トップ :: F 機械工学 照明 加熱 武器 爆破 :: F02 燃焼機関;風力原動機,ばね原動機,重力原動機;他類に属さない機械動力または反動推進力を発生するもの




【発明の名称】 始動兼発電装置
【発明者】 【氏名】長尾 安裕

【氏名】志賀 孜

【氏名】林 信行

【目的】
【構成】
【特許請求の範囲】
【請求項1】回転軸を有する回転子と、前記回転軸の外周に設けられ、前記回転軸の軸心と略同一軸心を有するとともに、エンジンのリングギヤに噛み合うピニオンギヤを有し、かつハウジングに回転自在に保持される駆動軸と、前記回転軸に設けられたサンギヤと、このサンギヤに噛み合うプラネタリギヤと、このプラネタリギヤに噛み合うインターナルギヤとからなる減速機構と、この減速機構によって前記回転子から減速された回転が伝達される減速軸と、前記減速軸と前記駆動軸との間に設けられ、前記減速軸から前記駆動軸へのみ回転を伝達する第1の一方向クラッチと、前記駆動軸と前記回転軸との間に設けられ、前記駆動軸から前記回転軸へのみ伝達する第2の一方向クラッチと、を備え、前記エンジンの始動時、前記回転子の回転を前記減速機構で減速し、前記減速軸、前記第1の一方向クラッチ、前記駆動軸を介して、前記リングギヤに伝達して前記エンジンを駆動し、前記エンジンの始動後、前記リングギヤの回転を前記駆動軸、前記第2の一方向クラッチを介して、前記回転軸に伝達して前記回転子によって発電させることを特徴とする始動兼発電装置。
【請求項2】前記ピニオンギヤ及びリングギヤは、はすば歯車又はやまば歯車からなる請求項1記載の始動兼発電装置。
【請求項3】前記ピニオンギヤ及びリングギヤの噛合面に潤滑油を供給する潤滑油供給部を有する請求項1又は2記載の始動兼発電装置。
【請求項4】前記潤滑油供給部は、前記リングギヤの下方に位置して前記ハウジングに形成されて前記ピニオンギヤを覆う上端開口の油溜め部からなる請求項3記載の始動兼発電装置。
【請求項5】前記回転子は、エンジンオイルが出入し貯溜される回転子収容空間に収容される請求項1乃至4のいずれか記載の始動兼発電装置。
【請求項6】前記ハウジングはエンジンブロックに接合され、前記回転子収容空間は接合面に開口するオイル通路を通じて前記エンジンブロックのオイル通路に連通する請求項5記載の始動兼発電装置。
【請求項7】発電時における前記回転子の所定値以上の回転数増加を規制する回転子回転数規制手段を有する請求項1乃至6のいずれか記載の始動兼発電装置。
【請求項8】前記回転子回転数規制手段は、前記発電用一方向クラッチと一体に形成される請求項7記載の始動兼発電装置。
【請求項9】前記回転子回転数規制手段は、前記回転子の回転軸に相対回転不能かつ軸方向変位可能に嵌着されるとともにクラッチローラを介して前記ピニオンギヤの内周面にトルク受容可能かつトルク伝達不能に結合するチューブと、前記チューブの一端面に断面が斜面に形成された係合面と係合する係合面を有するとともに前記回転子の回転軸に相対回転不能かつ前記係合面に沿って変位可能に嵌着されるウエイトと、前記ウエイトを求心方向に付勢する求心方向付勢手段と、前記ウエイトを前記係合面に向けて軸方向に付勢する軸方向付勢手段とを備え、前記チューブのローラー接触面は前記係合面へ向けて径大に形成されている請求項7又は8記載の始動兼発電装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、始動、発電兼用型回転電機の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、特開昭63−162957号公報に示すように、ピニオンシャフト上に設けられ、リングギヤに常時噛み合うピニオンとアーマチャ(回転子)の回転軸との間に第1、第2の歯車列を設け、しかも第1の歯車列には、回転軸からピニオンにのみトルクを伝達する第1の一方向クラッチを設けるとともに、第2の歯車列には、ピニオンから回転軸にのみトルクを伝達する第2の一方向クラッチを設け、さらに第2の歯車列の減速比を第1の歯車列の減速比よりも大きくしたスタータモータが開示されている。
