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スパンライク交絡糸 - 特開平9−31780 | j-tokkyo
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【発明の名称】 スパンライク交絡糸
【発明者】 【氏名】藤原 正幸

【氏名】治田 勝

【目的】
【構成】
【特許請求の範囲】
【請求項1】 熱可塑性マルチフィラメント糸からなる芯鞘構造の混繊交絡糸であって,鞘部を構成するマルチフィラメント糸Aは,結節強度が3.0g/d以下で,各単糸の横断面は減量処理によって下記■,■の要件を満足する多葉断面糸となるものであり,一方,芯部を構成するマルチフィラメント糸Bは,中空率25%以上の中空断面糸で構成され,かつ,前記混繊交絡糸の表面には,主として鞘部を構成するフィラメントで形成されたループ毛羽や切断毛羽が混在してなることを特徴とするスパンライク交絡糸。
■3個以上の凸部を有する。
■各凸部の頂点付近に深さが1〜15μmの溝を2個以上有する。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,織編物にして減量処理を行うことによって,スパンタッチな毛羽感とドライでソフトな風合及び軽量感を有するスパンシルク調織編物が得られるスパンライク交絡糸に関するものである。
【0002】
【従来の技術】昨今の高級指向に伴い,機能と風合を兼ね備えた商品の中で,特に軽量感に優れ,かつ,スパンシルク調風合の織編物が強く要望されているが,この対応策として,中空糸とスパンシルクを表現し得る他の合成繊維とを混繊した複合糸を用いることが検討されている。しかしながら,一般に合成繊維マルチフィラメント糸は,スパンシルクに比較して毛羽感のあるソフトな風合や嵩高性に欠けるとともに,何よりもドライ感に欠けた特有のヌメリ感を有しており,このため,中空糸と混繊した複合糸も,合成繊維マルチフィラメント糸の上記欠点を有するものであった。
【0003】従来,これらの欠点を解消するために種々の提案がなされている。例えば,毛羽感のあるソフトな風合の布帛を得るための方法として,単糸繊度の細いマルチフィラメント糸を用い,加工時に単糸の一部を切断したり,あるいは布帛にした後に起毛する方法が採用されている。しかしながら,この布帛は,毛羽感のある風合は有するが,単糸繊度が細いためヘタリやヌメリ感が強調され,スパンシルクには程遠い風合のものであった。
【0004】また,布帛にドライ感を付与することのできる糸条として,特開平4-65506号公報や特開平4-91213号公報には,突起部を有する異形断面糸が提案されている。しかしながら,これらの糸条は,単糸断面の突起部がシャープなために,製編織して得られる布帛はドライ感が強調されすぎ,ソフト性に欠けたものとなる。
【0005】さらに,特公昭62-53606号公報には,布帛にドライ感やシャリ感を付与することのできる糸条として,単糸の断面が多葉形状で,多葉形状の各凸部頂点付近に先細り状の溝を1つ設けた異形断面糸が開示されている。しかしながら,この糸条は,多葉形状の凸部頂点付近の先細り状の溝を多葉形状の凹部と交互になるように設けて布帛にドライ感やシャリ感を付与するものであって,この糸条では,毛羽感のあるソフトな風合の布帛を得ることはできなかった。
【0006】上記の欠点を補うものとして,ソフト感を付与できる糸条とドライ感を付与できる糸条を同時に流体攪乱処理して,ループや絡みを有する交絡糸を得る方法も知られている。しかしながら,このような交絡糸は,どちらか一方の糸条の風合が強調されすぎ,ソフトな風合とドライ感という相反する性能が渾然一体となった風合が得られ難く,また,ループ毛羽のみでスパンタッチな毛羽感を表現するには,ループ長を大きく,ループ毛羽数を多くする必要があるため,ファスナー現象が起こりやすいという問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は,上記の問題を解決し,織編物にして減量処理を施すことによって,スパンタッチな毛羽感とドライでソフトな風合及び軽量感を有するスパンシルク調織編物を得ることのできるスパンライク交絡糸を提供することを技術的な課題とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは,上記の課題を解決するために鋭意検討した結果,特殊断面形状で結節強度が比較的低い複合マルチフィラメント糸と中空断面フィラメントとを混繊処理すれば,軽量でスパンシルク調の交絡糸が得られることを知見して本発明に到達した。