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【発明の名称】 自動二輪車におけるキック始動装置
【発明者】 【氏名】堀 良昭

【氏名】高橋 克徳

【氏名】國清 克普

【目的】
【構成】
【特許請求の範囲】
【請求項1】 後輪(WR )の側方に該後輪(WR )の回転軸線(CW )と平行なクランクシャフト(20)を有するエンジン(E)が配置され、キックスピンドル(120)に固定されたキックスピンドルギヤ(122)を含むギヤ列(123)が始動クラッチ(124)を介してクランクシャフト(20)に連結される自動二輪車において、自動二輪車(V)の前後方向に沿って後輪(WR )の回転軸線(CW )よりも前方にクランクシャフト(20)の軸線(CC )を有するエンジン(E)が、そのシリンダブロック(24)に設けられたシリンダ(23)の軸線を前方に傾斜させた姿勢で後輪(WR )の側方に配置され、キックスピンドル(120)は、シリンダブロック(24)に設けられたギヤ室(126)内にキックスピンドルギヤ(122)の一部を作動可能に収納させてクランクケース(21,22)の前部に配設され、ギヤ列(123)がシリンダ(23)の軸線にほぼ沿って配列されることを特徴とする自動二輪車におけるキック始動装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、後輪の側方に該後輪の回転軸線と平行なクランクシャフトを有するエンジンが配置され、キックスピンドルに固定されたキックスピンドルギヤを含むギヤ列が始動クラッチを介してクランクシャフトに連結される自動二輪車において、エンジンを始動させるためのキック始動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、かかるキック始動装置は、たとえば実開昭59−111961号公報等により知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、ステアリングハンドルおよびキックスピンドル間の距離が遠いとキックスピンドルに固設されたキックペダルの踏込み操作を行ない難いため、前記距離を適切な距離に設定することが望ましく、エンジンが後輪の側方に配置される自動二輪車ではキックスピンドルを極力前方に配置する必要がある。しかるに、上記従来のものでは、後輪の回転軸線にクランクシャフトの軸線を一致させたエンジンが略直立姿勢で後輪の側方に配置され、キックスピンドルはクランクケースから側方に突出されているために、エンジンを大型化しない限り、キックスピンドルを前方に配置するには限度がある。
【0004】本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、エンジンの大型化を回避しつつキックスピンドルの前方配置を可能として始動操作性を向上した自動二輪車におけるキック始動装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は、後輪の側方に該後輪の回転軸線と平行なクランクシャフトを有するエンジンが配置され、キックスピンドルに固定されたキックスピンドルギヤを含むギヤ列が始動クラッチを介してクランクシャフトに連結される自動二輪車において、自動二輪車の前後方向に沿って後輪の回転軸線よりも前方にクランクシャフトの軸線を有するエンジンが、そのシリンダブロックに設けられたシリンダの軸線を前方に傾斜させた姿勢で後輪の側方に配置され、キックスピンドルは、シリンダブロックに設けられたギヤ室内にキックスピンドルギヤの一部を作動可能に収納させてクランクケースの前部に配設され、ギヤ列がシリンダの軸線にほぼ沿って配列されることを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、添付図面に示した本発明の一実施例に基づいて説明する。
【0007】図1ないし図10は本発明の一実施例を示すものであり、図1は本発明を適用したスクータ型自動二輪車の側面図、図2は図1の2−2線拡大断面図、図3は図2の3−3線に沿う断面図、図4はエンジンおよび車体フレームの連結構造を示す側面図、図5は図4の5−5線断面図、図2の6−6線拡大断面図、図7はクランクシャフトおよび後輪間の伝動ギヤ配列を示す図、図8は図3の8−8線に沿う断面図、図9は図2の9−9線拡大断面図、図10は図9の要部拡大縦断面図である。
