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【発明の名称】 エンジン始動装置
【発明者】 【氏名】富田 佳治

【目的】
【構成】
【特許請求の範囲】
【請求項1】リングギアが設けられたクランク軸を有するエンジンを始動するためのエンジン始動装置において、前記エンジンに固定されるハウジングと、このハウジングに回転自在に軸支されるとともに前記エンジンのリングギアに離脱可能に噛合するピニオンと、前記ハウジングに設けられ、回転軸が前記ピニオンの軸に略平行に配設されるとともに前記ピニオンに回転力を伝達するためのスタータモータと、前記スタータモータの回転力を前記ピニオンに伝達する回転力伝達手段とを備え、前記スタータモータの軸心を前記ピニオンの軸心よりも前記リングギアの軸心に近接して設けたことを特徴とするエンジン始動装置。
【請求項2】請求項1に記載のスタータにおいて、前記回転力伝達手段を収容するケーシングを有し、前記ケーシングの前記ピニオンと同軸配置された部分の外径よりも前記スタータモータの外径を小さくしたことを特徴とするエンジン始動装置。
【請求項3】請求項1または2に記載のスタータにおいて、前記回転力伝達手段は前記スタータモータの回転を前記ピニオンに減速して伝達する減速機構を有することを特徴とするエンジン始動装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エンジン始動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に車両用エンジンはスタータ(エンジン始動装置)により始動されるが、通常、スタータはモータ、減速機構及びピニオンを備え、モータの発生トルクはスタータの減速機構で増倍された後、ピニオン及びリングギアを介してクランク軸に伝達される。
【0003】図5に従来のエンジン始動装置の配置例を模式的に示す。エンジン1のクランク軸11の右方に位置してピニオン2を回転自在に軸支するハウジング3及びピニオン2を図示しない減速機構を通じて駆動するスタータモータ4が配設され、ハウジング3は図示しないブラケットなどでエンジン1のブロック12やフライホイールハウジング(図示せず)などに固定されている。図3からわかるように、例えばスタータモータ4の熱保護などの理由から、スタータモータ4はエンジン1のブロック12から離して配設するのが通常であり、その結果、スタータモータ4の軸心40は、ピニオン2の軸心20よりもクランク軸11の軸心10から離れて配設されている。5はピニオン2と噛合可能なリングギアである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のエンジン始動装置ではスタータモータ4、特に軸受け部位やコンミテータなどの部位に加わるエンジン振動の低減及びそれによるスタータモータの信頼性向上が課題となっていた。本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、スタータモータの振動の低減及びそれによるスタータモータの信頼性向上が可能なエンジン始動装置を提供することを、その目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】本発明は、上記課題を解決するために、請求項1ないし3に示した構成を採用した。請求項1では、スタータモータの軸心をピニオンの軸心よりもリングギアの軸心(クランク軸の軸心)に近接して設けているので、エンジンから受けるスタータモータの振動を低減できることがわかった。その理由を以下に述べる。
【0006】エンジンの振動ベクトルは主にピストンの往復運動による直線振動ベクトル成分とクランク軸の回転による回転振動ベクトル成分との合成ベクトルであって、特に回転振動ベクトル成分はクランク軸を中心としてその周方向に作用する。つまり、ピストンの運動は爆発工程(クランク軸加速期間)と圧縮工程(クランク軸減速期間)とが交互に発生するので、それに伴ってクランク軸の発生トルクが周期変動する。したがって、回転振動ベクトル成分は、このクランク軸の発生トルクの周期変動の反作用としてエンジンブロックが逆方向に回転振動することに起因して主に生じるものである。
【0007】更に説明すれば、このエンジンブロックのクランク軸から距離γ離れた点における回転振動の最大振幅Wはθmaxを最大ふれ角とすれば、W=γ・θmaxで表される。すなわち、クランク軸の軸心から離れるほど上記回転振動及び上記回転振動ベクトル成分に共振するエンジンブロックの回転振動は増大することになる。
