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【発明の名称】 スタータ
【発明者】 【氏名】村田 光広

【氏名】山之内 親也

【目的】
【構成】
【特許請求の範囲】
【請求項1】軸上にピニオンが配された出力軸と、モータの回転速度を減速する遊星歯車減速装置と、この遊星歯車減速装置の遊星ギヤの公転力を受けて回転するアウタ、前記出力軸の後端に形成されたインナ、前記アウタと前記インナとの間に介在されたローラから成る一方向クラッチとを備え、前記遊星ギヤを支持するピンが、前記ローラの側方を通って前記アウタに固定されていることを特徴とするスタータ。
【請求項2】請求項1に記載したスタータにおいて、前記一方向クラッチは、前記ローラの軸方向の移動を規制する規制プレートが前記アウタの端面に配されて、この規制プレートが前記ピンに固定されていることを特徴とするスタータ。
【請求項3】請求項2に記載したスタータにおいて、前記アウタは、前記規制プレートが配された端面と反対側の端部に前記規制プレートとともに前記ローラの軸方向の移動を規制する規制部が一体に設けられて、その規制部の内周面および前記規制プレートの内周面が前記インナの外周面または前記出力軸の外周面に当接していることを特徴とするスタータ。
【請求項4】請求項2に記載したスタータにおいて、前記規制プレートは、前記アウタの両端面に配されて、それぞれ前記ピンに固定されていることを特徴とするスタータ。
【請求項5】請求項4に記載したスタータにおいて、前記規制プレートの内周面が前記インナの外周面または前記出力軸の外周面に当接していることを特徴とするスタータ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エンジンを始動させるためのスタータに関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、遊星歯車減速装置と一方向クラッチを備えたスタータが公知である(実開昭50−45522号公報参照)。このスタータの遊星歯車減速装置と一方向クラッチの構造を図3に基づいて説明する。遊星歯車減速装置は、アーマチュアシャフト100の外周に形成されたサンギヤ110、このサンギヤ110に噛み合う遊星ギヤ120、この遊星ギヤ120と噛み合うインターナルギヤ130、遊星ギヤ120の公転力が伝達されて回転するプラネットキャリア140より構成されている。なお、遊星ギヤ120は、プラネットキャリア140に固定されたピン150の外周に軸受160を介して回転自在に支持されている。一方向クラッチは、プラネットキャリア140と軸方向にずれた位置で一体に設けられたアウタ170、出力軸180の後端部に形成されたインナ190、アウタ170とインナ190との間に介在されたローラ200より構成されて、ローラ200の軸方向の移動を規制する規制プレート210がクラッチカバー220によってプラネットキャリア140にかしめ固定されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記のスタータは、一方向クラッチを構成するアウタ170、ローラ200、インナ190、および規制プレート210以外の部品、即ちクラッチカバー220を必要とするため、部品点数が増加して、それに伴う組付け上の工数も増加する。また、プラネットキャリア140の内周面が出力軸180の外周面に当接してアウタ170の芯出しが行われているが、軸方向においてローラ200の片側だけで芯出しする構造であるため、高速回転時にアウタ170のバランスが崩れ易く、アウタ170に偏荷重が加わった時に遊星歯車減速装置の各ギヤ類が破損する等の問題が生じる。これに対し、規制プレート210の内周面を出力軸180の外周面に当接させてローラ200の両側で芯出しを行う方法が考えられるが、この場合、規制プレート210がクラッチカバー220でプラネットキャリア140(アウタ170)にかしめ固定されているため、アウタ170に対して規制プレート210が径方向にずれる可能性があり、確実に芯出しを行うことは困難である。
【0004】さらに、ピン150を通じて遊星ギヤ120の公転力がプラネットキャリア140に伝達される駆動時には、プラネットキャリア140に対するピン150の圧入部分151に高い荷重が発生するため、ピン150の圧入部分151の長さlを長く取る必要がある。この結果、プラネットキャリア140を軸方向に長くしなければならず、軸方向の全長が長くなってスタータの小型化に反するという問題が生じる。本発明は、上記事情に基づいて成されたもので、第1の目的はスタータ全長の短縮化を図ること、第2の目的は部品点数および組付け工数の低減を図ること、第3の目的はアウタの芯出しを確実に行うことにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
