛み合いで同各歯車がガタつきを起こすことがない。また、各歯車2,3,4の軸との嵌合部に生じる遊びなどによる衝撃も発生しない。その結果、本実施例の遊星歯車減速機構付スタータでは、遊星歯車減速機構6の高い減速比のゆえに駆動軸5での等価慣性モーメントが大きいにもかかわらず、バックラッシに起因する始動時の騒音が防止されている。
【0050】すなわち、本実施例によれば、前述の騒音の発生が防止される。その結果、乗員や周囲の人に聞こえるエンジン始動時の騒音も、全体として低減されるという効果がある。この効果を確認するために、発明者らは試作した本実施例の遊星歯車減速機構付スタータを自動車に組付け、エンジン始動時に車体から約1m離して設置したマイクで騒音を測定する騒音試験を行った。その結果、図5(●は従来技術、○は本実施例)に示すように、可聴周波数範囲のほぼ全域にわたり数デシベル程度の騒音レベルの低下がみられ、本実施例の遊星歯車減速機構付スタータの有効性を立証することができた。
【0051】(実施例1のその他の作用効果)また、本実施例の遊星歯車減速機構付スタータでは、インターナルギヤ2のモータ30と背向する面、すなわち前端面24に凹凸面7が形成されており、凹凸面7に前方からスプリング8が当接している。ここで、インターナルギヤ2の製造時に前端面24の外周部に凹凸面7を形成するのは比較的容易であり、安価に凹凸面7付きのインターナルギヤ2を製造することができる。また、スプリング8は、打ち出し加工やプレス加工で容易に製造することができ、センタケース12への固定も容易である。さらに、組み立ての過程で、スプリング8がビス止めされているセンタケース12にインターナルギヤ2を挿入する際に、スプリング8がインターナルギヤ2の挿入を妨げることがないので、組み立ても容易である。
【0052】したがって、本実施例の遊星歯車減速機構付スタータによれば、噛み合い衝撃の緩和とバックラッシ騒音の低減との両方ができるばかりではなく、製造が容易で安価に生産することができるという効果もある。すなわち、衝撃緩和作用はあってもバックラッシ騒音の低減作用はない従来技術による遊星歯車減速機構付スタータと比較しても、本実施例によればより安価に遊星歯車減速機構付スタータを提供することができるという効果がある。
【0053】あわせて、本実施例では、凹凸面7とスプリング8とは、インターナルギヤ2とセンタケース12との間の狭い中空円筒状の空間に収まっている。それゆえ、ドライブハウジング1の寸法が軸長方向にわずかに伸びるだけで、センタケース12やその周辺部材の直径を拡大させることがない。したがって、本実施例によれば、凹凸面7の形成およびスプリング8の装備による遊星歯車減速機構付スタータの容積増大は、最小限に抑制されているという効果もある。
【0054】さらに、本実施例の遊星歯車減速機構付スタータでは、スプリング8は、バネ合金の板材から打ち抜き・打ち出し・曲げなどのよく普及した加工方法で容易に製造することができる。また、スプリング8は形状が略リング状であり、センタケース12の内筒と同軸に配設されるので、先端に当接部81が形成されている腕部82の数は六本なのに、その半数の三本のビス87でセンタケース12に固定され、組み立て工数が少ない。
【0055】また、本実施例では、スプリング8の切り起こし部である腕部82が周上に等間隔で配設されているので、インターナルギヤ2にかかる押圧力が軸まわりでほぼ均等になる。したがって、本実施例によれば、アンバランスな押圧力がインターナルギヤ2にかからないので、インターナルギヤ2や遊星ギヤ4等に偏った摩滅が生じることがないという効果もある。
【0056】(実施例1の変形態様1)実施例1では、インターナルギヤ2の前端面の凹凸面7は、再び図3に示すように、周方向に交番に配設されている台形断面の凹部76と凸部75とからなっていたが、周方向に他の凹凸形状が配設されていてもよい。そこで本変形態様では、図6(a)〜(b)に示すように、インターナルギヤ2’の前端面24の外周部の凹凸面7’を、上り斜面77と下り斜面78とだけで形成している。実施例1と同様の遊星歯車減速機構付スタータに、このような凹凸面7’をもつインターナルギヤ2’が組み込まれた変形態様であっても、実施例1と同様な効果が得られる。
