トップ :: F 機械工学 照明 加熱 武器 爆破 :: F02 燃焼機関;風力原動機,ばね原動機,重力原動機;他類に属さない機械動力または反動推進力を発生するもの




【発明の名称】 スタータ
【発明者】 【氏名】荒木 剛志

【目的】
【構成】
【特許請求の範囲】
【請求項1】スタータモータに駆動される出力軸と、エンジンのリングギヤと噛み合うピニオンギヤを有し、前記出力軸のヘリカルスプラインに係合すると共に、前記ヘリカルスプラインに沿って軸方向に移動可能な移動筒部材と、この移動筒部材に当接して前記移動筒部材の回転を規制する回転規制部を有し、この回転規制部で前記移動筒部材の回転を規制することにより、前記スタータモータの回転力と前記ヘリカルスプラインの作用によって前記移動筒部材を前記リングギヤ方向へ移動させる規制部材と、前記移動筒部材の外径よりも大きい開口部を有する第1の支持枠と、前記規制部材よりも前記スタータモータ側に設けられた第2の支持枠とを備え、前記規制部材を前記出力軸に交差する交差面に沿って、前記規制部材の回転規制部を避けて前記第1の支持枠と前記第2の支持枠とで挟み込み、前記規制部材が、前記第1の支持枠と前記第2の支持枠との間で、前記交差面に沿った交差方向に摺動自在であることを特徴とするスタータ。
【請求項2】請求項1に記載のスタータにおいて、前記規制部材は、弾性変形可能であり、前記ピニオンギヤの回動に伴って少なくとも前記ピニオンギヤの1/2ピッチ以上回動可能であることを特徴とするスタータ。
【請求項3】請求項1または請求項2に記載のスタータにおいて、前記第1の支持枠の開口部は、前記規制部材の外径よりも小さいことを特徴とするスタータ。
【請求項4】請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のスタータにおいて、前記第1の支持枠または前記第2の支持枠には、前記規制部材の回転規制部が前記移動筒部材に当接した際、前記移動筒部材から受ける反力方向に前記規制部材が移動するのを規制する規制部を有することを特徴とするスタータ。
【請求項5】請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のスタータにおいて、前記第2の支持枠は、前記移動筒部材の反リングギヤ側で前記出力軸を軸支する軸受部材を有し、この軸受部材の外周側に、前記第1の支持枠と前記第2の支持枠で挟み込まれる規制部材の回転規制部を支持する支持部が収納されていることを特徴とするスタータ。
【請求項6】請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のスタータにおいて、前記第1の支持枠は、前記規制部材を前記第2の支持枠との間で挟持する環状の挿入板を有し、この挿入板は、前記移動筒部材の外径よりも大きく、前記規制部材の外径よりも小さい開口部を有することを特徴とするスタータ。
【請求項7】請求項4に記載のスタータにおいて、前記規制部は、前記第1の支持枠または前記第2の支持枠に設けられた凹部であり、この凹部には前記出力軸の軸方向に並行な少なくとも2面からなる内壁部を有し、この内壁部で前記規制部材の外周に当接することを特徴とするスタータ。
【請求項8】請求項6に記載のスタータにおいて、前記挿入板は、前記出力軸の軸方向に略並行な少なくとも2面で前記規制部材の外周に当接する内壁部を有することを特徴とするスタータ。
【請求項9】請求項1ないし請求項8のいずれかに記載のスタータにおいて、前記第1の支持枠は、前記出力軸を軸支するハウジングであることを特徴とするスタータ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、エンジンを始動させるスタータに関するもので、特にピニオンの回転をエンジンのリングギヤに伝達することによりエンジンを始動させるスタータに係わる。
【0002】