【0008】これに対し本発明では、スタータモータの軸心がピストンの軸心よりもクランク軸の軸心に近接する側に配置したので、スタータモータの軸心がピニオンの軸心よりもクランク軸の軸心から離れて配置される従来のエンジン始動装置の配置方式やピニオンの軸がスタータモータの軸に同軸配置された配置方式に比べて、スタータモータの軸心とクランク軸の軸心との距離を低減でき、これにより上述の式からわかるようにスタータモータの振動を低減し、その耐久性を向上することができる。
【0009】請求項2では、請求項1のスタータに加えて、スタータモータの外径を回転力伝達手段を収容するケーシングのピニオンと同軸配置された部分の外径よりも小さくしたので、スタータをエンジンブロックから最短距離に近づける場合に、エンジンをクランク軸方向から見て、ピニオンを配置する位置の背後にケーシングを配置できるスペースがあれば、スタータモータの軸心をピニオンの軸心よりもリングギアの軸心に近接できるとともに、ピニオンの軸方向から見たケーシングの外形内にスタータモータを完全に内包するように配置することができる。すなわち、スタータモータの振動を低減できるとともに、ケーシングの外形より外側にスタータモータをはみ出して装着する必要が無くなることから、スタータのエンジンへの装着自由度が格段に向上し、ひいてはエンジン側から見てスタータモータ部の更に外側にスペースが空くので他のエンジン補機類の装着性も向上する。
【0010】請求項3では、回転力伝達手段をスタータモータの回転をピニオンに減速して伝達する減速機構を備えるものとした。このことは、ピニオンへ伝達される回転速度は減速される代わりに回転トルクは増加するので、スタータモータとしては小型で高回転のモータを採用することができ、モータを小型化してスタータモータの軸心をピニオンの軸心よりもリングギアの軸心に近接することができ、スタータモータの振動を更に低減できるとともに、スタータモータの反エンジン側にスペースが空き、他のエンジン補機類の装着性が一段と向上する。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な実施形態を実施例に基づいて説明する。
(第1実施例)本発明のエンジン始動装置100を有するV型エンジンの一実施例を図1に示し、図2にエンジン始動装置(スタータ)の側面図を示す。
【0012】エンジン1のクランク軸11の図中右方に位置して、ピニオン2を回転自在に収容するハウジング3と、ピニオン2を減速機構6(図2参照)を通じて駆動するスタータモータ4とが配設され、ハウジング3は図示しないブラケットなどで、エンジン1のブロック12やフライホイールハウジング(図示せず)などに固定され、スタータモータ4はハウジング3に締結されている。
【0013】減速機構6は、スタータモータ4の出力軸41の先端に形成されたギヤ部41aと、ピニオン出力軸21に設けられたギヤ22と、これらギヤ部41aとギヤ22に係合するアイドルギア30とから構成される。図1からわかるように、本実施例では、スタータモータ4の出力軸41の軸心40がピニオン2の軸心20よりもクランク軸11の軸心10に近接して配設されている点を特徴としている。5はピニオン2と噛合可能なリングギアである。
【0014】良く知られているように、スタータのモータ4の出力軸41が駆動されると、減速機構6を通じてピニオン2が減速回転され、その始動トルクはリングギア5により更に減速されてクランク軸11に伝達され、エンジン1が始動される。このようにすれば、上述した理由により何ら特別の部品を付加したり、特別の工程を付加することなくスタータモータ4の振動を低減することができる。
【0015】なお、本実施例のエンジン始動装置は、上述したピニオン2、ハウジング3、減速機6及びスタータモータ4を含み、更に、図2に示すようにスタータモータ4の駆動制御及びピニオン2とリングギア5との係合を行うマグネットスイッチ7を有している。なお、この実施例では、ハウジング3にピニオン2と同軸状になるようにマグネットスイッチ7を取り付けるようにしているが、スタータモータ4の軸心40と一致していてもよく、マグネットスイッチ7の軸心は、ピニオン2の軸心20やスタータモータ4の軸心40と一致していなくてもよい。
【0016】また、本実施例では、スタータモータ4の出力は減速機構6を介してピニオン2に伝達されているが、スタータモータの軸心40とピニオンの軸心20が平行に配置されれば、その間の伝達機構は減速を伴う必要は特になく、単なる歯車機構やベルト機構などの回転力伝達手段でも良い。更に本実施例では、上方からエンジン1を俯瞰した場合にエンジン始動装置100がエンジンブロック12から横へはみ出すこともないので、全体の体格の圧縮の点でも有利である。
