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【発明の名称】 ミシン糸、その製造方法及びバグフィルター
【発明者】 【氏名】刀祢 弘之

【氏名】岡崎 統

【氏名】三吉 威彦

【目的】
【構成】
【特許請求の範囲】
【請求項1】ポリフェニレンサルファイド繊維の短繊維で構成されていることを特徴とするミシン糸。
【請求項2】該ポリフェニレンサルファイド繊維が、0.8〜10.0dの単繊維繊度を有するものである請求項1記載のミシン糸。
【請求項3】該ポリフェニレンサルファイド繊維が、1〜5dの単繊維繊度を有するものである請求項1記載のミシン糸。
【請求項4】該短繊維が、24〜120mmの繊維長を有するものである請求項1記載のミシン糸。
【請求項5】該短繊維が、35〜75mmの繊維長を有するものである請求項1記載のミシン糸。
【請求項6】該ミシン糸が、3.0〜5.0の下撚係数を有する単糸で構成されている請求項1記載のミシン糸。
【請求項7】該ミシン糸が、少なくとも3本の単糸を合糸したものである請求項1に記載のミシン糸。
【請求項8】該ミシン糸が、230℃での乾熱収縮率が6%以下である請求項1記載のミシン糸。
【請求項9】該ミシン糸が、230℃での乾熱収縮率が4%以下である請求項1記載のミシン糸。
【請求項10】ポリフェニレンサルファイド短繊維からなる紡績単糸を熱セットして、該単糸の180℃での乾熱収縮率を3%以下に調整した後、該単糸を3本以上合糸し、加撚した後、再度熱セットして、該合糸の200℃での乾熱収縮率を6%以下に調整することを特徴とするミシン糸の製造方法。
【請求項11】請求項1〜9のいずれかに記載されたミシン糸で縫製されたことを特徴とするバグフィルター。
【請求項12】該バグフィルターを構成する濾布が、ポリフェニレンサルファイド繊維製である請求項11記載のバグフィルター。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高温下での優れた寸法安定性と縫い目強力、可縫性にともに優れたミシン糸および耐久性に優れたバグフィルターに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、ミシン糸用素材としては綿糸、絹糸などの天然繊維、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ビニロンなどの合成繊維が用いられてきた。しかし、近年繊維製品の用途の多様化が進み、上記のような繊維では要求を満たすことができない用途が出てきた。例えば都市ごみ焼却炉などに付設される集塵機であるバグフィルターは高温下で使用されるため、瀘布を縫製するミシン糸にも耐熱性が要求される。優れた耐熱性・耐薬品性を有する繊維として使用されてきているものとしてポリフェニレンサルファイドがあるが、ポリフェニレンサルファイド繊維からなる瀘布を使用するバグフィルターは高温で運転されるため、ミシン糸にも同等の耐熱性が要求される。具体的にはポリフェニレンサルファイド繊維からなる瀘布の縫製には、ポリフェニレンサルファイド繊維からなるミシン糸を用いるのが一般的である。ポリフェニレンサルファイド繊維からなるミシン糸については、特開平1−239132号公報、特開平1−272841号公報でフィラメント糸からなるミシン糸が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】バグフィルターの縫製に用いられるミシン糸には、耐熱性のほかに高温下での寸法安定性即ち乾熱収縮率が低いこと、縫い目強力が強いこと、可縫性が良好なことが要求される。例えば高温下でミシン糸が収縮すると縫い目がパッカリング状になり好ましくない。また、縫い目強力が劣ると縫い糸切れや縫い目開きが生じ、ダストがリークするという問題が生じる。更に、バグフィルター用瀘布のごとき高目付の布帛を縫製するためには優れた可縫性が要求される。可縫性に劣るミシン糸は縫製時のミシン針との摩擦熱により縫い目の強力低下、ミシン糸の溶断、目とびなどが発生し、ダストのリークにつながる。
【0004】以上のようにバグフィルター用瀘布を縫製するミシン糸はバグフィルターの性能に大きく影響するため、より優れた高温下での寸法安定性、縫い目強力、可縫性を有するミシン糸が求められているが、従来から提案されているものは、いずれもかかる性能の全てを満足するものは存在しなかった。特にポリフェニレンサルファイド繊維からなる瀘布を用いたバグフィルターはその耐熱温度を考慮して170〜190℃で使用されるものの運転上230℃程度まで上昇することもあるので、より高温での寸法安定性に優れたミシン糸が求められていた。
