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【発明の名称】 スタータ
【発明者】 【氏名】新美 正巳

【目的】 小型化を図るとともに、耐久性に優れたスタータ1を提供すること。
【構成】 スタータモータ2のアーマチュア9は、下層電機子導体18の外側から電機子コア15の端面に沿って径方向の内周側へ折り曲げられた上層電機子導体19の一方の端部19aが整流子片として構成されている。この整流子片19aに摺接するブラシ10は、抵抗率の異なる2種類のブラシ材を整流子片との摺接方向に積層した多層ブラシを使用している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】電機子コアを支持する回転軸、および前記電機子コアに複数の電機子導体を収納して、各電機子導体の両端部をそれぞれ所定の巻線ピッチで接続して成る電機子巻線を有する電機子と、前記電機子巻線に通電するためのブラシとを備え、前記電機子は、前記電機子導体の少なくとも一方の端部が前記電機子コアの端面に沿って径方向の内周側へ延設されて、整流子片として設けられており、前記ブラシは、抵抗率の異なる複数の異種ブラシ材を前記電機子の回転方向に積層した多層ブラシであることを特徴とするスタータ。
【請求項2】電機子コアを支持する回転軸、前記電機子コアのスロット内に収納された複数の電機子導体、およびこれら電機子導体の両端にそれぞれ電気的に接続されて前記電機子コアの端面に沿って径方向の内周側へ延びる一対の端部を有し、各電機子導体の両端部をそれぞれ所定の巻線ピッチで接続して成る電機子巻線を有する電機子と、前記電機子の外周側に設けられ、複数の界磁極を有するヨークと、前記電機子導体の端部上に摺動自在に設けられ、前記電機子導体に電流を供給するブラシとを備え、前記ブラシは、抵抗率の異なる複数の異種ブラシ材を前記電機子の回転方向に積層した多層ブラシであることを特徴とするスタータ。
【請求項3】請求項1または2記載のスタータにおいて、前記回転軸の両端で、かつ前記電機子コアの端面に近接して配置され、前記回転軸を回転自在に支持する一対の軸受を有していることを特徴とするスタータ。
【請求項4】請求項1ないし3の何れかに記載のスタータにおいて、前記ブラシは、前記電機子の回転方向側に高抵抗ブラシ材を、かつ前記電機子の反回転方向側に低抵抗ブラシ材を有していることを特徴とするスタータ。
【請求項5】請求項1ないし4の何れかに記載のスタータにおいて、前記ブラシは、前記電機子の回転方向側の辺が、前記電機子導体の端部の側辺と略平行に配置されていることを特徴とするスタータ。
【請求項6】請求項1ないし4の何れかに記載のスタータにおいて、前記ブラシは、前記電機子の回転方向側の辺が、前記電機子導体の端部の側辺と所定の角度をもって配置されていることを特徴とするスタータ。
【請求項7】請求項1ないし6の何れかに記載のスタータにおいて、エンジンのリングギヤに噛み合うピニオンと、軸上に前記ピニオンが嵌合する出力軸と、前記電機子の回転速度を減速して前記出力軸に伝達する減速装置とを有していることを特徴とするスタータ。
【請求項8】請求項7に記載のスタータにおいて、前記減速装置の減速比を6以上とすることを特徴とするスタータ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エンジンを始動させるためのスタータに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、自動車用のスタータは、エンジンの高性能化に伴う補機部品の増加によりエンジンルーム内の余裕スペースが減少していることから、一段と小型化が要求されている。そこで、小型化の要求に対応するために、減速機を用いてスタータの主要部であるモータを小型、高回転化した減速型スタータが主流となっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、更なる小型化を実現するために減速機の減速比を従来の4〜5に対して6〜10と大幅に上げた場合、モータ回転軸(アーマチュアシャフト)の撓みによる危険回転数と整流子の強度が問題となる。ところが、モータ回転軸の軸方向で電機子コアの一端側に整流子を配置した従来のスタータでは、モータ回転軸の軸長が長くなるため、モータ回転軸の危険回転数を大幅に高くすることが困難である。なお、モータ回転軸を太くすることで危険回転数を上げることはできるが、小型化の要求と相反した結果を生じてしまう。
