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【発明の名称】 スタータ用マグネットスイッチ
【発明者】 【氏名】新美 正巳

【氏名】志賀 孜

【氏名】林 信行

【目的】 モータ2を二段階に起動することでピニオン4とリングギヤとの噛み合いを円滑に行わせるようにしたスタータ1において、モータ回路に設けられた接点の氷結による作動不良を防止すること。
【構成】 バッテリに接続された電源端子49には、抵抗器51を介して副固定接点52が電気的に接続されている。スタータスイッチがONされてマグネットスイッチ6が作動すると、主可動接点20と保持部材56によって連結された副可動接点53が副固定接点52に当接して導通することにより、バッテリから電源端子49に流れた電流は、電源端子49→抵抗器51→副固定接点52→副可動接点53へと流れてモータ2を起動する。その後、プランジャ41の移動に伴って主可動接点20が主固定接点50に当接して導通することにより、バッテリから電源端子49に流れた電流は抵抗器51を短絡してモータ2へ流れることにより、モータ2が定格電圧を印加されて回転する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】スタータモータにバッテリからの電流を供給するためのスタータ用マグネットスイッチにおいて、前記バッテリに接続された主固定接点と、この主固定接点に電気的に接続され、導通されると発熱する発熱体と、この発熱体を介して前記主固定接点に電気的に接続される副固定接点とを備え、前記主固定接点および前記副固定接点と導通することで、前記スタータモータへの通電を制御することを特徴とするスタータ用マグネットスイッチ。
【請求項2】請求項1に記載のスタータ用マグネットスイッチにおいて、前記発熱体は前記スタータモータへの通電電流を制限する電気抵抗体であり、前記スタータモータへの通電は、前記バッテリから前記発熱体を介して制限された後、前記発熱体を短絡して前記バッテリから直接行われることを特徴とするスタータ用マグネットスイッチ。
【請求項3】請求項2に記載のスタータ用マグネットスイッチにおいて、前記主固定接点に当接する主可動接点と、前記副固定接点に当接する副可動接点とを有すると共に、それぞれの可動接点をそれぞれの固定接点側に移動させるためのプランジャとを備え、前記プランジャの移動により、前記副可動接点を前記副固定接点に当接させることで、前記バッテリから前記発熱体を介して前記スタータモータに通電させた後、前記主可動接点を前記主固定接点に当接させることで、前記発熱体を短絡して前記バッテリから前記スタータモータに通電することを特徴とするスタータ用マグネットスイッチ。
【請求項4】請求項3に記載のスタータ用マグネットスイッチにおいて、前記副可動接点と前記主可動接点とが電気的に接続され、かつ前記副可動接点もしくは前記主可動接点が前記スタータモータに電気的に接続されていることを特徴とするスタータ用マグネットスイッチ。
【請求項5】請求項4に記載のスタータ用マグネットスイッチにおいて、前記副可動接点は、弾性を有する導電性の保持部材によって、前記主可動接点と機械的および電気的に接続されていることを特徴とするスタータ用マグネットスイッチ。
【請求項6】請求項5に記載のスタータ用マグネットスイッチにおいて、前記保持部材は、前記主可動接点に連結された一端と前記副可動接点に連結された他端との間に、湾曲部もしくは屈曲部が形成されていることを特徴とするスタータ用マグネットスイッチ。
【請求項7】請求項1ないし6の何れかに記載のスタータ用マグネットスイッチにおいて、前記発熱体と前記副固定接点との間に、この副固定接点を保持するための接点保持部材を配接し、かつ前記接点保持部材をバイメタルで構成したことを特徴とするスタータ用マグネットスイッチ。
【請求項8】請求項7に記載のスタータ用マグネットスイッチにおいて、前記発熱体は、一端側が前記主固定接点に接続された一対の発熱体であり、これら一対の発熱体の他端側に前記接点保持部材が固定されていることを特徴とするスタータ用マグネットスイッチ。
【請求項9】請求項7もしくは8に記載のスタータ用マグネットスイッチにおいて、バイメタルで構成された前記接点保持部材は、作動時に自身が変形することにより、前記発熱体を短絡して前記主固定接点に当接する発熱体短絡用接点を有することを特徴とするスタータ用マグネットスイッチ。
【請求項10】請求項7もしくは8に記載のスタータ用マグネットスイッチにおいて、バイメタルで構成された前記接点保持部材は、作動時に自身が変形することにより、前記副固定接点を前記副可動接点から開離することを特徴とするスタータ用マグネットスイッチ。
【請求項11】請求項9に記載のスタータ用マグネットスイッチにおいて、前記発熱体短絡用接点と前記副固定接点とが一体で形成されていることを特徴とするスタータ用マグネットスイッチ。
