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【発明の名称】 エンジンスタータ用オーバランニングクラッチ
【発明者】 【氏名】田島 智仁

【目的】
【構成】
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ピニオン駆動軸(7)に摺動自在にスプライン嵌合されるクラッチケース(12)内に、ピニオン駆動軸(7)に回転及び摺動自在に嵌合されるピニオン(14)の軸部(14a)をクラッチローラ(15)を介して嵌装し、クラッチケース(12)の開口部の内周面に形成された環状の係止溝(25)に環状のカバー(27)の外周縁を固定的に係止すると共に、その内周縁を前記軸部(14a)に相対回転可能に係止してなる、エンジンスタータ用オーバランニングクラッチにおいて、ピニオン(14)の軸部(14a)の外周面に、クラッチローラ(15)の外端に対面してその軸方向の動きを規制する鍔部(26)を形成し、カバー(27)を、当初の円錐形から平板状に塑性変形されることに伴い、クラッチケース(12)の係止溝(25)に外周縁が食込む環状の本体部(27a)と、この本体部(27a)の内周縁に一体に連なり前記鍔部(26)に相対回転可能に係合する断面L字状のビード部(27b)とで構成したことを特徴とする、エンジンスタータ用オーバランニングクラッチ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エンジンスタータ用オーバランニングクラッチに関し、特に、ピニオン駆動軸に摺動自在にスプライン嵌合されるクラッチケース内に、ピニオン駆動軸に回転及び摺動自在に嵌合されるピニオンの軸部をクラッチローラを介して嵌装し、クラッチケースの開口部の内周面に形成された環状の係止溝に環状のカバーの外周縁を固定的に係止すると共に、その内周縁を前記軸部に相対回転可能に係止してなる、エンジンスタータ用オーバランニングクラッチの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】かゝるオーバランニングクラッチにおいて、カバーを当初の円錐形状から平板状に塑性変形させることにより、カバーの外周縁を拡張させると共に内周縁を収縮させ、その外周縁をクラッチケース内周の係止溝に、また内周縁をピニオンの軸部外周の係止溝にそれぞれ係合させたものが既に知られている(例えば、実開昭59−144232号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】かゝるオーバランニングクラッチでは、クラッチケース内の潤滑用グリースの漏出を防ぐために、カバーの外周縁をクラッチケース内周の係止溝に緊密に食い込ませる必要がある。しかしながら、従来のものでは、前述のようにカバーの塑性変形時、その内、外両周縁を収縮及び拡張させるので、それぞれの収縮・拡張量を一定に制御することが困難であり、例えば内周縁の収縮量が多い場合には外周縁の拡張量が少なくなり、その外周縁の前記係止溝への緊密な食い込みが得られないことがある。
【0004】本発明は、かゝる事情に鑑みてなされたもので、カバーの塑性変形時、その内周縁の収縮を抑制することにより、その外周縁を常に確実に前記係止溝に緊密に食い込ませ、しかもこのカバーによりクラッチケース及びピニオンの軸方向の連結を可能にした前記オーバランニングクラッチを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明は、ピニオンの軸部の外周面に、クラッチローラの外端に対面してその軸方向の動きを規制する鍔部を形成し、カバーを、当初の円錐形から平板状に塑性変形されることに伴い、クラッチケースの係止溝に外周縁が食込む環状の本体部と、この本体部の内周縁に一体に連なり前記鍔部に相対回転可能に係合する断面L字状のビード部とで構成したことを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を、図面に示す本発明の一実施例に基いて説明する。
【0007】図1は自動車用エンジンスタータの要部縦断面図である。同図において、スタータモータ1のステータ2の前端に減速ケース3が、更にその前端にピニオンケース4が順次結合される。減速ケース3の後壁にはスタータモータ1のロータ軸5がローラベアリング6を介して支承され、また減速ケース3の前壁及びピニオンケース4の前壁にはピニオン駆動軸7がプレーンベアリング8,9を介して支承され、両軸5,7間を連結する歯車減速機10が減速ケース3に収容される。
【0008】ピニオン駆動軸7には、オーバランニングクラッチ11のクラッチケース12がヘリカルスプライン13を介して摺動自在に嵌装され、またピニオン14が回転及び摺動自在に嵌装される。クラッチケース12内にはピニオン14の軸部14aが複数のクラッチローラ15を介して嵌装される。クラッチローラ15は、従来普通のように、クラッチケース12からピニオン14への一方向のみの動力伝達に寄与する。このクラッチローラ15の周面を潤滑するために、クラッチケース12内にはグリースが充填される。
【0009】ピニオン14はオーバランニングクラッチ11と共に実線示の後退位置と鎖線示の前進位置との間を移動し得るもので、その前進位置には、ピニオン14が噛合すべきエンジンのリングギヤ16が待機させてある。
【0010】クラッチケース12の後端には、外周に環状の連結溝17を有するボス12aが一体に連設されており、その連結溝17に、ピニオンケース4に揺動可能に軸支18されたシフトレバー19の一端が係合され、その他端は、電磁アクチュエータ20における可動コア21の前方突出軸21aに連結される。
【0011】可動コア21は戻しばね22により常時前方へ付勢される。この可動コア21を後方へ吸引作動するソレノイド23はピニオンケース4の側方膨出部4aに固定され、そして図示しないエンジンのステータスイッチを介して電源に接続される。電磁アクチュエータ20の後側にはスタータモータ1の起動スイッチ24が付設される。この起動スイッチ24は、可動コア21が前方位置を占めるとき開状態を保ち、後方位置にくると閉状態となるよう、可動コア21に連動している。