【0057】また、上り斜面77と下り斜面78とは、傾斜角一定の平面である必要はなく、例えば正弦波状の形状をしていてもよい。あるいは、上り斜面77と下り斜面78とが、同一の勾配をもっている必要もないので、例えば鋸歯状の形状の凹凸で凹凸面7が形成されている変形態様も可能である。このように凹凸面7の形状を変えていくと、ある程度の特性の違いがあるものと考えられるので、実験等により機能・コスト・寿命などの観点から最適な凹凸形状(および数)が求めることができれば、なお好ましい。
【0058】(実施例1の変形態様2)実施例1では、スプリング8は、再び図4(a)〜(b)に示すように、駆動軸5まわりにリング形状を形成しているが、これとは異なる形状のバネ弾性部材を使用することもできる。例えば、図7(a)〜(c)に示すように、単一の爪状の当接部81’と腕部82’とをもつ板バネからの打ち出し部材であるスプリング8’をもつ変形態様も可能である。本変形態様では、スプリング8’は単一のビス(図示せず)をビス孔80’に通してセンタケース12’(図示せず)に固定されている。センタケース12’の中空円盤の後面には、打ち出し加工により突条121が形成されており、スプリング8’に周方向の両側から当接してスプリング8’のビス孔80’まわりの回転変位を制限している。
【0059】スプリング8’は、単一でセンタケース12’に固定されていても、複数個がセンタケース12’に固定されていてもよい。スプリング8’が当接するインターナルギヤ2の凹凸面7の形状は、実施例1のもののほか、前述の変形態様1に記載のものでもよい。なお、スプリング8,8’をセンタケース12に固定する手段は、ビス止めのほかに、溶接や嵌め込み、リベット止めなど、多様な手段のうちから選定することができる。
【0060】(実施例1の変形態様3)スプリング8の凹凸面7に対する押圧力を強化する手段や、騒音低減効果を補強する手段として、図8に示すように、スプリング8の斜面部84とセンタケース12の間にゴム製のクッション9を挟持している変形態様も可能である。本変形態様では、クッション9はゴム弾性力でスプリング8の斜面部84をインターナルギヤ2の凹凸面7に押圧付勢しているので、スプリング8のバネ弾性力よりも大きな押圧力で斜面部84と凹凸面7とは当接する。それゆえ、仮にかかる衝撃トルクの割にインターナルギヤ2の直径が小さくても、インターナルギヤ2の回動を押し止めるのに十分なトルク反力を斜面部84と凹凸面7との間で発生させることができる。したがって、本変形態様によれば、前述の実施例1の効果に加えて、小型の遊星歯車減速機構であっても十分に強力な衝撃緩和作用およびバックラッシ騒音の低減効果が得られるという効果がある。
【0061】また、ゴム弾性部材であるクッション9には、スプリング8よりも強力な衝撃吸収作用やダンピング作用があるので、クッション9は、スプリング8およびセンタケース12の振動を吸収し、制振作用を発揮する。同時に、クッション9には、センタケース12内の騒音をも吸収する作用がある。したがって、本変形態様によればさらに、よりいっそう始動時の騒音や振動が低減されるという効果もある。
【0062】本変形態様では、クッション9はセンタケース12とスプリング8との間に嵌合しているものとするが、接着剤で接着固定されていてもよい。あるいは、変形態様2で示したスプリング8’に対しては、ドーナツ状のゴム製クッションをセンタケース12の外筒の内周面に沿って配設してもよい。また、クッション9が中実のゴム弾性部材である必要はなく、中空のゴム弾性部材であったり、スポンジ状のゴム弾性部材であってもよい。
【0063】(実施例1の変形態様4)本変形態様(図略)では、前述の実施例1(図2参照)とは逆に、凹凸が周方向に配設されている凹凸面がセンタケース12に形成されており、スプリング8はインターナルギヤ2の前端面24に固定されている。したがって、過大なトルクがインターナルギヤ2のかかった場合には、インターナルギヤ2ごとスプリング8が回動し、一方、凹凸面が形成されているセンタケース12は回動しない。
【0064】本変形態様によっても、実施例1と同様の作用効果が得られる。さらに、センタケース12の製造過程でプレス等により凹凸面を形成しておくことは容易であり、あまりコスト増加にはならないので、コスト上の利益もある。なお、スプリング8をインターナルギヤ2に固定する方法は、ビス止めや溶接、嵌合など様々な固定手段のなかから選定すればよい。
