トップ :: F 機械工学 照明 加熱 武器 爆破 :: F02 燃焼機関;風力原動機,ばね原動機,重力原動機;他類に属さない機械動力または反動推進力を発生するもの




【発明の名称】 スタータ
【発明者】 【氏名】加藤 雅浩

【氏名】荒木 剛志

【氏名】新美 正巳

【氏名】志賀 孜

【目的】
【構成】
【特許請求の範囲】
【請求項1】スタータモータに駆動されるとともに、外周にヘリカルスプラインを有する出力軸と、エンジンのリングギヤと噛み合うピニオンギヤを有し、前記出力軸のヘリカルスプラインに係合するとともに、前記出力軸のヘリカルスプラインに沿って軸方向に進退可能に設けられた移動筒部材と、この移動筒部材に当接して前記移動筒部材の回転を規制することにより、前記スタータモータの回転力と前記ヘリカルスプラインの作用によって前記移動筒部材を前進させる規制手段と、この規制手段を前記移動筒部材への当接位置に移動させる駆動手段と、前記ピニオンギヤが前記リングギヤに噛み合って所定量前進した状態で前記移動筒部材の後退を規制する後退規制手段とを備え、前記後退規制手段には、前記出力軸のヘリカルスプライン外径にそれぞれ接する平行な第1、第2の接線との間で、かつ前記出力軸を中心として対向する位置でそれぞれ前記移動筒部材に当接する第1の当接部が設けられていることを特徴とするスタータ。
【請求項2】請求項1記載のスタータにおいて、前記後退規制手段の第1の当接部は、前記移動筒部材の軸心に対して径方向に略対称位置となる2カ所で前記移動筒部材に当接することを特徴とするスタータ。
【請求項3】スタータモータに駆動されるとともに、外周にヘリカルスプラインを有する出力軸と、エンジンのリングギヤと噛み合うピニオンギヤを有し、前記出力軸のヘリカルスプラインに係合するとともに、前記出力軸のヘリカルスプラインに沿って軸方向に進退可能に設けられた移動筒部材と、この移動筒部材に当接して前記移動筒部材の回転を規制することにより、前記スタータモータの回転力と前記ヘリカルスプラインの作用によって前記移動筒部材を前進させる規制手段と、この規制手段を前記移動筒部材への当接位置に移動させる駆動手段と、前記ピニオンギヤが前記リングギヤに噛み合って所定量前進した状態で前記移動筒部材の後退を規制する後退規制手段とを備え、前記後退規制手段には、前記移動筒部材に当接する3か所以上の第1の当接部を有し、前記第1の当接部を結んで形成される多角形内に前記移動筒部材の軸心が配置されることを特徴とするスタータ。
【請求項4】請求項1ないし3のいずれかに記載のスタータにおいて、前記移動筒部材と前記後退規制手段との間には、前記移動筒部材に対して相対回転自在に組付けられた回転部材を有することを特徴とするスタータ。
【請求項5】請求項1ないし4のいずれかに記載のスタータにおいて、前記移動筒部材の後退規制時に、前記後退規制手段の姿勢を保持する姿勢保持手段を備え、前記後退規制手段と前記姿勢保持手段とで、前記移動筒部材の後退を規制することを特徴とするスタータ。
【請求項6】請求項5記載のスタータにおいて、前記姿勢保持手段は、前記後退規制手段よりスタータモータ側に設けられた固定部材と前記後退規制部材との間の間隙に配置されることを特徴とするスタータ。
【請求項7】請求項4ないし6のいずれかに記載のスタータにおいて、前記後退規制手段は、一端部には、前記姿勢保持手段が当接する第2の当接部を有し、他端部には、スタータモータ側に設けられた固定部材に揺動可能に支持された揺動支持部を有し、前記一端部と前記他端部との間に前記第1の当接部を配置したことを特徴とするスタータ。
【請求項8】請求項5または6に記載のスタータにおいて、前記移動筒部材に組付けられた回転部材は、前記後退規制手段を軸方向に保持する保持部を有し、前記移動筒部材の移動に伴って、前記後退規制手段は前記固定部材に設けられた支持部を支点として前記保持部内で略径方向に自在に移動することを特徴とするスタータ。
【請求項9】請求項5ないし8のいずれかに記載のスタータにおいて、前記規制手段は、前記姿勢保持手段を兼ねることを特徴とするスタータ。
【請求項10】請求項8記載のスタータにおいて、前記回転部材の保持部は、前記回転部材から反移動筒部材側にそれぞれ突出した一対の第1の突起部と、この一対の第1の突起部から前記移動筒部材の軸心に向かって径方向内側にそれぞれ突出する一対の第2の突起部とからなり、前記後退規制手段は、前記支持部からそれぞれ延びる一対の側片部を有し、この側片部には反移動筒部材側にそれぞれ屈曲した一対の屈曲部を備えることを特徴とするスタータ。
【請求項11】請求項1記載のスタータにおいて、前記後退規制手段は、前記移動筒部材に対して出力軸の回りに回転自在に組付けられるとともに、一端が前記移動筒部材の軸心に対して略対称位置となる両側に出力軸に交差する軸の回りに回動自在に係合して、前記移動筒部材の移動に伴い軸方向に引き起こされ、他端が前記移動筒部材よりスタータモータ側に設けられた固定部材に当接して、前記移動筒部材と前記固定部材との間に介在される腕部材と、引き起こされた腕部材の他端と係合する係合位置に移動して前記腕部材の姿勢を保持する腕姿勢保持部材とからなることを特徴とするスタータ。
【請求項12】請求項11記載のスタータにおいて、前記腕部材は、前記移動筒部材の前進に伴って軸方向へ引き起こされることにより、前記固定部材上を摺動しながら前記出力軸の軸方向側へ入り込み、前記腕部材には、前記腕姿勢保持部材が当接する第3の当接部を有し、前記腕姿勢保持部材が前記第3の当接部に当接することで前記腕部材が前記出力軸の径方向外側へ押し出されるのを規制することを特徴とするスタータ。
【請求項13】請求項12記載のスタータにおいて、前記腕姿勢保持部材は、前記腕部材が前記出力軸の径方向外側へ押し出される方向と交差する方向に作動して前記腕部材の戻りを規制することを特徴とするスタータ。
【請求項14】請求項1または3に記載のスタータにおいて、前記駆動手段は、前記スタータモータへの通電を制御する電磁スイッチを動力源とすることを特徴とするスタータ。
【請求項15】請求項1または3または14に記載のスタータにおいて、前記駆動手段は、連結部材を介して前記規制手段を駆動することを特徴とするスタータ。
【請求項16】請求項14記載のスタータにおいて、前記電磁スイッチは、前記スタータモータの後方に配置されていることを特徴とするスタータ。
【請求項17】スタータモータに駆動されるとともに、外周にヘリカルスプラインを有する出力軸と、エンジンのリングギヤと噛み合うピニオンギヤを有し、前記出力軸のヘリカルスプラインに係合するとともに、前記出力軸のヘリカルスプラインに沿って軸方向に進退可能に設けられた移動筒部材と、この移動筒部材に当接して前記移動筒部材の回転を規制することにより、前記スタータモータの回転力と前記ヘリカルスプラインの作用によって前記移動筒部材を前進させる規制手段と、この規制手段を前記移動筒部材への当接位置に移動させる駆動手段と、前記ピニオンギヤが前記リングギヤに噛み合って所定量前進した状態において、前記出力軸のヘリカルスプライン外径にそれぞれ接する平行な第1、第2の接線との間で、かつ前記出力軸を中心として対向する位置で前記移動筒部材の後退を規制する第1、第2の規制部を有する後退規制手段と、を備えることを特徴とするスタータ。
【請求項18】スタータモータに駆動されるとともに、外周にヘリカルスプラインを有する出力軸と、エンジンのリングギヤと噛み合うピニオンギヤを有し、前記出力軸のヘリカルスプラインに係合するとともに、前記出力軸のヘリカルスプラインに沿って軸方向に進退可能に設けられた移動筒部材と、この移動筒部材に当接して前記移動筒部材の回転を規制することにより、前記スタータモータの回転力と前記ヘリカルスプラインの作用によって前記移動筒部材を前進させる規制手段と、この規制手段を前記移動筒部材への当接位置に移動させる駆動手段と、前記ピニオンギヤが前記リングギヤに噛み合って所定量前進した状態において、前記移動筒部材に当接する3カ所以上の複数の規制部を有し、前記複数の規制部を結んで形成される多角形内に前記移動筒部材の軸心が配置される後退規制手段と、を備えることを特徴とするスタータ。
【請求項19】スタータモータに駆動されるとともに、外周にヘリカルスプラインを有する出力軸と、エンジンのリングギヤと噛み合うピニオンギヤを有し、前記出力軸のヘリカルスプラインに係合するとともに、前記出力軸のヘリカルスプラインに沿って軸方向に進退可能に設けられた移動筒部材と、前記ピニオンギヤが前記リングギヤに噛み合って所定量前進した状態において、前記出力軸のヘリカルスプライン外径にそれぞれ接する平行な第1、第2の接線との間で、かつ前記出力軸を中心として対向する位置で前記移動筒部材の後退を規制する第1、第2の規制部を有する後退規制手段と、前記移動筒部材の後退規制時に、前記後退規制手段の姿勢を保持する姿勢保持手段とを備え、前記後退規制手段と前記姿勢保持手段とで前記移動筒部材の後退を規制することを特徴とするスタータ。