【0004】また、整流子は、通常複数個の整流子片(例えば銅片)を円筒状あるいは円板状に並べてフェノール系の熱硬化性樹脂で成形固着したモールド形整流子が用いられている。従って、整流子の強度はフェノール樹脂の強度で略決まってしまうため、整流子の大幅な強度向上が難しいという問題がある。
【0005】一方、直流整流子モータを高回転化した場合、リアクタンス電圧が上がるために整流性能が著しく低下し、発生する火花によってブラシの耐久性を確保するのが困難となる。なお、整流性能を向上する手段として固定磁極に補極を設けることも考えられるが、スタータの様に小型の整流子モータでは補極を設けるだけのスペースがないため、補極を設けることによる整流性能の向上は望めない。そこで、整流性能の向上を図るためにブラシの性能向上が必要となり、その手段として、低抵抗層と高抵抗層の異種のブラシ材を整流子の回転方向に積層した多層ブラシが知られている(特開平2−86081号公報参照)。
【0006】しかし、この多層ブラシは、機械的強度が従来の単層ブラシより低いため、減速比を上げて高回転化を図った場合、回転部のアンバランスを原因とする振動が大きくなるため、強度的に耐えられないと言う問題が生じる。本発明は、上記事情に基づいて成されたもので、その目的は、耐久性に優れて、より小型化が可能なスタータを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するために以下の技術的手段を採用した。請求項1では、電機子コアの端面に沿って径方向の内周側へ延設された電機子導体の端部を整流子片として利用しているため、別途に整流子を設ける必要がない。従って、電機子の軸長(回転軸の長さ)を短くできるため、電機子軸の危険回転数を従来のスタータより高く設定することが可能となり、より高回転化に対応することができる。また、従来のように、整流子を形成する各整流子片を円筒状あるいは円板状に並べてモールド樹脂で固着する必要がないことから、高回転化しても整流子の強度不足を招く虞がない。
【0008】上記の様に電機子の軸長を短くできることで、高回転時に生じる電機子の振動を抑えることができる。これにより、単層ブラシと比べて機械的強度の低い多層ブラシを使用しても十分高回転化に対応できる。従って、高回転化した時のリアクタンス電圧の上昇による整流性能の低下を多層ブラシの採用によって補うことが可能となる。
【0009】請求項2では、電機子コアの端面に沿って径方向の内周側へ延設された電機子導体の端部上にブラシを設けているため、別途に整流子を設ける必要がなく、電機子の軸長(回転軸の長さ)を短くできる。そのため、電機子軸の危険回転数を従来のスタータより高く設定することが可能となり、より高回転化に対応することができる。また、従来のように、整流子を形成する各整流子片を円筒状あるいは円板状に並べてモールド樹脂で固着する必要がないことから、高回転化しても整流子の強度不足を招く虞がない。さらに、電機子軸の軸長を短くできることで、高回転時に生じる電機子の振動を抑えることができる。これにより、単層ブラシと比べて機械的強度の低い多層ブラシを使用しても十分高回転化に対応できる。従って、高回転化した時のリアクタンス電圧の上昇による整流性能の低下を多層ブラシの採用によって補うことが可能となる。
【0010】請求項3では、電機子の軸長を短縮できることから、電機子コアの端面に近接して配置した一対の軸受の間隔を短くできる。これにより、特に軸径を太くしなくても、回転軸の危険回転数を上げることができる。
【0011】請求項4では、電機子の回転方向側に高抵抗ブラシ材を配し、電機子の反回転方向側に低抵抗ブラシ材を配した多層ブラシを用いている。これにより、火花の抑制効果が向上して、整流性能が高めることができる。
【0012】請求項5および6では、スタータモータの極数に応じて異なる整流子片(電機子コアの端面に沿って径方向の内周側へ延びる端部)の形状に対応したブラシ形状を採用することにより、整流性能の向上を図ることができる。
【0013】請求項7では、電機子の回転速度を減速する減速装置を用いることにより、電機子を小型化して高回転化を図ることができる。即ち、本発明の様に、電機子軸を短くすることで電機子軸の危険回転数を従来のスタータより高く設定できる場合、減速装置を採用することで、より高回転化に対応することができる。
