トップ :: D 繊維 紙 :: D02 糸;糸またはロ−プの機械的な仕上げ;整経またはビ−ム巻き取り




【発明の名称】 潜在伸縮性縫糸及びその製造方法
【発明者】 【氏名】中山 元二

【氏名】橋立 貞人

【氏名】木村 明夫

【目的】
【構成】
【特許請求の範囲】
【請求項1】 水又はアルカリに対し易溶解性の非捲縮糸条と、該非捲縮糸条より溶解性の小さい難溶解性捲縮糸条とを複合してなる縫糸であって、該難溶解性捲縮糸条が易溶解性非捲縮糸条に対して10〜40%の糸長差を有しており、且つ該難溶解性捲縮糸条の捲縮数が10〜80個/cm、該縫糸の一次降伏点応力が0.1〜1.0g/deであることを特徴とする潜在伸縮性縫糸。
【請求項2】 難溶解性捲縮糸条が仮撚捲縮加工糸である請求項1記載の潜在伸縮性縫糸。
【請求項3】 易溶解性非捲縮糸条がポリビニルアルコール繊維である請求項1又は2記載の潜在伸縮性縫糸。
【請求項4】 易溶解性非捲縮糸条がアルカリ易溶解性ポリエステル繊維である請求項1又は2記載の潜在伸縮性縫糸。
【請求項5】 150℃における乾熱収縮率が10〜50%の易溶解性非捲縮糸条と、捲縮度が10〜50%の難溶解性捲縮糸条とを複合した後、熱収縮処理を施すことを特徴とする潜在伸縮性縫糸の製造方法。
【請求項6】 難溶解性捲縮糸条が仮撚捲縮加工糸である請求項5記載の潜在伸縮性縫糸の製造方法。
【請求項7】 易溶解性非捲縮糸条がポリビニルアルコール繊維である請求項5又は6記載の潜在伸縮性縫糸の製造方法。
【請求項8】 易溶解性非捲縮糸条がアルカリ易溶解性ポリエステル繊維である請求項5又は6記載の潜在伸縮性縫糸の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、複合糸条の一方を溶解除去することにより伸縮性が発現する潜在伸縮性縫糸及びその製造方法に関し、特に、ケミカルレース用に適した潜在伸縮性縫糸及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】易溶解性基布に、エンブロイダリーレース機を用いて非溶解性の縫糸で刺しゅう縫製を施した後、該基布を溶解除去して刺しゅう柄のみを残すケミカルレースは、多様な柄作りが可能で立体感に優れているので、高級レースとして従来から愛用されてきた。
【0003】しかし、上記ケミカルレースは、刺しゅう縫製を施すので縫目の形成が困難な伸縮性縫糸は使用出来ず、従って伸縮性に富んだ刺しゅう柄のケミカルレースを得ることが出来なかった。
【0004】このような欠点を改良する方法として、例えば、特開昭54−106673号公報には、ポリウレタン、合成ゴムなどの伸縮性に富んだ弾性糸条を水溶性の非伸縮性糸条でインナーカバリングし、更に水不溶性糸条でアウターカバリングして、弾性糸条の伸縮性を非伸縮性糸条で一時的に止めて縫目形成を可能とし、刺しゅう縫製を施した後、該水溶性の非伸縮性糸条を溶解除去して伸縮性を発現させるケミカルレースの製造方法が提案されている。
【0005】ところが、上記方法で用いられる縫糸は、縫糸製造時(インナーカバリング時)に不可避的に弾性糸条が大きく伸長され、その伸長歪を内在する結果、水溶性の非伸縮性糸条を溶解除去して伸縮性を発現させたときに、伸長歪が回復して刺しゅう柄が大きく収縮する(上記公報第2頁(4)欄第4行には、45%収縮することが記載されている)と言う欠点を有している。
【0006】上記欠点は、刺しゅう柄の設計時に大き目の柄に調整し、相似形で収縮させることにより解消出来る旨が上記公報に記載されているが、通常、刺しゅう柄の縫い密度には粗密があるため、縫糸が受ける拘束力が異なり、一様に収縮させることは極めて困難である。
【0007】従って、上記の方法によって得られる刺しゅう柄は、収縮の際に歪が生じたり、表面に不規則な凹凸が発生したりして、品位の良いケミカルレースを得ることが出来ないのが実情である。
