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【発明の名称】 仮撚り複合糸の製造方法
【発明者】 【氏名】知野 國夫

【目的】
【構成】
【特許請求の範囲】
【請求項1】 フィラメント糸である第1の糸条と、同じくフィラメント糸である第2の糸条とをエアー混繊し、同混繊糸の加撚区域にフィラメント糸である第3の糸条を供給することにより両者を仮撚りする仮撚り複合糸の製造方法において、前記混繊糸をオーバーフィード率+3%〜+20%の範囲で以て加撚区域に供給する仮撚り複合糸の製造方法。
【請求項2】 第1の糸条のオーバーフィード率を±0%〜+15%とし、第2の糸条のオーバーフィード率を+5%〜+200%とし、さらには、同第2の糸条のオーバーフィード率を第1の糸条のオーバーフィード率より大とした請求項1に記載の仮撚り複合糸の製造方法。
【請求項3】 前記第3の糸条を混繊糸より少なくとも35%オーバーフィードさせて加撚区域に供給する請求項1又は2に記載の仮撚り複合糸の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、スパンライクでかつボリューム感のある仮撚り複合糸を得るための製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、スラブ調の仮撚り複合糸を得る方法として、例えば、特公昭59−29689号公報に開示されたものがある。同公報においては、フィラメント糸である芯糸の加撚区域に同じくフィラメント糸である鞘糸を、前記芯糸よりオーバーフィードさせながら供給するものである。このようにして得られた糸条は、芯糸に対して鞘糸が一重に巻き付いた一重部と、三重に巻き付いた三重部とが交互に形成され、強撚調で清涼感の強い春夏物衣類用の素材に適した仮撚り複合糸となる。
【0003】しかし、前記仮撚り複合糸の製造方法では、単にフィラメント糸を仮撚りするものであり、秋冬物衣類用の素材として適したスパンライクでかつボリューム感のある糸条を得ることは容易ではない。
【0004】そこで、例えば、特開平6−313233号公報に開示された製造方法が存在する。同公報においては、図3に示すように(同図において後述する実施形態と同部材には同じ番号を付してある)、第1の糸条31αと第2の糸条31βとを混繊ノズル12に供給してエアー混繊を施すことにより、主には第2の糸条31βを構成するフィラメントにループを付与し、さらには、同混繊糸を芯糸31として第3の糸条としての鞘糸32と仮撚りするものである。
【0005】これにより、芯糸31に対して巻き付かれた鞘糸32の糸条間の間隙から、同芯糸31のフィラメントのループが飛び出すことにより、スパンライクでなおかつボリューム感のある仮撚り複合糸を得ることができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記特開平6−313233号公報において詳述された製造装置では、第1の糸条31αを混繊ノズル12に供給するためのローラにマグネットテンサ42が用いられている。同マグネットテンサ42は糸条走行時のテンションで連れ回りされる程度のもので、積極的に糸条を送り出すためのものではない。つまり、第1の糸条31αは、公報において開示されているように、せいぜい+1%程度のオーバーフィード率を以てしか混繊ノズル12に供給できない。
【0007】そして、前記装置においては、仮撚り熱固定ヒータ17の手前に仮撚りフィードローラ(14)が配置されていないため、仮撚り加工時の糸速度を規定するデリバリローラ19が、混繊工程時の糸速度を規定する仮撚りフィードローラ(14)をも兼ねることになる。そのため、芯糸31の仮撚り加工時におけるオーバーフィードは前記マグネットテンサ42による+1%程度であり、この程度のオーバフィードでは良好な仮撚り複合糸を得るためには不十分であった。その結果、三重部の巻き付きが甘くなり、例えば、前記仮撚り複合糸を織物の経糸として使用した場合、三重部が織機の筬によってしごかれてずれ易くなったり、糸切れやネップ状となる等の問題があった。
【0008】以上のように、前記特開平6−313233号公報に開示された技術に従って仮撚り複合糸を製造した場合には、整編織性に問題のある仮撚り複合糸しか得ることができなかった。
【0009】本発明は、上記従来技術に存在する問題点に着目してなされたものであって、その目的は、整編織性に優れた、スパンライクでかつボリューム感のある仮撚り複合糸を得ることができる製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために請求項1の発明では、混繊糸をオーバーフィード率+3%〜+20%の範囲で以て加撚区域に供給する仮撚り複合糸の製造方法である。
