トップ :: D 繊維 紙 :: D02 糸;糸またはロ−プの機械的な仕上げ;整経またはビ−ム巻き取り




【発明の名称】 紡績糸及びその製造方法
【発明者】 【氏名】神原 彰治

【氏名】吉中 準一

【氏名】谷口 純一

【目的】 コシ・ハリを有するとともに風合の優れた紡績糸を効率的に得る。
【構成】 紡績糸を構成する短繊維群の平均繊維長の1.1倍以上の繊維長を有する短繊維群をA成分、平均繊維長以下の繊維長を有する短繊維群をB成分とするとき、A成分を5〜50重量%含み、かつA成分の平均繊度/B成分の平均繊度が0.8以下であることを特徴とする紡績糸。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 紡績糸を構成する短繊維群の平均繊維長の1.1倍以上の繊維長を有する短繊維群をA成分、平均繊維長以下の繊維長を有する短繊維群をB成分とするとき、A成分を5〜50重量%含み、かつA成分の平均繊度/B成分の平均繊度が0.8以下であることを特徴とする紡績糸。
【請求項2】 破断伸度70%以上の短繊維からなる原綿繊維を供給して混打綿工程、梳綿工程を通過させ、次いで練条工程において短繊維群を延伸して伸長及び細繊度化した後、粗紡工程、精紡工程を通過させる紡績糸の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、異種繊度及び異繊維長を有する短繊維群から構成された紡績糸及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、ハリ・コシを有するとともに毛羽・ネップが少なく風合に優れた紡績糸及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ハリ・コシを有するとともに毛羽・ネップの少ない紡績糸を得るために、太繊度繊維と細繊度繊維(異種繊度繊維)を混紡して紡績糸を得ることが知られていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、細繊度繊維と太繊度繊維の繊度比が大きくなると、工程性に大きな問題が生じていた。すなわち、均整な紡績糸を製造するためには、ドラフト中の繊維挙動を十分コントロ−ルする必要があるが、この場合、梳綿、練条、粗紡、精紡工程等のロ−ラ−ゲ−ジの条件設定が極めて困難となる。例えば、梳綿工程においては、細繊度繊維と太繊度繊維間で針布の仕様、各ロ−ラ−間のゲ−ジが異なるため、細繊度繊維に好適な条件設定にすれば太繊度繊維が損傷し、逆に太繊度繊維に好適な条件設定にした場合には、細繊度繊維が開繊不良となり糸欠点の多い紡績糸となる。
【0004】さらに、紡績糸の柔軟性を高めるために細繊度繊維の混合率を大きくすると、繊維同志の絡合性が低下して紡績工程での風綿発生が増加する等の問題が生じることとなる。以上のことから、混紡する単繊維の繊度の差を大きくすることができず、さらに細繊度繊維の混合割合を高めることが困難であるため、細繊度繊維による優れた風合を有する紡績糸はほとんど得られていなかった。また、繊度の異なる繊維を用いた場合には、混打綿工程等でやはりネップなどが生じるため、風合の優れた紡績糸は得られなかった。本発明の目的は、以上の問題を解決し、優れた紡績糸を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、紡績糸を構成する短繊維群の平均繊維長の1.1倍以上の繊維長を有する短繊維群をA成分、平均繊維長以下の繊維長を有する短繊維群をB成分とするとき、A成分を5〜50重量%含み、かつA成分の平均繊度/B成分の平均繊度が0.8以下であることを特徴とする紡績糸、及び破断伸度70%以上の短繊維からなる原綿繊維を供給して混打綿工程、梳綿工程を通過させ、次いで練条工程において短繊維群を延伸して伸長及び細繊度化した後、粗紡工程、精紡工程を通過させる紡績糸の製造方法を提供するものである。細繊度繊維の繊維長を長くするために、供給繊維の繊度や繊維長を変更する通常の方法を採用すると、混打綿工程において単繊維の分散が不均一となりやすく、さらに混打綿工程や梳綿工程でネップが発生し紡績糸としては品位の劣悪なものとなってしまう。以上のことから、本発明は、供給繊維の繊度や繊維長により紡績条件の設定を行うのではなく、繊維が不均一の場合にネップの生じやすい混打綿工程、梳綿工程を通過させた後に所望の形状を有する繊維とし、かかる繊維を供給することにより優れた紡績糸とすることを見出だしたものである。
【0006】すなわち、混打綿工程、梳綿工程における開繊作用や梳綿作用では繊維が伸長するほどの応力が加わらず、よって平均繊維長及び繊度にはそれほど影響を及ぼさないため、繊維長差や繊度差による工程性の悪化は生じない。次いで練条工程において適性なロ−ラゲ−ジを設定することにより短繊維群を伸長及び細繊度化した後、粗紡工程、精紡工程を通過させることにより、細繊度でかつ繊維長の長いA成分が表面に存在し、ネップの少ない優れた紡績糸を製造することができる。
