トップ :: D 繊維 紙 :: D02 糸;糸またはロ−プの機械的な仕上げ;整経またはビ−ム巻き取り




【発明の名称】 フリクションディスク
【発明者】 【氏名】竹之内 一憲

【目的】
【構成】
【特許請求の範囲】
【請求項1】熱伝導率が29W/m・K以上のセラミックスからなり、糸条との接触面における結晶粒子のエッジを丸くしたことを特徴とするフリクションディスク。
【請求項2】上記セラミックスが炭化珪素質セラミックス、窒化アルミニウム質セラミックス、またはAl2 3 含有量99.5%以上のアルミナセラミックスのいずれかであることを特徴とする請求項1記載のフリクションディスク。
【請求項3】ポリエステル75d/48f糸を速度100m/分、張力20g、接触角45°で走行させた時の摩擦係数が0.28以上であることを特徴とする請求項1記載のフリクションディスク。
【請求項4】セラミックスからなる基体の表面に熱伝導率が29W/m・K以上の高熱伝導層を備えたことを特徴とするフリクションディスク。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、延伸しながら走行する合繊繊維フィラメント・マイクロフィラメント糸に仮撚を付与する摩擦仮撚装置におけるフリクションディスクに関するものであり、特に高品質の加工糸を得ることができ、かつ作業時の安定性、寸法精度、耐久性、ランニングコストに優れた摩擦仮撚装置用フリクションディスクに関するものである。
【0002】
【従来の技術】3軸外接型摩擦仮撚装置の構造は、図3に示すように複数のフリクションディスク10を備えた3本の回転軸20を、各フリクションディスク10が互いに部分的に重なるように配置したものである。そして、糸条30を各フリクションディスク10に接するように螺旋状に備え、各フリクションディスク10を回転させながら糸条30を矢印方向に走行させると、この糸条30に仮撚を施すことができるようになっている。
【0003】このフリクションディスク方式は、ピン方式やニップベルト方式等の仮撚方式と比較して糸張力を均一にできる作用が優れており、かつ加工速度を高速化できることから、広く使用されている。そのため、フリクションディスク10の材質、形状、組合せ等についてさまざまな提案がなされている。
【0004】例えば、特開昭49−13457号公報では樹脂製フリクションディスクが、特開昭49−69952号公報では糸との接触面に溝を形成したセラミックス製フリクションディスクが、特開昭52−15652号公報ではクロムのコーティング又はメッキを施したフリクションディスクがそれぞれ紹介されている。
【0005】ここで、上記各材質ごとに特性評価を行ったところ、表1に示すようにフリクションディスク10の材質によって糸品質、耐久性、コストが異なっている。即ち、樹脂製のものは糸品質は良好であるが、装置稼働初期のディスクの温度上昇に伴う摩擦条件の変化により張力変動を起こし、織機等の次工程の品質に悪影響を及ぼしたり、あるいは使用雰囲気や油剤により半年で外径が0.2mmも膨潤する為に、耐久性が低く、また張力モニター常備による装置のコスト上昇が問題となる。
【0006】一方、クロムをコーティングしたものは、糸の撚数、強度等の糸品質が不十分であり、コストが高いという問題がある。
【0007】また、セラミックス製フリクションディスクは、作業安定性、寸法精度、耐久性、ランニングコストに優れるが、毛羽やスノーを発生させやすく、糸品質に課題を残している。
【0008】
【表1】

【0009】そこでセラミックス製フリクションディスクの表面粗さや結晶粒子径を種々制御して加撚力を向上させ、スノー(繊維摩耗粉、油剤)を低減させる方法が提案されている。例えば、特公昭53−10185号公報にはアルミナセラミックスの結晶粒子径10〜40μm、表面粗さ1〜3sとして結晶粒子と単糸フィラメントが噛み合うようにして高加撚力を実現する方法が提案されている。特開昭51−92335号公報ではアルミナセラミックスの平均結晶粒子径30μm以上、表面粗さ3s以上として仮撚と同時に擦過傷を形成する方法が提案されている。特開昭52−18948号公報ではセラミックス、金属で表面粗さ4〜12sとして高加撚力を得る方法が提案されている。特開昭52−63461号公報ではセラミックス結晶粒子径2〜30μm、表面粗さ1〜6sとして加撚力の向上及びスノー低減する方法が提案されている。
