トップ :: D 繊維 紙 :: D02 糸;糸またはロ−プの機械的な仕上げ;整経またはビ−ム巻き取り




【発明の名称】 スプリング糸の製造方法
【発明者】 【氏名】森田 茂

【氏名】水木 博行

【目的】
【構成】
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ポリアミド繊維を先撚し、合撚し、熱固定しついでオーバー解撚する4工程によるスプリング糸の製造方法において、上記の先撚し合撚しオーバー解撚する際の各撚工程のバルーンテンションが0.3〜0.5g/dであり、上記先撚する際の撚係数Kt(A)が2000<Kt(A)<9000であり、合撚する際の撚係数Kt(B)が19000<Kt(B)<28000であり、オーバー解撚する際の撚係数Kt(C)が6000<Kt(C)<10000であり、かつ100℃以上130℃以下で50分以上70分以下で熱固定することを特徴とするスプリング糸の製造方法。
【請求項2】 ポリアミド繊維を先撚し、合撚しついで仮撚する3工程によるスプリング糸の製造方法において、上記の先撚する際の撚係数Kt(D)が2000<Kt(D)<9000、上記の合撚する際の撚係数Kt(E)が6000<Kt(E)<10000、上記の仮撚する際の撚係数Kt(F)が27000<Kt(F)<35000を満足することを特徴とするスプリング糸の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリアミド繊維を使用したスプリング糸の製造方法に関するものである。特にポリウレタン繊維を用いないで、高い伸縮性を有するかさ高加工糸の製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】スプリング糸の製造方法には、例えば安藤勝三、奈良寛久著の日本繊維機械学会(刊)「フィラメント加工技術マニュアル(上巻)」p63〜64に記載されているように、ツイスターとスチームセッターを使用した先撚、合撚、熱固定、オーバー解撚の4工程法、及びツイスターと仮撚機を使用した先撚、合撚、及び仮撚の3工程法がある。
【0003】しかし、これらの文献には、スプリング状に集束した捲縮を得る必要条件の、撚構成及びその操作方法等は示されているものの、高伸縮性のスプリング糸はこれまで知られていなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、一般的汎用素材のポリアミド繊維、特にポリヘキサメチレンアジパミド繊維、及びポリεカプロアミド繊維を使用し、マルチフィラメントの各単糸の捲縮クリンプが収束して1本のスプリングコイルの如くに形作られることによって、優れた伸縮性が発現されるスプリング糸を実用的に製造する方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、ポリアミド繊維の各撚工程の撚係数Kt と伸縮性との関係を鋭意検討した結果、各撚工程の撚係数を詳細に規定し、さらに撚を高バルーンテンション下で施すことによって高伸縮性が得られることを究明し、スプリング糸、特に高伸縮性のスプリング糸の製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】本発明のスプリング糸の製造方法は、3つの撚工程からなり、繊維に物理的歪み、すなわち撚歪みを程良く付与するというものである。すなわち、本発明の一つは、ポリアミド繊維を先撚し、合撚し、熱固定しついでオーバー解撚するスプリング糸の製造方法において、上記先撚し合撚しオーバー解撚する際のバルーンテンションが0.3〜0.5g/dであり、上記先撚する際の撚係数Kt(A)が2000<Kt(A)<9000であり、合撚する際の撚係数Kt(B)が19000<Kt(B)<28000であり、オーバー解撚する際の撚係数Kt(C)が6000<Kt(C)<10000であり、かつ100℃以上130℃以下で50分以上70分以下で熱固定することを特徴とするスプリング糸の製造方法、である。
