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【発明の名称】 ポリエステル仮撚加工糸およびポリエステル中空繊維編織物とこれらの製造方法
【発明者】 【氏名】石井 正樹

【氏名】安達 一行

【氏名】松本 真吾

【目的】
【構成】
【特許請求の範囲】
【請求項1】 芯部に熱水膨潤率が少なくとも100%以上有する膨潤ポリマーを、鞘部にポリエステル重合体を用い、芯部/鞘部の複合比率(重量%)が20/80〜50/50である芯鞘型複合繊維からなることを特徴とするポリエステル仮撚加工糸。
【請求項2】 芯部の膨潤ポリマーが、ポリエーテルエステルアミド50〜98重量%とポリエステル2〜50重量%の混合物からなることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル仮撚加工糸。
【請求項3】 仮撚加工糸の伸縮復元率が15〜35%であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステル仮撚加工糸。
【請求項4】 仮撚加工糸に撚係数23000〜26000の追撚が施されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル仮撚加工糸。
【請求項5】中空繊維用であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル仮撚加工糸。
【請求項6】 芯部に熱水膨潤率が少なくとも100%以上有する膨潤ポリマーを、鞘部にポリエステル重合体を用い、芯部/鞘部の複合比率(重量%)が20/80〜50/50である芯鞘型複合繊維を仮撚加工することを特徴とするポリエステル仮撚加工糸の製造方法。
【請求項7】 仮撚温度100〜210℃で仮撚加工することを特徴とする請求項6に記載のポリエステル仮撚加工糸の製造方法。
【請求項8】 5500T/m以下の仮撚数で仮撚加工することを特徴とする請求項6または7に記載のポリエステル仮撚加工糸の製造方法。
【請求項9】 中空偏平度が5以下で断面中空率が20〜50%であるポリエステル中空繊維からなる仮撚加工糸を含んでなることを特徴とするポリエステル中空繊維編織物。
【請求項10】 芯部に熱水膨潤率が少なくとも100%以上有する膨潤ポリマーを、鞘部にポリエステル重合体を用い、芯部/鞘部の複合比率(重量%)が20/80〜50/50である芯鞘型複合繊維を仮撚加工し、製編織後、芯部の膨潤ポリマーを膨潤させて鞘部に亀裂を生じさせ、膨潤ポリマーを溶解し、中空部を形成することを特徴とするポリエステル中空繊維編織物の製造方法。
【請求項11】 芯部の膨潤ポリマーをアルカリ熱水で膨潤させることを特徴とする請求項10に記載のポリエステル中空繊維編織物の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、軽量かつ暖かみのある風合いを有し、外衣、中衣、内衣衣料などの衣料用素材に好適に使用することのできる中空繊維用に好適なポリエステル仮撚加工糸およびポリエステル中空繊維織編物とこれらの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、軽量織編物を得る手段としては、中空繊維を用いることが一般的に知られており、その中空率を高めることによってより軽量かつ暖かみのある織編物を得ることができる。しかしながら、中空率を極度に高めると仮撚加工等によって糸の断面が潰れ、中空率が減少するため、通常の中空糸では、織編物の軽さにも限界があった。このため、例えば、特開昭55ー93812号公報、特開平5ー331737号公報に記載されているように、溶解成分を芯部とした芯鞘型複合フィラメントを用いて、製織、製編後、溶解成分を除去することによって断面変形の少ない軽量織編物を得ることができる。
【0003】しかしながら、同公報では、溶解成分を除去するために、繊維表面から中空部に通ずる貫通溝を有しているため、加工時に糸条が受ける圧縮応力による断面の潰れによって、溶解成分が流出し、工程通過性が悪くなるとともに、優れた軽量性が得られにくいという問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、前記従来技術の問題点を克服し、仮撚加工が可能で、仮撚加工されたものであるにもかかわらず高中空率とすることができ、軽量かつ暖かみのある風合いを有する商品価値の高い中空繊維用に好適なポリエステル仮撚加工糸およびポリエステル中空繊維織編物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の課題を達成するための本発明のポリエステル仮撚加工糸は、芯部に熱水膨潤率が少なくとも100%以上有する膨潤ポリマーを、鞘部にポリエステル重合体を用い、芯部/鞘部の複合比率(重量%)が20/80〜50/50である芯鞘型複合繊維からなることを特徴とするポリエステル仮撚加工を基本構成とする。
【0006】上記の仮撚加工糸において、芯部の膨潤ポリマーが、ポリエーテルエステルアミド50〜98重量%とポリエステル2〜50重量%の混合物からなることは好ましい態様である。
