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【発明の名称】 ストリング
【発明者】 【氏名】安西 豊

【目的】
【構成】
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ポリアミド樹脂に非晶性ポリアミドを1〜70重量%存在させて、押し出し延伸紡糸して形成されることを特徴とするストリング。
【請求項2】 ポリアミド樹脂を押し出し延伸紡糸したモノフィラメントの表面を、非晶性ポリアミドを含有するポリアミド樹脂で被覆してなることを特徴とするストリング。
【請求項3】 ポリアミド樹脂を押し出し延伸紡糸した複数本のフィラメントにより形成される撚り糸または編組糸の表面を、非晶性ポリアミドを含有するポリアミド樹脂で被覆してなることを特徴とするストリング。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は初期ヤング率の増加を自由に調節でき、緩和弾性率の調節および耐クリープ性の向上を図り、耐吸水性、酸化防止性などに優れた性能を有し、さらには高い透明性を有する釣り糸やラケット用ガットなどに好適なストリングに関するものである。
【0002】
【従来の技術】現在の釣り糸やラケット用ガットには大部分がポリアミドモノフィラメントが使用されているが、これは、強力・柔軟性・反発弾性などに優れ、他の素材、たとえばポリエステルやフロロカーボンなどの初期ヤング率の大きいものよりも耐衝撃性などの点で好感が持たれていた。しかし、ポリアミドは周知のように初期ヤング率が低く、応力緩和が大きく、耐クリープ性に難点があった。特に釣り糸については約300 デニール以下の細物は柔らか過ぎると言われることが多く、近年ではナイロン6とナイロン66との共重合品が強伸度の点で優位にあるが、これはナイロン6よりもさらに融点、二次転移点が低くて応力緩和が大きく、釣り糸においては経時的に強力、伸度の劣化につながり、一方、ラケット用ガットの場合にはストリングをラケットに張設後経時的にストリングの張力低下を来たし、著しく打球感を損じるという問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような課題を解決するもので、ストリングの初期ヤング率の向上、耐クリープ性の向上、透明性、耐吸水性の向上などを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】この課題を解決するために本発明のストリングは、ポリアミド樹脂に非晶性ポリアミドを1〜70重量%存在させて、押し出し延伸紡糸したものである。
【0005】また、本発明のストリングは、ポリアミド樹脂を押し出し延伸紡糸したモノフィラメントの表面を、非晶性ポリアミドを含有するポリアミド樹脂で被覆したものである。
【0006】また、本発明のストリングは、ポリアミド樹脂を押し出し延伸紡糸した複数本のフィラメントにより形成される撚り糸または編組糸の表面を、非晶性ポリアミドを含有するポリアミド樹脂で被覆したものである。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明のストリングにおいては、非晶性ポリアミドの存在が不可欠である。なぜなら、一般に、融点や二次転移点の高い非晶性ポリアミドを含有することによって応力緩和を小さくすることができ、その結果、釣り糸やラケット用ガットなどに好適な特性を発揮し得るからである。
【0008】前記非晶性ポリアミドとしては、3員環以上のラクタム、重合可能なω−アミノカルボン酸およびジアミンとジカルボン酸などの重縮合によって得られるポリアミド等を用いることができ、そのモノマーの具体例としては、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム類、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、p−アミノ安息香酸などのアミノカルボン酸、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、m−キシレンジアミン、p−キシレンジアミン、 1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、 1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、1−アミノ−3−アミノメチル −3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジメチルジシクロ−ヘキシレンメタン、 2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ビス(アミノエチル)ピペラジン等のジアミン類、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などのジカルボン酸類などが挙げられる。