【請求項12】請求項1ないし11のいずれかに記載のスタータ用マグネットスイッチにおいて、前記発熱体は、正特性サーミスタで構成したことを特徴とするスタータ用マグネットスイッチ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エンジンを始動させるためのスタータに用いられるマグネットスイッチに関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、スタータを寒冷地等で使用した場合、エンジン運転時の高温多湿状態からエンジン停止後の急冷によって、マグネットスイッチに内蔵された固定接点の表面に霜が付着して、接点表面が氷結する可能性がある。即ち、マグネットスイッチの電源端子には、バッテリからの大径のケーブルが接続されているため、エンジン停止後、先ずケーブルから冷え始め、続いてケーブルが接続されたマグネットスイッチの電源端子が冷えて、その電源端子と一体的に形成された固定接点が冷える。この時、マグネットスイッチ内部の空気中の湿度が高いと、空気中の水分が先ず接点表面に結露した後、霜となって最終的に氷結に至る可能性がある。
【0003】この様な条件の中で、マグネットスイッチを小型化して吸引力を低下させると、スイッチの可動接点と固定接点との衝突時の衝撃力が低下するため、固定接点の表面が氷結している場合、氷を割ることができず、導通不良となって作動不具合の確率が増大する虞がある。そこで、接点の氷結による作動不具合を防止する方法として、実開昭54−88563号公報では、可動接点あるいは固定接点の少なくとも一方の表面に多数の条溝を形成して、接点衝突時に接点表面の氷の層を破壊して導通し易くしたマグネットスイッチが提案されている。あるいは、実開昭50−9635号公報、および実開昭51−32342号公報では、マグネットスイッチ内の接点の周囲に電熱線を配置して、その電熱線の加熱によって接点表面の氷を融解する方法が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、接点表面に条溝を設けて導通し易くする方法では、マグネットスイッチを小型化して吸引力を低下させた場合に、接点衝突時の衝撃力が低下することから十分な効果を発揮できないという問題が生じる。また、電熱線を利用する方法は、電熱線からの輻射熱を利用して氷を解かす方法であるため、氷の融解に時間がかかる。このため、キースイッチを回せば速やかにエンジンが始動するというユーザーの要求に応えることができないばかりでなく、電熱線への通電を制御するための部品を必要とすることから、コスト高を招くという問題が生じる。
【0005】本発明は、上記事情に基づいて成されたもので、その目的は、モータを二段階に起動することでピニオンとリングギヤとの噛み合いを円滑に行わせるようにしたスタータ用マグネットスイッチにおいて、モータ回路に設けられた接点の氷結による作動不良を防止することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するために、以下の構成を採用した。請求項1では、主固定接点と副固定接点との間に発熱体が介在されている。従って、寒冷地等での使用によりスタータが冷却されて主固定接点が冷えても、発熱体の熱伝導率が小さいことから、副固定接点は冷えにくく、副固定接点の接点表面が氷結するのを防止できる。一方、電源端子に繋がる主固定接点は、電源端子が冷えることで接点表面が氷結する場合も生じるが、導通されて発熱する発熱体の熱を利用して接点表面の氷を融解することができる。即ち、発熱体を介してスタータモータが通電されると、発熱体の発する熱が主固定接点に伝わるとともに、発熱体からの輻射熱によっても主固定接点の接点表面が加熱されることにより、主固定接点の接点表面に氷結した氷が速やかに融解されて、氷結による導通不良を防止できる。
【0007】請求項2では、電気抵抗体である発熱体を通じてバッテリからスタータモータに通電した後、発熱体を短絡してバッテリからスタータモータへ通電される。これにより、スタータモータは、発熱体を介してバッテリからの通電電流が制限された場合と、発熱体を短絡して通電された場合とで二段階に起動することができる。
【0008】請求項3および4では、プランジャの移動に伴ってスタータモータを二段階に起動することができる。具体的には、プランジャの移動に伴って、先ず副可動接点を副固定接点に当接させることにより、バッテリから発熱体を介してスタータモータに通電し、その後、更にプランジャの移動に伴って主可動接点を主固定接点に当接させることにより、発熱体を短絡してバッテリからスタータモータへ通電することができる。