【従来の技術】従来より、例えば特開昭50−18915号公報においては、直流モータに駆動される出力軸にヘリカルスプラインによって係合されるピニオンの回転を、規制部材により規制することでヘリカルスプラインの作用によりピニオンをエンジンのリングギヤに噛み合わせてエンジンを始動させるスタータが記載されている。
【0003】このスタータの規制部材は、ハウジングの径方向に形成された案内孔に摺動自在に配置された丸棒であり、この丸棒には、案内孔に対して直角方向に開口部が形成され、この開口部へアングルレバーの一方の脚部が嵌まり込まれている。アングルレバーは、ハウジングの支承部に出力軸に直交する面内において旋回できるように取り付けられている。また、アングルレバーの他方の脚部は、ハウジング内の電磁石の磁極に対向しており、電磁石が励磁されるとアングルレバーの他方の脚部が吸引されて、ハウジングの支承部を中心にアングルレバーが回動することによって、アングルレバーの一方の脚部がハウジングの案内孔に配置された丸棒を、ねじスリーブ上に設けられた止め歯に当接させる。
【0004】なお、ねじスリーブは、ピニオンギヤを有するオーバーランニングクラッチに接続され、ねじスリーブの止め歯に丸棒を当接させることによって、オーバーランニングクラッチが出力軸のヘリカルスプラインの作用によりリングギヤ側に移動し、ピニオンギヤ側リングギヤに噛み合う。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のスタータでは、ハウジング内に丸棒、アングルレバー、出力軸上に配置されたピニオンギヤを有するオーバーランニングクラッチ、ねじスリーブ等を組み付ける方法を考えると、ハウジングの案内孔に径方向側から丸棒を挿入し、ハウジングの軸方向側からアングルレバーを挿入し、このアングルレバーをねじで固定し組み付けた後に、ピニオンギヤを有するオーバーランニングクラッチ、ネジスリーブ等を予め組み付けた出力軸をモータ側から挿入する時、ハウジングに組み付けられた丸棒およびこの丸棒に嵌合したアングルレバーに、オーバーランニングクラッチが干渉しないように挿入しなければ、組み付けができず、非常に組付け性が悪い。特に、規制部材、つまり丸棒、アングルレバー、このアングルレバーを固定するねじをハウジング内に組み付ける組付作業が極めて困難であり、製造コストを増加する恐れがある。
【0006】そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、規制部材の組付作業を簡素化することにより製造コストを低減することが可能なスタータを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために請求項1に記載の手段を採用することができる。この手段によると、規制部材を、出力軸に交差する交差面に沿って、規制部材の回転規制部を避けて第1の支持枠と第2の支持枠との間に挟む構成にすることによって、第2の支持枠、規制部材、第1の支持枠の順番で出力軸の軸方向側、すなわち、一方向からのみに順次重ねて行くだけで、移動筒部材を規制する規制部材を容易に組み付けることができ、スタータの製造コストを低減することができる。
【0008】請求項2に記載の手段によれば、規制部材は、弾性変形可能であり、ピニオンギヤの回動に伴って少なくともピニオンギヤの1/2ピッチ以上回動可能であるため、規制部材に衝撃的な移動筒部材の回転方向の荷重および軸方向荷重が加わっても、規制部材が撓み、2つの支持枠に加わる力が軽減される。
【0009】また、ピニオンギヤがリングギヤに噛み合う際に、移動筒部材のピニオンギヤの歯筋がリングギヤの歯筋と合わず端面同志が当接し、噛み合わないことがあるが、この時、スタータモータの回転によって、規制部材がピニオンギヤを有する移動筒部材と共に回動するので、ピニオンギヤの歯筋とリングギヤの歯筋を合わせることができ、移動筒部材が移動可能となって噛み合いが完了される。
【0010】請求項3に記載の手段によれば、第1の支持枠と第2の支持枠との間で規制部材を出力軸に対して交差方向に摺動自在に支持できる。請求項4に記載の手段によれば、規制部材に加わる回転方向の反力を第1の支持枠または第2の支持枠の規制部で強固に受けることができるので、規制部材の弾性変形による反発力を移動筒部材に確実に付与することができ、ピニオンギヤとリングギヤとの噛み合い性を向上できる。
