トップ :: F 機械工学 照明 加熱 武器 爆破 :: F02 燃焼機関;風力原動機,ばね原動機,重力原動機;他類に属さない機械動力または反動推進力を発生するもの




【発明の名称】 車両用冷却水温度制御システム
【発明者】 【氏名】鈴木 和貴

【氏名】山中 保利

【目的】
【構成】
【特許請求の範囲】
【請求項1】水冷式エンジンと、このエンジンと冷却水回収通路により接続されて、その冷却水回収通路を通って前記エンジンより回収された冷却水を貯留して保温する保温容器と、前記冷却水回収通路に前記エンジンから前記保温容器へ向かって冷却水を流すポンプと、前記エンジン停止後の冷却水温度を検出する水温検出手段と、この水温検出手段の検出値に基づいて前記エンジン停止後の冷却水温度が略最高温度に達したか否かを判定する最高温度判定手段と、この最高温度判定手段で前記冷却水温度が略最高温度に達したと判定された時に前記ポンプを起動させる制御装置とを備えた車両用冷却水温度制御システム。
【請求項2】前記水温検出手段の検出値から設定時間当たりの温度上昇量を算出する温度上昇量算出手段を備え、前記最高温度判定手段は、前記温度上昇量算出手段で算出された温度上昇量が設定温度上昇量以下となった時に前記冷却水温度が略最高温度に達したと判定することを特徴とする請求項1に記載した車両用冷却水温度制御システム。
【請求項3】前記エンジン始動時に前記保温容器に保温されている冷却水を前記エンジンへ供給する冷却水供給手段を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載した車両用冷却水温度制御システム。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エンジン停止後の冷却水を保温する保温容器を備えた車両用冷却水温度制御システムに関する。
【0002】
【従来の技術】本出願人は、エンジン停止時にエンジンから保温容器へ冷却水(温水)を回収し、エンジン始動時に保温容器内に保温されていた温水をエンジン内へ戻すことでエンジンの即効暖機を行う暖機システムを提案した(特願平7−8611)。この暖機システムでは、エンジンから保温容器へ冷却水を回収する時(または保温容器からエンジンへ冷却水を戻す時)に、保温容器内の空気をエンジン内へ(またはエンジン内の空気を保温容器内へ)送り込むための空気抜き通路が設けられており、エンジンと保温容器との間で冷却水と空気との入れ換えを行うことができるため、効率良く即効暖機を行うことができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、先願のシステムに限らず、保温容器に冷却水を貯留して保温するシステムでは、保温容器と言えどもある程度の温度降下は避けられないため、エンジン始動時の暖機効果を高めるためには、より高温の冷却水を保温することが望まれる。しかし、先願のシステムでは、例えばイグニッションスイッチのOFF信号を検知した時に冷却水の回収が行われるため、必ずしもその時の冷却水温度が最も高いとは言えない。即ち、車両走行後にエンジンを停止した場合は、大なり小なり冷却水温度が上昇する現象(所謂デッドソーク)が生じるため、エンジン停止時(イグニッションスイッチ:OFF)の冷却水温度が最も高いとは言えず、先願のシステムではエンジン停止時より高温の冷却水を保温容器に保温することができないという問題があった。本発明は、上記事情に基づいて成されたもので、その目的は、エンジンが停止した後、より高温の冷却水をエンジンから保温容器に回収して保温することのできる車両用冷却水温度制御システムを提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
