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【発明の名称】 スタータ用マグネットスイッチ
【発明者】 【氏名】新美 正巳

【氏名】志賀 孜

【氏名】林 信行

【氏名】大見 正昇

【目的】
【構成】
【特許請求の範囲】
【請求項1】 スタータモータへの通電を行うためのスタータ用マグネットスイッチであって、バッテリに電気的に接続された固定接点と、この固定接点に対向して設けられ、かつ固定接点に向かって移動する第1の可動接点及び、第2の可動接点と、この第2の可動接点に接点圧を与える抵抗体からなる弾性部材とを備え、前記固定接点、前記第2の可動接点、及び前記弾性部材を介して、前記スタータモータに前記バッテリ電流を通電する第1の導通回路を構成し、次いで、前記弾性部材をバイパスして前記バッテリを前記スタータモータに通電する第2の導通回路とを構成することを特徴とするスタータ用マグネットスイッチ。
【請求項2】 通電されると吸引力を発生する吸引コイルと、スタータモータに通電を行う第1の可動接点と、この第1の可動接点と接続し、抵抗体をなす弾性部材と、この弾性部材上に配設された第2の可動接点と、前記第1の可動接点及び第2の可動接点と対向して配設され、かつバッテリに電気的に接続される固定接点と、前記第1の可動接点と前記第2の可動接点を備えるプランジャシャフトを有し、前記吸引コイルの吸引力によって、前記固定接点方向に、前記第1の可動接点と前記第2の可動接点を移動させるプランジャとを備え、前記第2の可動接点は、前記吸引コイルの吸引力による前記プランジャの移動によって、前記固定接点に当接し、前記弾性部材の弾性力により、接点圧を付与され、前記第2の可動接点、前記弾性部材、前記第1の可動接点を介して前記スタータモータに通電され、次いで、前記第1の可動接点は前記固定接点に当接し、前記バッテリの電流が前記スタータモータに通電されることを特徴とするスタータ用マグネットスイッチ。
【請求項3】 前記固定接点は前記第1の可動接点が当接する第1の当接部と、前記第2の可動接点が当接する第2の当接部とを有し、前記第1の可動接点から前記第1の当接部までの距離より、前記第2の可動接点から前記第2の当接部までの距離の方が、短いことを特徴とする請求項2記載のスタータ用マグネットスイッチ。
【請求項4】 金属性材料からなる前記弾性部材は、前記第1の可動接点に接続する第1の略直線部と、この第1の略直線部の一端と接続される螺旋部と、この螺旋部に接続され、前記固定接点に対向する位置に延びる第2の略直線部とからなり、前記第2の略直線部に前記第2の可動接点が配設されていることを特徴とする請求項2または3記載のスタータ用マグネットスイッチ。
【請求項5】 前記スタータモータには、界磁装置として永久磁石が設けられ、マグネットスイッチの非作動時には、前記弾性部材の反スタータモータ端が前記バッテリのアース側に電気的に接続された導電部材に接続されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のスタータ用マグネットスイッチ。
【請求項6】 エンジンを駆動するための出力軸と、前記スタータモータのアーマチャシャフトと前記出力軸との間に設けられ、前記アーマチャシャフトの回転を減速して、前記出力軸に伝える減速機構とを前記スタータモータに給電することにより作動させる請求項5記載のスタータ用マグネットスイッチ。
【請求項7】 前記バッテリのアース側に接続するステーショナリコアを有し、前記第2の可動接点と当接する前記固定接点の当接面が、平面とこの平面から連続して形成された傾斜面とからなり、前記平面に前記第2の可動接点が当接し、次いで、前記第1の可動接点が前記固定接点に当接する際、前記第2の可動接点が前記平面から前記傾斜面に移動して当接するとともに、前記ステーショナリコアと前記第2の可動接点との間に所定の隙間を有することを特徴とする請求項2または3記載のスタータ用マグネットスイッチ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、内燃機関始動用として用いられるスタータ用マグネットスイッチに関するものである。
【0002】
【従来の技術】特開平4ー303521号公報には、ボビンに励磁コイルが巻装され、このボビンの内側に配置されたプランジャの後端側に一体的にロッドが延設され、このロッド上には、絶縁モールド材にて固定された副可動接点(第1の可動接点)と絶縁モールド材にて固定された主可動接点(第2の可動接点)が配設されており、この副可動接点及び主可動接点に対向する位置に一対の固定接点が設けられ、副可動接点と主可動接点とは固定接点側にロッド上に配置したそれぞれの接点圧スプリングにより押圧され、副可動接点は大きな電気抵抗を有し、主可動接点は小さな電気抵抗を有しているスタータ用マグネットスイッチが開示されている。
【0003】この構成により、励磁コイルが通電されるとプランジャが吸引され、まず、電気抵抗の大きな副可動接点が固定接点に当接し、モータをゆっくり回転させ、さらに、プランジャが吸引されると、電気抵抗の小さな主可動接点が固定接点に当接し、モータを全力で回転させ、モータのピニオンと内燃機関のリングギヤとの噛合性の向上を図るものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記スタータは、第1の可動接点と第2の可動接点とを固定接点に2段階に当接させるため、第1の可動接点と第2の可動接点とにそれぞれ2つの可動接点とは別体の接点圧スプリングを必要としており、このため、接点圧スプリングが増え、部品点数が増加する問題があった。
【0005】そこで、本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、弾性部材自身が抵抗体をなし、接点に接点圧を付与し、好適に第2の可動接点を固定接点あるいは第1の可動接点に2段階に当接させることができるスタータ用マグネットスイッチを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1では、固定接点は、バッテリに電気的に接続され、第1の可動接点及び、第2の可動接点は固定接点と電気的に接続される場合、バッテリをスタータモータに通電し、弾性部材は抵抗体をなすとともに、第2の可動接点に接点圧を与え、そして、固定接点、第2の可動接点、及び弾性部材を介してスタータモータにバッテリ電流を与える第1の導通回路を構成し、次いで、前記弾性部材をバイパスして前記バッテリを前記スタータモータに通電する第2の導通回路を構成したので、弾性部材は、それ自身が抵抗体をなすとともに弾性力を有する接点圧スプリングを兼ね、好適に第2の可動接点を固定接点あるいは第1の可動接点に当接させることができるとともに、部品点数を減少させることができる。
【0007】請求項2では、第1の可動接点は、スタータモータに通電を行い、第2の可動接点は、第1の可動接点と接続した抵抗体をなす弾性部材上に配設され、プランジャシャフトによって、第1の可動接点と弾性部材とが移動自在に支持され、プランジャは、吸引コイルの吸引力によって吸引され、固定接点は、第1の可動接点及び第2の可動接点と対向して配設され、かつバッテリに電気的に接続されており、第2の可動接点は、吸引コイルの吸引力によるプランジャの移動によって、固定接点に当接し、弾性部材の弾性力により、接点圧が付与され、バッテリの電流が第2の可動接点、弾性部材、第1の可動接点を介してスタータモータに通電され、次いで、第1の可動接点は固定接点に当接し、スタータモータに通電される構成としたので、弾性部材は、それ自身が抵抗体をなすとともに弾性力を有する接点圧スプリングを兼ね、第2の可動接点を備えているため、第1および第2の可動接点を直接プランジャシャフト上に担持する必要がなく、構造が簡素になるので組み付けが容易になり、安価なマグネットスイッチが供給できる。
【0008】請求項3では、請求項2記載のスタータ用マグネットスイッチに対し、固定接点は第1の可動接点が当接する第1の当接部と第2の可動接点が当接する第2の当接部とを有し、第1の可動接点から第1の当接部までの距離より、第2の可動接点から第2の当接部までの距離の方が、短いので、第2の可動接点が固定接点に当接し、その後、第1の可動接点が固定接点に当接するため、第2の可動接点、第1の可動接点の順に簡単な構造で確実に2段階に当接させることができる。
【0009】請求項4では、金属性材料からなる弾性部材は、第1の可動接点に当接する第1の略直線部と、この第1の略直線部の一端と接続される螺旋部と、この螺旋部に接続され、固定接点に対向する位置に延びる第2の略直線部とからなり、第2の略直線部に前記第2の可動接点が配設されているので、螺旋部で自在に抵抗値を設定できる。
【0010】請求項5では、スタータモータには界磁装置として永久磁石が設けられ、マグネットスイッチの非作動時には、前記弾性部材の反スタータモータ端が前記バッテリのアース側に電気的に接続された導電部材に接続されている構成としたので、スタータモータが惰性回転で回転し、起電力により発生する発電電圧を抵抗体からなる弾性部材を経て短絡させることにより、スタータモータを急激に停止させることができる。
【0011】請求項6では、エンジンを駆動するための出力軸と、スタータモータのアーマチャシャフトと出力軸との間に設けられ、アーマチャシャフトの回転を減速して、出力軸に伝える減速機構とを前記スタータモータに給電することにより作動させる構成としたので、請求項5の効果により、スタータモータが急激に停止できるため、スタータが惰性で回転しているときに作動して、ピニオンがリングギヤに噛み合い、過大な衝撃が発生する機会が格段に減少し、動力伝達機構部である減速機構が損傷することを防止できる。
【0012】請求項7では、バッテリのアース側に接続するステーショナリコアを有し、第2の可動接点と当接する固定接点の当接面が、平面とこの平面から連続して形成された傾斜面とからなり、平面に第2の可動接点が当接し、次いで、第1の可動接点が固定接点に当接する際、第2の可動接点が平面から傾斜面に移動して当接するとともに、ステーショナリコアと第2の可動接点との間に所定の隙間を有しているので、第2の可動接点が固定接点に当接し、さらに、第1の可動接点が固定接点に当接するまで、好適に導通を保ちながら、固定接点上(平面及び傾斜面)を第2の可動接点がスムーズに移動できるので、途中で導通が途切れることはない。
【0013】また、第2の可動接点が吸引コイルの吸引力によるプランジャの移動によって、固定接点に当接し、弾性部材の弾性力により、固定接点に接点圧を付与し、次いで、第1の可動接点が固定接点に当接する際に、固定接点と当接している第2の可動接点が、弾性部材の弾性力の増加によって、固定接点の角部に乗り上げて、ステーショナコアに当接するのを防止できる。即ち、第2の可動接点がステーショナリコアに当接して短絡することを防止できる。
【0014】
【発明の実施の形態】次に、本発明装置スタータを、図1ないし図39に示す一実施例に基づき説明する。スタータは、エンジンに配設されたリングギヤ100に噛み合うピニオン200や遊星歯車減速機構300を内包するハウジング400と、モータ500と、マグネットスイッチ600を内包するエンドフレーム700とに大別される。また、スタータの内部では、ハウジング400とモータ500との間がモータ隔壁800によって区画され、モータ500とエンドフレーム700との間がブラシ保持部材900によって区画されている。