【0014】請求項8では、減速装置の減速比を6以上(従来は6より小さい)の大きな値に設定することで、高回転化による電機子の小型化を実現できる。即ち、請求項1または2の手段に記載した様に、電機子軸を短縮化して耐久性の向上を図り、且つ多層ブラシを使用することができるため、減速装置の減速比を6以上(従来は6より小さい)の大きな値に設定することが可能となる。
【0015】
【発明の実施の形態】次に、本発明のスタータの一実施例を図面に基づいて説明する。
(第1実施例)図1はスタータ1の断面図である。本実施例のスタータ1は、通電を受けて回転力を発生するスタータモータ2、このスタータモータ2の回転力を受けて回転する出力軸3、この出力軸3の外周に嵌合するピニオン4、スタータモータ2の回転力を出力軸3へ伝達する回転力伝達手段(後述する)、始動時にピニオン4の回転を規制する回転規制部材5、スタータモータ2の後方(図1の右側)に配置されたマグネットスイッチ6等より構成されている。
【0016】(スタータモータ2の説明)スタータモータ2は、ヨーク7、固定磁極8、アーマチュア9(本発明の電機子)、ブラシ10等より構成されている。ヨーク7は、例えばプレス加工(深絞り)により成形されて、後端側(図1の右端側)のみ開放された円筒形状を成し、ヨーク7の後端側に配されるホルダ11とともにハウジング12とエンドカバー13との間に挟持されている。ヨーク7の前端側は、径方向の内周側へ折り曲げられて、スタータモータ2と回転力伝達手段とを区画する隔壁板7aとして設けられている。固定磁極8は、例えば複数(例えば6極)の永久磁石から成り、ヨーク7の内周面に固定されて磁界を形成する。なお、固定磁極8は、永久磁石の代わりに通電によって磁力を発生するフィールドコイルを用いても良い。
【0017】アーマチュア9は、回転軸を成すシャフト14、このシャフト14の外周に設けられた電機子コア15、この電機子コア15に巻装された電機子コイル(下述する)等より構成されて、シャフト14の両端部がそれぞれ軸受16、17を介して隔壁板7aおよびホルダ11に回転自在に支持されている。電機子コア15には、電機子コイルを収納するスロット(図示しない)が軸方向に沿って周方向に複数形成されている。電機子コイルは、スロットの内周側に収納される複数の下層電機子導体18(例えば銅製)と、スロットの外周側に収納される複数の上層電機子導体19(例えば銅製)とから成る。
【0018】下層電機子導体18は、スロットからはみ出た両端部18aが、それぞれ電機子コア15の端面に沿って径方向の内周側へ折り曲げられている。但し、下層電機子導体18の両端部18aと電機子コア15の端面との間には、例えば樹脂製のリング20が介在されることで両者の絶縁が確保されている。上層電機子導体19は、スロットからはみ出た両端部19aが、それぞれ下層電機子導体18の外側から電機子コア15の端面に沿って径方向の内周側へ折り曲げられている。但し、下層電機子導体18の端部18aと上層電機子導体19の端部19aとの間には、例えば樹脂製のスペーサ21が介在されることで両者の絶縁が確保されている。
【0019】この下層電機子導体18と上層電機子導体19は、それぞれ径方向の内周側へ折り曲げられた両端部18a、19aの先端が、所定の巻線ピッチで溶接等により電気的に接続されることで電機子コイル(本発明の電機子巻線)を形成している。また、この電機子コイルは、電機子コア15の一方(図1の右側)の端面に沿って折り曲げられた上層電機子導体19の端部19aが、それぞれ整流子片として構成されている。なお、その整流子片を成す上層電機子導体19の端部19aは、シャフト14に嵌合されたカラー22によって軸方向に固定されている。
【0020】ブラシ10は、少なくとも一組の正極ブラシ10Aと負極ブラシ10Bとから成り、それぞれホルダ11に保持されて、軸方向の後端側からスプリング23により整流子片(以下19aと記す)に押圧されている。但し、正極ブラシ10Aは、金属製(例えばアルミニウム製)のホルダ11に対して樹脂製の絶縁筒24を介して保持されている。このブラシ10は、図2に示すように、抵抗率の異なる2種類のブラシ材10a、10bを整流子片19aとの摺接方向(アーマチャ9の回転方向)に積層した多層ブラシを使用している。