【0011】請求項5に記載の手段によれば、第2の支持枠は、移動筒部材の反リングギヤ側で出力軸を軸支する軸受部材を有し、この軸受部材の外周側に、規制部材の回転規制部を支持する支持部が収納されているので、規制部材の支持部を挟持する第1の支持枠もそのスペースに配置することが可能となり、スタータの軸方向の長さを短縮できる。
【0012】請求項6に記載の手段によれば、仮に、規制部材の外径が移動筒部材の外径と差がなくて、第1の支持枠で、規制部材を軸方向から直接支持できない場合でも、挿入板を介して、第1の支持枠と第2の支持枠との間で規制部材を出力軸に対して交差方向に摺動自在に支持できる。
【0013】請求項7に記載の手段によれば、規制部材が強い力で移動筒部材の回転を止める際に、規制部材に加わる回転方向の力を、第1の支持枠または第2の支持枠に設けられた内壁部で、強固に受けることができる。
【0014】請求項8に記載の手段によれば、規制部材が強い力で移動筒部材の回転を止める際に、規制部材に加わる回転方向の力を環状の挿入板の内壁部で強固に受けることができるので、第1、第2の支持枠および挿入板の耐久性を向上することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】次に、この発明のスタータを実施例に基づいて説明する。
【0016】〔第1実施例の構成〕図1ないし図6はこの発明の第1実施例を示したもので、図1はスタータの主要部を示した図で、図2および図3はスタータのピニオン規制装置の主要部を示した図で、図4ないし図6はピニオン規制部材の支持構造を示した図である。
【0017】スタータ1は、エンジン(図示せず)を始動させるエンジン始動装置であって、バッテリ(図示せず)を電源とする直流モータ(本発明のスタータモータ)2と、この直流モータ2により回転駆動される出力軸3と、この出力軸3の外周に回動自在に取り付けられたピニオン(本発明の移動筒部材)4と、このピニオン4の回転を止めるピニオン規制装置5と、ピニオン4を移動自在に収容するドライブハウジング(本発明の第1の支持枠)6と、このドライブハウジング6と直流モータ2との間に配されたセンターケース(本発明の第2の支持枠)7と、直流モータ2の通電電流をオン、オフするマグネットスイッチ(図示せず)を備えている。
【0018】直流モータ2は、回転するアーマチャ、磁界を作るフィールドコイル、およびアーマチャに電流を流すブラシ(いずれも図示せず)等から構成されている。なお、フィールドコイルは、ヨーク11の内周に取り付けられたポールコア(図示せず)に直接巻回されている。なお、フィールドコイルは永久磁石としても良い。
【0019】また、直流モータ2のアーマチャシャフト(図示せず)と出力軸3との間には、動力伝達手段としてのオーバーランニングクラッチ(図示せず)が装着されている。オーバーランニングクラッチは、エンジンの回転からアーマチャのオーバーランによる破損を防止するためのものである。
【0020】出力軸3は、直流モータ2のアーマチャシャフトにオーバーランニングクラッチを介して連結されている。この出力軸3の中央部の外周には、ヘリカルスプライン12が形成されている。この出力軸3の先端側は、ドライブハウジング6に軸受13を介して回転自在に支持され、出力軸3の後端側はセンターケース7に軸受14を介して回転自在に支持されている。
【0021】そして、出力軸3のヘリカルスプライン12よりも先端側の外周には、ピニオン4の軸方向の先端側への移動を規制する係止手段としてのリング状のストッパ15が固定されている。また、出力軸3のヘリカルスプライン12よりも後端側の外周には、出力軸3の軸方向の後端側への移動を規制する係止手段としてのC字状のストッパ(C形クリップ)16が固定されている。C形クリップ16とセンターケース7との間には、円環板形状のワッシャ17が配されている。
