トップ :: D 繊維 紙 :: D02 糸;糸またはロ−プの機械的な仕上げ;整経またはビ−ム巻き取り




【発明の名称】 短繊維捻付意匠糸の製造方法及び装置
【発明者】 【氏名】松中 滋

【目的】
【構成】
【特許請求の範囲】
【請求項1】 水中に短繊維(71)を分散した処理液(72)を撹拌しながら流動させ、その流動部分に芯糸(18)を通過させて処理液中の短繊維(71)を芯糸(18)に捕捉し、次に短繊維(71)を捕捉した糸(20)を挟持しつつ糸の送り方向と交叉する方向の捻り力を与えて捕捉された短繊維(71)を芯糸(18)の周囲に巻き付け、次に乾燥により処理液の水分を除去することを特徴とする、意匠糸の製造方法。
【請求項2】 複数本の芯糸(18a,18b) を供給し、これら複数本の芯糸を処理液(72)の流動部分を通過する位置(26)ないしその直後の位置で、撚り合わせて1本の芯糸(18)とすることを特徴とする、請求項1記載の意匠糸の製造方法。
【請求項3】 芯糸(18)をその長手方向に引き出して供給する芯糸供給手段(1) と、水に短繊維(71)を分散した処理液(72)を収容する容器(27)と、この容器内の処理液を撹拌する撹拌手段(37)と、この容器内の処理液を流動ないし流出させる流動手段(29,34,67)と、流動する処理液中に芯糸(18)を通過させる芯糸の捕捉通路(31)と、この捕捉通路(31)の下流側に配置され、短繊維(71)を捕捉した糸(20)を挟持する挟持部材(48,49) とその少なくとも一方を糸(20)の送り方向と交叉する方向に移動させる駆動手段とを備えた捻り装置(47)と、この捻り装置の下流側に配置された乾燥部(65)とを備えている、意匠糸の製造装置。
【請求項4】 芯糸供給装置(1) が芯糸(18)の引出方向に向いた回転軸(3)まわりに回転駆動されるボビンフレーム(4) と、前記回転軸の軸線上の芯糸引出側端に配置した太陽ボビン保持手段(8) と、この太陽ボビン保持手段を囲むようにボビンフレーム(4) の円周上に配置した複数の遊星ボビン保持手段(9) とを備えている、請求項3記載の意匠糸の製造装置。
【請求項5】 処理液の流動手段が処理液容器(27)に設けられた流出口(29)ないし噴出口であり、当該流出口ないし噴出口から流出する処理液を横切るように芯糸(18)の捕捉通路(31)が形成されている、請求項3または4記載の意匠糸の製造装置。
【請求項6】 捻り装置(47)が糸(20)に間歇的に当接離隔する可動面(49)を備えており、この可動面(49)は糸(20)と当接離隔する方向に往復駆動されるとともに、その往復駆動と同期する周期で、糸(20)の送り方向と交叉する方向に往復駆動されることにより、糸(20)に間歇的な捻り力を与えることを特徴とする、請求項3、4または5記載の意匠糸の製造装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、芯糸の周囲に和紙の短繊維等を含む各種の短繊維を捻り付けるように巻回して芯糸の周囲を当該短繊維で覆った構造の、コブのあるまたはほぼ均一な太さの意匠糸を製造する方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】芯糸とこれに保持された短繊維とからなる意匠糸は、従来から種々のものが知られており、その代表的なものはモール糸である。またこの種の意匠糸を製造する方法や装置も種々のものが提唱されている。繊維には天然繊維、合成繊維ともに多種のものがあり、それぞれの用途に適合するように選択した複数種の繊維を種々の構造で組み合わせた多種多様な糸が用いられている。更に同種の繊維の組合せからなる近似した構造の糸であっても、その製造方法の差によって糸の風合は微妙に変化する。製造方法や製造装置の特徴によって、コブや凹凸のある糸になったり、均一な太さの糸になったりし、また表面が毛羽立った感じの糸になったり、滑らかな感じの糸になったりする。