【0008】先ず図1において、小型車両としてのスクータ型自動二輪車Vが備える車体フレーム11の前部は、フロントフェンダ12aを有するフロントカバー12で覆われており、ステアリングハンドル13による左、右の回動操作を可能としてフロントフォーク14が車体フレーム11の前端部に支承される。而して前輪WFは、フロントフェンダ12aで覆われてフロントフォーク14の下端に軸支される。
【0009】車体フレーム11の後部はリヤカバー15で覆われており、リヤカバー15の上部には、足載せステップ16上に足を載せた乗員が腰をかけるためのシート17が設けられる。また車体フレーム11の後部には、パワーユニットPが上下揺動可能に連結され、該パワーユニットPおよび車体フレーム11間には懸架ばね18が設けられる。後輪WR は、リヤカバー15から後方に延設されたリヤフェンダ19で覆われてパワーユニットPに軸架される。
【0010】図2および図3において、パワーユニットPは、4サイクルの空冷型である単気筒のエンジンEと、静油圧式無段変速機Mとを備え、自動二輪車Vの前方に向って左側で後輪WR の側方に配置される。
【0011】エンジンEは、後輪WR の回転軸線CW と平行なクランクシャフト20を回転自在に支承する左、右クランクケース21,22と、左、右クランクケース21,22に共通に結合されるとともに円筒状のシリンダ23が設けられるシリンダブロック24と、シリンダ23に摺動可能に嵌合されるピストン25との間に燃焼室26を形成してシリンダブロック24に結合されるシリンダヘッド27と、シリンダブロック24と反対側でシリンダヘッド27に結合されるヘッドカバー28とを備え、ピストン25はコネクティングロッド29およびクランクピン30を介してクランクシャフト20に連結される。而して該エンジンEは、そのシリンダ23の軸線を略水平となるまで前方に傾斜させた姿勢で後輪WR の側方に配置される。
【0012】シリンダヘッド27の上部には、燃焼室26に臨ませる点火プラグ31が着脱可能に取付けられるとともに、吸気弁32により燃焼室26への連通・遮断を切換えられる吸気通路33を形成するインレットパイプ34が一体に設けられる。このインレットパイプ34は、パワーユニットPで固定的に支持されてシリンダヘッド27の上方に配置される気化器35の出口管36にフランジ結合されるものであり、吸気通路33は、気化器35側に開いた略U字状の縦断面形状を有してインレットパイプ34内に形成される。また気化器35の入口はエアクリーナ37に接続される。さらにシリンダヘッド27の下部には、排気弁38により燃焼室26への連通・遮断を切換えられる排気通路39が形成され、この排気通路39には図示しない排気管が接続される。
【0013】シリンダヘッド27と、該シリンダヘッド27に結合されるカムホルダ40との間にカムシャフト41が回転自在に支承されており、該カムシャフト41には、吸気弁32を開閉駆動せしめる吸気カム42と、排気弁38を開閉駆動せしめる排気カム43とがそれぞれ一体に設けられる。
【0014】図4および図5を併せて参照して、シリンダヘッド27の上部には、インレットパイプ34に一体に連なるハンガ45が一体に設けられており、該ハンガ45は、後輪WR の左側に配置されているエンジンEのシリンダヘッド27から後輪WR の前方に位置するように延設される。一方、車体フレーム11は、パワーユニットPの前方位置で自動二輪車Vの幅方向に間隔をあけた一対のフレーム部11a,11aを有しており、これらのフレーム部11a,11aに前記ハンガ45が防振リンク46を介して連結される。