【0003】また、実公昭37−8316号公報に示すように、軸受により支承される電機子の回転軸の先端に小歯車を設け、これを遊星歯車軸に支承された遊星歯車に、さらにこの遊星歯車をインターナルギヤにそれぞれ噛み合わせ、かつ遊星歯車軸の一端にはプーリーシャフトの鍔部に結合させ、回転軸と遊星歯車軸の頭部との間にオーバーランニングクラッチ(第2の一方向クラッチ)を、また、インターナルギヤのボス部とハウジングケースとの間にオーバーランニングクラッチ(第1の一方向クラッチ)を備え、プーリーシャフトの他端にはプーリーが設けられ、このプーリーに装着されたVベルトでエンジンに結合されたスタータダイナモが開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前者のものは、回転軸とピニオンシャフトとが平行に配列され、回転軸とピニオンシャフトとの間にそれぞれ第1、第2の歯車列が設けられているので、必然的に径方向の体格が大きくなってしまい、更にはエンジンに取り付けた場合、エンジンの補機に干渉する虞れも生じてしまう。
【0005】また、後者のものは、エンジン始動時には、第2の一方向クラッチは空転し、第1の一方向クラッチが結合して、電機子の回転軸の回転を小歯車、遊星歯車で減速し、遊星歯車軸、プーリーシャフト、プーリー、Vベルトを介してエンジンに伝達し、エンジン始動後は、エンジンの回転をVベルト、プーリー、プーリーシャフト、遊星歯車軸、第2の一方向クラッチを介して電機子回転軸に伝達するスタータダイナモである。この構造においては、エンジン始動後は、エンジンを駆動する負荷が消減し、スタータダイナモはエンジンからの回転を受けて駆動されるようになるので、電機子の回転はスタータダイナモの無負荷回転数まで上昇する。プーリーシャフトの回転数が、電機子の無負荷回転数を遊星歯減速機構で減速した値より更に上昇すると、ハウジングとの間でインターナルギヤを結合していた第1の一方向クラッチが空転を開始し、プーリーシャフトの回転数が電機子回転軸の回転数と同一になるまで、インターナルギヤ、プーリーシャフト、電機子回転軸の相対回転を吸収するように第1、第2の一方向クラッチが空転する。プーリーシャフトの回転数が更に上昇して、電機子の無負荷回転数以上になると、第2の一方向クラッチは回転軸に結合することになり、電機子回転軸の小歯車と遊星歯車とインターナルギヤは相対回転を持たずに一体となって回転する。即ち、第1の一方向クラッチは、エンジンによって駆動されるプーリーシャフトと同一回転数で回転するインターナルギヤと、静止しているハウジングとの間の相対回転を吸収して空転することになる。この後者のスタータダイナモは、エンジンを駆動するときに使用されるプーリーをそのまま使用してエンジンにより駆動されるが、通常、スタータダイナモの発生トルクより格段に負荷が大きいエンジンを駆動するために、エンジン側のプーリーよりスタータダイナモのプーリーを小径としているので、エンジンにより駆動されるときには、前述のプーリー比の関係から、プーリーシャフトはエンジンの出力軸回転数より増速されることになる。更に、エンジンの常用回転数はスタータダイナモによって駆動される回転数よりも遙かに高いので、静止しているハウジングとインターナルギヤとの相対回転差が非常に大きく、第1の一方向クラッチが損傷する可能性があった。
【0006】そこで、本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、径方向の体格が小さくできるとともに、回転子の回転をリングギヤ側に伝達するクラッチの損傷を防止できる始動兼発電装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