(請求項1の構成)水冷式エンジンと、このエンジンと冷却水回収通路により接続されて、その冷却水回収通路を通って前記エンジンより回収された冷却水を貯留して保温する保温容器と、前記冷却水回収通路に前記エンジンから前記保温容器へ向かって冷却水を流すポンプと、前記エンジン停止後の冷却水温度を検出する水温検出手段と、この水温検出手段の検出値に基づいて前記エンジン停止後の冷却水温度が略最高温度に達したか否かを判定する最高温度判定手段と、この最高温度判定手段で前記冷却水温度が略最高温度に達したと判定された時に前記ポンプを起動させる制御装置とを備える。
【0005】(請求項1の作用および効果)エンジン停止後の冷却水温度が略最高温度に達した場合にポンプを駆動してエンジンから保温容器へ冷却水を回収することができる。即ち、従来システムと比べて、より高温の冷却水を保温容器に回収して保温することができる。
【0006】(請求項2の構成)請求項1に記載した車両用冷却水温度制御システムにおいて、前記水温検出手段の検出値から設定時間当たりの温度上昇量を算出する温度上昇量算出手段を備え、前記最高温度判定手段は、前記温度上昇量算出手段で算出された温度上昇量が設定温度上昇量以下となった時に前記冷却水温度が略最高温度に達したと判定することを特徴とする。
【0007】(請求項2の作用および効果)エンジン停止後の冷却水温度が略最高温度に達したか否かの判定は、エンジン停止後の冷却水温度の上昇率(設定時間当たりの温度上昇量の変化度合い)によって容易に判定することができる。具体的には、エンジン停止後の冷却水温度の上昇率が大きい時(設定時間当たりの温度上昇量が設定温度上昇量より大きい時)は、まだ冷却水温度が上昇すると言える。そこで、冷却水温度の上昇率が小さくなって設定時間当たりの温度上昇量が設定温度上昇量以下となった時に、エンジン停止後の冷却水温度が略最高温度に達したと判定することができる。
【0008】(請求項3の構成)請求項1または2に記載した車両用冷却水温度制御システムにおいて、前記エンジン始動時に前記保温容器に保温されている冷却水を前記エンジンへ供給する冷却水供給手段を備えていることを特徴とする。
(請求項3の作用および効果)エンジン始動時には、従来システムと比べてより高温の冷却水を保温容器からエンジンへ供給して即効暖機を行うことができるため、エンジン始動性が向上する。
【0009】
【実施例】次に、本発明の車両用冷却水温度制御システムの実施例を説明する。図1は車両用冷却水温度制御システムの全体構成図である。車両用冷却水温度制御システムS(以下、本システムSと言う)は、水冷式エンジン1、このエンジン1を通って冷却水が循環する冷却水回路2、内部に貯留した冷却水を保温する保温容器3、冷却水回路2を通じてエンジン1と保温容器3とを連絡する冷却水通路4と空気抜き通路5、冷却水通路4に介在された電動ポンプ6、および本システムSを制御する制御装置7(図2参照)等より構成されている。
【0010】エンジン1は、シリンダブロックおよびシリンダヘッドの内部に冷却水回路2に通じるウォータジャケット(図示しない)が設けられて、このウォータジャケットを流れる冷却水によって冷却される。冷却水回路2は、エンジン1により駆動される機械式のメインポンプ8、エンジン1を冷却して加熱された冷却水の熱をクーリングファン(図示しない)の送風を受けて大気に放出するラジエータ9、高温の冷却水を熱源として通過する空気(車室内へ送風される空気)を加熱するヒータコア10が設けられている。
【0011】保温容器3は、内部に所定量(例えば約3リットル)の冷却水を貯留して長時間保温することができる。具体的には、外気温0℃の時に、約85℃の冷却水を12時間経過後に約78℃まで保温できる。冷却水通路4は、一端が電磁弁11を介して冷却水回路2のラジエータ9より下流に接続されて、他端が保温容器3内に開口する。但し、この冷却水通路4は、エンジン1から保温容器3へ冷却水を回収するための冷却水回収通路(図中実線矢印で示す通路)と、保温容器3からエンジン1へ冷却水を戻すための冷却水リターン通路(図中破線矢印で示す通路)とを構成し、前記の電磁弁11と冷却水通路4に介在された2個の電磁弁12、13により冷却水回収通路と冷却水リターン通路とが切り替えられる。