【0015】この防振リンク46は、中空円筒状の基部46aと、基部46aよりも小径の中空円筒状である先部46bと、基部46aおよび先部46bを一体に結合する一対のアーム46c,46cとから成るものである。而して基部46aは、車体フレーム11の両フレーム部11a,11aにそれぞれ設けられたブラケット47,47に横架固着される第1支持軸48に、ラバーブッシュ49,49を介して支承される。また先部46bには第2支持軸50が挿通され、先部46bから突出した第2支持軸50の両端部は、ハンガ45に設けられた一対のブラケット51,51にラバーブッシュ52,52を介して支承される。しかもハンガ45の車体フレーム11への連結位置、すなわち両ブラケット51,51間の中心位置は、自動二輪車Vの幅方向中心Cに関してエンジンEとは反対側に距離δだけずれて配置される。
【0016】防振リンク46の基部46aには、両アーム46c,46cとは反対側に突出する一対のストッパ53,53が固設されており、それらのストッパ53,53は先狭まりに形成される。一方、車体フレーム11の両フレーム部11a,11aには支持板54が固着されており、それらの支持板54に固着されて防振リンク46側に開放した一対の支持函55,55内にはストッパラバー56,56が設けられ、両ストッパ53,53の先端がそれらのストッパラバー56,56に差し込まれる。
【0017】このようなパワーユニットPの車体フレーム11への連結構造によれば、パワーユニットPは第2支持軸50の軸線まわりに揺動可能であり、また防振リンク46は、ラバーブッシュ49,49,52,52によりパワーユニットPからの振動を吸収しつつ第1支持軸48のまわりに揺動可能であり、その防振リンク46の揺動振動がストッパラバー56,56で減衰されて車体フレーム11側に伝わることになる。
【0018】再び図2に注目して、右クランクケース22の後方上部にはブラケット57が設けられており、懸架ばね18の下端部は、ラバーブッシュ58を介して該ブラケット57に連結される。
【0019】図6において、左クランクケース21に一体に設けられるケース部21aと、右クランクケース22に一体に設けられるケース部22aと、前記ケース部21aに結合されるミッションカバー62とでミッションケース61が構成され、このミッションケース61内には、定容量型の斜板式油圧ポンプ63と、該油圧ポンプ63との間に油圧閉回路を構成する可変容量型の斜板式油圧モータ64とを備える静油圧式無段変速機Mが収納される。
【0020】油圧ポンプPは、右クランクケース22のケース部22aに回転自在に支承される入力筒軸71と、該入力筒軸71に相対回転自在に支承されるポンプシリンダ146と、該ポンプシリンダ146にその回転軸線を囲むような環状配列で摺動自在に嵌合される複数のポンププランジャ147…と、各ポンププランジャ147…の外端に前面を係合、当接させるポンプ斜板148と、該ポンプ斜板148を入力筒軸71の軸線と直交する仮想トラニオン軸線O1 を中心にしてポンプシリンダ146の軸線に対し一定角度傾斜させた状態で支承するポンプ斜板ホルダ149とを備え、ポンプ斜板ホルダ149は入力筒軸71に一体に形成されている。
【0021】油圧モータ64は、ポンプシリンダ146に同軸に結合されるモータシリンダ150と、モータシリンダ150にその回転軸線を囲む環状配列で摺動可能に嵌合される複数のモータプランジャ151…と、各モータプランジャ151…の外端に前面を係合、当接させるモータ斜板152と、該モータ斜板152を支承するモータ斜板ホルダ153と、該モータ斜板ホルダ153の背面を支承するモータ斜板アンカ154とを備える。モータ斜板ホルダ153およびモータ斜板アンカ154の対向当接面はモータシリンダ150の軸線とトラニオン軸線O2 との交点を中心とする球面状に形成され、モータ斜板ホルダ153は、トラニオン軸線O2 まわりの相対回動を可能としてモータ斜板アンカ154に支承される。
【0022】ポンプシリンダ146およびモータシリンダ150は一体に結合されてシリンダブロック145を構成するものであり、該シリンダブロック145には、入力筒軸71を同軸にかつ相対回転自在に貫通する出力軸72が結合される。またシリンダブロック145の外周には、該シリンダブロック145との間に環状の外側油路156を形成するリング155が結合され、シリンダブロック145および出力軸72間には外側油路156と同軸の内側油路157が形成される。