【0009】また、本発明に適用する非晶性ポリアミドのガラス転移温度は、100℃以上であることが好ましい。なぜなら、ガラス転移温度が100℃以上であると、耐熱性がより向上するので、成形品の使用環境温度が制限されることなく、優れた特性のストリングを広範に使用することができるからである。
【0010】前記ポリアミド樹脂は、ナイロン6、またはナイロン6とナイロン66とのポリマーブレンド品、またはナイロン6とナイロン66との共重合品などが好適である。たとえば、ナイロン6とナイロン66とのブレンド比率が 100:0〜75:25であるポリアミド樹脂に対して、非晶性ポリアミドをポリマーブレンドで1〜70重量%存在せしめた樹脂組成物を材料として、押し出し延伸紡糸してストリングを製造することができる。
【0011】ポリアミド中に存在させる非晶性ポリアミドは、1〜70重量%でなければならない。非晶性ポリアミドが1重量%未満しか存在しないと、初期ヤング率が十分に向上せず本発明の効果を発揮し得ないこととなる。逆に、非晶性ポリアミドが70重量%を超えて存在すると、結節強力が低下する傾向があり好ましくない。
【0012】本発明で適用するポリアミド樹脂の相対粘度は、2.5以上が好ましい。ポリアミド樹脂の相対粘度が2.5未満であると、得られるストリングの初期ヤング率が低下する傾向にあり、本発明の効果が十分に発揮できない場合がある。
【0013】本発明において、非晶性ポリアミドとポリアミドとは相溶性があり密着性が良いことから、本発明のストリングは、ポリアミド樹脂からなるモノフィラメントまたは撚り糸または編組糸の表面に、非晶性ポリアミドの溶剤溶液をコーティング・乾燥して被膜を形成したものでも良い。このとき、溶剤は主にクレゾール系で、樹脂溶液濃度は2〜15%が良い。
【0014】なお、モノフィラメントまたは撚り糸または編組糸の表面を被覆する場合には、被覆されるモノフィラメントまたは撚り糸または編組糸には必ずしも非晶性ポリアミドを存在させなくても良いが、これらにも非晶性ポリアミドを含有させておくと、本発明の諸性能をさらに向上させることができる。
【0015】以上のように、ポリアミドの釣り糸やラケット用ガットを製造する際に硬度が高く低吸水性の非晶性ポリアミドを内部および/または表面に存在せしむることにより、その非晶性ポリアミドの添加量に応じてストリングの初期ヤング率・耐クリープ性などを自由に調節でき、釣り糸においては、ぴんとして張りのある所謂しゃっきりとした釣り糸を、ラケット用ガットにおいては張設後弛みが少ないストリングを得ることができる。また、本発明のストリングは、従来のストリングに多かった白色不透明とは異なり、無色透明で高い透明性を有している。
【0016】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。
【0017】実施例1ナイロン6とナイロン66とのブレンド比率が85:15で相対粘度が3.5のポリアミド樹脂に非晶性ポリアミドを、それぞれ2,4,8,65重量%存在させてなる材料により 670d(φ0.29mm)のポリアミド釣り糸を製造し、実施例1−1〜1−4とした。また、非晶性ポリアミドを含有しないポリアミド釣り糸を比較例1−1とし、非晶性ポリアミドを80重量%含有するポリアミド釣り糸を比較例1−2とした。それらの特性を表1に示すが、表中、クリープ特性は、1本のストリングに1Kgの荷重を掛け、20℃、RH65%の条件で7日後の伸長度を見たものである。また、吸水直線強度は、水中で24時間放置後に測定した。表1からも判るように、各特性において実施例のストリングは比較例のストリングに比べて優れている。また、各実施例のいずれのストリングも高い透明性を有することが目視により明らかであった。