【0012】空気抜き通路5は、一端が保温容器3内に開口し、他端が冷却水回路2のラジエータ9より上流に接続されて、冷却水通路4を通ってエンジン1から保温容器3へ冷却水を回収する際、および保温容器3からエンジン1へ冷却水を戻す際に、冷却水の流れ方向と逆向きに空気が流れる。つまり、冷却水通路4(冷却水回収通路)を通ってエンジン1から保温容器3へ冷却水を回収する際には、保温容器3内の空気が空気抜き通路5を通ってエンジン1へ送り込まれ、冷却水通路4(冷却水リターン通路)を通って保温容器3からエンジン1へ冷却水を戻す際には、エンジン1内の空気が空気抜き通路5を通って保温容器3へ送り込まれる。また、この空気抜き通路5には、空気抜き通路5を開閉する電磁弁14が設けられている。
【0013】電動ポンプ6は、モータ(図示しない)により回転駆動される遠心式ポンプで、冷却水通路4に冷却水の流れ(図1に矢印で示す)を発生させる。制御装置7は、下記の運転モード毎に、電動ポンプ6、電磁弁11〜14の作動を制御する(図2参照)。運転モードは、車両走行中におけるエンジン1の負荷状態が低い時の低負荷モード、エンジン1の負荷状態が高い時の中・高負荷モード、エンジン停止後にエンジン1から保温容器3へ冷却水を回収する冷却水回収モード、およびエンジン始動時に保温容器3からエンジン1へ冷却水を戻す冷却水リターンモードが設定されている。
【0014】なお、エンジン1の負荷状態は、例えばインテークマニホールド(図示しない)の圧力変化を電圧変化に置き換えて検出するプレッシャセンサ15(図2参照)の検出信号に基づいて判定することができる。また、冷却水回収モードは、保温容器3内に回収された冷却水の水位が予め設定された上限水位に達した時点で終了する。一方、冷却水リターンモードは、保温容器3内の水位が予め設定された下限水位まで低下した時点で終了する。冷却水の水位は、水位センサ16(図2参照)で検知することができる。
【0015】ここで、各運転モード毎のメインポンプ8、電動ポンプ6、各電磁弁11〜14の作動状態を下記の表1に示す。
【表1】

【0016】次に、冷却水回収モードと冷却水リターンモードについて説明する。
イ)冷却水回収モードエンジン停止後、各電磁弁11〜14の作動を表1に示すように制御するとともに、電動ポンプ6を作動させてエンジン1内の冷却水を保温容器3内へ回収する。この時、冷却水が保温容器3内へ回収されるに従って保温容器3内の空気が押し出され、空気抜き通路5を通ってエンジン1内(特にシリンダヘッド内のウォータジャケット)へ送り込まれる。これにより、保温容器3内には高温の冷却水が貯留されて、エンジン1内のウォータジャケットは空気通路(空気槽)となっている。但し、この冷却水回収モードでは、より高温の冷却水を保温容器3に回収させる目的で、エンジン停止後に冷却水温度が上昇する所謂デッドソーク現象(図4参照)における冷却水の最高温度域を判定して、その最高温度域に達した冷却水が回収される(この時の作動は後述する)。
【0017】ロ)冷却水リターンモードエンジン1の始動とともに各電磁弁11〜14の作動を表1に示すように制御し、電動ポンプ6を作動させて、保温容器3内に貯留されていた高温の冷却水をエンジン1へ戻す。この時、冷却水がエンジン1内へ戻るのに従ってエンジン1内の空気が押し出され、空気抜き通路5を通って保温容器3内へ送り込まれるため、エンジン1内は高温の冷却水で満たされ、保温容器3内は略空の状態となる。なお、本発明の冷却水供給手段は、冷却水通路4(冷却水リターン通路)と電動ポンプ6から成る。
【0018】次に、冷却水回収モードを行う時の作動を図3に示すフローチャートに従って説明する。まず、エンジン1が運転状態であるか停止状態であるかを判定する。具体的には、イグニッション信号(IG信号)を検出し(ステップS1)、その検出されたIG信号のON/OFF状態を判定する(ステップS2)。この判定でIG信号がOFFの場合(判定結果:NO)、即ちエンジン1が運転状態にある場合は、エンジン冷却のために冷却水を保温容器3へ回収することはできない。従って、電動ポンプ6は停止(ステップS8)となり、冷却水の回収は行われない(ステップS9)。