【0023】ポンプシリンダ146には、ポンププランジャ147の吸入作動に応じた内側油路157からの作動油吸入ならびにポンププランジャ147の吐出作動に応じた外側油路156への作動油吐出を司るために、各ポンププランジャ147…に対応して放射状に配置された複数のスプール型の第1分配弁158…が摺動可能に嵌合される。またモータシリンダ150には、モータプランジャ151の膨張作動に伴なう外側油路156からの作動油供給ならびにモータプランジャ151の収縮作動に伴なう内側油路157への作動油排出を司るために、各モータプランジャ151…に対応して放射状に配置された複数のスプール型の第2分配弁159…が摺動可能に嵌合される。
【0024】第1分配弁158…の外端にはそれら158…を囲む第1偏心輪161が、また第2分配弁159…の外端にはそれら159…を囲む第2偏心輪162が、それぞれボールベアリグ163,164を介して係合される。第1偏心輪161は入力筒軸71に結合され、仮想トラニオン軸線O1 に沿ってシリンダブロック145の中心から所定距離だけ偏心して配置される。また第2偏心輪162は、右クランクケース22のケース部22aに結合され、仮想トラニオン軸線O2 に沿ってシリンダブロック145の中心から所定距離だけ偏心して配置される。而してモータ斜板アンカ154は第2偏心輪162に結合されている。
【0025】このような静油圧式無段変速機Mでは、ポンプシリンダ146が吐出行程のポンププランジャ147を介してポンプ斜板148から受ける反動トルクと、モータシリンダ150が膨張行程のモータプランジャ151を介してモータ斜板152から受ける反動トルクとの和によってシリンダブロック145が回転せしめられる。しかも入力筒軸71に対する出力軸72の変速比は油圧モータ64の容量によって変化するものであり、その油圧モータ64の容量はモータプランジャ151のストロークにより決定されるので、モータ斜板152の傾斜角度を無段階に変化させることにより上記変速比を無段階に変化させることができる。
【0026】右クランクケース22には、その外面との間に伝動ギヤ室65を形成する右クランクケースカバー66が結合され、該右クランクケースカバー66の中央部内面には支持板67が結合される。而して自動二輪車Vの前後方向に沿ってクランクシャフト20の軸線CC よりも後方側に回転軸線CW を有するようにして車軸68が右クランクケースカバー66および支持板67で回転自在に支承され、タイヤ70とともに後輪WR を構成するホィール69が車軸68の右クランクケースカバー66からの突出端部に固着される。しかもホィール69には、図示しないドラムブレーキが装着されるものであり、そのドラムブレーキの内方側が右クランクケースカバー66で覆われる。
【0027】静油圧式無段変速機Mにおける入力筒軸71すなわち油圧ポンプ63の入力端は、右クランクケース22のケース部22aを回転自在に貫通して伝動ギヤ室65内に突出され、また静油圧式無段変速機Mにおける出力軸72すなわち油圧モータ64の出力端は、前記入力軸71を同軸にかつ相対回転自在に貫通して前記伝動ギヤ室65内に突出される。しかも入力軸71および出力軸72の回転軸線CM は、クランクシャフト20の軸線CC と平行であり、自動二輪車Vの前後方向に沿って後輪WR の回転軸線CW よりも後方側に配置される。したがって後輪WR の回転軸線CW はクランクシャフト20の回転軸線CC および変速機Mの回転軸線CM 間に挟まれた配置となる。
【0028】図7を併せて参照して、伝動ギヤ室65内においてクランクシャフト20に結合されたギヤ73は静油圧式無段変速機Mの入力軸71に固定されたギヤ74に噛合される。また静油圧式無段変速機Mの出力軸72に固定されたギヤ75は、右クランクケースカバー66および支持板67で回転自在に支承された軸79の伝動ギヤ室65側端部に固設されたギヤ76に噛合され、右クランクケースカバー66および支持板67間で軸79に固設されたギヤ77が、後輪WR の車軸68に固設されたギヤ78に噛合される。
【0029】図8および図9を併せて参照して、左クランクケース21には左クランクケースカバー83が結合され、クランクシャフト20の周囲で該左クランクケース21およびミッションケース61と左クランクケースカバー83との間に発電機室81が形成され、ミッションケース61におけるミッションカバー62および左クランクケース21と左クランクケースカバー83との間に比較的狭いブリーザ通路82が形成される。発電機室81には、クランクシャフト20に固定されるロータ85と、左クランクケースカバー83に固定されるステータ86とを有する発電機84が収納される。また左クランクケース21の発電機室81に臨む部分にはブリーザ孔21bが設けられる。