【0065】本変形態様に対して、実施例1に対する変形態様1〜3に相当する変形態様が可能であり、これらに準ずる作用効果が得られる。
〔実施例2〕
(実施例2の構成)本発明の実施例2としての遊星歯車減速機構付スタータでは、図9に示すように、遊星歯車減速機構6’のうちサンギヤ3、インターナルギヤ2”、遊星ギヤ4および駆動軸5からなる減速歯車部分の構成は、おおむね実施例1と同一である。実施例1と異なるのは、凹凸面7”を形成しているインターナルギヤ2”、凹凸面7”に押圧力をもって当接するスプリング8”、およびクッション9’の形状である。
【0066】すなわち、インターナルギヤ2”は、前端面の中程から前方へ突出している中空円筒状の前端部張出25を有し、前端部張出25の外周面には、周方向に凹凸が配設されている凹凸面7”が形成されている。一方、スプリング8”は、センタケース12にビス87で固定されている点は実施例1のもの8と同じであるが、打ち出し形状およびプレス成形形状が実施例1のスプリング8と異なっている。つまり、本実施例のスプリング8”では、腕部82”が外周近くから立ち上がっており、腕部82”の先端に形成されている斜面部84”は、凹凸面7”に外周方向から押圧力をもって当接している。
【0067】ここで、斜面部84”の外周面には、センタケース12の外筒の内周面との間に挟持されているクッション9’が当接している。クッション9’は、ドーナツ状のゴム弾性部材であって、そのゴム弾性力で斜面部84”を押圧付勢している。それゆえ、スプリング8”の斜面部84”は、スプリング8”のバネ弾性力とクッション9’のゴム弾性力との両方により、付勢されて凹凸面7”に当接している。
【0068】(実施例2の作用効果)本実施例においても、実施例1およびその変形態様4に相当する作用効果が得られる。したがって、本実施例の遊星歯車減速機構付スタータによれば、従来技術による製品よりも安価でありながら、噛み合い衝撃を緩和する効果と始動時の騒音(特にバックラッシ騒音)を低減する効果とが発揮される。
【0069】(実施例2の変形態様)本実施例に対しても、実施例1に対する各変形態様に相当する各種の変形態様が可能であり、相当する作用効果が得られる。また、前述の実施例2は、実施例1の凹凸面7を移した変形態様とも考えられ、同様にして次のような変形態様も可能である。
【0070】第1に、インターナルギヤ2の外周面23(図2参照)に凹凸面が形成され、センタケース12の外筒の内周面等にバネ弾性部材(スプリング)が固定されている構成の変形態様が可能である。本変形態様ではスタータの直径は幾分大きくなるが、スタータの全長を延ばすことなく、凹凸面およびスプリングを備えることができるという利点がある。
【0071】第2に、インターナルギヤ2の後端面22(図2参照)に凹凸面が形成され、センタケース12の外筒またはプレート13にバネ弾性部材(スプリング)が固定されている構成の変形態様も可能である。本変形態様では、スタータの直径を膨らませることなく、凹凸面およびスプリングを備えることができるという利点がある。また、遊星ギヤ4およびインターナルギヤ2を外すことなく、凹凸面およびスプリングにアクセスできるので、整備性が向上するという効果もある。
【0072】第3に、インターナルギヤ2の貫通孔20を形成している内周縁(図2参照)に凹凸面が形成され、センタケース12にバネ弾性部材(スプリング)が固定されている構成の変形態様も可能である。本変形態様では、スタータの直径を膨らませることなく、凹凸面およびスプリングを備えることができ、全体をコンパクトにまとめられるという利点がある。
【0073】第5に、以上の各変形態様において凹凸面とスプリングとを逆転し、センタケース12またはプレート13に凹凸面が形成され、インターナルギヤ2にスプリングが固定されている変形態様も可能である。本変形態様においても、実施例1の変形態様4に相当する作用効果が得られる。
〔実施例3〕
(実施例3の構成)本発明の実施例3としての遊星歯車減速機構付スタータは、概ね実施例1と同様の構成であるが、図10に示すように、センタケース12A、インターナルギヤ2A、およびスプリング8Aが実施例1と異なっている。