【0015】〔ピニオン200の説明〕図1または図3に示すように、ピニオン200には、エンジンのリングギヤ100に噛合するピニオンギヤ210が形成されている。ピニオンギヤ210の内周面には、出力軸220に形成されたヘリカルスプライン221に嵌まり合うピニオンヘリカルスプライン211が形成されている。
【0016】ピニオンギヤ210の反リングギヤ側には、ピニオンギヤ210の外径寸法よりも大径なフランジ213が環状に形成されている。このフランジ213の外周には、全周に亘ってピニオンギヤ210の外歯枚数よりも多い凹凸214が形成されている。この凹凸214は、後述するピニオン回転規制部材230の規制爪231が嵌まり合うためのものである。ワッシャ215は、ピニオンギヤ210の後端に形成した円環部216を外周側へ曲げ込むことにより、フランジ213の後面において回転自在で、且つ軸方向へ抜けない構造としている。
【0017】このように、ピニオンギヤ210のフランジ213の後面に、回転自在なワッシャ215を設けることにより、ピニオンギヤ210の後側に後述するピニオン回転規制部材230が落ち込んだ際、ピニオン回転規制部材230の規制爪231の前端がワッシャ215に当たる。このため、ピニオンギヤ210の回転が直接、ピニオン回転規制部材230の規制爪231に当たらず、ワッシャ215が相対回転してピニオンギヤ210がピニオン回転規制部材230の規制爪231によって磨耗するのを防ぐ。
【0018】一方、ピニオンギヤ210は、圧縮コイルバネよりなるリターンスプリング240により、常に出力軸220の後方へ付勢されている。リターンスプリング240は、直接ピニオンギヤ210を付勢するのではなく、本実施例では、ハウジング400の開口部410を開閉する後述するシャッタ420のリング体421を介してピニオンギヤ210を付勢する。
【0019】〔ピニオン回転規制部材230の説明〕ピニオン回転規制部材230は、図2および図3(a),(b)に示すように、約3/2巻回した板バネ部材で、そのうち、約3/4巻回は、軸方向の板長の長い高いバネ定数の回転規制部232で、残りの約3/4巻回は、軸方向の板長の短い低いバネ定数の付勢手段をなす復帰バネ部233である。
【0020】回転規制部232の一端には、ピニオンギヤ210のフランジ213に形成された多数の凹凸214に嵌まり合う軸方向にのびる規制部をなす規制爪231が設けられている。この規制爪231は、ピニオンギヤ210の凹凸214に嵌合するとともに、規制爪231の剛性を向上するために、軸方向に長く形成されるとともに、径方向内側に折り曲げられ、断面L字状に形成されている。(棒状となっている)
回転規制部232は、上下方向へ伸びる直線部235を備える。この直線部235は、センターブラケット360の前面に突出して設けられた2本の支持腕361によって上下方向へ摺動自在に支持される。つまり、直線部235が上下方向へ移動することにより、回転規制部232も上下方向へ移動する。
【0021】また、回転規制部232の(規制爪231の180°反対側の位置)には、後述するマグネットスイッチ600の作動を伝える後述する紐状部材680(例えば、ワイヤ)の前端の球体601が係合されている。復帰バネ部233の端部側は、巻の曲率が大きく設けられ、復帰バネ部233の一端部236がセンターブラケット360の下部前面に突出して設けられた規制棚362の上面に当たっている。
【0022】ピニオン回転規制部材230の作動を説明する。紐状部材680は、マグネットスイッチ600の作動を規制爪231に伝達する伝達手段で、マグネットスイッチ600の作動によって、回転規制部232を下方へ引き、規制爪231と、ピニオンギヤ210のフランジ213の凹凸214とを係合させる。その際、復帰バネ部233の一端部236が、位置の規制のための規制棚362に当接されており、復帰バネ部233がたわむこととなる。規制爪231がピニオンギヤ210の凹凸214に係合しているので、モータ500のアーマチャシャフト510及び遊星歯車機構300を介して、ピニオンギヤ210を回転させようとすると、ピニオンギヤ210が出力軸220のヘリカルスプライン221に沿って、前進する。ピニオンギヤ210が、リングギヤ100に当接し、ピニオンギヤ210の前進が防止されると、出力軸210の更なる回動力により、ピニオン回転規制部材230自身がたわんで、ピニオンギヤ210がわずかに回動し、リングギヤ100に噛み合う。そして、ピニオンギヤ210が前進すると、規制爪231が凹凸214から外れ、規制爪231がピニオンギヤ210のフランジ213の後方に落ち込み、規制爪231の前端がワッシャ215の後面に当たり、ピニオンギヤ210がエンジンのリングギヤ100の回転を受けて後退するのを防ぐ。
【0023】マグネットスイッチ600の作動が停止し、紐状部材680が回転規制部232を下方へ引くのを停止すると同時に、復帰バネ部233の作用で、回転規制部232が元の位置に復帰する。
〔ピニオン係止リング250の説明〕ピニオン係止リング250は、出力軸220の周囲に形成された断面矩形の環状溝内に固定されている。このピニオン係止リング250は、断面矩形の鋼材を丸め加工して形成したもので、両端のそれぞれには、図4ないし図6に示すように、略S字状の凹凸251(係合手段の一例)が形成され、一方の凸部が他方の凹部に係合し、他方の凸部が一方の凹部に係合している。
【0024】ピニオン係止リング250の組付は、出力軸220の前端よりピニオン係止リング250を装着し、環状溝内にピニオン係止リング250を嵌める。そして、ピニオン係止リング250を内側へ押し、両端の凹凸251を互いに係合する。以上によって組付が完了する。なお、ピニオン係止リング250は、ピニオン係止リング250の内径D0が出力軸220の外径D1より、大きく設定し、出力軸220の環状溝の幅Wは凹凸251の凸部の幅W1と対向する凸部の幅W1とを加えた幅より、大きく設定してある。
【0025】〔遊星歯車減速機構300の説明〕遊星歯車減速機構300は、図1に示すように、後述するモータ500の回転数を減速して、モータ500の出力トルクを増大する減速手段である。遊星歯車減速機構300は、モータ500のアーマチャシャフト510(後述する)の前側外周に形成されたサンギヤ310と、このサンギヤ310に噛合し、このサンギヤ310の周囲で回転する複数のプラネタリーギヤ320と、このプラネタリーギヤ320をサンギヤ310の周囲で回転自在に支持する出力軸220と一体形成されたプラネットキャリア330と、プラネタリーギヤ320の外周においてプラネタリーギヤ320と噛合する筒状で、かつ樹脂からなるインターナルギヤ340とからなる。
【0026】〔オーバーランニングクラッチ350の説明〕図7に示すように、オーバーランニングクラッチ350は、インターナルギヤ340を、一方向のみ(エンジンの回転を受けて回転する方向のみ)回転可能に支持されている。(図7はオーバーランニングクラッチ350の部分拡大図である。)オーバーランニングクラッチ350は、インターナルギヤ340の前側に一体形成された第1の円筒部をなすクラッチアウタ351と、遊星歯車減速機構300の前方を覆う固定側をなすセンターブラケット360の後面に形成され、クラッチアウタ351の内周と対抗して配置された第2の円筒部をなす環状のクラッチインナ352と、クラッチアウタ351の内周面に傾斜して形成されたローラ収納部351aに収納されるローラ353とを有している。このローラ収納部351aは周方向に傾斜しており、スタータ駆動時にローラ353と係合するローラ係合面351bを有している。
【0027】クラッチインナ352の外周面には、周方向に複数個のローラ溝部355が形成されている。このローラ溝部355はスタータ駆動時にローラ353を係合するローラ係合面352bと、このローラ収納部352bに導くローラガイド面352cとを有している。また、ローラ収納部351aのローラ係合面351bの対面側には、スタータオーバーラン時に、ローラ353をローラ収納部351aにすくい上げる働きをするローラ収納ガイド部351dを備える。
【0028】クラッチアウタ351のローラ係合面351bと、クラッチインナ352のローラ係合面352bとの位置関係は、スタータ駆動時にローラ353をそれぞれの面でトルク伝達方向前後から挟み込みように構成されている。また、クラッチアウタ351のローラ収納部351aは、スタータオーバーラン時に、ローラ353を収納した際に、ローラ353の最内径がクラッチインナ352の最外径より若干大きくなるように設定されている。
【0029】〔センターブラケット360の説明〕センターブラケット360は、図8ないし図10に示すもので、ハウジング400の後側の内部に配置されている。ハウジング400とセンターブラケット360とは、一端がハウジング400に係止され、他端がセンターブラケット360に係止されたリングバネ390によって連結され、オーバーランニングクラッチ350を構成するクラッチインナ352の受ける回転反力をリングバネ390で吸収し、反力が直接ハウジング400に伝わらないように設けられている。
【0030】また、センターブラケット360の前面には、ピニオン回転規制部材230を保持する2本の支持腕361と、ピニオン回転規制部材230の下端が搭載される規制棚362が設けられている。さらに、センターブラケット360の周囲には、ハウジング400の内側の凸部(図示しない)と嵌まり合う切欠部363が複数形成されている。なお、上側の切欠部363は、ハウジング400内の空気をヨーク501内へ導くための空気通路としても利用される(後述の冷却空気通路で詳述する)。また、センターブラケット360の下端には、紐状部材680(後述する)を軸方向に挿通する凹部364が形成されている。
【0031】プラネットキャリア330は、後端に、プラネタリーギヤ320を支持するために径方向に伸びるフランジ形突出部331を備える。このフランジ形突出部331には、後方に伸びるピン332が固定されており、このピン332がメタル軸受333を介してプラネタリーギヤ320を回転自在に支持している。また、プラネットキャリア330は、前側端部がハウジング400の前端内部に固定されたハウジング軸受440と、センターブラケット360の内周の内側筒部365内に固定されたセンターブラケット軸受370とによって、回転自在に支持されている。
【0032】このプラネットキャリア330は、内側筒部365の前端位置に環状溝334を備え、この環状溝334には、止め輪335が嵌め合わされている。この止め輪335と内側筒部365の前端との間には、プラネットキャリア330に対して回転自在に装着されたワッシャ336が設けられており、止め輪335がワッシャ336を介して内側筒部365の前端に当接することにより、プラネットキャリア330が後方に移動することが規制される。また、プラネットキャリア330の後側を支持するセンターブラケット軸受370の後端は、内側筒部365の後端と、フランジ形突出部331との間に挟まれるフランジ部371を備え、フランジ形突出部331がフランジ部381を介して内側筒部365の後端に当接することにより、プラネットキャリア330が前方に移動することが規制される。
【0033】なお、プラネットキャリア330の後面には、軸方向に伸びる凹部337を備え、この凹部337内に配置されるプラネットキャリア軸受380を介してアーマチャシャフト510の前端を回転自在に支持している。
