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【発明の名称】 スタータ
【発明者】 【氏名】宗 正浩

【目的】
【構成】
【特許請求の範囲】
【請求項1】モータフレームと、該モータフレーム内に電機子軸の両端で回動可能に軸支されており、軸長方向の一方に整流子を有するモータ回転子と、該整流子の摺接面に当接し、電源およびアースにそれぞれ電気的に接続される複数のブラシと、を備えているスタータにおいて、前記ブラシのうち少なくとも一つを、前記整流子に当接している状態と、該整流子面から所定の間隙をとっている状態とに変位させる変位手段をもつことを特徴とするスタータ。
【請求項2】前記変位手段は、前記ブラシを前記整流子に対して所定の範囲で移動可能に保持しているスライドレールと、該スライドレールに沿って前記ブラシを前記整流子から引き離す方向に付勢するリターンスプリングと、所定の外力を受けると該ブラシを該整流子に押しつける方向に付勢する外力受容手段と、を有する請求項1記載のスタータ。
【請求項3】前記変位手段は、前記ブラシに接合されているブラシ連動部材と、前記外力受容手段に一端を当接し、他端で該ブラシ連動部材を介して該ブラシを前記整流子に押圧付勢する押圧スプリングとを有し、該外力受容手段に外力が作用していない状態では、該押圧スプリングの押圧力は、前記リターンスプリングの押圧力よりも弱い請求項2記載のスタータ。
【請求項4】前記変位手段は、前記ブラシを所定の範囲で移動可能に保持するとともに、バネ弾性力をもって該ブラシを前記整流子から引き離す方向に付勢している板バネと、所定の外力を受けると該ブラシを前記整流子に押しつける方向に付勢する外力受容手段と、を有し、前記スイッチ兼用ブラシは、前記整流子の前記スイッチ兼用ブラシとの摺接面に対して略鉛直方向に移動可能に前記板バネに保持されている請求項1記載のスタータ。
【請求項5】前記外力受容手段は、押しボタン、プッシュプル・ノブ、レバー、スティック、回しノブおよびダイヤルのうちいずれかであって、人力により操作可能である請求項2〜4のうちいずれかに記載のスタータ。
【請求項6】前記変位手段は、前記ブラシに接続されて連動している可動鉄心と、通電時に磁気吸引力により該可動鉄心を吸引し、もって該ブラシを前記整流子に当接させる電磁コイルと、該モータフレームに対して固定されており、該可動鉄心を該ブラシに背向する方向へ押圧付勢していて、該電磁コイルへの通電遮断時には該動鉄心および該ブラシを元の位置に復帰せしめ、もって該ブラシを前記整流子から引き離すリターンスプリングと、を有する請求項1記載のスタータ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明のスタータは、モータの駆動力で内燃機関を始動するスタータの技術分野に属し、とりわけ、汎用エンジンの始動用スタータとして好適である。
【0002】
【従来の技術】実公昭56−10957号公報には、電磁スイッチをもたないスタータが開示されている。このようなスタータは、小型発電機を駆動する汎用エンジンなどの始動用に従来から使用されている。汎用エンジンでは、エンジン自体が保護カバー無しの剥き出しの状態で使用されることが多く、いきおいそのスタータや配線もまた露出した状態で使用されることが多い。
【0003】かような従来の汎用エンジンのスタータは、それ自身には電磁スイッチを装備していなくても、乗用車のキースイッチ程度では電流容量が不足するので、外部に大容量のスイッチを装備していることがほとんどである。たとえば、図13(a)に示すように、小容量のキースイッチ301で電磁スイッチ300の大容量のメインスイッチを閉じて、スタータSを駆動する場合が多い。あるいは、図13(b)に示すように、大容量スイッチ(開閉器)302を設けてスタータSを直接駆動する場合もある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前述の従来技術によるスタータSは、スタータS自身には大容量のスイッチがなく簡素で安価であっても、始動電源(バッテリB)を含む始動用回路のどこかに電磁スイッチ300や大容量スイッチ302などを必要としていた。それゆえ、バッテリBやスタータSを含むエンジン始動系全体としては、あまりコストダウンになっていなかった。
【0005】そこで本発明は、より安価にエンジン始動系を構成することができるスタータを提供することを解決すべき課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】上記課題を解決するために、発明者らは以下の手段を発明した。
(第1手段)本発明の第1手段は、請求項1記載のスタータである。本手段では、モータ回転子の整流子に当接する複数のブラシが、モータフレームに対して保持されている。これらのブラシのうち少なくとも一つは、変位手段の作用により、整流子と当接している状態と間隙をもって離れている状態とのいずれかを選択的に取る。すなわち、上記ブラシは、整流子に導通している状態と導通していない状態とを、変位手段により選択的に取ることができる。ここで、変位手段によって整流子に当接させられたり整流子から引き離されたりするブラシを、他のブラシと区別するため、スイッチ兼用ブラシと呼ぶことにする。
【0007】変位手段が、スイッチ兼用ブラシを整流子に所定の押圧力をもって当接させ、スイッチ兼用ブラシが整流子に導通している状態では、始動用の回路は閉じ、モータ回転子(アーマチュア)に電流が流れて回転を始める。すなわち、スタータスイッチ兼用ブラシを介し、始動電源からの電力が整流子からモータ回転子(アーマチュア)に供給されるので、モータ回転子に磁気トルクが生じ、モータ回転子は回転してエンジンを始動する軸出力を生じる。
【0008】逆に、変位手段が、スイッチ兼用ブラシを整流子から引き離し、両者の間に所定の距離(間隙)が開いていて両者の間に導通がない状態では、始動用の回路がここで開いてしまい、モータ回転子に磁気トルクは生じない。したがって、本手段によれば、変位手段およびスイッチ兼用ブラシが始動用の回路の開閉を行っているので、電磁スイッチや大容量スイッチなどの高価な回路要素は、スタータを含む始動用電気系統に必要ない。すなわち、バッテリ等の始動電源に接続されているスタータ単体でその起動と停止とを行えるので、始動用電気系統を簡素に構成することができ、同系統全体のコストダウンにもなる。また、電磁スイッチのコイル励磁用などの補助的な配線も必要としないので、汎用エンジンおよびこれに付属する本手段のスタータを現場へ展開する際、配線が単純で手間がかからないという利点もある。さらに、構成が単純でコネクタなどが少ないから、始動系統の信頼性が向上するという効果もある。
【0009】以上のように、本手段によれば、より安価にエンジン始動系を構成することができ、その信頼性も向上するという効果がある。なお、スイッチ兼用ブラシは、電源のいずれの極に導通しているブラシでもかまわない。すなわち、スイッチ兼用ブラシは、電気ケーブルをもって電源の一極に導通していてもよいし、逆にアースとしての構造物のフレームを介して電源の他の極に導通していてもよい。