【請求項20】スタータモータに駆動されるとともに、外周にヘリカルスプラインを有する出力軸と、エンジンのリングギヤと噛み合うピニオンギヤを有し、前記出力軸のヘリカルスプラインに係合するとともに、前記出力軸のヘリカルスプラインに沿って軸方向に進退可能に設けられた移動筒部材と、前記ピニオンギヤが前記リングギヤに噛み合って所定量前進した状態において、前記移動筒部材に当接する3ヵ所以上の複数の規制部を有し、前記複数の規制部を結んで形成される多角形内に前記移動筒部材の軸心が配置される後退規制手段と、前記移動筒部材の後退規制時に、前記後退規制手段の姿勢を保持する姿勢保持手段とを備え、前記後退規制手段と前記姿勢保持手段とで前記移動筒部材の後退を規制することを特徴とするスタータ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エンジンを始動させるスタータに関する。
【0002】
【従来の技術】従来におけるスタータのピニオン戻り防止構造は、電磁スイッチのプランジャ吸引力によりレバーを作動させてピニオンをリングギヤ側へ押しつけることにより、リングギヤからの離脱を防止している。このものは、ピニオンの静止位置からリングギヤとの噛合位置までのストロークとプランジャのストロークとの関係を、レバーの力点、作用点の移動距離の比(レバー比)を調節して決定する必要があった。このことは、レバー比を大きく設定するとプランジャのストロークを小さくできる代わりに大きなプランジャ吸引力が必要となり、レバー比を小さく設定するとプランジャ吸引力を小さくできる代わりに大きなプランジャストロークが必要となる。このため、電磁スイッチの小型化の障害となっていた。
【0003】これに対して、実開昭57−36763号公報および特開昭50−18915号公報では、ピニオンを含むクラッチを回転規制することにより、出力軸のヘリカルスプラインとスタータモータの回転力の作用でピニオンをリングギヤ側に前進させて、ピニオンがリングギヤと噛み合った後、ピニオンと一体に回転するクラッチの後端側に、ラジアル方向からシャフトを押し出してクラッチの後退を規制することによりピニオンのリングギヤからの離脱を防止する構造が開示されている。この構造によれば、ピニオン及びクラッチの移動方向と、後退規制するシャフトの作動方向が直交しているので、シャフトを駆動する電磁スイッチが、ピニオンの戻り力に打ち勝つだけの吸引力を必要としなくてすみ、電磁スイッチの小型化が可能となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記の電磁スイッチの吸引力を利用してシャフトを駆動する構造では、ピニオンがリングギヤと噛み合った状態でクラッチの後退を規制する際に、そのクラッチを周方向の一点のみで支持することになるため、ピニオンが出力軸に対して傾いた状態でリングギヤとの噛み合いが行われる。このため、偏磨耗や異音が発生する等の問題が生じる。また、ピニオンの回転力が直接シャフトに伝わるため、シャフトが連れ回りにより曲げられたり磨耗したりする。
【0005】本発明は、上記事情に基づいて成されたもので、その目的は、出力軸に対する移動筒部材の後退規制時にその傾きを防止することで偏磨耗や異音等の発生を防止したスタータを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解決するために、請求項1〜20に示した構成を採用した。請求項1では、後退規制手段の第1の当接部は、出力軸のヘリカルスプライン外径にそれぞれ接する平行な第1、第2の接線との間で、かつ出力軸を中心として対向する位置に配置され、この第1の当接部が移動筒部材にそれぞれ当接しているので、従来の様に、1カ所で支持するのに比べて移動筒部材を傾斜させようとするそれぞれの第1の当接部に働くモーメントが反対向きに働くことになり、分力を相殺することができるとともに、特に、第1の当接部が、出力軸のヘリカルスプライン外径にそれぞれ接する平行な第1、第2の接線との間に配置されているので、第1の当接部が第1、第2の接線との間より外れているものに対して、第1の当接部に働くモーメントを大幅に小さくできる。これにより、出力軸に対して移動筒部材が傾斜するのを防止できるため、移動筒部材の傾斜に起因する後退規制手段の変形、移動筒部材と後退規制手段の第1の当接部との偏磨耗や異音等を抑止できる。
【0007】請求項2では、移動筒部材の第1の当接部は、移動筒部材の軸心に対して径方向に略対称位置で2カ所で移動筒部材に当接しているため、請求項1と同様に、出力軸に対して移動筒部材が傾斜するのを確実に防止できる。
【0008】請求項3では、移動筒部材の第1の当接部は、移動筒部材の軸心を中心として3カ所以上で移動筒部材に当接しているため、請求項1と同様に、出力軸に対して移動筒部材が傾斜するのを確実に防止できる。この時、3カ所以上の第1の当接部を結んで形成される多角形内に移動筒部材の軸心を配置できるので、後退規制手段の配置の自由度が向上し、構成部品の配置設計がしやすくなる。
【0009】請求項4では、回転部材が、移動筒部材と後退規制手段との間に、移動筒部材に対して相対回転自在に設けられているので、ピニオンギヤが回転してもピニオンギヤに対して回転部材が相対回転することによってピニオンギヤの回転力が第1の当接部に伝わるのを防止できる。これにより、ピニオンギヤの回転に伴って第1の当接部が連れ回りするのを防止できる。
【0010】請求項5では、移動筒部材の前進状態を維持し、後退を規制している後退規制手段自身の動作姿勢を保持する姿勢保持手段を備えているので、スタータに加わる振動等で、後退規制手段が移動筒部材の後退規制を解除されるようなこともなく、後退規制手段は安定して移動筒部材の前進状態を保持できる。
【0011】請求項6では、姿勢保持手段は、固定部材と後退規制部材との間の間隙に配置されているので、移動筒部材が後退しようとしても、姿勢保持手段がつっかえ棒の役目を果たし、移動筒部材が後退することを防止できる。
【0012】請求項7では、固定部材の揺動支持部から移動筒部材との第1の当接部までの距離より、揺動支持部から姿勢保持手段が当接する第2の当接部までの距離が長く設定できる。このことは、てこの原理で、姿勢保持手段が後退規制手段の作動姿勢を保持するための力を増幅して、後退規制手段が移動筒部材の後退を規制する力に変換できることになり、移動筒部材の後退を直接規制する場合より姿勢保持手段を強度の低い部材で形成できるので、構造が簡単で、加工しやすい材料を使用して製造コストを低減できる。さらに、後退規制手段は、移動筒部材の後退力が加わる作用点に対して、部材の両端で支持されているので、移動筒部材が軸方向にばたついて(エンジン始動時に軸方向に前後移動する)後退規制手段に脈動的な後退力が加わると部材自体が撓んでこれを緩衝できる。
【0013】請求項8では、後退規制手段が移動筒部材の移動に伴って、固定部材の支持部を支点として、移動筒部材に組み付けられた回転部材の保持部材内で軸方向に保持されながら略径方向に移動できるので、移動筒部材を後退規制する位置に移動するためにわざわざ別部材を用いて移動筒部材とともに移動させる必要もなく、簡単な構造で後退規制手段を移動筒部材の後退規制位置に移動させることができる。
【0014】請求項9では、移動筒部材の回転規制と後退規制手段の作動姿勢保持とを同一の部材で構成できるため、構成部品の追加および複雑化することなく構成できる。
【0015】請求項10では、回転部材の保持部は、回転部材から反移動筒部材側にそれぞれ突出した一対の第1の突起部と、この一対の第1の突起部から移動筒部材の軸心に向かって径方向内側にそれぞれ突出する一対の第2の突起部とからなるため、回転部材における第1の突起部と第2の突起部とで形成される空間内で、後退規制手段が軸方向に保持されたまま略径方向に移動でき、後退規制手段を移動筒部材の後退規制位置に容易に移動させることができる。さらに、後退規制手段を前記空間内に挿入する(滑り込ませる)だけで簡単に組付けができる。また、支持部からそれぞれ延びる一対の側片部には、反移動筒部材側にそれぞれ屈曲した一対の屈曲部を備え、その屈曲部を移動筒部材への第一の当接部としているので、後退規制手段の固定部材に対する傾きが常に一定でなくても、移動筒部材へはその一対の屈曲部で概ね直線状に当接することになり、安定した移動筒部材の後退規制が行われる。
【0016】請求項11では、腕部材は、移動筒部材に対して出力軸の回りに回転自在に組付けられるとともに、一端が移動筒部材の軸心に対して略対称位置となる両側で、出力軸に交差する軸の回りに回動自在に係合していることから、移動筒部材の傾きを防止できる。これにより、移動筒部材と腕部材の偏磨耗に伴う異音の発生を防止できる。また、移動筒部材が前進移動すると、その前進移動に伴って引き起こされた腕部材が移動筒部材と固定部材との間に介在されるとともに、腕姿勢保持部材が腕部材の姿勢を保持することにより、移動筒部材の後退を規制している腕部材がエンジン駆動時の振動等で復帰してしまうのを阻止することができる。この構造によれば、腕保持部材を駆動する駆動手段は、腕部材の姿勢を保持する当接位置へ腕保持部材を駆動するだけの駆動力を発生すれば良い。即ち、駆動手段は、ピニオンの戻り力(移動筒部材の後退力)に打ち勝つだけの駆動力を必要としないため、駆動手段を小型化できる。
【0017】請求項12では、腕部材は、移動筒部材の前進移動に伴って軸方向へ引き起こされることにより、固定部材上を摺接しながら出力軸の軸方向側へ入り込むように作動する。従って、移動筒部材が静止状態の時は、腕部材が固定部材上で出力軸の径方向側に位置することになる。即ち、腕部材は、移動筒部材が前進移動した時のみ、軸方向に引き起こされて移動筒部材と固定部材との間に介在される。このため、移動筒部材が静止状態の時のスタータ全長(軸方向の長さ)を短く設定することができる。