〔ハウジング400の説明〕ハウジング400は、図11または図12に示すように、ハウジング400の前端内部に固定されたハウジング軸受440で出力軸220を軸支するとともに、開口部410からの雨水等の進入を極力低減するために、開口部410の下部においてハウジング400とピニオンギヤ210の外径との隙間を極力小さくする遮水壁460を備えている(図1または図11参照)。また、ハウジング400の前端の下部には、軸方向に伸びる2つのスライド溝450が設けられ、このスライド溝450に後述するシャッタ420が配設される。
【0034】〔シャッタ420の説明〕シャッタ420の作動は、スタータが起動してピニオンギヤ210が出力軸220に沿って前方へ移動すると、リング体421がピニオンギヤ210ともに前方へ移動する。すると、リング体421と一体の遮水部422が前方へ移動し、ハウジング400の開口部410を開く(図16参照)。スタータの作動が停止してピニオンギヤ210が出力軸220に沿って後方へ移動すると、リング体421もピニオンギヤ210とともに後方へ移動する。すると、リング体421と一体の遮水部422も後方へ移動し、ハウジング400の開口部410を閉じる。この結果、開閉手段をなすシャッタ420は、スタータの非作動時には、リングギヤ100の遠心力等によって飛散する雨水等が遮水部422によってハウジング400内に進入するのを防ぐ。
【0035】〔シール部材430の説明〕シール部材430は、図17および図18に示すように、端面に環状溝430aが配設され、この環状溝430aに、リターンスプリング240の一端が配置される。このシール部材430は、出力軸220の周囲をシールするもので、ハウジング400の開口部410より進入した雨水や塵等が、ハウジング400の前端のハウジング軸受440へ進入するのを阻止している。
【0036】〔ハウジング先端シール部材470の説明〕ハウジング先端シール部材470(例えば、一端面に粘着物が貼り付けられている紙)は、図1に示すように、ハウジング400の先端部開口面に貼付けられ、前記開口面を閉塞している。このようにすれば、ハウジング先端シール部材470をハウジング400の先端部開口面に貼付けるだけで、前記開口面が閉塞できるので、簡単な作業で組付けができるとともに、安価でしかも確実にハウジング軸受440を通ってハウジング400内への異物の侵入を防止できる。
【0037】なお、ハウジング先端シール部材470は、金属箔、あるいは、樹脂シートでもよい。
〔モータ500の説明〕モータ500は、ヨーク501、モータ隔壁800、後述するブラシ保持部材900に囲まれて構成される。なお、モータ隔壁800は、センターブラケット360との間で遊星歯車減速機構300を収納するもので、遊星歯車減速機構300内の潤滑油がモータ500に進入するのを防ぐ役目も果たす。
【0038】モータ500は、図1に示すように、アーマチャシャフト510、このアーマチャシャフト510に固定されて一体に回転する電機子鉄心520および電機子コイル530から構成されるアーマチャ540と、アーマチャ540を回転させる固定磁極550とから構成され、固定磁極550はヨーク501の内周に固定される。
【0039】〔アーマチャシャフト510の説明〕アーマチャシャフト510は、プラネットキャリア330の後内部のプラネットキャリア軸受380、およびブラシ保持部材900の内周に固着されたブラシ保持部材軸受564によって回転自在に支持される。このアーマチャシャフト510の前端は、遊星歯車減速機構300の内側に挿通されるとともに、上述のように、アーマチャシャフト510の前端外周には遊星歯車減速機構300のサンギヤ310が形成されている。
【0040】〔電機子鉄心520の説明〕電機子鉄心520は、図20に示すコアプレート521を多数積層して、中央に設けられた穴522内にアーマチャシャフト510を圧入固定したものである。コアプレート521は、薄い鋼板をプレス加工によって打ち抜いて形成されたもので、表面に絶縁処理が施されている。コアプレート521の内径側(穴522の周囲)には、コアプレート521の軽量化を図る打抜き穴523が複数形成されている。コアプレート521の外周には、電機子コイル530を収納する複数(例えば25個)のスロット524が形成されている。さらに、コアプレート521の外周端部の各スロット524間には、スロット524内に収納された電機子コイル530をスロット524内に固定するための固定爪525が形成されている。この固定爪525は、後述する電機子コイル530の固定手段において説明する。
【0041】〔電機子コイル530の説明〕電機子コイル530は、本実施例では複数(例えば25本)の上層コイルバー531と、この上層コイルバー531と同数の下層コイルバー532とを用い、それぞれの上層コイルバー531と下層コイルバー532とを径方向に積層した2層巻コイルを採用する。そして、各上層コイルバー531と各下層コイルバー532とを組み合わせ、各上層コイルバー531の端部と各下層コイルバー532の端部とを電気的に接続して環状のコイルを構成している。
【0042】〔上層コイルバー531の説明〕上層コイルバー531は、電導性に優れた材質(例えば銅)よりなり、固定磁極550に対して平行に伸び、スロット524の外周側に保持される上層コイル辺533と、この上層コイル辺533の両端から内側に曲折され、アーマチャシャフト510の軸方向に対して垂直方向に伸びる2つの上層コイル端534とを備える。なお、上層コイル辺533および2つの上層コイル端534は、冷間鍛造によって一体成形したものであっても、プレスによってコ字状に曲折して形成したものであっても、別部品で形成した上層コイル辺533と2つの上層コイル端534とを溶接等の接合技術で接合して形成したものであっても良い。
【0043】上層コイル辺533は、図21ないし図24に示すように、断面矩形の直線状の棒で、図24に示すように、周囲が上層絶縁フィルム(例えばナイロン等の樹脂薄膜や紙)に覆われた状態で、後述する下層コイル辺536とともに、スロット524内に強固に収容される。図23に示す如く、2つの上層コイル端534のうち、一方の上層コイル端534は、回転方向に対して前進側に傾斜して設けられ、他方の上層コイル端534は、回転方向に対して後退側に傾斜して設けられている。2つの上層コイル端534の径方向に対する傾斜角は、上層コイル辺533に対して同一の傾斜角で、且つ2つの上層コイル端534は、同一の形状に設けられている。これによって、上層コイルバー531を中心に180°反転させても、上層コイルバー531は反転前と同一の形状となる。つまり、2つの上層コイル端534には区別がないため、上層コイルバー531を電機子鉄心520に組付ける際の作業性に優れる。
【0044】2つの上層コイル端534のうち、マグネットスイッチ600側に位置する上層コイル端534は、後述するブラシ910と直接当接して電機子コイル530を通電する。そのため、少なくともブラシ910が当接する上層コイル端534の表面は、平滑に処理されている。本実施例のスタータは、電機子コイル530を通電するための独立した整流子を設ける必要がない。つまり、独立した整流子が不要となるため、部品点数を低減することができるとともに、スタータの製造工程を少なくでき、製造コストを抑えることができる。また、独立した整流子をスタータ内に配置する必要がなくなることにより、スタータの軸方向の体格を小型化できる効果も生じる。
【0045】さらに、上層コイル端534がブラシ910と直接当接することにより、上層コイル端534とブラシ910との摺接による熱が、上層コイル端534から上層コイル辺533や、電機子鉄心520、アーマチャシャフト510等に伝わる。電機子コイル530、電機子鉄心520、アーマチャシャフト510等の熱容量は、従来独立した整流子に比較して熱容量が大変大きいため、上層コイル端534とブラシ910との摺接部分の温度を低く保つことができる。
【0046】上層コイル端534の形状は、図25に示すように、形状が径方向に向かって広がって設けられるとともに、各上層コイル端534の周方向の間隔が内周から外周に亘ってほぼ一定に設けられている。このため、ブラシ910と当接する上層コイル端534とブラシ910との接触面積が大変大きくなる。この結果、ブラシ910の熱がコイルバーに伝わり易くなり、ブラシ910の温度を大変低く抑えることができる。なお、図25は、上層コイル端534の形状を分かりやすくする説明するためのもので、上層コイル端534の数は、図20のスロット524の数と一致しない。
【0047】また、ブラシ910と当接する各上層コイル端534の間隔の溝535の形状は、図25に示すように、外径に向かうに従い回転方向に対して後退する略渦巻状に設けられている。また、各上層コイル端534の間隔の溝535により、電機子コイル530が回転すると、上層コイル端534の溝535による遠心風が、内径から外径に向けて生じる。そして、ブラシ910と当接する各上層コイル端534の各溝535の回転によって生じる遠心風は、後述するように、ブラシ910と上層コイル端534との摺接による発熱の冷却、およびブラシ粉の外部排出に利用される。
【0048】2つの上層コイル端534は、外周側で互いに対抗する面に、軸方向に突出する小径の突起534aを備える。この突起534aは、上層コイル端534と後述する下層コイル端537との間に配されて、上層コイル端534と下層コイル端537とを絶縁する絶縁スペーサ560に設けられた穴561に嵌め合わされる(図26参照)。
【0049】〔下層コイルバー532の説明〕下層コイルバー532は、上層コイルバー531と同様、電導性に優れた材質(例えば銅)よりなり、固定磁極550に対して平行に伸び、スロット524の内側に保持される下層コイル辺536と、この下層コイル辺536の両端から内側に曲折され、シャフト510の軸方向に対して垂直方向に伸びる2つの下層コイル端537とを備える。なお、下層コイル辺536および2つの下層コイル端537は、上層コイルバー531と同様、冷間鋳造によって一体成形したものであっても、プレスによってコ字状に曲折して形成したものであっても、別部品で形成した下層コイル辺536と2つの下層コイル端537とを溶接等の接合技術で接合して形成したものであっても良い。
【0050】なお、各上層コイル端534と各下層コイル端537との絶縁は、絶縁スペーサ560によって確保され、各下層コイル端537と電機子鉄心520との絶縁は、樹脂製(例えばナイロンやフェノール樹脂)の絶縁リング590によって確保される。下層コイル辺536は、図21および図24に示す上層コイル辺533と同様に、断面矩形の直線状の棒で、図19に示すように、上層コイル辺533とともに、スロット524内に強固に収容される。なお、下層コイル辺536は、上層絶縁フィルムで覆われた上層コイル辺533とともに、下層絶縁フィルム(例えばナイロンや紙)で覆われた状態で、スロット524内に収容される。
【0051】2つの下層コイル端537のうち、スタータの前側に位置する下層コイル端537は、上層コイル端534の傾斜方向とは逆方向に傾斜して設けられ、後側の下層コイル端537も上層コイル端534の傾斜方向とは逆方向に傾斜して設けられている。2つの下層コイル端537の径方向に対する傾斜角は、下層コイル辺536に対して同一の傾斜角で、且つ2つの下層コイル端537は、同一の形状に設けられている。これによって、上層コイルバー531と同様、下層コイルバー532を中心に180°反転させても、下層コイルバー532は反転前と同一の形状となる。つまり、2つの下層コイル端537には区別がないため、下層コイルバー532を電機子鉄心520に組付ける際の作業性に優れる。