【0010】(第2手段)本発明の第2手段は、請求項2記載のスタータである。本手段では、上記変位手段が、スライドレールとリターンスプリングと外力受容手段とから構成されている。スライドレールは、モータフレームに固定され、スイッチ兼用ブラシを移動可能に保持している。
【0011】それゆえ、外力が外力受容手段にかかると、スイッチ兼用ブラシは、外力受容手段を介して外力に押され、リターンスプリングの力に逆らってスライドレールに沿って変位し、整流子に当接する。すると、スイッチ兼用ブラシと整流子との間が導通し、スタータが起動する。逆に外力がなくなると、スイッチ兼用ブラシは、リターンスプリングによりスライドレールに沿って押し戻され、整流子から引き離される。すると、スイッチ兼用ブラシと整流子との間に間隔が生じて導通がなくなり、スタータは停止する。
【0012】したがって本手段によれば、前述の第1手段の効果に加えて、変位手段が簡素な構成で実現できるので、信頼性がより高いスタータをいっそう安価に提供することができるという効果がある。
(第3手段)本発明の第3手段は、請求項3記載のスタータである。
【0013】本手段では、上記変位手段が、スライドレールとリターンスプリングと外力受容手段とに加えて、さらにブラシ連動部材と押圧スプリングとを有している。ブラシ連動部材は、その一部がスイッチ兼用ブラシに接合固定されていて、スイッチ兼用ブラシと一体に連動する。整流子に向かってブラシ連動部材を押圧している押圧スプリングの力は、外力受容手段に外力が作用していない状態では、逆方向にブラシ連動部材を押圧しているリターンスプリングの力よりも弱い。
【0014】それゆえ、外力が外力受容手段に作用していない状態では、リターンスプリングの押圧力が押圧スプリングの押圧力を凌駕し、ブラシ連動部材はリターンスプリングに押し戻される。すると、ブラシ連動部材はスイッチ兼用ブラシと連動しているので、スイッチ兼用ブラシは整流子から離れて導通がなくなり、スタータは停止する。
【0015】逆に、所定の外力が外力受容手段に作用している状態では、押圧スプリングの押圧力に外力が加算されてリターンスプリングの押圧力に打ち勝ち、外力受容手段は所定距離の変位をする。すると、一端が外力受容手段に当接している押圧スプリングは、所定のバネ弾性力によりブラシ連動部材を押圧付勢する。ブラシ連動部材はスイッチ兼用ブラシと連動しているので、スイッチ兼用ブラシは整流子に押圧スプリングによる所定の押圧力で当接し、導通が生じてスタータは駆動される。ここで、スイッチ兼用ブラシが整流子に当接する押圧力は、外力が直接作用するのではなく、押圧スプリングのバネ弾性力により生じるので、所定の大きさを越えることがない。
【0016】すなわち、本手段では、外力受容手段に必要以上の大きな外力が加わった場合にも、スイッチ兼用ブラシが整流子に当接する押圧力の大きさは、適正な範囲を越えることがない。それゆえ、スイッチ兼用ブラシが異常に大きな外力で整流子に押圧され、摩擦トルクによりスタータの軸出力を減殺したり、スイッチ兼用ブラシと整流子との摺接面において不必要な摩滅や損耗が生じたり、スイッチ兼用ブラシや変位手段の変形や破壊を招いたりする危険がない。
【0017】したがって本手段によれば、前述の第2手段の効果に加えて、スイッチ兼用ブラシの整流子への押圧力が適正な範囲に制限されているので、過大な押圧力による不都合がなくなり、スタータの信頼性の向上および長寿命化の効果がある。また、変位手段に加わる外力が人力である場合にも、整流子との摺接面でスイッチ兼用ブラシに生じる振動が操作者に直接伝達されることがなく、操作者に不快感を与えないという効果もある。
【0018】(第4手段)本発明の第4手段は、請求項4記載のスタータである。本手段では、外力受容手段と板バネとが変位手段の構成要素に挙げられているのみであり、スライドレール等を要する前述の第2手段と比較しても、さらに簡素な構成の変位手段が提供されている。
【0019】したがって本手段によれば、前述の第2手段の効果に加えて、いっそう安価で信頼性が高いスタータを提供することができるという効果がある。
(第5手段)本発明の第5手段は、請求項5記載のスタータである。本手段では、外力受容手段は、押しボタン、プッシュプル・ノブ、レバー、スティック、回しノブ、ダイヤルおよびレリーズボタンのうちいずれかであるから、スタータの使用環境などに合わせて、最適の外力受容手段を選択することができる。また、人力により操作可能であるから、構成は簡素で価格も安価でありながら、高い信頼性が得られる。
【0020】したがって本手段によれば、前述の第2〜4手段のうちいずれかの効果に加えて、さらに信頼性が高いスタータをいっそう安価に提供することができるという効果がある。
(第6手段)本発明の第6手段は、請求項6記載のスタータである。
【0021】本手段では、電磁コイルに通電されると、磁気吸引力によって可動鉄心が吸引され、可動鉄心と連動しているスイッチ兼用ブラシが整流子に押し当てられて、スイッチ兼用ブラシと整流子との間が導通しスタータが駆動される。逆に、電磁コイルへの通電が遮断されると、リターンスプリングのバネ弾性力で可動鉄心が復帰し、スイッチ兼用ブラシが整流子から引き離されて両者の間の導通が失われて、スタータは停止する。
【0022】したがって本手段によれば、前述の第1手段の効果に加えて、次のような効果がある。すなわち、本手段によれば、変位手段の構成は比較的簡素でありながら、メインスイッチを必要とせず、かつ、人力によらずにスタータの駆動と停止とができる。それゆえ、人が近寄りにくい環境で使用される場合にも、キースイッチ等により遠隔操作ができるという効果がある。
【0023】また、前述の第5手段と本手段とを共通した規格で設計しておけば、スイッチ操作を人力によって行う型のスタータと、キースイッチ等で電気的にスイッチ操作を行う型のスタータとを、大半の部品を共通にして製造することができる。同様に、スイッチ操作の人力型と電磁力型との規格が共通であれば、人力操作型のスタータを製造したのち、変位手段を交換することにより、電磁力型のスタータに改造することが容易であるという効果もある。
【0024】
【発明の実施の形態】本発明のスタータの実施の形態については、当業者に実施可能な理解が得られるよう、以下の実施例等で明確かつ充分に説明する。
〔実施例1〕
(実施例1の全体構成)本発明の実施例1としてのスタータ1は、図1に示すように、スタータ1の主要な外形および構造を形成しているモータフレーム345と、その内部に回転自在に格納されれているモータ回転子(電機子)2などから構成されている。モータ回転子2は、モータフレーム345内に電機子軸(アーマチュア軸または出力軸とも)2aの両端で軸受けを介して回動可能に軸支されており、軸長方向の一方に整流子2cを有する。
【0025】モータフレーム345は内部に複数のブラシ19,20を保持しており、ブラシ19は整流子2cの摺接面に常に当接しており、ブラシ20は外部からの操作で整流子2cの摺接面に当接可能になっている。ブラシ20は、始動電源に接続する外部回路(図略)とバッテリ端子12を介して接続され、ブラシ19は、接地リベット13を介してモータフレーム345に導通され、始動電源に接続する接地側の外部回路(図略)と接続される。