【0018】請求項13では、腕部材の一端部を規制するために作動する腕姿勢保持部材の動作方向が、腕部材が固定部材上を出力軸の径方向側へ押し出される方向と交差することにより、腕姿勢保持部材を駆動する駆動手段の駆動力を最も小さく設定できる。このため、駆動手段の小型化に対して好適である。
【0019】請求項14では、電磁スイッチは、ピニオンギヤの戻り力(移動筒部材の後退力)に打ち勝つだけの吸引力を必要とせず、規制手段を移動筒部材に当接させるだけの駆動力と駆動距離を確保できれば良い。即ち、ピニオンギヤの戻り力(移動筒部材の後退力)に打ち勝つだけの駆動力を必要とせず、ピニオン(移動筒部材)を直接軸方向へ移動させるだけの作動距離も必要としないので、スタータモータに通電制御するための接点を駆動する電磁スイッチの駆動を流用でき、小型の電磁スイッチで代用可能である。
【0020】請求項15では、規制手段は、連結部材によって駆動手段に連結されて、移動筒部材の当接位置へ駆動されることから、駆動手段のスタータモータに対する配置自由度が増して(スタータモータに対してどの位置に配置しても良い)、エンジン装着性が向上する。
【0021】請求項16では、電磁スイッチをスタータモータの後方に配置して径方向への飛び出しを無くすことにより、さらにエンジンへの装着性が向上する。請求項17および18では、請求項1および3と同様に、出力軸に対して移動筒部材が傾斜するのをそれぞれの規制部により確実に防止できる。
【0022】請求項19および20では、ピニオンギヤを含む移動筒部材を回転規制することにより、スタータモータの回転力と出力軸のヘリカルスプラインの作用によって移動筒部材を前進させる機構を採用しない方式(例えば、移動筒部材の慣性を利用してスタータモータの回転の立ち上がりにより移動筒部材を前進させる、いわゆる慣性噛み合い方式のスタータ等)のスタータにおいても、エンジン駆動時の後退力に対し、移動筒部材が出力軸に対して傾斜しないように確実に後退規制することができ、後退規制手段の変形、移動筒部材と後退規制手段の規制部の偏磨耗や異音の発生を防止できる。
【0023】
【発明の実施の形態】次に、本発明のスタータの実施例を図面に基づいて説明する。
(第1実施例)図1および図2はスタータの全体断面図である。本実施例のスタータ1は、図1に示すように、通電を受けて回転力を発生するスタータモータ2、このスタータモータ2の回転軸と同軸に配された出力軸3、スタータモータ2の回転力を出力軸3へ伝達する回転力伝達手段(後述する)、出力軸3のヘリカルスプライン3aに嵌合されたピニオン4、このピニオン4の歯部4a(以下ピニオンギヤ4aと言う)がエンジンのリングギヤ100と噛み合った後、ピニオン4の後退を規制する後退規制部材5、ピニオンギヤ4aがリングギヤ100と噛み合って所定量前進するまでの間、ピニオン4の回転を規制する回転規制部材6、およびスタータモータ2の後方に配置されたマグネットスイッチ7等より構成されている。
【0024】(スタータモータ2の説明)スタータモータ2は、ヨーク8、固定磁極9、アーマチャ10、ブラシ(図示しない)等より構成されている。ヨーク8は円筒状に設けられて、その後端側(図1の右端側)に配置されるホルダ11とともにハウジング12とエンドカバー13との間に挟持されている。固定磁極9は、例えば永久磁石を用いたもので、ヨーク8の内周面に固定されて磁界を形成する。なお、固定磁極9として、永久磁石の代わりに通電によって磁力を発生するフィールドコイルを用いても良い。
【0025】アーマチャ10は、回転軸を成すシャフト14、このシャフト14の外周に設けられたコア15、このコア15に装着されたコイル16、およびコア15の後端面に装着されたコンミテータ17等より構成されている。このアーマチャ10は、出力軸3の後方でシャフト14が出力軸3と同軸に配されて、シャフト14の先端部が出力軸3の後端部に形成された凹部に軸受18を介して回転自在に支持されて、シャフト14の後端部が軸受19を介してホルダ11に回転自在に支持されている。ブラシ(図示しない)は、ホルダ11に保持されて、エンドカバー13に組み込まれたスプリング(図示しない)によりコンミテータ17に押圧されている。
【0026】(出力軸3の説明)出力軸3は、その先端が軸受20を介してハウジング12の軸受け部12aに回転自在に支持されて、後端部が軸受21を介してセンタケース22(本発明の固定部材)に回転自在に支持されている。出力軸3の後端は、遊星歯車減速機構(後述する)のプラネットキャリア23として一体に設けられている。なお、センタケース22は、ハウジング12の後端側内周に固定されて、回転力伝達手段の外周を覆っている。
【0027】(回転力伝達手段の説明)回転力伝達手段は、遊星歯車減速機構と一方向クラッチとから構成される。遊星歯車減速機構は、スタータモータ2の回転速度を減速して、スタータモータ2の出力トルクを増大する減速装置であり、シャフト14の先端外周に形成されたサンギヤ24、このサンギヤ24に噛み合う3個の遊星ギヤ25、各遊星ギヤ25と噛み合うインターナルギヤ26、および上記のプラネットキャリア23より構成されている。3個の遊星ギヤ25は、それぞれプラネットキャリア23に固定されたピン27に軸受28を介して回転自在に支持されている。この遊星歯車減速機構は、シャフト14とともにサンギヤ24が回転することにより、サンギヤ24とインターナルギヤ26とに噛み合う各遊星ギヤ25が自転(サンギヤ24と逆回転)しながらサンギヤ24と同一方向に公転し、その公転力がピン27を介してプラネットキャリア23に伝達されて出力軸3が回転する。
【0028】一方向クラッチは、遊星歯車減速機構のインターナルギヤ26を一方向(エンジンの回転を受けて回転する方向)のみに回転可能に支持するもので、アウタ29、インナ30、ローラ31等より構成されている。アウタ29は、インターナルギヤ26の前側に一体形成されて筒状に設けられている。インナ30は、センタケース22の後側に一体形成されて、アウタ29との間にローラ室(図示しない)を形成している。ローラ31は、ローラ室に収納されて、スタータモータ2の回転力を出力軸3へ伝達する時にアウタ29とインナ30とをロックする。
【0029】(ピニオン4の説明)ピニオン4は、ハウジング12の内部で出力軸3の先端寄り外周にヘリカルスプライン嵌合されて、ピニオン4の先端側に配されたスプリング32により常時出力軸3の後方(図1の右方向)へ付勢されている。なお、スプリング32は、ピニオン4の前方で出力軸3の外周に嵌め合わされたシャッタ33の円筒部33aを介してピニオン4を付勢している。また、シャッタ33は、ピニオン4の移動に連動してハウジング12のリングギヤ側に開口する開口部(図示しない)を開閉するものである。
【0030】このピニオン4の後端側には、図3および図7に示すように、ピニオン4より外径寸法が大径で、その外周に多数の凹部34aが形成された回転規制プレート34が一体に設けられている。なお、凹部34aは、ピニオンギヤ4aの歯数より多く形成されている。また、回転規制プレート34の後端側には、スラストベアリング35を介してピニオン4の回転方向に回転自在なスラストリング36(本発明の回転部材)が組付けられている。
【0031】(後退規制部材5の説明)後退規制部材5は、図5に示すように、側面形状が略L字形に設けられた2枚の側片部5aと、この2枚の側片部5aを繋ぐ規制解除バー5bから成る。この後退規制部材5は、図3および図7に示すように、一方の側片部5aに係合するスプリング38によってセンタケース22の前端に取り付けられたプレート39側へ付勢されて、各側片部5aの一端部(屈曲部5c)がプレート39上に当接し、他端部がスラストリング36の径方向の両側に固定された一対のピン37(本発明の第1の当接部)を軸芯として回転自在に係合されている(図4参照)。なお、図3は後退規制部材5の静止状態(初期位置)を示すもので、図7は後退規制部材5がピニオン4の後退規制位置に移動した状態を示すものであり、図8は図7と同様に後退規制部材5がピニオン4の後退規制状態をスタータモータ2側からみたものである。なお、出力軸3のヘリカルスプライン3a外径にそれぞれ接する平行な第1、第2の接線3b、3cとの間で、かつ出力軸3を中心として対向する位置に一対のピン37が設けられている。
【0032】また、各側片部5aには、屈曲部5cと規制解除バー5bとの途中に後述の回転規制部材6に設けられる係合部6aと係合可能な係合凹部5d(本発明の第3の当接部、図5参照)が設けられている。スプリング38は、一端がプレート39(本発明の固定部材)に係合されて、他端が一方の側片部5aの屈曲凹部に係合されている。なお、スプリング38は、後退規制部材5の両側に設けても良い。即ち、他方の側片部5aに係合するスプリング38を追加しても良い。なお、後退規制部材5は本発明の腕部材でもある。なお、本発明の移動筒部材は、ピニオン4と、ピニオン4に組付けられたスラストリング36と、このスラストリング36に設けられたピン37を含めたものを言う。