【0007】さらに、仮撚加工糸の伸縮復元率が15〜35%であること、仮撚加工糸に撚係数23000〜26000の追撚が施されていることも好ましい態様である。
【0008】上記のポリエステル仮撚加工糸の製造方法は、芯部に熱水膨潤率が少なくとも100%以上有する膨潤ポリマーを、鞘部にポリエステル重合体を用い、芯部/鞘部の複合比率(重量%)が20/80〜50/50である芯鞘型複合繊維を仮撚加工することを特徴とするポリエステル仮撚加工糸の製造方法を基本とする。
【0009】上記の製造方法において、仮撚温度100〜210℃で仮撚加工すること、5500T/m以下の仮撚数で仮撚加工することは好ましい態様である。
【0010】さらにまた、本発明のポリエステル中空繊維編織物は、中空偏平度が5以下で断面中空率が20〜50%であるポリエステル中空繊維からなる仮撚加工糸を含んでなることを特徴とする。
【0011】また、上記のポリエステル中空繊維編織物の製造方法は、芯部に熱水膨潤率が少なくとも100%以上有する膨潤ポリマーを、鞘部にポリエステル重合体を用い、芯部/鞘部の複合比率(重量%)が20/80〜50/50である芯鞘型複合繊維を仮撚加工し、製編織後、芯部の膨潤ポリマーを膨潤させて鞘部に亀裂を生じさせ、膨潤ポリマーを溶解し、中空部を形成することを特徴とする。
【0012】上記のポリエステル中空繊維編織物の製造方法において、芯部の膨潤ポリマーをアルカリ熱水で膨潤させることは好ましい態様である。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明のポリエステル中空繊維編織物は、鞘部にポリエステル、芯部に中空を形成する仮撚加工された中空糸であって、中空偏平度が1.0以上5以下で断面中空率が20〜50%であるポリエステル中空仮撚加工糸を含む織編物である。中空偏平度が5を越えると断面変形が非常に大きなものとなり、中空率が低下し、十分な軽量感が得られない。よって中空偏平度は5以下とすることが重要であり、好ましくは3以下とする。
【0014】ここで本発明でいう中空偏平度とは、中空を形成する芯部の形状が円形の場合、芯部の直径が最も長いところを長径、最も短いところを短径とし、長径/短径の比で定義するものである。本発明において、芯鞘型複合繊維の形状は、鞘部の形状が丸型ばかりでなく、多角型やH型のような異型断面であってもよい。また芯部は同心や偏心円状や多島状であってもよい。
【0015】上記のポリエステル中空繊維編織物に使用される中空にする前のポリエステル仮撚加工糸は、芯部に熱水膨潤率が少なくとも100%以上有する膨潤ポリマーを、複合率20%以上50%未満に含有し、鞘部にポリエステルを50%以上80%未満に複合した芯鞘型複合ポリエステルを紡糸し、延伸後あるいは延伸しながら仮撚温度100〜210℃、仮撚数5500T/m以下で仮撚加工を行うのが好ましい。
【0016】芯部の複合比は、20%以上50%未満にすることが好ましい。芯部の比率が20%未満では、中空糸とした場合十分な軽量感が得られず、また50%以上とした場合、鞘部の比率の低下によって鞘割れが起きやすくなり、織編物とした場合引裂強力の低下が問題となるからである。
【0017】仮撚加工条件において芯部の膨潤ポリマーが溶融し、加撚時に発生する圧縮応力によって糸の断面が潰れやすくなるため、十分な捲縮を得ることと、糸の断面が潰れるのを防止する観点から、仮撚温度は100〜210℃とすることが好ましい。また仮撚数は、鞘部のポリエステルが割れ、膨潤ポリマーが流出しやすくなるのを防止する観点から、5500T/m以下とすることが好ましい。上記仮撚加工条件で本発明の芯鞘型ポリエステル繊維を加工すると、伸縮復元率が15〜35%となる仮撚加工糸が得られる。
【0018】本発明においては、上記のポリエステル仮撚加工糸を製織、あるいは製編後、アルカリ熱水で芯部の膨潤ポリマーを膨潤させ、鞘部に亀裂を生じさせ、膨潤ポリマーを溶解し、中空部を形成することによって得られる。
【0019】ここで本発明でいう熱水膨潤率とは、膨潤ポリマーを20〜80℃の熱水に2時間浸したとき、吸湿によって膨潤したポリマーの体積と、膨潤前のポリマーの体積の比である。熱水膨潤率が100%未満では、熱水処理によって十分な膨潤が得られず中空部を形成できない場合があるため、100%以上とすることが重要であり、200%以上とすることがさらに好ましい。
【0020】仮撚加工後少なくとも撚係数が23000〜26000の撚を追撚させ、製織、製編することにより撚糸織編物として使用できる。撚係数が26000を超える範囲で追撚を行うと、断面変形により中空偏平度が5を超えるため好ましくない。なお、本発明の撚係数(K)は次のようにして求めたものである撚係数(K)=T・D1/2但し、T=撚数(回/m)、D=糸繊度(デニール)