【0008】更に、上記の縫糸は、伸縮性糸条として、ポリウレタン、合成ゴム等の極めて高価な弾性糸を用いるため、縫糸もまた極めて高価なものとなり、汎用品に用いるには適当でないという問題がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的は、上記従来技術の有する欠点を解消し、刺しゅう柄の歪や表面凹凸の発生がなく、高品位の刺しゅう柄を得ることが可能で、しかも安価な潜在伸縮性縫糸及びその製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的を達成すべく種々検討を重ねた結果、縫糸製造時に大きい伸長を受けるポリウレタン、合成ゴム等の弾性糸の代わりに、縫糸製造時に受ける伸長が比較的小さく、しかも安価な捲縮糸条を用いることを着想し、本発明を完成するに至った。
【0011】すなわち、本発明によれば、(1)水又はアルカリに対し易溶解性の非捲縮糸条と、該非捲縮糸条より溶解性の小さい難溶解性捲縮糸条とを複合してなる縫糸であって、該難溶解性捲縮糸条が易溶解性非捲縮糸条に対して10〜40%の糸長差を有しており、且つ該難溶解性捲縮糸条の捲縮数が10〜80個/cm、該縫糸の一次降伏点応力が0.1〜1.0g/deであることを特徴とする潜在伸縮性縫糸、及び(2)150℃における乾熱収縮率が10〜50%の易溶解性非捲縮糸条と、捲縮度が10〜50%の難溶解性捲縮糸条とを複合した後、熱収縮処理を施すことを特徴とする潜在伸縮性縫糸の製造方法が提供される。
【0012】難溶解性捲縮糸条は、仮撚捲縮加工糸であることが、また、易溶解性非捲縮糸条は、ポリビニルアルコール繊維又はアルカリ易溶解性ポリエステル繊維であることが好ましい。
【0013】本発明の縫糸に用いる易溶解性非捲縮糸条とは、水又はアルカリ水溶液によって容易に分解、溶解し得る、実質的に捲縮を有さない糸条のことである。
【0014】このような糸条の好ましい例としては、水溶性のポリビニルアルコール繊維や、アルカリ水溶液により容易に分解、溶解するポリエステル繊維を挙げることができる。
【0015】かかるポリエステルとしては、例えば、スルホイソフタル酸金属塩などの第3成分を共重合したポリエステルや、ポリエーテルエステルを添加含有させたポリエステルなどを挙げることができるが、なかでも、ポリオキシアルキレングリコール及び/又はジカルボン酸とポリオキシアルキレングリコール成分とからなるポリエーテルエステルを少なくとも2重量%以上含有したポリエステルが好適に例示される。
【0016】なお、水又はアルカリ水溶液は、分解、溶解速度を高めるうえで、95℃以上に加熱して使用するのが好ましい。
【0017】一方、本発明の縫糸に用いられる難溶解性捲縮糸条とは、上記易溶解性糸条よりも相対的に水やアルカリ水溶液で分解、溶解し難い捲縮糸条のことであり、一般の合成繊維は、通常、難溶解性である。
【0018】また、捲縮糸条とは、曲がり(捲縮)を有する糸条のことであって、例えば、仮撚捲縮加工糸、流体噴射捲縮加工糸、機械捲縮加工糸、コンジュゲート捲縮糸などが挙げられるが、なかでも、仮撚捲縮加工糸が最も好適に例示される。
【0019】本発明の縫糸においては、難溶解性捲縮糸条は、捲縮が顕在化した状態で易溶解性非捲縮糸条と複合されていなければならず、その捲縮数は、10〜80個/cmの範囲内にあることが必要であり、特に、15〜50個/cmの範囲内にあることが好ましい。捲縮数が10個/cm未満の場合は、易溶解性非捲縮糸条を分解、溶解除去しても、伸縮性の発現が少なく、伸縮性に富んだ良好な刺しゅう柄が得られない。一方、捲縮数が80個/cmを越える場合は、ミシン掛け時の摩耗等で捲縮が損傷を受け易く、糸切れ、目飛び等のトラブルが発生するので使用出来ない。
【0020】更に、本発明の縫糸においては、当然のことながら、難溶解性捲縮糸条の方が易溶解性非捲縮糸条よりも糸長が長くなるが、両者の糸長差が10〜40%の範囲内にあることが必要であり、特に、15〜30%の範囲内にあることが望ましい。糸長差が10%未満の場合は、易溶解性非捲縮糸条を分解、溶解除去しても、伸縮性の発現が少なく、伸縮性に富んだ良好な刺しゅう柄が得られない。一方、糸長差が40%を越える場合は、ミシン掛け時の摩耗等で捲縮が損傷を受け易く、糸切れ、目飛び等のトレブルが発生するので使用出来ない。