【0018】
【表1】

【0019】実施例2ナイロン6とナイロン66とのブレンド比率が85:15で相対粘度が3.5のポリアミド樹脂に非晶性ポリアミドをそれぞれ8,65重量%存在させてなる材料により、φ0.95mmの芯糸にφ0.16mmの巻糸を1重巻して仕上りがφ1.27mmのテニスラケット用ガットを製造し、実施例2−1〜2−2とした。また、非晶性ポリアミドを含有しないテニスラケット用ガットを比較例2−1とし、非晶性ポリアミドを80重量%含有するストリングを比較例2−2とした。それらの特性を表2に示すが、表中、クリープ特性は1本のストリングに20Kgの荷重を掛け、20℃、RH65%の条件で7日後の伸長度を見たものである。また、吸水直線強力は水中で24時間放置後に測定した。表2からも判るように、各特性において実施例のストリングは比較例のストリングに比べて優れている。また、各実施例のいずれのストリングも高い透明性を有することが目視により明らかであった。
【0020】
【表2】

【0021】実施例3上記実施例1−1のポリアミドストリングを芯糸とし、この芯糸の表面に厚さ0.005mm のポリアミド樹脂被膜を形成した。この場合、芯糸に含まれる非晶性ポリアミドは2重量%であり、被膜樹脂に含まれる非晶性ポリアミドは10重量%とした。その場合の直線強度は10.7 g/d 、直線伸度は21%、結節強度は8.4g/d、クリープ特性は7%、初期ヤング率は650、吸水直線強度は9.6g/dであり、優れた特性を得ることができた。また、このストリングは高い透明性を有することが目視により明らかであった。
【0022】実施例4上記実施例2−1のポリアミドストリングの表面に厚さ0.02mmのポリアミド樹脂被膜を形成した。この場合、樹脂被膜で包まれるストリングに含まれる非晶性ポリアミドは8重量%であり、被膜樹脂に含まれる非晶性ポリアミドは30重量%とした。その場合の直線強力は82Kg、直線伸度は26%、結節強力は47Kg、クリープ特性は12%、初期ヤング率は550、吸水直線強力は76Kgであり、優れた特性を得ることができた。また、このストリングは高い透明性を有することが目視により明らかであった。
【0023】以上の説明および各表の結果からも、ポリアミド樹脂に非晶性ポリアミドを1〜70重量%存在させてなる実施例は比較例に比べて各特性で優れていることが明らかである。
【0024】ところで上記実施例3および4では、ポリアミドストリングならびにその表面の樹脂被膜に非晶性ポリアミドを存在せしめているが、その場合、表面の樹脂被膜の非晶性ポリアミドの存在量を内部のポリアミドの非晶性ポリアミドの存在量よりも70重量%までの範囲で多くするのが好ましい。また内部のポリアミドに非晶性ポリアミドを存在させず、表面の樹脂被膜にのみ非晶性ポリアミドを存在せしめてもほぼ同様の効果が得られる。
【0025】なお、図1に実施例3における釣り糸の断面を、図2に実施例4におけるストリングの断面を示している。図1において、1は芯糸、2はこの芯糸1を包む被覆層である。また図2において、3は芯糸、4はこの芯糸3の表面に巻装された多数本の巻糸、5はストリングの表面を包む被覆層である。
【0026】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、ポリアミドの釣り糸やラケット用ガットを製造する際に硬度が高く低吸水性の非晶性ポリアミドを内部および/または表面に存在せしむることにより、その非晶性ポリアミドの添加量に応じてストリングの初期ヤング率・耐クリープ性などを自由に調節でき、釣り糸においては、ぴんとして張りのある所謂しゃっきりとした釣り糸を、ラケット用ガットにおいては張設後弛みが少なく、最適な張力を長時間にわたって持続するストリングを得ることができる。また、非晶性ポリアミドの存在により、耐酸化性および耐摩耗性を向上させることもできる。また、本発明のストリングは、従来のストリングに多かった白色不透明とは異なり、無色透明で高い透明性を有している。
【出願人】 【識別番号】591168677
【氏名又は名称】安西 豊
【出願日】 平成7年(1995)7月12日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】森本 義弘
【公開番号】 特開平9−31785
【公開日】 平成9年(1997)2月4日
【出願番号】 特願平7−175295