【0003】糸及びこれを織りまたは編んで得られる布は、種々の用途に用いられており、その用途毎に要求される機能及び各人の好みの差や嗜好の変化等によって種々の性質及び風合の糸が要求され、使用される糸の種類はますます多種多様になってきている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、和紙の風合を持ち手織りによって素朴な感じの厚地織物を得ることができ、耐洗性や良好な染色性をも備えた意匠糸を得ることを当初の課題としてなされたものであり、当該課題を解決することができるとともに、繊維の組合せを変えることによって従来にない風合を備えた多様な繊維の組合せからなる意匠糸を製造することが可能な方法及び装置を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の意匠糸の製造方法は、水中に短繊維71を分散した処理液72を撹拌しながら流動させ、その流動部分に芯糸18を通過させて処理液中の短繊維71を芯糸18に捕捉させ、次に短繊維71を捕捉した糸20を挟持しつつ糸の送り方向と交叉する方向の捻り力を与えて、捕捉された短繊維71を芯糸18の周囲に巻き付け、次に乾燥により処理液の水分を除去することを特徴とするものである。処理液72には必要により糊剤や染料を含ませることができる。
【0006】請求項2記載の意匠糸の製造方法は、請求項1記載の意匠糸の製造方法において、複数本の芯糸を供給し、これら複数本の芯糸18a、18b・・を処理液の流動部分を通過する位置ないしその直後の位置で撚り合わせて1本の芯糸とすることを特徴とするものである。
【0007】請求項3記載の意匠糸の製造装置は、芯糸18をその長手方向に引き出して供給する芯糸供給手段1と、水に短繊維71を分散した処理液72を収容する容器27と、この容器内の処理液を撹拌する撹拌手段37と、この容器内の処理液を流動ないし流出させる流動手段29、34、67と、流動する処理液中に芯糸18を通過させる芯糸の捕捉通路31と、その捕捉通路31の下流側に配置されて、短繊維71を捕捉した糸20を挟持する挟持部材48、49とその少なくとも一方を糸20の送り方向と交叉する方向に移動させる駆動手段とを備えた捻り装置47と、この捻り装置の下流側に配置された乾燥部65とを備えていることを特徴とするものである。
【0008】処理液の撹拌手段37としては、処理液容器27内に揺動ないし回転する撹拌羽根を設ける手段、ブロワ37からの空気の流出や循環ポンプ34からの処理液自体の流出によって容器27内の処理液を撹拌する手段などが採用可能である。ポンプ34で処理液を循環させつつ流出して撹拌する手段によれば、撹拌手段と流動手段とを兼用させることができる。
【0009】流動手段として最も簡単な構造は、請求項5に示すように、容器27に流出口29を設けるか、あるいは噴出ノズル67を設け、処理液を重力ないしポンプにより流出させる構造である。この場合の芯糸の捕捉通路31は、流出する処理液を横切るように形成される。
【0010】循環ポンプ34で処理液を容器27内に噴出して流動(兼撹拌)するようにしたときは、図4に示すように、芯糸18a、18b・・を容器27内の処理液中に通過させ、この芯糸の通路に処理液を噴出するノズル67を向けた構造を採用することができる。
【0011】請求項4記載の意匠糸の製造装置は、請求項3記載の意匠糸の製造装置において、芯糸供給装置1が芯糸の引出方向に向いた回転軸3まわりに回転駆動されるボビンフレーム4と、前記回転軸の軸線上の芯糸引出側端に配置した太陽ボビン保持手段8と、この太陽ボビン保持手段を囲むようにボビンフレーム4の円周上に配置した複数の遊星ボビン保持手段9とを備えていることを特徴とするものである。
【0012】請求項5記載の意匠糸の製造装置は、請求項3または4記載の意匠糸の製造装置において、処理液の流動手段が処理液容器27に設けられた流出口29ないし噴出口であり、当該流出口ないし噴出口から流出する処理液を横切るように芯糸18の捕捉通路31を形成したことを特徴とするものである。