【0030】左クランクケースカバー83には、発電機室81およびブリーザ通路82間を区画するようにしてミッションカバー62の側面に対向する邪魔板83aが一体に設けられており、発電機室81内に入ったブローバイガスは、図2の破線矢印で示すように、邪魔板83aおよびミッションカバー62間の間隙からブリーザ通路82に導かれる。
【0031】一方、ミッションケース61の上方で左クランクケース21の上部には、ミッションケース61および左クランクケースカバー83と共働してブリーザ主室88を形成するための凹部87が設けられており、該ブリーザ主室88はブリーザ通路82の上部に連通する。また左クランクケース21の上部にはブリーザ主室88に下端を開口させたブリーザパイプ89が接続されており、このブリーザパイプ89はエアクリーナ37に連通される。さらに左クランクケース21およびミッションカバー62には、発電機室81からのブリーザガスがブリーザ主室88に直接吹き付けられるのを阻止するための壁90,91が設けられる。
【0032】而して発電機室81からのブリーザガスは、ブリーザ通路82内を図9の破線矢印で示すようにブリーザ主室88側に流れるが、その際、左クランクケースカバー83の内面およびミッションカバー62の外面に衝突しながらブリーザ主室88側に流れることになり、ブリーザガスに同伴したミストは、その衝突によりブリーザガスから分離され、図9の実線矢印で示すようにミッションカバー62の外面に沿って下方に流れ落ちることになる。
【0033】このような構成によると、ブリーザ通路82およびブリーザ主室88を左クランクケース21、左クランクケースカバー83およびミッションカバー62で形成することができる。したがって両クランクケース間にブリーザ室を形成するとともに両クランクケース間に挟まれるガスケットに連通孔を形成することによりラビリンス構造を得るようにしたものに比べると、ブリーザ用として専用の部品を用いることがなく部品点数を低減可能となるとともに、ガスケットを液体ガスケットとして組立の自動化を図ることが可能となる。
【0034】ところで、左、右クランクケース21,22の下部および左クランクケースカバー83の下部は、オイルパン92として機能するものであり、該オイルパン92内には、図9で示す液面Lまで潤滑油が貯溜され、ブリーザ通路82でブリーザガスから分離されたミストは、ミッションカバー62の外面に沿ってオイルパン92に落下することになる。また左クランクケースカバー83には、液面Lを検出するためのレベルゲージ93が挿脱可能に取付けられる。
【0035】シリンダブロック24、シリンダヘッド27およびヘッドカバー28には、発電機室81に通じて略水平方向に延びるカムチェーン室94が形成されており、発電機室81内において発電機84および左クランクケース21間でクランクシャフト20に固定された駆動プーリ95と、カムチェーン室94内でカムシャフト41に固定された従動プーリ96とに巻掛けられる無端状のカムチェーン97が、発電機室81およびカムチェーン室94に走行可能に収納される。
【0036】カムチェーン室94の底壁には油溜まり98が凹設されており、この油溜まり98に下端部を浸して上下に延びる油圧プッシュロッド99の上端が、カムチェーン97のうち駆動プーリ95および従動プーリ96間で下方側を走行する部分に下方から当接するテンショナ部材100に連接される。
【0037】図10を併せて参照して、油溜まり98は、シリンダヘッド27側に開放してシリンダブロック24の下部に設けられた凹部24aと、シリンダブロック24側に開放してシリンダヘッド27の下部に設けられた凹部27aとで形成されるものであり、オイルパン92よりも前方側上方位置に配置される。而してパワーユニットPは、その後部を上下に変位させるようにして揺動可能に車体フレーム11に連結されるものであり、パワーユニットPの揺動動作によりオイルパン92から油溜まり98に潤滑油が供給される。