【0010】また、特開昭52−132146号公報では純度89%以上のアルミナセラミックスで表面粗さRz=2〜3.5μm、Rmax=3〜4.5μmとして加撚力の向上及びスノー低減する方法が提案されている。特開昭53−111148号公報ではセラミックスまたはセラミックスコーティングにおいて結晶粒子径2〜30μm、表面粗さ1〜3sとして加撚力の向上及びスノーを低減する方法が提案されている。特開昭55−76127号公報では純度97%以上のアルミナセラミックスで平均結晶粒子径3〜10μm、表面粗さRz=1.6〜2.7、ディスク厚み=6〜6.2、繊維接触面のR=3.2〜3.4、繊維接触面とディスク側面とのつなぎr=0.4〜0.6として加撚力の向上をする方法が提案されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】前述のように多数の提案がなされているが、セラミックス製フリクションディスクにおいてはマイクロフィラメント加工用として、糸品質が十分なものは得られていなかった。
【0012】これは、フリクションディスク10をセラミックスで形成する場合、セラミック原料を所定形状に成形し、焼成した後、表面をダイヤモンド砥石等で研削、研摩することによって寸法精度を高めるとともに所定の表面粗さとすることから、表面の結晶粒子は鋭いエッジを有しており、糸条30を削ってスノーを発生させることを避けられないためであった。
【0013】また、フリクションディスク10の表面は糸条30が高速で通過するため、摩擦熱により発熱し高温となる。その結果、糸条30の表面が変質してスノーが発生しやすくなったり、あるいはこのスノーがフリクションディスク10の表面に付着して仮撚できなくなるグレージング現象が発生するなどの問題があった。
【0014】これらの現象により、機械の動作が不安定となり、頻繁に清掃しなければならないことから稼働率が低下するという不都合があった。
【0015】
【課題を解決するための手段】そこで本発明は、フリクションディスクを熱伝導率が29W/m・K以上のセラミックスで形成するとともに、糸状との接触面における結晶粒子のエッジを丸くしたことを特徴とするものである。
【0016】即ち、本発明のフリクションディスクは、セラミックスの表面を研削、研摩した後、再焼成等の熱処理、化学的エッチング、物理的エッチング等を施して結晶粒子のエッジを丸くすることにより、糸条にダメージを与えることなくスノー発生を防止するようにしたものである。
【0017】また、フリクションディスクを成すセラミックスとして、熱伝導率29W/m・K以上のものが必要であることを見出した。即ち、フリクションディスクの糸条との接触部には摩擦熱が生じるが、セラミックスの熱伝導率が29W/m・K未満であると、この摩擦熱が放熱されにくく高温になってしまうため、糸条をわずかに溶融させてフリクションディスクとの間にすべりを生じ、所定の撚数が得られなくなるのである。
【0018】そして、本発明では、上記熱伝導率の高いセラミックスとして、炭化珪素質セラミックス、窒化アルミニウム質セラミックス、又はAl2 3 含有量99.5%以上のアルミナセラミックスのいずれかを用いたことを特徴とする。
【0019】さらに、本発明では、上記フリクションディスクにポリエステル75d/48f糸を速度100m/分、張力20g、接触角45°で走行させた時の摩擦係数が0.28以上であることを特徴とするものである。
【0020】即ち、糸条の撚数を高めるためにはフリクションディスクとの摩擦係数が重要であり、これを上記範囲内とすることにより、優れた仮撚特性を得られるのである。
【0021】また、本発明ではセラミックス製の基体の表面に熱伝導率が29W/m・K以上の高熱伝導層を備えてフリクションディスクを構成したことを特徴とする。即ち、フリクションディスクの表面に高熱伝導層を備えることによって、糸条との接触による摩擦熱を放熱しやすくし、高温になることを防止できるようにした。
【0022】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施形態を説明する。