【0009】請求項5では、副可動接点が弾性を有する導電性の保持部材によって主可動接点と機械的および電気的に接続されているため、保持部材の弾性を利用して副可動接点が副固定接点に当接した時の接点圧を付与することができる。即ち、副可動接点と主可動接点とを接続する保持部材を接点圧スプリングとして利用できるため、専用の接点圧スプリングが不要となり、部品点数の低減を図ることができる。
【0010】請求項6では、主可動接点に連結された保持部材の一端と副可動接点に連結された保持部材の他端との間に湾曲部あるいは屈曲部が形成されている。即ち、保持部材の全長は、主可動接点と副可動接点とを結ぶ直線長さより長くなる。この様に保持部材に湾曲部や屈曲部を形成して保持部材の全長を長くすることにより、保持部材が撓んだ時の応力を低くできる。また、保持部材を直線的な形状でなく、湾曲部や屈曲部を形成して所定の長さを確保したことにより、副可動接点を主可動接点近傍に配置することができると言える。即ち、保持部材の全長が長くても全体をコンパクトに形成することにより、マグネットスイッチの小型化を図ることができる。
【0011】請求項7では、発熱体と副固定接点との間に副固定接点を保持する接点保持部材を設けて、その接点保持部材をバイメタルで構成したことにより、発熱体の過熱をバイメタルの変形によって抑えることができる。
【0012】請求項8では、副固定接点を保持する接点保持部材が一対の発熱体を介して主固定接点に接続されている。このため、主固定接点から発熱体を通じて接点保持部材へ伝わる熱が分散されることから、主固定接点が冷えても、その冷熱が接点保持部材へ伝わり難くなり、副固定接点の氷結を防止できる。また、発熱体を通じてスタータモータを通電する際には、一対の発熱体の発する熱が効率的に主固定接点に伝わることから、主固定接点の表面が氷結している場合でも、接点表面の氷が速やかに融解されて、氷結による導通不良を防止できる。
【0013】請求項9では、バイメタルで構成された接点保持部材が発熱体の過熱に伴って変形することにより、接点保持部材に設けられた発熱体短絡用接点が主固定接点に当接して発熱体を短絡することができる。これにより、発熱体に電流が流れなくなるため、発熱体の必要以上の発熱が抑えられる。
【0014】請求項10では、バイメタルで構成された接点保持部材が発熱体の過熱に伴って変形することにより、接点保持部材に設けられた副固定接点が副可動接点から開離して発熱体への通電を遮断することができる。これにより、発熱体に電流が流れなくなるため、発熱体の必要以上の発熱が抑えられる。
【0015】請求項11では、発熱体短絡用接点と副固定接点とを一体で構成することにより、部品点数の低減を図ることができる。
【0016】請求項12では、発熱体を正特性サーミスタで構成することにより、発熱体の必要以上の発熱を抑えることができる。即ち、発熱体に必要時間以上電流が流れて発熱体の温度が所定温度まで上昇すると、正特性サーミスタである発熱体の抵抗値が増大して電流値を抑制することにより、発熱体の過熱を抑えることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】次に、本発明のスタータ用マグネットスイッチの実施例を図面に基づいて説明する。
(第1実施例)図1はスタータ1の断面図、図2はモータ回路図である。本実施例のスタータ1は、通電を受けて回転力を発生する始動モータ2、この始動モータ2の回転力を受けて回転する出力軸3、この出力軸3の外周に嵌合するピニオン4、始動モータ2の回転力を出力軸3へ伝達する回転力伝達手段(後述する)、始動時にピニオン4の回転を規制する回転規制部材5、始動モータ2の後方(図1の右側)に配置されたマグネットスイッチ6、およびモータ回路(図2参照)を開閉する接点装置(後述する)等より構成されている。
【0018】(始動モータ2の説明)始動モータ2は、ヨーク7、固定磁極8、アーマチュア9、ブラシ10等より構成されている。ヨーク7は、例えばプレス加工(深絞り)により成形されて、後端側(図1の右端側)のみ開放された円筒形状を成し、ヨーク7の後端側に配されるホルダ11とともにハウジング12とエンドカバー13との間に挟持されている。ヨーク7の前端側は、径方向の内周側へ折り曲げられて、始動モータ2と回転力伝達手段とを区画する隔壁板7aとして設けられている。固定磁極8は、例えば複数の永久磁石から成り、ヨーク7の内周面に固定されて磁界を形成している。なお、固定磁極8は、永久磁石の代わりに通電によって磁力を発生するフィールドコイルを用いても良い。
【0019】アーマチュア9は、回転軸を成すシャフト14、このシャフト14の外周に設けられた電機子コア15、この電機子コア15に巻装された電機子コイル16等より構成され、シャフト14の前端部が軸受17を介して出力軸3の後端に形成された凹所に嵌合し、後端部が軸受18を介してホルダ11に回転自在に支持されている。また、アーマチュア9の後端面には、電機子コア15の端面に沿って折り曲げられた電機子コイル16によってコンミテータ16aが形成されている。