【0022】次に、ピニオン4を図1ないし図3に基づいて説明する。このピニオン4は、円筒形状の金属材よりなる。そして、ピニオン4の外周には、エンジンのリングギヤ10と噛み合うピニオンギヤ21および多数の爪状部22が一体的に形成されている。
【0023】ピニオンギヤ21は、多数の爪状部22よりもリングギヤ10側に設けられ、ピニオン4の外周に等間隔で形成された多数個(例えば9個)の波形状歯部よりなる。多数の爪状部22は、ピニオン4の外周に等間隔で周設され、ピニオン規制装置5に係止される被係止部である。また、ピニオン4の内周には、ヘリカルスプライン12に係合するピニオンヘリカルスプライン23が形成されている。
【0024】ピニオン4の先端面には、ピニオン4を初期位置(図1の位置)に戻す方向に付勢する付勢手段としてのリターンスプリング(コイルばね)24が取り付けられている。リターンスプリング24の先端はドライブハウジング6に摺接する円環板形状のワッシャ25に支持され、後端はピニオン4の先端面に摺接する円環板形状のワッシャ26に支持されている。また、ピニオン4の後端面には、円環板形状のワッシャ27が装着されている。
【0025】次に、ピニオン規制装置5を図1ないし図5に基づいて説明する。このピニオン規制装置5は、マグネットスイッチの作動により往復方向に変位させられる紐状部材31、およびピニオン4の回転を規制するピニオン規制部材(本発明の規制部材)9等から構成されている。紐状部材31は、コロ受け32内に回動自在に支持されたコロ(軸)33により滑動自在に支持され、マグネットスイッチがオンされるとピニオン規制部材9を図1において図示下方に移動させる駆動伝達手段である。
【0026】ピニオン規制部材9は、弾性変形が可能で強靱な高炭素鋼線(例えば線径がφ2mm〜φ3mm)よりなり、紐状部材31に連結された短腕部34、この短腕部34の端部より内側に巻回された渦巻状部(本発明の支持部)35、この渦巻状部35の端部より出力軸3の軸方向に並行となるように延長された長腕部36等より構成されている。短腕部34は、渦巻状部35の下端部より出力軸3の軸方向に並行となるように延長されている。
【0027】渦巻状部35は、センターケース7内で出力軸3の軸方向に対して垂直方向に摺動する2個の摺動部37、38を有し、最小内径部分はピニオン4の外径よりも大きい。長腕部36は、ピニオン4の外周に形成された多数の爪状部22のうちの上側に位置する爪状部22に係合した際に、ピニオン4の回転方向の運動のみを止める回転規制部(係止部)である。
【0028】なお、ピニオン規制部材9の長腕部36には、コイルスプリング(図示せず)の一端が係合し、ピニオン規制部材9がピニオン4の外周から径方向に遠ざかるように付勢されている。また、コイルスプリングの他端は、センターケース7の突起(図示せず)に係合している。
【0029】次に、ピニオン規制部材9の支持構造を図1、図4ないし図6に基づいて説明する。先ず、ドライブハウジング6を図に基づいて説明する。このドライブハウジング6は、例えばアルミニウムダイカストにより一体成形され、ピニオン規制部材9を出力軸3の軸方向と並行な方向(以下軸方向と言う)から支持する第1の支持手段である。
【0030】ドライブハウジング6は、ピニオン規制部材9よりも出力軸3の先端側、つまりリングギヤ10側に配されている。ドライブハウジング6の内部には、ピニオン4を軸方向に移動自在に収容するギヤ室(本発明の開口部)41が形成されている。このギヤ室41は、内径がピニオン4の多数の爪状部(最大外径部分)22の外径よりも大きく、ピニオン規制部材9の渦巻状部35の外径よりも小さい。
【0031】また、ドライブハウジング6は、センターケース7に軸方向で当接した状態でセンターケース7が嵌め合わされる嵌合部42の端面が、ピニオン規制部材9の渦巻状部35の最大外径部分に軸方向で当接する当接部(第1当接部)43となる。この当接部43は、センターケース7との間でピニオン規制部材9の渦巻状部35を挟持する第1挟持部(第1支持部)として働く。そして、ドライブハウジング6のセンターケース7側の下部には、すなわち、図6に示したように、ギヤ室41の下部には、内部をピニオン規制装置5の紐状部材31が挿通する方形形状の挿通穴44が形成されている。