【0023】図1、2(A)に示すようにフリクションディスク10は、セラミックスからなる円盤状体であり、中央に回転軸への取付のための貫通孔11を有し、糸条30との接触面12は曲面状となっている。
【0024】このフリクションディスク10を3軸外接型摩擦仮撚装置に使用する場合は、図3に示すように回転軸20に取付け、各フリクションディスク10が部分的に重なるように配置し、糸条30を各フリクションディスク10に接するように螺旋状に備え、各フリクションディスク10を回転させながら、糸条30を矢印方向に走行させると、この糸条30に仮撚を施すことができる。
【0025】このとき、糸条30はフリクションディスク10の接触面12によって撚りを施されるため、この接触面12の状態が重要である。
【0026】そして、本発明ではこの接触面12において結晶粒子のエッジを丸くすることによって、スノー発生を防止し、かつ結晶粒子を小さくして多くの撚りを付与させるようにした。
【0027】ここで、結晶粒子のエッジが丸いとは、表面の顕微鏡写真等によって結晶粒子を観察した時に、各結晶が鋭いエッジを有しておらず丸い形状であることを意味する。そして、結晶粒子のエッジを丸くするためには、再焼成、化学的・物理的エッチング等を行えば良い。例えば、再焼成を行う場合は、所定の製造方法によって得られたセラミックス製のフリクションディスク10に研削、研摩加工を施した後で、焼成温度と同程度かそれ以上の温度で再度焼成すれば良い。このように再焼成することによって、結晶エッジが加熱軟化されて鋭いエッジのない丸い形状となる。また、化学的・物理的エッチングを行えば結晶粒子のエッジ部がエッチングで除去されて丸みを帯びた形状となる。
【0028】また、本発明では、フリクションディスク10を成すセラミックスとして、熱伝導率が29W/m・K以上の熱伝導性の高いセラミックスを用いたことを特徴とする。そのため、糸条30の摺動により接触面12に生じた摩擦熱を良好に放熱し、接触面12が高温となることを防止できることから、糸条30の溶融に伴うすべりの発生を防止し、仮撚特性を向上できるのである。
【0029】なお、上記熱伝導率が29W/m・K以上のセラミックスとしては、高純度アルミナセラミックス、炭化珪素質セラミックス、窒化アルミニウム質セラミックス等を用いる。
【0030】高純度アルミナセラミックスとしては、Al2 3 含有量が99.5重量%以上、好ましくは99.7重量%以上であり、残部がSiO2 等からなるものである。このように、アルミナセラミックスにおけるAl2 3 含有量を高くすることにより、熱伝導率を向上できるとともに硬度、強度を大きくできることから、フリクションディスク自体の耐久性を向上できる。そして、Al2 3 含有量を99.5重量%以上とすることにより、熱伝導率を29W/m・K以上とすることができ、上述したように仮撚特性を向上できる。
【0031】また、Al2 3 含有量が99.5重量%以上、好ましくは99.7重量%以上のアルミナセラミックスは、結晶粒子を丸くするために再焼成を行った場合でも結晶の異常成長を抑制しやすいため、上述した最大結晶粒径20μm以下となるような焼結体を容易に得ることができる。
【0032】また、炭化珪素質セラミックスとは、SiCを主成分とし、B,CまたはAl2 3 ,Y2 3 等の焼結助剤を含有するものであり、60〜70W/m・Kの熱伝導率を有している。
【0033】さらに、窒化アルミニウム質セラミックスとは、AlNを主成分とし、焼結助剤としてCaO,SrO,BaO等の周期律表第2a族元素酸化物や、Y2 3、Er2 3 、Yb2 3 等の周期律表第3a族元素酸化物を0.5〜20重量%の割合で添加したものであり、焼成過程でこれらの焼結助剤成分を0.001〜1重量%程度にまで揮散させることによって、熱伝導率を170W/m・K以上まで高めたものである。
【0034】また、本発明のフリクションディスク10において、接触面12の最大粒子径は20μm以下とすることが好ましい。これは、粒子径が20μmを超えるような粗大粒子が存在すると、この粗大粒子部分で糸条30が滑って摩擦力が弱まり、撚りを付与しにくくなるためである。これに対し最大結晶粒子径が20μm以下であれば、全体の結晶粒子径が小さく、均一である為に、糸に対する撚掛け性にも優れた結果を示す。ちなみに、平均粒子径は2〜7μmの範囲内が好ましい。