【0026】以下、より詳しく実施例1のスタータの全体構成について説明する。その際、図中左方をもって前方とし、左端は先端で右端は後端とする。モータフレーム345は、前方から順に、ハウジング4と継鉄(ヨーク)3とエンドフレーム5とからなり、モータフレーム345の内部には、モータ回転子2等を収容している内部空間が形成されている。ハウジング4は、中間部外周に突出したマウント部4bを有し、マウント部4bによりスタータ1は始動すべきエンジンに取り付けられる。継鉄(ヨーク)3は、パイプ状の軟磁性体からなる部材で、内周に永久磁石よりなる界磁磁石17が固定されている。スタータ1の後端部を形成しているエンドフレーム5は、キャスティング金属製からなり前方に開口している椀形状の強度部材で、ハウジング4との間に継鉄3を挟持固定している。
【0027】モータフレーム345の前端部および後端部では、軸受け15がハウジング4の前端部4aに、軸受け16がエンドフレーム5の中央部に嵌着されている。モータフレーム345は、前後の軸受け15,16を介し、モータ回転子2の電機子軸2aの前後両端で、モータ回転子2を回転自在に軸支している。モータ回転子2のコイルと鉄心とがある電機子部分2dの前方には、後方から順に、一方向性クラッチ6、前半部はピニオンギヤ18aであるピニオン移動体18、およびリターンスプリング21とが、電機子軸2aと同心に配設されている。電機子軸2aの外周面の一部にはヘリカルスプライン2bが形成されており、ヘリカルスプライン2bにクラッチ6の内周面が嵌合している。
【0028】それゆえ、モータ回転子2が回転を始めると、クラッチ6に推進力が作用し、ピニオンギヤ18aはクラッチ6ごと前方へ飛び出してエンジン(図略)のリングギヤ(図略)に噛み合い、エンジンを始動する。逆に、モータ回転子2の回転トルクが無くなると、リターンスプリング21のバネ弾性力に押圧されて、ピニオン移動体18およびクラッチ6は後退し、もとの位置に戻る。
【0029】(実施例1のブラシの構成)エンドフレーム5には、図2に示すように、複数のブラシ19,20が保持されており、スタータ1の駆動時には、プラスブラシ19から整流子2cおよび電磁コイル(図略)を介してマイナスブラシ20に電流が流れる。マイナスブラシ20は、エンドフレーム5に固定されているブラシ保持部材11に保持されており、コード43および接地リベット13を介してエンドフレーム5に導通している。
【0030】ブラシ保持部材40は、合成樹脂製の一体成形部材で、ブラシ収容部40aと開口部40bと被ガイド部40cとからなる。ブラシ収容部40aは、整流子2cに向けて内側に矩形の孔が開口している部分であり、この矩形孔の中にスプリング42が収容されている。ブラシ収容部40aの矩形孔には、スプリング42の上から断面矩形のマイナスブラシ20が挿置されており、マイナスブラシ20は、スプリング42に付勢されて整流子2cに当接している。段付き開口部40bは、ブラシ保持部材40をエンドフレーム5に固定する部分で、エンドフレーム5の下面に形成されている貫通孔であるブラシ取り付け孔52に嵌合し、固定される。段付き部40bの外側(下側)には、下方に開口している段付き開口が形成されており、段付き部40bに外側からはめ込まれ固定されている蓋部材41によって閉止されている。被ガイド部40cは、ブラシ保持部材40の前後に突出して形成されている角棒状の部材である。
【0031】ブラシ保持部材40は、エンドフレーム5の下端の取り付け孔52に挿入されて固定されているが、被ガイド部40cがエンドフレーム5の下面に対称面に沿って形成されている嵌合溝5cと係合するので、正確に固定される。一方、プラスブラシ19は、コード34およびバッテリ端子12を介して外部回路に接続されており、この外部回路を通じてバッテリ(図略)の正極と導通している。バッテリ端子12の導電部分は、コード34の一端が接続されている端子ボルト33と、端子ボルト33に螺合しているナット32とからなる。端子ボルト33は、エンドフレーム5の円盤部5dに形成されている貫通孔に内側から挿置されており、先端をエンドフレーム5の背面に突出した状態で、ナット32によりエンドフレーム5に固定されている。端子ボルト33およびナット32は、上記貫通孔に内側から挿置されている中空ボルト状の絶縁ワッシャ30と、絶縁ワッシャ30に螺合している絶縁ボルト31とにより、エンドフレーム5と絶縁されている。
【0032】また、プラスブラシ19は、エンドフレーム5に取り付けられている手動の変位手段7によって保持されており、変位手段7の操作によって整流子2cに押圧されたり、整流子2cから引き離されたりするスイッチ兼用ブラシである。すなわち、本実施例のスタータ1は、プラスブラシ19を、整流子2cに所定の押圧力をもって当接し整流子2cと導通している状態と、整流子2cから所定の距離をとっていて整流子2cと導通していない状態とに変位させる変位手段7を有する。
【0033】(実施例1の変位手段の構成)変位手段7は、図2および図4に示すように、スライドレールでプラスブラシ19を変位可能に保持しているブラシ保持部材28と、リターンスプリング25と、外力受容手段としての押しボタン22とを有する。変位手段7はまた、ブラシ連動部材としての棒状部材27と、押圧スプリング23とをも有しており、さらに絶縁性のワッシャ24,26とから構成されている。
【0034】これらの構成要素のうち、ブラシ保持部材28および棒状部材27が絶縁性であれば、押しボタン22やスプリング23,25およびワッシャ24,26などは、必ずしも絶縁性の材料で形成されている必要はない。ブラシ保持部材28は、モータフレーム345のエンドフレーム5に固定されている絶縁性の一体成形樹脂部材である。ブラシ保持部材28は、図4および図5に示すように、ブラシ収容部28a、円筒部28b、段付き部28c、底部28d、被ガイド部28eからなる。底部28dの中央には、図7に示すように、ブラシ保持部材28の軸心に沿って貫通矩形孔28fが形成されている。
【0035】ブラシ保持部材28のうち、ブラシ収容部(スライドレール)28aは、再び図1および図4に示すように、整流子2cに向けて内側に水平断面が矩形の孔280が開口している部分である。この有底矩形孔280の内周面をもって、プラスブラシ19を整流子2cに対して所定の範囲で移動可能に保持するスライドレールは形成されている。ブラシ収容部28aの有底矩形孔280には、下方(整流子2c側)から断面矩形のプラスブラシ19が挿置されている。
【0036】底部28dは、ブラシ保持部材28をエンドフレーム5に固定する部分で、エンドフレーム5の上部に形成されている貫通孔である取り付け孔51(図1参照)に嵌合し、固定される。底部28dの外側(上側)には、中空円筒状の円筒部28bが直立して形成されており、円筒部28bの内周には上方に開口している水平断面が円形の盲孔であるボタン孔28gが形成されている。
