トップ :: D 繊維 紙 :: D02 糸;糸またはロ−プの機械的な仕上げ;整経またはビ−ム巻き取り




【発明の名称】 捲縮機、捲縮方法および中空糸膜
【発明者】 【氏名】中原 清一

【目的】 中空糸膜の外表面に傷を付けることもなく、中空糸膜に波状の捲縮を安定して付与することができる捲縮機を提供すること。
【構成】 ギア間に中空糸膜が通されることにより中空糸膜に捲縮を与える捲縮機であって、ギア同士が互いに接触することがなく、ギアの先端が曲面であり、かつ、ギア同士の最接近時におけるギア間の最短距離が捲縮を付与する中空糸膜の外径の1.1倍以上15倍以下である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ギア間に中空糸膜が通されることにより中空糸膜に捲縮を与える捲縮機であって、ギア同士が互いに接触することがなく、ギアの先端が曲面であり、かつ、ギア同士の最接近時におけるギア間の最短距離が捲縮を付与する中空糸膜の外径の1.1倍以上15倍以下であることを特徴とする捲縮機。
【請求項2】 捲縮機のギア間に中空糸膜を通すことにより中空糸膜に捲縮を与える方法であって、先端が曲面であるギア同士が互いに接触することがなく、かつギア同士の最接近時におけるギア間の最短距離が捲縮を付与する中空糸膜の外径の1.1倍以上15倍以下であることを特徴とする捲縮方法。
【請求項3】 請求項2記載の捲縮方法により捲縮が付与された中空糸膜。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、捲縮中空糸膜を工業的に安定して製造するために用いられる捲縮機、そのための捲縮方法およびその方法により製造された中空糸膜に関するものである。
【0002】
【従来の技術】中空糸膜を使用する膜モジュールは、人工透析等の透析用途、限外濾過・精密濾過等の濾過用途に使用されている。中空糸膜は通常は直線状の膜であり、多数本を束ねて片端あるいは両端を接着剤で固定し、かつ、開口させてモジュールとして使用されている。中空糸膜は直線状であるために揃え易く、小スペースに多くの膜面積を充填することが可能であり、高い能力を発揮する利点を有している。
【0003】しかしながら、中空糸膜がコンパクトに充填され易いために中空糸膜の隙間が狭く、接着時においては接着剤が中空糸膜間に入り難い。このため、シールが不良である中空糸膜モジュールができ易く、生産コストを高める原因となっている。また、使用時においては、人工透析の場合、透析液が中空糸膜束の中央部よりも外周部に流れやすく、中空糸膜束の中央部での老廃物の交換が充分にできない欠点を有している。一方、内圧循環濾過する限外濾過・精密濾過の場合、特に中空糸膜束中央部において、濾過液側(中空糸膜の外側)の流路抵抗が高くなるために膜性能を充分に発揮できない欠点や、中空糸膜洗浄時の逆洗(中空糸膜への液の流れを逆にすることで中空糸膜表面に付着した微粒子などを洗い流すことをいう。)の効果が現れ難く、短期間で濾過速度の低下をもたらす欠点がある。さらに、外圧濾過する限外濾過または精密濾過の場合、中空糸膜束中央部での被濾過液の流れが悪く外周部だけが機能することとなって、膜性能が充分に発揮されず、また、洗浄時の逆洗の効果も現れ難いことから、比較的短期間で中空糸膜が目詰まりしてしまう欠点を有している。
【0004】これらの欠点を解決するために、中空糸膜の外周に他の繊維を螺旋状に巻き付けたり、中空糸膜の一部に突起を設けたフイン付き中空糸膜としたり、また、中空糸膜に螺旋状や波状の捲縮を与えることにより上記の欠点を改善できることが知られている(特開昭62−155858号公報、特開昭62−266106号公報等を参照)。
【0005】ここで、中空糸膜でない通常の繊維では種々の捲縮方法、例えば、狭いスペースに繊維束を押し込み、繊維を折り曲げて永久的な塑性変形を与えてしまう方法、繊維に撚を与えかつ加熱冷却することにより捲縮を与える方法等がある。
【0006】一方、中空糸膜は、その内部を液体が流れるものであるが、通常の繊維に捲縮を与える方法では中空部が潰れたり、中空糸膜の外表面に傷が入ったりなどして、膜性能の変化や耐久性の問題などが生じるために採用できない。中空糸膜に捲縮を与える方法として、ボビン等に交差させて捲き取った中空糸膜を加熱処理して中空糸膜を熱固定する技術、加熱した金網等の凹凸形状部に中空糸膜を押しつけ冷却することにより中空糸膜に凹凸を与える技術なとが知られている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ボビンに交差させて捲いた中空糸膜を加熱処理して捲縮を付与する方法では、膜性能が変化する欠点や、ボビンの内部と外部で膜性能が異なり均一な性能を有した製品を得ることが困難であるという欠点などがある。加熱した金網に中空糸膜を押しつける方法では、金網に接した所が凹んでしまい中空糸膜の性能や耐久性を低下させる欠点や、中空糸膜に大きな凹凸を与えがたいことから捲縮糸としての効果が十分に発揮できないという欠点がある。
【0008】本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、中空糸膜の外表面に傷を付けることもなく、中空糸膜に波状の捲縮を安定して付与することができる捲縮機を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決する本発明の捲縮機は、ギア間に中空糸膜が通されることにより中空糸膜に波状の捲縮を与える捲縮機であって、ギア同士が互いに接触することがなく、ギアの先端が曲面であり、かつギア同士の最接近時におけるギア間の最短距離が捲縮付与する中空糸膜の外径の1.1倍以上15倍以下であることを特徴とする。