【0021】具体的には、抵抗率600〜2000μΩ・cmの高抵抗ブラシ材10aと、抵抗率10〜20μΩ・cmの低抵抗ブラシ材10bとから成り、アーマチュア9の回転方向に対して前方側に低抵抗ブラシ材10bが配されて、後方側に高抵抗ブラシ材10aが配されている。ブラシ10を付勢するスプリング23は、ホルダ11の後端側に組付けられるエンドカバー13に保持されている。なおエンドカバー13には、バッテリケーブル(図示しない)が接続される端子ボルト25が固定されている。
【0022】(出力軸3の説明)出力軸3は、アーマチュア9のシャフト14と同軸上に配されて、その先端部が軸受26を介してハウジング12に回転自在に支持され、後端部が軸受27を介してハウジング12内部に収容されたセンタケース28に回転自在に支持されている。この出力軸3の後端部は、径方向の外周へ突設されて、遊星歯車減速機構(後述する)のプラネットキャリア29として一体に設けられている。また、ピニオン4が嵌合する出力軸3の外周にはヘリカルスプライン3aが形成されている。
【0023】(ピニオン4の説明)ピニオン4は、その内周面にピニオンヘリカルスプライン(図示しない)が形成されて、出力軸3の外周に形成されたヘリカルスプライン3aと嵌合しており、出力軸3上をヘリカルスプライン3aに沿って前進することでエンジンのリングギヤ(図示しない)と噛み合うことができる。このピニオン4は、ピニオン4の前端側に配されたスプリング30により常に出力軸3の後方側へ付勢されている。ピニオン4の後端には、ピニオン4より外径寸法が大径の回転規制プレート31が一体に設けられている。この回転規制プレート31の外周面には、軸方向に沿った係合溝31aがプレート周方向で等間隔に多数(ピニオン4の外歯枚数より多い)形成されている。
【0024】(回転力伝達手段の説明)回転力伝達手段は、遊星歯車減速機構(本発明の減速装置)と一方向クラッチとから構成されて、ヨーク7の隔壁板7aより前方側でセンタケース28に収容されている。遊星歯車減速機構は、アーマチュア9の回転速度を減速比6以上に減速してスタータモータ2の出力トルクを増大する減速装置であり、シャフト14の先端外周に形成されたサンギヤ32、このサンギヤ32に噛み合う3個の遊星ギヤ33、各遊星ギヤ33と噛み合うインターナルギヤ34、および前述のプラネットキャリア29より構成されている。
【0025】サンギヤ32は、シャフト14と一体に回転することで、シャフト14の回転を3個の遊星ギヤ33に伝達する。3個の遊星ギヤ33は、それぞれプラネットキャリア29に固定されたピン35に軸受36を介して回転自在に支持されており、サンギヤ32およびインターナルギヤ34と噛み合いながらサンギヤ32の外周を公転することで、その公転力がプラネットキャリア29に伝達されて出力軸3に回転力を伝達する。インターナルギヤ34は、円筒形状に設けられて、その外周面がセンタケース28の円筒壁内周面に摺接して回転可能に組み込まれている。
【0026】一方向クラッチは、遊星歯車減速機構のインターナルギヤ34を一方向(エンジンの回転を受けて回転する方向)のみに回転可能に支持するもので、クラッチアウタ37、クラッチインナ38、ローラ39、およびスプリング(図示しない)等より構成される。クラッチアウタ37は、インターナルギヤ34の前端側でインターナルギヤ34と一体に設けられている。このクラッチアウタ37の内周面には、周方向に複数の楔状カム室(図示しない)が形成されている。
【0027】クラッチインナ38は、センタケース28と一体に設けられて、クラッチアウタ37の内周側でクラッチアウタ37との間に所定の間隔を保って軸方向に延びる円筒形状を成す。ローラ39は、カム室に収容されて、スタータモータ2の回転力を出力軸3へ伝達する時にクラッチアウタ37とクラッチインナ38とをロックして、クラッチアウタ37の回転を規制する。スプリングは、ローラ39とともにカム室に収容されて、ローラ39をカム室の狭い方へ押圧している。
【0028】(回転規制部材5の説明)回転規制部材5は、棒状の金属材を約3/2巻回して設けられたバネ部材であり、両端部が径方向の対向位置で同一方向へ直角に曲げ起こされている。その曲げ起こされた一端部5aは、スタータ1の作動初期に回転規制プレート31の外周面に形成された係合溝31aに係合することでピニオン4の回転を規制する規制棒であり、他端部5bには、ワイヤ等の紐状部材40の一端が係合されて、その紐状部材40を介してマグネットスイッチ6の作動が伝えられる。