【0007】本発明のもう一つは、ポリアミド繊維を先撚し、合撚しついで仮撚する3工程によるスプリング糸の製造方法において、上記の先撚する際の撚係数Kt(D)が2000<Kt(D)<9000、上記の合撚する際の撚係数Kt(E)が6000<Kt(E)<10000、上記の仮撚する際の撚係数Kt F)が27000<Kt F)<35000を満足することを特徴とするスプリング糸の製造方法、である。
【0008】{但し、撚係数=T・(d)1/2 、Tは撚数/m、dは繊度(デニール)}
本発明のスプリング糸の製造方法の一つは、先撚し、合撚し、熱固定し、オーバー解撚する4工程によるスプリング糸の製造方法で、各々同方向(SまたはZ)に先撚した2本のポリアミド繊維を先撚と同方向(SまたはZ)に合撚し、熱固定してからオーバー解撚(零解撚を越えた解撚)することでスプリング糸を製造するものである(但し、合撚工程、及びオーバー解撚工程に代入する繊度の数値は、先撚工程に代入する繊度の数値の2倍である。例えば、使用したポリアミド繊維の繊度が70デニールならば、先撚工程では70デニールであるが、合撚工程、及びオーバー解撚工程では140デニールである)。さらに好ましくは、先撚する際の撚係数Kt(A)が4000<Kt(A)<8000、合撚する際の撚係数Kt(B)が23000<Kt(B)<27000である。
【0009】本発明のスプリング糸の製造方法での熱固定は、スチームセッターの種類によって異なるが、ポリヘキサメチレンアジパミド繊維の場合は120℃で60分間、ポリεカプロアミド繊維の場合は100℃で50分間である。また、上記製造方法の各撚工程の撚をダブルツイスターで施せば、デニール当たり0.3〜0.5gの高いバルーンテンションで高い歪みを繊維に付与させ得るため、得られたスプリング糸の伸縮伸長率は130〜155%及び伸縮弾性率は90〜99%という高伸縮性を示すものが得られる。
【0010】さらに、ダブルツイスターでは、スピンドル回転数が10000r.p.m.以上であること、スピンドル1回転で2回の撚が入ること、巻取形態が大きいこと等から高生産性であるという利点がある。本発明のもう一つのスプリング糸の製造方法は、先撚し、合撚しついで仮撚する3工程によるスプリング糸の製造方法であり、各々同方向(SまたはZ)に先撚した2本のポリアミド繊維を先撚と反対方向(ZまたはS)に合撚し、合撚と反対方向(SまたはZ)に仮撚するものである。
【0011】先撚する際の撚係数Kt(D)が2000<Kt(D)<9000、合撚する際の撚係数Kt(E)が6000<Kt(E)<10000であり、仮撚する際の撚係数Kt(F)が27000<Kt(F)<35000である(但し、合撚工程、及び仮撚工程に代入する繊度の数値は、先撚工程に代入する繊度の数値の2倍である。例えば、使用したポリアミド繊維の繊度が70デニールならば、先撚工程では70デニールであるが、合撚工程、及び仮撚工程では140デニールである)。
【0012】さらに、本発明のもう一つのスプリング糸の製造方法では、先撚する際の撚係数Kt(D)は4000<Kt(D)<8000、仮撚する際の撚係数Kt(F)は27000<Kt(F)<32000とすることが特に好ましい。仮撚係数を除く他の仮撚条件、例えば、加撚解撚張力、加熱温度及び加熱時間等は、通常の仮撚で設定される範囲内でよく、特に限定されない。
【0013】各撚工程で付与した各々の撚歪みが噛み合わないと、スプリング糸にならず、伸縮性が発現できないばかりでなく、高旋回性の糸になってしまう。即ち、各撚工程の撚係数を詳細に規定しなければ、良好なスプリング糸を得ることができない。本発明のスプリング糸の製造方法で得られるスプリング糸は、伸縮伸長率が130〜155%、伸縮弾性率が90〜99%という、有用な高性能スプリング糸で、現在まで見出されてなかったものである。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、実施例によって本発明を詳細に説明する。なお、物性評価は次の通りにおこなった。
(1)伸縮性温度20℃、湿度65%の恒温室に24時間以上保管し、撚糸錘の異なる10ボビンについて、JISL1090−5.7C法に準じ実施した。
【0015】