【0032】さらに、ギヤ室41と挿通穴44との間には、ギヤ室41と挿通穴44とを連通すると共に、内部をピニオン規制装置5の紐状部材31が挿通する挿通穴45が形成されている。この挿通穴45内には、ピニオン規制部材9の短腕部34が出力軸3の軸方向に対して垂直方向に摺動自在に支持されている。なお、ドライブハウジング6の下部(挿通穴45の内壁面)には、ピニオン規制部材9の短腕部34の回転方向の荷重を受ける支持壁46が形成されている。この支持壁46は、ピニオン規制部材9の短腕部34の回転を規制する回転規制部でもある。
【0033】なお、ピニオン規制部材9は、出力軸3に交差する交差面(すなわち、ピニオン規制部材9が出力軸3の軸方向に対して垂直方向に摺動する摺動方向に沿った面が交差面)に沿って、ピニオン規制部材9の長腕部36を避けてドライブハウジング6と後述するセンターケース7とで挟み込まれ、ピニオン規制部材9がドライブハウジング6とセンターケース7との間で、前記交差面に沿って交差方向(すなわち、出力軸3の軸方向に対して垂直方向)に摺動自在に支持されている。なお、ピニオン規制部材9の長腕部36は、ピニオン4の回動に伴って少なくともピニオンギヤ21の1/2ピッチ以上回動可能である。
【0034】次に、センターケース7を図1、図4および図5に基づいて説明する。このセンターケース7は、例えばアルミニウムダイカストにより一体成形され、ピニオン規制部材9をドライブハウジング6との間に挟み込んで軸方向から支持する第2の支持手段である。センターケース7は、ピニオン規制部材9よりも出力軸3の後端側、つまり直流モータ2側に配されている。センターケース7の内部には、ピニオン規制部材9を出力軸3の軸方向に対して垂直方向に摺動自在に収容する収容室51が形成されている。
【0035】この収容室51は、内径がピニオン4の多数の爪状部22の外径およびピニオン規制部材9の渦巻状部35の外径よりも大きい。そして、収容室51の中央部には、出力軸3の後端側を軸受14を介して回転自在に支持する円筒形状の支持壁52が形成されている。また、収容室51の底壁面は、ピニオン規制部材9の渦巻状部35に軸方向で当接する当接部(第2当接部)53となる。そして、収容室51の壁面は当接部54となり、この当接部54は、ドライブハウジング6の当接部43との間でピニオン規制部材9の渦巻状部35を挟持する第2挟持部(第2支持部)として働く。
【0036】また、収容室51の内壁面には、ピニオン規制部材9の渦巻状部35の2個の摺動部37、38が出力軸3の軸方向に対して垂直方向にそれぞれ摺動する2個の摺動部(本発明の内壁部、規制部)55、56が設けられている。これらの摺動部55、56は、出力軸3の略軸方向に並行な平坦面(2面)である。また、これらの摺動部55、56はピニオン規制部材9の渦巻状部35の回転を規制する回転規制部でもある。なお、57は紐状部材31のコロ受け32との干渉を避けるための凹部である。なお、センターケース7は、ピニオン4の反リングギヤ側で出力軸3を軸支する軸受14を有し、この軸受14の外周側に、ピニオン規制部材9の渦巻状部35が収納されている。
【0037】〔第1実施例の組付方法〕次に、この実施例のピニオン4およびピニオン規制部材9の周辺部品の組付手順の概要を図1ないし図6に基づいて簡単に説明する。
【0038】センターケース7の支持壁52の内周に出力軸3を挿入した状態で、ピニオン規制部材9をセンターケース7の収容室51内に、図4に示したように収容する。そして、出力軸3のヘリカルスプライン12上にピニオン4を嵌め合わせた後に、出力軸3の外周にストッパ15を嵌着する。
【0039】そして、ドライブハウジング6をセンターケース7に組み付ける。すなわち、ドライブハウジング6の嵌合部42とセンターケース7とを嵌め合わせることにより、当接部43、54によってピニオン規制部材9が軸方向から強固に支持される。このとき、ピニオン規制部材9は、センターケース7の収容室51の摺動部55、56に対して出力軸3の軸方向に対して垂直方向にのみ摺動可能に保持される。