【0007】本発明においては、練条工程におけるロ−ラ−ゲ−ジを供給される繊維の繊維長よりも大きく設定することが好ましい。特に、供給繊維の平均繊維長の1.03〜2倍程度、特に1.05〜1.2倍程度とするのが好ましい。ロ−ラ−ゲ−ジが小さすぎると、ロ−ラ−ゲ−ジ間に存在する繊維の引き抜き抵抗値が増大してドラフト斑が大きく発生し、逆にロ−ラ−ゲ−ジが大きすぎるとロ−ラ−ゲ−ジ間で浮遊繊維が多く、繊維のコントロ−ルが不十分となりドラフト斑が発生し紡績糸の品質低下の原因となる場合がある。ドラフトは4〜10倍程度、特5〜7程度とするのが好ましい。本発明においては、破断伸度70%以上の繊維を使用するため、練条工程において繊維が伸長及び細繊度化されやすく、特に伸長及び細繊度化の度合いにバラツキが生じることに特徴がある。すなわち、練条工程のロ−ラに供される繊維の形態は直線状や屈曲しているもの等様々であるため、繊維に加わる応力及び加圧方向は各繊維間で異なり、さらに繊維の伸度が高くわずかな張力の差で伸長の程度に差が生じるため、練条工程を通過したスライバ−の繊維長及び繊度にバラツキが生じることとなる(図1参照)。練条工程以降においては、繊維長等に大きなバラツキがあっても工程性に実質的に問題が生じない。
【0008】繊維の大部分(繊維群の50〜95重量%程度)はほぼ均一の繊維長及び繊維繊度を有する繊維(B成分)となるが、5〜50重量%程度は大きく延伸されたA成分となる。延伸により細繊度化するため、繊度が小さくなるに伴って繊維長も長くなるため、風合の優れた紡績糸にすることができる。A成分は供給繊維の0.4〜0.8倍の繊度となるように延伸されたものが好ましい。供給繊維の70重量%以上、特に80重量%以上は破断伸度75%以上であるのが好ましい。破断伸度が小さ過ぎると延伸により容易に破断して繊維長が短くなる場合が生じ、また単繊維間で繊度及び繊維長のバラツキが小さくなるため本発明の効果が十分得られない。より好ましくは破断伸度100%以上、特に150%以上とする。
【0009】紡績糸を構成する短繊維群の平均繊維長の1.1倍以上の繊維長を有する繊維(A成分)は、5〜50重量%、特に10〜30重量%とするのが好ましく、さらにA成分の繊維長が、短繊維群の平均繊維長の1.2倍以上であるのが好ましい。A成分の平均繊度/B成分の平均繊度は0.8以下、特に0.7以下、さらに0.6以下であるのが好ましい。かかる繊度比が大きい程、太繊度繊維と細繊度繊維の利点を充分得ることができる。本発明の紡績糸の製造方法は特に限定されるものではない。例えば、混打綿工程及び梳綿工程において繊維長等を大きく変化させることなく通過させ、次いで練条工程においてドラフト、ロ−ラ−ゲ−ジ等を調節することにより繊維の一部を大きく伸長させる以外は常法により製造すればよい。練条工程以降の工程、粗紡工程及び精紡工程においてさらに延伸・伸長して繊維長等のバラツキをさらに大きくしてもよい。
【0010】上記の方法で得られたスライバ−を次工程の粗紡、精紡に供給して紡績糸とする場合、中抜きロ−ラ−についても検討がなされることが望ましい。中抜きロ−ラ−とは、図2に示すようにゴムエプロンの下に位置し、不正ドラフトが発生しないように供給繊維における平均繊維長より長い繊維をコントロ−ルするために設置される。平均繊維長さより長い繊維の含有の多少によって中抜き量を調整するのが好ましく、長い繊維の混合率が多い場合には中抜き量を多く、反対に少ない場合には中抜き量を少なくすればよい。本発明で得られた紡績糸はそのまま布帛に加工してもよく、形態安定性のために適当なスチ−ムセットをしてもよい。
【0011】原綿繊維は特に限定されるものではなく、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリビニルアルコ−ル系繊維、レ−ヨン繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、綿、羊毛、麻などのあらゆる繊維を用いることができる。また、本発明で使用するポリマ−には、適宜、酸化チタン、カオリン、シリカ、硫酸バリウム、カ−ボンブラック、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を含んでいても良く、原綿繊維として異形断面繊維や中空状繊維を用いても良い。
【0012】繊維繊度の異なる原綿又はスライバ−を目的に応じて混合する場合、通常の紡績方法であれば、繊度の異なる原綿またはスライバ−をそれぞれの混合比率によって配合し均一にする必要があるにも関わらず、本発明によれば、同一の繊維径及び繊維長を有する繊維を原料繊維とするのみで、異繊度、異繊維長の繊維を混紡した紡績糸と同様の紡績糸とすることができる。勿論、異繊度繊維や引張破断伸度が異なる繊維を混合使用してもよく、さらに、等長繊維に限定されるものでなく、バイアスカット(繊度に関係なく繊維長の異なる繊維を数種程度混綿したもの)を用いてもよい。ただし、工程性や紡績糸の性能を損なわない範囲で混合又は使用する必要はある。