【0021】また、本発明の縫糸は、一次降伏点応力が0.1g/de〜1.0g/deであることが必要であり、特に、0.2g/de〜0.8g/deであることが好ましい。該応力が0.1g/de未満の場合は、ミシン掛け時の張力に耐えられず、糸切れ等が多発して使用出来ない。該応力を大きくするには、易溶解性非捲縮糸条の複合割合を高めればよいが、該糸条は縫製後に溶解除去される成分であり、極力使用量を減らすことがコスト面で好ましく、高々1.0g/deで十分である。
【0022】難溶解性捲縮糸条と易溶解性非捲縮糸条とを複合させて本発明の縫糸を製造するには、任意の方法を用いることが出来、例えば、難溶解性捲縮糸条をオーバーフィードしながら易溶解性非捲縮糸条とインターレース等で複合させる方法や両糸条を引き揃え、合撚等で複合させる方法などを用いることが出来るが、単に複合させただけでは、10%以上の糸長差を生ぜしめることが難しいため、易溶解性非捲縮糸条として熱収縮率の大きい糸条を用い、複合後、熱収縮処理で高収縮非捲縮糸条を収縮させる方法が好ましく用いられる。
【0023】この場合、易溶解性非捲縮糸条としては、150℃における乾熱収縮率が10〜50%の糸条を、また、難溶解性捲縮糸条としては、捲縮度が10〜50%の糸条を用いるのが好ましい。捲縮度が10%未満の場合は、縫糸における難溶解性捲縮糸条の捲縮数が10個/cm未満となり、易溶解性非捲縮糸条を分解、溶解除去しても十分な伸縮性が得られないことがあり、50%を越える場合は、捲縮数が80個/cmを越え、ミシン掛け時の摩耗等で捲縮が損傷を受け易く、糸切れ、目飛び等のトラブルが発生し易い。
【0024】上記高収縮易溶解性非捲縮糸条としては、例えば、常温延伸等により高収縮化した前記の水溶性ポリビニルアルコール繊維やポリエステル繊維が好適に例示される。
【0025】本発明の製造方法において、熱収縮処理は、難溶解性捲縮糸条と高収縮易溶解性非捲縮糸条とを複合した後、続いてスリットヒーター等を用いて、130〜160℃で弛緩熱処理して収縮させる方法が採用出来る。
【0026】また、別の方法として、上記両糸条を引き揃えて施撚した後、綛染色工程(90〜140℃)で収縮させる方法も採用される。なお、収縮量は特に制限されないが、10〜50%が好適に例示される。
【0027】
【作用】捲縮糸条は伸長し易いため、それ単独では縫目形成が困難で、刺しゅう縫製を施すことが出来ないが、本発明の縫糸においては、易溶解性非捲縮糸条に難溶解性捲縮糸条を複合しているから、捲縮糸条の伸長性が抑制され、適度の一次降伏応力が付与されており、刺しゅう縫製が容易に行える。
【0028】しかも、本発明の縫糸では、難溶解性捲縮糸条の捲縮数及び易溶解性非捲縮糸条と難溶解性捲縮糸条との糸長差を特定の範囲内に選定しているため、易溶解性非捲縮糸条を分解、溶解除去することによって、十分な伸縮性が発現し、伸縮性に富んだ良好な刺しゅう柄が得られる。
【0029】更に、本発明の縫糸では、縫糸製造時に大きい伸長を受けるポリウレタンや合成ゴムなどの弾性糸の代わりに、縫糸製造時に受ける伸長が比較的小さく、しかも安価な捲縮糸条を用いているから、易溶解性非捲縮糸条を分解、溶解除去して伸縮性を発現させたときに、伸長歪が回復して刺しゅう柄が大きく収縮するようなことがなく、高品位の刺しゅう柄を安価に得ることが出来る。
【0030】また、本発明の縫糸の製造方法においては、易溶解性非捲縮糸条として熱収縮率の大きい糸条を用い、複合後、熱収縮処理を施すから、易溶解性非捲縮糸条と難溶解性捲縮糸条との糸長差を10〜40%と大きくすることが可能となる。
【0031】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中の各特性は、下記の方法により測定した。
【0032】(1)一次降伏点応力(g/de)
JIS−L−1013−7.5.1法にて測定した強力−伸度曲線において、該曲線の最初の凸形状変曲部である一次降伏部前(立上り部)のカーブの接線と一次降伏部後のカーブの接線の交点の応力を一次降伏点応力値(g/de)とする。