【0040】その他のピニオン4およびピニオン規制部材9の周辺部品である軸受13、14、C形クリップ16、ワッシャ17、リターンスプリング24、ワッシャ25〜27および紐状部材31等は上記手順の途中で適宜配置する。なお、ピニオン4およびピニオン規制部材9の周辺部品は、上記手順以外の組付手順を用いて組み付けても良い。
【0041】〔第1実施例の作用〕次に、この実施例のスタータ1のピニオン規制装置5の作用を図1ないし図6に基づいて簡単に説明する。
【0042】エンジンを始動する際に、乗員がキーをイグニッションスイッチに挿入してスタータ通電位置(START位置)に回すと、マグネットスイッチが作動して、紐状部材31がマグネットスイッチ側に引かれることによりピニオン規制部材9が図1ないし図3において図示下方に移動し、ピニオン規制部材9の長腕部36がピニオン4の後端側の外周の図示上側部分に形成された複数の爪状部22と噛み合う。
【0043】同時期に、マグネットスイッチの可動接点が固定接点に接触(接点が閉成)し、電源装置(バッテリ)から直流モータ2のフィールドコイルやアーマチャコイル(フィールド側が永久磁石の場合はアーマチャコイルのみ)に電流が供給され、直流モータ2のアーマチャシャフトが回転する。
【0044】アーマチャシャフトが回転することによりオーバーランニングクラッチ等の動力伝達手段を介して受け、図2に示した矢印方向に出力軸3が回転する。このとき、ピニオン4は、ピニオンヘリカルスプライン23を介して出力軸3から回転力を受けるが、ピニオン規制部材9により複数の爪状部22を介して回転が規制されている。このため、ヘリカルスプライン12およびピニオンヘリカルスプライン23の作用により、リターンスプリング24の弾性力に打ち勝って、ピニオン4が出力軸3上を軸方向の先端側、つまりエンジンのリングギヤ10側に移動(前進)する。
【0045】ここで、ピニオン規制部材9は、ピニオン4の爪状部22より図4に示した矢印方向に回転力(数百N)を受ける。このとき、ピニオン規制部材9は、図4に示したように、その回転力を渦巻状部35の摺動部38を介してセンターケース7の収容室51の摺動部56で受け、短腕部34を介してドライブハウジング6の支持壁46で受けることにより、回転せず、確実にピニオン4の回転方向の運動を阻止する。
【0046】また、ピニオン規制部材9は、ピニオン4のリングギヤ10側への前進により出力軸3の先端側に向かう軸方向の力(数百N)を受ける。つまり、長腕部36がリングギヤ10側に引かれるが、ピニオン規制部材9は、ドライブハウジング6の当接部43とセンターケース7の当接部54との間で軸方向から強固に挟持されているので、リングギヤ10側に移動することはない。
【0047】そして、ピニオン4の先端側の外周に形成されたピニオンギヤ21がリングギヤ10に当接してピニオン4の前進が阻止されると、出力軸3の更なる回転力によりピニオン規制部材9の渦巻状部35および長腕部36が撓んで長腕部36が出力軸3の回転方向にやや動く。これにより、ピニオン4が僅かに回転して、ピニオンギヤ21がリングギヤ10に噛み合い、直流モータ2の回転動力(出力)をリングギヤ10に伝達することによってエンジンが回される。
【0048】この時、ピニオン規制部材9は、ピニオンギヤ21が完全にリングギヤ10に噛み合うことで、ピニオン規制部材9の長腕部36がピニオン4の複数の爪状部22の係合が外れてワッシャ27の後端側に落ち込むことにより、ピニオン4の後退を阻止する。その後、エンジンが始動すると、ピニオン規制部材9がコイルスプリング(図示せず)によって初期位置へ復帰することにより、ピニオン4が静止状態に戻される。