【0033】(回転規制部材6の説明)回転規制部材6は、図6に示すように、棒状の金属材を巻回して構成され、巻回途中に前記の係合部6aが2か所設けられるとともに、両端部が径方向の対向位置で同一方向へ直角に曲げ起こされている。その曲げ起こされた一端部は、スタータ1の作動初期に回転規制プレート34に設けられた凹部34aに係合してピニオン4の回転を規制する回転規制棒6bであり、他端部には、ワイヤ等の紐状部材40(本発明の連結部材/図1参照)の一端が係合されて、その紐状部材40を介してマグネットスイッチ7の作動が伝えられる紐状部材係合部6cが形成されている。
【0034】この回転規制部材6は、図1に示すように、センタケース22とプレート39との間に形成される空間部に収納されて、両端部および2か所の係合部6aがプレート39から前方へ取り出されており、空間部を上下方向(図1の上下方向)に移動可能に配されている。また、回転規制部材6は、リターンスプリング41によって常時上方(図1の上方)へ付勢されており、紐状部材40を介してマグネットスイッチ7の吸引力が紐状部材係合部6cに伝達されると、回転規制部材6全体がリターンスプリング41の付勢力に抗して下方へ移動し、マグネットスイッチ7がオフされて吸引力が消滅すると、リターンスプリング41の付勢力により上方へ移動して初期位置(図1に示す位置)へ復帰する。なお、回転規制部材6は本発明の腕姿勢保持部材でもある。
【0035】(マグネットスイッチ7の説明)マグネットスイッチ7は、図1に示すように、ホルダ11の後端側に保持されてエンドカバー13内に配置され、スタータモータ2のシャフト14に対して動作方向が交差するように固定されている。このマグネットスイッチ7は、スイッチカバー42、コイル43、固定鉄心44、プランジャ45、スプリング46、およびロッド47等により構成されている。スイッチカバー42は、磁性体製(例えば鉄製)でカップ状にプレス成形されて、カバー底面(図1の下面)の中央部にはプランジャ45を摺動自在に挿通する挿通穴が開けられている。
【0036】コイル43は、車両の始動スイッチ(イグニッションスイッチ/図示しない)を介して車載バッテリ(図示しない)に接続され、始動スイッチがオンされて通電されることにより磁力を発生する。固定鉄心44は、コイル43の上端側に配されて、スイッチカバー42の開口部にかしめ固定されている。プランジャ45は、磁性体製(例えば鉄製)で略円柱形状を呈し、コイル43の中空内部に固定鉄心44と対向して配置されて、コイル43への通電時に磁化されて固定鉄心44側(図2の上方)へ吸引される。なお、プランジャ45の底部には、前述の紐状部材40の他端が連結されている。
【0037】スプリング46は、コイル43の内周でプランジャ45と固定鉄心44との間に介在されて、固定鉄心44に対してプランジャ45を下方(図1の下方)へ付勢している。即ち、コイル43への通電が停止された時に、それまでスプリング46の付勢力に抗して固定鉄心44側へ吸引されていたプランジャ45を初期位置(図1に示す位置)へ復帰させる。ロッド47は、絶縁体製(例えば樹脂製)でプランジャ45の上部側に固定されて、コイル43の中空内部を通り、固定鉄心44の中央部に開けられた貫通穴を摺動自在に貫通して上方へ突出されている。
【0038】(スタータモータ2の接点構造の説明)接点構造は、エンドカバー13に取り付けられた端子ボルト48、この端子ボルト48の頭部48aに固定された固定接点49、正極側ブラシのリード線(図示しない)に接続される主可動接点50、この主可動接点50に起動抵抗51を介して接続される副可動接点52より構成される。端子ボルト48は、エンドカバー13の底壁13aを貫通して先端側がエンドカバー13の外部に露出した状態で取り付けられ、ワッシャ53の締め付けによりエンドカバー13に固定されている。この端子ボルト48は、給電線(図示しない)により車載バッテリの正極に接続されている。
【0039】固定接点49は、エンドカバー13の内部で端子ボルト48の頭部48aに溶接等により固定されている。主可動接点50は、固定接点49に対向して配置されて、マグネットスイッチ7のロッド47に摺動自在に嵌め合わされている。起動抵抗51は、例えばニッケルより成り、コイル43状に巻回されてバネ作用を持たせてあり、一端が主可動接点50に固定されて、他端が副可動接点52に固定されている。
【0040】副可動接点52は、端子ボルト48の頭部48aに対向して配置されて、マグネットスイッチ7がオンされてプランジャ45が吸引されると、ロッド47の移動に伴って端子ボルト48の頭部48aに当接し、マグネットスイッチ7がオフされると、固定鉄心44の外側端面に当接して電気的に導通状態となっている(図2参照)。なお、主可動接点50と固定接点49との間隔より副可動接点52と端子ボルト48の頭部48aとの間隔の方が小さく設定されており、マグネットスイッチ7がオンされてプランジャ45が固定鉄心44側へ吸引された時は、主可動接点50が固定接点49に当接する前に副可動接点52が端子ボルト48の頭部48aに当接して、バッテリ電圧が起動抵抗51を介してスタータモータ2のアーマチャ10に印加される。
【0041】次に、本実施例の作動を説明する。乗員により始動スイッチがオンされると、マグネットスイッチ7のコイル43が通電されて、プランジャ45がスプリング46の付勢力に抗して磁化された固定鉄心44側へ吸引される。このプランジャ45の移動に伴って紐状部材40がマグネットスイッチ7側へ引っ張られることにより、回転規制部材6が空間部を下方へ移動して、回転規制棒6bが回転規制プレート34の外周に設けられた凹部34aに係合することにより、ピニオン4の回転が規制される。
【0042】一方、プランジャ45の上昇に伴って副可動接点52が端子ボルト48の頭部48aに当接し、起動抵抗51を介して正極側ブラシに通電されることにより、スタータモータ2に低電圧が印加されて起動しアーマチャ10が回転する。アーマチャ10の回転は、遊星歯車減速機構で減速されて出力軸3に伝達されて、出力軸3が回転する。この出力軸3の回転によってピニオン4も回転しようとするが、ピニオン4は回転規制棒6bにより回転規制されていることから、出力軸3の回転力は、ピニオン4に対して軸方向に押し出す推力として作用する。この結果、ピニオン4は、出力軸3に対してヘリカルスプライン3aに沿って前進することにより、ピニオンギヤ4aがリングギヤ100と噛み合うことができる。
【0043】一方、後退規制部材5は、ピニオン4の前進移動に伴ってスラストリング36に引っ張られるため、後退規制部材5の屈曲部5cがプレート39上を摺接しながら内側へ入り込み、図7に示すように後退規制部材5全体が軸方向に引き起こされて、スラストリング36とプレート39との間に介在される。なお、後退規制部材5は、マグネットスイッチ7がオフされた時に初期位置へ復帰できるように、後退規制部材5の屈曲部5c(プレート39上に当接する点)は、ピン37を通る軸線Aより外側(図2で軸線Aより上側)に位置する。
【0044】また、回転規制部材6は、ピニオンギヤ4aが完全にリングギヤ100に噛み合うと、回転規制棒6bの先端が回転規制プレート34の凹部34aから外れて、スラストリング36の後端側に落ち込むことにより、ピニオン4の回転規制を解除する。さらに、回転規制部材6の係合部6aが軸方向に引き起こされた後退規制部材5の係合凹部5dと係合することにより、後退規制部材5の姿勢が保持される。即ち、この回転規制部材6は、後退規制部材5の姿勢を保持する姿勢保持手段でもある。
【0045】その後、主可動接点50が固定接点49に当接すると、起動抵抗51が短絡されてスタータモータ2に定格電圧が印加されてアーマチャ10が回転する。これにより、アーマチャ10の回転が遊星歯車減速機構を介して出力軸3に伝達されて、回転規制が解除されたピニオン4が出力軸3と共に回転してリングギヤ100を回転することでエンジンを始動することができる。
【0046】ピニオン4が前進してピニオンギヤ4aがリングギヤ100と噛み合った状態では、ピニオン4の先端側に配されたスプリング32の付勢力が大きくなる。また、エンジン始動後、ピニオン4がリングギヤ100によって回転されると、エンジンの回転力がヘリカルスプライン3aの作用によってピニオン4を後退させる方向へ作用する。これらの力により、ピニオン4は出力軸3に対して後退しようとするが、後退規制部材5と回転規制部材6とが共同して(即ち、後退規制位置にある後退規制部材5の姿勢を回転規制部材6が保持する)ピニオン4の後退を阻止することができる。また、後退規制部材5の一対の側片部5aがスラストリング36の両側に固定されたピン37に当接していることによってピニオン4の後退を規制している。
【0047】その後、始動スイッチがオフされて、マグネットスイッチ7のコイル43への通電が停止されると、コイル43の磁力が消滅することで、それまで固定鉄心44側へ吸引されていたプランジャ45がスプリング46の付勢力によって初期位置へ戻される(図1で下方へ移動する)。このプランジャ45が初期位置へ戻ることにより、紐状部材40を介して回転規制部材6を引っ張る力が消滅することから、回転規制部材6はリターンスプリング41のバネ力によって初期位置へ復帰する。
【0048】この時、後退規制部材5は、回転規制部材6の係合部6aが係合凹部5dから外れて係合状態が解除されるとともに、規制解除バー5bが回転規制部材6の回転規制棒6bによって上方へ押し上げられる。これにより、後退規制部材5は、スラストリング36に固定されたピン37を中心として図7の左回転方向へ回転して、ピニオン4の後退規制位置から解除される。この結果、リングギヤ100から後退力を受けるピニオン4が静止状態(図1および図5に示す状態)に戻される。