【0013】請求項6記載の意匠糸の製造装置は、請求項3、4または5記載の意匠糸の製造装置において、捻り装置47が糸20に間歇的に当接離隔する可動面49を備えており、この可動面49は糸20と当接離隔する方向に往復駆動されるとともに、その往復駆動と同期する周期で、糸20の送り方向と交叉する方向に往復駆動されることにより、糸20に間歇的な捻り力を与えることを特徴とするものである。
【0014】
【作用】請求項1記載の意匠糸の製造方法によれば、独特な風合をもった意匠糸を得ることができる。処理液中の短繊維71の濃度及び処理液中に短繊維71が均一に分散しているか否かによって、同一の短繊維を用いた場合でも得られる意匠糸の風合は変化する。一般的には、短繊維の濃度が高いと、処理液中に短繊維の塊が出来やすくなり、コブのある意匠糸が得られる。また濃度が低いときは、処理液中に短繊維が均一に分散するようになり、太さのほぼ一定した意匠糸が得られる。
【0015】芯糸18としては、予め撚られたまたは撚られていない1本の糸を用いることができる。芯糸としてこのような芯糸のみしか用いないときは、芯糸供給装置は単純な構造であり、1本の芯糸ボビンを保持する構造を備えていれば足りる。
【0016】請求項2記載のように、複数の芯糸18a、18b・・を供給し、この発明の方法を実施しながら又はこの発明の装置内で1本の芯糸に撚り合わせるようにすることもできる。この場合は、その撚り合せ位置26を芯糸18が短繊維71を捕捉する位置ないしその直後に位置させるのが好適である。このようにすれば、複数の芯糸18a、18b・・のそれぞれに保持された短繊維が芯糸相互が撚り合わされたときに、1本の芯糸18に強固に保持されることとなり、耐洗性や耐摩耗性を向上させることができる。
【0017】請求項3記載の意匠糸の製造装置によれば、請求項1及び2記載の意匠糸の製造方法の実施に好適な装置を提供でき、このような装置を使用することにより、従来の装置では得られなかった独特な風合を持った意匠糸を効率良く製造することができる。
【0018】請求項4記載の意匠糸の製造装置によれば、太陽ボビン保持手段8にのみ芯糸ボビン11を装着することにより、最初から1本となった芯糸18を備えた意匠糸を得ることができ、遊星ボビン保持手段9に所望の個数の芯糸ボビン12を保持してそれらから芯糸18b・・を引き出しながらボビンフレーム4を回転することにより、複数の芯糸18b・・を装置内で撚り合わせて1本の芯糸18とした意匠糸を得ることができる。さらに太陽ボビン保持手段8と遊星ボビン保持手段9との両者に芯糸ボビン11、12を装着し、それらから芯糸18a、18b・・を引き出しつつボビンフレーム4を回転させれば、太陽ボビンから引き出された中心糸18aに遊星ボビンから引き出された芯糸18b・・が巻き付いた構造の芯糸を備えた意匠糸を得ることができる。さらに装着されたボビン毎にその引出糸の張力調整装置を設けることにより、互いに撚り合わされる芯糸の張力をアンバランスにして、より複雑な構造の芯糸とすることも可能である。
【0019】請求項5記載の構造によれば、処理液の流動手段を簡単な構造とすることができ、芯糸への短繊維の供給が確実で装置の動作も安定している。
【0020】請求項6記載の意匠糸の製造装置は、捻り装置の可動面49が矩形ないし楕円運動を行い、対向する固定面48又は可動面(対向する面も可動面とできる)側に移動したときにこの対向面48との間で糸20を挟持しつつ一方向に捻りを与え、その後可動面が対向面から離隔して初期位置に復帰するという動作を繰り返し、糸20に間歇的な捻りを与える。必要に応じ、バネなどで可動面49を対向面48に弾圧して、糸20の挟持を確実かつ滑らかにする。楕円運動をさせるときは、可動面49をその楕円の曲率に近似した凸曲面として捻り操作中における糸20の挟持力がほぼ一定となるようにする。
【0021】このような構造で可動面49を糸20に間歇的に押接離隔させ、かつこれと同期して可動面49を糸の送り方向と交叉する方向に往復動させることにより、糸20に間歇的な捻り作用を与えることができ、芯糸への短繊維の巻付けが円滑かつ良好で、品質の良い意匠糸を得ることができる。