【0052】また、下層コイルバー532を構成する下層コイル辺536および2つの下層コイル端537の各断面積は、上層コイルバー531を構成する上層コイル辺533および2つの上層コイル端534の断面積に比較して小さく設けられている。これは、上層コイルバー531の全長が、下層コイルバー532の全長よりも長いため、上層コイルバー531と下層コイルバー532とを同一の断面積に設けると、上層コイルバー531よりも下層コイルバー532の方が、電気抵抗が小さくなって、上層コイルバー531と下層コイルバー532とに供給される電力に差が生じてしまう。そこで、本実施例では、下層コイルバー532の断面積を上層コイルバー531の断面積より小さく設けて、上層コイルバー531と下層コイルバー532との電気抵抗の差をなくしている。このため、各上層コイルバー531に通電される電力と、各下層コイルバー532に通電される電力が同一となり、上層コイルバー531に主に電力が供給される不具合を防ぐことができる。なお、図24では、下層コイル辺536の断面積が、上層コイル辺533の断面積より大きく示したが、図24は主に、上層コイル辺533および下層コイル辺536の収容状態を示すものであって、実施の断面積は、下層コイル辺536の方が、上層コイル辺533の断面積より小さく設けられている。
【0053】2つの下層コイル端537の内周端部には、軸方向に伸びる下層内部延長部539を備える。この下層内部延長部539の外周面は、絶縁スペーサ560の内周に形成された凹部561に嵌まり合うとともに、上層コイル端534の端部の上層内部延長部538の内周に重ね合わされ、溶接等の接合技術で電気的、且つ機械的に接続される。なお、下層内部延長部539の内周面は、アーマチャシャフト510に対して離れて絶縁配置される。
【0054】また、2つの上層コイル端534の内周端部には、軸方向に伸びる上層内部延長部538を備える。この上層内部延長部538の内周面は、前述した下層コイルバー532の内端に設けられた下層内部延長部539の外周に重ね合わされ、溶接等の接合技術で電気的、且つ機械的に接続される。また、上層内部延長部538の外周面は、アーマチャシャフト510に圧入固定された固定部材570の外周環状部571の内面に、絶縁キャップ580を介して当接する(図27及び図28参照)。
【0055】〔絶縁スペーサ560の説明〕絶縁スペーサ560は、樹脂製(例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ナイロン)の薄板リングで、図26に示すように、外周側に各上層コイル端534の突起534aが嵌め合わされる複数の穴561が形成されている。また、絶縁スペーサ560の内周には、下層コイル端537の内側の下層内部延長部539が嵌め合わされる凹部562が形成されている。この絶縁スペーサ560の穴561および凹部562は、後述するように、電機子コイル530の位置決め、および固定に用いられる。
【0056】〔固定部材570の説明〕固定部材570は、鉄製の環状体で、図27に示すように、アーマチャシャフト510に圧入される内周環状部572と、上層コイル端534および下層コイル端537が軸方向に広がるのを阻止する軸方向に垂直に伸びる規制リング573と、上層コイル端534の上層内部延長部538を内包して、電機子コイル530の内径が、遠心力によって広がるのを防ぐ外周環状部571とから構成される。なお、この固定部材570は、上層コイル端534および下層コイル端537との絶縁を確保するために、上層コイル端534および下層コイル端537との間に、図28に示す樹脂製(例えばナイロン)の円盤状の絶縁キャップ580を介在させている。スタータの前側に配置された固定部材570は、この固定部材570の前方に隣接するモータ隔壁800の後面に当接して、アーマチャ540の前方への移動を規制するスラスト受け部としても作用する。一方、スタータの後側に配置された固定部材570は、この固定部材570の後方に隣接するブラシ保持体900の前面に当接して、アーマチャ540の後方への移動を規制するスラスト受け部としても作用する。
【0057】このように、電機子コイル530の内側端部を固定するそれぞれの固定部材570が、アーマチャ540のスラスト受け部として作用するため、別途、アーマチャ540のスラスト受け部を別途設ける必要がない。このため、スタータの部品点数を低減し、且つ組付工数を低減することができる。
〔電機子コイル530の固定の説明〕電機子コイル530の上層コイルバー531および下層コイルバー532を、電機子鉄心520に位置決めおよび固定する手段として、電機子鉄心520のスロット524および固定爪525、絶縁スペーサ560の穴561および凹部562、およびアーマチャシャフト510に圧入固定される固定部材570を備える。
【0058】電機子鉄心520のスロット524は、上層コイル辺533および下層コイル辺536を収容し、固定爪525を図19の矢印に示すように内径側に折り曲げることにより、上層コイル辺533および下層コイル辺536が各スロット524内に強固に固定され、スロット524内から上層コイル辺533および下層コイル辺536が遠心力を受けても外径側へ移動するのを防ぐ。なお、上層コイル辺533の外周表面は、下層絶縁フィルムと上層絶縁フィルムの2層で絶縁されるため、固定爪525を内周側に強固に折り曲げても、充分な絶縁を確保できる。
【0059】絶縁スペーサ560の内周の凹部562は、下層コイル端537の下層内部延長部539が嵌め合わされて下層コイル端537の位置決めを行うとともに、下層コイル端537にかかる遠心力を受けて、下層コイル端537が外径側へ移動するのを防ぐ。絶縁スペーサ560の外周側の穴561は、上層コイル端534の突起534aに嵌め合わされて、上層コイル端534の位置決めを行うとともに、上層コイル端534にかかる遠心力を受けて、上層コイル端534が外径側へ移動するのを防ぐ。
【0060】固定部材570は、接合された上層内部延長部538と下層内部延長部539を周囲から保持し、電機子コイル530の内径部分が遠心力によって外径側へ移動するのを防ぐ。また、固定部材570は、接合された上層内部延長部538と下層内部延長部539の軸方向端部の移動を規制し、電機子コイル530の軸方向寸法が長くなることを防ぐ。なお、上層コイル端534および下層コイル端537がスタータの使用中に軸方向寸法が長くなると、予め変形によるスペースをスタータ内に確保する必要が生じるが、固定部材570によって、上層コイル端534および下層コイル端537が軸方向に長くなることが防がれるため、本実施例のスタータは予備スペースを無くすことができ、この結果、スタータの軸方向寸法を短くすることができる。
【0061】電機子コイル530の組付手順を説明する。まず、アーマチャシャフト510の周囲にコアプレート521を積層した電機子鉄心520を圧入する。次に、電機子鉄心520の両側に絶縁体563を配置する。続いて、各スロット524内に、下層コイルバー532の下層コイル辺536を、下層絶縁フィルムとともに収納する。
【0062】次に、下層コイルバー532の下層コイル端537の両側に、絶縁スペーサ560を装着し、下層内部延長部539を各凹部562内に配置する。これによって、下層コイルバー532の位置決めが完了する。次に、上層コイルバー531の上層コイル辺533を、上層絶縁フィルムとともに収納する。この時、各上層コイル端534の突起534aを、絶縁スペーサ560の各穴561内に嵌め合わせる。これによって、上層コイルバー531の位置決めが完了する。
【0063】続いて、各上層内部延長部と各下層内部延長部538、539とを溶接などの接合技術によって接合し、電気的且つ機械的に結合する。その後、電機子鉄心520の各固定爪525を内周側へ曲げて、スロット524内に上層コイル辺533および下層コイル辺536を固定するとともに、アーマチャシャフト510の両端から固定部材570を圧入して電機子コイル530の内周端部を固定する。
【0064】以上によって、アーマチャ540が完成する。このアーマチャ540においては、電機子コイル530を構成する上層コイルバー531の両端の上層コイル端534、および下層コイルバー532の両端の下層コイル端537が、それぞれアーマチャシャフト510の軸方向に対して、垂直に設けられているため、アーマチャ540の軸方向寸法を短くできるため、モータ500の軸方向寸法も短くでき、この結果、スタータを従来に比較して小型化できる。
【0065】そして、本実施例では、モータ500の軸方向寸法の短縮スペースと、独立した整流子を廃止することによって生じた短縮スペースとに、マグネットスイッチ600を配置したため、従来に比較してスタータの軸方向寸法は対して変わらないものの、従来ではモータ500の上方に搭載されていたマグネットスイッチ600のスペースが不要となるため、スタータの占める体積を、従来に比較して飛躍的に小さくすることができる。
【0066】また、電機子コイル530の軸方向寸法を短くできるため、アーマチャ540の共振周波数を高く設定でき、アーマチャ540の振動によるブラシ910のジャンピング等を防ぐことができる。さらに、電機子コイル530の上層コイル端534および下層コイル端537の軸方向寸法が短く、且つ上層コイル辺533、下層コイル辺536、上層コイル端534および下層コイル端537が、強固に電機子鉄心520やアーマチャシャフト510に固定されているため、アーマチャ540を高速回転しても、電機子コイル530が遠心力に打ち負けて電機子鉄心520からずれる等の不具合を無くすことができる。
【0067】〔ヨーク501の説明〕ヨーク501は、図29および図30に示すように、鋼板を丸めて成形した筒状体で、周囲には、軸方向に伸びる内周に向かって凹んだ複数の凹溝502が形成されている。この凹溝502は、スルーボルトを配置するとともに、ヨーク501の内周において固定磁極550の位置決めに用いられる。
【0068】〔固定磁極550の説明〕固定磁極550は、本実施例では永久磁石を用いたもので、図29に示すように、複数(例えば6つ)の主磁極551と、この主磁極551の各間に配置される極間磁極552とから構成される。なお、固定磁極550として永久磁石の代わりに通電によって磁力を発生するフィールドコイルを用いても良い。
【0069】主磁極551は、上述したヨーク501の凹溝502の内側の両端によって、位置決めがなされ、各主磁極551の間に極間磁極552を配置した状態で、固定磁極550の内周に配置される固定スリーブ553によって、ヨーク501の内部に固定される。固定スリーブ553は、非磁性体(例えば、アルミ)の薄板を丸めて加工したもので、軸方向の両端554が、外径方向に向けて折り曲げられ、固定磁極550がヨーク501の軸方向にずれるのを防ぐ。また、固定スリーブ553は、図30に示すように、固定磁極550の内側において突き合わされる2つの端辺555、556(第1の端部、第2の端部)を備える。一方の端辺555は、軸方向に対して傾斜した直線に設けられ、他方の端辺556は、軸方向に傾斜するとともに緩やかな曲線に設けられている。このように、一方端辺555が直線、他方の端辺556が曲線に設けられることにより、固定磁極550の内径寸法に多少の誤差が生じても、一方の端辺555と他方の端辺556との突き合わせ位置を軸方向にずらすことで、固定スリーブ553を外径側に拡げ、この誤差を吸収する。この結果、固定スリーブ553の径寸法が固定されるため、固定スリーブ553とヨーク501との間に固定磁極550が強固に固定される。