【0033】(2)捲縮数(個/cm)
縫糸から難溶解性捲縮糸条の単糸を解舒採取して、0.002g/deの荷重を掛け、顕微鏡下で1cm当たりの捲縮の山数を測定し、その1/2の値を捲縮数とする(捲縮曲がりの1周期を1つの捲縮とする)。
【0034】なお、測定は20本の単糸について行ない、その平均値を捲縮数とした。
【0035】(3)糸長差(%)
縫糸から5cmの試料を採取し、該試料から難溶解性捲縮糸条と易溶解性非捲縮糸条を分離して取り出し、0.1g/deの荷重下で各々の寸法を測定して、下記の式で糸長差(I)を算出する。
【0036】
I=[(L1 −L2 )/L2 ]×100(%)
但し、I :糸長差(%)
1 :難溶解性捲縮糸条の長さL2 :易溶解性非捲縮糸条の長さを示す。
【0037】(4)乾熱収縮率(%)
複合前の易溶解性非捲縮糸条から100cm(L0 )の試料を採取し、該試料を綛状にして乾熱150℃で10分間自由収縮処理し、0.1g/deの荷重下で収縮処理後の長さ(L1 )を測定して、下記の式で乾熱収縮率(S)を算出する。
【0038】
S=[(L0 −L1 )/L0 ]×100(%)
但し S :乾熱収縮率(%)
0 :収縮処理前の長さ(100cm)
1 :収縮処理後の長さを示す。
【0039】(5)捲縮度(%)
フリー状態で沸水中にて20分間処理した後、自然乾燥させた試料について、0.2g/deの荷重下で50cm(L1 )間隔の印を付け、次いで、0.002g/deの荷重を掛けて上記印間の長さ(L2 )を測定して、下記の式で捲縮度(K)を算出する。
【0040】
K=[(L1 −L2 )/L1 ]×100(%)
但し K :捲縮度(%)
0 :0.202g/de荷重下の長さ(50cm)
1 :0.002g/de荷重下の長さを示す。
【0041】[実施例1]
(高収縮易溶解性非捲縮糸条の製造)市販の水溶性ポリビニルアルコール繊維(株式会社ニチビ製「ソルブロン」、40de/12fil)に13%の常温伸長処理を施して、高収縮易溶解性非捲縮糸条を得た。この糸条の150℃における乾熱収縮率は20%であった。
【0042】(縫糸の製造)難溶解性捲縮糸条として、常法によって得られた50de/24filのポリエチレンテレフタレート仮撚捲縮加工糸(捲縮度28%)を用い、この加工糸と前記高収縮易溶解性非捲縮糸条を引き揃えて、103m/分の周速度で回転する第一ローラと100m/分の周速度で回転する第2ローラとの間に設けたインターレースノズル(空気圧2kg/cm2 )に通し、引き続き、上記第2ローラと80m/分の周速度で回転する第3ローラとの間に設けた1mのスリットヒーター(温度150℃、有効長1m)に通して収縮処理を施した後、ワインダーで巻き取って縫糸用複合糸を得た。
【0043】この複合糸に、S方向に600T/mの下撚りを施し、得られた下撚糸3本を引き揃えて、Z方向に500T/mの上撚りを施した後、シリコーン系ミシン糸用油剤を3%付与して本発明の縫糸を得た。
【0044】得られた縫糸におけるポリエチレンテレフタレート仮撚捲縮加工糸の捲縮数は25個/cm、縫糸の糸長差は19%,一次降伏点応力は0.5g/deであった。
【0045】(刺しゅう縫製、溶解処理)この縫糸を用いて、水溶性ビニルアルコール繊維からなる基布織物にエンブロイダリーレース機で刺しゅう縫製を実施した。縫製に際し、糸切れ、目飛び等のトラブルは全く発生せず、スムースに縫製することが出来た。
【0046】次いで、80℃の温水中で30分間撹拌処理し、基布と縫糸中のポリビニルアルコール繊維を溶解除去したところ、歪みがほとんどなく、表面がフラットで優美であり、伸縮性に富んだ高品位の刺しゅう柄が得られた。
【0047】[比較例1]実施例1において、ポリエチレンテレフタレート仮撚捲縮加工糸の代わりにポリウレタン弾性糸(50de/6fil)を用いたところ、刺しゅう縫製は問題なく行うことが出来たが、基布及び縫糸中のポリビニルアルコール繊維を溶解除去したとき、刺しゅう柄に収縮による歪みや表面凹凸が発生し、極めて外観が悪く、品位に劣るものであった。