【0074】すなわち、本実施例では、ハウジングの一部としてのセンタケース12の外筒の内周面に形成されている凹凸面7Aと、インターナルギヤ2の外周面に形成されている凹凸面7A’とが、スプリング8Aを挟んで対向している。スプリング8Aは、周方向に閉じている帯状の板バネ材からなる波板であり、センタケース12Aの凹凸面7Aとインターナルギヤ2Aの凹凸面7A’との間で略半径方向に押圧挟持されている。スプリング8Aは、周方向に波うっており、凸部85と凹部86とが交番に形成されている。
【0075】凹凸面7Aと凹凸面7A’とは、周方向に互いに同数の凹凸が形成されており、両凹凸面7A,7A’に押圧力をもって当接しているスプリング8Aの波の数もこれと同数である。
(実施例3の作用効果)それゆえ、インターナルギヤ2Aに所定の範囲でトルクが加わると、インターナルギヤ2Aとセンタケース12Aとの間に挟持されているスプリング8Aが弾性変形して、インターナルギヤ2Aは回動する。上記トルクが所定値を越えなければ、インターナルギヤ2Aの回動は所定の範囲で止まり、その後トルクが減少するとインターナルギヤ2Aは復元する。この復元トルクにより、実施例1と同様のバックラッシ騒音の低減効果が得られる。
【0076】一方、上記トルクが所定値を越えれば、インターナルギヤ2Aとスプリング8Aとの間、または、センタケース12Aとスプリング8Aとの間に、凸部を越える滑りが生じ、インターナルギヤ2Aは過大なトルクが収まるまで回動する。インターナルギヤ2Aが回動している間は、過大なトルクはセンタケース12Aやサンギヤ3に伝達されないので、実施例1と同様に噛み合い衝撃などの衝撃荷重は緩和される。
【0077】したがって、本実施例の遊星歯車減速機構付スタータによれば、実施例1と異なる構成でも実施例1と同様の効果を得ることが可能である。また、実施例1と異なり、スプリング8Aが固定されていないので、接合不具合に起因する故障がなく、その分だけ信頼性が向上している。なお、実施例1のスプリング8およびビス87(図2参照)は本実施例では必要ないので、その収容空間を省略でき、本実施例のスタータは、実施例1ものよりも軸長方向に短縮されている。
【0078】(実施例3の変形態様)本実施例に対しては、インターナルギヤ2の前端面24(図2参照)とセンタケース(図略)の中空円盤との間に、板バネ材料からなるリング状の波板スプリングを押圧挟持している構成の変形態様が可能である。ここで、波板スプリングの表面は、放射状に所定数だけ波打っている。インターナルギヤ2の前端面24には凹凸面7が形成され、対向するセンタケースの中空円盤にも他の凹凸面(図略)が形成されており、両凹凸面の凹凸の数と波板スプリングの波の数とは同数である。
【0079】波板スプリングは、インターナルギヤ2の回動につれて、インターナルギヤ2の前端面24に形成されている凹凸面7と、対向するセンタケースの中空円盤に形成されている他の凹凸面との間で圧縮され、弾性エネルギを蓄積する。それゆえ、インターナルギヤ2に所定の範囲でトルクが加わると、インターナルギヤ2とセンタケースとの間に挟持されている波板スプリングが弾性変形して、インターナルギヤ2はわずかに回動する。上記トルクが所定値を越えなければ、インターナルギヤ2の回動は所定の範囲で止まり、その後トルクが減少するとインターナルギヤ2は復元する。この復元トルクにより、実施例1や実施例3と同様に、バックラッシ騒音の低減効果が得られる。
【0080】一方、上記トルクが所定値を越えれば、インターナルギヤ2と波板スプリングとの間、または、センタケースと波板スプリングとの間に、凸部を越える滑りが生じ、インターナルギヤ2は過大なトルクが収まるまで回動する。インターナルギヤ2が回動している間は、過大なトルクがセンタケースやサンギヤ3(図2参照)に伝達されないので、実施例1や実施例3と同様に、噛み合い衝撃などの衝撃荷重は緩和される。
【0081】したがって、実施例3と構成が若干異なる本変形態様によっても、実施例1や実施例3と同様の効果を得ることが可能である。また、実施例3と同様に、波板スプリングが固定されていないので、接合不具合に起因する故障がなく、信頼性は向上している。なお、実施例3と異なり、センタケースの外周部に凹凸がないのでスタータへの組み込みが容易であるとともに、スタータの容積増大が少ないとういう利点もある。