【0038】油圧プッシュロッド99は、シリンダブロック24に螺着されて上方に延びる有底円筒状のハウジング101と、該ハウジング101の下端閉塞部との間に油室102を形成してハウジング101に摺動可能に嵌合される円筒状のロッド103と、該ロッド103の上端にスプリングピン104を介して結合された押圧部材105およびハウジング101の上端間に縮設されるばね106と、押圧ロッド103の下部に設けられるチェック弁107とを備え、ハウジング101には油溜まり98内の潤滑油を流通させる複数の連通孔108が設けられ、ロッド103にもそれらの連通孔108に連通する複数の連通孔109が設けられる。
【0039】ハウジング101は、その上端が油溜まり98の油面よりも上方に突出するようにしてシリンダブロック24の下部に螺合されるものであり、ハウジング101およびシリンダブロック24間にはシール部材111が介装される。
【0040】チェック弁107は、中央部に弁孔112を有して皿状に形成される弁座部材113と、該弁座部材113をロッド103との間に挟持するようにしてロッド103の下端部に圧入、固定されるとともに弁座部材113との間に弁室114を形成する皿状のキャップ115と、弁孔112を閉じることを可能として弁室114に収納される球状の弁体116とを備え、キャップ115には、弁体116で閉じることを不能として弁室114を油室102に常時連通させるスリット117が設けられる。
【0041】かかるチェック弁107は、ばね106のばね力によりロッド103が上方に移動したときには油室102への潤滑油の流入を許容するが、ロッド103が下方に押圧されたときには弁孔112を閉じて油室102をロック状態とするものである。
【0042】テンショナ部材100は、カムチェーン97のうち駆動プーリ95および従動プーリ96間で下方側を走行する部分に比較的長い距離にわたって下方から当接するように弓形に形成されており、このテンショナ部材100の一端は、クランクシャフト20と平行な支軸118によって左クランクケース21に揺動可能に支承される。また該テンショナ部材100の下部に上記油圧プッシュロッド99の押圧部材105が当接される。
【0043】このような構成によれば、テンショナ部材100は油圧プッシュロッド99のばね106によりカムチェーン97に緊張力を与えるように押し上げられ、カムチェーン97からの反力は、チェック弁107の働きによって油室102がロック状態となることにより、ロッド103が踏ん張ることによって油圧プッシュロッド99で受けられることになる。
【0044】特に図3および図8に注目して、左、右クランクケース21,22の前方下部には、クランクシャフト20と平行な軸線を有するキックスピンドル120が回転自在に支承されており、左クランクケース21から外側方に突出したキックスピンドル120の端部には、前方に延びるキックペダル121が固着される。また左、右クランクケース21,22間でキックスピンドル120にはセクタギヤであるキックスピンドルギヤ122が固着されており、このキックスピンドルギヤ122を含むギヤ列123が始動クラッチ124を介してクランクシャフト20に連結される。さらに左クランクケース21およびキックスピンドルギヤ122間にはねじりばね125が設けられており、このねじりばね125は、キックペダル121の踏込み操作を終了したときに該キックペダル121すなわちキックスピンドル120を元の位置に戻すばね力を発揮する。
【0045】ところで、シリンダブロック24およびシリンダヘッド27には、左、右クランクケース21,21間の下部に通じるギヤ室126がシリンダ23の軸線方向すなわちほぼ水平方向に延びて形成されており、キックスピンドル120は、そのキックスピンドルギヤ122の一部をギヤ室126に作動可能に収納させるようにして、左、右クランクケース21,22の前方下部に配設されている。
【0046】またギヤ列123は、キックスピンドルギヤ122と、該キックスピンドルギヤ122に噛合するギヤ127と、該ギヤ127と同軸であるギヤ128とで構成されるものであり、両ギヤ127,128は一体に形成され、左、右クランクケース21,22間に設けられた軸129に回転自在に支承される。しかも該ギヤ列123は、シリンダ23の軸線にほぼ沿って配列される。