【0049】(第1実施例の効果)本実施例では、後退規制部材5の一対の側片部5aは、出力軸3のヘリカルスプライン3a外径にそれぞれ接する平行な第1、第2の接線3b、3cとの間で、かつ出力軸3を中心として対向する位置に配置され、この一対の側片部5aが、ピニオン4に組付けられたスラストリング36の径方向の両側に固定された一対のピン37にそれぞれ当接しているので、従来の様に、1カ所で支持するのに比べてピニオン4を傾斜させようとするそれぞれの側片部5aに働くモーメントが反対向きに働くことにより分力を相殺することができるとともに、特に、側片部5aが、出力軸3のヘリカルスプライン3a外径にそれぞれ接する平行な第1、第2の接線3b、3cとの間に配置されているので、側片部5aが第1、第2の接線3b、3cとの間より外れているものに対して、側片部5aに働くモーメントを大幅に小さくできる。これにより、出力軸3に対してピニオン4が傾斜するのを防止できるため、ピニオン4の傾斜に起因する後退規制部材5の変形、ピニオン4と後退規制部材5の一対の側片部5aとの偏磨耗や異音等を抑止できる。
【0050】また、ピニオン4の前進移動に伴って後退規制部材5がスラストリング36とプレート39との間に介在されて、その後退規制部材5の姿勢を回転規制部材6によって保持することでピニオン4の後退を阻止することができる。このため、紐状部材40を介して回転規制部材6を駆動させるマグネットスイッチ7は、後退規制部材5の姿勢を保持する係合位置へ回転規制部材6を駆動するだけの吸引力を発生すれば良い。即ち、マグネットスイッチ7は、リングギヤ100からピニオン4に加わる後退力に打ち勝つだけの力(プランジャ吸引力)を必要とせず、また、プランジャ45のストロークを回転規制部材6がピニオン4の外周側から後端の空間位置まで移動するだけの距離だけ確保すれば良く、マグネットスイッチ7の小型化が可能となる。
【0051】また、特に、後退規制部材5の一対の側片部5aは、ピニオン4の軸心に対して径方向に略対称位置で2カ所でピニオン4に組付けられたスラストリング36の径方向の両側に固定された一対のピン37にそれぞれ当接しているため、出力軸3に対して移動筒部材(スラストリング36とこのスラストリング36に設けられたピン37)が傾斜するのを確実に防止できる。
【0052】また、後退規制部材5がピニオン4に組付けられたスラストリング36のピン37に対して後退規制部材5の一対の側片部5aで支持しているため、ピニオン4が回転してもピニオン4に対してスラストリング36が相対回転することによってピニオン4の回転力が後退規制部材5の一対の側片部5aに伝わるのを防止できる。これにより、ピニオン4の回転に伴って後退規制部材5の側片部5aが連れ回りするのを防止できる。
【0053】さらに、ピニオン4の前進状態を維持し、後退規制している後退規制部材5の動作姿勢を保持する姿勢保持手段である回転規制部材6を備えているので、スタータ1に加わる振動等で、後退規制部材5がピニオン4の後退規制を解除するようなこともなく、後退規制部材5は安定してピニオン4の前進状態を保持できる。また、ピニオン4の回転規制と後退規制部材5の作動姿勢保持を同一の部材で構成できるため、構成部品を追加および複雑化することなく構成できる。
【0054】また、後退規制部材5は、ピニオン4の前進移動に伴って軸方向へ引き起こされることにより、プレート39に当接する屈曲部5cがプレート39上を摺接しながら出力軸3の軸方向側へ入り込むように作動する。従って、ピニオン4が静止状態の時は、後退規制部材5の屈曲部5cがプレート39上で出力軸3の径方向側に位置することになる。即ち、後退規制部材5は、ピニオン4が前進移動した時のみ、軸方向に引き起こされてピニオン4とセンタケース22との間に介在される。このため、ピニオン4が静止状態の時のスタータ全長(軸方向の長さ)を短く設定することができる。
【0055】また、回転規制部材6は、紐状部材40によってマグネットスイッチ7に連結されて、ピニオン4の当接位置へ駆動されることから、マグネットスイッチ7のスタータモータ2に対する配置自由度が増して(スタータモータ2に対してどの位置に配置しても良い)、エンジン装着性が向上する。また、後退規制部材5とプレート39にスプリング38を引っ掛けてあるため、ピニオン4は、後退規制部材5を介して後方(図1の右方向)へ引っ張られる。これにより、スプリング38をピニオン4のリターンスプリングとして使用することもできるため、ピニオン4の前方に配されたスプリング32を廃止することも可能である。
【0056】さらに、回転規制部材6は、マグネットスイッチ7がオフされた後、リターンスプリング41のバネ力によって初期位置へ復帰するだけで、自動的に回転規制部材6の係合部6aと後退規制部材5の係合凹部5dとの係合状態が解除され、かつ回転規制棒6bが規制解除バー5bを押し上げるため、後退規制部材5はピン37を中心として簡単に回動してピニオン4の後退規制位置から外れることができる。このため、リターンスプリング41の荷重(回転規制部材6の解除力)を低く設定できるため、マグネットスイッチ7の吸引力を小さくして、小型化を図ることができる。
【0057】また、本実施例では、後退規制部材5がスラストリング36を介してピニオン4に対して回転自在に組付けられるとともに、スラストリング36の径方向の両側に固定されたピン37に対して回転自在に係合していることから、ピニオン4との連れ回りを防止できるとともに、ピニオン4に対して偏荷重が加わることがない。これにより、ピニオン4や回転規制部材6等の偏磨耗や、その偏磨耗に伴う異音の発生を防止できる。
【0058】(第2実施例)図9および図10は第2実施例に係わるスタータの要部断面図である。本実施例のスタータ1は、第1実施例とピニオン戻り防止機構の構造が異なるもので、以下にその点について説明する。なお、第1実施例と同一機能を有する部品(同一名称)は同一番号を付し、その説明を省略する。
【0059】後退規制部材5は、図13に示すように、棒状部材を略V字形状に屈曲した形状で、出力軸3に対して径方向の両側にそれぞれ配されて、端部5f(本発明の第1の当接部)がそれぞれスラストリング36の側面に設けられた穴部36a(図14参照)に回動自在に係合されている。この後退規制部材5は、それぞれスプリング38によってセンタケース22の前端に配されたプレート39側に押圧されて、プレート39に対して径方向の両外側へ押し出されている(図12参照)。即ち、マグネットスイッチ7がオフ状態の時は、ピニオン4がエンジン振動等により飛び出さない様に、スプリング38により押圧された後退規制部材5を介してピニオン4の静止状態が保たれている。
【0060】回転規制部材6は、図16および図17に示すように、棒状の金属材を巻回して構成されて、巻回途中に突起部6dが2か所設けられるとともに、両端部が径方向の対向位置で同一方向へ直角に曲げ起こされている。曲げ起こされた一端部は、スタータ1の作動初期に回転規制プレート34に設けられた凹部34aに係合することでピニオン4の回転を規制する回転規制棒6bであり、他端部に形成された紐状部材係合部6cには、紐状部材40の一端が係合されて、その紐状部材40を介してマグネットスイッチ7の作動が伝えられる。2か所の突起部6dは、ピニオン4が前進移動して後退規制部材5が軸方向に引き起こされた時に、後退規制部材5の足部5eと係合することにより、後退規制部材5が倒れない様にストッパとなる(図13および図14参照)。
【0061】プレート39には、回転規制部材6の突起部6dが摺動する摺動溝39aが形成されるとともに、後退規制部材5の回り止め部39bが設けられている(図11および図13参照)。この回り止め部39bは、ピニオン4の回転がスラストリング36に摩擦伝達されて連れ回りを阻止するためのものである。なお、図15は図13と同様に後退規制部材5がピニオン4の後退規制状態をスタータモータ2側から見たものである。なお、出力軸3のヘリカルスプライン3a外径にそれぞれ接する平行な第1、第2の接線3b、3cとの間で、かつ出力軸3に対して径方向の両側にそれぞれ後退規制部材5の端部(第1の当接部)5fが配置されている(4か所)。また、この4か所の四角形内にピニオン4の軸心がある。即ち、ピニオン4に組付けられたスラストリング36に当接する3か所以上の端部(第1の当接部)5fを結んで形成される多角形内にピニオン4の軸心が配置されている。
【0062】次に、本実施例の作動を説明する。第1実施例と同様に、始動スイッチがオンされてマグネットスイッチ7が作動することにより、回転規制部材6の回転規制棒6bが回転規制プレート34の凹部34aに係合することでピニオン4の回転を規制する。一方、スタータモータ2の回転力を受けて出力軸3が回転することにより、回転規制されたピニオン4が出力軸3のヘリカルスプライン3aに沿って前進してピニオンギヤ4aがリングギヤ100と噛み合い、エンジンを始動させる。