【0022】請求項6記載の意匠糸の製造装置において、可動面49と糸20との間に滑りが生ずると糸に捻りを与えることができないので、好ましくは、可動面49およびその対向面48に溝付ゴム板等を貼着して摩擦係数の大きな面としておく。
【0023】
【実施例】以下この発明の最も好ましい実施の形態の一例を示す図1ないし3に基づいて説明する。芯糸供給装置1は、軸受2、2で自由回転可能に水平に支持された回転軸3を備えており、この回転軸の一端には、円板状のボビンフレーム4が固定され、他端にはプーリ5が固定されている。プーリ5はベルト6を介して電動機7で回転駆動される。ボビンフレーム4には、回転軸3と同一軸線上及びこれを囲む円周上の複数箇所に太陽ボビンホルダ8及び遊星ボビンホルダ9・・がそれぞれ水平方向に植立されている。ボビンホルダ8、9は、ボビン11、12の中心に挿通される軸杆である。
【0024】ボビンホルダ8、9に装着したボビン11、12の芯糸は、軸方向に引き出され、大径のリングガイド13の内側を通過した後、さらに小径のリングガイド14を通ってドラフトローラ15へと導かれている。ドラフトローラ15は、定位置で回転する下ローラ16と自重により下ローラに当接している上ローラ17との対からなる挟持ローラで、芯糸18は、下ローラ16と上ローラ17で挟まれた状態で、ドラフトローラ15を通過する。上ローラ17は、支点軸19で揺動自在に枢支されたアーム21の先端に軸着されており、アーム21と反対側に延びるネジ杆22に螺合した錘23の位置を調整することによって、上ローラ17の挟持力が調整されるようになっている。
【0025】ドラフトローラ15の下流側には、所定速度で駆動される巻取ボビン24が設けられている。巻取ボビン24の前面には、巻き取られる糸を巻取ボビン24の軸方向に周期的に振り動かして均一な巻き形状とするためのトラバーサ25が配置されている。巻取ボビン24の駆動装置は図示していないが、ボビン軸を駆動する直接駆動方式や、ボビンの周面に駆動ローラを当接させて間接駆動する方式など、従来公知の駆動手段を採用することができる。また巻取ボビン24としては、筒状の芯に巻き取るもののほか、糸車に巻き取って綛(ハンク)とすることもできる。
【0026】上記の構造において、芯糸供給装置1に装着されたボビン11、12・・から芯糸18a、18b・・を引き出しながらボビンフレーム4を回転させると、ドラフトローラ15の上流側の位置で複数の芯糸18a、18bが撚り合わされて1本の芯糸18となり、ドラフトローラ15と巻取ボビン24との間で、両者の速度差またはドラフトローラ15の抵抗に起因する張力が与えられた状態で芯糸18が巻き取られていく。
【0027】複数の芯糸18a、18b・・が撚り合わされる位置26の上方には、処理液を収容する容器27が配置されており、この容器27の底面に設けた流出筒28の先端が、撚り合せ位置26の直上に臨んでいる。流出筒28の先端には、流出口29が開口しており、この流出口29から容器27内の処理液が自重により流出する。複数の芯糸18a、18b・・は、この流出口から流下する処理液を通過した直後の位置で撚り合わされる。芯糸が処理液中を通過する部分が、請求項で言う捕捉通路31である。捕捉通路31及びその前後の下方には、流出した処理液を受ける受け樋32が設けられており、この受け樋から流出した処理液は、その下方に配置された受け容器33へと流入する。
【0028】受け容器33には、循環ポンプ34の吸入配管35が連通されており、循環ポンプ34の吐出配管36は、上方の容器27に連通されている。そして流出口29から流出する処理液と等量の処理液が、循環ポンプ34により受け容器33から上方の容器27へと供給されている。
【0029】容器27及び受け容器33には、ブロワ37の吐出空気が空気管38によって供給されている。空気管38は容器27及び受け容器33の底部に開口しており、そこから噴出する空気が容器27及び受け容器33内の処理液を撹拌している。