〔請求項1の手段〕請求項1に記載の発明によれば、本発明の始動兼発電装置は、エンジンのリングギヤに噛み合うピニオンギヤを有する駆動軸が、回転子の回転軸の外周に設けられ、回転軸の軸心と略同一軸心を有するように配置されているので、径方向の体格を小さくすることができる。また、エンジンの始動時には、回転子の回転を遊星歯車減速機構で減速し、この回転を第1の一方向クラッチ、駆動軸を介してエンジンのリングギヤに伝達し、エンジンの始動後には、エンジンのリングギヤの回転を受けたピニオンギヤの回転を駆動軸、第2の一方向クラッチを介して回転子の回転軸に直接伝達する構成としたので、エンジン始動時に第2の一方向クラッチは、高速で回転する回転子の回転軸と、減速されて回転子の回転軸と同一方向に回転する駆動軸との相対回転を吸収するように空転することができる。また、エンジン始動後に空転する第1の一方向クラッチも、エンジンにより高速で回転される駆動軸(回転子の回転軸と一体に回転される)と、この駆動軸と回転軸との間にて減速機構によって減速されて駆動軸と同一方向に回転する減速軸との相対回転を吸収するように空転する。つまり、第1の一方向クラッチは、従来のスタータダイナモ(始動兼発電装置)の第1の一方向クラッチのように、固定部材(ハウジング)と高速で回転する回転部材(インターナルギヤ)との間の相対回転のような非常に高い回転数で空転する必要がないので(本手段における相対回転数は、駆動軸回転数×{1ー1/減速比}となる)、第1の一方向クラッチ(即ち、回転子の回転をリングギヤ側に伝達するクラッチ)の耐久寿命を格段に向上できるという優れた効果を奏する。
〔請求項2の手段〕請求項1に記載の発明によれば、請求項1に記載の構成においてさらに、常にピニオンギヤをリングギヤに噛み合わせておけることを利用して、ピニオンギヤ及びリングギヤをはすば歯車又はやまば歯車で構成するので、噛合効率を向上することができ、摩耗、騒音などを低減することができる。
〔請求項3の手段〕請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の構成においてさらに、ピニオンギヤ及びリングギヤの噛合面に潤滑油を供給する潤滑油供給部を有するので、更にそれらの磨耗、騒音などを低減することができる。
【0008】請求項4に記載の発明によれば、請求項3に記載の構成においてさらに、潤滑油供給部が、リングギヤの下方に位置してハウジングに形成されてピニオンギヤを覆う上端開口の油溜め部からなるので、ピニオンギヤをこの油溜め部の潤滑油層に接触させるだけで潤滑油供給が可能となり、極めて構成が容易となる。更に、この油溜め部はピニオンギヤを大部分覆うので、ピニオンギヤを保護することができる。
【0009】請求項5に記載の発明によれば、請求項4に記載の構成においてさらに、回転子を回転子収容空間内に収容して、この室内にエンジンオイルを出入させるので、回転子を強力に冷却することができる。特に、この液冷方式では冷却液としてエンジンオイルを用いるので、冷却液の冷却装置や循環装置やオイルフィルタやそれらを接続する配管系などを改めて新設する必要がなく、そのためのエンジン回りの機器配置の変更も最小限とすることができる。例えば、エンジンブロックからエンジンオイルを導入し、ドレインを導出させるだけで高性能の液冷回転電機構造を実現でき、その出力/重量比率を格段に向上することができる。また、エンジンオイルは常時オイルフィルタにより夾雑物を除去される、更に電気絶縁性能にも優れ、回転子の回転に対する支障や電機子コイルなどの絶縁不良などを懸念しなくてもよい。更に、回転子収容空間へのエンジンオイルの貯溜により回転子の振動や騒音の低減が可能となる。