【0020】ブラシ10は、少なくとも一組の正極ブラシ10aと負極ブラシ10bとから成り、それぞれホルダ11に保持されて、軸方向の後端側からスプリング(図示しない)によりコンミテータ16aに押圧されている。なお、正極ブラシ10aのリード線19は、適度の弛みを有しながら後述の全電圧作動用の可動接点20(以下、主可動接点20と言う)と電気的に接続され、負極ブラシ10bのリード線21は、ホルダ11(金属製)と電気的に接続されてアースされている。
【0021】(出力軸3の説明)出力軸3は、アーマチュア9のシャフト14と同軸上に配されて、その先端部が軸受22を介してハウジング12に回転自在に支持され、後端部が軸受23を介してハウジング12内部に収容されたセンタケース24に回転自在に支持されている。この出力軸3の後端部は、径方向の外周へ突設されて、遊星歯車減速機構(後述する)のプラネットキャリア25として一体に設けられている。また、ピニオン4が嵌合する出力軸3の外周にはヘリカルスプライン3aが形成されている。
【0022】(ピニオン4の説明)ピニオン4は、その内周面にピニオンヘリカルスプライン(図示しない)が形成されて、出力軸3の外周に形成されたヘリカルスプライン3aと嵌合しており、出力軸3上をヘリカルスプライン3aに沿って前進することでエンジンのリングギヤ(図示しない)と噛み合うことができる。このピニオン4は、ピニオン4の前端側に配されたスプリング26により常に出力軸3の後方側へ付勢されている。ピニオン4の後端には、ピニオン4より外径寸法が大径の回転規制プレート27が一体に設けられている。この回転規制プレート27の外周面には、軸方向に沿った係合溝27aがプレート周方向で等間隔に多数(ピニオン4の外歯枚数以上)形成されている。
【0023】(回転力伝達手段の説明)回転力伝達手段は、遊星歯車減速機構(本発明の減速手段)と一方向クラッチとから構成されて、ヨーク7の隔壁板7aより前方側でセンタケース24に収容されている。遊星歯車減速機構は、アーマチュア9の回転速度を減速して始動モータ2の出力トルクを増大する減速装置であり、シャフト14の先端外周に形成されたサンギヤ28、このサンギヤ28に噛み合う3個の遊星ギヤ29、各遊星ギヤ29と噛み合うインターナルギヤ30、および前述のプラネットキャリア25より構成されている。
【0024】サンギヤ28は、シャフト14と一体に回転することで、シャフト14の回転を3個の遊星ギヤ29に伝達する。3個の遊星ギヤ29は、それぞれプラネットキャリア25に固定されたピン31に軸受32を介して回転自在に支持されており、サンギヤ28およびインターナルギヤ30と噛み合いながらサンギヤ28の外周を公転することで、その公転力がプラネットキャリア25に伝達されて出力軸3に回転力を伝達する。インターナルギヤ30は、円筒形状に設けられて、その外周面がセンタケース24の円筒壁内周面に摺接して回転可能に組み込まれている。
【0025】一方向クラッチは、遊星歯車減速機構のインターナルギヤ30を一方向(エンジンの回転を受けて回転する方向)のみに回転可能に支持するもので、クラッチアウタ33、クラッチインナ34、ローラ35、およびスプリング(図示しない)等より構成される。クラッチアウタ33は、インターナルギヤ30の前端側でインターナルギヤ30と一体に設けられている。このクラッチアウタ33の内周面には、周方向に複数の楔状カム室(図示しない)が形成されている。
【0026】クラッチインナ34は、センタケース24と一体に設けられて、クラッチアウタ33の内周側でクラッチアウタ33との間に所定の間隔を保って軸方向に延びる円筒形状を成す。ローラ35は、カム室に収容されて、始動モータ2の回転力を出力軸3へ伝達する時にクラッチアウタ33とクラッチインナ34とをロックして、クラッチアウタ33の回転を規制する。スプリングは、ローラ35とともにカム室に収容されて、ローラ35をカム室の狭い方へ押圧している。
【0027】(回転規制部材5の説明)回転規制部材5は、棒状の金属材を約3/2巻回して設けられたバネ部材であり、両端部が径方向の対向位置で同一方向へ略直角に曲げ起こされている。その曲げ起こされた一端部5aは、スタータ1の作動初期に回転規制プレート27の外周面に形成された係合溝27aに係合することでピニオン4の回転を規制する規制棒であり、他端部5bには、ワイヤ等の紐状部材36の一端が係合されて、その紐状部材36を介してマグネットスイッチ6の作動が伝えられる。