【0037】ボタン孔28gには、図4に示すように、リターンスプリング25、ワッシャ26、絶縁樹脂製のブラシ連動部材としての棒状部材27、押圧スプリング23および押しボタン22が順に上方から挿入されている。円筒部28bの上端には、ボタン孔28gの内周面に段差が設けられている段付き部28cが形成されており、段付き部28cは外側(上方)からワッシャ24がはめ込まれ固定されている。ワッシャ24によって、押しボタン22は上方への変位が制限され、変位手段7が一つのアッシー(組立体)としてまとまっている。
【0038】被ガイド部28eは、ブラシ保持部材28の前後に突出して形成されている角棒状の部材である。変位手段7のエンドフレーム5への組付けの際に、被ガイド部28eがエンドフレーム5の上面に対称面に沿って形成されている嵌合溝5bと係合するので、変位手段7はエンドフレーム5に対し、正確な位置および方向で固定される。
【0039】ここで、前述のリターンスプリング25、ワッシャ26、絶縁樹脂製の棒状部材27、押圧スプリング23および押しボタン22について説明する。リターンスプリング25は、ワッシャ26および棒状部材27を介し、ブラシ収容部28aの内周面(スライドレール)に沿ってプラスブラシ19を整流子2cから引き離す方向に付勢している。
【0040】ブラシ連動部材としての棒状部材27は、側面形が逆T字状に形成されている下端の嵌合凸部27aと、円盤状の上端のピストン部27bと、両者27a,28bを連結している円筒体形状の連結棒部27cとからなる絶縁性の一体部材である。一方、整流子2cに背向するプラスブラシ19の上部には、両翼に開口する内部空間を形成している嵌合凹部19aと、嵌合凹部19aの中央上部が上方に開口している開口部19bとが形成されている。棒状部材27下端の嵌合凸部27aは、プラスブラシ19の嵌合凸部27aの側方から挿入され、嵌合凸部27aに嵌合しており、もって棒状部材27はプラスブラシ19に接合されて連動している。
【0041】押圧スプリング23は、上端を押しボタン22の頭部の内側に当接しており、下端を棒状部材27のピストン部27bの上端面に当接している。操作者の指の力などの外力により、押しボタン22が押し下げられると、図3に示すように、押圧スプリング23は下端で棒状部材27を押圧し、棒状部材27を介してプラスブラシ19を整流子2cに押圧付勢する。プラスブラシ19にかかる整流子2cへの押圧力は、押圧スプリング23のバネ弾性力を超えることはなく、所定の範囲の押圧力でプラスブラシ19は整流子2cに押しつけられる。
【0042】なぜならば、整流子2cからプラスブラシ19にかかる反力が押圧スプリング23のバネ弾性力を超えると、押圧スプリング23は圧縮される。すると、棒状部材27およびプラスブラシ19は上方へ後退し、プラスブラシ19と整流子2cとの間の押圧力は緩和される。なお、押しボタン22に外力が作用していない状態では、押圧スプリング23の押圧力は、リターンスプリング25の押圧力よりも弱くなるように、押圧スプリング23およびリターンスプリング25は選定されている。逆であると、押しボタン22が押し下げられていない状態でも、押しボタン22の押圧力が強く、プラスブラシ19が整流子2cに向かって突出してしまうからである。
【0043】押しボタン22は、下方に開口している有底円筒状の部材で、途中から段差をもって直径が異なり、下端部の直径の方がやや大きい。押しボタン22は、この下端部をブラシ保持部材28の円筒部28bの内周面に摺接させて保持されており、ブラシ保持部材28を介してエンドフレーム5に保持されている。押しボタン22は、外力受容手段として、押し下げる方向に所定の外力を受けると、押圧スプリング23の押圧力の範囲で棒状部材27を下方に押圧付勢し、棒状部材27と接合しており連動するプラスブラシ19を整流子2cに押しつける。
【0044】(実施例1の変位手段およびプラスブラシの主要寸法の関係)変位手段7およびプラスブラシ19の組み立てに関する主要寸法とは、図2に示すL1と、図4に示すL2,L3,L4との四つであり、いずれもプラスブラシ19の変位方向に沿った寸法である。すなわち、図2に示すように、L1はプラスブラシ19と整流子2cとの乖離距離である。一方、図4に示すように、L2は、棒状部材27の連結棒部27cのブラシ収容部28aの下端面からの突出している部分の寸法である。また、L3はプラスブラシ19の開口部19bの深さ(嵌合凹部19aに至るまでの長さ)、L4はブラシ収容部28aの有底矩形孔280の深さである。
【0045】図4に示すように押しボタン22を一杯に押し下げた状態で、突出寸法L2は開口部深さL3より大きい。すなわち、押しボタン22を一杯に押し下げれば、ブラシ保持部材28のブラシ収容部28aからプラスブラシ19が完全に出る。それゆえ、変位手段7を全く分解することなくプラスブラシ19と棒状部材27との着脱ができるので、組み立て時のプラスブラシ19の装着や、保守時のプラスブラシ19のブラシ交換は容易である。
【0046】一方、ブラシ収容部深さL4(図4参照)は、乖離距離L1(図2参照)よりも所定の長さだけ大きい。したがって、スタータ1が組上がっている状態では、図3に示すように、プラスブラシ19が整流子2cに当接するまでブラシ保持部材28のブラシ収容部28aから突出しても、プラスブラシ19がブラシ収容部28aから脱落する恐れはない。なお、ブラシ収容部深さL4と乖離距離L1との差が十分に大きく取られていれば、プラスブラシ19の摩滅限度が大きくとれて寿命が増す。
【0047】(実施例1の変位手段の組み立て手順)変位手段7の組み立て手順では、図6に示すように、変位手段7の軸心に沿って各部品24,22,25,27,26,25,28が挿置され、組み立てられている。すなわちまず、押しボタン22の内側に、下方から押圧スプリング23と棒状部材27とを順に挿入し、ワッシャ26を押しボタン22の下端の段付き開口部に圧入して固着する。これで、押しボタン22、押圧スプリング23、棒状部材27およびワッシャ26からなるサブアッシ(部分組み立て体)S1が構成される。
【0048】次に、ブラシ保持部材28の円筒部28b内のボタン孔28gに、リターンスプリング25を挿入し、その上からサブアッシS1を挿入する。ブラシ保持部材28の底部28dの中央に設けられている貫通矩形孔28fに、棒状部材27の嵌合凸部27aを通す際には、図7中に実線で示すように、直方体形状の嵌合凸部27aの向きを貫通矩形孔28fの向きに合わせて通す。嵌合凸部27aの寸法は、貫通矩形孔28fの寸法よりもいくらか小さいので、嵌合凸部27aおよび連結棒部27cの一部は、貫通矩形孔28fを通り抜けてブラシ収容部28a内の有底矩形孔280に突出する。嵌合凸部27aが貫通矩形孔28fを通り抜けた後で棒状部材27を軸回りに90°だけ回転させ、図7中に破線で示すように、嵌合凸部27aの長辺が電機子軸2aの軸長方向(被ガイド部28eの長手方向と同じ)と平行にしておく。この状態では、不用意に嵌合凸部27aが貫通矩形孔28fを抜けてしまうことが防止されている。
【0049】こうして、ブラシ保持部材28のボタン孔28gにリターンスプリング25およびサブアッシS1を挿入したのち、ワッシャ26をブラシ保持部材28の上端の段付き部28cを圧入して固定する。ワッシャ26の貫通孔からは、リターンスプリング25に押圧付勢されて、押しボタン22の上半部が上方に突出しており、これで変位手段7の組み立ては完了する。