【0005】本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑み、高温下での乾熱収縮率が小さい寸法安定性に優れ、縫い目強力、可縫性にも優れたミシン糸およびその製造方法およびかかるミシン糸によって縫製された形態安定性とその耐久性に優れたバグフィルターを提供せんとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】かかる本発明の課題を解決するために、次のような手段を採用する。すなわち、本発明のミシン糸は、ポリフェニレンサルファイド繊維の短繊維で構成されていることを特徴とするものであり、かかるミシン糸の製造方法は、ポリフェニレンサルファイド短繊維からなる紡績単糸を熱セットして、該単糸の180℃での乾熱収縮率を3%以下に調整した後、該単糸を3本以上合糸し、加撚した後、再度熱セットして、該合糸の200℃での乾熱収縮率を6%以下に調整することを特徴とするものである。また、本発明のバグフィルターは、かかるミシン糸で縫製されたことを特徴とするものである。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明は、高温下での寸法安定性、縫い目強力、可縫性のいずれの特性にも優れたミシン糸を求め、かつ、かかるミシン糸によって、特に耐熱性繊維、たとえばポリフェニレンサルファイド繊維製瀘布のように、200℃以上という高温下においても形態安定性および縫い目強力に優れ、フィルター特性の安定したバグフィルターを提供せんと鋭意検討したものである。その結果、ポリフェニレンサルファイド繊維の短繊維からなるスパン糸を採用すること、それも特定な単繊維繊度、特定な繊維長の短繊維および特定な下撚係数を有する単糸とのコンビネーションとすることによって、より確実に達成されることを究明したものである。本発明でいうポリフェニレンサルファイド繊維とは、耐薬品性、耐熱性に優れていることで知られている、その構成単位の90モル%以上が−(C6 H4 −S)n −で構成される重合体であるポリマで構成されている繊維である。
【0008】高温下でのミシン糸の寸法安定性を向上させるためには、ミシン糸の230℃における乾熱収縮率を8%以下にすることが好ましい。230℃における乾熱収縮率が8%を越えると、縫い目がパッカリング状になり問題となる。本発明のミシン糸は、熱セット温度を140℃以上とすることにより230℃の乾熱収縮率を8%以下とすることができる。
【0009】かかるミシン糸は、好ましくは24〜120mm、さらに好ましくは35〜75mmの繊維長を有する短繊維であること、さらに好ましくは単繊維繊度0.8〜10.0d、さらに好ましくは1〜5dの範囲の繊維であること、また、さらに好ましくは該ミシン糸が、3.0〜5.0の下撚係数を有する単糸で構成されていることによって達成される。
【0010】すなわち、及び厚手生地縫製時の可縫性を改善するためには、ミシン糸をポリフェニレンサルファイドスパン糸にすることが肝要である。ミシン糸はミシン針との摩擦熱により高温となり、ミシン糸の強度低下あるいは溶断が起きる。この現象は合成繊維のフィラメント糸において特に顕著である。一方スパン糸では、糸表面の毛羽による随伴気流によりミシン針が冷却されるという作用がある。またスパン糸はフィラメント糸と比較して、毛羽どうしが絡合することにより、縫製時に発生するミシン糸の糸割れや撚移動が生じにくいという作用がある。かかる事実に鑑みミシン糸としてポリフェニレンサルファイドスパン糸を採用し、そりによって、可縫性が良好になること、さらに、高目付生地縫製時の可縫性に優れたミシン糸を得ることも究明したものである。
【0011】かかるポリフェニレンサルファイドスパン糸製ミシン糸によれば、縫い目強力も改善される。すなわち、スパン糸と縫製する瀘布との摩擦がフィラメント糸に比較して大きく、縫製時のミシン針温度の上昇を制御される結果、ミシン糸の強度低下を抑えることができ、該ミシン糸の強度をそのまま維持して、縫製品に活用されるので、得られる縫製品の縫い目特性を確保することができる利点がある。すなわち、ポリフェニレンサルファイド繊維製濾布の如き耐熱性繊維製布帛の縫製品の場合には、本発明のミシン糸による縫い目および製品形態は、熱によって、強度低下、収縮や変形が惹起せず、したがって、形態安定性および縫い目強力に優れ、製品特性の安定したものを提供することができる。
【0012】かかるミシン糸は、ポリフェニレンサルファイド短繊維で達成されることは、もちろん、さらに好ましくは、上述の繊度、繊維長およびミシン糸用単糸の撚係数3.0〜5.0であるという3つの要件を満足することが、該ミシン糸の強力及び可縫性、さらに乾熱収縮率の3つの性質の上から特に好ましい。さらに、可縫性を改善したい場合には、合糸本数を3本以上にすることが望ましい。すなわち、合糸トータル繊度は同じでも単糸繊度を小さくして多数本合糸とすることにより、可縫性をさらに改善することができ、さらに強度低下を抑制することもできる。
【0013】本発明のミシン糸は、次ぎのようにして製造する。すなわち、ポリフェニレンサルファイド短繊維からなる紡績単糸を熱セットして、該単糸の180℃での乾熱収縮率を3%以下に調整した後、該単糸を3本以上合糸し、加撚した後、再度熱セットして、該合糸の200℃での乾熱収縮率を6%以下に調整することにより製造される。