【0010】請求項6に記載の発明によれば、請求項5に記載の構成においてさらに、始動兼発電装置のハウジングをエンジンブロックに密着させて両者のオイル通路を連通させて、回転子収容空間にエンジンオイルを導入するので、装置構成が簡素となる。更に、始動兼発電装置の剛性も増加し、固有共振振動数も上昇し、エンジン常用領域での始動兼発電装置の振動を抑止できる。
【0011】請求項7に記載の発明によれば、請求項6に記載の構成においてさらに、発電時における回転子の所定値以上の回転数増加を規制する回転子回転数規制手段を有するので、エンジンがなんらかの原因で通常の回転域を逸脱して高速回転する事態が生じても、回転子や減速機構の破損やその耐久性の劣化を生じることがない。
【0012】請求項8に記載の発明によれば、請求項7に記載の構成においてさらに、回転子回転数規制手段を発電用一方向クラッチと一体に形成するので、装置構成が極めて簡素となる。すなわち、このような高速クラッチ機能は発電時においてのみ作動させるので、発電用一方向クラッチに高速時切断時のクラッチ機能を付加するだけで、請求項7に記載の構成を簡素に実現することができる。
【0013】請求項9に記載の発明によれば、請求項8に記載の構成においてさらに、クラッチローラを介してピニオンギヤからトルクを受容するチューブと、チューブの一端面に断面が斜面に形成された係合面と係合する係合面を有するとともに回転子の回転軸に相対回転不能かつこの係合面に沿って変位可能に嵌着されるウエイトと、ウエイトを求心方向に付勢する求心方向付勢手段と、ウエイトを係合面に向けて軸方向に付勢する軸方向付勢手段とで回転子回転数規制手段を構成し、チューブのローラー接触面を係合面へ向けて径大に形成するので、請求項7に記載の構成の簡素化を実現することができる。
【0014】更に、回転子回転数規制手段を、ピニオンギヤ内周に配設した発電用一方向クラッチと一体に形成するので、装置構成が極めて簡素となり、軸方向に一方向クラッチを収容するスペースを別に確保する必要がなくなるため、全体の軸長を短縮することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明の好適な実施態様が以下の実施例により開示される。
【0016】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
(実施例1)図1において、始動兼発電装置(以下、スタータダイナモともいう)は、エンジンブロック12に図示しないボルトにより固定された略円筒状のフレーム9を有し、フレーム9内には遊星減速機構4、駆動軸7、発電用一方向クラッチ6a及び始動用一方向クラッチ6bが収容されている。
【0017】フレーム9のリヤ側には直流機が固定されている。この直流機は、両端が開口した略円筒状のヨーク3と、ヨーク3のリヤ側の端部に嵌められたエンドフレーム15とを有し、エンドフレーム15及びヨーク3はスルーボルトによりフレーム9に固定されている。ヨーク3とエンドフレーム15の間には仕切り板13が挟持され、仕切り板13はヨーク3内にアーマチャコア収容空間(回転子収容空間)Aを、エンドフレーム15内に整流子収容部Bを区画形成している。また、フレーム9とヨーク3との間には仕切り板11が挟持され、仕切り板11はヨーク3内のアーマチャ収容空間Aとフレーム9内のギヤ室Gとを区画形成している。なお、フレーム9、ヨーク3及びエンドフレーム15はハウジングを構成している。
【0018】ヨーク3の内周面には永久磁石(界磁)3aが周方向へ極性交互に偶数固定されており、永久磁石3aの内周側にはアーマチャ(回転子)2が回転軸20に固定され、回転軸20のリヤ側端部は図示しない軸受けを介してエンドフレーム15に支持されている。2dは円筒型のコンミテータ、3bはブラシ、10はブラシに接続される端子である。仕切り板11の内周部11aはアーマチャ2側に円筒状に曲げられており、この内周部11aは回転軸20の外周面に微小な隙間を通じて嵌着されている。これにより、アーマチャ収容空間Aはほぼ密閉されている。