【0017】なお、各軸心10、20、40は平行配置されている。
(第2実施例)図3および図4に本発明の第2実施例を示し、第1実施例と異なる部分について詳細に説明する。図3は本実施例をエンジンのクランク軸11方向から見た図、図4はスタータの本発明に関する部分の部分断面図である。
【0018】本実施例のスタータは、図4に示すように、ピニオン2を回転自在に収容するハウジング3と、ピニオン2を減速機構6を通じて駆動するスタータモータ4と、減速機構6を収容するセンターケース13と、スタータモータ4の後方に配置され、スタータモータ4への通電制御及びピニオン2とリングギア5との係合を行うマグネットスイッチ7等で構成されている。
【0019】スタータモータ4の出力軸41とピニオン出力軸21とは回転力伝達手段である減速機構6によって連結しており、減速機構6は、スタータモータ4の出力軸41の先端に配設されたギヤ部41aと、ピニオン出力軸21に設けられた内歯歯車61とから構成されている。センターケース13(ケーシング)内には減速機構6の内歯歯車61が収容され、スタータモータ4はセンターケース13を介してハウジング3に図示されないボルトで締結されている。
【0020】ピニオン出力軸21は前端側(図4中左方)で軸受け31を介してハウジング3に軸支され、後端側では内歯歯車61の前方で軸受け13aを介してセンターケース13に軸支されている。ピニオン出力軸21の一部には外周にヘリカルスプライン21aが形成され、これとスプライン嵌合する一方向クラッチ15を介してピニオン2がピニオン出力軸21上を軸方向摺動可能に配設されて、ピニオン出力軸21の回転をピニオン2に伝達している。
【0021】スタータモータ4の外径はセンターケース13の内歯歯車61を収容する部分の最外径より小さく形成されており、スタータモータ4の軸心40は丁度ピニオン2の軸心20よりもクランク軸11の軸心10側へ寄せて配設されている(図3参照)。マグネットスイッチ7はスタータモータ4の後方に配設され、樹脂等の絶縁材料で形成されたスイッチカバー80によってスタータモータ4のエンドフレーム43の更に後方に装着されており、スイッチカバー80の下方に図示されない車載バッテリから通電されるバッテリ端子72が突設されている。
【0022】マグネットスイッチ7のプランジャ71の作動は、紐状の連結部材9に伝達され、スイッチカバー80内に設けられた滑車81で伝達方向を変換されて、スタータモータ4のヨーク42内を通ってレバー8に伝達され、レバー8の回動によってピニオン2はリングギア5と噛み合うことができる。以上のように構成すれば、ピニオン出力軸21方向から見たセンターケース13の外形内にスタータモータ4を配置することができる上に、スタータモータ4の軸心40をピニオン出力軸21の軸心20よりリングギア5の軸心10に近接できるので、エンジンの回転振動に起因するスタータモータ4の振動を低減することができるとともに、スタータをエンジンに装着したときに、センターケース13とスタータモータ4を同時にエンジン1に近接でき、スタータモータ4の更に外側に他のエンジン補機装置を配置できるスペースが生まれ、エンジン補機類の装着性が向上する。
【0023】本実施例では、マグネットスイッチ7をスタータモータ4の後方に配置したのでピニオン2の軸方向から見たスタータモータより後方の投影形状はセンターケース13の外形内に完全に収容される形に構成されているが、通常スタータモータ4より外形が小さいマグネットスイッチ7は、スタータモータ4の反エンジンブロック側にスタータモータ4と平行に配置されるだけでもエンジンへの装着性が向上することは言うまでもない。
【0024】また、図4ではバッテリ端子72を図中下方のスタータモータ4の外形を縮小した側に配置して、説明と理解がしやすいようにしてあるが、センターケース13に対するスタータモータ4の偏心方向とバッテリ端子72との関連性はないので、自由な方向に配置して装着性を向上できることに支障はない。
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【出願日】 平成8年(1996)6月5日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
【公開番号】 特開平9−88777
【公開日】 平成9年(1997)3月31日
【出願番号】 特願平8−143043