【0050】しかるのち、変位手段7にプラスブラシ19を組み込む。その際、再び図4に示すように、まず押しボタン22を一杯に押して棒状部材27の嵌合凸部27aをブラシ収容部28aの下端面から突出させる。この際、嵌合凸部27aは突出距離L2だけ突出し、前述のように、プラスブラシ19の開口部19bの厚さL3は突出距離L2よりも小さい。それゆえ、ブラシ収容部28aの干渉を受けることなく、棒状部材27の嵌合凸部27aは、プラスブラシ19の嵌合凹部19aに横手(紙面に垂直方向)から挿入され、互いに嵌合する。両者が適正に嵌合している状態で押しボタン22を押し下げている外力をなくせば、嵌合している状態を保ったまま、プラスブラシ19は棒状部材27によりブラシ収容部28a内に引き込まれ、変位可能に保持される。
【0051】以上で、プラスブラシ19を保持している変位手段7の組み立てが完了した。この変位手段7およびプラスブラシ19からなる組み立て体を、サブアッシS2(図6参照)と呼ぶことにする。サブアッシS2は、再び図2に示すように、ブラシ収容部28aおよび底部28dが、上方からエンドフレーム5の上部の取り付け孔51に挿入され、底部28dが取り付け孔51に嵌合して固定されている。サブアッシS2の組付けの際、エンドフレーム5の上面に対称面に沿って形成されている嵌合溝5bに、ブラシ保持部材28の被ガイド部28eが嵌合するので、組付けの位置だけではなく方向も正確に定められる。
【0052】(実施例1の第1の作用効果)本実施例のスタータ1は、以上のように構成されているので、以下に述べる作用と効果を発揮する。第1に、本実施例のスタータ1によれば、より安価にスタータ1を含む始動電気系統を構成でき、スタータ1への配線とスタータ1の取扱とが容易で、スタータ1を含む始動電気系統の信頼性も高まるという効果がある。
【0053】本実施例のスタータ1では、モータ回転子2の整流子2cに当接するブラシには、プラスブラシ19およびマイナスブラシ20があり、それぞれブラシ保持部材28,40を介してエンドフレーム5に保持されている。両ブラシ19,20のうち、プラスブラシ19は、スイッチ兼用ブラシであって、変位手段7の作用により、整流子2cに導通している状態(ON状態)と導通していない状態(OFF状態)とを選択的に取ることができる。
【0054】変位手段7が、プラスブラシ19を整流子2cに所定の押圧力をもって当接させ、プラスブラシ19が整流子2cに導通しているON状態では、始動用の回路は閉じ、モータ回転子2に始動電流が流れて回転を始める。すなわち、プラスブラシ19を介し、始動電源B(図8参照)からの電力が整流子2cからモータ回転子2に供給されるので、モータ回転子2に磁気トルクが生じ、モータ回転子2は回転してエンジン(図略)を始動する軸出力を生じる。
【0055】逆に、変位手段7が、プラスブラシ19を整流子2cから引き離し、両者の間に所定の乖離距離L1があり、両者の間に導通がないOFF状態では、始動用の回路がここで開いてしまい、モータ回転子2に磁気トルクは生じない。すなわち、図8に示すように、本実施例のスタータ1では、変位手段7およびプラスブラシ19が始動用の回路の開閉を行っている。したがって、従来技術と異なり、電磁スイッチや大容量スイッチなどの高価な回路要素は、スタータ1を含む始動用電気系統に必要とされない。
【0056】その結果、バッテリB等の始動電源に接続されているスタータ単体1でその起動と停止とを行えるので、始動用電気系統を簡素に構成することができ、同系統全体のコストダウンになる。また、電磁スイッチのコイル励磁用などの補助的な配線も必要とされないので、本実施例のスタータ1を汎用エンジンに付属させている場合などに現場へ展開する際、配線が単純で手間がかからないという利点もある。さらに、構成が単純でコネクタなどが少ないから、始動系統の信頼性が向上するという効果もある。
【0057】以上のように、本手段によれば、より安価にエンジン始動系を構成することができ、その信頼性も向上するという効果がある。
(実施例1の第2の作用効果)第2に、変位手段7の構成が簡素で製造容易でありながら、プラスブラシ19の整流子2cへの押圧力を適正な範囲に保つことができるので、信頼性の向上と運用寿命の増大という効果が生じる。
【0058】まず、本実施例のスタータ1では、再び図2に示すように、変位手段7が、スライドレールとしてのブラシ収容部28aと外力受容手段としての押しボタン22とを構成要素に含んでいる。ブラシ収容部28aをもつブラシ保持部材28は、モータフレーム345のエンドフレーム5に固定され、プラスブラシ19を移動可能に保持している。
【0059】ここで、再び図3に示すように、操作者が押すなどして押しボタン22が押し下げられると、プラスブラシ19は、リターンスプリング25の力に逆らってブラシ収容部28aの内周面に沿って下降し、整流子2cに当接する。すると、プラスブラシ19と整流子2cとの間が導通し、整流子2cとマイナスブラシ20との間は定常的に導通しているから、プラスブラシ19と整流子2cとの摺接面で始動回路が閉じ、スタータ1が起動する。
【0060】逆に、操作者が押しボタン22から手を離すと、再び図2に示すように、プラスブラシ19は、リターンスプリング25によりブラシ収容部28aの内周面に沿って押し戻され、整流子2cから引き離される。すると、プラスブラシ19と整流子2cとの間に間隔が生じて導通がなくなり、スタータ1は停止する。次に、本実施例のスタータ1では、変位手段7が、さらにブラシ連動部材としての棒状部材27と押圧スプリング23とをも構成要素に含んでいる。棒状部材27は下端の嵌合凸部27aで、プラスブラシ19の上部の嵌合凹部19aに嵌合しており、プラスブラシ19と一体に連動する。ここで、整流子2cに向かって棒状部材27を押圧している押圧スプリング23の力は、再び図2に示すように押しボタン22が上がっている状態では、逆方向に棒状部材27を押圧しているリターンスプリング25の力よりも弱い。それゆえ、押しボタン22が上がっている状態では、リターンスプリング25の押圧力が押圧スプリング23の押圧力を凌駕しているので、棒状部材27はリターンスプリング25に押し戻されて上昇する。すると、棒状部材27はプラスブラシ19と嵌合して連動しているので、プラスブラシ19も上昇し、プラスブラシ19が整流子2cから離れて導通がなくなるので、スタータ1は停止する。
【0061】逆に、再び図3に示すように押しボタン22が押し下げられている状態、すなわちON状態では、押しボタン22には外力として操作者の押す力などがかかっっている。このON状態では、押しボタン22にかかる外力が、押圧スプリング23の押圧力に加算されてリターンスプリング25の押圧力に打ち勝ち、押しボタン22はブラシ保持部材28のボタン孔28g内を下降している。すると、上端で押しボタン22に、下端で棒状部材27に当接している押圧スプリング23は、所定のバネ弾性力により棒状部材27を下方に押圧付勢する。棒状部材27はプラスブラシ19と連動しているので、プラスブラシ19は整流子2cに押圧スプリング23による所定の押圧力で当接し、導通が生じてスタータ1は駆動される。ここで、プラスブラシ19が整流子2cに当接する押圧力は、外力が直接作用するのではなく、押圧スプリング23のバネ弾性力により生じるので、所定の大きさを越えることがない。