【実施例1〜2】S700T/mに先撚した繊度70デニール/34フィラメントのポリヘキサメチレンアジパミド繊維(旭化成工業(株)製、商標名レオナ)のFOY及びPOY各々について、S2100T/mに合撚し、熱固定してから、Z600T/mにオーバー解撚してスプリング糸を製造した。上記製造の各撚工程の撚をダブルツイスターで施した。また、熱固定をスチームセッターで120℃、60分間施した。
【0016】得られたスプリング糸の伸縮性の物性評価をおこなった。製造条件及び物性評価の結果を表1に示す。
【0017】
【比較例1〜2】各撚工程の撚をイタリー撚糸機で施した以外は、実施例1と同様に繊度70デニール/34フィラメントのポリヘキサメチレンアジパミド繊維(旭化成工業(株)製、商標名レオナ)のFOY及びPOYのスプリング糸を製造した。得られたスプリング糸の物性評価をした。製造条件及び物性評価の結果を表1に示す。
【0018】各撚工程の撚係数を詳細に限定し、かつダブルツイスターを用いバルーンテンションを0.4g/dにして撚を施して製造されたスプリング糸(実施例1〜2)は、イタリーツイスターを用いバルーンテンションを0.07g/dにして撚を施して製造されたスプリング糸(比較例1〜2)よりもさらに高伸縮性を示している。また、生産性は特に高く約3倍である。
【0019】
【比較例3〜4】先撚数0、S1300T/mの2条件とした以外は、実施例1と同様にして繊度70デニール/34フィラメントのポリヘキサメチレンアジパミド繊維(旭化成工業(株)製、商標名レオナ)FOYのスプリング糸2種を製造した。得られたスプリング糸の物性評価をした。製造条件及び物性評価の結果を表2に示す。
【0020】
【比較例5〜6】合撚数S1200、S3000T/mの2条件とした他は、実施例1と同様にして繊度70デニール/34フィラメントのポリヘキサメチレンアジパミド繊維(旭化成工業(株)製、商標名レオナ)FOYのスプリング糸を製造した。得られたスプリング糸2種の物性評価をした。製造条件及び物性評価の結果を表2に示す。
【0021】
【比較例7】熱固定をスチームセッターで95℃、45分間施した以外は実施例1と同様にして、繊度70デニール/34フィラメントのポリヘキサメチレンアジパミド繊維(旭化成工業(株)製、商標名レオナ)FOYのスプリング糸を製造した。得られたスプリング糸の物性評価をした。製造条件及び物性評価の結果を表3に示す。
【0022】
【比較例8〜9】オーバー解撚数Z400、Z950T/mの2条件とした以外は、実施例1と同様にして繊度70デニール/34フィラメントのポリヘキサメチレンアジパミド繊維(旭化成工業(株)製、商標名レオナ)FOYのスプリング糸2種を製造した。
【0023】得られたスプリング糸の物性評価をした。製造条件及び物性評価の結果を表3に示す。
【0024】
【実施例3〜4】S1500T/mに先撚した繊度15デニール/5フィラメントのポリヘキサメチレンアジパミド繊維(旭化成工業(株)製、商標名レオナ)のFOY及びPOY各々について、Z1300T/mに合撚し、S6000T/mに仮撚加工してスプリング糸2種を製造した。
【0025】得られたスプリング糸の物性評価をした。製造条件及び物性評価の結果を表4に示す。
【0026】
【比較例10〜11】仮撚加撚数S4700、S6700T/mにした他は、実施例3と同様にして繊度15デニール/5フィラメントのポリヘキサメチレンアジパミド繊維(旭化成工業(株)製、商標名レオナ)FOYのスプリング糸を製造した。得られたスプリング糸の物性評価をした。製造条件及び物性評価の結果を表4に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
【表2】

【0029】
【表3】

【0030】
【表4】

【0031】
【発明の効果】本発明のスプリング糸の製造方法は、従来のものに比較して、伸縮伸長率が130〜155%及び伸縮弾性率が90〜99%という、極めて伸縮性に優れたスプリング糸が得られる。
【出願人】 【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成工業株式会社
【出願日】 平成7年(1995)7月31日
【代理人】
【公開番号】 特開平9−41235
【公開日】 平成9年(1997)2月10日
【出願番号】 特願平7−194805