【0049】〔第1実施例の効果〕以上のように、この実施例のスタータ1は、ピニオン規制部材9を、出力軸3に交差する交差面に沿って、ピニオン規制部材9の長腕部36を避けてドライブハウジング6とセンターケース7との間に挟む構成にすることによって、センターケース7、ピニオン規制部材9、ドライブハウジング6の順番で出力軸3の軸方向側、すなわち、一方向からのみ順次重ねて行くだけで、ピニオン4を規制するピニオン規制部材9を容易に組み付けることができ、スタータ1の製造コストを低減させることができる。
【0050】もう少し、詳しく言うと、ピニオン規制部材9をドライブハウジング6やセンターケース7の当接部43、54間に組み付ける場合に、出力軸3を挿通した状態のセンターケース7の収容室51内に図4に示した状態で収容して、ピニオン4を出力軸3に組み付けた後にドライブハウジング6とセンターケース7とを嵌め合わすことにより簡単にピニオン規制部材9を当接部43、54間に組み付けることができる。このため、組付作業性が向上し生産性に優れるため、スタータ1の製造コストが低減されることによりスタータ1の製品コストを低減することができる。
【0051】そして、ピニオン規制部材9をドライブハウジング6とセンターケース7とにより軸方向から強固に挟持することにより、ピニオン規制部材9を支持するために新たに支持部材を設ける必要はない。このため、部品点数を減少できるので製品コストを更に低減することができる。したがって、安価なスタータ1を搭載した自動車の価格を低価格化することができる。
【0052】さらに、ピニオン規制部材9がドライブハウジング6とセンターケース7とにより軸方向から強固に挟持されている。したがって、ピニオン規制部材9が強い力でピニオン4の回転を止める際に、ピニオン規制部材9に大きな回転方向の荷重および軸方向の荷重が加わっても、ピニオン規制部材9を支持するドライブハウジング6やセンターケース7が損傷することはなく、スタータ1の耐久寿命を長寿命化することができる。
【0053】また、ピニオン規制部材9は、弾性変形可能であり、ピニオンギヤ21の回動に伴って少なくとも1/2ピッチ以上回動可能であるため、ピニオン規制部材9に衝撃的なピニオン4の回転方向の荷重および軸方向荷重が加わっても、ピニオン規制部材9が撓み、ドライブハウジング6、センターケース7に加わる力が軽減される。
【0054】また、ピニオンギヤ21がリングギヤ10に噛み合う際に、ピニオン4のピニオンギヤ21の歯筋がリングギヤ10の歯筋と合わず端面同志が当接し、噛み合わないことがあるが、この時、直流モータ2の回転によって、ピニオン規制部材9がピニオンギヤ21を有するピニオン4と共に回動するので、ピニオンギヤ21の歯筋とリングギヤ10の歯筋を合わせることができ、ピニオン4が移動可能となって噛み合いが完了される。
【0055】また、ピニオン規制部材9を弾性体である高炭素鋼線により適当な剛性を持たせて製作することにより、ピニオン規制部材9に衝撃的な回転方向の力および軸方向の力が加えられたとしても、ピニオン規制部材9の渦巻状部35および長腕部36が撓み、ドライブハウジング6やセンターケース7の当接部43、54および摺動部55、56に加わる力を緩衝することにより、ドライブハウジング6やセンターケース7が損傷することを防止できるので、スタータ1の耐久寿命をさらに長寿命化することができる。
【0056】また、ドライブハウジング6とセンターケース7との間でピニオン規制部材9を出力軸に対して交差方向に摺動自在に支持できる。さらに、ピニオン規制部材9に加わる回転方向の反力をドライブハウジング6の支持壁46またはセンターケース7の摺動部55、56で強固に受けることができるので、ピニオン規制部材9の弾性変形による反発力をピニオン4に確実に付与することができ、ピニオンギヤ21とリングギヤ10との噛み合い性を向上できる。
【0057】そして、センターケース7は、ピニオン4の反リングギヤ側で出力軸を軸支する軸受14を有し、この軸受14の外周側に、ピニオン規制部材9の渦巻状部35が収納されているので、ピニオン規制部材9の渦巻状部35を挟持するドライブハウジング6もそのスペースに配置することが可能となり、スタータ1の軸方向の長さを短縮できる。本実施例では、センターケース7に収容室51を設けたが、ドライブハウジング6に収容室を設けても同様な効果を得られる。