【0047】始動クラッチ124は、左クランクケース21および右クランクケースカバー66間に架設されるとともに右クランクケースカバー66側の端部に鍔部130aを有する支軸130と、鍔部130aに対向するストッパ131aを有するとともに軸方向の摺動を可能として該支軸130に支承される摺動軸131と、該摺動軸131の左クランクケース21側の端部に設けられるとともにギヤ列123のギヤ128に噛合されるギヤ132と、ストッパ131aを鍔部130aから離反させる方向のばね力を発揮して支軸130および摺動軸131間に縮設されるばね133と、右クランクケース22に基端が係止されて摺動軸131に摩擦係合される挟みばね134と、摺動軸131のストッパ131a側寄りに固着されるギヤ135と、該ギヤ135との噛合を可能としてクランクシャフト20に結合されるギヤ136とを備える。
【0048】ギヤ列123のギヤ128、ならびに摺動軸131に設けられたギヤ132はヘリカルギヤであり、ギヤ列123からの回転動力が摺動軸131に与えられたときには、挟みばね134によって摺動軸131に回転抵抗が与えられていることにより、摺動軸131は、ばね133のばね力に抗してストッパ131aを鍔部130aに近接させる方向に摺動し、この摺動軸131の摺動動作に伴ってギヤ135がクランクシャフト20のギヤ136に噛合することによりクランクシャフト20に回転動力が伝達されることになる。
【0049】ところで、右クランクケース22には、スタータモータ137が取付けられており、このスタータモータ137の出力軸に設けられた出力ギヤ138は、ギヤ139、該ギヤ139と一体のギヤ140、ならびにオーバーランニングクラッチ141を介してクランクシャフト20に連結される。
【0050】したがってキックペダル121の踏込み操作によるエンジンEの始動、ならびにスタータモータ137の作動によるエンジンEの始動のいずれかを選択可能である。
【0051】次にこの実施例の作用について説明すると、パワーユニットPは、静油圧式無段変速機Mの出力軸72が自動二輪車Vの前後方向に沿って後輪WR の回転軸線CW よりも後方に配置されるとともにエンジンEのクランクシャフト20が後輪WR の回転軸線CW よりも前方に配置されるようにして、後輪WR の側方に配置されるものである。したがって、後輪WR の側方にパワーユニットPをコンパクトに纏めることができ、変速機として静油圧式無段変速機変速機Mを用いることによってパワーユニットPをより小型化することができる。また後輪WR の側方にパワーユニットPが在ることにより、自動二輪車Vの走行風、ならびに後輪WR によって生じる風によりパワーユニットPの効果的な冷却が可能となる。
【0052】しかもエンジンEのシリンダヘッド27には、後輪WR の前方に位置するようにしてハンガ45が設けられ、該ハンガ45が防振リンク46を介して車体フレーム11に連結されている。したがって、エンジンEのシリンダブロック24にリヤフォークとしての機能を持たせ、エンジンEの全長を有効利用することが可能であり、それによりパワーユニットPをより小型化することが可能である。またシリンダヘッド27にハンガ45が設けられることによりシリンダヘッド27の表面積を増大し、冷却性能をより向上することができる。
【0053】またハンガ45は、吸気通路33を形成してシリンダヘッド27に一体に設けられたインレットパイプ34に一体に連設されるものであり、気化器35およびエンジンE間を結ぶ別体のインレットパイプが不要となり、部品点数の低減に寄与することができるとともに、インレットパイプ34によりハンガ45のシリンダヘッド27への連設部分の強度を向上することができる。
【0054】さらにハンガ45は、自動二輪車Vの幅方向中心Cに関してエンジンEとは反対側に距離δだけずれた位置で車体フレーム11に連結されるものであり、後輪WR の側方に配置されたパワーユニットPの捩れによって発生する車体の傾きによる直進安定性の乱れを、上記ずれによるモーメントの発生で打ち消して操縦安定性の向上を図るとともにハンガ45の剛性を大きく設定することを不要として該ハンガ45の小型化および軽量化を図ることができる。