【0035】さらに、結晶粒子の最大アスペクト比は3以下であることが好ましい。ここで、アスペクト比とは粒子の短径に対する長径の比のことであり、最大アスペクト比を3以下としたのは、アスペクト比が3を超えるような柱状粒子が存在すると、この柱状粒子部分で糸状30との摩擦力が弱まり、撚りを付与しにくくなるためである。つまり、結晶粒子のアスペクト比が小さく、球形状に近い多角形形状であると、平均的に糸に接触する結晶粒子のR形状が大きくなる結果、スノー発生量は小さくなる。
【0036】なお、上記最大結晶粒子径と最大アスペクト比は、いずれも表面の顕微鏡写真を元にして測定することができる。また、最大結晶粒子径と最大アスペクト比を上記範囲内とするためには、セラミック原料の組成や粒径あるいは本焼成や再焼成の条件等を調整すれば良い。
【0037】また、上記フリクションディスク10の接触面12の表面粗さ(Ra)は0.1〜1.5μmの範囲が好ましい。これは、表面粗さ(Ra)が1.5μmを越えると糸条30との摩擦係数が小さくなり過ぎて仮撚特性が悪くなるためである。また、表面粗さ(Ra)を小さくすると摩擦係数が大きくなって仮撚特性が向上するが、0.1μm未満になると急激に摩擦係数が増加することから、糸条30が接触面12でスリップして加熱され、仮撚を施せなくなってしまうためである。さらに、接触面の表面粗さ(Ra)は、0.6〜0.9μmの範囲内とすることが好ましい。
【0038】次に本発明の他の実施形態を説明する。
【0039】図2(B)に示すように、セラミックス製の基体10aの少なくとも糸条30が接触する表面に高熱伝導層10bを備えてフリクションディスク10を形成することもできる。このようにすれば、糸条30との接触面12の熱伝導性が高いため、糸条30が高速で摺動しても発生した摩擦熱を良好に放熱し、フリクションディスク10が局部的に高温となることを防止できるのである。
【0040】即ち、フリクションディスク10と糸条30とは共に高速で移動し、かつ両者の接触点が小さいので、フリクションディスク10の極表層の熱伝導形態が重要である。一般に、結晶体の熱伝導について以下の式が提案されている。
【0041】λ=1/4(ρ・v・l・c)
λ:熱伝導率 ρ:密度 v:熱弾性波の平均伝播速度l:フォノンの平均自由工程で、熱弾性波が相互干渉を受けて最初の強さの1/eに減少するまでの距離c:固体の比熱熱伝導率の大きい材料では、熱弾性波の平均伝播速度v及びフォノンの自由工程で熱弾性波が相互干渉を受けて最初の強さの1/eに減少するまでの距離lが大きくなるために、糸接触点つまり加熱源から熱がフリクションディスク10の極表層を大きい速度で伝播され、雰囲気空気に放熱することで接触面12の温度上昇が抑制されるのである。
【0042】したがって、フリクションディスク10の場合、表面に高熱伝導層10bが存在していれば十分な熱伝導性と放熱性があり、接触面12の温度上昇を防止することができるのである。
【0043】なお、上記基体10aを成すセラミックスとしては、上述した炭化珪素質セラミックス、窒化アルミニウム質セラミックス、高純度アルミナセラミックスに限らず、低純度アルミナセラミックスやジルコニアセラミックス等を用いることもできる。
【0044】また、高熱伝導層10bは、29W/m・K以上の熱伝導率を有するAlN,TiN等の窒化物、SiC,B4 C等の炭化物、TiB2 ,ZrB2 ,HfB2等のホウ化物、あるいはAl2 3 ,DLC(ダイヤモンドライクカーボン、合成疑似ダイヤモンド、アモルファスカーボン、i−カーボン等とも呼ばれる),ダイヤモンド等を用いる。
【0045】これらの高熱伝導層10bは、基体10a上にCVD法やPVD法等の薄膜形成手段で形成することができ、特に熱CVDでは成膜面に垂直に柱状結晶が成長する傾向を利用して成膜により半球状の凹凸を形成できる。
【0046】あるいは、基体10aをアルミナセラミックスで形成しておいて、窒素ガス中で熱処理したり、あるいはNイオンをドープする等の方法よって表面に窒化アルミニウムからなる高熱伝導層10bを形成することもできる。