【0070】〔マグネットスイッチ600の説明〕マグネットスイッチ600は、図1、図31および図32に示すように、後述するブラシ保持体900に保持されて、後述するエンドフレーム700内に配置され、アーマチャシャフト510に対して略垂直方向になるように固定されている。
【0071】マグネットスイッチ600は、通電によって、プランジャ610を上方へ駆動し、プランジャ610と一体に移動する2つの接点(第2の可動接点611と第1の可動接点612)を、順次、端子ボルト620の頭部621(第2の当接部)および固定接点630の当接部631(第1の当接部)に当接させるものである。なお、端子ボルト620には、図示されないバッテリケーブルが接続されている。
【0072】マグネットスイッチ600は、磁性体製(例えば鉄製)の有底筒状のマグネットスイッチカバー640の内側に構成されている。マグネットスイッチカバー640は例えば軟鋼板をカップ状にプレス成形したもので、マグネットスイッチカバー640の底の中央には、プランジャ610を上下方向に移動自在に挿通する穴641を備える。また、マグネットスイッチカバー640の上側開口は、磁性体製(例えば鉄製)のステーショナリコア642によって塞がれている。
【0073】ステーショナリコア642は、上側の大径部643と、下側の中径部644と、さらに下側の小径部645とからなり、大径部643の外周が、マグネットスイッチカバー640の上端を内側へカシメることによって、ステーショナリコア642がマグネットスイッチカバー640の上側開口内に固定されている。中径部644の周囲には、吸引コイル650の上端が装着されている。ステーショナリコア642の小径部645の外周には、プランジャ610を下方に付勢する圧縮コイルバネ660の上端が装着されている。
【0074】吸引コイル650は、通電を受けると磁力を発生して、プランジャ610を引きつける吸着手段で、吸引コイル650は、上端がステーショナリコア642の中径部644に装着され、プランジャ610を上下方向に摺動自在に覆うスリーブ651を備える。このスリーブ651は、非磁性体(例えば銅板、真鍮、ステンレス)の薄板を丸めて加工したもので、このスリーブ651の上端および下端には、樹脂等よりなる絶縁ワッシャ652が設けられている。この2つの絶縁ワッシャ652の間のスリーブ651の周囲には、薄い樹脂(例えばセロハン、ナイロンフィルム)や紙などよりなる絶縁フィルム(図示しない)が巻かれ、さらにその絶縁フィルムの周囲に細いエナメル線を所定回数、巻いて吸引コイル650が構成されている。
【0075】プランジャ610は、磁性体製金属(例えば鉄)で、上側の小径部613と下側の大径部614とを備える略円柱形状を呈する。小径部613は、圧縮コイルバネ660の下端が装着され、比較的軸方向に長い大径部614は、スリーブ651内において上下方向に移動可能に保持される。プランジャ610の上側には、プランジャ610の上方へ伸びるプランジャシャフト615が固定されている。このプランジャシャフト615は、ステーショナリコア642の中央に設けられた貫通穴から上方に突出している。このプランジャシャフト615のステーショナリコア642の上側には、第1の可動接点612がプランジャシャフト615に沿って上下方向に摺動自在に挿通されている。この第1の可動接点612は、図31に示すように、プランジャシャフト615の上端に取り付けられた止め輪616によって、プランジャシャフト615の上端より上方に移動しないように規制されている。この結果、第1の可動接点612は、止め輪616とステーショナリコア642の間においてプランジャシャフト615に沿って上下方向に摺動自在とされている。なお、第1の可動接点612は、プランジャシャフト615に取り付けられた板バネよりなる接点圧スプリング670によって、常に上方へ付勢されている。
【0076】第1の可動接点612は、銅など導電性に優れた金属よりなり、第1の可動接点612の両端が上側に移動した際、固定接点630に設けられた2つの当接部631に当接する。また、第1の可動接点612には、一対のブラシ910の各リード線910aが、カシメや溶接等によって、電気的、且つ機械的に固定されている。さらに、第1の可動接点612のU字状の溝部612aには、制限手段をなす抵抗体617の端部が、挿入され、電気的、且つ機械的に固定されている。
【0077】なお、第1の可動接点612には、ブラシ910の各リード線910aが、カシメや溶接等によって電気的、且つ機械的に固定されているが、第1の可動接点612とブラシ910の各リード線910aとを一体形成しても良い。抵抗体617は、スタータの起動初期時に、モータ500の回転を低速回転させるためのもので、抵抗値の大きな金属線を複数巻いて構成されている。なお、抵抗体617は、第1の可動接点612に当接する第1の略直線部617aと、第1の略直線部617aの一端と接続される螺旋部617cと、この螺旋部617cに接続され固定接点630に対向する位置に延びる第2の略直線部617bとからなり、第2の略直線部617bに下層可動接点611が配設されている。
【0078】また、上層可動接点612から第1の当接部631までの距離より、下層可動接点611から第2の当接部621までの距離の方が、短く設定されている。抵抗体617の他端には、端子ボルト620の頭部621の下側に位置する第2の可動接点611がカシメ等によって固定されている。第2の可動接点611は、銅など導電性に優れた金属よりなり、マグネットスイッチ600が停止して、プランジャ610が下方に位置する際にステーショナリコア642の上面に当接し、抵抗体617がプランジャシャフト615の移動に伴って上方に移動する際、第1の可動接点612が固定接点630の当接部631に当接する前に、端子ボルト620の頭部621に当接するように設けられている。
【0079】プランジャ610の下面には、紐状部材680(例えば、ワイヤ)の後端に設けられた球体681を収容する凹部682を備える。この凹部682の内周壁には、雌ネジ683が形成されている。この雌ネジ683は、凹部682内に球体681を固定する固定ネジ684が螺合される。この固定ネジ684は、雌ネジ683へのねじ込み量を調節することにより、紐状部材680の長さの調節も行うものである。なお、紐状部材680の長さ調節は、プランジャシャフト615が上方へ移動して、第2の可動接点611が端子ボルト620に当接する際に、ピニオン回転規制部材230の規制爪231が、ピニオンギヤ210の外周の凹凸214に嵌まり合うように調節される。なお、雌ネジ683と固定ネジ684は調整機構をなす。
【0080】このような構成にすれば、マグネットスイッチ600のプランジャ610の移動に対し、紐状部材680を介して、ピニオン回転規制部材230をピニオンギヤ210側に移動させているので、従来のリンク機構及びレバー等を必要とせず、部品点数を少なくすることができ、さらに、ピニオンギヤ210がリングギヤ100から離れなくなったとしても、紐状部材680自身のたわみにより、プランジャ610が元の位置に戻り、第1の可動接点612が固定接点630から離れることができる。
【0081】また、ピニオン回転規制部材230の規制爪231を、ピニオンギヤ210に設けた凹凸214に係合させるのみでよいので、紐状部材680によって、確実にこの規制爪231を移動させることができる。紐状部材680をワイヤとすることで、耐久性を高めることができる。また、雌ネジ683と固定ネジ684からなる調整機構をプランジャ610と紐状部材680との間に配置し、固定ネジ684を雌ネジ683にねじ込むことにより、紐状部材680の長さを容易に決定することができる。
【0082】さらに、第1の可動接点612にブラシ910の各リード線910aが直接接続されているため、ブラシ910で発生する発熱をリード線910a、第1の可動接点612、端子ボルト620を介して、この端子ボルト620に接続され、スタータ外部に位置するバッテリーケーブルから効率的に放熱がなされ、ブラシ910の寿命向上が図れる。
【0083】さらに、マグネットスイッチ600のプランジャシャフト615が略垂直方向に配設されているので、マグネットスイッチ600のプランジャシャフト615を軸方向に配設した場合に比較して、スタータの軸方向寸法を短縮することができるとともに、紐状部材680を引っ張るのに必要なプランジャシャフト615のストロークが小さく設定でき、さらなるマグネットスイッチ600の小型化が図れる。
【0084】さらに、マグネットスイッチ600は、アーマチャシャフト510の軸方向に対し、直交して配置されているため、マグネットスイッチ600の径方向長のみが、スタータ全体の軸方向長に加算されるのみで、スタータ全体の体格を大きくすることもない。
〔エンドフレーム700の説明〕エンドフレーム700は、図33、図34に示すように、樹脂製(例えばフェノール樹脂)のマグネットスイッチカバーで、内部にマグネットスイッチ600を収容する。
【0085】エンドフレーム700の後面には、ブラシ910を前方へ付勢する圧縮コイルバネ914を保持するバネ保持柱710が、ブラシ910の位置に応じて前方に突出して設けられている。なお、図34に示すように、圧縮コイルバネ914はテーパ形状を有しており、バネ保持柱710に挿入される側の径が広くなっており、圧縮コイルバネ914がバネ保持柱710内に固定保持される。また、バネ保持柱710をテーパ状にし、圧縮コイルバネ914が挿入される側の径を大きくしてもよい。
【0086】さらに、圧縮コイルバネ914は、図1に示すように、マグネットスイッチ600のプランジャ610の軸方向に対し、径方向の外周側、つまり、マグネットスイッチ600の外周側で軸方向に配置されている。端子ボルト620は、エンドフレーム700の内部から挿入され、エンドフレーム700の後方に突出する鉄製のボルトで、前側にはエンドフレーム700の内面に当接する頭部621を備える。そして、エンドフレーム700の後方に突出した端子ボルト620にカシメワッシャ622が取りつけられることによって、端子ボルト620がエンドフレーム700に固定される。端子ボルト620の前端には、銅よりなる固定接点630がカシメによって固定されている。固定接点630は、エンドフレーム700の内部上端に位置する1つまたは複数(本実施例では2つ)の当接部631を備え、この当接部631の下面は、マグネットスイッチ600の作動によって上下する第1の可動接点612の上面が当接可能に設けられている。
【0087】さらに、圧縮コイルバネ914のスプリング長が、マグネットスイッチ600の径方向の長さ分まで利用することができ、適正なバネ応力および荷重を設定することができ、圧縮コイルバネ914の寿命を大幅に向上することができる。さらに、圧縮コイルバネ914は、マグネットスイッチ600の外周側のスペースを有効に利用しているので、圧縮コイルバネ914の長さが、スタータの軸方向長に付加されることなく、スタータ全体の短縮を図ることができる。