【0063】この時、後退規制部材5は、図14に示すように、ピニオン4の前進に伴ってスラストリング36に引き起こされることにより、スラストリング36とプレート39との間に介在する。一方、回転規制部材6は、ピニオンギヤ4aが完全にリングギヤ100に噛み合うことで、回転規制棒6bの先端が回転規制プレート34の凹部34aから外れてスラストリング36の後端側に落ち込むことにより、ピニオン4の回転規制を解除する。同時に、回転規制部材6の突起部6dが摺動溝39aを移動して、後退規制部材5の足部5e(本発明の揺動支持部)に係合して後退規制部材5が倒れない様にストッパとなることで、後退規制部材5の姿勢が保持される。
【0064】これにより、ピニオン4がリングギヤ100により回転されてピニオン4に後退力が働いても、スラストリング36とプレート39との間に介在された後退規制部材5の姿勢を回転規制部材6が保持することにより、ピニオン4の後退を阻止することができる。その後、始動スイッチがオフされると、回転規制部材6がリターンスプリング41のバネ力によって初期位置へ復帰することにより、回転規制部材6の突起部6dと後退規制部材5の足部5eとの係合状態が解除される。これにより、後退規制部材5とともにピニオン4が静止状態(図9および図12に示す状態)に戻される。
【0065】本実施例では、第1実施例と同様の効果(特に、本実施例では、ピニオン4に組付けられたスラストリング36の穴部36aに係合される端部5fは、ピニオン4の軸心を中心として3か所以上でスラストリング36に当接しているため、出力軸3に対してピニオン4が傾斜するのを防止できる。)を得ることができるとともに、さらに以下の効果を期待できる。第1実施例では、ピニオン4の後退力が加わる方向に対して、後退規制部材5の動作方向と回転規制部材6の動作方向とが同じ方向であるため、エンジンによっては、ピニオン4の後退力に合わせてマグネットスイッチ7の吸引力を大きくする必要性が生じる場合がある。これに対して、本実施例では、ピニオン4の後退力が加わる方向に対して、後退規制部材5の動作方向と回転規制部材6の動作方向(突起部6dの動作方向)とが直交するため、ピニオン4に加わる後退力の大きさによってマグネットスイッチ7の吸引力を大きくする必要がなく、マグネットスイッチ7の小型化にとって好適である。
【0066】また、後退規制部材5は、ピニオン4の後退力が加わる作用点に対して反支点側(即ち、作用点に対して一端部と反対側)の端部が回転規制部材6によって支持される。即ち、後退規制部材5は、作用点に加わるピニオン4の後退力に対して、センターケース22と回転規制部材6とにより両端で支持される構造となる。これにより、ピニオン4の後退力に対して後退規制部材5が変形(撓み)できるので、ピニオン4が軸方向にばたついて(エンジン始動時に軸方向に前後移動する)後退規制部材5に脈動的な後退力が加わると、部材自体が撓んでこれを緩衝できる。
【0067】(第3実施例)図18は第3実施例に係わるピニオン戻り防止機構の側面図である。本実施例のスタータ1は、第1実施例および第2実施例とピニオン戻り防止機構の構造が異なるもので、以下にその点について説明する。なお、第1実施例および第2実施例と同一機能を有する部品(同一名称)は同一番号を付し、その説明を省略する。
【0068】後退規制部材5は、中央部に出力軸3を通す丸穴5fが設けられた円環状部5q(図19参照)、この円環状部5qの両側で円環状部5qに対して直角に折り曲げられた側壁部5r、およびセンタケース22に固定された支持ピン54に回転自在に支持される支点部5i等を有する。この後退規制部材5は、支点部5iに設けられた穴5j(図20参照)を支持ピン54に嵌め合わせるとともに、側壁部5rに設けられた長穴5kにスラストリング36に設けられた係合ピン36bを嵌め込んで組付けられており、支持ピン54を中心として回動可能に設けられている。
【0069】また、後退規制部材5は、支持ピン54に嵌め合わされたスプリング38によってプレート39側へ押圧されている。即ち、スプリング38は、後退規制部材5を介してピニオン4を後方(プレート39側)へ押圧して静止状態を保持しているとともに、エンジン始動後のピニオン4の飛び出し防止を手助けしている。
【0070】回転規制部材6は、図21に示すように、棒状の金属材を巻回して構成されて、両端部が径方向の対向位置で同一方向へ直角に曲げ起こされている。曲げ起こされた一端部は、スタータの作動初期に回転規制プレート34に設けられた凹部34aに係合することでピニオン4の回転を規制する回転規制棒6bであり、他端部の紐状部材係合部6cには、紐状部材40の一端が係合されて、その紐状部材40を介してマグネットスイッチ7の作動が伝えられる。また、回転規制棒6bは、ピニオン4の前進移動に伴って後退規制部材5が軸方向に引き起こされた時に、図22に示すように、後退規制部材5の円環状部5qの後方に入り込んで、円環状部5qの端部5p(本発明の第2の当接部)を支持することにより、後退規制部材5の姿勢を保持する。なお、本実施例も第1実施例と同様に、ピニオン4の後退規制時に、後退規制部材5の側壁部5rは、出力軸3のヘリカルスプライン3a外径にそれぞれ接する平行な第1、第2の接線3b、3cとの間で、かつ出力軸3を中心として対向する位置でピニオン4のスラストリング36に当接している。
【0071】次に、本実施例の作動を説明する。第1実施例および第2実施例と同様に、始動スイッチがオンされてマグネットスイッチ7が作動することにより、回転規制部材6の回転規制棒6bが回転規制プレート34の凹部34aに係合することでピニオン4の回転を規制する。一方、スタータモータ2の回転力を受けて出力軸3が回転することにより、回転規制されたピニオン4が出力軸3のヘリカルスプライン3aに沿って前進してピニオンギヤ4aがリングギヤ100と噛み合い、エンジンを始動させる。
【0072】この時、後退規制部材5は、図22に示すように、ピニオン4の前進に伴って、スラストリング36に設けられた係合ピン36bと側壁部5rに設けられた長穴5kとが係合しながら、支持ピン54を中心として軸方向に引き起こされる。一方、回転規制部材6は、ピニオンギヤ4aが完全にリングギヤ100に噛み合うことで、回転規制棒6bの先端が回転規制プレート34の凹部34aから外れてスラストリング36の後端側に落ち込むことにより、ピニオン4の回転規制を解除すると同時に、回転規制棒6bの先端が後退規制部材5の端部5pを支持することにより、スラストリング36に引っ張られて軸方向に引き起こされた後退規制部材5の姿勢が保持される。
【0073】これにより、ピニオン4がリングギヤ100により回転されてピニオン4に後退力が働いても、後退規制部材5と回転規制部材6との協同によってピニオン4の後退を阻止することができる。その後、始動スイッチがオフされると、回転規制部材6がリターンスプリング(図示しない)のバネ力によって初期位置へ復帰することにより、回転規制棒6bの先端が後退規制部材5の後端から外れるため、後退規制部材5とともにピニオン4が静止状態(図18に示す状態)に戻される。
【0074】本実施例では、ピニオン4に対して後退規制部材5がスラストリング36を介して回転自在に組付けられており、その後退規制部材5の後端を支持する回転規制棒6bにはピニオン4の回転力が加わらないため、回転規制棒6bが曲げられたり、磨耗する様なことはない。また、スラストリング36の後端面に後退規制部材5の側壁部5rが径方向の両側2か所で当接するため、ピニオン4は2点で支持されることになる。これにより、ピニオン4が出力軸3に対して傾くことはなく、信頼性の高い装置となる。
【0075】本実施例においては、以上のような第1実施例と同様の効果を得ることができるとともに、さらに以下の効果及び特徴を有する。姿勢保持手段を成す回転規制部材6は、固定部材であるセンタケース22と後退規制部材5との間の間隙に配置されているので、ピニオン4が後退しようとしても、回転規制部材6の突起部6dがつっかえ棒の役目を果たし、ピニオン4が後退することを確実に防止できる。
【0076】また、後退規制部材5は、ピニオン4の後退力が加わる作用点(即ち、側壁部5rがスラストリング36と当接する点)に対して支持部と反対側の端部が回転規制棒6bによって支持される。即ち、後退規制部材5は、作用点に加わるピニオン4の後退力に対して両端の2点で支持されることになるため、ピニオン4の後退力に対して後退規制部材5が軸方向に変形(撓み)できる。これにより、ピニオンギヤ4aがリングギヤ100と噛み合った後、エンジン始動時にばたついた時(軸方向に前後移動した時)に、そのピニオン4の後退時に発生する力を吸収(緩衝)できる。
【0077】さらに、後退規制部材5の支点部5iからピニオン4の後端力が加わる作用点までの距離に対して、支点部5iから回転規制棒6bが当接する円環状部5qの先端までの距離の方が長く設定できるので、てこの原理より、ピニオン4の後退を阻止するために必要な力は、これを直接受圧するより低く設定できる。これにより、回転規制棒6b部には、それに見合った強度の素材を採用でき、いたずらに高強度材料を必要とせず、安価なスタータを供給できる。