【0019】回転軸20にはギヤ室G内にて仕切り板11に近接してサンギヤ2bが形成されており、サンギヤ2bはプラネタリギヤ4bに噛合し、プラネタリギヤ4bはプラネタリギヤ4bの外周を囲む略円筒状のインターナルギヤ4aに噛合している。インターナルギヤ4aはフレーム9の内周面に固定されている。プラネタリギヤ4bは、ピン4cに回転自在に嵌着され、ピン4cはフランジ付円筒形状の減速軸5のフランジ部5cに固定されている。減速軸5はサンギヤ2bの前方側に隣接して回転軸20に回転自在に嵌着されており、更に、減速軸5の前方側に隣接して駆動軸7が回転軸20に回転自在に嵌着されている。7c、5bはそれぞれ軸受けである。
【0020】駆動軸7は、減速軸5の筒部5aの外周面を覆うボス部7aを有し、ボス部7aはベアリング9cを介してフレーム9の内周面に回転自在に支持されていおり、ボス部7aの内周面は始動用一方向クラッチ6bを介して減速軸5の筒部5aの外周面に結合されている。始動用一方向クラッチ6bはクラッチローラ(図示せず)を有し、ボス部7aの内周面又は減速軸5の外周面はこのクラッチローラを通じて始動トルク伝達可能、反始動トルク伝達不能なカム面形状に形成されている。また、駆動軸7の前端部内周面と回転軸20の前端部外周面との間には、後述するように高速回転時にトルク伝達遮断機能を有する発電用一方向クラッチ6aが介設されている。更に、駆動軸7の前端部外周面にはリングギヤ8と離脱不能に噛合するギヤ部(ピニオンギヤ)7bが形成されている。
【0021】上述した高速回転時トルク伝達遮断機能(本発明でいう回転子回転数規制手段)を兼ねる発電用一方向クラッチ6aを、図2を参照して詳細に説明する。このクラッチ6aは、クラッチローラ6cと、チューブ6dと、ウエイト21aと、ガータスプリング21bと、弾性体21fとからなる。チューブ6dは略円筒状に形成されており、アーマチャ2の回転軸20に軸方向変位可能に嵌着されている。チューブ6dの内周面にはセレーション6fが形成されており、このセレーション6fがアーマチャ2の回転軸20のセレーション2fとともにチューブ6dの相対回転を禁止している。チューブ6dの外周面6g及びそれと対面する駆動軸7の内周面7dはクラッチローラ6cを通じて発電用トルク伝達可能、反発電用トルク伝達不能となるようになっており、チューブ6dの外周面6g及びそれと対面する駆動軸7の内周面7dは、リヤ側へ径小となる切頭円錐面形状すなわち断面斜面形状に形成されている。
【0022】ウエイト21aは複数の割り円筒状に形成され、アーマチャ2の回転軸20に軸方向変位可能に嵌着されている。ウエイト21aの内周面にもセレーション2fとともにウエイト21aの相対回転を禁止するセレーションが形成されている。ガータスプリング21bはウエイト21aの外周面に凹設された環状溝に収容され、ウエイト21aを径方向縮小側に付勢している。その付勢力は、ある設定回転数にてウェイトの遠心力とつり合う値に設定されている。ウエイト21aとチューブ6dは隣接しており、両者の接触端面は斜面21e、6eとなっている。
【0023】回転軸20には、サークリップ21cに係止されてワッシャ21dが嵌められ、弾性体21fはワッシャ21dに係止されてウエイト21aをチューブ6d側に付勢し、これにより、クラッチローラ6cはチューブ6dの外周面6gと駆動軸7の内周面7dに挟圧されている。次に、この発電用一方向クラッチ6aの作動を説明する。
【0024】始動時には始動用一方向クラッチ6bを通じて減速軸5の回転が駆動軸7に伝達されるので、回転軸20の回転が駆動軸7の回転を上回り、内周面7dと外周面6gとの間隔が増加する方向にクラッチローラ6cが変位し発電用一方向クラッチ6aによるトルク伝達はなされない。エンジンが着火し、駆動軸7の回転数が上昇し、回転軸20の回転と等しくなると空転不能となり、エンジンのトルクが駆動軸7、クラッチ6aを介して回転軸20へ直接伝達される。これにより発電が開始される。