【0088】〔ブラシ保持体900の説明〕ブラシ保持体900は、ヨーク501の内部とエンドフレーム700の内部とを区画してアーマチャシャフト510の後端をブラシ保持体軸受564を介して回転自在に支持する役目のほか、ブラシホルダの役目、マグネットスイッチ600を保持する役目、および紐状部材680を案内する滑車690を保持する役目を果たす。なお、ブラシ保持体900には、紐状部材680が通る図示されない穴部を有している。
【0089】ブラシ保持体900は、アルミニウム等の金属を鋳造技術によって成形した隔壁で、図35ないし図37に示すように、ブラシ910を軸方向に保持するブラシ保持穴911、912を複数(本実施例では上側に2つ、下側に2つ)備える。上側のブラシ保持穴911は、プラス電圧を受けるブラシ910を保持する穴で、この上側のブラシ保持穴911は、樹脂製(例えばナイロン、フェノール樹脂)の絶縁筒913を介してブラシ910を保持する(図36は図35のAーA断面図であり、図37は図35のBーB断面図である)。また、下側のブラシ保持穴912は、アース接地されるブラシ910を保持する穴で、この下側のブラシ保持穴912は、穴の内部で直接ブラシ910を保持する。
【0090】このように、ブラシ保持体900によって、ブラシ910を保持させることにより、スタータに独立したブラシホルダを設ける必要がない。このため、スタータの部品点数を低減し、組付工数を低減することができる。ここで、ブラシ910について説明する。ブラシ910は、黒鉛粉や銅粉などの金属粉と結合樹脂とを断面略矩形の形状に成形した後に焼結した周知のもので、ブラシ910の後端の側面にリード線910aが溶接等によって接合されたものである。このように、ブラシ910の後端の側面にリード線910aを接合するため、ブラシ910の有効長を長くとれる。なお、本実施例のように、ブラシ910を軸方向に付勢するサーフェイス型のブラシ910では、ブラシ910の長さがスタータの全長に影響を与えるため、ブラシ910の軸方向寸法を抑えてブラシ910の有効長を長くとれる本実施例のブラシ910は大変有効である。
【0091】また、ブラシ910は、圧縮コイルバネ914によって、前端面が電機子コイル530の後側の上層コイル端534の後面に付勢される。なお、上側のブラシ910のリード線910aは、マグネットスイッチ600によって移動する第1の可動接点612に溶接やカシメ等の接合技術で電気的、且つ機械的に結合されている。また、下側のブラシ910のリード線910aは、ブラシ保持体900の後面に形成された凹部920内にカシメられて、電気的、且つ機械的に結合されている。なお、本実施例では、下側のブラシ910が1対設けられており、1本のリード線910aに1対の下側のブラシ910が接合されており、リード線910aの中央がブラシ保持体900の後面の凹部920内にカシメられている。
【0092】ブラシ保持体900の後面には、マグネットスイッチ600の前面側が当接する2つの台座930と、マグネットスイッチ600の周囲を抱え込む2本の固定柱940が形成されている。台座930は、外径が円筒形状を呈するマグネットスイッチ600と当接するために、マグネットスイッチ600の外形形状と一致するように設けられている。また、2本の固定柱940は、マグネットスイッチ600を台座930に当接した状態で、それぞれの後端を内側にカシメることで、マグネットスイッチ600を保持している。
【0093】ブラシ保持体900の後面の下側には、紐状部材680の移動方向を、マグネットスイッチ600の上下方向から軸方向に変換する滑車690を保持する滑車保持部950が形成されている。ブラシ保持体900の後面には、過熱保護用の温度スイッチ(図示しない)を保持する保持部960が設けられている。この保持部960は、温度スイッチを上側のブラシ保持穴911と、下側のブラシ保持穴912との間で、且つマグネットスイッチ600の近傍に保持するものである。なお、温度スイッチは、所定温度に達すると、マグネットスイッチ600をOFF し、スタータモータほの通電を停止して、スタータを保護するものである。
【0094】ブラシ保持体900の前面は、ブラシ910と当接する上層コイル端534の後面と接近して設けられている。このため、上層コイル端534の各間の溝535の回転により生じる遠心風が外径方向へ強制的に導かれる。つまり、後側の上層コイル端534とブラシ保持体900との間で遠心風が生じる。スタータには、図39に示すように、後側の上層コイル端534とブラシ保持体900との間の内側へ空気を導くとともに、遠心風をスタータの外部へ放出する冷却空気通路が形成されている。
【0095】この冷却空気通路は、ブラシ保持体900の内周部分に開口され、エンドフレーム700内の空気を、後側の上層コイル端534とブラシ保持体900との間の内側へ導く導入口970と、エンドフレーム700の内部と、ブラシ保持体900の上側周囲に開成され、ヨーク501内において主磁極551と主磁極551との間の隙間に連通するブラシ保持体連通穴980と、このブラシ保持体連通穴980に連通する主磁極551と主磁極551との間の隙間590と、モータ隔壁800の上側周囲に開成され、主磁極551間の隙間590に連通するモータ隔壁連通穴810と、このモータ隔壁連通穴810に連通するセンターブラケット360の上側の切欠部364と、ハウジング400内とから構成される。そして、ハウジング400の開口部410から吸い込んだ空気を、ハウジング400内→センターブラケット360の上側の切欠部364→モータ隔壁連通穴810→主磁極551間の隙間590→ブラシ保持体連通穴980→エンドフレーム700内→導入口970を介して、後側の上層コイル端534とブラシ保持体900との間の内側へ導く。
【0096】後側の上層コイル端534とブラシ保持体900との間で生じた遠心風は、ブラシ910の摺接面およびその周辺を冷却した後、摺接面で発生したブラシ粉とともにヨーク501の下端に設けられた排出穴503を介してスタータの外部へ排出される。このように、整流子として作用する上層コイル端534が遠心ファンとして作用して遠心風が生じることにより、整流子として作用する上層コイル端534とブラシ910との摺動部分の温度を低く保つことができる。また、ブラシ910の磨耗によって生じたブラシ粉が遠心風によって排出穴503に運ばれ、排出穴503からスタータの外部へ排出されるため、ブラシ粉による故障等の発生が防がれる。
【0097】〔実施例の作動〕次に、上記スタータの作動を図38(a)ないし(c)の電気回路図に従い、説明する。乗員によって、キースイッチ10がスタート位置に設定されると、バッテリ20から、マグネットスイッチ600の吸引コイル650に通電される。吸引コイル650が通電されると、吸引コイル650の発生する磁力にプランジャ610が引き寄せられ、プランジャ610が下方位置から上方へ上昇する。
【0098】プランジャ610が上昇を開始すると、プランジャシャフト615の上昇に伴って第1の可動接点612および第2の可動接点611が上昇するとともに、紐状部材680の後端も上方に上昇する。紐状部材680の後端が上昇すると、紐状部材680の前端は下方に引かれ、ピニオン回転規制部材230が下降する。ピニオン回転規制部材230の下降によって、規制爪231がピニオンギヤ210の外周の凹凸214に嵌まり合う時点で、第2の可動接点611が端子ボルト620の頭部621に当接する(図38(a)参照)。端子ボルト620には、バッテリ20の電圧が印加されており、端子ボルト620の電圧が、第2の可動接点611→抵抗体617→第1の可動接点612→リード線910aを介して上側のブラシ910に伝えられる。つまり、抵抗体617を介した低電圧が上側のブラシ910を介して電機子コイル530に伝えられる。そして、下側のブラシ910は、ブラシ保持体900を介して常にアース接地されているため、各上層コイルバー531と各下層コイルバー532とを組み合わせてコイル状に構成された電機子コイル530が低電圧で通電される。すると、電機子コイル530が比較的弱い磁力を発生し、この磁力が固定磁極550の磁力に作用(吸着あるいは反発)して、アーマチャ540が低速回転する。
【0099】アーマチャシャフト510が回転すると、遊星歯車減速機構300のプラネタリーギヤ320が、アーマチャシャフト510の前端のサンギヤ310によって回転駆動される。プラネタリーギヤ320がプラネットキャリア330を介してリングギヤ100を回転駆動する方向の回転トルクをインターナルギヤ340に与える場合は、オーバーランニングクラッチ350の作動によって、インターナルギヤ340の回転が規制される。つまり、インターナルギヤ340は回転しないため、プラネタリーギヤ320の回転によって、プラネットキャリア330が減速回転する。プラネットキャリア330が回転すると、ピニオンギヤ210も回転しようとするが、ピニオンギヤ210はピニオン回転規制部材230によって回転が規制されているため、ピニオンギヤ210は出力軸220のヘリカルスプライン221に沿って前進する。
【0100】ピニオンギヤ210の前進に伴い、シャッタ420も前進し、ハウジング400の開口部410を開く。そして、ピニオンギヤ210の前進によって、ピニオンギヤ210がエンジンのリングギヤ100に完全に噛合し、その後、ピニオン係止リング250に当接する。また、ピニオンギヤ210が前進すると、規制爪231がピニオンギヤ210の凹凸214から外れ、その後、規制爪231の前端が、ピニオンギヤ210の後面に設けられたワッシャ215の後側に落ち込む。
【0101】一方、ピニオンギヤ210が前進した状態で、第1の可動接点612が固定接点630の当接部631に当接する。すると、端子ボルト620のバッテリ電圧が、第1の可動接点612→リード線910aを介して直接上側のブラシ910に伝えられる。つまり、各上層コイルバー531および各下層コイルバー532よりなる電機子コイル530に高い電流が流れ、電機子コイル530が強い磁力を発生し、アーマチャ540を高速回転する。
【0102】アーマチャシャフト510の回転は、遊星歯車減速機構300によって減速されて回転トルクが増大し、プラネットキャリア330を回転駆動する。このとき、ピニオンギヤ210は、前端がピニオン係止リング250に当接して、プラネットキャリア330と一体に回転する。そして、ピニオンギヤ210は、エンジンのリングギヤ100に噛合しているため、ピニオンギヤ210は、リングギヤ100を回転駆動して、エンジンの出力軸を回転駆動する。
【0103】次に、エンジンが始動し、エンジンのリングギヤ100がピニオンギヤ210の回転よりも速く回転すると、ヘリカルスプラインの作用によって、ピニオンギヤ210に後退力が生じる。しかるに、ピニオンギヤ210の後方に落ち込んだ回転規制爪231によって、ピニオンギヤ210の後退が阻止され、ピニオンギヤ210の早期離脱を防止して、エンジンを確実に始動することができる(図38(b)参照)。
【0104】また、エンジンの始動によって、エンジンのリングギヤ100がピニオンギヤ210の回転よりも速く回転されると、リングギヤ100の回転によってピニオンギヤ210が回転駆動される。すると、リングギヤ100からピニオンギヤ210に伝えられた回転トルクは、プラネットキャリア330を介してプラネタリーギヤ320を支持するピン332に伝えられる。つまり、プラネットキャリア330によってプラネタリーギヤ320が駆動される。すると、インターナルギヤ340には、エンジン始動時とは逆回転のトルクがかかるため、オーバーランニングクラッチ350がリングギヤ100の回転を許す。つまり、インターナルギヤ340にエンジン始動時とは逆回転のトルクがかかると、オーバーランニングクラッチ350のローラ353が、クラッチインナ352の凹部355の外側へ離脱し、インターナルギヤ340の回転が可能になる。