【0028】この回転規制部材5は、センタケース24に対して軸方向(図1の左右方向)への移動が規制された状態で上下方向(図1の上下方向)に移動可能に保持されている。また、回転規制部材5は、図示しない復帰スプリングによって常時上方へ付勢されており、紐状部材36を介してマグネットスイッチ6の作動が他端部5bに伝達されると、回転規制部材5全体が復帰スプリングのバネ力に抗して下方へ移動し、マグネットスイッチ6がオフされると、復帰スプリングのバネ力により上方へ付勢されて初期位置(図1に示す位置)へ復帰する。
【0029】(マグネットスイッチ6の説明)マグネットスイッチ6は、ホルダ11に圧入された台座37に保持されてエンドカバー13内に配置され、アーマチュア9のシャフト14に対して動作方向(図1では上下方向)が略直角方向となるように固定されている。このマグネットスイッチ6は、スイッチカバー38、コイル39、固定鉄心40、プランジャ41、リターンスプリング42、およびロッド43等から構成されている。スイッチカバー38は、磁性体製(例えば鉄製)でカップ状にプレス成形されて、カバー底面(図1の下面)の中央部にはプランジャ41を摺動自在に挿通する挿通孔が開けられている。
【0030】コイル39は、図2に示すように、車両のスタータスイッチ44を介して車載バッテリ45に接続され、スタータスイッチ44がON操作されて通電されることにより磁力を発生する。固定鉄心40は、コイル39の上端側に配されて、スイッチカバー38の開口部にかしめ固定されている。プランジャ41は、磁性体製(例えば鉄製)で円柱形状を呈し、コイル39の中空内部に固定鉄心40と対向して配置されて、コイル39への通電時に磁化された固定鉄心40側へ吸引される。なお、プランジャ41の底部には、前述の紐状部材36の他端が連結されており、その紐状部材36は、台座37に保持されたローラ46およびセンタケース24に保持されたローラ47に案内されてプランジャ41の作動を回転規制部材5に伝達している。
【0031】リターンスプリング42は、コイル39の内周でプランジャ41と固定鉄心40との間に介在されて、固定鉄心40に対してプランジャ41を下方(図1の下方)へ付勢している。即ち、コイル39への通電が停止された時に、それまでリターンスプリング42の付勢力に抗して固定鉄心40側へ吸引されていたプランジャ41を初期位置(図1に示す位置)へ復帰させる。ロッド43は、絶縁体製(例えば樹脂製)でプランジャ41の上端側に固定されて、コイル39の中空内部を通し、固定鉄心40の中央部に開けられた貫通孔を摺動自在に貫通して上方へ突出されている。もちろん、主可動接点20が絶縁処理されておれば、ロッド43は導電体でも良い。
【0032】(モータ回路の接点装置の説明)接点装置は、図2に示すように、ケーブル48によってバッテリ45に接続された電源端子49、この電源端子49に固定された全電圧作動用の固定接点50(以下、主固定接点50と言う)、この主固定接点50に対応して可動する全電圧作動用の主可動接点20、電源端子49と電気的に接続された抵抗器51(本発明の発熱体および電気抵抗体)、この抵抗器51を介して電源端子49と導通する低電圧起動用の固定接点52(以下、副固定接点52と言う)、この副固定接点52に対応して可動する低電圧起動用の可動接点53(以下、副可動接点53と言う)を備え、主可動接点20および副可動接点53がマグネットスイッチ6の作動によって可動する構成である。
【0033】電源端子49は、図1に示すように、エンドカバー13を貫通して先端側がエンドカバー13の外側に露出した状態で取り付けられ、ワッシャ54の締め付けによりエンドカバー13に固定されている。主固定接点50は、エンドカバー13の内部で電源端子49の頭部49aと一体に設けられている。主可動接点20は、主固定接点50と対向してマグネットスイッチ6のロッド43の先端部に取り付けられている。
【0034】抵抗器51は、例えば、鉄クロム、ニッケルクロム等の金属系素材をコイル状に形成したもので、図3(図1のA視図)に示すように、電源端子49の頭部49a両側に設けられて、一端がそれぞれ電源端子49の頭部49a側面に接続され、他端がそれぞれ板状の接点保持部材55(導体)に接続されている。副固定接点52は、接点保持部材55の下面中央部に溶接等により固定されている。副可動接点53は、保持部材56を介して主可動接点20と連結されて、副固定接点52と対向して配置されている。保持部材56は、図1に示すように、細長い金属板を湾曲させて弾性を持たせてあり、一端が主可動接点20と機械的および電気的に接続されて、他端が副可動接点53と機械的および電気的に接続されている。
【0035】なお、この接点装置は、主可動接点20と主固定接点50との間隔より副可動接点53と副固定接点52との間隔の方が小さく設定されており、マグネットスイッチ6が作動してプランジャ41とともにロッド43が図示(図1)上方へ移動すると、主可動接点20が主固定接点50に当接する前に副可動接点53が副固定接点52に当接して、バッテリ電圧が抵抗器51を介して始動モータ2に印加され、その後、主可動接点20が主固定接点50に当接して抵抗器51を短絡することにより、全電圧が始動モータ2に印加される。