【0010】ギア式の捲縮機は一対のギアの間に糸を通過させ波形をつけるものであり、捲縮用のギア、駆動用のギア、それらの駆動用モーターおよび捲縮用ギアの前後に取り付けられたベルトコンベヤーから構成される。捲縮用ギアと駆動用ギアは同軸で取り付けられ、駆動用ギアの噛み合わせにより捲縮用ギアの最短距離がコントロールされる。ここで、当該捲縮機で一般に用いられる捲縮用のギア1の形状は、図1に示すようなコの字型の鋭利な角を有している。かかるギアを用いて中空糸膜に捲縮を付与しようとすると潰れが発生してしまう。本発明に使用されるギア2は図2に示すように先端に曲線状の突起を有する形状のものである。図3は鋭利な角を有するギア(a)および曲線状の突起を有するギア(b)の拡大図である。ここで、本発明において先端が曲面のギアとは、その最小曲率半径をR(図3参照)とし中空糸膜の外径をdとするとき、0.01≦d/R≦1、好ましくは0.05≦d/R≦0.5の条件を満足するギアをいう。d/R<0.01の場合には、膜の捲縮が残り難いか残っても捲縮の掛かり方が少なく好ましくない。また、1<d/Rの場合には膜に潰れが発生し易く好ましくない。なお、図3(b)中にギア間の最短距離をDで表している。
【0011】ギア間を通過させる中空糸膜は、水等の液体で濡れた状態でも乾燥した状態でも良い。一般的には、膜を湿潤状態でギア間に通過させる方がより捲縮が掛かり易く好ましい。また、捲縮時の温度は特に限定されないが、5〜200℃、好ましくは室温〜100℃の範囲が好ましい。
【0012】また、本発明で用いられる中空糸膜の素材としては、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリルスルホンなどのスルホン系ポリマー;エチルセルロース、セルロースアセテート、セルローストリアセテートなどのセルロース系ポリマー;ポリアミド;ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリアミドイミド;ポリアクリロニトリル;ポリフェニレンオキシド;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチルペンテン−1などのポリオレフィン系ポリマー;ポリビニルアルコール、エチレン酢酸ビニルアルコールなどのポリビニルアルコール系などが挙げられる。
【0013】
【作用】通常のギア方式の捲縮機は角形のギアが噛み合う構造をしており、通常の繊維は角型のギアの角で曲げられ、かつ、引っ張られてそのまま塑性変形されて捲縮が付与される。ギアの駆動も片側駆動であり他方のギアは片方のギアに触れて回転する構造である。これに対し、本発明では、ギア先端部を曲面とし、両方のギアを共に駆動させて、ギア同士は接触しない構造とすることによって、中空糸膜の中空部を潰さずに良好な捲縮を与える。このとき、最接近時におけるギア間の最短距離を捲縮付与する中空糸膜外径の1.1倍以上15倍以下とする。捲縮を付与する中空糸膜は多数本を引き揃えギア間に供給するので、中空糸膜の潰れを防止するために両ギアの最短距離として1.1倍は必要である。また、両ギアの最短距離が15倍を越えても、ギアの噛み込みを深くすることにより捲縮を付与することが可能であるが、捲縮付与された中空糸膜の振幅が大きくなって、ケースへの収容など取り扱いが困難となる。
【0014】
【実施例】先端の最小曲率半径が3mmで先端間の距離が24mmであるギアを噛み合わせ、両ギアの噛み込み高さを8mmに、両ギア間の最短距離を2mmに調整した捲縮機のギア間に、外径500μmのポリスルホン製精密ろ過中空糸膜100本を一回通過させて捲縮の付与された中空糸膜を得た。得られた捲縮中空糸膜の外表面に傷は認められず、また、中空糸膜は潰れもなく円形を保っていた。中空糸膜の捲縮は平面上に置いた状態で計測して、サインカーブと見立てた場合の周期は27mmで、振幅は1.3mmであった。
【0015】この捲縮中空糸膜を1800本用い、片端は開口状態でケースに接着剤で固定し、他端は一本づつ接着剤でシールして、有効濾過長7cmの中空糸膜モジュールを作製した。このモジュールを使用して、日本水道協会が規定している浄水器の除濁能力試験法に従い、カオリン10ppmを分散させた水を1kg/cm2の定圧で濾過したところ、1L/minの濾過速度に低下するまでの濾過量は2570Lであった。
【0016】比較のため、実施例で使用した外径500μmのポリスルホン製精密濾過中空糸膜を捲縮することなく、実施例と同様にして中空糸膜モジュールを作製し、除濁能力を測定したところ、1L/minの濾過速度に低下するまでの濾過量は1310Lであった。
【0017】
【発明の効果】本発明の捲縮機を用いて中空糸膜に捲縮を付与することにより、中空糸膜の空間が増えて中空糸膜を多数本束にして接着する場合に接着剤が均一に中空糸膜外周部の空間に入り易くなり、接着剤が浸透していない接着不良の中空糸膜モジュールを製造することが少なくなって生産性が向上する。また、中空糸膜の潰れがないため、中空糸膜モジュールの使用時においては、内圧濾過の場合、透析性能や濾過性能が向上し、また、逆洗時に中空糸膜束の中央部まで充分に洗浄できて洗浄効果も向上する。外圧濾過の場合、濾過に有効な膜面積が増えるために、より多くの微粒子を捕捉することが可能となって膜性能が向上し、また、洗浄時の逆洗効果も向上する。
【出願人】 【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
【出願日】 平成7年(1995)7月6日
【代理人】
【公開番号】 特開平9−21024
【公開日】 平成9年(1997)1月21日
【出願番号】 特願平7−170894