【0047】いずれの場合も、高熱伝導層10bの厚みは0.1μm以上とすることが好ましく、また接触面12における表面粗さや結晶の粒径、形状等の好ましい範囲は前述の実施形態と同様である。
【0048】
【実施例】
実験例1ここで、図1、2に示すフリクションディスク10をアルミナセラミックスにより作製した。表2に示すように、Al2 3 含有量の異なる原料粉末に成形に必要なバインダー成分を加えて、造粒した後に円盤状に成形し、結晶粒成長を抑えて緻密体が得られるように比較的低温の焼成を行った。次に研削加工にて所定の寸法形状とし、バレル加工にて表面を仕上げた後、再焼成して接触面12の結晶粒子を丸くした。
【0049】各々のAl2 3 含有量の異なるアルミナセラミックスについて、特性と結晶の形状や粒径のばらつきを比較したところ、表2に示す通りであった。この結果より、Al2 3 含有量を多くすることによって熱伝導率を高くでき、放熱性を向上できることがわかる。また、同時にビッカース硬度、曲げ強度も高くできることから、フリクションディスク自体の耐久性も向上できる。
【0050】また、結晶粒子の形状と粒径のばらつきについて見てみると、Al2 3 含有量99.5重量%のものでは、アスペクト比が3に近い柱状の結晶が多く見られるが、Al2 3 含有量を高くするほど結晶粒子の形状が球状に近い多角形状でアスペクト比も小さくなり、粒径のばらつきも小さくなることがわかる。これは、再焼成時にAl2 3 含有量の低いものほど異常粒成長が生じやすいためである。
【0051】
【表2】

【0052】そして、これらのフリクションディスク10を摩擦仮撚装置に実装して仮撚試験を行ったところ、Al2 3 含有量が高いほど撚数が大きく、スノー発生量が少なくなった。
【0053】つまり、Al2 3 含有量が高いほど熱伝導率が高くなるため、フリクションディスク10の糸条30との接触面12での温度上昇が抑えられ、低スノー、高糸品質、高加撚力を実現できるのである。
【0054】また、Al2 3 含有量が高いほど、結晶粒子のアスペクト比が小さく球状に近い多角形状であることから、平均的に糸条30に接触する結晶粒子の曲率半径が大きくなる結果スノー発生量は小さくなり、また結晶粒子径が小さく均一であるために、糸条30に対する撚掛け性にも優れた結果を示すことになるのである。
【0055】したがって、Al2 3 含有量を99.5重量%以上、好ましくは99.7重量%以上とすることによって、結晶粒子が小さく、結晶粒子のエッジが丸く、結晶粒子が球形状に近い多角形状で、熱伝導率が29W/m・K以上と大きいセラミックス製フリクションディスクを得ることができ、優れた高糸品質、高加撚力を得ることができる。
【0056】なお上記アルミナセラミックスの熱伝導率をさらに向上させるために、気孔率を小さくしたり、アルミナセラミックスの粒界層に高熱伝導率材料を用いる等の工夫を行うこともできる。
【0057】実験例2次に、窒化アルミニウム質セラミックスでフリクションディスク10を作製した。主成分であるAlNに焼結助剤としてEr2 3 を添加し、得られた原料粉末を円盤形状に成形し、焼成した。焼結体を研削加工、バレル加工にて表面を仕上げた後、再焼成した。
【0058】このようにして得られた窒化アルミニウム質セラミックスは、熱伝導率170W/m・Kで、結晶粒子が丸く、最大結晶粒径は20μmで、最大アスペクト比は3であった。
【0059】この窒化アルミニウム質セラミックス製のフリクションディスク10について、上記と同様に実機評価したところ、極めて熱伝導率が高く放熱性に優れることから、スノー量、仮撚特性の点でさらに優れた結果を示した。
【0060】実験例3図1、2(A)に示すフリクションディスク10を作製した。セラミック原料として、99.5%以上のAl2 3 、焼結助剤であるMgO,SiO2 、及び不可避不純物からなる混合原料を粉砕し、粒径3μm未満、好ましくは1μm未満の微粉原料を得た。この原料粉末に、成形に必要なバインダー成分を加えて、造粒した後に円盤状に成形し、結晶粒成長を抑えて緻密体が得られるように比較的低温の焼成を行った。次に研削加工にて所定の寸法形状とし、バレル加工にて表面を仕上げた後、再焼成して接触面12の結晶粒子を丸くした。