【0105】つまり、エンジンが始動して、エンジンのリングギヤ100がピニオンギヤ210を回転駆動する相対回転は、オーバーランニングクラッチ350で吸収され、エンジンによってアーマチャ540が回転駆動されることがない。エンジンが始動すると、乗員によってキースイッチ10がスタート位置から外され、マグネットスイッチ600の吸引コイル650への通電が停止される。吸引コイル650の通電が停止されると、プランジャ610が圧縮コイルバネ660の作用によって、下方に戻される。
【0106】すると、第1の可動接点612が固定接点630の当接部631から離れるとともに、その後第2の可動接点611も端子ボルト620の頭部621から離れ、上側のブラシ910への通電が停止する。また、プランジャ610が下方に戻されると、ピニオン回転規制部材230の復帰バネ部236の作用によって、ピニオン回転規制部材230が上方に復帰し、規制爪231がピニオンギヤ210の後方から離脱する。すると、ピニオンギヤ210は、戻しバネ240の作用によって後方に戻され、ピニオンギヤ210とエンジンのリングギヤ100との噛み合いが外れるとともに、ピニオンギヤ210の後端が出力軸220のフランジ形突出部222に当接する。つまり、ピニオンギヤ210が、スタータの始動前に戻される(図38(c)参照)。
【0107】さらに、プランジャ610が下方に戻されることにより、第2の可動接点611が、マグネットスイッチ600のステーショナリコア642の上面に当接し、上側のブラシ910のリード線が、第1の可動接点612→抵抗体617→第2の可動接点611→ステーショナリコア642→マグネットスイッチカバー640→ブラシ保持体900の順に導通する。つまり、上側のブラシ910と下側のブラシ910とが、ブラシ保持体900を介して短絡する。一方、アーマチャ540の惰性回転により電機子コイル530には、起電力が生じる。そして、この起電力が、上側のブラシ910、ブラシ保持体900、下側のブラシ910を介して短絡するため、アーマチャ540の惰性回転に制動力が与えらえる。この結果、アーマチャ540は急速に停止する。行い、第2の可動接点611は、第1の可動接点612と当接するとともに、抵抗体をなす弾性部材617が配設され、プランジャシャフト615によって、第1の可動接点612と弾性部材617とが移動自在に支持され、プランジャ610は、吸引コイル650の吸引力によって吸引され、固定接点630は、第1の可動接点612及び第2の可動接点611と対向して配設され、かつバッテリに電気的に接続されており、第2の可動接点612は、吸引コイル650の吸引力によるプランジャ610の移動によって、固定接点630に当接し、弾性部材の弾性力により、固定接点630に接点圧を付与し、バッテリの電圧が第2の可動接点612、弾性部材617、第1の可動接点611を介してモータ500に通電され、次いで、第1の可動接点612は固定接点630に当接し、モータ500に通電される構成としたので、弾性部材617は、それ自身が抵抗体をなすとともに弾性力を有する接点圧スプリングを兼ね、第2の可動接点611を備えているため、第1の可動接点612と第2の可動接点611とを固定接点630に2段階に当接させることができる。
【0108】また、第1の可動接点612は、モータ500に通電を行い、第2の可動接点611は、第1の可動接点612と当接するとともに、抵抗体をなす弾性部材617が配設され、プランジャシャフト615によって、第1の可動接点612と弾性部材617とが移動自在に支持され、プランジャ610は、吸引コイル650の起磁力によって吸引され、固定接点630は、第1の可動接点612及び第2の可動接点611と対向して配設され、かつバッテリに電気的に接続されており、固定接点630は第1の可動接点612が当接する第1の当接部631と第2の可動接点611が当接する第2の当接部621とを有し、第1の可動接点612から第1の当接部631までの距離より、第2の可動接点611から第2の当接部621までの距離の方が、短いので、第2の可動接点611が固定接点630に当接し、その後、第1の可動接点612が固定接点630に当接するため、第1の可動接点612と第2の可動接点611とを固定接点に確実に2段階に当接させることができる。
【0109】また、金属性材料からなる弾性部材617は、第1の可動接点612に当接する第1の略直線部617aと、この第1の略直線部617aの一端と接続される螺旋部617cと、この螺旋部617cに接続され、固定接点630に対向する位置に延びる第2の略直線部617bとからなり、第2の略直線部617bに第2の可動接点611が配設されているので、螺旋部617cで自在に抵抗値を設定できる。
【0110】また、モータ500には界磁装置として永久磁石が設けられ、モータ500にバッテリ電圧が通電された後、弾性部材617が、バッテリのアース側部材642(スターショナリコア)に当接し、モータ500の電力入力側部材910(ブラシ)とバッテリのアース側部材642(スターショナリコア)とを電気的に接続する構成としたので、モータ500が惰性回転で回転し、起電力により発生する発電電圧を抵抗体からなる弾性部材617を経て短絡させることにより、モータ500を急激に停止させることができる。さらに、モータ500を急激に停止させられるので、ブラシ910の寿命が大幅に向上し、ブラシ910の体格が大きくなることはなく、スタータ自体が小型化できる。
【0111】なお、実施例1では、第2の可動接点611が固定接点630に当接し、バッテリ電流が抵抗体617、第1の可動接点612を介して通電され、モータ500が低速回転するものであるが、抵抗体617を固定接点630に溶接等で接続固定し、固定接点630と第1の可動接点612との間に、抵抗体617に接続固定された第2の可動接点611を配設してもよい。なお、この第2の可動接点611は、プランジャ610の移動に伴い、プランジャシャフト615に配設された第1の可動接点612に当接し、バッテリ電流が第2の可動接点611、抵抗体617を介して通電され、モータ500が低速回転するものである〔実施例2〕以下、実施例2のスタータについて図40の側面断面図に従い、説明する。
【0112】スタータは、図示されないエンジンに配設されたリングギヤに噛み合うピニオン200を有するオーバーランニングクラッチ1000を内包するハウジング400と、モータ500と、エンドフレーム700と、マグネットスイッチ600とに大別される。まず、ハウジング400部とモータ500部とエンドフレーム700部について説明する。モータ500のヨーク501の内周には、固定磁極550(例えば、永久磁石)が固定されている。この固定磁極550の内側には、ハウジング400のハウジング軸受け440とエンドフレーム700のエンドフレーム軸受け790とによって軸支されたアーマチャ540が配設されている。このアーマチャ540の中央部には、アーマチャシャフト510が圧入固定されている。アーマチャシャフト510には、スプライン510aが設けられ、このスプライン510aには、オーバーランニングクラッチ1000のアウタ1100に設けられたスプライン1100aと係合しており、アーマチャシャフト510上をオーバーランニングクラッチ1000が摺動自在となっている。また、アーマチャシャフト510の一端部の外周には、溝510bが設けられ、この溝510bにC型クリップ251が嵌着され、さらに、C型クリップ251の外周には、環状のナットピニオンストップ252が嵌着されており、ナットピニオンストップ252により、オーバーランニングクラッチ1000が移動規制される。
【0113】アーマチャシャフト510の反オーバーランニングクラッチ1000側には、筒状のコンミテータ540aがアーマチャシャフト510に圧入固定されている。アーマチャ540の軸方向移動規制は、コンミテータ540aとエンドフレーム700の内周に配置されたワッシャ700aに当接することによって行われる。コンミテータ540aの径方向外周面には、ブラシ910が圧縮コイルバネ914により押圧されている。このブラシ910は、熱硬化樹脂により形成されたブラシ保持体900の箱状の樹脂積層板900a内に収納されている。
【0114】また、ハウジング400には、オーバーランニングクラッチ1000を摺動させるシフトレバー1200が配置され、このシフトレバー1200の一端はオーバーランニングクラッチ1000に係合し、他端はマグネットスイッチ600のフック1300に係合している。そして、エンドフレームの周囲に設けられたボルト挿入穴700aに、後側からスルーボルト1400を挿入し、ハウジング400の後端に形成されたネジ穴400aにスルーボルト1400を螺着することによって、ハウジング400、モータ500のヨーク501、エンドフレーム700が固定されている。
【0115】次に、マグネットスイッチ600について説明する。マグネットスイッチ600は、マグネットスイッチフレーム2000内に吸引コイル650を保持している樹脂ケース2100と、その内側に軸方向に摺動自在に配設されたプランジャ610とが配置されている。プランジャ610の他端には、シフトレバー1200と係合するフック1300が設けられている。プランジャ610は、溶接固定されたプランジャシャフト615が配置され、このプランジャシャフト615の先端部には、一対の可動接点、つまり、第1の可動接点612と第2の可動接点611とが配設され、第1の可動接点612と第2の可動接点611とのそれぞれの内側には、樹脂製のブッシャ612a、611aが圧入固定され、これらブッシャ612a、611aを介して、プランジャシャフト615に第1の可動接点612と第2の可動接点611とが固定されている。プランジャシャフト615の先端部の外周には、溝615aが設けられ、この溝615aにワッシャ2200を内側に変形させながら、嵌着させ、そして、第1の可動接点612を電気絶縁する絶縁部材2300がワッシャ2200と第1の可動接点612との間に配設されている。また、第2の可動接点611の一端面は、ブッシャ611aの段付部が当接し、他端面には、絶縁部材2400が当接している。絶縁部材2300と絶縁部材2400との間に、第2の可動接点611をフック1300方向に付勢するスプリング2500が配設されている。なお、2500は、プランジャ610の復帰用スプリングである。
【0116】2600は、熱硬化樹脂により成形されたマグネットスイッチカバーであり、マグネットスイッチムレーム2000の一端を折り曲げにより固定されている。このマグネットスイッチカバー2500は、図示されないバッテリケーブルに接続される端子ボルト620と、モータ500のモータリード線2700に接続されるモータ端子ボルト3300とが嵌着されている。端子ボルト620は、図41に示すように、ボルト部620aの一端面にL字状に成形した銅プレート620bを溶接固定し、さらに、この銅プレート620bにコの字状部630aに舌片部630bを一体成形した固定接点630を溶接固定している。なお、モータ端子ボルト3300も上述のような端子ボルト620と同様に制作される。さらに、固定接点630は、吸引コイル650に通電時、第1の可動接点612と当接するものである。