【0030】容器27及び受け容器33には、こうぞやみつまたなどの和紙の原料となる短繊維71を水中に分散した処理液72が入れられており、これらの短繊維71は、容器内に噴出する空気によって撹拌されて、容器内の水にほぼ均一に分散している。水に分散した短繊維71は、流出口29から流下したとき、その下を通過する芯糸18a、18b・・に一部のものが引っ掛けられた状態で捕捉され、その直後に複数の芯糸18a、18b・・が撚り合わされることにより、芯糸に撚り込まれた状態で捕捉される。
【0031】水及び捕捉されなかった短繊維71は、受け樋32を通って受け容器33に返却される。受け容器33としては、十分大きな容積のものを用いるが、長時間運転したときは、処理液内の短繊維の濃度が低下する。これを補うため、受け容器33に定期的に必要な量の短繊維を供給するための供給装置(図示せず)を配置することにより、連続運転が可能である。
【0032】ドラフトローラ15の下流側には、公知のカバーリング装置が設けられている。このカバーリング装置39は、付加的に設けられたもので、回転する円筒41の一箇所に、カバーリングヤーンのボビン42を軸支した構造であり、短繊維を捕捉した糸20は円筒41の軸心を通過している。円筒に設けた孔43を通してカバーリングヤーン44の糸端を糸20に巻き付け、円筒を回転してやれば、カバーリングヤーン44が糸20に巻き付けられていく。このようなカバーリング装置39は、たとえば糸20に捕捉された短繊維の上にさらに細いカバーリングヤーン44を巻き付けて、より複雑な風合を持った意匠糸を製造する際に用いられる。
【0033】このカバーリング装置39のさらに下流側には、固定板45と可動板46とを備えた捻り装置47が配置されている。固定板45は、上面に滑り止めのゴムシートを貼った固定面48を備えている。可動板46は、図2に示すような凸曲面となった可動面49を備えており、この可動面にも滑り止めのゴムシートが貼着されている。ゴムシートとしては、糸20と平行な方向の細い溝を多数有する溝付きゴムシートを用いるのがより好ましい。糸20は固定面48に摺接するようにして、固定面48と可動面49の間を通過している。
【0034】可動板46の上方には、図3に示す揺動クランク機構51が配置されている。クランク52の軸53は、糸20と平行で電動機54により一定速度で回転駆動されている。クランク52には揺動ロッド55が枢支連結されており、揺動ロッド55の先端は、スライドガイド56で軸方向移動自在に保持されている。スライドガイド56は、クランク軸53と平行なピン57まわりに揺動可能なブラケット58に固定されている。従ってクランク52を回転させることにより、揺動ロッド55は、図3で左右方向に往復移動しながら、それと同期した周期で上下方向に揺動する。上下方向の揺動の振幅は、クランク52との連結端においては水平方向の振幅と同じであるが、スライドガイド56の部分では0である。従って、その中間部においては、揺動ロッド55は図3で左右に細長い楕円運動をすることとなる。
【0035】この揺動ロッドの中間位置に支持プレート59が固着され、この支持プレートに面直角方向のガイド孔61が設けられている。このガイド孔61には、可動板46の背面に立設したガイドピン62が挿通されており、かつこのガイドピンに挿通した圧縮バネ63が支持プレート59と可動板46との間に介装されている。ガイドピン62の上端にはストッパ64を設けて、ガイドピン62がガイド孔61から脱落しないようになっている。バネ63は弱いバネ力で可動板46を下方に付勢している。
【0036】以上の構成において、クランク52を回転させることにより、可動板46は固定板45に一定周期で近接離隔し、近接したときに固定面48と可動面49との間で糸20を挟持する。そして近接時における揺動ロッド55の水平方向の動きにより、挟持した糸20に捻りを与える。そして水平方向のストローク端近くにおいて、可動面49は上動して糸20から離隔し、揺動ロッド55の水平移動により、元の位置に戻る。この動作を繰り返すことにより、糸20は間歇的な捻りが与えられる。