すなわち,本発明は,熱可塑性マルチフィラメント糸からなる芯鞘構造の混繊交絡糸であって,鞘部を構成するマルチフィラメント糸Aは,結節強度が3.0g/d以下で,各単糸の横断面は減量処理によって下記■,■の要件を満足する多葉断面糸となるものであり,一方,芯部を構成するマルチフィラメント糸Bは,中空率25%以上の中空断面糸で構成され,かつ,前記混繊交絡糸の表面には,主として鞘部を構成するフィラメントで形成されたループ毛羽や切断毛羽が混在してなることを特徴とするスパンライク交絡糸を要旨とするものである。
■3個以上の凸部を有する。
■各凸部の頂点付近に深さが1〜15μmの溝を2個以上有する。
【0009】
【発明の実施の形態】以下,本発明について詳細に説明する。
【0010】本発明のスパンライク交絡糸は,鞘部のマルチフィラメント糸Aと芯部のマルチフィラメント糸Bで構成されているが,鞘部を構成するマルチフィラメント糸Aの単糸は,減量処理を行うと,横断面において凸部が3個以上存在し,各凸部の頂点付近に2個以上の溝を有し,凸部全体で好ましくは6〜30個の溝を有する多葉断面糸となるものである。
【0011】図1は,多葉断面糸の減量処理後の単糸の一実施態様を示す横断面図であり,図2は,易溶出成分aと難溶出成分bからなる図1の多葉断面糸を得るための減量処理前の単糸の横断面図である。なお,図2中,Sは単糸の重心である。
【0012】まず,減量処理後の単糸の横断面は,例えば,図2で示したように,重心Sを中心に回転対称位置に凸部Xと凹部Zを有しているものが好ましく,凸部Xを3個以上,好ましくは3〜12個有している必要がある。凸部Xが3個未満では,製編織して得られる布帛にシャリ感やドライ感が付与されず,また,凸部の上限は特に限定されるものではないが,13個以上になると,丸断面に近い糸条となり,シルク調の風合が得難くなるので好ましくない。
【0013】また,各凸部の頂点付近に設ける溝2の数は2個以上で,凸部全体で6〜30個とすることが必要である。この溝2と溝2に挟まれた突起部1の存在により,布帛に適度なソフト感を付与することができる。各凸部の溝2の数が2個未満では,ソフト感に欠けたものとなり,また,凸部全体で30個を超えると,ピーチフェース調やストーンウォッシュ調となるため,目的の風合が得難くなる。
【0014】そして,この溝2の深さは1〜15μmとすることが必要であり,好ましくは3〜10μm,より好ましくは4〜6μmである。溝2の深さが1μm未満では,ソフトな風合が乏しいものとなり,シャリ感やドライ感のみが強調される。また,15μmを超えると,突起部が毛倒れを生じるため,得られる布帛はピーチフェース調やストーンウォッシュ調のものとなる。上記した特殊断面特性により,ソフトでドライという相反する性能が渾然一体となった風合が得られ,シルク調織編物に好適な糸条となる。
【0015】また,本発明の交絡糸は,糸条の表面に主として鞘部を構成するフィラメントで形成された微細なループ毛羽や切断毛羽が多数混在している。従来のタスラン糸のように,ループ毛羽のみでスパン触感を付与するには,ループが大きく,ループ数も多い糸条としなければならず,このような糸条形態では,チーズの解舒不良や布帛のファスナー現象を招くことになる。一方,本発明の交絡糸のように,微細なループ毛羽と切断毛羽を混成させることで,よりスパン糸に近い毛羽感が得られ,しかも解舒性不良やファスナー現象等の問題も生じることがない。
【0016】交絡糸に形成するループ毛羽や切断毛羽の数は,特に限定されるものではないが,ファスナー現象等の問題を生じることなくスパン糸に近い毛羽感を得るためには,切断毛羽を10個/m以上,特に20個/m以上と,ループ毛羽を80〜 110個/m有することが好ましい。
【0017】上記のように,交絡糸の表面にループ毛羽や切断毛羽を付与するためには,マルチフィラメント糸Aの結節強度が3.0g/d以下であることが必要である。結節強度が3.0g/d以下であると,後述するように,本発明の交絡糸を製造する仮撚加工や流体処理の工程で切断毛羽を容易に起生させることが可能となる。