【0061】上記方法により得られた本発明実施例のフリクションディスク10の接触面12を400倍に拡大した結晶顕微鏡写真及び結晶粒子の模式図を図4に示すように、最大結晶粒子径は20μm以下、平均結晶粒子径10μm以下で最大アスペクト比は2〜3と、結晶粒子は丸く小さなものであった。
【0062】一方、比較例として、上記と同様の製造方法で原料粉末の粒径を3μmと大きくし、また焼成温度や再焼成温度を共に高温とすることによって、最大結晶粒子径が40〜60μmと大きく、結晶粒子のエッジが丸いフリクションディスク10を作製した(比較例1)。この接触面12を400倍に拡大した結晶顕微鏡写真及び模式図を図5に示すように、結晶粒子は丸く大きいものであった。
【0063】また、他の比較例として、上記と同様の製造方法で原料粉末の粒径が1〜3μmで、研削・バレル加工後の再焼成を行わず、接触面12がバレル仕上げ面のままであるフリクションディスク10を作製した(比較例2)。この接触面12を400倍に拡大した結晶顕微鏡写真の模式図を図6に示すように、最大結晶粒子径20〜15μm程度で、最大アスペクト比2〜3と細長い結晶粒子形状をしており、結晶粒子はエッジが鋭く小さいものであった。
【0064】さらに他の比較例としてクロムをコーティングしたもの、樹脂からなるものを用意し、それぞれ実機に搭載して使用試験を行った。糸条30としてポリエステル150d/48fで延伸比1.6のもの、ポリエステル75d/36fで延伸比1.68のものを用いた。
【0065】それぞれ、糸条30に対する撚数、強度、伸度、スノー発生量等を測定し、それぞれの数値を○〜×で評価した結果を表3に示す。
【0066】材質をセラミックスとした3種類について糸品質を比較すると、再焼成を行わない比較例2ではスノー発生量が多いのに対し、再焼成によって結晶を丸くした本発明実施例及び比較例1はスノー発生量が少なくなっている。即ち、糸接触面の結晶粒子に存在する鋭いエッジが刃先として働き、軟質の糸材を削ってスノーを生じることから、スノー発生量を低減させるには結晶粒子のエッジを丸くすればよいことがわかる。
【0067】一方、撚数の点からは、結晶粒子径の大きい比較例1ではスリップ現象が生じて撚数が少なくなるのに対し、結晶粒子径を小さくした本発明実施例及び比較例2では充分な撚数を得られることがわかる。
【0068】したがって、本発明実施例では、スノー発生量、強度、伸度、撚数の糸品質の総合特性において優れており、クロムコーティングを行った従来品と比較しても優れた特性を有していることがわかる。
【0069】
【表3】

【0070】次に、上記実験結果を用いて、3種類のセラミックス製フリクションディスクにおける、スノー発生量と撚数との関係をまとめたところ、図7に示す通りであった。
【0071】このグラフから明らかなように、比較例2は結晶粒子が小さく鋭いため撚数は大きいがスノー発生量が多く、また比較例1は結晶粒子が大きく丸いためスノー発生量は少ないものの撚数が小さかった。これらに対し、本発明実施例は結晶粒子が小さく丸いためスノー発生量を少なく撚数を大きくすることができ、比較例1、2よりも優れていることがわかる。このように、セラミックスの結晶粒子を小さく丸い形状とすることにより、高撚数、低スノーとなり、さらに高純度のアルミナセラミックスとすることにより特性が向上している。
【0072】なお、上記実験例では再焼成を行って、結晶粒子のエッジを丸くしたが、その他に化学的エッチング、物理的エッチング等の方法でエッジを丸くしたものでも同様であった。また、フリクションディスクをなすセラミックスの材質としては上記のアルミナセラミックスに限らず、さまざまなセラミックを用いることができる。
【0073】実験例4次にフリクションディスク10の摩擦力を測定した。
【0074】即ち、図8に示すように、回転力Vのフリクションディスク10に角度αで交差する糸状30に対する撚掛け力、送り力はそれぞれ撚掛け力=μ・V・cosα送り力 =μ・V・sinαで表され(日本繊維機械学会第37回年次大会研究発表論文集〔A−19〕より)、いずれもフリクションディスク10と糸状30との摩擦係数μで決定されることになる。つまり、摩擦係数μが大きいほど、撚掛け力、送り力を大きくできるのである。