【0048】[実施例2〜9、比較例2〜5]実施例1において、ポリビニルアルコール繊維の常温伸長率を変えることにより150℃における乾熱収縮率を変更し、更に、仮撚加工条件を変えることによりポリエチレンテレフタレート仮撚捲縮加工糸の捲縮度を変更して、縫糸におけるポリエチレンテレフタレート仮撚捲縮加工糸の捲縮数及びポリビニルアルコール繊維とポリエチレンテレフタレート仮撚捲縮加工糸との糸長差を表1に示すように変更した。なお、第3ローラの周速度は、所定の糸長差が得られるように適宜調整した。
【0049】結果は表1に示す通りであり、捲縮数が10〜80個/cm、糸長差が10〜40%の範囲内にある場合(実施例2〜9)は、刺しゅう柄外観、縫製性共に良好であり、捲縮数が15〜50個/cm、糸長差が15〜30%の範囲内にある場合(実施例3、4、7、8)は、特に良好な結果が得られた。
【0050】これに対して、捲縮数が10個/cm未満の場合(比較例2)は、ポリビニルアルコール繊維を溶解除去しても、伸縮性の発現が少なく、伸縮性に富んだ良好な刺しゅう柄が得られず、捲縮数が80個/cmを越える場合(比較例3)は、ミシン掛け時の摩耗等で捲縮が損傷を受け易く、糸切れ、目飛び等のトラブルが発生した。また、糸長差が10%未満の場合(比較例4)は、ポリビニルアルコール繊維を溶解除去しても、伸縮性の発現が少なく、伸縮性に富んだ良好な刺しゅう柄が得られず、糸長差が40%を越える場合(比較例5)は、ミシン掛け時の摩耗等で捲縮が損傷を受け易く、糸切れ、目飛び等のトレブルが発生した。
【0051】
【表1】

【0052】なお、表1において、刺しゅう外観及び縫製性は、下記の基準で評価した。
【0053】(1)刺しゅう外観得られた刺しゅうを観察し、歪や表面凹凸の発生がなく、極めて伸縮性に富んだ高品位の刺しゅう柄が得られる場合を◎、伸縮性に富んだ良好な刺しゅう柄が得られる場合を○、伸縮性に富んだ刺しゅう柄が得られない場合を×とした。
【0054】(2)縫製性刺しゅう縫製時に糸切れ、目飛び等が起こらず、極めてスムースに縫製出来る場合を◎、刺しゅう縫製に際して糸切れ、目飛び等がほとんど起こらず、特に問題が起こらない場合を○、糸切れ、目飛び等が多発して、刺しゅう縫製が出来ない場合を×とした。
【0055】[実施例10、比較例6]実施例1において、ポリビニルアルコール繊維とポリエチレンテレフタレート仮撚捲縮加工糸の複合割合を変えることにより、縫糸の一次降伏点応力を表2に示すように変更した。
【0056】結果は表2に示す通りであり、一次降伏点応力が0.1g/de以上の場合(実施例10)は、刺しゅう柄外観、縫製性共に良好であるが、該応力が0.1g/de未満の場合(比較例6)は、ミシン掛け時の張力に耐えられず、糸切れ等が多発して使用出来なかった。
【0057】
【表2】

【0058】なお、刺しゅう外観及び縫製性は、表1の場合と同じ基準で評価した。
【0059】[実施例11]
(高収縮易溶解性非捲縮糸条の製造)ポリオキシアルキレングリコール4重量%と、ジカルボン酸とポリオキシアルキレングリコール成分とからなるポリエーテルエステル4重量%とを含有するポリエチレンテレフタレートを、290℃で溶融して、Y型吐出孔を有する紡糸口金から吐出して、1500m/分の紡糸速度で引き取り、次いで、2.0倍に延伸して、断面形状が三角形で、40de/12filの高収縮易溶解性非捲縮糸条を得た。この糸条の150℃における乾熱収縮率は25%であった。
【0060】(縫糸の製造)難溶解性捲縮糸条として、常法によって得られた50de/24filのポリエチレンテレフタレート仮撚捲縮加工糸(捲縮度28%)を用い、この加工糸と前記高収縮易溶解性非捲縮糸条を引き揃えて、103m/分の周速度で回転する第一ローラと100m/分の周速度で回転する第2ローラとの間に設けたインターレースノズル(空気圧2kg/cm2 )に通し、引き続き、上記第2ローラと75m/分の周速度で回転する第3ローラとの間に設けた1mのスリットヒーター(温度150℃、有効長1m)に通して収縮処理を施した後、ワインダーで巻き取って縫糸用複合糸を得た。