【0117】また、固定接点630と対向する位置に、図42に示すように、銅からなるプレートの4つの舌片部2800aを内側に折り曲げ、箱状(凹部)に形成することにより、導通部材2800となる。そして、導通部材2800の凹部と固定接点630のコの字状内部との間に、電気抵抗体をなす弾性部材が配設されている。なお、導通部材2800は、環状部材2900の内周面に溝2900aが設けられ、この溝2900aに導通部材2800の4つの舌片部2800aの内、1つの舌片部2800aを軸方向から挿入し、溶接固定させる。導通部材2800は、吸引コイル650に通電時、第2の可動接点611に当接するものである。なお、導通部材2800は、金属プレート3100が当接するように配置されている。
【0118】また、図43に示すように、3000は、樹脂から形成された円筒状の樹脂部材3000であり、この樹脂部材3000の軸方向一端面に設けられた溝3000aに、L字状の金属プレート3100が圧入固定されている。なお、固定接点630と第1の可動接点612までの距離より、導電部材2800と第2の可動接点611までの距離の方が、短く設定されている。
【0119】〔第2の実施例の作動〕次に、上記スタータの作動を図44(a)ないし(c)の電気回路図に従い、説明する。乗員によって、キースイッチ10がスタート位置に設定されると、バッテリ20から、マグネットスイッチ600の吸引コイル650に通電される。吸引コイル650が通電されると、吸引コイル650の発生する磁力にプランジャ610が引き寄せられ、プランジャ610が左方向に移動する。
【0120】プランジャ610が上昇を開始すると、プランジャシャフト615と一体的に構成されたフック1300がシフトレバー1200を右側に移動することで、シフトレバー1200を支点1210を介してオーバーランニング1000を押し出すとともに、プランジャ610と一体的に移動する第1の可動接点612及び第2の可動接点611の内、第2の可動接点が導電部材2800に当接する。端子ボルト620には、バッテリ20の電圧が印加されており、端子ボルト620の電圧が、第2可動接点611→導電部材2800→弾性部材2900(抵抗体)→第1の可動接点612→固定接点630を介してモータ500へ通電される。端子ボルト620より印加されたバッテリ20電圧は、弾性部材2900(抵抗体)を介することにより降圧され、モータ500は低速回転しながら、オーバーランニング1000のピニオンギヤがリングギヤ100との噛み合いを開始する。(図44(a)参照)
さらに、マグネットスイッチ600のプランジャ610が吸引されると、第2の可動接点611が導通部材2800とともに、弾性部材2900(抵抗体)を押圧し、第1の可動接点612が固定接点630に当接する。この時、シフトレバー1200は、支点1210を起点としてオーバーランニングクラッチ1000がさらに、押し出され、オーバーランニングクラッチ1000のピニオンギヤとリングギヤ100との噛み合いが完了する。この時、モータ500へは、バッテリ20の定格電圧が印加され、アーマチャ540の回転が高速回転し、エンジンを着火させる。エンジン着火後、リングギヤ100の回転がアーマチャ540の回転より速く回転すると、オーバーランニングクラッチ1000がヘリカルスプラインの作用によって、ピニオンギヤ210が後退するのを防止している。(図44(b)参照)。
【0121】エンジンの駆動力は、オーバーランニングクラッチ1000のアウタ1000a内のローラ1000bが空転することにより、アーマチャ540が過回転するのを防止している。エンジンが始動すると、乗員によってキースイッチ10がスタート位置から外され、マグネットスイッチ600の吸引コイル650への通電が停止される。吸引コイル650の通電が停止されると、プランジャ610が圧縮コイルバネ2500、弾性部材2900の復元力によって、元の位置に戻される。この時、プランジャ610の動きに連動して、シフトレバー1200が支点1210を起点として、オーバーランニングクラッチ1000をエンドフレーム700側に後退させ、ピニオンギヤをリングギヤ100から離脱させる。つまり、オーバーランニングクラッチ1000が作動前の位置に戻される。(図44(c)参照)。
【0122】プランジャ610が静止状態に戻ることでモータ500と接続された端子ボルト620側の導通部材2800が、マグネットスイッチフレーム2000に当接している金属プレート3100と当接することにより、短絡する。一方、アーマチャ540の惰性回転により起動力が生じるが、ブラシ910を介して短絡回路が形成されるので、アーマチャ540の惰性回転に制動力が与えられ、アーマチャ540が急速に停止する。
【0123】上記のような構成をとれば、プランジャシャフト615上には一対の可動接点、つまり、第1の可動接点612及び第2の可動接点611が配設され、プランジャ610は、プランジャシャフト615を有し、吸引コイル650の起磁力によって、固定接点630方向に、第1の可動接点612と第2の可動接点611を移動させ、導通部材2800は、移動可能であり、第2の可動接点611と固定接点630との間に配設され、弾性部材2900は、抵抗体をなし、かつ、一端が導通部材2800に当接し、他端が固定接点630に当接しており、第2の可動接点612は、吸引コイル650の吸引力によるプランジャ610の移動によって、導通部材2800に当接し、弾性部材2900の弾性力により、導通部材2800に接点圧を付与し、バッテリ電圧が第2の可動接点611、導通部材2800、弾性部材2900、固定接点630を介してモータ500に通電され、次いで、第1の可動接点612は、固定接点630に当接し、モータ500に通電される構成としたので、弾性部材2900は、それ自身が抵抗体をなすとともに弾性力を有する接点圧スプリングを兼ねているため、第1の可動接点612と第2の可動接点611とを固定接点630に2段階に当接させることができる。
【0124】また、プランジャシャフト615上には一対の可動接点、つまり、第1の可動接点612及び第2の可動接点611が配設され、プランジャ610は、プランジャシャフト615を有し、吸引コイル650の起磁力によって、固定接点630方向に、第1の可動接点612と第2の可動接点611を移動させ、導通部材2800は、移動可能であり、第2の可動接点611と固定接点630との間に配設され、弾性部材2900は、抵抗体をなし、かつ、一端が導通部材2800に当接し、他端が固定接点630に当接しており、固定接点630と第1の可動接点612までの距離より、導通部材2800と第2の可動接点611までの距離の方が、短いので、第2の可動接点611が導通部材2800に当接し、その後、第1の可動接点612が固定接点630に当接するため、第1の可動接点612と第2の可動接点611とを導通部材2800及び固定接点630に確実に当接させることができる。
【0125】また、モータ500には界磁装置として永久磁石が設けられ、モータ500にバッテリ電圧が通電された後、弾性部材2900が、バッテリのアース側部材3100(金属プレート)に当接し、モータ500の電力入力側部材910(ブラシ)とバッテリのアース側部材3100とを電気的に接続する構成としたので、モータ500が惰性回転で回転し、起電力により発生する発電電圧を抵抗体からなる弾性部材2900を経て短絡させることにより、モータ500を急激に停止させることができる。さらに、モータ500を急激に停止させられるので、ブラシ910の寿命が大幅に向上し、ブラシ910の体格が大きくなることはなく、スタータ自体が小型化できる。
【0126】なお、実施例2では、第2の可動接点611が導電部材2800と当接し、抵抗体617を介して固定接点630に通電され、モータ500が低速回転するものであるが、第2の可動接点611が抵抗体617、導電部材2800を介して、導電部材2800を固定接点630に当接させ、モータ500が低速回転させる構成としてもよい。
【0127】〔変形例〕図45に示すように、実施例1のマグネットスイッチ600に対して、第2の可動接点611と当接する固定接点630には、当接部631(第1の当接部)に向かって傾斜する傾斜面631aが設けられ、この傾斜面631aの傾斜角は、10°から45°に設定してある。なお、固定接点630は、端子ボルト620を有しており、この端子ボルト620の頭部621には、第2の可動接点611と当接する平面621aを有している。そして、平面621aは傾斜面631aと連続して形成されている(第2の当接部)。
【0128】なお、端子ボルト620の頭部621と固定接点630を一体で構成してもよい。また、第2の可動接点611が端子ボルト620の平面621aに当接し、次いで、第1の可動接点612が固定接点630の当接部631に当接する際に、第2の可動接点611が端子ボルト620の平面621aから傾斜面631aに移動して当接するとともに、第2の可動接点611とステーショナリコア642との間に所定の隙間(例えば、約1mm)を有するようにしている。
【0129】次に、図46に第1、第2の可動接点612、611が固定接点630に当接する状態を示すものであり、図46(a)から(c)の順番でマグネットスイッチ600が作動する。なお、図46(a)はマグネットスイッチ600が作動していない状態である。まず、第2の可動接点611が端子ボルト620の平面621aに当接して、モータ500に通電される(図46(b)参照)。その後、アーマチャ200がゆっくり回転して、ピニオンギヤ210がリングギヤ100に当接し、さらに、噛み合ってピニオンギヤ210が前進する。そして、ピニオン回転規制部材230がピニオン200の後端に落ち込み、マグネットスイッチ600のプランジャ610の拘束が解かれ、さらにプランジャ610が固定接点630の当接部631方向に移動するが、この時、第2の可動接点611は、端子ボルト620の平面621aから傾斜面631aに移動し、第1の可動接点612が固定接点の当接部631に当接し、アーマチャ200が全力で回転する。(図46(c)参照)。
【0130】このような構成にすれば、第2の可動接点611が端子ボルト620の平面621aに当接し、さらに、第1の可動接点612が固定接点630の当接部631に当接するまで、好適に導通を保ちながら、固定接点630上(平面621a及び傾斜面631a)を第2の可動接点611がスムーズに移動できるので、途中で導通が途切れることはない。
【0131】また、第2の可動接点611が吸引コイル650の吸引力によるプランジャ610の移動によって、端子ボルト620の平面621aに当接し、弾性部材617の弾性力により、固定接点630の平面621aに接点圧を付与し、次いで、第1の可動接点612が固定接点630の当接部631に当接する際に、端子ボルト620の平面621aと当接している第2の可動接点611が、弾性部材617の弾性力の増加によって、固定接点630の角部に乗り上げて、ステーショナコア642に当接するのを防止できる。即ち、第2の可動接点611がステショナリコア642に当接して短絡することを防止できる。
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【出願日】 平成7年(1995)9月19日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】碓氷 裕彦
【公開番号】 特開平9−68142
【公開日】 平成9年(1997)3月11日
【出願番号】 特願平7−239882