【0036】次に、本実施例の作動を説明する。スタータスイッチ44がONされてマグネットスイッチ6が作動すると、プランジャ41の移動に伴って紐状部材36がマグネットスイッチ6側へ引っ張られることにより、回転規制部材5がセンタケース24に沿って下方へ移動する。その結果、回転規制部材5の規制棒(以下5aと記す)が回転規制プレート27の係合溝27aに係合してピニオン4の回転を規制する。
【0037】一方、プランジャ41が固定鉄心40側へ吸引されてロッド43が上昇すると、先ず副可動接点53が副固定接点52に当接して導通する。これにより、バッテリ45からの電流は、電源端子49→抵抗器51→副固定接点52→副可動接点53→保持部材56→主可動接点20→正極ブラシ10aのリード線19→正極ブラシ10a→アーマチュア9→負極ブラシ10b→負極ブラシ10bのリード線21→ホルダ11へと流れて、始動モータ2は抵抗器51により通電電流が制限されて起動する。始動モータ2(アーマチュア9)の回転は、遊星歯車減速機構で減速されて出力軸3に伝達されることにより、出力軸3が低速回転する。この出力軸3の回転によってピニオン4も回転しようとするが、ピニオン4が規制棒5aによって回転規制されていることから、出力軸3の回転力はピニオン4に対して軸方向に押し出す推力として作用する。この結果、ピニオン4が出力軸3に対してヘリカルスプライン3aに沿って前進してリングギヤと噛み合うことができる。
【0038】その後、ピニオン4が完全にリングギヤと噛み合うと、規制棒5aの先端が回転規制プレート27の係合溝27aから外れて回転規制プレート27の後端側に落ち込むことにより、ピニオン4の回転規制が解除される。規制棒5aの先端が回転規制プレート27の後端側に落ち込むことによって更にプランジャ41が吸引されるため、主可動接点20が主固定接点50に当接して導通する。これにより、バッテリ45からの電流は、電源端子49から抵抗器51を短絡して→主固定接点50→主可動接点20→正極ブラシ10aのリード線19→正極ブラシ10a→アーマチュア9→負極ブラシ10b→負極ブラシ10bのリード線21→ホルダ11へと流れる。その結果、始動モータ2に定格電圧が印加されてアーマチュア9が回転することにより、ピニオン4と噛み合ったリングギヤに回転力が伝達されてエンジンを始動することができる。なお、規制棒5aの先端が回転規制プレート27の後端側に落ち込んだ時、副可動接点53は副固定接点52に当接したままで、副可動接点53の移動は規制されるが、弾性を有する保持部材56が撓むことによってプランジャ41の移動が阻止されることはない。
【0039】なお、ピニオン4が前進してリングギヤと噛み合った状態では、ピニオン4を付勢するスプリング26の付勢力が大きくなる。また、エンジン始動後、ピニオン4がリングギヤによって回されると、エンジンの回転力がヘリカルスプライン3aの作用によってピニオン4を後退させる方向へ作用する。これらの力により、ピニオン4は出力軸3に対して後退しようとするが、回転規制プレート27の後端側に落ち込んだ規制棒5aの先端が回転規制プレート27の後端面を支持することによりピニオン4の後退が阻止される。
【0040】その後、スタータスイッチ44がOFFされてコイル39への通電が停止すると、コイル39の磁力が消滅することで、それまで固定鉄心40側へ吸引されていたプランジャ41がリターンスプリング42の付勢力によって初期位置(図1に示す位置)へ復帰する。このプランジャ41の復帰により、主可動接点20と主固定接点50、および副可動接点53と副固定接点52とが各々離れて導通が切れることにより、アーマチュア9の回転が停止する。一方、プランジャ41の復帰に伴って、紐状部材36を介して回転規制部材5を引っ張る力が消滅することから、回転規制部材5は復帰スプリングのバネ力によって初期位置へ復帰する。この結果、ピニオン4の後退を阻止していた規制棒5aが回転規制プレート27から外れるため、スプリング26の付勢力およびリングギヤからの後退力を受けるピニオン4が初期位置(図1に示す状態)に復帰する。
【0041】(実施例の効果)本実施例のスタータ1は、抵抗器51の一端をエンドカバー13の内部へ突出して設けられた電源端子49の頭部49aに接続し、他端を副固定接点52を保持する接点保持部材55に接続したことにより、寒冷地等での使用によりスタータ1が冷却されて電源端子49が冷えても、抵抗器51の熱伝導率が銅の数十分の一と小さいため、副固定接点52が冷えにくくなり、副固定接点52の氷結を防止できる。これにより、始動モータ2の起動に何等支障を来すことがない。なお、抵抗器51の他端を直接副固定接点52に接続することにより、接点保持部材55を無くすこともできる。