【0011】請求項2の発明では、第1の糸条のオーバーフィード率を±0%〜+15%とし、第2の糸条のオーバーフィード率を+5%〜+200%とし、さらには、同第2の糸条のオーバーフィード率を第1の糸条のオーバーフィード率より大としたものである。
【0012】請求項3の発明では、前記第3の糸条を混繊糸より少なくとも35%オーバーフィードさせて加撚区域に供給するものである。(作用)上記構成の本発明においては、所謂、芯糸を混繊糸とすることにより、スパンライクでかつボリューム感のある仮撚り複合糸を得ることができ、しかも、同仮撚り複合糸は整編織性に優れたものとなる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明を具体化した一実施形態について説明する。図1(a)は本実施形態の製造方法で得られる仮撚り複合糸の拡大図であり、図1(b)はこの仮撚り複合糸の巻き付き形態を模式的に示した図である。図中Aは芯糸1に対して鞘糸2が一重に巻き付けられた一重部を、Bは芯糸1に対して鞘糸2が三重に巻き付けられた三重部をそれぞれ示す。そして、この一重部Aと三重部Bとが仮撚り複合糸の糸条走行方向に交互に形成されている。
【0014】前記芯糸1は、フィラメント糸である第1の糸条1αと同じくフィラメント糸である第2の糸条1βとがエアー混繊されることにより構成されている。同芯糸1においては、第2の糸条1βが第1の糸条1αに対して巻き付かれるとともに、エアーにより糸条1α,1βを構成するフィラメントにループRが付与されている。
【0015】そして、この混繊糸である芯糸1に対して、第3の糸条としての鞘糸2が巻き付かれることにより、特に、一重部Aにおいては鞘糸2の糸条間隙から芯糸1のフィラメントのループRが飛び出して、本仮撚り複合糸は秋冬物衣類用の素材として適したスパンライクでかつボリューム感のある糸条となっている。
【0016】次に、上記構成の仮撚り複合糸を製造する方法について説明する。図2に示すように、フィラメント糸である第1の糸条1αは、混繊フィードローラ11を経てオーバーフィード率±0%〜+15%で、混繊工程である混繊ノズル12に供給される。同じくフィラメント糸である第2の糸条1βは、混繊フィードローラ13を経てオーバーフィード率+5%〜+200%で前記混繊ノズル12に供給され、前記第1の糸条1αと合流される。なお、第2の糸条1βのオーバーフィード率は第1の糸条1αのオーバーフィード率より大きく、従って、芯糸1においては、第1の糸条1αに対して第2の糸条1βが巻き付かれる芯・鞘関係が成り立っている。
【0017】前記混繊ノズル12は周知の機構を有し、糸条1α,1βの走行方向にエアーを吹きつける、所謂、タスラン加工を行うようになっている。従って、同混繊ノズル12において、前記第1の糸条1αと第2の糸条1βとがエアー混繊されて、主には第2の糸条1βを構成するフィラメントにループRが付与される。そして、両糸条1α,1βの混繊糸(芯糸)1は、仮撚りフィードローラ14を経てオーバーフィード率+3%〜+20%で、仮撚り行程である加撚区域Kに供給される。
【0018】フィラメント糸である鞘糸2は、鞘糸フィードローラ15を経て芯糸1より35%以上オーバーフィードされながら鞘糸給糸ガイド16を介して供給され、加撚区域Kで前記芯糸1と合流される。
【0019】前記加撚区域Kで合流された芯糸1及び鞘糸2は、仮撚り熱固定ヒーター17及び仮撚りスピンナ18を通過して、解撚区域Tにおいて解撚される。そして、解撚された仮撚り複合糸は、デリバリローラ19を経て再熱処理用ヒータ20において定着され、さらに、セカンドデリバリローラ21を経てテイクアップドラム22で巻き取られる。なお、上記ローラ類(11、13〜15、19、21)には、積極回転される鉄芯23αに対してゴム製のローラ23βが押接された構成のものが用いられている。
【0020】そして、前記仮撚り複合糸の三重部Bは、芯糸1に対する鞘糸2のオーバーフィードと仮撚りスピンナ18の回転による糸条の撚りの伝播による、加撚区域Kにおいての鞘糸2の積極的な振れにより形成される。この鞘糸2を芯糸1より35%以上オーバーフィードさせることにより、三重部Bにおける鞘糸2の巻き付きがきつくなっている。
【0021】また、前記三重部Bの撚りは加撚時に形成されたものがそのままの方向で残り、一重部Aにおいては、加撚時に形成された撚りが仮撚りスピンナ18以降の解撚区域Kにおいて解撚されて逆方向の撚りが付与されている。