【0062】すなわち、本実施例のスタータ1では、押しボタン22に必要以上の大きな外力が加わった場合にも、プラスブラシ19が整流子2cに当接する押圧力の大きさは適正な範囲を越えることがない。それゆえ、プラスブラシ19が異常に大きな外力で整流子2cに押圧され、摩擦トルクによりスタータ1の軸出力を減殺したり、プラスブラシ19と整流子2cとの摺接面において不必要な摩滅や損耗が生じたり、プラスブラシ19や変位手段7の過大な変形や破壊を招いたりする危険がない。
【0063】したがって、本実施例のスタータ1によれば、変位手段7が簡素な構成で高い信頼性が得られながら、プラスブラシ19の整流子2cへの押圧力が適正な範囲に制限されている。それゆえ、押しボタン22に過大な押圧力がかかっても、過大な押圧力による不都合がなくなり、スタータ1の信頼性が向上し、運用寿命も増大するという効果がある。
【0064】また、整流子2cとの摺接面でプラスブラシ19に生じる振動が、押しボタン22を介して操作者に伝達されることがなく、操作者に不快感を与えないという効果もある。
(実施例1の変形態様1)前述の実施例1のスタータ1の変位手段7の構成が大幅に簡素化されている変形態様が可能である。すなわち、本変形態様では、図9に示すように、変位手段8およびエンドフレーム5’の構成と両ブラシ19’,20’の電気極性とが実施例1と異なり、その他の部分は実施例1と同様である。
【0065】エンドフレーム5’は、実施例1と同様に導電性の金属部材であり、(図中下端に)ブラシ保持部材40を固定保持している。ブラシ保持部材40は、プラスブラシ20’を、整流子2cの摺動面に対して垂直に所定の範囲で移動可能に保持している。ブラシ保持部材40の外側開口部には蓋部材41が固定されており、ブラシ保持部材28の内部にはスプリング42が収納されている。スプリング42は、組付け時に圧縮されて蓋部材41との間にバネ弾性力を生じ、プラスブラシ20’を付勢して整流子2cに常時当接させている。プラスブラシ20は、実施例1と同様のコード43’および端子ボルト(図略)を介して、始動電源の正極に導通している。
【0066】また、エンドフレーム5’は、プラスブラシ20と対向する位置(図中上部)に、変位手段8を介してマイナスブラシ19’を整流子2cに対面して保持している。変位手段8は、主として、エンドフレーム5’の内部に一端部が固定されている板バネ83と、板バネ83の他端部に接合されエンドフレーム5’の貫通孔53から外部に突出している押しボタン81と、マイナスブラシ19’を保持する接合部材82とから構成されている。
【0067】すなわち、板バネ83は、複数のネジ84でエンドフレーム5’の内周面に突出しているマウント部54に一端部を固定されている。板バネ83の他端部は、エンドフレーム5’の貫通孔53をさえぎる位置に延在しており、この他端部に押しボタン81とマイナスブラシ19’とを接合している接合部材82が保持されている。
【0068】接合部材82は、押しボタン81の下端面を板バネ83の上記他端部の一面に当接させて固定するとともに、マイナスブラシ19’の整流子2cと背向する一端面を板バネ83の上記他端部の他の一面に当接させて固定している。つまり、板バネ83の上記他端部と押しボタン81とマイナスブラシ19’とは、接合部材82によって互いに固定され、一体になっている。
【0069】それゆえ、外力受容手段としての押しボタン81に所定の外力が加わると、板バネ83のバネ弾性力に逆らって、マイナスブラシ19’は整流子2cに押しつける方向に付勢される。この際、押しボタン81が貫通孔53をスムースに摺動できるように、押しボタン81には適当な曲率で曲がった形状をしている。板バネ83は曲げ変形が可能であり、スイッチ兼用ブラシであるマイナスブラシ19’を、整流子2cの摺接面に対して略鉛直方向に移動可能に保持しているので、押しボタン81からの押圧力により、マイナスブラシ19’は整流子2cに当接する。すると、始動電源(図略)から端子ボルト(図略)、コード43’、プラスブラシ20’、整流子2c、マイナスブラシ19’、板バネ83、エンドフレーム5’を経てアースEへ通じる始動回路が閉じて始動電流が流れ、スタータ1’が駆動される。
【0070】逆に、押しボタン81にかかっていた外力が無くなると、板バネ83のバネ弾性による回復力により、板バネ83が(図中に破線で示す位置に)伸びる。すると、マイナスブラシ19’は整流子2cと離れて導通がなくなり、スタータ1’は駆動力を失う。それゆえ、実施例1と同様に、押しボタン81を操作者が押したり離したりすることにより、本変形態様のスタータ1’を作動させたり停止させたりすることができる。
【0071】本変形態様では、外力受容手段としての押しボタン81と板バネ83とが変位手段8の主要構成であり、ブラシ保持部材28でスライドレールを形成している前述の実施例1と比較して、変位手段8が極めて簡素である。したがって、本変形態様によれば、実施例1とほぼ同様の効果を達成しながら、実施例1に比べても、いっそう安価で信頼性が高いスタータを提供することができるという効果がある。
【0072】なお、押しボタン81はシリコンゴムからなる柔軟なカバーシート85で覆われており、カバーシート85は全周囲の封止部86でエンドフレーム5’の外周面に接合封止されている。それゆえ、貫通孔53の防塵性および防水性は十分に高く、また、漏電により操作者が感電する危険も防止されている。
(実施例1の変形態様2)前述の実施例1のスタータ1の変位手段7の構成が大幅に簡素化されており、操作者が手を放してもスタータ1”が駆動したままに保たれ、操作者の別の操作によりスタータ1”が停止する変形態様も可能である。
【0073】本変形態様では、図10に示すように、変位手段8’およびエンドフレーム5”の構成が前述の変形態様1と異なり、その他の部分は変形態様1と同様である。たとえば、エンドフレーム5”は、実施例1および変形態様1と同様に導電性の金属部材であり、(図中下端に)変形態様1と同一のブラシ保持部材40を固定保持している。
【0074】エンドフレーム5”は、プラスブラシ20と対向する位置(図中上部)に、変位手段8’を介してマイナスブラシ19’を整流子2cに対面して保持している。変位手段8’は、エンドフレーム5”の内部に両端部が固定されている板バネ83’と、板バネ83’の中央部に接合されエンドフレーム5”の貫通孔53’から外部に突出しているプッシュプル・ノブ81’と、マイナスブラシ19’を保持する接合部材82’とから構成されている。
【0075】すなわち、板バネ83’は、エンドフレーム5’の内周面に突出している左右一対のマウント部54に両端端部を複数のネジ84で固定されており、左右から予備圧縮を受けて定常的に撓んだ状態(挫屈している状態)にある。板バネ83’の中央部は、エンドフレーム5”の貫通孔53’をさえぎる位置に延在しており、この中央部にプッシュプル・ノブ81’とマイナスブラシ19’とを接合している接合部材82が保持されている。
