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【発明の名称】 耐アルカリ性に優れたポリエステル混繊糸
【発明者】 【氏名】徳竹 政仁

【氏名】中塚 耕二

【目的】
【構成】
【特許請求の範囲】
【請求項1】 カチオン染料に可染性のポリエステル糸条Aと、カチオン染料に不染性のポリエステル糸条Bとの混繊糸であって、糸条Aがポリエステルのジカルボン酸成分のうち 0.5〜8モル%がスルホン酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸成分であり、かつ、下記一般式■で表される化合物をポリエステル 100重量部に対して 0.5〜10重量部含有したポリエステル組成物で構成されていることを特徴とする耐アルカリ性に優れたポリエステル混繊糸。
1O−Ph−X−Ph−OR2 ■〔ここで、R1及びR2は炭素数6〜18のアルキル基又はアリールアルキル基、Phはp−フェニレン基、Xは直接結合、−C (R3) (R4)−{R3及びR4は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基}、−S−、−SO2−又は−O−を表す。〕
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カチオン染料に可染性のポリエステル糸条Aとカチオン染料に不染性のポリエステル糸条Bとからなる耐アルカリ性に優れた混繊糸に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、霜降り様の外観を有する織編物を得る方法として、染色性の異なる複数の糸条からなる混繊糸を使用する方法が知られている。例えば、特公昭51-40174号公報には、カチオン染料に可染性のポリエステル未延伸糸とカチオン染料に不染性のポリエステル未延伸糸とを延伸合糸した混繊糸が開示されている。一方、ポリエステル繊維からなる織編物に絹様のソフトな風合いを与えるために、アルカリにより減量処理する方法が一般的に採用されている。しかし、上記のような混繊糸を用いた織編物に10重量%以上のアルカリ減量加工を行うと、カチオン染料に可染性のポリエステル糸条の減量速度がカチオン染料に不染性のポリエステル糸条にくらべて極めて大きいために、カチオン染料に可染性のポリエステル糸条のみが大きく減量され、織編物の強度が著しく低下したり、霜降り様の外観が損なわれたりするという問題があった。
【0003】なお、特開平4−285656号公報には、カチオン染料に可染性のポリエステルに溶融粘度低下剤として特定のビスフェノール系化合物を含有させて溶融紡糸した高強度のカチオン染料可染型ポリエステル繊維が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、アルカリ減量加工を行っても、カチオン染料に可染性のポリエステル繊維が著しく分解されることがなく、織編物の強度の低下が小さく、カチオン染料で染色することにより良好な霜降り様の外観を有する織編物とすることができるポリエステル混繊糸を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、カチオン染料に可染性のポリエステル糸条に、特定のビスフェノール系化合物を含有させることにより、糸質性能やカチオン染料による染色性を損なうことなくアルカリ減量速度を大幅に低下できることを見出し、本発明に到達した。
【0006】すなわち、本発明の要旨は、次の通りである。カチオン染料に可染性のポリエステル糸条Aと、カチオン染料に不染性のポリエステル糸条Bとの混繊糸であって、糸条Aがポリエステルのジカルボン酸成分のうち 0.5〜8モル%がスルホン酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸成分であり、かつ、下記一般式■で表される化合物をポリエステル 100重量部に対して 0.5〜10重量部含有したポリエステル組成物で構成されていることを特徴とする耐アルカリ性に優れたポリエステル混繊糸。
1O−Ph−X−Ph−OR2 ■〔ここで、R1及びR2は炭素数6〜18のアルキル基又はアリールアルキル基、Phはp−フェニレン基、Xは直接結合、−C (R3) (R4)−{R3及びR4は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基}、−S−、−SO2−又は−O−を表す。〕
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明する。
【0008】本発明における糸条Aを構成するポリエステルとしては、スルホン酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸成分を共重合したポリエチレンテレフタレートが好適であり、他の共重合成分、例えば、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ペンタエリスリトール、p−ヒドロキシ安息香酸等、p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸を含有しているものでもよい。