【0018】すなわち,前述のように,本発明の交絡糸の鞘部を構成するマルチフィラメント糸Aは,減量速度の異なる2種のポリマー成分が特殊な異形断面形状で複合された単糸からなる糸条であるため,通常の丸断面糸に比べて屈曲強度がかなり低下したものとなる。しかも,溶解速度の異なる2成分ポリマーからなる複合繊維は,捩りや曲げに対して剥離や折れ曲がりやすい性質がある。したがって,本発明の交絡糸用の供給糸は,必然的に結節強度の低下したものとなり,結節強度は3.0g/d以下となる。なお,異形度の違いによって結節強度が高くなる場合は,製造条件(ポリマー,紡糸等)を適宜選定することで,結節強度を3.0g/d以下とすることができる。
【0019】そして,結節強度が3.0g/d以下のマルチフィラメント糸に仮撚加工と流体処理を施すことで,切断毛羽とループ毛羽を起生させて,スパンライクな毛羽感の表現が可能となる。また,このようにして形成された切断毛羽とループ毛羽は,捲縮によりその長さが短くなり,糸条の表面に緻密に存在することとなる。
【0020】次に,本発明のスパンライク交絡糸の芯部を構成するマルチフィラメント糸Bは,中空率が25%以上の中空断面糸であることが必要である。
【0021】この中空断面糸としては,中空糸用ノズルで紡糸して得られる中空断面糸であってもよく,また,芯部にアルカリ易溶性ポリマー,鞘部にアルカリ難溶性ポリマーが配された芯鞘複合繊維を用い,布帛にした後,易溶性ポリマーを溶解して中空部を形成する,いわゆる溶出タイプの中空断面糸であってもよい。そして,この中空断面糸の中空率を25%以上とすることで,交絡糸全体の軽量化が可能となり,布帛に十分な軽量感を付与することができる。
【0022】なお,芯部を構成する中空断面糸と鞘部を構成する多葉断面糸の構成比率は,目的とする布帛の軽量感と風合を加味して適宜選定すればよいが,中空断面糸が芯部を構成していることで,風合面に悪影響を与えることなく,軽量感を十分付与することが可能となる。また,中空断面糸の断面形状は,特に限定されるものではないが,風合を考慮するならば,異形断面糸とすることが好ましい。
【0023】本発明のスパンライク交絡糸を構成する繊維としては,ポリエステル,ポリアミド,ポリアクリルニトリル等からなるものが挙げられるが,中でもポリエステル繊維が好ましい。ポリエステルとしては,ポリエチレンテレフタレート(PET)のようなホモポリエステルの他,その性質を本質的に変化させない範囲内で第3成分を混合あるいは共重合したポリエステルでもよく,艶消剤,制電剤,酸化防止剤等の添加剤を少量含有しているものでもよい。
【0024】次に,本発明のスパンライク交絡糸の製法例について説明する。
【0025】まず,本発明の交絡糸の鞘部を構成するマルチフィラメント糸として,アルカリ等の溶剤に対して溶解性の異なるポリマーである易溶出成分aと難溶出成分bの2成分を複合紡糸し,図2に示したような易溶出成分aと難溶出成分bからなり,難溶出成分bからなる凸部を複数個(図2では3個)と凸部の頂点付近に易溶出成分aにより複数個の溝(図2では3個)を形成する成分が配置された多葉断面複合繊維を得る。得られた複合繊維をアルカリ等の溶剤で処理して易溶出成分aを溶出させると,図1に示すような多葉断面の難溶出成分bからなる多葉断面糸が得られる。
【0026】なお,使用する易溶出成分aは,溶剤に対する溶解速度が難溶出成分bよりも5倍以上速いものが好ましく,例えば,ポリエステル繊維の場合は,難溶出成分bとしてPETを用い,易溶出成分aとしてスルホン酸金属塩を2.5モル%以上共重合したPETや,スルホン酸金属塩と比較的高分子量のポリアルキレングリコールを共重合したPET等を使用することができる。
【0027】このようにして得られた結節強度が3.0g/d以下となる多葉断面複合繊維に仮撚加工を施して,糸条に捲縮付与と加撚作用に伴う構造歪を与え,捩りや曲げに対する強度の著しく低下した糸条とする。
【0028】上記の糸条と中空紡糸して得られる中空断面糸あるいは溶出タイプの芯鞘複合繊維とを供給量を異ならせて流体攪乱ノズルに供給し,芯部に中空断面糸,鞘部に多葉断面糸を配する芯鞘構造の混繊交絡糸とする。この流体処理時に,結節強度が低く,しかも仮撚加工で打撃を受けた多葉断面糸のフィラメント個々が,圧縮空気の捩り作用と屈曲作用を受けて部分的に切断や折れを生じ,混繊交絡糸に切断毛羽とループ毛羽が多数形成され,本発明のスパンライク交絡糸となる。