【0022】以上のようにして得られた仮撚り複合糸は、三重部Bがずれ難い整編織性に優れたスパンライクでかつボリューム感のある糸条となった。このような仮撚り複合糸を得るためには、混繊糸(芯糸)1をオーバーフィードさせて加撚区域Kに供給し、しかも、そのオーバーフィード率の範囲を+3%〜+20%とすることが適正であることが、本発明人による各種条件下での実験により導き出された。つまり、この範囲を外れたものにおいては三重部Bにおける鞘糸2のずれが激しくなって、例えば、織編地の使用に耐え得るものとはならなかった。従って、本実施形態においてはオーバーフィード率+3%〜+20%を具体化するために、製造装置としては、従来公報において用いられるものとは異なり、芯糸1をオーバーフィードさせて加撚区域Kに対して供給し得る、仮撚りフィードローラ14を配置したものが用いられている。なお、芯糸1のオーバーフィード率は、望ましくは+7%〜+15%の範囲である。
【0023】また、特開平6−313233号公報において得られる仮撚り複合糸と比較して、スパンライクでかつボリューム感のある糸条を得るために、芯糸1における芯をなす第1の糸条1αのオーバーフィード率を±0%〜+15%とし、鞘をなす第2の糸条1βのオーバーフィード率を+5%〜+200%とした(第1の糸条1αのオーバーフィード率<第2の糸条1βのオーバーフィード率)。つまり、第1の糸条1αのオーバーフィード率が前記範囲を外れると、第2の糸条1βの第1の糸条1αに対するかかりが悪くなり、良好な混繊を行い得ない。また、第2の糸条1βのオーバーフィード率が+5%未満となると、同糸条1βが第1の糸条1αとほぼ平行に走行されて芯糸1における芯・鞘関係が定まらず、同じく良好な混繊を行い得ないし、さらに、200%を越えるとループRが大きくなり過ぎて取り扱い性の悪い糸条となってしまう。
【0024】
【実施例】次に、図2に示す装置を用いて以下の加工条件で仮撚り加工を行った。
(第1実施例)
第1の糸条:100デニール24フィラメント第2の糸条:100デニール96フィラメント第3の糸条:50デニール48フィラメント仮撚りスピンナの回転数:20万rpm仮撚り数:1758T/M仮撚りオーバーフィード率:+8%セカンドオーバーフィード率:+7.5%テイクアップオーバーフィード率:+7.5%仮撚り熱固定ヒーター温度:180℃再熱処理ヒーター温度:190℃第1の糸条のオーバーフィード率:+3%第2の糸条のオーバーフィード率:+30%第3の糸条のオーバーフィード率:+82%芯糸の走行方向線と鞘糸給糸ガイドとの垂直距離:12cm混繊時のエアー圧:5kg/cm2上記のようにして得られた仮撚り複合糸は、繊度が315デニールであり、秋冬物のインナー地に適した糸条となった。
(第2実施例)
第1の糸条:100デニール36フィラメント第2の糸条:150デニール96フィラメント第3の糸条:30デニール12フィラメント仮撚りスピンナの回転数:15万rpm仮撚り数:1600T/M仮撚りオーバーフィード率:+12.4%セカンドオーバーフィード率:+7.5%テイクアップフィード率:+7.5%仮撚り熱固定ヒーター温度:200℃再熱処理ヒーター温度:170℃第1の糸条のオーバーフィード率:+3.4%第2の糸条のオーバーフィード率:+30%第3の糸条のオーバーフィード率:+66%芯糸の走行方向線と鞘糸給糸ガイドとの垂直距離:18cm混繊時のエアー圧:5kg/cm2上記のようにして得られた仮撚り複合糸は、繊度が400デニールであり、秋冬物のオーバー地に適した糸条となった。
【0025】なお、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で以下の態様でも実施できる。前記混繊行程においては、タスラン加工法が用いられていたが、これを変更し、糸条1α,1βの走行方法に対して交差する方向にエアーを吹き付ける、所謂、インターレース加工法を用いても良い。
【0026】上記実施形態から把握できる技術的思想について記載する。第1の糸条1αと第2の糸条1βとのエアー混繊を行う混繊機構11〜13と、同混繊機構11〜13を経て得られた混繊糸1と、第3の糸条2との仮撚り加工を行う仮撚り機構17、18とを備えた仮撚り複合糸の製造装置において、混繊糸1をオーバーフィードさせて加撚区域Kに供給するための仮撚りフィードローラ14を設けた仮撚り複合糸の製造装置。
【0027】この装置を用いれば、整編織性に優れ、しかも、秋冬物衣類用の素材に適したスパンライクでかつボリューム感のある仮撚り複合糸を得ることができる。
【0028】
【発明の効果】上記構成の本発明によれば、整編織性に優れ、しかも、秋冬物衣類用の素材に適したスパンライクでかつボリューム感のある仮撚り複合糸を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】594057820
【氏名又は名称】カワボウテキスチャード株式会社
【出願日】 平成7年(1995)8月8日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
【公開番号】 特開平9−49134
【公開日】 平成9年(1997)2月18日
【出願番号】 特願平7−202316