【0078】(第4実施例)図23はピニオン4周辺の内部構造を示す断面図である。なお、回転規制部材6は、第3実施例と同一品である。本実施例は、後退規制部材5がシャッタ33と連動する構造の一例を示すものである。シャッタ33は、第1実施例で説明した様に、ピニオン4の移動に連動してハウジング12のリングギヤ側に開口する開口部(図示しない)を開閉するもので、図25に示すように、出力軸3の外周に嵌め合わされる円筒部33a、この円筒部33aの下側から前方へ平板状に形成された開閉板33b、円筒部33aの左右両側からピニオン4の側方を通って後方へ伸びる2本の支持腕33c等が設けられている。また、各支持腕33cには、図24に示すように、その後端部に出力軸3側へ突出するボス部33dが設けられて、このボス部33dにそれぞれ係合ピン33eが圧入固定されている。但し、係合ピン33eは、その先端がボス部33dの端面より出力軸3側へ突出した状態で圧入されている。
【0079】このシャッタ33は、円筒部33aが形成された後壁面がピニオン4の前端面に当接した状態で、ハウジング12との間に配設されたスプリング32により後方へ(図23の右側へ)付勢されている。従って、スタータ作動時にピニオン4が出力軸3上を前進する時にはスプリング32の付勢力に抗してピニオン4に押し出されながら前方へ移動し、ピニオン4の後退規制が解除されるとスプリング32の付勢力によってピニオン4と一体に後方へ(図23に示す初期位置へ)押し戻される。なお、スプリング32は、出力軸3の外周に配されて、一端がハウジング12の軸受け部12aに形成された段差面に係合し、他端がシャッタ33の円筒部33aの周囲に形成された環状溝33f(図25参照)に係合している。
【0080】後退規制部材5は、第3実施例で説明したものと略同形状に設けられて、支点部5iに形成された穴5jをセンタケースに固定された支持ピン54に嵌め合わせるとともに、側壁部5rに形成された長穴5kにシャッタ33の支持腕33cの後端部に圧入された係合ピン33eを嵌め込んで組付けられており、支持ピン54を中心として回動可能に構成されている。回転規制部材6は、第3実施例で説明したものと略同形状に設けられており、スタータ1の作動初期に回転規制プレート34に設けられた凹部34aに係合してピニオン4の回転を規制する回転規制棒6bを有する。
【0081】次に、本実施例の作動を説明する。始動スイッチがオンされてマグネットスイッチ7が作動することにより、回転規制部材6の回転規制棒6bが回転規制プレート34の凹部34aに係合することでピニオン4の回転を規制する。一方、スタータモータ2の回転力を受けて出力軸3が回転することにより、回転規制されたピニオン4が出力軸3のヘリカルスプライン3aに沿って前進してピニオンギヤ4aがリングギヤ100と噛み合い、エンジンを始動させる。
【0082】この時、後退規制部材5は、ピニオン4の前進に伴ってシャッタ33が前方へ移動することにより、支持腕33cの後端部に圧入された係合ピン33eと側壁部5rに形成された長穴5kとが係合しながら、支持ピン54を中心として軸方向に引き起こされる。また、回転規制部材6は、ピニオンギヤ4aが完全にリングギヤ100に噛み合うことで、回転規制棒6bの先端が回転規制プレート34の凹部34aから外れてスラストリング36の後端側に落ち込むことにより、ピニオン4の回転規制を解除すると同時に、回転規制棒6bの先端が後退規制部材5の後端を支持することにより、シャッタ33に引っ張られて軸方向に引き起こされた後退規制部材5の姿勢が保持される。
【0083】これにより、ピニオン4がリングギヤ100により回転されてピニオン4に後退力が働いても、後退規制部材5と回転規制部材6との共同によってピニオン4の後退を阻止することができる。その後、始動スイッチがオフされると、回転規制部材6がリターンスプリング(図示しない)のバネ力によって初期位置へ復帰することにより、回転規制棒6bの先端が後退規制部材5の後端から外れてピニオン4の後退規制が解除される。これにより、シャッタ33およびピニオン4がスプリング32の付勢力によって初期位置へ押し戻されることにより、後退規制部材5も静止状態(図23に示す状態)へ復帰する。
【0084】本実施例では、後退規制部材5が非回転部材であるシャッタ33に連結されてピニオン4との連れ回りが生じない構造であるため、後退規制部材5の後端を支持する回転規制棒6bにピニオン4の回転力が加わることはなく、回転規制棒6bが曲げられたり、磨耗する様なことはない。また、後退規制部材5を介してピニオン4に偏荷重が加わることがないため、ピニオン4が出力軸3に対して傾くことはなく、信頼性を向上できる。
【0085】(第5実施例)次に、本発明の第5実施例を図26〜図30を参照して説明する。なお、回転規制部材6は、第3実施例と同一品である。本実施例のスタータ1は、他の実施例とピニオン戻り防止機構の構造が異なるもので、以下にその点について説明する。なお、他の実施例と同一機能を有する部品(同一名称)は同一番号を付し、その説明を省略する。図26はピニオン後退時(静止時)の状態を示し、図27はピニオン前進時(噛合時)を示す。
【0086】回転規制部材6は、第3実施例で説明したものと略同形状に設けられており、センタケース22とプレート39との間に形成される空間部に収納されて、回転規制棒6bと紐状部材係合部6cがプレート39から前方へ取り出されており、空間部を上下方向(図26の上下方向)に移動可能に配されている。プレート39には、回転規制部材6を初期位置(上方)へ付勢するリターンスプリング8Aが配設されている。このリターンスプリング8Aは、基端部81がプレート39の前面斜め下方に係止されたコイル部82と、コイル部82の先端から紐状部材係合部6cに向けて軸方向と直角に延設された作動端部83とから成る。作動端部83は、コイル部82の回動反発力により紐状部材係合部6cを略上方に付勢し、これにより、マグネットスイッチ7への通電遮断時には回転規制部材6は上方位置(即ち初期位置)にセットされる。一方、マグネットスイッチ7への通電がなされると、プランジャ75は紐状部材40を通じて回転規制部材6を下降させる構造となっている。
【0087】後退規制部材5を図26および図30を参照して説明する。後退規制部材5は、図30に示すように、支持ピン54に揺動自在に枢支される支点部5iと、支点部5iから支持ピン54の上方へ伸びる揺動部5lと、揺動部5lの左右に個別に設けられた側壁部5rとから成り、金属板の板金加工で形成されている。支点部5iは、揺動部5lと一体に切り出された左右一対の部分を揺動部5lに対して直角に折り曲げて成る。支点部5iには、支持ピン54が挿通される穴5jが形成されている。揺動部5lの中央には出力軸3が貫通される穴5fを有し、揺動部5lの左右端から支点部5iと反対方向かつ揺動部5lと直角方向へ一対の側壁部5rが折り曲げられている。一対の側壁部5rの当接面5mは、スラストリング36の後端面に当接可能となっている。揺動部5l上部の円環状部5gは、揺動部5lの主要部分に対して僅かに後方へ屈曲しており、この円環状部5gの後端面に回転規制部材6の回転規制棒6bの前端が当接してその後退方向への揺動が禁止される。
【0088】また、支持ピン54には、後退規制部材5の付勢手段をなす後退規制手段付勢スプリング99が巻装されており、その基端部99aはプレート39に係止され、その作用端部99bは後退規制部材5の揺動部5lを前方へ付勢している。これにより、後退規制部材5の側壁部5rは、常時スラストリング36の後端面に押圧されている。プレート39は、図29に示すように、センタケース22の回転規制部材案内溝222の開口を覆って回転規制部材6のリング部61が回転規制部材案内溝222から逸脱するのを防止している。なお、プレート39の上部における左右方向中央には、回転規制棒6bが前方へ突出する大窓39cが開口され、プレート39の下部における左右方向中央には、紐状部材係合部6cが前方へ突出する小窓39dが開口されている。図29における穴39eは、スタータモータ2を挟んでハウジング12とエンドカバー13とを締結するスルーボルト(図示せず)が嵌入される穴である。
【0089】センタケース22の下部における左右方向中央部には、ローラ支持壁22aが前方へ突設されており、そのローラ支持壁22aには、支持ピン54が左右方向に圧入されている。支持ピン54には、紐状部材40の角度変化を行うためのローラ(図示せず)が回転自在に支持されている。
【0090】次に、本実施例の作動を説明する。始動スイッチがオンされてマグネットスイッチ7が作動することにより、回転規制部材6が下方へ移動して、回転規制棒6bがピニオンの回転規制プレート34の凹部34aに係合することにより、ピニオン4の回転が規制される。一方、スタータモータ2の回転力を受けて出力軸3が回転することにより、回転規制されたピニオン4が出力軸3のヘリカルスプライン3aに沿って前進してピニオンギヤ4aがリングギヤ100と噛み合う。ピニオン4が前進すると、後退規制部材5は、後退規制手段付勢スプリング99の付勢力により、側壁部5rの当接面5mをスラストリング36に当接させたまま、支持ピン54を支点として回動する。
【0091】ピニオンギヤ4aがリングギヤ100と噛み合って所定の距離だけ前進すると、回転規制部材6の回転規制棒6bがスラストリング36の後方空間に落ち込んでピニオン4の回転規制を解除した後、回転規制棒6bの前端が後退規制部材5の円環状部5gの後端面に当接する(図27参照)。そして、出力軸3の回転がピニオン4およびリングギヤ100を通じて伝達されて、エンジンを始動する。