【0076】ここで、プッシュプル・ノブ81’が板バネ83’に当接している端面と、マイナスブラシ19’が板バネ83’に当接している端面とは、適当な曲率の一次局面で凸面を形成している。これは、プッシュプル・ノブ81’によるスイッチング操作で板バネ83’が反りの向きを変えた場合にも、板バネ83’の変形が阻止されて板バネ83’に無理な曲げ応力がかかることを防ぐためである。
【0077】接合部材82’は、プッシュプル・ノブ81’の下端面を板バネ83’の中央部の一面に当接させて固定するとともに、マイナスブラシ19’の整流子2cと背向する一端面を板バネ83’の中央部の他の一面に当接させて固定している。つまり、板バネ83’の中央部とプッシュプル・ノブ81’とマイナスブラシ19’とは、接合部材82’によって互いに固定され、一体になっている。
【0078】それゆえ、外力受容手段としてのプッシュプル・ノブ81’が押されて、所定の外力が軸心方向に加わると、板バネ83’のバネ弾性力に逆らって、マイナスブラシ19’は押し下げられる。すると、圧縮挫屈していた板バネ83’の平衡点を越えて板バネ83’変形が進み、板バネ83’の挫屈が反転して板バネ83’は下へ凸の状態(図中破線)で挫屈する。板バネ83’が下方へ挫屈方向を反転することにより、板バネ83’は、マイナスブラシ19’は整流子2cに押しつける方向に付勢する。板バネ83’は曲げ変形が可能であり、スイッチ兼用ブラシであるマイナスブラシ19’を、整流子2cの摺接面に対して略鉛直方向に移動可能に保持している。
【0079】それゆえ、プッシュプル・ノブ81’にかかっていた外力が無くなっても、挫屈の方向が反転した板バネ83’のバネ弾性力により、マイナスブラシ19’は整流子2cに当接し続ける。すると、始動電源(図略)から端子ボルト(図略)、コード43’、プラスブラシ20’、整流子2c、マイナスブラシ19’、板バネ83’、エンドフレーム5”を経てアースEへ通じる始動回路が閉じ、スタータ1”が駆動される。
【0080】逆に、プッシュプル・ノブ81’に逆方向の外力(引っ張り)が所定の大きさでかかると、板バネ83’の圧縮挫屈の方向が再び反転し、板バネ83がもとの位置(図中実線)に復帰する。すると、マイナスブラシ19’は整流子2cと離れて導通がなくなり、スタータ1”は駆動力を失う。それゆえ、実施例1および変形態様と同様に、プッシュプル・ノブ81’を操作者が押したり引いたりすることにより、本変形態様のスタータ1’を作動させたり停止させたりすることができる。また、プッシュプル・ノブ81’を押したままの状態で放置して、スタータ1”(またはモータ)を駆動している状態に保つことができる。
【0081】本変形態様では、外力受容手段としてのプッシュプル・ノブ81’と板バネ83’とが変位手段8’の主要な構成要素であり、ブラシ保持部材28でスライドレールを形成している前述の実施例1と比較して、変位手段8’が極めて簡素である。したがって、本変形態様によれば、前述の変形態様1と同様に、実施例1よりもいっそう安価で信頼性が高いスタータを提供することができるという効果がある。
【0082】なお、プッシュプル・ノブ81’とエンドフレーム5’との摺動面の付近に、防塵防水用のシール部材を設け、貫通孔53’の防塵性および防水性を向上させている構成も可能である。また、板バネ83’の両端部のネジ84を通す孔に遊びを与え、プッシュプル・ノブ81’に代わって押しボタンとした構成のさらなる変形態様も可能である。このさらなる変形態様では、押しボタンが押されている間だけ、板バネ83’の中央部が下に凸に曲げ変形し、マイナスブラシ19’が整流子2cに当接してスタータが駆動される。そして、押しボタンが放置されると、板バネ83’が復帰してマイナスブラシ19’が整流子2cから離れ、スタータの駆動力が失われる。以上の動作は、前述の実施例1および変形態様1と同様である。
【0083】(実施例1のその他の変形態様)本実施例または変形態様1,2のさらなる変形態様として、モータ回転子2のコイル辺の外周面に整流子が形成されておりいるスタータへの本発明の適用が可能である。同変形態様では、上記整流子面に摺接するブラシのうち少なくとも一つが、変位手段7,8,8’のうちいずれかで保持されている。
【0084】〔実施例2〕
(実施例2の構成)本発明の実施例2としてのスタータ1Aは、図11に示すように、モータ回転子2’の後端面(図中右端面)にフェース型整流子2c’が形成されている。また、これに当接するブラシ19”,20”は、エンドフレーム50にそれぞれ保持されている。
【0085】すなわち、エンドフレーム50は樹脂からなる絶縁性の一体成形部材であって、継鉄3の後端に接合固定されており、中央部で軸受け16を介してモータ回転子2’の後端部を回転自在に支持している。エンドフレーム50の円盤部55の内側面側には、マイナスブラシ保持部56およびプラスブラシ保持部57が形成されており、それぞれマイナスブラシ20”およびプラスブラシ19”を出力軸2aの軸長方向に変位可能に保持している。
【0086】マイナスブラシ20”は、マイナスブラシ保持部56に保持され、マイナスブラシ保持部56を外側から閉止している蓋部材41に一端を当接しているスプリング42に付勢されて、フェース型整流子2c’に常に当接している。一方、プラスブラシ19”は、プラスブラシ保持部57と、プラスブラシ保持部57の後背面に形成されている円筒部58などとから構成されている変位手段7’により、外部からの操作で変位可能に保持されている。
【0087】変位手段7’は、エンドフレーム50の一部として一体に形成されているプラスブラシ保持部57および円筒部58と、円筒部58に組つけられている押しボタン22、押圧スプリング23、棒状部材27、ワッシャ24,26およびリターンスプリング25から構成されている。変位手段7’の構成および作用は、エンドフレーム50と一体にプラスブラシ保持部57および円筒部58が成形されている点を除き、実施例1とほぼ同様である。
【0088】すなわち、プラスブラシ19”はスイッチ兼用ブラシであって、変位手段7’の押しボタン22が押し込まれている間のみフェース型整流子2c’に当接し、押しボタン22への外力が無くなるとフェース型整流子2c’から離れる。本実施例のスタータ1Aのその他の構成は、実施例1のスタータ1の構成と同様である。
【0089】(実施例2の作用効果)本実施例のスタータ1Aにおいても、実施例1の整流子2cを有するスタータ1と同様の作用により、実施例1と同様に優れた効果を発揮する。本実施例によればさらに、エンドフレーム50と一体にプラスブラシ保持部57および円筒部58が成形されているので、組み立てコストが低減され、本発明のスタータをいっそう安価に提供できるようになるという効果がある。
【0090】(実施例2の各種変形態様)本実施例に対しても、前述の実施例1に対するその変形態様1,2に相当する変形態様を実施することができる。すなわち、スイッチ兼用ブラシが、片持ち板バネ83(図9参照)や両持ち板バネ83’(図 参照)に変位可能に支持されている変形態様が可能である。