【0025】エンジンの回転数が更に上昇し、設定された回転数を越えると、ウェイト21aの遠心力がガータスプリング21bの荷重(求心付勢力)を超え、ウェイト21aは斜面6eに沿って右上方向に移動する。これにより、弾性体21fの発生する押圧力は減少し、クラッチ6aの伝達トルクが低下する。更に回転数が上昇すると、エンジンから駆動軸7を介して伝達されるトルクはクラッチ6aの伝達許容トルクと等しくなり、駆動軸7の回転数がこれ以上、上昇してもクラッチ6aがスリップしてアーマチャ2の回転は上昇せず、設定の回転数に維持される。
【0026】その結果、永久界磁型の直流発電機の発電電圧は回転数があるしきい値以上増大しても、バッテリの許容電圧を越えることがなく、適正な充電が行なわれ、過充電を防止することができる。なお、高速回転時の発電用トルクのリミット機構としては、その他、従来よりあるラチェット方式のクラッチを用いてもよい。次に、この装置の電気回路を図3を参照して説明する。
【0027】始動兼発電装置は、回転機部1と、スタータリレー16と、コントローラ17とからなる。ブラシ3bの一方は接地され、他方はスタータリレー16の主接点対を通じてバッテリ19及び電気負荷19aの高位端に接続されている。電気負荷19aの高位端はキースイッチ200を通じてスタータリレー16の励磁コイル16dに給電している。また、ブラシ3bの他方は、コントローラ17のパワートランジスタ17a及びダイオード18を通じて発電電流をバッテリ19及び電気負荷19aの高位端に給電している。コントローラ17のコンパレータ17bはバッテリ電圧Vbと基準電圧Vrefとを比較し、その出力電圧をベース電流制限抵抗rを通じてパワートランジスタ17aのベースに印加している。コントローラ17の昇圧回路17cはDC−DCコンバータであってバッテリ電圧Vbを昇圧してコンパレータ17bの電源電圧Vccとして給電するとともに、分圧回路17dに印加し、分圧回路17dが基準電圧Vrefを形成している。なお、外部装置、例えばエンジン制御装置(ECU)からコンパレータ17bの電源電圧Vcc及び基準電圧Vrefを得る場合、昇圧回路17c及び分圧回路17dは省略することができる。
【0028】コントローラ17の動作を以下に説明する。発電停止時及び発電電圧がバッテリ電圧Vb+接合電圧降下より低い場合、ダイオード18はバッテリ電圧を阻止する。コンパレータ17bは、バッテリ電圧Vbが接合電圧降下より大きければパワートランジスタ17aをオフし、バッテリ電圧Vbが接合電圧降下より小さければパワートランジスタ17aをオンする。これにより、発電電圧がバッテリ電圧Vb+接合電圧降下より大きくなると、発電電流はパワートランジスタ17aに断続されて、バッテリ19及び電気負荷19aに給電され、バッテリ電圧Vbは一定レベルに維持される。
【0029】次に、装置の全体動作を説明する。エンジン始動時、キースイッチ20を投入すると、リレー16の励磁コイル16dに通電され、リレー16がONし、バッテリ19よりリレー16を介してスタ−タダイナモ1に給電され、電動機が回転力を発生する。この回転力は出力軸20のサンギヤ2bから遊星減速機構4を通じてその減速軸5に伝達され、増大された始動トルクが始動用一方向クラッチ6bを介して駆動軸7に伝達され、そのギヤ部(ピニオンギヤ)7bから大きな回転力が常時噛合状態のリングギヤ8に伝達され、エンジンが始動される。この時、発電用一方向クラッチ6aは駆動軸7の回転が回転軸20の回転より小のため空転状態となっている。