【0013】以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれにより何等限定されるものではない。
【実施例】
【0014】[紡出番手]JIS L−1095−7.4.1に準じて測定した。
[単糸強伸度]JIS l−1095−7.5.1に準じて単糸強伸度を求めた。
[U%]計測器工業株式会社製イブネステスタ− KET−80Bを用いて測定した。
[毛羽値]東レ株式会社製毛羽計数装置 MODEL DT−104による長さ2mm以上又は4mm以上の毛羽本数(紡績糸10mあたり)を求めた(紡績糸の供給速度10m/min)。
【0015】[ネップ数]計測器工業株式会社製イブネステスタ− KET−80Bを用いて、200%以上の太さを示すネップ数(紡績糸1000mあたり)を測定した(紡績糸の供給速度1000m/min)。
[繊維長分布]JIS L−1015−7.4.1平均繊維長C法[直接法]により測定した。
[紡績糸走行試験]糸速度1000m/分、テンション10匁、糸角度(A)90度、時間10分間における風綿の発生量を黒い紙上25cm×25cmに採取し、少ないものを◎、やや多いものを○、多いものを×として評価した(図3参照)。
【0016】[布帛性能]柔軟性(触感による官能評価)関して良好なものを○、やや不良なものを△、不良なものを×として評価を行い、また外観品位として、布帛4cm2 におけるネップ数を5か所で測定し、5個以下のものを○、6〜10個のもの△、11個以上のものを×として評価した。
[A成分・B成分の平均繊度]A成分又はB成分を構成する任意の短繊維20本につき繊度を測定し、その相加平均を求めた。
[A成分の割合]精紡ステ−プルダイヤグラムを作製し、A成分の占める重量%を求めた。
【0017】[実施例1〜実施例3]原綿として、強度2.6g/dr、伸度185%、繊度2dr、繊維長51mmの丸断面ポリエステル繊維を通常の混打綿工程を通し、13oz/ydのラップを得た。このラップを以下条件で梳綿工程、練条工程、粗紡工程,精紡工程の各工程を通させて20番手の糸を紡績した。
梳綿条件: シリンダ−回転数(rpm) 200 テ−カイン回転数(rpm) 400 ドッファ−回転数(rpm) 10 シリンダ−〜トップ間ゲ−ジ(インチ) 15/1000練条条件: フロントロ−ラ−〜セカンドロ−ラ−間 ゲ−ジ 80mm ドラフト 2.5〜3.5倍 セカンドロ−ラ−〜バックロ−ラ−間 ゲ−ジ 54〜60mm ドラフト 2倍【0018】
粗紡条件: フロントロ−ラ−〜セカンドロ−ラ−間 ゲ−ジ 66mm ドラフト 1.04倍 セカンドロ−ラ−〜サ−ドロ−ラ−間 ゲ−ジ 72mm ドラフト 5.2倍 サ−ドロ−ラ−〜バックロ−ラ−間 ゲ−ジ 74mm ドラフト 1.3倍精紡条件: フロントロ−ラ−〜セカンドロ−ラ−間 ゲ−ジ 71mm ドラフト 18.4倍 セカンドロ−ラ−〜サ−ドロ−ラ−間 ゲ−ジ 72mm ドラフト 1.3倍 スピンドル回転数(rpm) 10000 撚数(t/in) 9.2 トラベラ− zsc/hf 中抜量 2mm結果を表1に示す。
【0019】[実施例4]強度3.5g/dr、伸度35%、繊度6dr、繊維長51mmの中空断面ポリエステル系繊維の原綿20重量%および強度2.6g/dr、伸度185%、繊度2dr、繊維長51mmの丸断面ポリエステル系繊維の原綿80重量%を通常の混打綿工程を通して13oz/ydのラップを製造した以外は実施例1と同様に20番手の紡績糸を製造した。結果を表1に示す。
【0020】[比較例1]強度5g/dr、伸度30%、繊度2dr、繊維長51mmのポリエステル系繊維80重量%と強度5g/dr,伸度30%、繊度1dr、繊維長38mmのポリエステル系繊維20重量%からなる原綿を通常の混打綿工程を通し、実施例1と同一紡出条件により20番手の紡績糸を製造した。結果を表1に示す。
【0021】
【表1】

【0022】本発明により得られた紡績糸は、繊度が小さく繊維長の長い繊維が表面に存在し、ネップが少なく優れた風合とコシ・ハリを有していた。
【0023】
【発明の効果】本発明により得られる紡績糸は、細繊度でかつ繊維長の長い短繊維が表面に存在し、コシ・ハリを有するとともに優れた風合を有している。かかる紡績糸は、織物・編物等の布帛とすることができ、特に衣料用として好適に使用することができる。
【出願人】 【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
【出願日】 平成7年(1995)8月1日
【代理人】
【公開番号】 特開平9−49132
【公開日】 平成9年(1997)2月18日
【出願番号】 特願平7−196720