【0009】ここで、スルホン酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸成分としては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸(SIPA-Na)、5−ナトリウムスルホテレフタル酸(STPA-Na)、5−カリウムスルホイソフタル酸(SIPA-K)、5−カリウムスルホテレフタル酸(STPA-K)、5−リチウムスルホイソフタル酸(SIPA-Li)、5−リチウムスルホテレフタル酸(STPA-Li)、3,5−ジ(カルボ−β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンスルホン酸ナトリウム(SIPG-Na)、2,5−ジ(カルボ−β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンスルホン酸ナトリウム(STPG-Na)、3,5−ジ(カルボ−β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンスルホン酸カリウム(SIPG-K)、3,5−ジ(カルボ−β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンスルホン酸リチウム(SIPG-Li)、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル(SIPM-Na)、5−ナトリウムスルホテレフタル酸ジメチル(STPM-Na)、5−カリウムスルホイソフタル酸ジメチル(SIPM-K)、5−リチウムスルホイソフタル酸ジメチル(SIPM-Li)等が挙げられる。
【0010】糸条Aを構成するポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートのようなベースとなるポリエステルを製造する際に、これらのスルホン酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸化合物をエステル化反応又はエステル交換反応から重縮合反応の初期までの任意の段階で添加 (30〜40重量%のエチレングリコール溶液として添加するのが好ましい。) し、次いで公知の方法で重縮合反応を完結することにより得られる。
【0011】スルホン酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸成分の共重合量は、ジカルボン酸成分の 0.5〜8モル%とする必要がある。この共重合量が 0.5モル%未満であるとカチオン染料での染色性が悪く、一方、8モル%を超えると得られるポリエステルの溶融粘度が高くなるため、重合度を十分に上げることが困難になるとともに、耐アルカリ性が低下し、好ましくない。
【0012】なお、スルホン酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸成分を共重合したポリエステルとこれを共重合しないポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレートと混合して繊維の製造に供してもよい。この場合もスルホン酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸成分が混合ポリエステル中で 0.5〜8モル%を占めるようにすることが必要である。
【0013】また、スルホン酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸成分を共重合すると得られるポリエステル中のジエチレングリコール結合の量が増えるので、これを防ぐために、ポリエステルの製造時にアルカリ金属塩やアンモニウム化合物等を添加することが望ましい。
【0014】本発明において、糸条Aの耐アルカリ性を向上させるためには、前記一般式■で表される化合物を糸条Aを構成するポリエステル 100重量部に対して 0.5〜10重量部含有させることが必要である。この含有量が 0.5重量部未満では実質的に効果がなく、10重量部を超えて含有させても効果が飽和するばかりか、繊維の物性を損ねたり、紡糸時の糸切れが増加するため、好ましくない。
【0015】また、一般式■で表される化合物は、ポリエステルの製造時及び紡糸時の任意の段階で添加して含有させることができる。
【0016】本発明において耐アルカリ性を向上させるために用いる化合物は、一般式■において、R1及びR2が炭素数6〜18のアルキル基又はアリールアルキル基のものであることが必要である。炭素数が6未満であると、分子量が低すぎるために、ポリエステルの重合時に添加すると減圧時に系外に飛散し、ポリエステル中に残存させることが難しく、また、紡糸時に添加する場合には、溶融時に沸騰して気泡が生じたり、発煙による作業環境の悪化や紡糸糸切れが発生し易くなるため、好ましくない。また、炭素数が18を超えると、ポリエステルとの相溶性が悪くなるため、紡糸時の糸切れが増加するため、好ましくない。
【0017】R1及びR2の具体例としては、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基等の直鎖アルキル基や2−ヘキシルデシル基、メチル分岐オクタデシル基等の分岐アルキル基及びベンジル基、2−フェネチルエチル基等のアリールアルキル基が挙げられる。
【0018】上記化合物の具体例としては、次のような化合物が挙げられる。
(a) C817O−Ph−SO2−Ph−O−C817(b) C1837O−Ph−SO2−Ph−O−C1837(c) C8 17O−Ph−S−Ph−O−C8 17(d) C1225O−Ph−S−Ph−O−C1225(e) C1225O−Ph−Ph−O−C1225(f) C817O−Ph−C (CH3)2−Ph−O−C817(g) C817O−Ph−O−Ph−O−C817(h) C65−CH2O−Ph−SO2−Ph−OCH2−C65【0019】一方、糸条Bを構成するポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられるが、カチオン染料に不染性のポリエステルであれば、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、プロパンジオール、1,4−ブタジオール、p−ヒドロキシ安息香酸、p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸等の共重合成分を含有するものでもよい。