【0092】ピニオン4が前進してピニオンギヤ4aがリングギヤ100と噛み合った状態では、ピニオン4の先端側に配されたスプリング32の付勢力が大きくなり、更に、エンジン始動後、ピニオン4がリングギヤ100によって回転される状況となると、エンジンの回転力がヘリカルスプライン3aの作用によってピニオン4を後退させる方向へ作用するので、ピニオン4は出力軸3に対して後退しようとする。しかし、上述のようにピニオン4の後退は、ピニオン4のスラストリング36に2点の当接面5mで当接している後退規制部材5を通じて回転規制部材6により規制されており、リングギヤ100からの離脱が阻止される。その後、始動スイッチがオフされると、回転規制部材6はリターンスプリング8Aの付勢によって初期位置(図26参照)へ復帰する。この結果、リングギヤ100から後退力を受けるピニオン4が初期位置(図26参照)に後退する。本実施例では、第3実施例と同様の効果を得ることができる。
【0093】次に、本発明の第6実施例を図31〜図35を参照して説明する。なお、回転規制部材6は、第3実施例と同一品である。本発明の第6実施例は、第5実施例に対して、ピニオン戻り防止機構の後退規制部材5及びスラストリング36の形状が異なるもので、以下にその点について説明する。なお、他の実施例と同一機構を有する部品(同一名称)は、同一番号を付し、その説明を省略する。
【0094】後退規制部材5(本発明の腕部材)は、図32に示すように、支持ピン54に揺動自在に軸支される支点部5iと、その支点部5iから支持ピン54の上方へ伸びる揺動部5lと、この揺動部5lから更に上方へ伸びる一対の側片部5hと、この側片部5hにそれぞれ形成されて反ピニオン側に屈曲した一対の屈曲部5nと、一対の側片部5hを連結する円環状部5gとで構成されている。
【0095】一対の側片部5hは、スラストリング36の後端面に当接可能となっている。円環状部5gの後端面に回転規制部材6の回転規制棒6bの前端が接触してその後退方向への揺動が禁止される。スラストリング36は、スラストベアリング35を介してピニオン4の回転方向に回転自在に固定される固定部36bと、この固定部36bから突出する一対の突出部36c(本発明の第1の突起部)と、この一対の突出部36cからピニオン4の軸心に向かって径方向内側にそれぞれ突出し、後退規制部材5の一対の側片部5hを保持する一対の係合部36d(本発明の第2の突起部)とから構成されており、固定部36bと一対の突出部36cと一対の係合部36dとで囲まれる空間には、後退規制部材5の一対の側片部5hが配置され、ピニオン4が図示されない出力軸上を移動することによって、後退規制部材5が前記空間を移動するようになっている。
【0096】次に、本実施例の作動を説明する。始動スイッチがオンされて図示されないマグネットスイッチが作動することにより、回転規制部材6の紐状部材係合部6cに係合する図示されない紐状部材によって、回転規制部材6が下方へ移動して、回転規制棒6bがピニオン4の回転規制プレート34の凹部34aに係合することにより、ピニオン4の回転が規制される。
【0097】一方、図示されないスタータモータの回転力を受けて出力軸が回転することにより、回転規制されたピニオン4が出力軸3のヘリカルスプライン3aに沿って前進してピニオンギヤ4aが図示されないリングギヤ100と噛み合う。ピニオン4が前進すると、後退規制部材5は、スラストリング36の固定部36bと一対の突出部36cと一対の係合部36dとで囲まれた空間内で移動し、後退規制部材5がスラストリング36の一対の係合部36dに当接しつつ、支持ピン54を支点として回動することによって、後退規制部材5がピニオン4方向に引っ張られる。ピニオンギヤ4aがリングギヤ100と噛み合って所定の距離だけ前進すると、回転規制部材6の回転規制棒6bがスラストリング36の後方空間に落ち込んでピニオン4の回転規制を解除した後、回転規制棒6bの前端が後退規制部材5の円環状部5gの後端面に当接する(図34参照)。そして、出力軸の回転がピニオン4及びリングギヤ100を通じて伝達されて、エンジンを始動する。
【0098】ピニオン4が前進してピニオンギヤ4aがリングギヤ100と噛み合った状態で、ピニオン4の先端側に配置された図示されないスプリングの付勢力が大きくなり、更に、エンジン始動後、ピニオン4がリングギヤ100によって回転される状況となると、エンジンの回転力がヘリカルスプライン3aの作用によってピニオン4を後退させる方向へ作用するので、ピニオン4が出力軸に対して後退しようとする。しかし、上述のように、ピニオン4の後退は、ピニオン4のスラストリング36に2点の当接面5mで当接している後退規制部材5を通じて回転規制部材6により規制されており、リングギヤ100からの離脱が阻止される(図34および図35参照)。なお、図35は図34と同様に後退規制部材5がピニオン4の後退規制状態をスタータモータ2側から見たものである。出力軸3のヘリカルスプライン3a外径にそれぞれ接する平行な第1、第2の接線3b、3cとの間で、かつ出力軸3を中心として対向する位置に当接面5m(本発明の第1の当接部)がスラストリング36に当接している。
【0099】その後、始動スイッチがオフされると、回転規制部材6の紐状部材係合部6cに係合する図示されないリターンスプリングの付勢によって、回転規制部材6が初期位置(図31参照)へ復帰する。この結果、リングギヤ100から後退力を受けるピニオン4が初期位置(図31参照)に後退する。本実施例では、第5実施例と同様の効果を得ることができる。さらに、回転規制部材6がピニオン4の移動に伴って、ピニオン4に組付けられたスラストリング36の係合部36d内で軸方向に保持されながら略径方向に移動できるので、ピニオン4を後退規制する位置に移動するためにわざわざ別部材を用いてピニオン4とともに移動させる必要もなく、簡単な構成で回転規制部材6をピニオン4の後退規制位置に移動させることができる。
【0100】また、スラストリング36は、固定部36bから反ピニオン側にそれぞれ突出した一対の突出部36cと、この一対の突出部36cからピニオン4の軸心に向かって径方向内側にそれぞれ突出する一対の係合部36dとからなるため、スラストリング36における突出部36cと係合部36dとで形成される空間内で、後退規制部材5が軸方向に保持されたまま略径方向に移動でき、回転規制部材6をピニオン4の後退規制位置に容易に移動させることができる。
【0101】さらに、回転規制部材6を前記空間内に挿入する(滑り込ませる)だけで簡単に組付けできる。また、支持部5iからそれぞれ延びる一対の側片部5hには、反ピニオン4側にそれぞれ屈曲した一対の屈曲部5nを備え、その屈曲部5nをピニオン4への当接面5mとしているので、後退規制部材5のセンタケース22に対する傾きが常に一定でなくても、ピニオン4へはその一対の屈曲部5nで概ね直線状に当接することになり、安定したピニオン4の後退規制が行われる。
【0102】〔変形例〕上記の各実施例では、紐状部材40を通じてマグネットスイッチ7により回転規制部材6を駆動する説明であるが、マグネットスイッチ7の代わりに小型モータで回転規制部材6を駆動させても良い。また、連結部材としては紐状部材でなくても棒状部材等のレバー式やリンク機構によるものでも良い。また、各実施例では、スラストリング36に対して後退規制部材5が2点で支持する構造であるが、3点以上で支持する構造でも良い。但し、この場合、出力軸3に対するピニオン4の傾きを防止するために、各支持部を結んで形成される多角形内にピニオン4の軸中心が存在していることが必要である。
【0103】後退規制部材5は、金属板の板金加工品としたが、樹脂成形品などでも良い。上記の第1実施例〜第4実施例では、後退規制部材5とスラストリング36とを連結構造としたが、磁石等を使用して吸着させることにより同一に摺動させてもよい。また、各実施例で説明したスタータ1は、出力軸3に対してピニオン4のみが前進移動する構造であるが、出力軸3の外周に一方向クラッチ(本発明の移動筒部材)がヘリカルスプライン嵌合されて、その一方向クラッチの先端側にピニオン4が一体に設けられた構造のスタータでも良い。
【0104】なお、各実施例で説明したスタータ1では、ピニオンギヤ4aを有するピニオン4を回転規制して出力軸3のヘリカルスプライン3aとスタータモータ2の回転力の作用でピニオン4を押し出す方式のものとしたが、ピニオン4の慣性を利用してスタータモータ2の回転の立ち上がりによりピニオン4を前進させる、いわゆる慣性噛み合い方式のスタータにおいても、本発明のピニオン後退規制機構が採用できることは言うまでもない。
【0105】更に、第2実施例〜第6実施例においては、後退規制部材5の移動方向と姿勢保持手段である回転規制部材6の作動方向が略直交しているが、これは直交に限定したことではなく、同一方向でなければ、それだけ姿勢保持手段にかかる荷重は分力となって直接同一方向に駆動するより荷重が小さくてすみ、駆動源(例えば電磁スイッチ)が発生する力はそれに見合って低減できることは言うまでもないことである(当然、直交する場合は、分力は0となって駆動源に作用する力は働かない)。
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【出願日】 平成8年(1996)4月18日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】石黒 健二
【公開番号】 特開平9−49477
【公開日】 平成9年(1997)2月18日
【出願番号】 特願平8−97064