【0014】すなわち、本発明のミシン糸は、かかる2段熱セットすることと、上述の繊度、繊維長および単糸撚係数の3つの要件との相乗効果により、はじめて、該ミシン糸の強力及び可縫性、さらに乾熱収縮率の3つの性質を安全に確保することができるのである。
【0015】まず、紡績単糸の段階で、たとえば70〜100℃の湿熱または乾熱でセットして、該単糸の180℃での乾熱収縮率を3%、好ましくは2%以下に調整する。次いで、かかる単糸を3本以上合糸して、加撚した後、さらに、たとえば150〜200℃の湿熱または乾熱でセットして、200℃での乾熱収縮率を6%以下、さらに好ましくは5%以下に抑制することによって製造される。かかるミシン糸は、好ましくは5〜10番手、特に好ましくは6〜8番手で使用される。なお、かかるミシン糸の特性を損なわない範囲内において、他の短繊維をブレンドしたり、場合によっては、芯にフィラメント糸を使用することもできる。
【0016】本発明のバグフィルターは、以上に記載されたミシン糸を用いて、濾布を縫製して形成されているものであり、特にかかるミシン糸の特徴は、耐熱性繊維製濾布、たとえばフッ素系繊維製、ポリアミドイミド繊維製、ポリイミド繊維製、芳香族ポリアミド繊維製、ポリフェニレンサルファイド繊維製などの濾布との組合せにおいて十分に発揮されるものである。
【0017】
【実施例】以下、本発明を実施例によって説明する。なお乾熱収縮率、縫い目強力、可縫性は下記方法により測定した。
【0018】(乾熱収縮率)縫い糸のカセをつくり、乾燥機で30分間、無荷重下で表1に示した温度で熱処理を行い、次式により求めた。
【0019】
乾熱収縮率(%)=(L−L´)/L×100ここで、L:熱処理前の長さ(cm)、L´:熱処理後の長さ(cm)
(縫い目強力)
ミシン針 :オルガン DB−1 #16ステッチ数:10ステッチ/3cm生 地 :ポリフェニレンサルファイドフェルト(目付550g/m2 基布入り)2枚重ね方 法 :10cm幅の生地を2枚重ねで縫製し、縫い目を中心にし広げ、引っ張り速度10cm/分で引っ張り試験を行う。
【0020】(可縫性)
ミシン :本縫ミシン(JUKI DLU-491-5)
ミシン針 :オルガン DB−1 #18ステッチ数:15ステッチ/3cm生 地 :ポリフェニレンサルファイドフェルト(目付550g/m2 基布入り)2枚重ね判 定 :ミシン回転数を200spm 刻みで上げてゆき、縫糸切れが発生した回数により判定した。
【0021】実施例1単糸繊度2d、カット長51mm、捲縮数14コ/インチのポリフェニレンサルファイド短繊維を用い、通常の紡績工程で撚係数3.4、撚方向Sの撚糸を行い、次いで湿熱90℃で20分間セットし、番手20sのミシン糸単糸とした。この単糸は、180℃での乾熱収縮率が1.7%であった。さらにかかる単糸を3本引き揃えて下撚数の80%をZ方向に撚糸し、次いで湿熱150℃で30分間セットし、ミシン糸とした。このミシン糸の乾熱収縮率、縫い目強力、可縫性を表1に示した。
【0022】比較例1単糸繊度4d、フィラメント数50本のポリフェニレンサルファイドフィラメントを用い、650T/m、撚方向Sの撚糸を行った。このものの乾熱収縮率は、180℃での乾熱収縮率が4.0%であった。この撚糸を3本引き揃えて下撚数の80%をZ方向に撚糸し、次いで湿熱150℃で30分間セットし、ミシン糸とした。このミシン糸の可縫性、縫い目強力、乾熱収縮率を表1に示した。
【0023】
【表1】

表1から明らかなように、本発明のポリフェニレンサルファイド短繊維からなるミシン糸は従来のポリフェニレンサルファイドフィラメント糸からなるミシン糸に比較して、縫い目強力、可縫性に優れている。また、230℃乾熱収縮率を8%以下とすることができ、高温下での寸法安定性に優れている。
【0024】実施例2、比較例2実施例1のミシン糸を用いて、ポリフェニレンサルファイド繊維からなる濾布を縫製してバグフィルターを形成した。このバグフィルターを、使用温度170〜190℃のゴミ焼却炉用バグフィルターとして使用した。
【0025】比較例1のミシン糸を用いて、実施例2と同様にポリフェニレンサルファイド繊維からなる濾布を縫製してバグフィルターを形成し、同じくゴミ焼却炉用バグフィルターとして使用した。
【0026】それぞれのバグフィルターを、12か月後に取り出して確認したところ、実施例2のものは、ミシン糸の収縮によるパッカリングなどは全く生じておらず良好な状態を維持していたのに対して、比較例2のものは縫い目がミシン糸の収縮によるパッカリングが見られ、リテーナとの当たりが生じていた。
【0027】
【発明の効果】本発明のミシシン糸によれば、高温下での優れた寸法安定性、縫い目強力、可縫性に優れているので、高温下での形態安定性とその耐久性に優れたバグフィルターを提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
【出願日】 平成7年(1995)8月23日
【代理人】
【公開番号】 特開平9−59841
【公開日】 平成9年(1997)3月4日
【出願番号】 特願平7−214781