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【発明の名称】 糸条への液体付与方法
【発明者】 【氏名】赤崎 久仁夫

【氏名】徳永 敏幸

【目的】
【構成】
【特許請求の範囲】
【請求項1】 水槽内の液体中に一部が浸漬した回転ローラーの表面に走行糸条を間欠的に接触させて糸条の長手方向に間欠的に液体を付与せしめた後,熱処理する糸条の加工工程において,回転ローラーの表面速度と糸条の走行速度の比を1:60〜1:300とすることによって,糸条の回転ローラー表面に接する糸長よりも実質的に液体が付着する長さを短くし,かつ液体付着部と非付着部の境界をグラデーション的に変化せしめることを特徴とする糸条への液体付与方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,糸条の長手方向に間欠的に熱履歴差を与える加工法において,液体の付着長さを制御し,液体による熱遮蔽部分を短小化し,液体付着部と非付着部の境界を自然に変化させることのできる方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来,糸条の長手方向に液体を間欠的に付着せしめた後,熱処理,延伸仮撚加工を施すことにより,濃色部と淡色部による柄効果を有する糸条を形成する方法が提案されている。例えば,特公昭63−28141号公報では,液体付着部をフィラメントの断面形状が偏平化した淡色部となし,液体が付着していない個所を濃色部とする方法が提案されている。この方法によれば,液体付着長さを10mmとする場合には糸速が1500mm/sec であるので,電磁ソレノイドの作動時間を電磁ソレノイドの応答速度の限界近くの0.01秒以下にする必要があった。この限界近くの動作速度を頻繁に与えるパターンの場合には,まれに電磁ソレノイドの応答が遅れたり,不安定になるため,次の信号指令を与えても,一部の液体付着部分が消滅するという欠点があった。
【0003】さらに,特公昭63−42019号公報には,液体付与方法として,糸条の走行方向を回転ローラーの回転軸に対して垂直方向より任意の角度だけ傾斜せしめて,糸条を回転ローラーの表面に間欠的に接触させる方法が記載されている。この方法は,走行糸条が回転ローラーに接触している間中,確実に液体を糸条に付着させる方法であるため,糸条走行速度を極度に低速化する以外,電磁ソレノイド等の駆動部を0.01秒以下の速度で作動させなければ,数mm単位の液体付着部は得られない。しかも,接糸長が10mm程度となる関係上,液体付着部の長さを10mm以下とする短小化や,液体付着部と非付着部の境界部分をグラデーション的に変化させたりすることは到底できなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は,上記の欠点を解消し得るもので,駆動部が安定動作できる速度で間欠付与運動を行っても,液体付着部分を短小化し,しかも自然に変化した境界部を形成できる液体付与方法を提供することを技術的な課題とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは,上記の課題を解決するために鋭意研究した結果,回転ローラーの表面速度と走行糸条の速度との比を特定することにより,高糸速の加工下でも液体付着部分の長さを短小化できることを見出し,本発明に到達した。すなわち,本発明は,「水槽内の液体中に一部が浸漬した回転ローラーの表面に走行糸条を間欠的に接触させて糸条の長手方向に間欠的に液体を付与せしめた後,熱処理する糸条の加工工程において,回転ローラーの表面速度と糸条の走行速度の比を1:60〜1:300とすることによって,糸条の回転ローラー表面に接する糸長よりも実質的に液体が付着する長さを短くし,かつ液体付着部と非付着部の境界をグラデーション的に変化せしめることを特徴とする糸条への液体付与方法」を要旨とするものである。
【0006】
【発明の実施の形態】以下,本発明を詳細に説明する。本発明は,水槽内の液体中に一部が浸漬した回転ローラーの表面に走行糸条を間欠的に接触させて糸条の長手方向に間欠的に液体を付与せしめた後,熱処理する糸条の加工において,その液体の付与方法を発明の対象としている。
【0007】これを図面を用いて説明する。図1は,本発明を実施するに適した装置の一例を示す側面図である。1は,液体を貯える液槽で,適用する加工機等の全長あるいは1スパンに渡るように形成され,液体の供給口2と排出口3とが設けられており,常に一定位置の水面を保つようにして設けられている。回転ローラー4は,上記液槽1に貯えられた液体Lに一部が浸漬して,駆動装置(図示せず)により回転させられる。前記回転ローラー4の直前には,ヤーンガイド5を付設した回転軸6が設けられており,この回転軸6を回動せしめて,ヤーンガイド5を通過した糸条10が間欠的に回転ローラー4の表面にごくわずか接触するようにし,他方の回転ローラー直後のアジャスターガイド7を上下させることによって設定する。このように,ヤーンガイド5とアジャスターガイド7の間で糸条10が間欠的に回転ローラー4に接触して液体が付着された糸条は,次工程へ移される。
【0008】本発明では,上述の液体付着部において回転ローラー4の表面速度と糸条10の走行速度の比を1:60〜1:300の範囲に設定することが必要である。この速度比が1:60の限界をはずれると,接触時間に相当する液体付着部が形成されてしまうので,液体付着部の長さを短小化することはできない。またその速度の比が1:60の限界内であれば,その比が大きくなるに従い液体付着部の長さが短くなるので,所望の長さとなるように速度の比を選定すればよい。この速度の比が1:60の限界内になれば,糸条が回転ローラーに接触しているときに回転ローラー表面の液体が糸条に徐々に持ち去られ,次工程での熱処理時の糸条への熱遮蔽効果が液体の量に比例して薄れていくので,糸条の非熱処理部と熱処理部とが徐々に変化し,その結果,その糸条を染色すれば,境界部が自然に濃色部に変化するグラデーション的な効果が得られる。
【0009】一方,この速度の比が1:300の限界を超えると,糸条の走行速度が速くなりすぎるので,ローラー表面の液体の量が糸条に取られすぎて十分な付着ができなくなり,そのため,液体の付着状態が不安定になって液体の熱遮蔽効果が少なくなり,濃淡効果が明瞭とならない。このように回転ローラーの表面速度と糸条の走行速度に対する速度の比を特定範囲に限定することにより,ローラー表面への機械的な接触長よりも短い液体付着部が形成され,付着の境界部も徐々に変化させることができるようになる。
【0010】糸条10への液体付与に際しては,糸条10が回転ローラー4の表面に付着した液体のみに接触するぐらいに,ごくわずかに回転ローラー4に接触させるのが好ましく,また,このわずかの接触でも糸条に十分な液体が付着するように,液体に浸透性のある薬剤を添加し,かつ糸条が回転ローラー4の表面上の液体に接触するに際し,図2に示す如く,糸条の進行方向と回転ローラー4の回転方向とをある程度(角度α)傾けておくとよく,これによって糸条が回転ローラーの表面上に1〜2mm程度接触しただけでも液体を確実に付着させることができる。
【0011】このようにすることによって,液体付着部の長さは,糸条と回転ローラー表面への接触時間によって決定され,例えば,糸速が200cm/sec のとき,電磁ソレノイド等の機械的な動きが安定して作動する時間の0.04秒で運転した場合には,液体付着部の長さは8cmになる。そこで,本発明の方法では,回転ローラー4に接触した糸条が回転ローラー4上の液体を規定長さ付着した後は,回転ローラー上に液体が回転してこないように回転ローラーの表面速度を制御することによって液体付着部の長さを短くするのである。
【0012】
【実施例】次に,本発明方法を実施例によってさらに具体的に説明する。
実施例1〜4,比較例1〜2高配向未延伸ポリエステル糸230d/48fに,図1に示す液体付与装置により,表1に示す条件で間欠的に液体を付着した後,糸速が120m/minの場合には210℃×0.3秒間,糸速が750m/minの場合には350℃×0.05秒間の熱処理を行い,以下常法に従って通常の延伸仮撚加工を施した。
【0013】
【表1】