【0037】捻り装置47の下流側には、図1に示すように、乾燥室65が配置されており、糸20は乾燥室65を通過して乾燥した後、トラバーサ25を通って巻取ボビン24に巻き取られる。乾燥室65は、たとえばヒータと熱風とを併用して、中を通過する糸20を乾燥させる。
【0038】以上説明した製造装置において、芯糸ボビン11、12から引き出された糸は、容器の流出口29から流出する処理液内を通過するときに、処理液中の短繊維71の一部を捕捉し、芯糸に短繊維が引っ掛かったような状態でドラフトローラ15を通過する。このドラフトローラ15により、芯糸に引っ掛かった短繊維71に含まれる水の一部が絞り取られるとともに、糸20に張力が付与される。次いで捻り装置47を通過するとき、可動面49から与えられる捻り作用により、芯糸18に引っ掛けられた状態の短繊維が、糸20の周面に巻き付けられる。そして乾燥室65を通過して周囲に短繊維を巻き付けた構造の意匠糸は、巻取ボビン24に巻き取られる。
【0039】図4は芯糸を処理液に浸漬させる構造の装置を示す要部の側面図である。この構造は、循環ポンプ34で処理液72を容器27内に噴出して流動(兼撹拌)するようにしたもので、芯糸18a、18bを、処理液に浸漬した溝付ローラ66の下方に周回して、容器内の処理液中を通過させるようにし、その芯糸の捕捉通路31に処理液72を噴出する噴出ノズル67を向けた構造である。
【0040】捻り装置47としては、種々の構造の装置が考えられる。たとえば図5に示す構造は、内筒面にブラシ73を植毛した円筒74を回転させ、糸20を円筒74の中心から若干偏倚した位置に通過させる構造である。図6に示す構造は、軸心の前端と後端とに糸の通過孔75を設けた円筒ケース76にボール77を緩く充填し、この円筒ケースを前記軸心まわりに回転させる構造である。円筒ケースを通過する糸には、周回するボールを介して捻り力が与えられる。
【0041】図7に示す構造は、互いに逆方向に走行する2本のベルト78、78の間に、そのベルト78、78の走行方向と直交する方向に糸20を通過させる構造である。また図8に示す構造は、互いに逆方向に走行するベルト78、78を交叉させて配置し、これらのベルト78、78から糸20に捻り力と糸の送り方向の力とを同時に作用させる構造である。
【0042】また図9に示す構造は、円筒79の内周に先端相互が自身の弾力により弾圧された2枚の可撓性弾性板81を対向させて植設し、円筒79を回転させながら、可撓性弾性板81、81の先端当接部の間に糸20を通過させる構造である。以上に例示した構造のほか、糸20の外周に接触して糸20の横方向に移動する部材を備えた装置は、この発明の装置における捻り装置として用いることが可能である。尤も、捻り装置の構造によって芯糸への短繊維の巻付け態様は微妙に異なり、目的とする糸によって構造に適不適がある。
【0043】以上の説明においては、処理液72に分散した短繊維71として、こうぞ、みつまたの繊維を用いている。このような短繊維を用いることにより、織ったときに和紙に似た表面の風合を持つ独特な織物を織り上げることができる。しかしこの発明の方法及び装置は、短繊維の種類を特に限定するものではなく、天然または合成の各種の短繊維を用いることによって、色々な風合を備えた糸及び布を得ることができる。
【0044】
【発明の効果】以上説明したこの発明の方法及び装置により、従来の方法及び装置では得られなかった独特な風合を持った意匠糸を得ることができ、これらを適宜織りまたは編むことにより、特に装飾的な用途に好適な厚地の布地を得ることができるという効果がある。
【出願人】 【識別番号】395017667
【氏名又は名称】松中合繊工業株式会社
【出願日】 平成7年(1995)8月28日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】西 孝雄
【公開番号】 特開平9−67726
【公開日】 平成9年(1997)3月11日
【出願番号】 特願平7−243633