【0029】この回転規制部材5は、センタケース28に対して軸方向(図1の左右方向)への移動が規制された状態で上下方向(図1の上下方向)に移動可能に保持されている。また、回転規制部材5は、図示しない復帰スプリングによって常時上方へ付勢されており、紐状部材40を介してマグネットスイッチ6の作動が他端部5bに伝達されると、回転規制部材5全体が復帰スプリングのバネ力に抗して下方へ移動し、マグネットスイッチ6がオフされると、復帰スプリングのバネ力により上方へ付勢されて初期位置(図1に示す位置)へ復帰する。
【0030】(マグネットスイッチ6の説明)マグネットスイッチ6は、ホルダ11に圧入された台座41に保持されてエンドカバー13内に配置され、シャフト14に対して動作方向(図1では上下方向)が交差するように固定されている。このマグネットスイッチ6は、図示しないスタータスイッチがON操作されて内蔵するコイル(図示しない)が通電されると、コイルに発生する磁力によってスイッチ内部に収容されたプランジャ42を吸引する。その結果、スイッチ内部に設けられたモータ回路の接点(図示しない)を閉じてアーマチュア9への通電が行われるとともに、前述の紐状部材40を介して回転規制部材5を駆動する。紐状部材40は、図1に示すように、台座41に保持されたローラ43およびセンタケース28に保持されたローラ44に案内されてプランジャ42の作動を回転規制部材5に伝達している。
【0031】次に、本実施例の作動を説明する。スタータスイッチがON操作されてマグネットスイッチ6が作動すると、プランジャ42の移動に伴って紐状部材40がマグネットスイッチ6側へ引っ張られることにより、回転規制部材5がセンタケース28に沿って下方へ移動する。その結果、回転規制部材5の規制棒(以下5aと記す)が回転規制プレート31の係合溝31aに係合してピニオン4の回転を規制する。
【0032】一方、マグネットスイッチ6の作動によりスタータモータ2の接点が閉じてアーマチュア9が通電されることにより、アーマチュア9に回転力が発生する。この結果、シャフト14とともにサンギヤ32が回転して3個の遊星ギヤ33を回転駆動する。この時、各遊星ギヤ33と噛み合うインターナルギヤ34は、各遊星ギヤ33の回転力を受けて一方向に回転しようとする。
【0033】このインターナルギヤ34の動作により、クラッチアウタ37のカム室に収容されたローラ39がスプリングに押圧されてカム室の狭い方へ移動し、クラッチインナ38の外周面に係合する。この結果、クラッチアウタ37は、センタケース28に一体に形成されたクラッチインナ38(回転不能)にローラ39を介してロックされることにより回転が規制される。この結果、クラッチアウタ37と一体を成すインターナルギヤ34の回転が規制されるため、3個の遊星ギヤ33がピン35を中心として自転しながらサンギヤ32の外周を公転し、その公転力がプラネットキャリア29に伝達されて出力軸3を回転駆動する。
【0034】この出力軸3の回転によってピニオン4も回転しようとするが、ピニオン4が規制棒5aによって回転規制されていることから、出力軸3の回転力はピニオン4に対して軸方向に押し出す推力として作用する。この結果、ピニオン4が出力軸3に対してヘリカルスプライン3aに沿って前進してリングギヤと噛み合うことができる。ピニオン4が完全にリングギヤと噛み合うと、規制棒5aの先端が回転規制プレート31の係合溝31aから外れて回転規制プレート31の後端側に落ち込むことにより、ピニオン4の回転規制が解除される。これにより、出力軸3の回転力がピニオン4と噛み合うリングギヤに伝達されてリングギヤを回転することによりエンジンを始動することができる。
【0035】なお、ピニオン4が前進してリングギヤと噛み合った状態では、ピニオン4を付勢するスプリング30の付勢力が大きくなる。また、エンジン始動後、ピニオン4がリングギヤによって回されると、エンジンの回転力がヘリカルスプライン3aの作用によってピニオン4を後退させる方向へ作用する。これらの力により、ピニオン4は出力軸3に対して後退しようとするが、回転規制プレート31の後端側に落ち込んだ規制棒5aの先端が回転規制プレート31の後端面を支持することによりピニオン4の後退が阻止される。