【0075】そこで、上記実験例1に示した本発明実施例及び比較例1、2の3種類のセラミックス製フリクションディスク、及びクロムコーティングしたフリクションディスク(比較例3)を用いて摩擦係数を測定した。
【0076】摩擦係数の測定装置は図9に示すように、糸状30を張力調整機41を通してフリクションディスク10と接触角θで接触させ、巻取り機42で巻き取るようにしたものであり、フリクションディスク10前後の入力側張力Tinと出力側張力Tout から、アモントンの法則式μ={ln(Tout /Tin)}/θによって求めた。糸状30としてポリエステル75d/48f(太さ75デニール、48フィラメント)を用い、速度100m/min、入力側張力Tin20g、接触角θを45°として摩擦係数を測定した結果を表4に示す。
【0077】この結果より、比較例1と比較例3(クロムコーティング)では、結晶粒径が大きいために糸状30がスリップしやすく摩擦係数が0.26と低いため、仮撚時の撚掛け力、送り力が小さくなる。これらに対し、本発明実施例及び比較例2は最大結晶粒径が20μm以下と結晶粒子径が小さいために摩擦係数が0.30以上と大きく、仮撚時の撚掛け力、送り力を高められることがわかる。
【0078】ただし、比較例2では上述したように結晶エッジが鋭いことから糸品質を劣化させやすかったが、本発明実施例では糸品質の劣化は無かった。
【0079】なお、本実施例の製品を繰り返して製造したところ、摩擦係数は0.28〜0.32の値となり、この範囲の製品は実機評価の結果が安定して良かった。そこで摩擦係数の下限値を0.28とした。
【0080】また、以上の実験例においては再焼成によって結晶粒子を丸くしたが、その他化学的エッチング、物理的エッチング等の方法によって結晶粒子を丸くしても同様の結果であった。
【0081】
【表4】

【0082】実験例5図2(B)に示す高熱伝導層10bを備えたフリクションディスク10を作製した。
【0083】基体10aはアルミナセラミックスにより形成し、その表面を研削しバレル研磨した後、その表面にSiC,Al2 3 ,TiN,TiC,TiO2 ,SiO2 の薄膜を形成し、前述の実験例と同様にして糸条30との摩擦係数を測定した。また、ボールオンディスク試験機を用いて、各種薄膜を備えたディスクを回転させながら、ナイロン樹脂からなるボールを押し当てた時のボールの摩耗量を測定した。
【0084】その結果は表5に示す通りである。表5において、熱伝導率が低いほど摩擦係数が低いことからフリクションディスクとして用いた場合に撚掛け力が小さくなることがわかる。これは、フリクションディスク10の接触面12の熱伝導率が低いと摩擦熱が逃げにくく局部的に高温となって、糸条30を溶融させてしまうためである。そして、前述した0.28以上の摩擦係数を得るためには、SiC,Al2 3 ,TiN等の29W/m・K以上の熱伝導率を有する薄膜を用いる必要がある。
【0085】また、表5における薄膜の熱伝導率と樹脂ボールの摩耗量の関係から、熱伝導率が高いほど樹脂ボール側の摩耗量が少なくなる傾向があり、特に29W/m・K以上の熱伝導率を有する薄膜を形成したものであれば極めて摩耗量を少なくできることがわかった。したがって、29W/m・K以上の熱伝導率を有する薄膜を備えたフリクションディスクを用いれば、樹脂製の糸状を摩耗させにくいことがわかる。
【0086】
【表5】

【0087】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、フリクションディスクを熱伝導率が29W/m・K以上のセラミックスで形成し、糸状との接触面における結晶粒子のエッジを丸くしたことによって、セラミックス製フリクションディスクの特徴である作業安定性、寸法精度、耐久性、低ランニングコストを維持したまま、スノー発生量を減らし、撚数を多くできることから、高品質で高加撚力を実現できるものである。
【出願人】 【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
【出願日】 平成8年(1996)3月29日
【代理人】
【公開番号】 特開平9−59836
【公開日】 平成9年(1997)3月4日
【出願番号】 特願平8−77909