【0091】また、本実施例の技術は、電機子の後端面とは別に、モータ回転子2の一部に同軸に設けられた円板面に整流子面が形成されているフェース整流子をもつスタータにも適用可能である。なお、以上のいずれの実施例および変形態様においても、操作は手動で可能であるばかりでなく、足踏み操作など手動以外の人力操作あるいは機械力操作でも操作することができる。
【0092】〔実施例3〕
(実施例3の構成)本発明の実施例3としてのスタータは、図1に示すように、前述の実施例1のスタータ1を改修し、電磁コイル203によって吸引される可動鉄心201の変位作用により、押しボタン22’の操作ができるようにしたものである。
【0093】すなわち、本実施例においては、変位手段7’のみが実施例1の変位手段7と異なっており、他の構成は実施例1と同様である。変位手段7’は、可動鉄心201と通電されると可動鉄心201を内側(図中下方)に引き込む電磁コイル203とを主要構成要素としているアクチュエータ71と、実施例1の変位手段7とおおむね同一の中間変位手段72とからなる。アクチュエータ71の可動鉄心201は、下端部で中間変位手段72の押しボタン22’と一体に接合されており、可動鉄心201および押しボタン22’は互いに連動している。
【0094】中間変位手段72は、ブラシ保持部材28’、棒状部材27、リターンスプリング25、押圧スプリング23、押しボタン22’およびワッシャ23,26からなる。中間変位手段72は、実施例1と同様にブラシ保持部材28’によりエンドフレーム50の上部の取り付け孔51に嵌合して、エンドフレーム50に固定されている。ブラシ保持部材28’がエンドフレーム50と嵌合する部分の規格(寸法形状等)は、実施例1のブラシ保持部材28と同一である。中間変位手段72が実施例1の変位手段7と構成上異なる点は、押しボタン22’の中央に貫通孔22aが開いていることと、ブラシ保持部材28’の円筒部28bの外周面に雄ねじ10が形成されていることである。いずれの相違点も、アクチュエータ71の取り付けを可能にするためのものである。
【0095】いっぽうアクチュエータ71は、可動鉄心201、フレーム202、電磁コイル203、巻き枠(ボビン)204、カバー205、スリーブ206、プレート207から構成されている。フレーム202は、軟磁性体から形成され、アクチュエータ71の磁気回路の一部を構成する有底中空円筒部材であり、底部(図中上部)には可動鉄心201の一端を通す貫通孔が形成されている。フレーム202の内部空間には、内周面に沿って巻き枠204に巻線されている中空円筒状の電磁コイル203が収容されて固定されている。軟磁性体からなるリング状のプレート207は、巻き枠204の一端に当接してフレーム202の内周面に固定されており、フレーム202および可動鉄心201とで磁気回路を構成する。
【0096】さらに、巻き枠204の貫通孔の内周面には、摺動性のよい被磁性体材料(たとえばテフロン樹脂)からなる円筒面の肉圧が薄いスリーブ206が接合されている。スリーブ206の内周面の形成する円筒形の空洞には、可動鉄心201がスリーブ206に沿って図中上下方向に変位可能に保持されている。可動鉄心201の先端部(下端部)には突起201aがあり、突起201aは押しボタン22’の頂面中央に開口している貫通孔22aに挿入された上で潰されてかしめられている。突起201aの貫通孔22aでのかしめにより、可動鉄心201と押しボタン22’とは連結されている。
【0097】カバー205は、フレーム202、スリーブ206、および可動鉄心201の底部(図中上端部)を覆う樹脂であり、可動鉄心201付近への塵埃や水分・油分の浸入を防止している。以上の構成を持つアクチュエータ71は、フレーム202の下端部の内周面に形成された雌ねじを、前述のブラシ保持部材28’の外周面に形成されている雄ねじ10と螺合させることにより、ブラシ保持部材28に固定されている。
【0098】(実施例3の作用効果)本実施例のスタータ1Bでは、電磁コイル203に通電されると、磁気吸引力によって可動鉄心201が吸引されて下降し、押しボタン22を押し下げ、押圧スプリング23の付勢力を介して棒状部材27を押し下げる。すると、棒状部材27の先端部は実施例1と同様にプラスブラシ19と嵌合しているので、可動鉄心201と連動してプラスブラシ19が整流子2cに押し当てられる。
【0099】その際の摺動面19cに作用する押圧力は、押圧スプリング23のバネ弾性力によって適正な範囲に制限されている。それゆえ、可動鉄心201によって過大な衝撃力が生じても、摺動面19cには伝達されず、摺動面19cは過大な操作力から保護されている。アクチュエータ71の変位作用により、可動鉄心201と連動してプラスブラシ19が整流子2cに押し当てられると、プラスブラシ19と整流子2cとの間が導通しスタータが駆動される。
【0100】逆に、電磁コイル203への通電が遮断されると、圧縮されていたリターンスプリング25のバネ弾性力で、可動鉄心201は元の位置(図12参照)に復帰する。同時に、プラスブラシ19は、棒状部材27等を介して可動鉄心201に連動しているので、整流子2cから引き離されて導通が失われ、スタータ1Bに駆動力は作用しなくなる。
【0101】したがって、本実施例のスタータ1Bによれば、前述の実施例1の効果に加えて、次のような効果がある。すなわち、アクチュエータ71および中間変位手段72からなる変位手段70の採用により、始動電流に耐える大容量のメインスイッチを必要とせず、始動系の構成が簡素になる。それゆえ、始動系全体のコストダウンになるうえ、信頼性も向上している。
【0102】さらに、人力によらずにスタータ1Bの駆動と停止とができる。それゆえ、操作者が近寄りにくい環境で使用される場合にも、キースイッチ等により遠隔操作ができ、安全であるまたは便利であるという効果がある。また、前述のようにブラシ保持部材28’の規格が実施例1のブラシ保持部材28の規格と同一であり、本実施例の変位手段70と実施例1の変位手段7との間に互換性がある。それゆえ、実施例1のスイッチ操作を人力によって行う型のスタータ1と、本実施例のキースイッチ等で電気的にスイッチ操作を行う型のスタータ1Bとを、大半の部品を共通にして製造することができる。同じ理由で、製造出荷時は人力型のスタータ1であっても、納入先でオプションとして変位手段7を変位手段70に交換し、電磁力型のスタータ1Bに改造することが容易にできるようになるという効果もある。
【0103】(実施例3の各種変形態様)本実施例においても、前述の各種整流子に対応して変位手段70の位置とプラスブラシ19の形状とを変えることにより、各種変形態様が可能である。
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【出願日】 平成8年(1996)5月20日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
【公開番号】 特開平9−310666
【公開日】 平成9年(1997)12月2日
【出願番号】 特願平8−124786