【0014】得られた各々の糸条を織物の緯糸に用いるに際し,レギュラーポリエステルフィラメント75d/48fが経糸としてセットされたウォータージェットルーム(日産LW−54型)に緯糸密度56本/2.54cmで緯打ちし,次に,100℃×30分間の染色(分散染料:レゾリンブルーGRL 2%owf)を行った。
【0015】解織後に液体付着部(淡染部)の長さを測定した結果,実施例1は,速度比が1:60と下限であるため,回転ローラー接触長さに対してわずかに短い50mmの淡色部の長さとなり,40mmから60mmの部分は淡色から濃色に除々に変化していた。さらに,速度比を1:140とした実施例2は,淡色部長さが10mmと極めて短いものであった。
【0016】また,実施例3,4は,糸速を速くしたため,淡色部の長さもそれぞれ300mm,100mmと長くなっているものの,回転ローラーに接触している長さ500mmより1/3および1/5と短縮されていた。同時に,濃色部から淡色部へ変化する個所は急激に変化しているのに対し,淡色部から濃色部への変化は,自然な変化を示すものであった。
【0017】比較例1の淡色部の長さは本発明外の速度比の1:50であるので,回転ローラーへの接触長さと同様の80mmとなり,かつ,淡色部−濃色部,濃色部−淡色部の境界も明瞭であった。さらに,比較例2は糸速が速く,速度比が1:350と回転ローラーの表面速度の10倍近くになっているため,液体の供給が追いつかず,液体が点在したごとく,淡色部長さが5mmと短い部分が500mmの長さに点在しているものであった。
【0018】得られた実施例1,2の布帛表面の外観は,ランダムで細かなかすり効果を有するのに対し,比較例1は,長い柄模様を有した表面外観を呈していた。また,実施例3,4の布帛外観は,柄効果が長いものの,濃色部も同様に長いため,実施例1,2とは趣きを異にした好ましい外観であった。さらに,比較例2は,柄効果がとぎれとぎれであるため,明確な表面効果に乏しいものであった。
【0019】
【発明の効果】本発明によれば,電気信号による機械的な作動が安定して得られる作動時間で液体を付着させても,回転ローラーの表面速度と糸速度の比を一定範囲内にしているので,その作動時間内で得られる液体付着部の長さを短くすることができ,そのため,極めて短い液体付着部の長さを得ることができる。また,液体付着部を電気信号によるランダムなパターンで間欠的に作動させるので,好ましい良好な柄パターンを得ることができる。さらに,本発明の方法で得られる糸条は,染色することによって,淡色部から濃色部への境目がグラデーション的に自然に変化する効果を有している。
【出願人】 【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
【出願日】 平成7年(1995)8月10日
【代理人】
【公開番号】 特開平9−49138
【公開日】 平成9年(1997)2月18日
【出願番号】 特願平7−204560