【0036】その後、スタータスイッチがOFFされてマグネットスイッチ6の作動が停止すると、紐状部材40を介して回転規制部材5を引っ張る力が消滅することから、回転規制部材5は復帰スプリングのバネ力によって初期位置へ復帰する。この結果、ピニオン4の後退を阻止していた規制棒5aが回転規制プレート31から外れるため、スプリング30の付勢力およびリングギヤからの後退力を受けるピニオン4が初期位置(図1に示す状態)に復帰する。
【0037】(実施例の効果)本実施例のスタータ1は、下層電機子導体18および上層電機子導体19の両端部18a、19aを電機子コア15の端面に沿って径方向の内周側へ折り曲げて、その一方の端面(上層電機子導体の端部)を整流子片19aとして構成している。このため、従来の電機子コアの軸方向に整流子を配置したスタータと比較して、アーマチュア9の全長を格段に短くできる。これにより、シャフト14の両端部を支持する軸受16、17の間隔を短くできるため、特にシャフト径を太くしなくても、シャフト14の危険回転数を上げることが可能である。
【0038】また、上層電機子導体19の端部を整流子片19aとして利用しているため、従来の整流子の様にモールド樹脂の強度に左右されず、遠心強度を十分高くとることができる。これにより、従来の減速型スタータでは4〜5程度の減速比であったものを、本実施例においては減速比6〜10へと大幅に上げることができる。そして、この様な高減速比においても、シャフト14の軸受間隔を小さくできることに加えて、両軸受16、17間での芯ずれを少なくできることにより、シャフト14の振動を低く抑えることができる。この結果、単層ブラシより機械的強度は低いが、整流性能に優れた多層ブラシ10を安定して使用することが可能となるため、スタータ1の主要部であるスタータモータ2を従来より格段に小型化できるとともに、耐久性にも優れた構造とすることができる。
【0039】さらに、アーマチュア9の全長が短くなることから、スタータモータ2の後方にマグネットスイッチ6を置いて、その動作方向(プランジャ42の作動方向)をアーマチュア9のシャフト14と略直交する様に配置したことにより、従来のスタータより全長を短くできる。特に、マグネットスイッチ6をスタータモータ2の外周側に併設した従来のスタータと比較すると、径方向の寸法を大幅に減少することができるため、エンジンへの搭載性が大幅に向上する。
【0040】(第2実施例)図3は整流子面とブラシを軸方向から見た図である。本実施例は、スタータモータ2の極数を2極とした場合の一例で、第1実施例と多層ブラシ10を形成する高抵抗ブラシ材10aおよび低抵抗ブラシ材10bの形状が異なる。即ち、スタータモータ2の極数に応じて整流子片19aの形状が異なるため、その整流子片19aとの摺接方向に積層される高抵抗ブラシ材10aと低抵抗ブラシ材10bの形状も、図3に示すように第1実施例とは異なった形状となる。
【0041】(変形例)第1実施例および第2実施例ともに高抵抗ブラシ材10aと低抵抗ブラシ材10bの2層構造のブラシを例示したが、2層に限定するものではなく、抵抗率の異なるブラシ材を3層以上に積層しても良い。また、電機子コア15の一方の端面に沿って折り曲げられた上層電機子導体19の端部を整流子片19aとして構成したが、アーマチュア9の他方側にもブラシ10を配置して、電機子コア15の他方の端面に沿って折り曲げられた上層電機子導体19の端部を整流子片19aとすることも可能である。
【0042】なお、上述した実施例においては、下層電機子導体18と両端部18a、並びに上層電機子導体19と両端部19aは、一体に形成しているが、それぞれ別部材で電気的に接続しても良い。また、上層電機子導体19は、電機子コア15の一方の端面に沿って折り曲げられた一方の端部を整流子片19aとして構成すれば、電機子コア15の他方の端面側の他方の端部を電機子コア15の端面に沿って形成しなくても良い。
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【出願日】 平成8年(1996)4月10日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】石黒 健二
【公開番号】 特開平9−49478
【公開日】 平成9年(1997)2月18日
【出願番号】 特願平8−87767