【0019】ステップS2の判定でIG信号がONの場合(判定結果:YES)、即ちエンジン1が停止状態の場合は、冷却水回路2に設けられた水温センサ17(図1参照)により冷却水温度(水温Tw)を検出する(ステップS3)。続いて、エンジン停止後の冷却水温度の上昇量を算出する(ステップS4・本発明の温度上昇量算出手段)。具体的には、ステップS3で検出した水温Twと1回前に検出した水温Tw-1 との温度差(Tw−Tw-1 )を温度上昇量ΔTw(図4参照)として算出する。なお、図4に示すグラフは、エンジン停止後の冷却水温度の変化を示したものである。
【0020】続いて、ステップS4で算出された温度上昇量ΔTwと予め設定された設定温度上昇量ΔTとを比較判定する(ステップS5・本発明の最高温度判定手段)。この判定でΔTw>ΔTの場合(判定結果:NO)は、「温度上昇量が大きく、まだ水温は上昇する」と判断して、電動ポンプ6を作動させることなく、ステップS1へリターンして再度ステップS1以下の処理を繰り返す。一方、ステップS5の判定でΔTw≦ΔTの場合(判定結果:YES)は、「温度上昇量が小さく、この当たりが略最高温度である」と判断し、電動ポンプ6を作動(ステップS6)させて冷却水の回収を実行する(ステップS7)。
【0021】(本実施例の効果)エンジン停止後の冷却水温度が略最高温度に達した時(ΔTw≦ΔT)に電動ポンプ6を駆動してエンジン1から保温容器3へ冷却水を回収することができる。即ち、エンジン1が停止した後、最も高温となった冷却水を保温容器3に回収して保温できる。従って、エンジン始動時には、従来システムと比べてより高温の冷却水を保温容器3からエンジン1へ供給できるため、エンジン始動性が向上する。また、本システムSでは、冷却水回収モードにおいてエンジン1内の冷却水と保温容器3内の空気とを入れ換えてエンジン1内のウォータジャケットを空気通路(空気槽)とすることができる。このため、エンジン始動時に保温容器3に貯留されていた高温の冷却水をエンジン1内へ戻した時に、エンジン1の壁温(特に燃焼室の壁温)上昇が早く、且つ壁温が高くなる。従って、エンジン始動とともに瞬時に即効暖機を行うことができるため、燃焼状態が改善されて排気ガスの低減および低燃費化を図ることができる。
【0022】(変形例)本システムSでは、ラジエータ9へ流れる冷却水流量を電磁弁11の作動によって制御しているが、冷却水回路2にラジエータ9をバイパスするバイパス水路と、ラジエータ9への水路を開閉するサーモスタットを設けて、このサーモスタットによりラジエータ9へ流れる冷却水流量を制御しても良い。この場合、電磁弁11を廃止できることは言うまでもない。本システムSでは、冷却水通路4に遠心式の電動ポンプ6を設けたが、冷却水回収モード時と冷却水リターンモード時とで逆回転することにより冷却水の流れ方向を反転できるポンプ(例えばギヤポンプ)を用いても良い。この場合、冷却水回収通路と冷却水リターン通路とを共通化して冷却水通路4を簡素化できる。
【0023】本システムSは、保温容器3に貯留された冷却水の熱エネルギを、エンジンオイルの温度制御、自動変速機に用いられる作動油の温度制御、スロットルボディでの凍結防止、吸気温制御等に利用することもできる。上記実施例では、冷却水回収モードおよび冷却水リターンモードの際に、保温容器3内の水位を水位センサ16で検知する例を説明したが、冷却水の回収およびリターンに要する時間を予め計測しておき、その所要時間に基づいて各モード毎の作動時間をタイマで設定して行っても良い。
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【出願日】 平成7年(1995)8月31日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】石黒 健二
【公開番号】 特開平9−68144
【公開日】 平成9年(1997)3月11日
【出願番号】 特願平7−222821