【0058】〔第2実施例の構成〕図7ないし図12はこの発明の第2実施例を示したもので、図7はスタータの主要部を示した図で、図8および図9はスタータのピニオン規制装置を示した図で、図10および図11はピニオン規制部材の支持構造を示した図である。
【0059】この実施例のピニオン規制部材9は、渦巻状部35の外径がピニオン4の多数の爪状部22の外径と差がなく、第1実施例のようにドライブハウジング6で軸方向から直接支持できないタイプである。このため、ピニオン規制部材9は、略円環板形状のスペーサー(本発明の挿入板)8を介してドライブハウジング6とセンターケース7との間に軸方向から挟持されている。
【0060】スペーサー8は、鋼板よりなり、図12に示したように、出力軸3が貫通し、ピニオン規制部材9の長腕部36が上下方向に移動可能な略扇形状の貫通穴61、ピニオン規制部材9の短腕部34が上下方向に移動可能な長円形状の貫通穴62、紐状部材31のコロ受け32との干渉を避けるための凹部63等を有している。貫通穴62の壁面には、ピニオン規制部材9の短腕部34の回転方向の荷重を受ける支持壁64が形成されている。この支持壁64は、ピニオン規制部材9の短腕部34の回転を規制する回転規制部でもある。
【0061】また、スペーサー8のモータ側面の中心付近は、ピニオン規制部材9の渦巻状部35の最大外径部分に軸方向で当接する略円弧形状の当接部(第1当接部)65となる。この当接部65は、センターケース7との間でピニオン規制部材9の渦巻状部35を挟持する第1挟持部(第1支持部)として働く。そして、スペーサー8の径方向の両側には、センターケース7にリングギヤ側面に設けられた2個の凸部58、59に嵌め合わされる2個のキー溝66、67が形成されている。なお、図12において二点鎖線はドライブハウジング6のギヤ室41の内周形状を示す。
【0062】〔第2実施例の作用〕次に、この実施例のスタータ1のピニオン規制装置5の作用を図7ないし図12に基づいて簡単に説明する。
【0063】直流モータ2が作動すると、ピニオン規制部材9はピニオン4により図8に示した矢印方向に回転力(数百N)を受ける。ピニオン規制部材9は、その回転力を渦巻状部35の摺動部38を介してセンターケース7の収容室51の摺動部56で受け、短腕部34を介してスペーサー8の支持壁64で受けることにより、回転せず、確実にピニオン4の回転方向の運動を阻止する。
【0064】また、ピニオン規制部材9は、出力軸3の回転とヘリカルスプライン12およびピニオンヘリカルスプライン23の作用によりピニオン4のリングギヤ10側へ前進する際に、出力軸3の先端側に向かう軸方向の力(数百N)を受ける。つまり、長腕部36がリングギヤ10側に引かれるが、ピニオン規制部材9は、スペーサー8の当接部65とセンターケース7の当接部54との間で軸方向から強固に挟持されているので、リングギヤ10側に移動することはない。
【0065】〔第2実施例の効果〕以上のように、この実施例のスタータ1は、ピニオン規制部材9の外径がピニオン4の外径と差がなく、第1実施例のようにドライブハウジング6で軸方向から直接支持できない場合に非常に有効で、且つ第1実施例と同様の効果を期待することができる。
【0066】〔変形例〕この実施例では、ピニオンギヤ21とオーバーランニングクラッチとを別体で構成したが、ピニオンギヤ21とオーバーランニングクラッチとをピニオン(移動筒部材)4に一体構成しても良い。また、直流モータ2の代わりに交流モータやその他のモータ(駆動手段)を用いても良い。
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【出願日】 平成8年(1996)4月17日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】石黒 健二
【公開番号】 特開平9−14110
【公開日】 平成9年(1997)1月14日
【出願番号】 特願平8−95575