【0030】着火後、エンジン回転が高くなり、駆動軸7の回転がアーマチャ2の回転軸20の回転と等しくなると、クラッチ6aは相対回転不能となって一体(1:1の比)回転し、所定の回転数に達すると発電が開始される。この時、始動用一方向クラッチ6bが空転するため、遊星減速機構4により駆動軸7の回転数以上にアーマチャ2の回転軸20の回転が増大することが防止され、これによりアーマチャ2の破損が防止される。また、エンジンのなんらかの高速回転が生じると、上述したように発電用一方向クラッチ6aのトルクリミット機能により回転軸20への発電用トルク伝達が一定値に抑制され、この一定値の発電用トルクに見合った以上の発電出力が規制される。
【0031】次に、アーマチャ2の冷却機構について図1を参照して説明する。フレーム9は平坦な取り付け面9fを有し、この取り付け面9fは図示しないパッキンを挟んでエンジンブロック12の取り付け面12aに当接、固定されている。エンジンブロック12は取り付け面12aに開口するオイル通路12bを有し、オイル通路12bはフレーム9の取り付け面9fに開口されたオイル通路9dを通じてアーマチャ収容空間Aに連通している。エンジンオイルはこれらオイル通路12b,9dを通じてエンジンブロック12からアーマチャ収容空間Aに所定流量供給され、永久磁石の極間隙間や界磁とアーマチャコアとの間を通り、アーマチャ2を冷却しつつヨーク3又はフレーム9の下部に設けられたドレイン通路(図示せず)からエンジンのオイルパン(図示せず)へ送られる。これにより、アーマチャ2は良好に冷却され、また外気を導入する必要がなく内部が塵などで汚損することもなく、小型軽量化を図ることができる。
【0032】次に、駆動軸7及びリングギヤ8について説明する。本実施例では、これら両者は始動後、分離する必要がないので、効率が良く静粛なはすば歯車又はやまば歯車を採用されている。さらに、本実施例では、中空状の減速軸5と、駆動軸7の中を貫通するように回転軸20が配置され、それぞれ軸受にて支持されており、始動用一方向クラッチ6b及び発電用一方向クラッチ6aは、それらの軸空間に配設されているために非常にコンパクトな構造となっている。
(実施例2)他の実施例を図4を参照して説明する。
【0033】この実施例は、図1に示す実施例1の装置を天地逆とし、更に、スタータリレー16をヨーク3に固定したものである。この実施例の特徴は、駆動軸7を覆うフレーム9のフード部9aが油溜め部を構成することである。すなわち、アーマチャコア収容部Aに供給されたエンジンオイルは図示しない連通孔などを通じてフード部9aに流入し、駆動軸7の一部はフード部9aに浸漬されて駆動軸7及びリングギヤ8の潤滑が行われる。そして、余分のエンジンオイルがこのフード部9aからオイルパンに戻される。なお、リングギヤ8や駆動軸7の回転によるエンジンオイルの飛散を防止するためにそれらをアルミカバーなどで密閉してもよく、また、整流子収容部Bへのエンジンオイルの流入による整流妨害を防止するために、回転電機を永久磁石回転型の同期機としてもよい。ベアリング9cはオイルシールされているが、ベアリング9cをメタル軸受けに変更することもできる。
【0034】以上の様に構成された上記各実施例の始動兼発電装置の効果を以下に説明する。まず、従来のリングギヤ8、駆動軸7によるトルク伝達、減速を採用するので、プーリー方式のように大トルクの伝達の際にプーリーがVベルトに対して滑ってしまうという問題が生じないので大きな減速比を実現することができ、このために出力軸20のトルクを小として、スタ−タダイナモ全体の小型軽量化を図ることができる。また、現行のスタ−タの取付に対して互換性を確保でき、リングギヤ8のフライホイール効果も維持でき、大きな変更の必要がない。また、常時噛合にする事で、現行のスタ−タでは使用が困難なはすば歯車ややまば歯車等が使用でき、騒音低減やギヤ摩耗の低減ができる。
【0035】また、装置内部に始動トルクのみ減速する遊星減速機構4を内蔵するので、更に小型軽量化できる。また、クラッチを2ケ使用することで入力、出力時の減速比を変更でき、エンジンとスタ−タダイナモ間のギヤ減速、内部遊星減速と、二つの減速装置ともギヤを使用し、ギヤ比の選択の巾が広く、スタ−タ性能とダイナモ性能を両立しやすい。