(請求項1の構成)軸上にピニオンが配された出力軸と、モータの回転速度を減速する遊星歯車減速装置と、この遊星歯車減速装置の遊星ギヤの公転力を受けて回転するアウタ、前記出力軸の後端に形成されたインナ、前記アウタと前記インナとの間に介在されたローラから成る一方向クラッチとを備え、前記遊星ギヤを支持するピンが、前記ローラの側方を通って前記アウタに固定されていることを特徴とする。
【0006】(請求項1の作用および効果)本発明では、ピンとローラとが軸方向に対向することなく、ピンがローラの側方を通って直接アウタに固定されている。これにより、アウタ自体を遊星歯車減速装置のプラネットキャリアとして構成することができるため、従来のスタータ(アウタとプラネットキャリアとが軸方向にずれた構造のスタータ)と比較してプラネットキャリアの分だけ軸方向の長さを短くできる。
【0007】(請求項2の構成)請求項1に記載したスタータにおいて、前記一方向クラッチは、前記ローラの軸方向の移動を規制する規制プレートが前記アウタの端面に配されて、この規制プレートが前記ピンに固定されていることを特徴とする。
(請求項2の作用および効果)規制プレートをピンに固定したことにより、従来使用していた規制プレートを固定するための固定部材(従来のクラッチカバー)が不要となる。これにより、部品点数および組付け工数が低減されて、コストダウンを図ることができる。
【0008】(請求項3の構成)請求項2に記載したスタータにおいて、前記アウタは、前記規制プレートが配された端面と反対側の端部に前記規制プレートとともに前記ローラの軸方向の移動を規制する規制部が一体に設けられて、その規制部の内周面および前記規制プレートの内周面が前記インナの外周面または前記出力軸の外周面に当接していることを特徴とする。
(請求項3の作用および効果)ピンに固定された規制プレートの内周面とアウタの端部に設けられた規制部の内周面がインナの外周面または出力軸の外周面に当接することで、ローラの両側でアウタの芯出しを行うことができる。この場合、規制プレートとアウタがピンを介して固定されるため、アウタに対して規制プレートが径方向にずれることはなく、確実にアウタの芯出しを行うことができる。
【0009】(請求項4の構成)請求項2に記載したスタータにおいて、前記規制プレートは、前記アウタの両端面に配されて、それぞれ前記ピンに固定されていることを特徴とする。
(請求項4の作用および効果)アウタに対してピンを軸方向に貫通させることで、アウタの両端面に規制プレートを配置してそれぞれピンに固定することができる。この場合、アウタにローラの移動を規制する規制部が不要となるため、アウタの形状を単純化できる。
【0010】(請求項5の構成)請求項4に記載したスタータにおいて、前記規制プレートの内周面が前記インナの外周面または前記出力軸の外周面に当接していることを特徴とする。
(請求項5の作用および効果)アウタの両端面に規制プレートを配置した構造においても、その両方の規制プレートの内周面をインナの外周面または出力軸の外周面に当接させることにより、ローラの両側でアウタの芯出しを行うことができる。この場合、各規制プレートがそれぞれピンを介してアウタに固定されるため、アウタに対して規制プレートが径方向にずれることはなく、確実にアウタの芯出しを行うことができる。
【0011】
【実施例】次に、本発明のスタータの実施例を図面に基づいて説明する。図1はスタータの要部断面図である。本実施例のスタータ1は、通電を受けてアーマチュアシャフト2に回転力を発生するモータ3、このモータ3の前方側(図1の左方側)でアーマチュアシャフト2と同一軸上に配された出力軸4、この出力軸4の外周に軸受5を介して嵌合するピニオン6、モータ3の回転速度を減速する遊星歯車減速装置(後述する)、この遊星歯車減速装置から出力軸4へ回転力を伝達する一方向クラッチ(後述する)、モータ3への通電およびピニオン6の押し出し力を発生するマグネットスイッチ7等より構成されている。
【0012】(モータ3の説明)モータ3は、アーマチュアシャフト2を有するアーマチュア8、このアーマチュア8の外周に配置される固定磁極9、および固定磁極9を内周面に固定する円筒状のヨーク10等より構成されて、図示しないスタータスイッチがON操作されてマグネットスイッチ7に内蔵された接点(図示しない)が閉じることにより、アーマチュア8が通電されて回転する。