【0042】一方、電源端子49の頭部49aと一体を成す主固定接点50は、電源端子49が冷えることで接点表面が氷結する場合も生じるが、抵抗器51の発熱を利用して接点表面の氷を融解することができる。即ち、始動モータ2を抵抗器51を通して通電し、起動すると、抵抗器51が発熱して、その熱が伝導によって効率的に主固定接点50に伝わるとともに、輻射熱によっても接点表面が加熱される。これにより、接点表面の氷が速やかに融解されて、氷結による導通不良を防止できる。なお、発明者の試験によれば、−30℃で氷結した接点表面の氷を融解して導通に要するまでの時間は、0.5〜0.6秒であった。この様に、本実施例のスタータ1によれば、接点表面の氷結による作動不良を防止できるばかりでなく、スタータスイッチ44をONした後のエンジン始動遅れが殆どなく、ユーザーが違和感を感じることがないため、従来のスタータと比べて格段に操作性が向上する。
【0043】また、副可動接点53を弾性を有する保持部材56によって主可動接点20と機械的および電気的に接続しているため、その保持部材56の弾性を利用して副可動接点53が副固定接点52に当接した時の接点圧を付与できる。即ち、保持部材56を副可動接点53の接点圧スプリングとして利用できるため、専用の接点圧スプリングおよび接点圧スプリングの保持部材等が不要となり、部品点数の低減を図ることができる。
【0044】さらに、保持部材56は、主可動接点20に連結された一端と副可動接点53に連結された他端との間に湾曲部56aが形成されている。即ち、保持部材56の全長は、主可動接点20と副可動接点53とを結ぶ直線長さより大幅に長くなる様に設定されている。この様に保持部材56の全長を長くすることにより、ロッド43の移動とともに保持部材56が撓んだ時の保持部材56に加わる応力を低くできる。また、保持部材56を直線的な形状でなく、湾曲形状としたことにより、副可動接点53を主可動接点20の近傍に配置することができると言える。即ち、保持部材56の全長が長くても湾曲部56aを設けて全体をコンパクトに形成することにより、スタータ1の小型化を図ることができる。
【0045】また、副可動接点53は、副固定接点52に当接した後、プランジャ41の移動とともに副固定接点52に対する当接位置が変化する。即ち、最初に当接した状態から主可動接点20が主固定接点50に当接するまでの間に、副固定接点52の接点表面に対して副可動接点53の接点表面がずれるため、副可動接点53と副固定接点52との間に所謂ワイピング作用が生じて、当接後の導通性に優れるという効果が期待できる。これにより、スタータ1の信頼性を向上できる。
【0046】(第2実施例)図4は接点周りの正面図(図1のA視図に相当)である。本実施例では、抵抗器51として炭素系、黒鉛系、例えば炭化珪素セラミック系等の非金属系抵抗体を用いたものである。抵抗器51としてこれらの抵抗体を用いたことにより、第1実施例の金属系抵抗体を使用した抵抗器51と比較して、腐食等の恐れがなく、耐久性が高く、信頼性が向上する。
【0047】(第3実施例)図5は抵抗器の取付け状態を示す断面図、図6は図5のB視図である。抵抗器51および接点保持部材55は、共に中央部に丸孔が開けられており、図5に示すように、接点保持部材55とともにエンドカバー13の内側に一体的に形成された円筒部13aの外周に嵌め合わされて、電源端子49の頭部49aとエンドカバー13の内面との間に挟持されている。
【0048】スタータスイッチ44がONされてマグネットスイッチ6が作動し、副可動接点53が副固定接点52に当接すると、バッテリ45からの電流は、電源端子49→電源端子49の頭部49a→抵抗器51→接点保持部材55→副固定接点52→副可動接点53へと流れる。この様に抵抗器51および接点保持部材55を板状(矩形状)に形成してエンドカバー13の円筒部13aに嵌め合わせた構造としたことで、第1実施例の場合と比べて端子周りの小型化を図ることができる(図6参照)。
【0049】(第4実施例)図7は接点周りの正面図(図1のA視図に相当)である。本実施例では、第1実施例で説明した接点保持部材55をバイメタルで構成するとともに、図7(a)に示すように、副固定接点52と反対側に抵抗短絡用接点57が設けられている。なお、副固定接点52と抵抗短絡用接点57は別々に設けても良いが、両者を一体的に構成することにより部品点数の削減を図ることもできる。