本発明に用いる芯鞘型複合ポリエステル糸の芯部の膨潤ポリマーを溶解させ、中空糸とするには、以下のように熱水で処理を行う必要がある。つまり、該芯鞘型複合糸を紡糸後、延伸した後、あるいは延伸しながら仮撚加工し、製織、あるいは製編後熱水処理を行う。この時、熱水処理としては、精練、セット後のアルカリ減量加工工程で併用する場合加工条件が、NaOH 3%ows、温度98℃で処理を行うと約5分で膨潤ポリマーを完全溶出できる。また中間セット前での精練の液流リラックス工程においても溶出が可能であり、例えば加工条件が、NaOH 1.5g/l、糊抜剤2.0g/l、キレート剤 0.4g/l、温度98℃で処理を行った場合、30〜150分の処理時間で膨潤ポリマーの完全溶出が可能である。いずれにしても通常のアルカリ減量加工や精練で、簡単に溶出できるものである。
【0021】本発明において芯部に用いられる熱水膨潤率が少なくとも100%の膨潤ポリマーは、好ましくはポリエーテルエステルアミドとポリエステルとの重量比が50:50〜95:5の混合物からなる。このポリマーは吸湿性を有するため、後加工工程での精練やアルカリ減量加工の液流処理によって体積膨潤が起こり、鞘部の側面に亀裂が生じその結果その芯部から該ポリマーが流出されるようになるのである。
【0022】ポリエーテルエステルアミドの比率が95重量%より多いと糸自体の強度が低下するため、仮撚加工時の圧縮応力に耐えられず芯部のポリマーが流出しやすくなり好ましくない。また50%重量より少ないと吸湿性が低下するため、後加工時での芯部ポリマーの流出処理時、十分な膨潤率が得られず、ポリマーの流出が困難となったり、紡糸性も低下する。よって重量比が50:50〜95:5の場合が最も好ましい。
【0023】本発明におけるポリエステル中空繊維編織物は、前記した中空の仮撚加工糸100%使いであってもよく、他の繊維との交撚、混用、あるいは交編織したものであってもよい。
【0024】
【実施例】実施例における布帛の性能は次の方法で評価した。
(1)伸縮復元率:カセを無緊張状態で90℃の熱水中に20分間浸漬し、その後12時間以上自然乾燥を行い、このカセに荷重を加え水中に浸漬した後、カセの長さを計り原長とする。次に荷重を除いてカセの長さを計り、回復した長さを原長に対する百分率で表したものと定義する。
(2)強度:インストロン社製の引張試験機を用いて通常の方法で測定を行ない、糸の強力を求め、強力/繊度で表したもの。
(3)目付け:織編物について、正確に25cm×25cmに切断した試験片を乾燥させた後、重さをはかり、得られた値を16倍して1m2 当りの重さ(g/m2 )に換算したもの。
(4)保温性:A. P. Gagge、A. e. Burtonらによって提案されたclo値法で保温性を表し、値が大きいほど暖かく、良好となる。
(5)風合い:布帛の風合いを、次の3段階で官能評価した。
【0025】○…軽量かつ暖かみのある風合いで、極めて良好△…若干の軽量かつ暖かみのある風合いで、良好×…軽量感のない風合いであり、不良以下本発明の実施例を示し、さらに詳細について説明する。
実施例1芯部にポリエーテルエステルアミドを、鞘部にホモポリマーポリエステルを同心円形に複合し、複合比が芯/鞘:20/80の総デニールが75D、フィラメント数が24である芯鞘型複合ポリエステル糸を紡糸し、3.5倍に延伸した。次いで仮撚数2820T/m、仮撚温度190℃で仮撚加工を行った。この加工糸の伸縮復元率は27.5%であった。該糸を平織に製織後、後加工工程において溶出処理を行う。この場合、精練のA法:液流リラックス(条件1)及びB法:セット後のアルカリ減量加工(条件2)の2種類の方法を用いた。
【0026】まずA法の条件は、NaOH 1.5g/l、糊抜剤 2.0g/l、キレート剤 0.4g/l、処理温度98℃である。この条件では処理時間45分で完全溶出できた。
【0027】B法の条件は、NaOH 3%ows、処理温度98℃である。この条件では5分で完全溶出できた。次いで条件1、条件2いずれも常法で染色し仕上げた。結果を表1に示す。
比較例紡糸の段階で芯部が中空となっている総デニールが75D、フィラメント数が24の通常の中空糸を用いて、実施例1と同様の仮撚加工及び後加工を行った織物の例である。
実施例2複合比が芯/鞘:30/70の総デニールが75D、フィラメント数が24である芯鞘型複合ポリエステル糸を、実施例1と同様の加工条件にて仮撚加工を行った結果、伸縮復元率は20%であった。また該糸を撚係数26000で追撚し、平織りで製織後、実施例1と同様の後加工を行ったところ、芯部の完全溶出ができた。評価結果を表1に示す。
【0028】本発明のポリエステル中空仮撚加工糸織編物は、表1で示すように、比較例対比、断面変形が少ないので、高中空率が得られ、軽量、保温性の優れた織編物となった。
【0029】
【表1】

★【0030】
【発明の効果】本発明は上記した構成とすることにより、仮撚加工が可能で、仮撚加工されたものであるにもかかわらず高中空率とすることができ、十分な軽量、保温性を有しており、着用快適性が優れているため、広い衣料用途に展開できるという効果を奏することができる。
【0031】例えば、ブラウス、スーツ、ジャケット、スラックス、コート類に適した実用性の高いものである。
【出願人】 【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
【出願日】 平成7年(1995)8月23日
【代理人】
【公開番号】 特開平9−59834
【公開日】 平成9年(1997)3月4日
【出願番号】 特願平7−239098