【0082】〔実施例4〕
(実施例4の構成)本発明の実施例3としての遊星歯車減速機構付スタータは、概ね実施例1(図1および図2参照)と同様の構成である。実施例1と異なるのは、図11に示すように、外筒の内周側に凹凸面7Bが形成されているセンタケース12Bと、外周面に凹凸面7B’が形成されているインターナルギヤ2Bとを有する点である。さらに、実施例3とも異なるのは、実施例3の波板状のスプリング8Aに代えて、丸棒状のゴム弾性体であるゴム丸棒90が複数個、駆動軸5と軸長方向を合わせて配設され、両凹凸面7B,7B’に押圧挟持されていることである。
【0083】(実施例3の作用効果)前述のように本実施例では、センタケース12Bの凹凸面7Bとインターナルギヤ2Bの凹凸面7B’との間に、ゴム丸棒90が挟持されている。それゆえ、インターナルギヤ2Bにトルクがかかっていない間は、ゴム丸棒90のゴム弾性で両凹凸面7B,7B’は、互いに凹部を合わせた状態で安定している。
【0084】インターナルギヤ2Bに所定の範囲のトルクがかかった場合には、インターナルギヤ2Bはわずかに回動する。その際、ゴム丸棒90は両凹凸面7B,7B’に接したまま転がり、両凹凸面7B,7B’の対向する斜面同士のあいだで圧縮されて、反発力を生じる。その反発力により、インターナルギヤ2Bにかかるトルクと釣り合う反トルクが、ゴム丸棒90を介してセンタケース12Bとの間に生じ、トルクと反トルクとが釣り合って、インターナルギヤ2Bの回動は停止する。
【0085】インターナルギヤ2Bにかかるトルクが所定の範囲内で変動する場合には、ゴム丸棒90を挟む両凹凸面7B,7B’の釣り合い位置は変化し、インターナルギヤ2Bは往復回動する。その結果、インターナルギヤ2Bにかかるトルクが緩んだ場合にも、ゴム丸棒90の弾性反発力で各歯車の歯面は互いに押しつけられた状態に保たれ、バックラッシ騒音の発生は防止される。
【0086】インターナルギヤ2Bにかかるトルクが、ゴム丸棒90による反トルクの限界を越えて大きい場合には、ゴム丸棒90は両凹凸面7B,7B’の凸部を越えて転がり、インターナルギヤ2Bは大きく回動または回転して過大なトルクを逃がす。その結果、噛み合い衝撃などの過大な衝撃トルクによって各部にかかる衝撃荷重を緩和することができ、スタータの故障を防止することができる。
【0087】以上のように、本実施例に遊星歯車減速機構付スタータによれば、前述の各実施例と同様に、シンプルかつ安価な構成で衝撃緩和と始動時騒音の低減との両方を達成することができる。さらに本実施例では、ゴム丸棒90は両凹凸面7B,7B’上で転がるのみであるから、両凹凸面7B,7B’に摩耗や摩滅がほとんど生じないので、長寿命化できるという効果がある。また、同じ理由で、両凹凸面7B,7B’で摩擦音や打撃音が発生しないので、よりいっそう始動時騒音が静かになるという効果もある。
【0088】(実施例3の変形態様)前述の実施例3のゴム丸棒90(図11参照)を、パイプ状のバネ弾性体であるパイプバネで置換した変形態様も可能であり、実施例3に準ずる作用効果を得ることができる。本変形態様では、必要に応じて複数のパイプバネの間隔を所定の間隔に保つためのリテーナを使用してもよい。リテーナには種々のものが考えれるが、例えば図12に示すように、同軸に所定の距離をおいて配設されている二つのリング部材98と、両リング部材98を両端で連結する複数の線材97とからなるリテーナ96が使用できる。線材97は、両リング部材の周上に等間隔で配設されており、パイプバネ(図示せず)は、組み立ての過程で線材97に通されて、線材97のまわりに保持されている。
【0089】本変形態様によれば、上記の作用効果に加えて、パイプバネが両凹凸面7B,7B’間の所定の位置を外れる心配がないという効果もある。
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【出願日】 平成9年(1997)1月13日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
【公開番号】 特開平9−310667
【公開日】 平成9年(1997)12月2日
【出願番号】 特願平9−3526