【0013】(出力軸4の説明)出力軸4は、その先端部が軸受11を介してフロントハウジング12の先端部に回転自在に支持されて、後端側が軸受13を介してセンタケース14に回転自在に支持されている。出力軸4の後端中央部には、軸方向に沿った中空筒状の凹部が形成されており、この凹部内に軸受15を配置してアーマチュアシャフト2の先端を回転自在に支持している。なお、センタケース14は、遊星歯車減速装置および一方向クラッチの外周を覆って、ヨーク10とともにフロントハウジング12とリヤハウジング16との間に挟持されて、複数のスルーボルト17により全体が固定されている。
【0014】(ピニオン6の説明)ピニオン6は、出力軸4の外周にヘリカルスプライン嵌合するスプラインチューブ18と一体に設けられている。このピニオン6は、スプラインチューブ18がレバー19を介して出力軸4上をヘリカルスプラインに沿って前方へ押し出されることにより、エンジンのリングギヤ20と噛み合うことができる。レバー19は、一端がスプラインチューブ18の外周に係合されて、他端がマグネットスイッチ7の先端側に突出するロッド21に係合され、中間部でフロントハウジング12の支持部12aに揺動自在に支持されている。
【0015】(遊星歯車減速装置の説明)遊星歯車減速装置は、モータ3の回転速度を減速して出力トルクを増大する減速装置であり、アーマチュアシャフト2の外周に形成されたサンギヤ22、このサンギヤ22に噛み合う3個の遊星ギヤ23、各遊星ギヤ23と噛み合うインターナルギヤ24、および遊星ギヤ23の公転力が伝達されるプラネットキャリア25より構成されている。サンギヤ22は、アーマチュアシャフト2と一体に回転することでアーマチュアシャフト2の回転を3個の遊星ギヤ23に伝達する。
【0016】3個の遊星ギヤ23は、それぞれプラネットキャリア25に固定されたピン26に軸受27を介して回転自在に支持されており、サンギヤ22およびインターナルギヤ24と噛み合いながらサンギヤ22の外周を公転する。インターナルギヤ24は、センタケース14の円筒壁14aの内周面に形成されている。プラネットキャリア25は、一方向クラッチのアウタ(プラネットキャリア25と同符号を付す)と一体を成すもので、遊星ギヤ23の公転力が伝達されて回転する。このプラネットキャリア25には、3つの貫通孔が開けられており、その貫通孔にそれぞれピン26が圧入固定されている。
【0017】(一方向クラッチの説明)一方向クラッチは、アウタ25、インナ28、ローラ29、スプリング(図示しない)等より構成される。アウタ25は、その内周面に複数の楔状カム室(図示しない)が形成されて、このカム室にローラ29を収容する。このカム室は、アウタ25の円周方向に等間隔で複数設けられている。なお、プラネットキャリア25に設けられた貫通孔は、カム室と干渉することなく、カム室を避けて形成されていることは言うまでもない。従って、貫通孔に圧入されるピン26とカム室に収容されるローラ29との関係で言えば、ピン26はローラ29の側方を通ってプラネットキャリア25の貫通孔に圧入固定されていることになる。但し、ピン26は必ずしもローラ29の径方向の外周を通って配置する必要はなく、貫通孔がカム室を避けていれば、ピン26とローラ29の位置が径方向に重なっていても良い。
【0018】アウタ25の一方(図1の左方)の端部には、ローラ29の軸方向の移動を規制する規制部25aが一体に設けられている。この規制部25aは、アウタ25の端部を内周側へ板壁状に延設したもので、その内周面が出力軸4の外周面に当接されている。また、アウタ25の他方の端面には、規制部25aとともにローラ29の軸方向の移動を規制する規制プレート30が配されている。この規制プレート30は、プラネットキャリア25に固定されたピン26に圧入固定されて、その内周面がインナ28の外周面に当接されている。インナ28は、出力軸4の後端部が径方向に拡大して設けられている。ローラ29は、円柱形状に設けられており、アウタ25が回転するとカム室の狭い方へ押し付けられてアウタ25とインナ28とをロックすることによってアウタ25の回転をインナ28へ伝達する。スプリングは、ローラ29とともにカム室に収容されて、ローラ29をカム室の狭い方へ押圧している。
【0019】(マグネットスイッチ7の説明)マグネットスイッチ7は、前述のスタータスイッチがON操作されて内蔵するコイル(図示しない)が通電されると、コイルに発生する磁力によってスイッチ内部に収容されたプランジャ(図示しない)を吸引する。その結果、モータ3の接点を閉じるとともに、ロッド21を通じてレバー19を揺動操作してピニオン6の押し出し力を発生する。