【0055】ところで、後輪WR の側方に配置されたパワーユニットPにおけるエンジンEは、そのクランクシャフト20の軸線CC を後輪WR の軸線CW よりも前方位置とするとともにシリンダ23の軸線を前方に傾斜させた姿勢に在るものであり、そのようなエンジンEにおける左、右クランクケース21,22の前方下部にキックスピンドル120が配設され、キックスピンドルギヤ122を含むギヤ列123がシリンダ23の軸線にほぼ沿って配列され、シリンダブロック24には、キックスピンドルギヤ122の一部を作動可能に収納させるギヤ室126が設けられている。したがってエンジンEが後輪WR の側方に配置されていても、キックスピンドル120を極力前方に配置することが可能となり、エンジンEの大型化を回避した上で、キック始動性を向上することが可能となる。
【0056】さらにシリンダ23の軸線に沿って略水平に延びるカムチェーン室94内を走行するカムチェーン97のうち、駆動プーリ95および従動プーリ96間で下方側を走行する部分にテンショナ部材100が下方から当接され、該テンショナ部材100が油圧プッシュロッド99により上方に押圧されている。このため、リンク機構等の複雑な構成が不要となり、カムチェーン97を緊張させるための機構の部品点数を比較的少なくし、各部のがたによる騒音の発生を極力抑制するとともに前記機構の重量低減を図ることが可能となり、単純構成によるエンジンEの小型化も可能となる。
【0057】また油圧プッシュロッド99は、カムチェーン室94の底壁に凹設された油溜まり98に下端部が浸されているものであり、油溜まり98に潤滑油が良く溜まるようにして油圧プッシュロッド99の作動性および耐久性を向上することができる。しかも油溜まり98は、シリンダヘッド27側に開放してシリンダブロック24の下部に設けられた凹部24aと、シリンダブロック24側に開放してシリンダヘッド27の下部に設けられた凹部27aとで形成されるものである。したがってシリンダブロック24およびシリンダヘッド27の結合によって油溜まり98が形成されることになり、凹部24a,27aが鋳造成形されるシリンダブロック24およびシリンダヘッド27の型抜き方向に沿っていることにより、シリンダブロック24およびシリンダヘッド27の鋳造成形後の後加工を不要として油溜まり98の形成が可能であるとともに、カムチェーン室94の長手方向に沿う凹部24a,27aの深さを自由に設定可能であることにより油溜まり98の容量を比較的自由に設定することができる。
【0058】さらにパワーユニットPの揺動に伴ってオイルパン92から油溜まり98に潤滑油を供給することができるので、組付後の油溜まり98への初期給油および運転中の給油をパワーユニットPの揺動により行なうことができ、特に油溜まり98に給油することが不要である。
【0059】以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。
【0060】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、自動二輪車の前後方向に沿って後輪の回転軸線よりも前方にクランクシャフトの軸線を有するエンジンが、そのシリンダブロックに設けられたシリンダの軸線を前方に傾斜させた姿勢で後輪の側方に配置され、キックスピンドルは、シリンダブロックに設けられたギヤ室内にキックスピンドルギヤの一部を作動可能に収納させてクランクケースの前部に配設され、ギヤ列がシリンダの軸線にほぼ沿って配列されるので、エンジンが後輪の側方に配置されていても、キックスピンドルを極力前方に配置することが可能となり、エンジンの大型化を回避した上で、始動操作性を向上することができる。
【出願人】 【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【出願日】 平成7年(1995)8月9日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】落合 健 (外1名)
【公開番号】 特開平9−49475
【公開日】 平成9年(1997)2月18日
【出願番号】 特願平7−203011