【0061】この複合糸に、S方向に600T/mの下撚りを施し、得られた下撚糸3本を引き揃えて、Z方向に500T/mの上撚りを施した後、シリコーン系ミシン糸用油剤を3%付与して本発明の縫糸を得た。
【0062】得られた縫糸におけるポリエチレンテレフタレート仮撚捲縮加工糸の捲縮数は30個/cm、縫糸の糸長差は24%,一次降伏点応力は0.6g/deであった。
【0063】(刺しゅう縫製、溶解処理)この縫糸を用いて、実施例1と同じ基布織物にエンブロイダリーレース機で刺しゅう縫製を実施した。縫製に際し、糸切れ、目飛び等のトラブルは全く発生せず、スムースに縫製することが出来た。
【0064】次いで、90℃のNaOH水溶液(濃度35g/リットル)中で30分間撹拌処理し、基布と縫糸中の共重合ポリエステル繊維を分解除去したところ、歪みがほとんどなく、表面がフラットで優美であり、伸縮性に富んだ高品位の刺しゅう柄が得られた。
【0065】[実施例12〜19、比較例7〜10]実施例11において、高収縮易溶解性非捲縮糸条に含有させたポリオキシアルキレングリコールと、ポリエーテルエステルの含有割合を変えることにより150℃における乾熱収縮率を変更し、更に、仮撚加工条件を変えることによりポリエステル仮撚捲縮加工糸の捲縮度を変更して、縫糸におけるポリエチレンテレフタレート仮撚捲縮加工糸の捲縮数及び共重合ポリエチレンテレフタレート繊維とポリエチレンテレフタレート仮撚捲縮加工糸との糸長差を表3に示すように変更した。なお、第3ローラの周速度は、所定の糸長差が得られるように適宜調整した。
【0066】結果は表3に示す通りであり、捲縮数が10〜80個/cm、糸長差が10〜40%の範囲内にある場合(実施例12〜19)は、刺しゅう柄外観、縫製性共に良好であり、捲縮数が15〜50個/cm、糸長差が15〜30%の範囲内にある場合(実施例13、14、17、18)は、特に良好な結果が得られた。
【0067】これに対して、捲縮数が10個/cm未満の場合(比較例7)は、共重合ポリエチレンテレフタレート繊維を分解除去しても、伸縮性の発現が少なく、伸縮性に富んだ良好な刺しゅう柄が得られず、捲縮数が80個/cmを越える場合(比較例8)は、ミシン掛け時の摩耗等で捲縮が損傷を受け易く、糸切れ、目飛び等のトラブルが発生した。また、糸長差が10%未満の場合(比較例9)は、共重合ポリエチレンテレフタレート繊維を分解除去しても、伸縮性の発現が少なく、伸縮性に富んだ良好な刺しゅう柄が得られず、糸長差が40%を越える場合(比較例10)は、ミシン掛け時の摩耗等で捲縮が損傷を受け易く、糸切れ、目飛び等のトレブルが発生した。
【0068】
【表3】

【0069】なお、刺しゅう外観及び縫製性は、表1の場合と同じ基準で評価した。
【0070】[実施例20、比較例11]実施例11において、共重合ポリエチレンテレフタレート繊維とポリエチレンテレフタレート仮撚捲縮加工糸の複合割合を変えることにより、縫糸の一次降伏点応力を表4に示すように変更した。
【0071】結果は表4に示す通りであり、一次降伏点応力が0.1g/de以上の場合(実施例20)は、刺しゅう柄外観、縫製性共に良好であるが、該応力が0.1g/de未満の場合(比較例11)は、ミシン掛け時の張力に耐えられず、糸切れ等が多発して使用出来なかった。
【0072】
【表4】

【0073】なお、刺しゅう外観及び縫製性は、表1の場合と同じ基準で評価した。
【0074】
【発明の効果】本発明によれば、刺しゅう柄の歪や表面凹凸の発生がなく、伸縮性に富んだ高品位の刺しゅう柄を得ることが可能で、糸切れ、目飛び等が起こらず、縫製性が良好であり、しかも安価な潜在伸縮性縫糸が得られる。
【出願人】 【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
【出願日】 平成7年(1995)8月1日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】前田 純博
【公開番号】 特開平9−41236
【公開日】 平成9年(1997)2月10日
【出願番号】 特願平7−196411