【0020】次に、スタータ1の作動を説明する。スタータスイッチがON操作されると、マグネットスイッチ7によりモータ3の接点が閉じてアーマチュア8が通電されることにより、アーマチュア8に回転力が発生する。これにより、アーマチュアシャフト2とともにサンギヤ22が回転して3個の遊星ギヤ23を回転駆動する。各遊星ギヤ23は、サンギヤ22とともにインターナルギヤ24とも噛み合っているが、インターナルギヤ24がセンタケース14に設けられて回転しない構造であることから、各遊星ギヤ23はピン26を中心に自転しながらサンギヤ22の外周を公転する。この公転力は、ピン26を介してプラネットキャリア25(即ちアウタ25)に伝達され、さらにアウタ25の回転がローラ29を介してインナ28へ伝達されることにより、出力軸4が回転駆動する。
【0021】一方、出力軸4に嵌合するピニオン6は、マグネットスイッチ7の吸引力により、レバー19を介してスプラインチューブ18と一体に出力軸4の軸上を前方(図示左方)へ押し出されてリングギヤ20と噛み合うことにより、モータ3の回転力をリングギヤ20に伝達する。その後、エンジンが始動してピニオン6がリングギヤ20により高速で回されると、インナ28の回転がアウタ25の回転より速くなるが、インナ28とアウタ25との間でローラ29がカム室の広い方へ移動してインナ28とアウタ25とのロックを解除することにより、インナ28からアウタ25へ回転力が伝達されることはなく、アーマチュア8のオーバランを防止できる。
【0022】(本実施例の効果)本実施例では、プラネットキャリア25にピン26を圧入して、そのピン26にローラ29の軸方向の移動を規制する規制プレート30を固定しているため、従来使用していた規制プレート30を固定するための固定部材(例えばクラッチカバー)が不要となる。これにより、部品点数の削減とともに組付け工数を低減できることから、コストダウンを図ることができる。ピン26に固定された規制プレート30の内周面とアウタ25の端部に設けられた規制部25aの内周面がインナ28の外周面および出力軸4の外周面に当接することで、ローラ29の両側でアウタ25の芯出しを行うことができる。これにより、アウタ25のバランスが向上して、無負荷回転数程の高回転においてもアウタ25のバランスが崩れることなく安定するため、アウタ25のアンバランスが原因で生じる騒音を低減できるとともに、偏荷重を防止できることから遊星歯車減速装置の各ギヤ等の破損も防止できる。
【0023】ピン26とローラ29とが軸方向に対向することなく、ピン26がローラ29の側方を通ってプラネットキャリア25に固定されている。これにより、アウタ25とプラネットキャリア25とを一体に構成できるため、従来のスタータ(アウタ25とプラネットキャリア25とが軸方向にずれた構造のスタータ)と比較してプラネットキャリア25の分だけ軸方向の長さを短くできる。また、本実施例の構造によれば、従来のスタータと比較してプラネットキャリア25に対するピン26の圧入部分の長さを長く取ることができるため、ピン26の圧入部分の面圧が低減できることからピン26の小径化が可能である。
【0024】(第2実施例)図2はスタータ1の要部断面図である。本実施例は、アウタ25の両端面にそれぞれ規制プレート30、31を配置して、各規制プレート30、31をピン26に圧入固定した場合の一例を示すものである。この場合、ローラ29の移動を規制する規制部25a(図1参照)が不要となることから、アウタ25の形状を単純化できて製造が容易になる。
【0025】(変形例)第1実施例では、アウタ25の一方の端部に規制部25aを設けて、他方の端面に規制プレート30を配置したが、その逆でも良い。即ち、アウタ25の一方の端面に規制プレート30を配置して、他方の端部に規制部25aを一体に設けても良い。第1実施例では規制部25aの内周面を、第2実施例では規制プレート31の内周面をそれぞれ出力軸4の外周面に当接させているが、インナ28の軸方向の幅をピニオン6側へ拡大して、規制部25aの内周面および規制プレート31の内周面をインナ28の外周面に当接させるように構成しても良い。各実施例では、プラネットキャリア25に貫通孔を形成して、その貫通孔にピン26を圧入固定しているが、必ずしも貫通孔の全長までピン26を圧入する必要はなく、駆動時の荷重に耐え得るピン26の圧入長さを確保できれば、プラネットキャリア25の途中まで圧入する構造としても良い。
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【出願日】 平成7年(1995)9月18日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】石黒 健二
【公開番号】 特開平9−88780
【公開日】 平成9年(1997)3月31日
【出願番号】 特願平7−238127