【0020】本発明の混繊糸を得るには、例えば、糸条Aと糸条Bとを別々に紡糸、延伸を行い、延伸糸を後工程で混繊する方法、糸条Aと糸条Bの未延伸糸を同時に延伸合糸して混繊する方法、2成分系溶融紡糸機を用いて、糸条Aと糸条Bとを同一紡糸口金から共紡糸する方法等を採用することができる【0021】なお、本発明の混繊糸を構成するポリエステルには、必要に応じて、二酸化チタン等の艶消し剤、ヒンダードフェノール系化合物等の酸化防止剤、着色剤、難燃剤、制電剤等の添加剤を含有させることができる。
【0022】
【作用】本発明の混繊糸において、カチオン染料に可染性のポリエステル糸条Aが、スルホン酸塩基を有する芳香族ジカルボン酸成分を共重合しているにもかかわらず、良好な耐アルカリ性を有し、カチオン染料に不染性のポリエステル糸条Bに近いアルカリ減量速度となることの理由は明かではないが、一般式■で表される化合物がポリエステルの可塑剤として働き、ポリエステルの分子鎖が動き易くなり、溶融状態から固化する過程での結晶、配向が進み易くなるために、糸条Aの結晶化や配向が高くなり、その結果、耐アルカリ性が向上してアルカリ減量速度が低下するものと考えられる。
【0023】
【実施例】次に、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、例中の測定及び評価法は次の通りである。
(1) 極限粘度(〔η〕)
フェノールと四塩化エタンの等重量混合物を溶媒とし、温度20℃で測定した。
(2) 染色性混繊糸を編成した後、染色し、霜降り状態を目視で判定し、次の3段階で評価した。
○:良好、 △:やや不良、 ×:不良なお、染色は、Astrazon Blue FRP (バイエル社製カチオン染料)を 0.5%owf 使用し、浴比1:50の染液を用いて温度97℃で30分間、常法により染色することにより行った。
(3) アルカリ減量率混繊糸を編成した後、10重量%水酸化ナトリウム水溶液により、浴比1:100、温度70℃の条件で15〜60分間処理し、減量率と処理時間との関係を調べた。なお、糸条Aと糸条Bの減量率は、減量加工した編地を(2) の条件で染色した後、一部解編し、混繊糸の横断面の顕微鏡写真を撮影し、染色されている単糸断面を糸条A、染色されていない単糸断面を糸条Bとして繊維径から算出した。
【0024】実施例1ビス−β−ヒドロキシエチルテレフタレート及びその低重合体の存在するエステル化反応装置にテレフタル酸とエチレングリコールとのモル比1:1.6 のスラリーを連続的に供給し、温度 250℃、常圧、滞留時間6時間の条件でエステル化反応を行い、平均重合度 9.5のエステル化生成物を連続的に得た。続いて、このエステル化生成物にエチレングリコールを加えて解重合し、平均重合度 5.5のオリゴマーとした。このオリゴマーを重縮合反応器に移送し、酸成分1モルに対し、三酸化アンチモン2×10-4モル、酢酸ナトリウム15×10-4モル、SIPG-Na とSIPM-Na とのモル比60:40の混合物 1.5×10-4モルを順次添加し、最後に前記(a) の化合物(花王社製、商品名 KP-L155)を生成ポリエステルに対して3重量%となる量で添加し、徐々に減圧して、最終的に 0.1トル、温度 275℃で 5.5時間重縮合反応を行い、〔η〕0.62の共重合ポリエステルを得た。この共重合ポリエステルを常法によりチップ化して乾燥した後、通常の溶融紡糸機を用いて、紡糸温度 295℃、吐出量28g/分で、孔径 0.2mmの紡糸孔を48個有する紡糸口金から紡出し、紡出糸条を空気流で冷却固化した後、1重量%の油剤を付与し、1400m/分の速度で引き取り、 182d/48fの糸条A用の未延伸糸を得た。一方、〔η〕0.68のポリエチレンテレフタレートを、孔径0.18mmの紡糸孔を72個有する紡糸口金を用いて紡出した以外は上記と同様に紡糸し、糸条B用の未延伸糸を得た。そして、糸条A用及び糸条B用の未延伸糸を同時に、温度85℃で 2.5倍に延伸し、温度 165℃で熱処理を行い、空気圧力 2.3kg/cm2 で流体交絡処理を行い、交絡数が55〜65個/mで、146d/120fの混繊糸を得た。次いで、得られた混繊糸を編成し、アルカリ減量処理を行い、続いて染色処理し、アルカリ減量率及び染色性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0025】実施例2〜11、比較例1〜4糸条A側の共重合スルホン酸塩の種類と共重合量及び一般式■の化合物の種類と添加量を表1に示したように変えた以外は、実施例1と同様に行った。その結果を表1に示す。
【0026】
【表1】

【0027】実施例1〜11で得られた混繊糸は、染色後の霜降り状態も良好で、糸条Aのアルカリ減量率も糸条Bの2倍以内であり、減量加工に十分耐えることができるものであった。一方、比較例1〜4では、得られた混繊糸の染色後の霜降り状態が劣ったり、霜降り状態が良好でも糸条Aのアルカリ減量率が糸条Bの2倍以上あるため、アルカリ減量加工に適さなかったり、操業性が悪く、紡糸できなかったりした。
【0028】
【発明の効果】本発明によれば、耐アルカリ性に優れ、アルカリ減量により織編物にソフトな風合を与えることが可能で、カチオン染料で染色することにより良好な霜降り様を呈する織編物とすることのできる混繊糸が提供される。
【出願人】 【識別番号】000228073
【氏名又は名称】日本エステル株式会社
【出願日】 平成7年(1995)7月31日
【代理人】
【公開番号】 特開平9−41232
【公開日】 平成9年(1997)2月10日
【出願番号】 特願平7−215159