【0036】また、駆動軸7とアーマチャ2の回転軸20との間に発電用一方向クラッチ6aを設ける事で、独立したクラッチ用のスペースを省略でき、小型化できるとともに、駆動時に使用しないシャフトの小径部が長く、エンジン回転変動時の衝撃吸収に効果がある。また、駆動軸7と遊星減速機構4との間に始動用一方向クラッチ6bを設置しため、始動後の遊星減速機構4の回転数を低く抑えることができ、また、始動用一方向クラッチ6bの回転速度を低減して磨耗を減らすことができ、更に、遊星減速機構4の各部のアンバランスによる振動を低くでき、騒音低減や、軸受やクラッチの長寿命化が図れる。
【0037】また、始動用一方向クラッチ6b及び発電用一方向クラッチ6aを共に駆動軸7内に配置する事で部品点数を低減でき、体格も縮小でき、組立工数も減少する。また、駆動軸7とリングギヤ8とを油潤滑をする事で、更に耐摩耗性が向上すると共に、騒音低減や、防錆効果も期待できる。
【0038】また、アーマチャ2をエンジンオイルで冷却することで、更に小型軽量化を実現することができ、また回転中のアーマチャ2のアンバランスによる振動も液体の粘性により小さくでき、騒音が低減される。また、同様に、エンジン振動の影響も低減できる。また、冷却液がエンジンオイルであるので、冷却機構を簡素とすることができる。なお、本実施例では冷却液としてエンジンオイルを採用したが、エンジン冷却水を採用することもでき、同様の作用効果を奏することができる。
【0039】また、上記冷却液の導入をエンジンブロック12とスタ−タダイナモのフレーム9の密着部で行なうため、配管を省略でき、組付性が良く、部品点数も少なく、耐振性、放熱性も優れている。また、スタータリレー16をスタ−タダイナモに固定しているので、従来のスタ−タシステムと互換性を維持することができる。
【0040】次に、スタ−タダイナモの内部減速比について述べる。スタ−タ(分巻モータ)として最大出力時の回転数(NSM)は無負荷回転数(NSN)の約1/2である。また、ダイナモとしては、エンジンアイドル回転数(N1 )にて発電を開始する必要がある。従って、エンジンの最低回転数(Ne)時にスタ−タの最大出力時を合わせ、エンジンアイドル回転数(N1 )を、無負荷回転数(NSN)に合わせる事が、スタ−タダイナモを効率的な使用につながる。これにより内部減速比iは次式より【0041】
【数1】

【0042】
【数2】

【0043】
【数3】NSN=2NSM【0044】
【数4】

ここでiはリングギヤ8と駆動軸7のギヤ部7bとのギヤ比である。
【0045】従って内部減速比をアイドル回転数(本発明でいうエンジン持続最低回転数)とエンジン着火可能な着火回転数(本発明でいうエンジン着火最低回転数)との比の1/2にすることでスタ−タダイナモを効率的に使用できる。ちなみに、着火回転数(最低回転数、Ne)は30〜100rpmとされ、アイドル回転数NI は400〜800rpmとされ、通常の車両用エンジンではこの範囲に入るので、上記各数式は通常の車両用エンジンで成り立つ。
【0046】すなわち、スタ−タの内部減速比は4〜6が主流となっており、現行のスタ−タ仕様にて、効率的な使用ができる。更にNeが低下すれば。上記条件にて減速比を決定することでスタ−タダイナモの減速比を一層高く設定でき、更なる小型軽量化を実現することができる。
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【出願日】 平成8年(1996)3月4日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
【公開番号】 特開平9−14108
【公開日】 平成9年(1997)1月14日
【出願番号】 特願平8−46030