【0012】而して、図示しないスタータスイッチを入れて電磁アクチュエータ20のソレノイド23を励磁させれば、その吸引力により可動コア21は戻しばね22の弾発力に抗して後方へ移動し、シフトレバー19を介してオーバランニングクラッチ11をピニオン14と共に前方へ移動させ、ピニオン14をリングギヤ16に噛合させる。これと略同時に、可動コア21は起動スイッチ24を閉じてスタータモータ1を起動するので、ロータ軸5は歯車減速機10を介してピニオン駆動軸7を減速駆動し、更にオーバランニングクラッチ11を介してピニオン13を駆動し、これによりリングギヤ16を回転してエンジンを始動させる。
【0013】エンジンの始動に伴い、リングギヤ16からピニオン14に逆負荷が加わると、オーバランニングクラッチ11は伝動遮断状態となるので、スタータモータ1への逆負荷の伝達が阻止される。
【0014】エンジンの始動後、スタータスイッチを切ってソレノイド23を消磁させれば、上記と戻しばね22の反発力によりピニオン14は後退してリングギヤ16から離脱し、可動コア21が前方に移動して起動スイッチ24を開状態にし、スタータモータ1の作動を停止させる。
【0015】さて、前記オーバランニングクラッチ11の詳細を図2及び図3により説明する。
【0016】クラッチケース12は、その後面を閉じる端壁12bを有すると共に前面を開口しており、その開口部内周面には環状の係止溝25が設けられる。その際、係止溝25の内方側面25aは、クラッチケース12に収容されるクラッチローラ15の外端面と一致、もしくはそれより若干外方寄りに位置するように形成される。また係止溝25の外方側面25bの高さは内方側面25aより低くなるように、クラッチケース12の入口径D2 (図3(A)参照)が設定される。
【0017】一方、クラッチローラ15を介してクラッチケース12内に嵌装されるピニオン14の軸部14aは、その先端がクラッチケース12の端壁12b内面に相対回転可能に当接するように配置され、該軸部14aの外周には、クラッチローラ15の外端に対面してその軸方向移動を抑える環状の鍔部26が一体に形成される。この鍔部26及び前記係止溝25を利用して鋼板製の環状のカバー27によりクラッチケース12及び軸部14aが次のように軸方向に連結される。
【0018】即ち、カバー27は、環状の本体部27aと、その内周縁に一体に連なる環状のビード部27bとからなっているが、その本体部27aは、図3の(A)に示すように、当初円錐形をなしている。この円錐形時の本体部27aの外径D1 は、クラッチケースの入口径D2 より僅かに小さく形成される。そして、この本体部27aは、平板状に塑性変形されたとき前記係止溝25の内径D3 より大径になり得るようになっている。またビード部27bは、前記鍔部26の外周面及び外端面に対面し得るよう断面L字状に形成されている。
【0019】カバー27の取付けに当っては、先ず図3(A)に示すように、円錐形の本体部27aを持つカバー27をピニオン14の外周面に案内させつゝ係止溝25に向わせ、本体部27aの外周縁を係止溝25の内方側面25aに当接させる。次いで図3(B)に示すように、加圧治具28によりビード部27bを、これが鍔部26の外端面に当接するまで押圧して、カバー27の本体部27aを円錐形から平板状に塑性変形させる。これに伴い本体部27aの外周縁は半径方向外方へ拡張する。このとき剛性が比較的高いビード部27bは、本体部27aの内周縁の収縮、即ち半径方向内方への移動を抑えるため、本体部27aの外周縁の拡張、即ち半径方向外方への移動が促進される。その結果、本体部27aの外周縁が係止溝25の底面に強く食い込み、クラッチケース12と緊密に結合することができる。したがって、そのカバー27によりクラッチケース12内の潤滑用グリースの漏出を防ぐことができる。同時にビード部27bが鍔部26に係合することによりクラッチケース12及びピニオン14が互いに軸方向に連結される。
【0020】ところで、本体部27aの平板状の変形量は、ビード部27bが鍔部26の外端面に当接することにより規制されるので、加圧治具28の押圧力がクラッチローラ15に加わることを回避でき、その損傷を防ぐことができる。
【0021】しかも治具28のビード部27bに対する押圧力を解除すれば、本体部27aのスプリングバックによりビード部27bは鍔部26の外端面から僅かに離れるので、ビード部27b及び鍔部26の相対回転は何等妨げられない。
【0022】本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱することなく、種々の設計変更が可能である。
【0023】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、ピニオンの軸部の外周面に、クラッチローラの外端に対面してその軸方向の動きを規制する鍔部を形成し、カバーを、当初の円錐形から平板状に塑性変形されることに伴い、クラッチケースの係止溝に外周縁が食込む環状の本体部と、この本体部の内周縁に一体に連なり前記鍔部に相対回転可能に係合する断面L字状のビード部とで構成したので、カバーの本体部の平板状への塑性変形時には、ビード部により本体部の内周縁の収縮を抑制して外周縁の拡張を促し、これにより外周縁の前記係止溝への食い込みが常に緊密に行われ、クラッチケースからの潤滑用グリースの漏出防止が確実となる。そしてカバーは、そのビード部を前記鍔部に係合させることにより、クラッチケース及びピニオンを軸方向に確実に連結することができる。しかもビード部を前記鍔部に当接させることにより、カバーの塑性変形量を規制し得るので、カバーからクラッチローラに過度の押圧力が加わることを回避できる。
【出願人】 【識別番号】000253075
【氏名又は名称】澤藤電機株式会社
【出願日】 平成7年(1995)9月22日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】落合 健 (外1名)
【公開番号】 特開平9−88779
【公開日】 平成9年(1997)3月31日
【出願番号】 特願平7−244895