【0029】上記で使用する流体攪乱ノズルは,交絡とループ毛羽を形成し得るものであればいずれのノズルを使用してもよく,また,流体攪乱ノズルに供給する圧縮空気圧を適宜調整すれば,ループ毛羽と切断毛羽の形成量を任意に変化させることができる。
【0030】
【実施例】次に,本発明を実施例により具体的に説明する。なお,実施例における物性は,次の方法で測定した。
(1)固有粘度フェノールと四塩化エタンの等重量混合溶媒を用い,温度20℃で測定した。
(2)溝の数と溝の深さ糸条を筒編し,NaOH濃度2%,処理温度95℃,処理時間30分の条件でアルカリ減量して易溶出成分を完全に除去した後,筒編地を解編し,得られた多葉断面繊維の断面を走査型電子顕微鏡で写真に撮り,写真上で溝の数と溝の深さを測定した。
(3)結節強度JIS−L1070に準拠して測定した。
(4)毛羽数敷島紡績社製の毛羽測定器F−インデックスを用い,毛羽測定器のゲージを0.3mmに設定した数値(P)と,ゲージを2.0mmに設定した数値(Q)を測定し,ループ毛羽数を(P−Q),切断毛羽数を(Q)で評価した。
【0031】実施例1〜3,比較例1,2難溶出成分として固有粘度が0.65のPET,易溶出成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸を2.5モル%と平均分子量が7000のポリエチレングリコールを12重量%共重合した固有粘度が0.75の共重合PETを使用し,図2に示すような三角断面形状の凸部の頂点付近を中心にして易溶出成分と難溶出成分で形成された複合繊維が得られるような紡糸口金を用いて複合紡糸した。このとき,難溶出成分と易溶出成分を重量比率で85/15の複合比率とし,易溶出成分を溶剤で除去した後の難溶出成分のみの延伸糸繊度が約75デニールとなるように紡糸時の吐出量を設定した。なお,上記の複合紡糸は,ニードルを吐出孔に挿入した紡糸口金を用いて,ニードル内部に芯部を形成する難溶出成分を,ニードル外部に溝を形成する易溶出成分を流入させることにより行い,得られる繊維の溝の数及び溝の深さを紡糸時に用いるニードルの形状を変えることにより種々変更して行った。引き続いて,得られた複合繊維を延伸し,90d/36f,結節強度2.5g/dの多葉断面糸を得た後,表1に示す条件で仮撚加工を施した。
【0032】一方,中空断面糸としては,中空紡糸して得た丸断面形状で中空率30%のPETマルチフィラメント糸50d/36fを用い,多葉断面糸の仮撚加工糸とともに表1に示す条件で流体処理を施し,芯鞘構造のスパンライク交絡糸を得た。表1に交絡糸の切断毛羽数とループ毛羽数及び多葉断面糸の断面形状を示す。
【0033】
【表1】

【0034】得られたスパンライク交絡糸を経糸と緯糸に用い,経糸密度90本/2.54cm,緯糸密度60本/2.54cmで平織に製織し,精練後,NaOH濃度2%,処理温度95℃,処理時間30分の条件で,布帛全体の約10%のアルカリ減量と染色等の後加工を施した。
【0035】実施例1〜3で得られたスパンライク交絡糸を用いた布帛は,軽量感に優れ,ソフトな風合とドライ感を有し,しかも布帛の表面には切断毛羽と微細なループ毛羽が渾然一体となり,スパンタッチな毛羽感が付与され,スパンシルク調風合を有する織物であった。
【0036】一方,比較例1の交絡糸を用いた布帛は,多葉断面糸の横断面において,凸部の頂点付近に溝が1つしか存在しないため,ドライ感が強調され,ソフトな風合に欠ける織物であった。また,比較例2の交絡糸を用いた布帛は,溝の深さが15μmを超えた多葉断面糸であるため,毛倒れを起こし,ピーチフェース調の風合となった。
【0037】
【発明の効果】本発明のスパンライク交絡糸は,製編織した後,減量処理を施すことによって,複数個の溝を有する多葉断面糸と中空断面糸の混繊交絡糸となるので,布帛にソフトな風合とドライ感及び軽量感を有するスパンシルク調風合を付与することができ,さらに,多葉断面糸で形成された切断毛羽とループ毛羽を併せて有するので,性状の異なる2種の毛羽の相乗作用で,布帛にスパンタッチな毛羽感をも付与することが可能となる。
【出願人】 【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
【出願日】 平成7年(1995)7月20日
【代理人】
【公開番号】 特開平9−31780
【公開日】 平成9年(1997)2月4日
【出願番号】 特願平7−183859