【0050】接点保持部材55をバイメタルで構成したことにより、抵抗器51に必要時間以上電流が流れると、図7(b)に示すように、バイメタルである接点保持部材55が上方(電源端子49の頭部49a側)へ湾曲して、抵抗短絡用接点57が電源端子49の頭部下面に当接する。この結果、抵抗短絡用接点57が電源端子49と導通するため、バッテリ45から電源端子49に流れた電流は、抵抗短絡用接点57→接点保持部材55→副固定接点52→副可動接点53へ流れて、抵抗器51を短絡することができる。その結果、メイン電流が流れ、ピニオン規制力がピニオン4を確実に噛み合いを成し遂げる。この結果、抵抗器51に必要時間以上の間電流が流れても、抵抗器51が必要以上に発熱することがないため、耐久性の向上を図ることができる。
【0051】本実施例では、抵抗器51の過熱を抑えるために、接点保持部材55をバイメタルで構成し、その接点保持部材55に抵抗短絡用接点57を設けるだけで良いため、特に接点周りの構造が複雑化することもなく、装置の大型化を招くこともない。なお、バイメタルである接点保持部材55が湾曲して、抵抗短絡用接点57が電源端子49の頭部下面に当接しても、副可動接点53は副固定接点52と開離しないように、保持部材56が副可動接点53に接点圧を付与して撓んでいる範囲内で、抵抗短絡用接点57が電源端子49の頭部下面に当接できるように寸法や変形量を設定してある。
【0052】(第5実施例)図8は接点周りの断面図、図9および図10は図8の接点部分のみのC視図と部分断面図で、接点の作動状況を段階的に現した図である。なお、理解しやすくするために、C視図では主可動接点20、副可動接点53を想像線で現し、部分断面図では抵抗器51やロッド43、リード線19等は省略してある。本実施例では、第4実施例で説明した接点保持部材55をバイメタルで構成したものにおいて、抵抗器51の過熱を防止する他の方法を示している。
【0053】図8に示すように、エンドカバー13の内壁に副可動接点53がマグネットスイッチ6の作動によって副固定接点52側に移動する際に、副可動接点53の移動が所定量で制限されるように規制壁13bが設けられている。本実施例の作動を図9および図10に基づいて説明する。図9(a)はマグネットスイッチ6が静止状態の時の接点部分の状態を現していて、図のような位置関係にある。ここで、スタータスイッチ44がONされてマグネットスイッチ6が作動し、プランジャ41の移動に伴ってロッド43が上昇すると、先ず副可動接点53が副固定接点52に当接して導通する(図9(b)参照)。これにより、始動モータ2は抵抗器51により通電電流が制限されて起動する。
【0054】次に、ピニオンがリングギヤに噛み合うように前進すると、ロッド43は更に上昇し、主可動接点20は保持部材56を撓ませて主固定接点50に当接して導通する(図10(a)参照)。これにより、始動モータ2は抵抗器51による電流制限が解除されて定格電圧が印加されて回転する。この時、主固定接点50の表面に氷結等が存在し、主可動接点20との導通が不可能な場合には、抵抗器51に必要時間以上の電流が流れるが、バイメタルである接点保持部材55は、抵抗器51や接点保持部材55自身の発熱で上方へ湾曲する。すると、副可動接点53もこれに追従して上方へ移動しようとするが、保持部材56の端部56bがエンドカバー13の内部に設けた規制壁13bに当接するため、それ以上上昇できず、副固定接点52は副可動接点53から開離し、抵抗器51への通電は遮断される(図10(b)参照)。この結果、抵抗器51に必要時間以上の間電流が流れても、抵抗器51が必要以上に過熱することがないため耐久性の向上を図ることができる。
【0055】(第6実施例)図11は正特性サーミスタの抵抗特性図である。本実施例は、抵抗器51を正特性サーミスタ(PTC)で構成したもので、第1〜3実施例の抵抗器51に適用できる。これにより、抵抗器51に必要時間以上の間電流が流れて抵抗器51の温度が所定温度まで上昇すると、図11に示すようにPTCの抵抗値が増大して電流値を抑制することができる。その結果、第4実施例の場合と同様に抵抗器51の必要以上の発熱を抑えることができる。但し、本実施例では、第4実施例の場合と比較して抵抗短絡用接点57が不要であることから、部品点数を減らして構造の簡素化を図ることができる。
【0056】(変形例)第1実施例では、保持部材56を湾曲形状としたが、特に湾曲形状に限定する必要はなく、例えば略コの字形に屈曲させても良く、またはコイル状に巻回した形状でも良い。要は、保持部材56が撓んだ時の応力を小さくできる程度の長さが確保されて、副可動接点53を主可動接点20の近傍に配置できる形状であれば良い。
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【出願日】 平成8年(1996)4月17日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】石黒 健二
【公開番号】 特開平9−49479
【公開日】 平成9年(1997)2月18日
【出願番号】 特願平8−94974